(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドと、3級窒素原子及び4級炭素原子を有する炭素数が3〜15のポリオール化合物と、を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の液晶配向剤は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドをポリマーとして含有する。本発明に使用されるポリイミドは特に限定されないが、以下のようにして得られる。
【0015】
[ジアミン成分]
ポリイミドを得るのに用いられるジアミン成分(単に、ジアミンともいう。)は特に限定されない。そのジアミンは一種でも複数種でも併用可能であり、種類は限定されない。ジアミンの種類としては、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン類、複素環式ジアミン類または脂肪族ジアミンが例示される。以下にその具体例を示す。
【0016】
脂環式ジアミンの例としては、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、およびイソホロンジアミン等が挙げられる。
【0017】
芳香族ジアミン類の例としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノ−p−キシレン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’―ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビベンジル、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)メチル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、α、α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,3−ジアミノピレン、1,6−ジアミノピレン、1,8―ジアミノピレン、2,7−ジアミノフルオレン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェニル)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェニル)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェニル)デカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、ジ(4−アミノフェニル)プロパン−1,3−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ブタン−1,4−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ペンタン−1,5−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘキサン−1,6−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘプタン−1,7−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)オクタン−1,8−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ノナン−1,9−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)デカン−1,10−ジオエート、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕プロパン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ブタン、1,5−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ペンタン、1,6−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘキサン、1,7−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘプタン、1,8−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕オクタン、1,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ノナン、1,10−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕デカンなどが挙げられる。
【0018】
複素環式ジアミン類の例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、3,6−ジアミノカルバゾール、2,4−ジアミノ−6−イソプロピル−1,3,5−トリアジン、2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどが挙げられる。
【0019】
脂肪族ジアミンの例としては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルヘプタン、1,12−ジアミノドデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタンなどが挙げられる。
【0020】
本発明では、ジアミンとして、炭素数2又は3のアルケニル基で置換されたジ置換アミノ基を有するジアミノベンゼン(以下、特定ジアミンともいう。)が好適に用いられる。特定ジアミンを使用した場合、ポリマーの溶解性が高まり、より異物の発生を抑えることができる。特定ジアミンとしては、特に、下記式[1]で表される、2−プロペニル基(以下、アリル基ともいう)で置換されたジ置換アミノ基を有するジアミノベンゼンが好ましい。
【0021】
【化4】
式[1]で表されるジアミンにおいて、ベンゼン環上の各置換基の位置は特に限定されないが、2つのアミノ基の位置関係はメタまたはパラが好ましい。以下にこのジアミンのより好ましい具体例を挙げる。
【0022】
【化5】
前記式[2]は、2,4−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリンであり、前記式[3]は、3,5−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリンであり、前記式[4]は、2,5−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリンである。前記ジアミノベンゼンは、前記[2]、[3]及び[4]からなる群から選ばれる少なくとも一種であるのがより好ましい。なかでも、前記ジアミノベンゼンは、2,4−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリンであるのが特に好ましい。
【0023】
本発明において、ポリイミドの原料となるジアミン成分は、特定ジアミンのみであってもよく、或いは、特定ジアミンとその他のジアミンの1種または2種以上とを組み合わせでもよい。ポリイミドを得るためのジアミン成分に特定ジアミンを含有させることで、ポリイミドの有機溶媒に対する溶解性が高くなる。さらに、塗膜をラビング処理する際の膜表面への傷や膜の剥離といった問題が改善される。
【0024】
ジアミン成分中における特定ジアミンの含有量は、20モル(mol)%以上含有することが好ましく、より好ましくは40モル%以上であり、特には50モル%以上である。ジアミン成分中の特定ジアミン含有比率が高くなるほど、ラビング処理時の配向膜表面の傷や膜の剥離を抑制する効果が高くなる。また、得られるポリイミドの有機溶媒に対する溶解性も高くなる。他方、ジアミン成分が特定ジアミンのみでも良いが、特定ジアミン以外のジアミンを併用することで、液晶配向膜に必要とされるその他の特性を付与できるので好ましい。そのため、特定ジアミンの含有量は90モル%以下がより好ましい。特に特定ジアミンと4-アミノベンジルアミン、3-アミノベンジルアミン、または4-アミノフェネチルアミンを用いると、ポリイミドの有機溶媒への溶解性が高くなり、さらに液晶配向性に優れた液晶配向剤が得られるため特に好ましい。4-アミノベンジルアミン、3-アミノベンジルアミン、または4−アミノフェネチルアミンのジアミン成分中の好ましい含有量は10モル%〜50モル%である。
【0025】
また、液晶のプレチルト角を高める為に、特定の置換基を有するジアミンを組み合わせて使用することもできる。液晶のプレチルト角を高めることができる置換基としては、長鎖アルキル基、パーフルオロアルキル基、芳香族環状基、脂肪族環状基、これらを組み合わせた置換基またはステロイド骨格基などが好ましい。以下にかかる置換基を有するジアミンの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。なお、以下に例示する構造においてjは5〜20、好ましくは9〜17の整数を表し、kは1〜20、好ましくは4〜15の整数を表す。
【0030】
上記のジアミンの内、式〔5〕、〔32〕のジアミンは液晶配向性に優れるため好ましい。式〔12〕〜〔19〕のジアミンは、チルト発現能が非常に高いため、OCB(Optically Compensated Bend)用配向膜、VA(Vertical Alignment)用配向膜に好適に用いられる。好ましい例として、TN(Twisted Nematic)用配向膜(プレチルトが3〜5°)では、式〔5〕または〔32〕のジアミンをジアミン成分中に5〜40モル%、好ましくは10〜30モル%含有し、OCB、VA用配向膜(プレチルト10〜90°)では、式〔12〕〜〔19〕のジアミンをジアミン成分中に5〜60モル%、好ましく10〜40モル%は含有するものが挙げられる。
【0031】
上記のジアミンの中でも、特に、式〔32〕のジアミンは、チルト角が高く、かつ、前記の特定ジアミンと組み合わせて用いた場合には、ラビング条件が弱い場合でも液晶配向性に優れるために好ましい。更には、上記のようなジアミンが液晶のプレチルト角を高める効果は、液晶配向剤中にN−エチル−2−ピロリドンまたはN−シクロへキシル−2−ピロリドンを多く含有する場合に弱まる傾向にあるが、式〔32〕のジアミンはこのような影響を受けにくいという特徴があり、本発明の液晶配向剤に含有するポリイミドのジアミン成分として好適である。
【0032】
[テトラカルボン酸二無水物成分]
本発明において、ポリイミドの原料となるテトラカルボン酸二無水物成分は、1種類のテトラカルボン酸二無水物であってもよく、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を混合して用いても良い。
しかしながら、高イミド化率のポリイミドであっても比較的溶解性の高いポリイミドが得やすい点、及び液晶セルの電圧保持率を高くできる点などから、脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0033】
脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.1.0
2,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−二無水物、ヘキサシクロ[6.6.0.1
2,7.0
3,6.1
9,14.0
10,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−二無水物などが挙げられる。
【0034】
脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、特に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、または1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物を用いると液晶配向性に優れた配向膜が得られるために特に好ましい。
【0035】
更には、脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物に加えて芳香族テトラカルボン酸二無水物を併用すると、液晶配向性が向上し、かつ液晶セルの蓄積電荷を低減させることができるので好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0036】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、中でもピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、または1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0037】
ポリイミドの溶解性、液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの各特性のバランスを考慮するならば、脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物と、芳香族テトラカルボン酸二無水物との比率は、前者/後者のモル比で90/10〜50/50が好ましく、より好ましくは80/20〜60/40である。
【0038】
[ポリイミド及びその製造方法]
本発明の液晶配向剤に用いられるポリイミドは、上記したジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるポリアミック酸をイミド化したポリイミドである。ここで、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で混合し、反応させることで得ることができる。
【0039】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で混合させる方法としては、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられる。また、テトラカルボン酸二無水物成分またはジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、これら複数種の成分をあらかじめ混合した状態で重合反応させても良く、個別に順次重合反応させても良い。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶剤中で重合反応させる際の温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃である。温度が高い方が重合反応は早く終了するが、高すぎると高分子量の重合体が得られない場合がある。
【0041】
また、重合反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との合計量の濃度が、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。重合反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加しても構わない。
【0042】
上記反応の際に用いられる有機溶媒は、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されないが、N−エチル−2−ピロリドンもしくはN−シクロヘキシル−2−ピロリドン、もしくはその他の溶媒を用いてもよい。その具体例を挙げると、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等を挙げることができる。これらは単独でも、また混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0043】
ポリアミック酸の重合反応に用いるテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の比率は、モル比で1:0.8〜1:1.2であることが好ましく、このモル比が1:1に近いほど得られるポリアミック酸の分子量は大きくなる。このポリアミック酸の分子量を制御することで、イミド化後に得られるポリイミドの分子量を調整することができる。
【0044】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドの分子量は特に限定されないが、塗膜の強度と液晶配向剤としての取り扱いのしやすさの観点から、重量平均分子量で2,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000である。
上記のようにして得られたポリアミック酸のイミド化は、有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で1〜100時間攪拌することにより可能である。
【0045】
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは、反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。中でも無水酢酸は、イミド化終了後に、得られたポリイミドの精製が容易となるので好ましい。有機溶媒としては前述したポリアミック酸重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。
【0046】
ポリイミドのイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。このときの塩基性触媒の量は、原料のポリアミック酸の有するアミック酸基の0.2〜10倍モルが好ましく、より好ましくは0.5〜5倍モルである。また、酸無水物の量は、原料のポリアミック酸の有するアミック酸基の1〜30倍モルが好ましく、より好ましくは1〜10倍モルである。反応温度は−20〜250℃が好ましく、より好ましくは0〜180℃である。
【0047】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドのイミド化率は特に限定されないが、電気特性を考慮すると40%以上であることが好ましく、高い電圧保持率を得るためには60%以上がより好ましく、さらに好ましくは80%以上である。
このようにして得られたポリイミドの溶液中には、添加した触媒などが残存しているので、ポリイミドを回収し、洗浄してから本発明の液晶配向剤に用いることが好ましい。
【0048】
ポリイミドの回収は、イミド化後の溶液を攪拌している貧溶媒に投入し、ポリイミドを析出させた後にろ過することで可能である。このときの貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどを挙げることができる。回収したポリイミドの洗浄も、この貧溶媒で行うことができる。
このようにして回収し洗浄したポリイミドは、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥して粉末とすることができる。
【0049】
[3級窒素及び4級炭素を有するポリオール化合物]
本発明の液晶配向剤には、3級窒素及び4級炭素を有するポリオール化合物が含有される。かかるポリオール化合物は、3級窒素及び4級炭素を有することが必要であり、その両方を有しない場合、本発明の上記した目的が達成されないか、又は達成される程度が小さくなる。例えば、後に記載される比較例に示されるように、複数の水酸基及び3級窒素原子を有していても、4級炭素原子を有しないトリエタノールアミンの場合は本発明の上記した目的が達成されない。
【0050】
ポリオール化合物の有する全体の炭素数は、3〜15であることが必要であり、好ましくは3〜13であり、より好ましくは6〜12である。ポリオール化合物の有する水酸基の数は重要であり、水酸基は好ましくは2〜8個、より好ましくは2〜7個、特に好ましくは2〜5個である。水酸基が多すぎると液晶表示素子の表示特性が悪くなり、逆に少な過ぎるとAPR版との密着性が悪くなり好ましくない。3級窒素原子、及び4級炭素原子の数は、いずれも1個以上含有していればよく5個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。また、ポリオール化合物は、脂肪族の飽和炭化水素構造を有するのが好ましいが、全体の炭素数が大きい場合には、一部に不飽和結合を有していてもよく、また、一部に環状構造を有していてもよい。
【0051】
かかるポリオール化合物は、好ましくは、下記の式(A)で表される化合物である。
【化10】
上記式(A)において、R
1、R
2は、それぞれ独立に、炭素数1〜5、好ましくは1〜3のヒドロキシアルキル基を表し、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立に、炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜5、好ましくは1〜3のヒドロキシアルキル基を表す。
【0052】
かかる式(A)で表される化合物の好ましい例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化11】
【0053】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、前記したポリイミドをポリマー成分とし、3級窒素及び4級炭素を有するポリオール化合物を添加成分とし、これらを溶媒に溶解してなるものである。液晶配向剤におけるポリイミドに対するポリオール化合物の含有量は、ポリイミド100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。ポリオール化合物が過度に含有される場合には、得られる液晶表示素子の特性が悪くなり、逆に、少な過ぎる場合には、本発明で目的とする効果が小さい。
【0054】
液晶配向剤中におけるポリイミドの含有量(濃度)は、形成する液晶配向膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、ポリイミド1質量部に対して溶媒が好ましくは9〜99質量部、より好ましくは11.5〜49質量部であるのが好適である。溶媒が99質量部よりも多いと均一で欠陥のない塗膜を形成させることが困難となり、逆に、9質量部未満であると溶液の保存安定性が悪くなる場合がある。また、本発明の液晶配向剤における、溶媒の含有量は、液晶配向剤全体の好ましくは90〜99質量%、より好ましくは92〜98質量部である。
【0055】
本発明の液晶配向剤に使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノンなどが挙げられる。なかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンはポリイミドの溶解性が高いために好適に用いられる。またγ−ブチロラクトンは白化を抑制するために好適に用いられる。
【0056】
また、本発明の液晶配向剤に使用する溶媒として、N−エチル−2−ピロリドン又はN−シクロヘキシル−2−ピロリドンを含有する場合には、塗膜の白化や印刷エッジ付近の膜厚のムラを抑制し得るので好ましい。これらの溶媒の量は、ポリマーの1質量部に対して0.5質量部以上である場合に凝集物の発生を抑制する改善効果がみられ、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは2〜70重量部である。
【0057】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは、構造の異なる2種類以上のポリイミドの混合物であってもよく、また、電気特性を損なわず、ワニスの保存安定性を低下させず、そして、印刷時に液晶パネルのギャップムラの原因となる凝集物を発生させない程度に、ポリアミック酸や他のポリマーを併用してもよい。かかる併用するポリマーの使用量は、ポリイミドの1質量部に対して、0.05〜7質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量部である。本発明の液晶配向剤における、ポリイミドを含むポリマーの含有量は、液晶配向剤全体の好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%である。
【0058】
本発明の液晶配向剤に使用する溶媒としては、低表面張力を有する溶媒も一部含有することができる。溶媒成分に低表面張力を有する溶媒を適度に混合させることにより、基板への塗布時に塗膜均一性を向上させることができる。
低表面張力を有する溶媒としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどが挙げられる。この中でも基板への塗布性の観点から、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、またはジエチレングリコールジエチルエーテルが特に好ましい。
【0059】
低表面張力を有する溶媒は基板への塗布性を改善させるが、量が多すぎるとポリマーの析出が生じるため、その含有量は溶媒成分の60質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下である。樹脂成分の溶解性確保のための溶媒と低表面張力を有する溶媒を組み合わせて用いる場合、それぞれの溶媒のより好ましい含有量は、樹脂成分の溶解性確保のための溶媒が5〜70質量%であり、低表面張力を有する溶媒が10〜60質量%であり、さらに好ましくは樹脂成分の溶解性確保のための溶媒が10〜45質量%であり、低表面張力を有する溶媒が20〜50質量%である。
【0060】
本発明の液晶配向剤には、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤の添加により、基板に対する塗膜の密着性を更に向上させることができる。シランカップリング剤の含有量は、好ましくはポリマーの100質量部に対して0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部である。
【0061】
[液晶配向剤の調製方法]
本発明の液晶配向剤の調製方法は、上記したポリイミドを始めとする各成分が液晶配向剤中で均一な状態となるならば特に限定されない。その一例を挙げると、ポリイミドの粉末を溶媒に溶解させてポリイミド溶液とし、次いで、所望の濃度まで溶媒を添加して希釈する方法などである。この希釈工程において、基板への塗布性を制御する為の溶媒組成の調整や、塗膜の特性を改善する為の添加物の追加などを行うことができる。上記のようにして得られた液晶配向剤は、基板に塗布する前に濾過することが好ましい。
【0062】
本発明の液晶配向剤は、基板に塗布し、乾燥、焼成することで塗膜とすることができ、この塗膜面をラビング処理することにより、ラビング用の液晶配向膜として使用される。また、ラビング処理の代りに、VA用液晶配向膜、または光配向膜としても使用される。
この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができ、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極は金属アルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0063】
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられるが、生産性の面から工業的にはフレキソ印刷法が広く用いられており、本発明の液晶配向剤においても好適に用いられる。
液晶配向剤を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合や、塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が蒸発していれば良く、その乾燥手段については特に限定されない。具体例を挙げるならば、50〜150℃、好ましくは80〜120℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法がとられる。
【0064】
液晶配向剤を塗布した基板の焼成は、100〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは150℃〜300℃であり、さらに好ましくは180℃〜250℃である。液晶配向剤中にアミック酸基が存在する場合は、この焼成温度によってアミック酸からイミドへ変化するが、この場合、必ずしも100%イミド化させる必要は無い。
焼成後の塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは10〜200nm、より好ましくは50〜100nmである。
【0065】
上記のようにして基板上に形成された塗膜面のラビング処理は、既存のラビング装置を使用することができる。この際のラビング布の材質としては、コットン、レーヨン、ナイロンなどが挙げられる。
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。液晶セルの作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで、配向処理方向が0〜270°の任意の角度となるように設置して周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後封止を行う滴下法などが例示できる。
【0066】
このようにして得られた液晶表示素子は、TN液晶表示素子、STN液晶表示素子、TFT液晶表示素子、OCB液晶表示素子、更には、横電界型の液晶表示素子、VA液晶表示素子など、種々の方式による表示素子に好適に用いられる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
実施例及び比較例で使用する略号は以下の通りである。
<テトラカルボン酸二無水物>
A−1: 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
A−2: ピロメリット酸二無水物
【0068】
<ジアミン>
B−1: 2,4−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリン
【化12】
【0069】
B−2:3−アミノベンジルアミン
B−3:4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ベンズアミド−2’,4’−フェニレンジアミン
【化13】
B−4:4−テトラデシルオキシー1,3−ジアミノベンゼン
【0070】
<添加物>
化合物-1:ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン
【化14】
化合物-2:N-tert-ブチルジエタノールアミン
【化15】
【0071】
化合物-3:トリエタノールアミン
【化16】
化合物-4: プロピルアミン
【化17】
【0072】
<有機溶媒>
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
NEP: N−エチル−2−ピロリドン
GBL: γ−ブチロラクトン
DMI:1,3−ジメチルイミダゾリジノン
BS: ブチルセロソルブ
【0073】
<分子量の測定>
ポリイミドの分子量は、該ポリイミドをGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量と重量平均分子量を算出した。
GPC装置:Shodex社製 (GPC−101)
カラム:Shodex社製 (KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/l、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/l、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/l)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(重量平均分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0074】
<イミド化率の測定>
ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNM-ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い次式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
上記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基プロトン一個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0075】
(実施例1)
テトラカルボン酸二無水物成分として、A−1を13.53g(0.069mol)、A−2を6.54g(0.030mol)、ジアミン成分として、B−1を6.10g(0.030mol)、B−2を4.89g(0.040mol)、B−4を9.62g(0.030mol)用い、NMP162.7g中、室温で24時間反応させポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液142.8gに、NMPを255.64g加えて希釈し、無水酢酸20.64gとピリジン8.8gを加え、温度50℃で3時間反応させてイミド化した。
【0076】
この反応溶液を室温程度まで冷却後、メタノール1498.8ml中に投入し、沈殿した固形物を回収した。さらに、この固形物をメタノールで数回洗浄した後、温度100℃で減圧乾燥して、ポリイミド(SPI-1)の白色粉末を得た。このポリイミドの数平均分子量は13,653、重量平均分子量は33,847であった。また、イミド化率は90%であった。
この得られたポリイミドSPI−1粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-1を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
【0077】
(実施例2)
ポリイミドSPI−1粉末5gにNMPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-1を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
(実施例3)
ポリイミドSPI−1粉末5gにNEPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-1を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
【0078】
(実施例4)
テトラカルボン酸二無水物成分として、A−1を8.18g(42mmol)、A−2を1.63g(7.5mmol)、ジアミン成分として、B−2を1.22g(10mmol)を用い、B−1を5.08g(25mmol)、B−3を6.11g(15mmol)、を用い、NMP88.96g中、室温で24時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液95.8gに、NMPを228.5g加えて希釈し、無水酢酸15.1gとピリジン6.4gを加え、温度50℃で3時間反応させてイミド化した。
【0079】
この反応溶液を室温程度まで冷却後、メタノール1259.1ml中に投入し、沈殿した固形物を回収した。さらに、この固形物をメタノールで数回洗浄した後、温度100℃で減圧乾燥して、可溶性ポリイミド(SPI−2)の白色粉末を得た。このポリイミドの数平均分子量は18,195、重量平均分子量は57,063であった。また、イミド化率は93%であった。
得られたポリイミドSPI−2粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-1を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
【0080】
(実施例5)
ポリイミドSPI−2粉末5gにNMPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-1を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
(実施例6)
ポリイミドSPI−2粉末5gにNEPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-1を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
【0081】
(実施例7)
ポリイミドSPI−1粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻したのち、化合物-2を0.25g加え3時間攪拌した。
(実施例8)
ポリイミドSPI−1粉末5gにNMPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻したのち、化合物-2を0.25g加え3時間攪拌した。
(比較例1)
ポリイミドSPI−1粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌して液晶配向剤を得た。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。
(比較例2)
ポリイミドSPI−1粉末5gにNMPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌して液晶配向剤を得た。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。
【0082】
(比較例3)
ポリイミドSPI−1粉末5gにNEPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌して液晶配向剤を得た。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。
(比較例4)
ポリイミドSPI−1粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌して液晶配向剤を得た。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-3を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
(比較例5)
ポリイミドSPI−1粉末5gにNMPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻したのち、化合物−3を0.25g加え3時間攪拌した。
【0083】
(比較例6)
ポリイミドSPI−2粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌して液晶配向剤を得た。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。
(比較例7)
ポリイミドSPI−2粉末5gにNEPを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌して液晶配向剤を得た。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。
【0084】
(比較例8)
ポリイミドSPI−2粉末5gにGBLを65g加え完全に溶解した後にBSを30g加え、温度50℃で24時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。これを室温に戻した後、化合物-4を0.25g加え3時間攪拌して液晶配向剤を得た。
【0085】
上記で得られた実施例1〜8及び比較例1〜8液晶配向剤について、下記のように、チルド角の測定、白化特性の評価、及び印刷時の異物評価を行った。その結果を、表1及び表2に示した。
【0086】
<プレチルト角の測定>
液晶配向処理剤を透明電極付きガラス基板にスピンコートし、温度70℃のホットプレート上で70秒乾燥させた後、210℃のホットプレートで10分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数1000rpm、ロール進行速度50mm/sec、押し込み量0.3mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。この基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布し、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合いラビング方向が直行するようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2003(メルク・ジャパン社製)を注入し、注入口を封止して、ツイストネマティック液晶セルを得た。
上記方法にて得られた液晶セルを用いてプレチルト角の測定を行った。測定にはautronic社製のTBA107を用いた。
【0087】
<白化特性の評価>
上記の液晶配向剤を、Cr基板上にそれぞれ約0.1ml滴下し、温度23℃、湿度70%の環境に放置した。この液滴の端近傍及び中央付近を1時間ごとに顕微鏡で観察した。なお、液滴の端近傍は100倍で、液滴の中央付近は50倍の倍率で観察を行った。6時間以内に液滴の端及び中央付近に凝集物が見られた場合は×、6時間経過しても見られない場合を○とし、6時間以内に液滴の端に僅かではあるが凝集物が見られた場合を△と評価した。結果を表2に記載した。
<印刷時の異物評価>
上記と同様な装置を用いて、印刷を実施した。空運転を10回実施した後、10分間印刷機を止め、印刷版を乾燥させた。その後、Cr基板1枚印刷し、上記と同様に焼成した。焼成した基板は共焦点レーザー顕微鏡(レーザーテック社製、商品名:VL2000) で印刷エッジ付近を観察し、印刷エッジ付近に、異物が発生していないものを0.1〜3μmの異物が発生したものを△、3μm以上の異物が発生したものを×と評価した。結果を表2に記載した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
表中の括弧内の値は、GBL主溶媒系と比較した際のプレチルト角の低下の値を表わす。