(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、支持体からなる層(A)と、第一のプライマー層(B−1)と、第一の導電層(C)と、絶縁層(D)と、第ニのプライマー層(B−2)と、第二の導電層(E)とが積層された構造を有する積層体であって、前記第一の導電層(C)が、前記第一のプライマー層(B−1)の表面の一部または全部に、遷移金属やその化合物である導電性物質を含有する流動体(c−1)を塗布することによって形成された第一のめっき核層(C−1)と、前記第一のめっき核層(C−1)の表面に設けられた第一のめっき層(C−2)とによって構成される層であり、前記第二の導電層(E)が、前記第二のプライマー(B−2)の表面の一部または全部に、遷移金属やその化合物である導電性物質を含有する流動体(e−1)を塗布することによって形成された第二のめっき核層(E−1)と、前記第二のめっき核層(E−1)の表面に設けられた第二のめっき層(E−2)とによって構成される層であることを特徴とする積層体。
前記第一のプライマー層(B−1)及び第二のプライマー層(B−2)が、ウレタン樹脂(b1)、ビニル樹脂(b2)、及び、ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含有するものである請求項1に記載の積層体。
前記ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)が、ウレタン樹脂(b3−1)であるシェル層と、前記ビニル樹脂(b3−2)であるコア層とによって構成される複合樹脂である請求項2に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の積層体は、少なくとも、支持体からなる層(A)と、第一のプライマー層(B−1)と、第一の導電層(C)と、絶縁層(D)と、第ニのプライマー層(B−2)と、第二の導電層(E)とが積層された構造を有するものであることを特徴とするものである。本発明の積層体は、前記層(A)〜(E)以外の層を備えていてもよい。
【0015】
本発明の積層体は、支持体からなる層(A)と第一の導電層(C)との間に第一のプライマー層(B−1)を有する。
【0016】
前記第一のプライマー層(B−1)は、前記第一の導電層(C)の形成に使用可能な導電性物質を含有する流動体(c−1)を受容する層である。前記プライマー層(B−1)は、前記流動体(c−1)が接触した際に、前記流動体(c−1)に含まれる溶媒を速やかに吸収し、かつ前記導電性物質をプライマー層(B−1)の表面に担持する。これにより、前記支持体からなる層(A)とプライマー層(B−1)と、導電性物質から構成される第一の導電層(C)との密着性及び耐湿熱性を格段に向上することができる。
【0017】
前記プライマー層(B−1)は、前記支持体からなる層(A)の表面の一部または全部に設けられてもよく、その片面または両面に設けられてもよい。例えば前記積層体としては、前記支持体からなる層(A)の表面の全面に第一のプライマー層(B−1)を有し、そのプライマー層(B−1)のうち必要な部分にのみ、前記導電層(C)が積層したものを使用することもできる。また、前記支持体からなる層(A)の表面のうち、前記導電層(C)が設けられる部分にのみ、前記プライマー層(B−1)が設けられた積層体も使用することができる。
【0018】
前記プライマー層(B−1)の厚さは、0.01μm〜30μmとなる範囲であることが好ましく、0.05μm〜10μmとなる範囲であることがより好ましい。
【0019】
また、本発明の積層体は、第一の導電層(C)を有する。
【0020】
前記第一の導電層(C)としては、導電性インクやめっき核剤等の流動体(c−1)に含まれる導電性物質によって形成された単層、または、流動体(c−1)に含まれる導電性物質によって形成された第一のめっき核層(C−1)と、その表面に積層した第一のめっき層(C−2)とによって構成される層が挙げられる。
【0021】
前記第一の導電層(C)としては、耐湿熱性等に優れた積層体を得るうえで、前記第一のめっき核層(C−1)と第一のめっき層(C−2)とによって構成される層であることが好ましい。
【0022】
前記第一の導電層(C)を構成する第一のめっき核層(C−1)は、前記導電性物質によって構成されることが好ましく、具体的には銀によって構成された層であることが好ましい。前記第一のめっき核層(C−1)は、前記のとおり主として銀等の導電性物質によって構成されるが、前記流動体(c−1)中に含まれる溶媒や添加剤等が、前記第一のめっき核層(C−1)中に残存していてもよい。
【0023】
前記第一の導電層(C)を構成する第一のめっき層(C−2)は、前記第一のめっき核層(C−1)の表面に積層された層である。前記第一のめっき層(C−2)は、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、金等を一種以上含有する金属からなる層であることが好ましく、銅からなるめっき層に、さらにニッケルからなるめっき層が積層し第一のめっき層(C−2)を形成していることがより好ましく、銅からなるめっき層に、ニッケルからなるめっき層が積層し、さらに金からなるめっき層が積層し第一のめっき層(C−2)を形成していることが、長期間にわたり断線等を引き起こすことなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターン等の導電性パターンを製造するうえでさらに好ましい。
【0024】
前記導電層(C)は、前記プライマー層(B−1)の表面の一部または全部に設けられてもよい。具体的には、前記プライマー層(B−1)の表面のうち必要な部分にのみ設けられた導電層(C)としては、線状に画線することによって形成された線状の層が挙げられる。前記導電層(C)として線状の層を有する積層体は、導電性パターンや電気回路等を製造する際に好適である。
【0025】
前記導電層(C)が線状のものである場合、前記線状の層の幅(線幅)は、0.01μm〜200μm程度、好ましくは0.01μm〜150μm、より好ましくは0.01μm〜100μmの厚さ**幅(線幅)**を有するものであることが好ましい。
【0026】
本発明の積層体を構成する第一の導電層(C)としては、0.01μm〜50μmの範囲の厚さのものを使用することが好ましく、0.01μm〜30μmの範囲の厚さのものを使用することがより好ましい。前記導電層(C)の厚さは、前記導電層(C)の形成に使用可能な、導電性物質を含む流動体(c−1)の塗布量等を制御することによって調整することができる。前記導電層(C)が細線状のものである場合、その厚さ(高さ)は0.01μm〜1μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
また、前記導電層(C)を形成しうる第一のめっき核層(C−1)は、0.01μm〜25μmの範囲の厚さであることが好ましい。前記第一のめっき核層(C−1)の厚さは、前記流動体(c−1)の塗布量等を制御することによって調整することができる。
【0028】
また、前記第一のめっき層(C−2)は、1μm〜45μmの範囲の厚さであることが好ましい。前記第一のめっき層(C−2)の厚さは、前記第一のめっき層(C−2)を形成する際のめっき処理工程における処理時間や電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0029】
また、本発明の積層体は、絶縁層(D)を有する。絶縁層(D)は、前記第一の導電層(C)と前記第二の導電層(E)との間の導通を防止することを目的として設けられる層であって、一般に、層間絶縁材といわれる。
【0030】
前記絶縁層(D)としては、予めフィルムまたはシート状に成形された絶縁フィルムまたは絶縁シートを使用することができ、例えば各種樹脂等を含有する樹脂組成物を用いて形成された絶縁フィルムまたは絶縁シートを使用することができる。
また、前記絶縁層(D)は、予め成形されたフィルムまたはシートの代わりに、樹脂組成物(d)を、少なくとも前記第一の導電層(C)の表面に塗布し乾燥することによって形成された層であってもよい。
【0031】
前記絶縁層(D)は、前記第一の導電層(C)の表面の一部または全部に積層されることが好ましいが、前記第一の導電層(C)を、前記第一のプライマー層(B−1)の表面の一部に積層した場合には、前記絶縁層(D)が第一のプライマー層(B−1)の表面に直接積層されていてもよい。
【0032】
前記絶縁層(D)の厚さは、前記第一の導電層(C)及び前記第二の導電層(E)の絶縁性及び前記積層体の薄型化を両立するうえで、1μm〜50μmの範囲であることが好ましい。また、前記絶縁層(D)として、予め成形されたフィルムまたはシートのものを使用する場合には、取り扱いやすさの点からその厚さは、5μm〜40μmの範囲であることが好ましい。また、前記フィルムまたはシートとしては、予め粘着剤層や接着剤層が設けられたものを使用することもできる。前記厚さは、前記粘着剤層及び接着剤層を含まずフィルムまたはシート自体の厚さを表す。
【0033】
また、本発明の積層体は、第二のプライマー層(B−2)を有する。
前記第二のプライマー層(B−2)は、前記第二の導電層(E)の形成に使用可能な導電性物質を含有する流動体(e−1)を受容する層である。前記プライマー層(B−2)は、前記流動体(e−1)が接触した際に、前記流動体(e−1)に含まれる溶媒を速やかに吸収し、かつ前記導電性物質をプライマー層(B−2)の表面に担持する。これにより、前記絶縁層(D)とプライマー層(B−2)と、導電性物質から構成される第二の導電層(E)との密着性及び耐湿熱性を格段に向上することができる。
【0034】
前記プライマー層(B−2)は、前記絶縁層(D)の表面の一部または全部に設けられてもよく、その片面または両面に設けられてもよい。例えば前記積層体としては、前記絶縁層(D)の表面の全面に第二のプライマー層(B−2)を有し、そのプライマー層(B−2)のうち必要な部分にのみ、前記第二の導電層(E)が積層したものを使用することもできる。また、前記絶縁層(D)の表面のうち、前記第二の導電層(E)が設けられる部分にのみ、前記プライマー層(B−2)が設けられた積層体も使用することができる。
【0035】
前記プライマー層(B−2)の厚さは、0.01μm〜30μmとなる範囲であることが好ましく、0.05μm〜10μmとなる範囲であることがより好ましい。
【0036】
また、本発明の積層体は、第二の導電層(E)を有する。前記第二の導電層(E)は、導電性インクやめっき核剤等の流動体(e−1)に含まれる導電性物質によって形成された第二のめっき核層(E−1)と、その表面に積層した第二のめっき層(E−2)とによって構成される層である。
【0037】
前記第二の導電層(E)を構成する第二のめっき核層(E−1)は、前記導電性物質によって構成されることが好ましく、具体的には銀によって構成された層であることが好ましい。前記第二のめっき核層(E−1)は、前記のとおり主として銀等の導電性物質によって構成されるが、前記流動体(e−1)中に含まれる溶媒や添加剤が、前記第二のめっき核層(E−1)中に残存していてもよい。
【0038】
前記第二の導電層(E)を構成する第二のめっき層(E−2)は、前記第二のめっき核層(E−1)の表面に積層された層である。前記第二のめっき層(E−2)は、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、金等を一種以上含有する金属からなる層であることが好ましく、銅からなるめっき層に、さらにニッケルからなるめっき層が積層し第二のめっき層(E−2)を形成していることがより好ましく、銅からなるめっき層に、ニッケルからなるめっき層が積層し、さらに金からなるめっき層が積層し第二のめっき層(E−2)を形成していることが、長期間にわたり断線等を引き起こすことなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターン等の導電性パターンを製造するうえで好ましい。
【0039】
また、前記第二の導電層(E)は、前記第二のプライマー層(B−2)の表面の一部または全部に設けられてもよい。具体的には、前記絶縁層(D)の表面のうち必要な部分にのみ設けられた導電層(E)としては、線状に画線することによって形成された線状の層が挙げられる。前記導電層(E)として線状の層を有する積層体は、導電性パターンや電気回路等を製造する際に好適である。
【0040】
前記第二の導電層(E)が線状のものである場合、前記線状の層の幅(線幅)は、0.01μm〜200μm程度、好ましくは0.01μm〜150μm、より好ましくは0.01μm〜100μmの厚さ**幅(線幅)**を有するものであることが好ましい。
【0041】
本発明の積層体を構成する第二の導電層(E)としては、0.01μm〜50μmの範囲の厚さのものを使用することが好ましく、0.01μm〜30μmの範囲の厚さのものを使用することがより好ましい。前記第二の導電層(E)の厚さは、前記第二のめっき核層(E−1)の形成に使用可能な、流動体(e−1)の塗布量等を制御することによって調整することができる。前記第二の導電層(E)が細線状のものである場合、その厚さ(高さ)は0.01μm〜1μmの範囲であることが好ましい。
【0042】
前記第二の導電層(E)を形成する第二のめっき核層(E−1)は、0.01μm〜25μmの範囲の厚さであることが好ましい。前記第二のめっき核層(E−1)の厚さは、前記流動体(e−1)の塗布量等を制御することによって調整することができる。
【0043】
また、前記第二のめっき層(E−2)は、1μm〜45μmの範囲の厚さであることが好ましい。前記第二のめっき層(E−2)の厚さは、前記第二のめっき層(E−2)を形成する際のめっき処理工程における処理時間や電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0044】
本発明の積層体は、例えば前記層(A)を形成する支持体の表面の一部または全部に、第一のプライマー層(B−1)を形成するプライマーを塗布し、その塗布面の一部または全部に、導電性物質を含有する流動体(c−1)を塗布することによって、支持体からなる層(A)と第一のプライマー層(B−1)と第一のめっき核層(C−1)とを積層する工程[1]、前記第一のめっき核層(C−1)の表面の一部または全部をめっき処理することによって、前記第一のめっき核層(C−1)の表面に第一のめっき層(C−2)が積層した第一の導電層(C)を形成する工程[2]、少なくとも前記第一のめっき層(C−2)の表面の一部または全部に、絶縁層フィルムまたは絶縁シートを積層する工程、または、樹脂組成物(d)を塗布し乾燥することによって絶縁層(D)を形成する工程[3]、前記絶縁層(D)の一部または全部に、第二のプライマー層(B−2)を形成するプライマーを塗布し、その塗布面の一部または全部に、導電性物質を含有する流動体(e−1)を塗布することによって、前記絶縁層(D)と、第二のプライマー層(B−2)と、第二のめっき核層(E−1)とを積層する工程[4]、及び、前記第二のめっき核層(E−1)の表面の一部または全部をめっき処理することによって、前記第二のめっき核層(E−1)の表面に第二のめっき層(E−2)が積層した第二の導電層(E)を形成する工程[5]を経ることによって製造することができる。
【0045】
前記工程[1]は、前記層(A)を構成する支持体の表面の一部または全部に、第一のプライマー層(B−1)を形成するプライマーを塗布し、必要に応じて乾燥した後、その塗布面の一部または全部に、導電性物質を含有する流動体(c−1)を塗布し、乾燥することによって、支持体からなる層(A)と第一のプライマー層(B−1)と、第一の導電層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)とを積層する工程である。
【0046】
前記層(A)を構成する支持体としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、セルロースナノファイバー、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる支持体、それらからなる多孔質の支持体、鋼板や銅等の金属からなる支持体等を使用することができる。
【0047】
なかでも、前記支持体としては、一般に、回路基板等の導電性パターンを形成する際の支持体として使用されることの多い、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ガラス、セルロースナノファイバーなどからなる支持体を使用することが好ましい。
【0048】
また、前記支持体としては、柔軟性が必要な用途等に使用される場合は、比較的柔軟で折り曲げ等が可能なものを使用することが、導電性パターンに柔軟性を付与し、折り曲げ可能な最終製品を得るうえで好ましい。具体的には、一軸延伸等することによって形成されたフィルムまたはシート状の支持体を使用することが好ましい。
【0049】
前記フィルムまたはシート状の支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムやポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0050】
前記支持体としては、導電性パターン等の積層体や、それが使用される最終製品の軽量化及び薄型化を実現する観点から、1μm〜2,000μm程度の厚さのものであることが好ましく、1μm〜100μm程度の厚さであることがより好ましい。前記積層体として比較的柔軟なものが求められる場合には、1μm〜80μm程度の厚さのものを使用することが好ましい。
【0051】
前記支持体の表面の一部または全部に塗布するプライマーとしては、各種樹脂と溶媒とを含有するものを使用することができる。
【0052】
前記樹脂としては、例えばウレタン樹脂(b1)、ビニル樹脂(b2)、ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等を使用することができる。
【0053】
前記樹脂としては、なかでも、ウレタン樹脂(b1)、ビニル樹脂(b2)、及び、ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を使用することが好ましく、ウレタン樹脂(b1)としてポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、脂肪族ポリエステル構造を有するウレタン樹脂、ビニル樹脂(b2)としてメタクリル酸メチル由来の構造単位を有するアクリル樹脂、ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)としてウレタン−アクリル複合樹脂を使用することがより好ましく、ウレタン−アクリル複合樹脂を使用することが、前記密着性、耐湿熱性をより一層向上でき、イオンマイグレーションを防止できるためさらに好ましい。
【0054】
前記プライマーとしては、前記プライマー全体に対して前記樹脂を10質量%〜70質量%含有するものを使用することが、塗布のしやすさ等を維持するうえで好ましく、10質量%〜50質量%含有するものを使用することがより好ましい。
【0055】
また、前記プライマーに使用可能な溶媒としては、各種有機溶剤や水性媒体を使用することができる。
【0056】
前記有機溶剤としては、例えばトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等を使用することができる。また、前記水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0057】
水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム等が挙げられる。
【0058】
本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。
【0059】
前記溶媒として水性媒体を使用する場合には、前記樹脂として親水性基を有する樹脂を使用することが、プライマーに良好な水分散性を付与し保存安定性を向上するうえで好ましい。
【0060】
前記親水性基としては、例えばアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられる。
【0061】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和され形成したカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散性を付与するうえで好ましい。
【0062】
前記アニオン性基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。導電性パターン等を形成する場合には、前記金属塩化合物が導電性等を阻害しうる場合があるため、前記アンモニアや有機アミンやアルカノールアミンを使用することが好ましい。
【0063】
前記アニオン性基として前記カルボキシレート基やスルホネート基を使用する場合、それらは前記樹脂全体に対して50mmol/kg〜2,000mmol/kgの範囲で存在することが、前記樹脂の良好な水分散安定性を維持するうえで好ましい。
【0064】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。
【0065】
前記3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、マレイン酸などの有機酸や、スルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、及び、塩酸、硫酸、オルトリン酸、オルト亜リン酸等の無機酸等を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。導電性パターン等を形成する場合には、塩素や硫黄等が導電性等を阻害しうる場合があるため、酢酸、プロピオン酸、乳酸、マレイン酸等を使用することが好ましい。
【0066】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0067】
前記プライマーに含まれる樹脂として使用可能なウレタン樹脂(b1)としては、ポリオールとポリイソシアネートと、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって得られるウレタン樹脂を使用することができる。なかでも、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、脂肪族ポリエステル構造を有するウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0068】
前記ポリカーボネート構造、脂肪族ポリエステル構造は、前記ウレタン樹脂の製造に使用するポリオール由来の構造であることが好ましい。具体的には、前記ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、前記ポリオールとして後述するポリカーボネートポリオールを使用することによって製造することができる。また、前記脂肪族ポリエステル構造を有するウレタン樹脂は、前記ポリオールとして後述する脂肪族ポリエステルポリオールを含むものを使用することによって製造することができる。
【0069】
前記ウレタン樹脂(b1)の製造に使用可能なポリオールとしては、前記のとおりポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール等を使用することができる。また、前記ポリオールとしては、必要に応じてその他のポリオールを組み合わせて使用することができる。
【0070】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0071】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0072】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物等を使用することができる。
【0073】
また、前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトンやγ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られる脂肪族ポリエステル、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0074】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能な低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等を単独または2種以上併用して使用することができ、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールまたは1,4−ブタンジオール等と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールやネオペンチルグリコール等とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0075】
前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができ、アジピン酸等の脂肪族ポリカルボン酸を使用することが好ましい。
【0076】
前記ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオールとしては、数平均分子量が500〜4,000のものを使用することが好ましく、500〜2,000のものを使用することがより好ましい。
【0077】
また、前記ウレタン樹脂(b1)の製造に使用可能なポリオールとしては、前記したもののほかに必要に応じて、その他のポリオールを併用することができる。
【0078】
前記その他のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等、アクリル共重合体に水酸基を導入したアクリルポリオール、分子内に水酸基を含有するブタジエンの共重合体であるポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物等を適宜使用することができる。
【0079】
また、前記その他のポリオールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンジメタノール、ビシクロ[4.3.0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、ビシクロ[4.3.0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジエタノール、スピロ[3.4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の、比較的低分子量の脂肪族環式構造を有するポリオールを使用することができる。
【0080】
また、前記ウレタン樹脂(b1)として親水性基を有するウレタン樹脂を製造する場合には、前記その他のポリオールとして親水性基を有するポリオールを使用することが好ましい。
【0081】
前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を有するポリオール、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸基を有するポリオールを使用することができる。また、前記親水性基を有するポリオールとしては、前記した低分子量の親水性基を有するポリオールと、例えばアジピン酸等の各種ポリカルボン酸とを反応させて得られる親水性基を有するポリエステルポリオール等を使用することもできる。
【0082】
前記ポリオールと反応しウレタン樹脂を生成しうるポリイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族構造を有するポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートや脂肪族環式構造を有するポリイソシアネートを使用することができる。
【0083】
また、前記ウレタン樹脂を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミン、ヒドラジン化合物、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0084】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を使用することができる。
【0085】
前記ヒドラジン化合物としては、例えばヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができる。
【0086】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、水等を使用することができる。
【0087】
前記鎖伸長剤は、例えばポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0088】
前記ウレタン樹脂(b1)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと、必要に応じて前記鎖伸長剤とを、従来知られた方法で反応させることによって製造することができる。
【0089】
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの反応は、急激な発熱や発泡などに十分に注意し安全性を考慮し、好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは80℃〜100℃の反応温度で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを、一括混合、または、何れか一方を他方へ滴下等の方法で逐次供給し、概ね1時間〜15時間程度反応させる方法により行うことができる。
【0090】
また、前記ウレタン樹脂(b1)の水分散体を含むプライマーは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと、必要に応じて鎖伸長剤とを前記した方法により反応させることによってウレタン樹脂(b1)を製造し、必要に応じて、前記ウレタン樹脂(b1)の有するアニオン性基等の親水性基の一部又は全てを中和等した後、それを、プライマーの溶媒として使用する水性媒体と混合することによって、ウレタン樹脂(b1)が水性媒体中に分散または一部が溶解したウレタン樹脂(b1)水分散体からなるプライマーを得ることができる。
【0091】
より具体的には、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを前記した方法により反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、必要に応じて、前記ウレタンプレポリマーの有するアニオン性基等の親水性基の一部又は全てを中和等した後、それを前記水性媒体と混合し、必要に応じて前記鎖伸長剤を用いて鎖伸長することによって、ウレタン樹脂(b1)が水性媒体中に分散または溶解したウレタン樹脂(b1)水分散体からなるプライマーを得ることができる。
【0092】
前記ポリイソシアネートと前記ポリオールとの反応は、例えば前記ポリイソシアネートの有するイソシアネート基と前記ポリオールの有する水酸基との当量割合〔イソシアネート基/水酸基〕が0.9〜2となる範囲で行うことが好ましい。
【0093】
前記ウレタン樹脂(b1)を製造する際には、前記のとおり溶媒として有機溶剤を使用することもできる。前記有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル;アセトニトリル等のニトリル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミドを、単独で使用または2種以上を使用することができる。前記有機溶剤は、前記ウレタン樹脂(b1)の製造後、蒸留法などによって除去することが好ましい。しかし、前記プライマーとして前記ウレタン樹脂(b1)と有機溶剤とを含むものを使用する場合には、前記ウレタン樹脂(b1)を製造する際に使用した有機溶剤を、前記プライマーの溶媒として使用してもよい。
【0094】
前記ウレタン樹脂(b1)としては、前記密着性に優れ、かつ導電性に優れた導電性パターン等の積層体を形成するうえで、5,000〜500,000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、20,000〜100,000の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
【0095】
前記ウレタン樹脂(b1)としては、必要に応じて各種官能基を有するものを使用することができる。前記官能基としては、例えばアルコキシシリル基、シラノール基、水酸基、アミノ基等の架橋性官能基が挙げられる。
【0096】
前記架橋性官能基は、プライマー層(B)中に架橋構造を形成することで、耐久性に優れた導電層やめっき層を形成するうえで好適に使用することができる。
【0097】
前記アルコキシシリル基やシラノール基は、前記ウレタン樹脂(b1)を製造する際にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を使用することによって、前記ウレタン樹脂中に導入することができる。
【0098】
また、前記ウレタン樹脂(b1)を後述する架橋剤と組み合わせて使用する場合には、前記架橋剤が有する官能基と反応しうる官能基を有するものを使用することができる。前記官能基としては、組み合わせて使用する架橋剤の選択にもよるが、例えばブロックイソシアネート化合物等の架橋剤を使用する場合には水酸基やアミノ基を使用することができる。
【0099】
また、前記プライマーに含まれる樹脂として使用可能なビニル樹脂(b2)としては、重合性不飽和二重結合を有する単量体の重合体を使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体、天然ゴム、合成イソプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂等を使用することができ、メタクリル酸メチル由来の構造単位を有するアクリル樹脂を使用することが好ましい。
【0100】
前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル単量体を重合して得られる重合体や共重合体を使用することができる。なお、(メタ)アクリル単量体は、アクリル単量体及びメタクリル単量体のいずれか一方または両方を指す。
【0101】
前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル由来の構造単位を有するアクリル樹脂を使用することが好ましい。
【0102】
前記アクリル樹脂としては、例えば後述する各種の(メタ)アクリル単量体を重合することによって製造することができる。
【0103】
前記(メタ)アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸β−(パーフルオロオクチル)エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することができる。
【0104】
前記したなかでも、メタクリル酸メチルを使用することが、導電性パターンを作製する際の加熱工程等における熱等の影響によらず、前記プライマー層(B)と前記支持体からなる層(A)との優れた密着性を付与するうえで、前記メタクリル酸メチルを使用することが好ましい。また、電子回路等の導電性パターンを形成する際に求められる、概ね0.01μm〜200μm、好ましくは0.01μm〜150μm程度の幅からなる細線を、にじみを引き起こすことなく印刷すること(細線性の向上)を可能にするうえでも、前記メタクリル酸メチルを使用することがより好ましい。
【0105】
また、前記メタクリル酸メチルとともに、炭素原子数2個〜12個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、炭素原子数3個〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを使用することがより好ましく、アクリル酸n−ブチルを使用することが、前記密着性や導電性のより一層の向上を図るうえで好ましい。また、にじみ等がなく細線性に優れた導電性パターンを形成するうえでも好ましい。
【0106】
前記(メタ)アクリル酸メチルは、前記(メタ)アクリル単量体混合物の全量に対して、好ましくは10質量%〜70質量%、より好ましくは30質量%〜65質量%であり、かつ、前記炭素原子数2個〜12個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、好ましくは炭素原子数3個〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルは、前記(メタ)アクリル単量体混合物の全量に対して、好ましくは20質量%〜80質量%、より好ましくは35質量%〜70質量%である。
【0107】
また、前記アクリル樹脂を製造する際に使用可能な(メタ)アクリル単量体としては、前記したものの他に、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート等のカルボキシル基含有ビニル単量体を使用することができる。前記カルボキシル基含有ビニル単量体は、アンモニアや水酸化カリウム等によって中和されていてもよい。
【0108】
また、前記(メタ)アクリル単量体としては、前記アクリル樹脂に、メチロールアミド基及びアルコキシメチルアミド基からなる群より選ばれる1種以上のアミド基や、前記以外のアミド基、水酸基、グリシジル基、アミノ基、シリル基、アジリジニル基、イソシアネート基、オキサゾリン基、シクロペンテニル基、アリル基、カルボニル基、アセトアセチル基等の前記架橋性官能基を導入する観点から、架橋性官能基含有ビニル単量体を使用することができる。
【0109】
前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体に使用可能なメチロールアミド基及びアルコキシメチルアミド基からなる群より選ばれる1種以上のアミド基を有するビニル単量体としては、例えばN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジペントキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−ペントキシメチル(メタ)アクリルアミド等を使用することができる。
【0110】
なかでも、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミドを使用することが、めっき工程における導電性物質(a2)の剥離等を防止可能なレベルの耐久性等を備えた導電性パターンを形成するうえで好ましい。
【0111】
前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体としては、前記したもの以外にも、例えば(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するビニル単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有するビニル単量体:(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル等のアミノ基を有する重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等のアジリジニル基を有する重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートエチルのフェノールまたはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアネート基及び/またはブロック化イソシアネート基を有する重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル等のシクロペンテニル基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基を有する重合性単量体;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基を有する重合性単量体等を使用することができる。
【0112】
前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、前記(メタ)アクリル単量体混合物の全量に対して0質量%〜50質量%の範囲で使用することができる。
【0113】
前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体のうち、前記アミド基を有する(メタ)アクリル単量体は、自己架橋反応性のメチロールアミド基等を導入するうえで、(メタ)アクリル単量体混合物の全量に対して0.1質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜30質量%の範囲で使用することがより好ましい。また、前記自己架橋反応性のメチロールアミド基と組み合わせて使用するその他のアミド基を有する(メタ)アクリル単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体は、前記(メタ)アクリル単量体の全量に対して0.1質量%〜30質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜20質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0114】
また、前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体のうち、前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体や酸基含有(メタ)アクリル単量体は、組み合わせて使用する架橋剤(D)の種類等にもよるが、前記(メタ)アクリル単量体混合物の全量に対して概ね0.05質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、0.05質量%〜30質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1質量%〜10質量%で使用することがより好ましい。
【0115】
また、前記アクリル樹脂を製造する際には、前記(メタ)アクリル単量体とともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドンや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル、「アデカリアソープPP−70、PPE−710」(株式会社ADEKA製)等またはそれらの塩等を組み合わせて使用することもできる。
【0116】
前記アクリル樹脂は、前記した各種ビニル単量体の混合物を、従来から知られている方法で重合することによって製造することができるが、密着性に優れ導電性に優れた導電性パターンを製造するうえで、乳化重合法を適用することが好ましい。
【0117】
前記乳化重合法としては、例えば水と、(メタ)アクリル単量体混合物と、重合開始剤と、必要に応じて連鎖移動剤や乳化剤や分散安定剤等とを、反応容器中に一括供給、混合して重合する方法、(メタ)アクリル単量体混合物を反応容器中に滴下し重合するモノマー滴下法、(メタ)アクリル単量体混合物と乳化剤等と水とを予め混合したものを、反応容器中に滴下し重合するプレエマルジョン法等を適用することができる。
【0118】
前記乳化重合法の反応温度は、使用する(メタ)アクリル単量体や重合開始剤の種類によって異なるが、例えば30℃〜90℃程度、反応時間は例えば1時間〜l0時間程度であることが好ましい。
【0119】
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過酸化水素等があり、これら過酸化物のみを用いてラジカル重合するか、或いは前記過酸化物と、アスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等のような還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系によっても重合でき、また、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することも可能であり、これら化合物は、単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0120】
前記アクリル樹脂の製造に使用可能な乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0121】
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸ハーフエステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩、等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系界面活性剤等を使用することができる。
【0122】
また、前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩等を使用することができる。
【0123】
また、両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等を使用することができる。
【0124】
前記乳化剤としては、上記の界面活性剤の他に、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤や、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することもできる。
【0125】
前記反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180」(花王(株)製)、「エレミノールJS−2、RS−30」(三洋化成工業(株)製)等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−20、KH−1025」(第一工業製薬(株)製)、「アデカリアソープSE−10、SE−20」((株)ADEKA製)等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」(第一工業製薬(株)製)等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」(第一工業製薬(株)製)等を使用することができる。
【0126】
また、前記アクリル樹脂(x2−1)の製造に使用可能な連鎖移動剤としては、ラウリルメルカプタン等を使用することができ、前記(メタ)アクリル単量体混合物の全量に対して0質量%〜1.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0質量%〜0.5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0127】
また、前記プライマーに含まれる樹脂として使用可能なウレタン−ビニル複合樹脂(b3)としては、ウレタン樹脂(b3−1)とビニル重合体(b3−2)とが複合樹脂粒子を形成し水性媒体中に分散等できるものが挙げられる。
【0128】
前記複合樹脂粒子は、具体的には、前記ウレタン樹脂(b3−1)が形成する樹脂粒子内に前記ビニル重合体(b3−2)の一部または全部が内在したものが挙げられる。導電性パターンを形成する際においては、電気特性を低下させうる界面活性剤等を使用する必要がない前記コア・シェル型の複合樹脂粒子を使用することが好ましい。なお、前記複合樹脂粒子としては、前記ビニル重合体(b3−2)が前記ウレタン樹脂(b3−1)によってほぼ完全に覆われていることが好ましいが、必須ではなく、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ビニル重合体(b3−2)の一部が前記複合樹脂粒子の最外部に存在してもよい。
【0129】
また、前記複合樹脂粒子としては、前記ビニル重合体(b3−2)の方が、前記ウレタン樹脂(b3−1)と比較してより親水性である場合には、前記ビニル重合体(b3−2)が形成した樹脂粒子内に、前記ウレタン樹脂(b3−1)の一部または全部が内在し複合樹脂粒子を形成したものであってもよい。
【0130】
また、前記ウレタン樹脂(b3−1)と前記ビニル重合体(b3−2)とは、共有結合を形成していてもよいが、結合を形成していないことが好ましい。
【0131】
また、前記ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)としては、前記ビニル重合体(b3−2)がアクリル樹脂であるウレタン−アクリル複合樹脂を使用することが好ましい。
【0132】
また、前記複合樹脂粒子は、良好な水分散安定性を維持する観点から、5nm〜100nmの範囲の平均粒子径であることが好ましい。ここで言う平均粒子径とは、動的光散乱法により測定した体積基準での平均粒子径を指す。
【0133】
前記ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)としては、前記ウレタン樹脂(b3−1)と前記ビニル重合体(b3−2)とを、[ウレタン樹脂(b3−1)/ビニル重合体(b3−2)]=90/10〜10/90の範囲で含むことが好ましく、70/30〜10/90の範囲で含むことがより好ましい。
【0134】
前記ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)を構成するウレタン樹脂(b3−1)としては、前記ウレタン樹脂(b1)と同様のものを使用することができる。また、前記ウレタン−ビニル複合樹脂を構成するウレタン樹脂(b3−1)としては、前記ウレタン樹脂(b1)として例示したもの以外に、例えば、ポリエーテル構造を有するウレタン樹脂や芳香族ポリエステル構造を有するウレタン樹脂を使用することもできる。
【0135】
また、前記ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)の製造に使用可能な前記ウレタン樹脂(b3−1)として、2,000mmol/kg〜5,500mmol/kgの脂肪族環式構造と、親水性基とを有するウレタン樹脂を使用することが好ましく、3,000mmol/kg〜5,000mmol/kgの脂肪族環式構造を有するものを使用することが、前記密着性や耐湿熱性をより一層向上し、めっき処理工程における支持体からのプライマー層(B)の剥離を防止し耐久性を向上するうえでより好ましい。
【0136】
前記ウレタン樹脂(b3−1)の製造に使用可能なポリオールやポリイソシアネート、鎖伸長剤としては、前記ウレタン樹脂(b1)を製造する際に使用可能なものとして例示したポリオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤と同様のものを使用することができる。
【0137】
また、前記ウレタン樹脂(b3−1)として前記所定量の脂肪族環式構造を有するものを使用する場合には、前記ポリオール及びポリイソシアネートとして脂肪族環式構造を有するポリオール及び脂肪族環式構造を有するポリイソシアネートを選択し使用することが好ましい。
【0138】
また、前記ポリエーテル構造を有するウレタン樹脂は、前記ポリオールとして後述するポリエーテルポリオールを含むものを使用することによって製造することができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0139】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0140】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラ
ン等を使用することができる。
【0141】
また、前記芳香族ポリエステル構造を有するウレタン樹脂を使用する場合には、前記ポリオールとして芳香族ポリエステルポリオールを使用することもできる。
【0142】
前記芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールと芳香族ポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの等を使用することができる。
【0143】
前記芳香族ポリエステルポリオールの製造に使用可能な低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等を単独または2種以上併用して使用することができ、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールまたは1,4−ブタンジオール等と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールやネオペンチルグリコール等とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0144】
前記芳香族ポリカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの無水物またはエステル化物等を使用することができる。
【0145】
前記ポリエーテルポリオール及び前記芳香族ポリエステルポリオールとしては、数平均分子量が500〜4,000のものを使用することが好ましく、500〜2,000のものを使用することがより好ましい。
【0146】
前記ウレタン−ビニル複合樹脂を構成するビニル重合体(b3−2)としては、10℃〜70℃のガラス転移温度を有するものを使用することが、導電層(C)との密着性を向上するうえで好ましい。なお、前記ビニル重合体(x3−2)のガラス転移温度は、主に、該ビニル重合体(b3−2)の製造に使用するビニル単量体の組成に基づき、計算によって決定される値である。具体的には、後述するビニル重合体(b3−2)の組み合わせで使用することによって、前記所定のガラス転移温度を有するビニル重合体(b3−2)を得ることができる。
【0147】
また、前記ビニル重合体(b3−2)としては、導電層(C)との密着性や、得られる導電性パターンの導電性を向上し、かつパターンの細線化を図るうえで、80万以上の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、100万以上の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
【0148】
前記ビニル重合体(b3−2)の重量平均分子量の上限値としては、特に限定されないが、概ね1000万以下であることが好ましく、500万以下であることが好ましい。
【0149】
また、前記ビニル重合体(b3−2)としては、必要に応じて各種官能基を有していてもよく、前記官能基としては例えばアミド基や、水酸基、グリシジル基、アミノ基、シリル基、アジリジニル基、イソシアネート基、オキサゾリン基、シクロペンテニル基、アリル基、カルボキシル基、アセトアセチル基等の架橋性官能基が挙げられる。
【0150】
前記ビニル重合体(b3−2)としては、前記ビニル重合体(b3)と同様のものを使用することができる。具体的には、前記ビニル重合体(b3−2)の製造に使用可能な(メタ)ビニル単量体としては、前記ビニル樹脂(b3)の製造に使用可能なものとして例示したビニル単量体、好ましくは(メタ)アクリル単量体と同様のものを使用することができる。なかでも、ビニル重合体(b3−2)としては、前記ビニル樹脂(x2)に使用可能なものとして例示したメタクリル酸メチル由来の構造単位を有するアクリル樹脂と同様のものを使用することが好ましい。
【0151】
前記ウレタン−ビニル複合樹脂(b3)は、例えば、前記ポリイソシアネートとポリオールと必要に応じて鎖伸長剤とを反応させ、水分散化することによってウレタン樹脂(b3−1)の水分散体を製造する工程(V)、及び、前記水分散体中で前記(メタ)アクリル単量体を重合しビニル重合体(b3−2)を製造する工程(W)により製造することができる。
【0152】
具体的には、無溶剤下または有機溶剤下または(メタ)アクリル単量体等の反応性希釈剤の存在下で、前記ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによってウレタン樹脂(b3−1)を得、次いで、前記ウレタン樹脂(b3−1)の有する親水性基の一部または全部を、必要に応じて塩基性化合物等を用いて中和し、必要に応じて、更に鎖伸長剤と反応させ、それを水性媒体中に分散させることによって、ウレタン樹脂(b3−1)の水分散体を製造する。
【0153】
次いで、前記で得たウレタン樹脂(b3−1)の水分散体中に、前記(メタ)アクリル単量体等のビニル単量体を供給し、前記ウレタン樹脂(b3−1)粒子内で前記ビニル単量体をラジカル重合させビニル樹脂(b3−2)を製造する。また、前記ウレタン樹脂(b3−1)の製造をビニル単量体の存在下で行った場合には、前記ウレタン樹脂(b3−1)の製造後、重合開始剤等を供給することによって、前記(メタ)アクリル単量体等のビニル単量体をラジカル重合させビニル樹脂(b3−2)を製造する。
【0154】
これにより、前記ウレタン樹脂(b3−1)粒子中に前記ビニル樹脂(b3−2)の一部または全部が内在した複合樹脂粒子が、水性媒体に分散したプライマーを製造することができる。
【0155】
前記複合樹脂粒子を製造する際、前記ウレタン樹脂(b3−1)が高粘度であるため作業性に優れない場合には、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、アセトン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等の通常の有機溶剤、反応性希釈剤を使用することができる。特に、前記反応性希釈剤として、前記ビニル重合体(b3−2)の製造に使用可能な(メタ)アクリル単量体等のビニル単量体を使用することが、脱溶剤工程の省略によるプライマーの生産効率の向上を図るうえで好ましい。
【0156】
また、前記プライマーに使用可能な樹脂としては、前記したもののほかに、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等を使用することができる。
【0157】
前記プライマーに使用可能な樹脂としては、前記したものを適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、前記ウレタン樹脂(b1)とビニル樹脂(b2)とウレタン−ビニル複合樹脂(b3)とのうちの2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、前記ウレタン樹脂(b1)として、ポリエーテル構造含有ウレタン樹脂とポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂とを組み合わせて使用することができる。
【0158】
前記プライマーとしては、前記ウレタン樹脂(b1)と前記ビニル樹脂(b2)とを組み合わせて使用することもできる。かかる組み合わせで使用する場合には、前記ウレタン樹脂(b1)と前記ビニル樹脂(b2)とが[(b1)/(b2)]=90/10〜10/90の範囲で含むことが好ましく、70/30〜10/90となる範囲で使用することが好適である。
【0159】
前記プライマーに含まれる樹脂としては、前記したとおり、架橋性官能基を有するものを使用することができる。
【0160】
前記架橋性官能基は、第一のプライマー層(B−1)中に架橋構造を形成することで、にじみ等を引き起こすことなく、密着性や導電性に優れた導電層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)を形成するうえで好適に使用することができる。
【0161】
前記架橋性官能基としては、例えばアルコキシシリル基、シラノール基、アミノ基、水酸基が挙げられる。
【0162】
前記アルコキシシリル基またはシラノール基を有する樹脂を使用した場合、前記アルコキシシリル基やシラノール基は、プライマーの溶媒である水性媒体中で加水分解縮合し、架橋構造を形成する。架橋構造の形成したプライマーを支持体表面に塗布し乾燥等することで、前記導電層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)を形成しうる流動体(c−1)を塗布する前において、既に架橋構造の形成した第一のプライマー層(B−1)を形成する。
【0163】
また、前記架橋性官能基としては、概ね100℃以上、好ましくは120℃以上に加熱することによって架橋性官能基間または後述する架橋剤等と架橋反応し、前記架橋構造を形成しうるものを使用することもでき、具体的には、メチロールアミド基及びアルコキシメチルアミド基からなる群より選ばれる1種以上の熱架橋性官能基を使用することが好ましい。
【0164】
前記アルコキシメチルアミド基としては、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等が窒素原子に結合し形成したアミド基が挙げられ、なかでも、メチロールアミド基及びアルコキシメチルアミド基からなる群より選ばれる1種以上を有するものを使用することが、第一のプライマー層(B−1)の耐久性や、各種支持体への密着性を大幅に向上するうえで好ましい。
【0165】
前記したような、概ね100℃以上、好ましくは120℃程度に加熱することによって架橋反応しうる官能基を備えた樹脂を含むプライマーを使用した場合、前記プライマーを支持体表面に塗布し乾燥する際の温度は、100℃未満であることが好ましい。これにより、実質的に架橋構造を有さないプライマー層を形成することができる。
【0166】
前記架橋構造を有さないプライマー層に前記流動体(c−1)を塗布(印刷)した後に、100℃以上の温度で、加熱工程、または、前記加熱工程とは別に加熱等することによって、架橋構造を備えたプライマー層を形成することもできる。
【0167】
このように、前記流動体(c−1)を塗布した後に、第一のプライマー層(B−1)中に架橋構造を形成することによって、後述するめっき処理工程において、強アルカリまたは強酸性物質からなるめっき薬剤に晒された場合であっても、支持体からの第一のプライマー層(B−1)の剥離を引き起こすことのない、格段に優れた耐久性を備えた導電性パターンを形成することができる。なお、前記「実質的に架橋構造を有さない」とは、前記架橋構造が全く形成されていない態様を含むとともに、前記架橋構造を形成しうる官能基数の約5%以内が部分的に架橋構造を形成したものを指す。
【0168】
前記架橋性官能基は、前記プライマーに使用する樹脂の全量に対して、合計0.005当量/kg〜1.5当量/kgの範囲で含むことができる。
【0169】
また、前記プライマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて架橋剤をはじめ、pH調整剤、被膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等公知のものを適宜添加して使用してもよい。
【0170】
前記架橋剤としては、例えば金属キレート化合物、ポリアミン化合物、アジリジン化合物、金属塩化合物、イソシアネート化合物等の、概ね25℃〜100℃未満の比較的低温で反応し架橋構造を形成しうる熱架橋剤(x1−1)や、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、及び、ブロックイソシアネート化合物からなる群より選ばれる1種以上等の概ね100℃以上の比較的高温で反応し架橋構造を形成しうる熱架橋剤(x1−2)や、各種光架橋剤を使用することができる。
【0171】
前記熱架橋剤(x1−1)を含むプライマーであれば、例えばそれを支持体表面に塗布し、比較的低温で乾燥し、次いで、前記流動体(c−1)を塗布(印刷)した後に、100℃未満の温度に加温し架橋構造を形成することで、長期にわたる熱や外力の影響によらず導電性物質の欠落を防止可能なレベルの、格段に優れた耐久性を備えた導電性パターンを形成することができる。
【0172】
一方、前記熱架橋剤(x1−2)を含むプライマーであれば、例えばそれを支持体表面に塗布し、常温(25℃)〜概ね100℃未満の低温で乾燥することで、架橋構造を形成していないプライマー層を形成し、次いで、前記流動体(c−1)を塗布した後に、例えば150℃以上、好ましくは200℃以上の温度で加熱し架橋構造を形成することで、長期間にわたる熱や外力等の影響によらず、導電性物質の剥離等を引き起こさないレベルの格段に優れた耐久性を備えた導電性パターンを得ることができる。
【0173】
ただし、支持体として比較的熱に弱いポリエチレンテレフタレート等からなる支持体を用いる場合には、前記支持体の変形等を防止する観点から、概ね150℃以下、好ましくは120℃以下の温度で加熱することが好ましいため、前記架橋剤としては、前記熱架橋剤(x1−2)ではなく、前記熱架橋剤(x1−1)を使用することが好ましい。
【0174】
前記熱架橋剤(x1−1)に使用可能な金属キレート化合物としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトン配位化合物、アセト酢酸エステル配位化合物等を使用することができ、アルミニウムのアセチルアセトン配位化合物であるアセチルアセトンアルミニウムを使用することが好ましい。
【0175】
また、前記熱架橋剤(x1−1)に使用可能なポリアミン化合物としては、例えばトリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン等の3級アミンを使用することもできる。
【0176】
また、前記熱架橋剤(x1−1)に使用可能なアジリジン化合物としては、例えば2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等を使用することができる。
【0177】
また、前記架橋剤(x1−1)として使用可能な金属塩化合物としては、例えば硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物等のアルミニウム含有化合物、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン等の水溶性金属塩を使用することができる。
【0178】
前記熱架橋剤(x1−1)に使用可能なイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートや、それらを用いて得られるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物や、それらとトリメチロールプロパン等とからなるアダクト体、前記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどのポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネート基含有ウレタン等を使用することができる。なかでもヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等とのアダクト体、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等とのアダクト体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等とのアダクト体を使用することが好ましい。
【0179】
また、前記熱架橋剤(x1−2)に使用可能なメラミン化合物としては、例えばヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキレルオキシメチルメラミンあるいはこれらの2種を組み合わせた混合エーテル化メラミン等を使用することができる。なかでも、トリメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンを使用することが好ましい。市販品としては、ベッカミン M−3、APM、J−101(DIC(株)製)等を使用することができる。前記メラミン化合物は、自己架橋反応することによって架橋構造を形成することができる。
【0180】
前記メラミン化合物を使用する場合には、その自己架橋反応を促進するうえで、有機アミン塩等の触媒を使用してもよい。市販品としては、キャタリスト ACX、376等を使用することができる。前記触媒は、前記メラミン化合物の全量に対して概ね0.01質量%〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0181】
また、前記熱架橋剤(x1−2)に使用可能なエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類;1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン等のポリグリシジルアミン類;多価カルボン酸[蓚酸、アジピン酸、ブタントリカルボン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンゼントリカルボン酸等]のポリグリシジルエステル類;ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物のエチレンオキシド付加物等のビスフェノールA系エポキシ樹脂;フェノールノボラック樹脂、;側鎖にエポキシ基を有する各種ビニル系(共)重合体等を使用することができる。なかでも1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン等のポリグリシジルアミン類、グリセリンジグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、を使用することが好ましい。
【0182】
また、前記エポキシ化合物としては、前記したものの他に例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシランもしくはγ−グリシドキシプロピルトリイソプロぺニルオキシシラン等のグリシジル基含有シラン化合物を使用することもできる。
【0183】
また、前記熱架橋剤(x1−2)に使用可能なオキサゾリン化合物としては、例えば2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等を使用することができる。
【0184】
また、前記オキサゾリン化合物としては、例えば下記付加重合性オキサゾリンと、必要に応じてその他の単量体とを組み合わせて重合して得られるオキサゾリン基含有重合体を使用することもできる。
【0185】
前記付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を単独または2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを使用することが、工業的に入手し易いため好ましい。
【0186】
また、前記熱架橋剤(x1−2)に使用可能なカルボジイミド化合物としては、例えばポリ[フェニレンビス(ジメチルメチレン)カルボジイミド]やポリ(メチル−1,3−フェニレンカルボジイミド)等を使用することができる。市販品では、カルボジライトV−01、V−02、V−03、V−04、V−05、V−06(日清紡(株)製)、UCARLINK XL−29SE、XL−29MP(ユニオンカーバイド(株)製)等を使用することができる。
【0187】
また、前記熱架橋剤(x1−2)に使用可能なブロックイソシアネート化合物としては、前記熱架橋剤(x1−1)として例示したイソシアネート化合物の有するイソシアネート基の一部または全部が、ブロック化剤によって封止されたものを使用することができる。
【0188】
前記ブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ホルムアミドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジフェニルアニリン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等を使用することができる。
【0189】
前記ブロックイソシアネート化合物としては、水分散型の市販品としてエラストロン BN−69(第一工業製薬(株)製)等を使用することができる。
【0190】
前記架橋剤を使用する場合、前記プライマーに含まれる樹脂としては、前記架橋剤の有する架橋性官能基と反応しうる基を有するものを使用することが好ましい。具体的には、前記(ブロック)イソシアネート化合物やメラミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物を架橋剤として使用するとともに、前記樹脂として水酸基やカルボキシル基を有する樹脂を使用することが好ましい。
【0191】
前記架橋剤は、種類等によって異なるものの、通常、前記プライマーに含まれる樹脂の合計質量100質量部に対して0.01質量%〜60質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1質量%〜10質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲で使用することが、密着性や導電性に優れ、かつ、前記耐久性に優れた導電性パターンを形成できるため好ましい。
【0192】
また、前記架橋剤は、本発明のプライマーを支持体表面に塗工又は含浸する前に、予め添加して使用することが好ましい。
【0193】
また、前記添加剤としては、無機粒子等の各種充填材を使用することもできる。しかし、本発明のプライマーとしては、前記充填材等の使用量はできるだけ少ないことが好ましく、本発明のプライマーの全量に対して5質量%以下であることがより好ましい。
【0194】
前記添加剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定しないが、プライマー中の不揮発分の全量に対して0.01質量%〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0195】
前記したプライマーを、前記支持体の表面の一部または全部に塗布する方法としては、例えばグラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式等の方法が挙げられる。
【0196】
前記方法でプライマーを塗布した後、その塗布層に含まれる溶剤を除去する方法としては、例えば乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ支持体に悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0197】
支持体上への前記プライマーの塗布量は、優れた密着性と導電性を付与する観点から、第一のプライマー層(B−1)の厚さが前記した好ましい範囲内となるよう調整することが好ましい。
【0198】
また、前記第一のプライマー層(B−1)の表面に、第一の導電層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)を積層する方法としては、流動体(c−1)を、前記第一のプライマー層(B−1)の表面に塗布し乾燥する方法が挙げられる。
【0199】
前記導電層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)の形成に使用可能な流動体(c−1)としては、前記導電性物質と、必要に応じて溶媒や添加剤を含有するものであって、一般に導電性インクやめっき核剤に使用できるものが挙げられる。
【0200】
前記導電性物質としては、遷移金属やその化合物を使用することができる。なかでもイオン性の遷移金属を使用することが好ましく、例えば銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等の遷移金属を使用することが好ましく、銅、銀、金等を使用することが、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンを形成できるのでより好ましく、銀を使用することがさらに好ましい。
【0201】
また、前記流動体(c−1)をめっき核剤に使用する場合、前記導電性物質として前記したような遷移金属からなる金属粒子をはじめ、前記遷移金属の酸化物や有機物によって表面被覆されたものを1種類以上使用することができる。
【0202】
前記遷移金属の酸化物は、通常、不活性(絶縁)な状態であるが、例えばジメチルアミノボラン等の還元剤を用いて処理することによって金属を露出させ、活性(導電性)を付与することが可能となる。
【0203】
また、前記有機物によって表面被覆された金属としては、乳化重合法等によって形成した樹脂粒子(有機物)中に金属を内在させたものが挙げられる。これらは、通常、不活性(絶縁)な状態であるが、例えばレーザー等を用いて前記有機物を除去することによって、金属を露出させ、活性(導電性)を付与することが可能となる。
【0204】
前記導電性物質としては、概ね1nm〜100nm程度の平均粒子径を有する粒子状のものを使用することが好ましく、1nm〜50nmの平均粒子径を有するものを使用することが、マイクロメータオーダーの平均粒子径を有する導電性物質を用いる場合と比較して、微細な導電性パターンを形成でき、焼成後の抵抗値をより低減できることからより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記導電性物質を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製ナノトラックUPA−150を用いることができる。
【0205】
前記導電性物質は、前記流動体(c−1)の全量に対して、5質量%〜90質量%の範囲で含むものを使用することが好ましく、10質量%〜60質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0206】
また、前記流動体(c−1)は、塗布のしやすさ等を向上する観点から溶媒を含むものが好ましい。前記溶媒としては、有機溶剤や水性媒体を使用することができる。
【0207】
前記溶媒としては、例えば蒸留水やイオン交換水、純水、超純水等の水性媒体をはじめ、アルコール、エーテル、エステル及びケトン等の有機溶剤を使用することができる。
【0208】
前記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等を使用することができる。
【0209】
また、前記流動体(c−1)には、前記導電性物質や溶媒とともに、例えばエチレングリコールやジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、イソプレングリコール等を使用することもできる。
【0210】
前記流動体(c−1)としては、概ね25℃におけるB型粘度計で測定した粘度が0.1mPa・s〜500,000mPa・s、好ましくは0.5mPa・s〜10,000mPa・sである液状または粘稠液状のものを使用することが好ましい。前記流動体(c−1)を、前記インクジェット印刷法等の方法によって塗布(印刷)する場合には、その粘度が概ね5mPa・s〜20mPa・sの範囲のものを使用することが好ましい。
【0211】
前記流動体(c−1)を塗布する方法としては、例えばインクジェット印刷法、電界インクジェット法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、ディスペンサー法等が挙げられる。
【0212】
なかでも、前記流動体(c−1)を用いて、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる概ね0.01μm〜100μm程度の細線状の、前記導電層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)を形成する場合には、インクジェット印刷法、反転印刷法によって前記流動体(c−1)を塗布することが好ましい。
【0213】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを使用することができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタIJ株式会社製)や、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−2831(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0214】
前記流動体(c−1)を前記方法で塗布した後に行う乾燥方法としては、前記流動体(c−1)中に含まれる金属等の導電性物質間を接合し、導電性層(C)またはそれを構成する第一のめっき核層(C−1)を形成することを目的として、前記塗布物を焼成する方法がある。前記焼成は、概ね80℃〜300℃の範囲で、概ね2分〜200分程度行うことが好ましい。前記焼成は大気中で行っても良いが、前記金属の酸化を防止する観点から、焼成工程の一部または全部を還元雰囲気下で行っても良い。
【0215】
また、前記焼成工程は、例えばオーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、熱ロール、レーザー照射、フォトシンタリング(光焼成)、光パルス照射、マイクロウェーブ等を用いて行うことができる。
【0216】
前記流動体(c−1)を塗布し焼成することによって形成可能な第一のめっき核層(C−1)の表面の一部または全部は、酸化処理が施されていてもよい。具体的には、前記第一のめっき核層(C−1)の表面をコロナ処理等のプラズマ放電処理が施されていてもよい。
【0217】
前記プラズマ放電処理は、特に限定されるものではなく、例えばコロナ放電処理法等の常圧プラズマ放電処理法や、真空または減圧下で行うグロー放電処理法及びアーク放電処理法等の真空プラズマ放電処理法によってなされる処理である。
【0218】
前記常圧プラズマ放電処理法としては、酸素濃度が概ね0.1質量%〜25質量%程度の雰囲気下でプラズマ放電処理する方法である。本発明では、とりわけ前記プラズマ放電処理を好ましくは10質量%〜22質量%の範囲、より好ましくは空気中(酸素濃度が約21質量%)で行うコロナ放電処理法を採用することが、優れた密着性を付与するうえで好ましい。
【0219】
また、前記常圧プラズマ放電処理法は、前記酸素とともに不活性ガスを含む環境下で行うことが、前記第一のめっき核層(C−1)の表面に過剰な凹凸を付与することなく、より一層優れた密着性を付与できるため好ましい。前記不活性ガスとしては、アルゴンや窒素等を使用することができる。
【0220】
前記常圧プラズマ放電処理法によって処理する際には、例えば、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ処理装置(AP−T01)等を使用することができる。
【0221】
前記常圧プラズマ放電処理法によって処理する際には、空気等のガスの流量として、概ね5リットル/分〜50リットル/分の範囲で行うことが好ましい。また、出力としては、概ね50W〜500Wの範囲であることが好ましい。また、プラズマによって処理する時間は、概ね1秒〜500秒の範囲であることが好ましい。
【0222】
前記常圧プラズマ放電処理法としては、具体的には、前記コロナ放電処理法を採用することが好ましい。前記コロナ放電処理法を採用する場合には、例えば、春日電機株式会社製のコロナ表面改質評価装置(TEC−4AX)等を使用することができる。
【0223】
前記コロナ放電処理法によって処理する際には、出力として、概ね5W〜300Wの範囲で行うことが好ましい。また、コロナ放電処理する時間は、概ね0.5秒〜600秒の範囲であることが好ましい。
【0224】
また、前記積層体を製造する際に経ることができる工程[2]は、前記第一のめっき核層(C−1)の表面の一部または全部をめっき処理し、第一のめっき層(C−2)を積層することによって、前記第一のめっき核層(C−1)と第一のめっき層(C−2)とから構成される導電層(C)を形成する工程である。
【0225】
前記めっき処理法としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等の乾式めっき法や、無電解めっき法、電気めっき法等の湿式めっき法、または、これらめっき法を2つ以上組み合わせる方法が挙げられる。
【0226】
上記めっき処理法で形成された第一のめっき層(C−2)は、前記第一のめっき核層(C−1)の表面に対して優れた密着性を有する。なかでも、前記前記第一のめっき核層(C−1)の表面に対し、電気めっき法によって形成された第一のめっき層(C−2)は、特に優れた密着性を発現することができる。
【0227】
前記乾式めっき処理工程としては、スパッタリング法や真空蒸着法等を使用することができる。前記スパッタリング法は、真空中で不活性ガス(主にアルゴン)を導入し、第一のめっき層(C−2)形成材料に対してマイナスイオンを印加してグロー放電を発生させ、次いで、前記不活性ガス原子をイオン化し、高速で前記めっき層(C−2)形成材料の表面にガスイオンを激しく叩きつけ、めっき層(C−2)形成材料を構成する原子や分子を弾き出し勢いよく前記第一のめっき核層(C−1)の表面に付着させることによりめっき層(C−2)を形成する方法である。
【0228】
前記めっき層(C−2)形成材料としては、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au),ニッケル−クロム(Ni−Cr)、SUS、銅−亜鉛(Cu−Zn)、ITO、SiO
2、TiO
2、Nb
2O
5、ZnO等を使用することができる。
【0229】
前記スパッタリング法によりめっき処理する際には、例えばマグネトロンスパッタ装置等を使用することができる。
【0230】
また、前記真空蒸着法は、真空中で、めっき層(C−2)形成材料である各種金属や金属酸化物を加熱して、それらを溶融、蒸発、昇華させ、前記第一のめっき核層(C−1)の表面に前記金属原子や分子を付着させることによってめっき層(C−2)を形成する方法である。
【0231】
前記真空蒸着法で使用可能なめっき層(C−2)の形成材料としては、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)、錫(Sn)、インジウム(In)、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2等を使用することができる。
【0232】
また、前記めっき処理法として使用可能な無電解めっき処理法は、例えば前記第一のめっき核層(C−1)を構成するパラジウムや銀等の導電性物質に、無電解めっき液を接触させることで、前記無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(被膜)を形成する方法である。
【0233】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属からなる導電性物質と、還元剤と、水性媒体や有機溶剤等の溶媒とを含むものを使用することができる。
【0234】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール類等を使用することができる。
【0235】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸等の有機酸、これらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアミン等の錯化剤を含むものであってもよい。
【0236】
前記無電解めっき液を使用する際の前記無電解めっき液の温度は、概ね20℃〜98℃の範囲であることが好ましい。
【0237】
また、前記めっき処理法として使用可能な電気めっき処理法は、例えば前記第一のめっき核層(C−1)を構成する導電性物質、または、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(被膜)の表面に、電気めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電気めっき液中に含まれる銅等の金属を、負極に設置した前記第一のめっき核層(C−1)を構成する導電性物質または前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(被膜)の表面に析出させ、電気めっき被膜(金属被膜)を形成する方法である。
【0238】
前記電気めっき液としては、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属や、それらの硫化物等と、硫酸等と、水性媒体とを含むものを使用することができる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含むもの等を使用することができる。
【0239】
前記電気めっき液を使用する際の前記電気めっき液の温度は、概ね20℃〜98℃の範囲であることが好ましい。
【0240】
上記電気めっき処理法では、毒性の高い物質を用いることなく、作業性がよいため、電気めっき法によって銅からなる層を形成することが好ましい。
【0241】
また、前記積層体を製造する際に経ることができる工程[3]は、前記工程[2]で形成された前記第一のめっき層(C−2)の表面の一部または全部に、絶縁層(D)を積層する工程である。
前記絶縁層(D)を積層する方法としては、前記第一のめっき層(C−2)の表面の一部または全部に、予め成形された絶縁フィルムまたは絶縁シートを、接着剤等を用いて接着する方法が挙げられる。
また、前記絶縁層(D)を積層する方法としては、絶縁層(D)を形成可能な樹脂組成物(d)を塗布し、乾燥等する方法が挙げられる。
予め成形された絶縁フィルムまたは絶縁シートとしては、例えばTFA−5602525(京セラケミカル株式会社製、ポリイミドフィルム、絶縁層の厚さ12μm、接着層の厚さ20μm)、NICAFLEX CISA2535(ニッカン工業株式会社製、ポリイミドフィルム、絶縁層の厚さ25μm、接着剤の厚さ35μm)、ABF−GX3(味の素ファインテクノ株式会社製、エポキシ系フィルム)、CT−F(株式会社クラレ製、液晶ポリマーフィルム、絶縁層の厚さ25μm)、BIAC−FILM(株式会社プライマテック製、液晶ポリマーフィルム 絶縁層の厚さ25μm)等からなるフィルムまたはシートを使用することができる。
また、前記絶縁層(D)の形成に使用可能な前記樹脂組成物(d)としては、例えばポリイミドワニス等を含有する樹脂組成物を使用することができる。
【0242】
前記樹脂組成物(d)を、少なくとも前記第一の導電層(C)の表面の一部または全部に塗布する方法としては、例えばグラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式等の方法が挙げられる。
【0243】
前記方法で樹脂組成物(d)を塗布した後、その塗布層に含まれる溶剤を除去する方法としては、例えば乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ支持体に悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0244】
また、前記工程[2]で得られたものが、第一プライマー層(B−1)の表面の一部に第一の導電層(C)を有するものである場合、前記樹脂組成物(d)は、前記第一の導電層(C)だけでなく前記プライマー層(B−1)の表面に塗布され、絶縁層(D)を形成してもよい。
【0245】
前記樹脂組成物(d)の塗布量は、前記第一の導電層(C)と、第二の導電層(E)との絶縁性及び前記積層体の薄型化を両立するうえで、絶縁層(D)の厚さが前記した好ましい範囲内となるよう調整することが好ましい。
【0246】
また、前記積層体を製造する際に経ることができる工程[4]は、前記工程[2]で形成された前記絶縁層(D)の一部または全部に、第二のプライマー層(B−2)を形成するプライマーを塗布し、その塗布面の一部または全部に、導電性物質を含有する流動体(e−1)を塗布することによって、前記絶縁層(D)と、第二のプライマー層(B−2)と、第二のめっき核層(E−1)とを積層する工程である。
前記絶縁層(D)の一部または全部に第二のプライマー層(B−2)を形成する際に使用可能なプライマーとしては、前記第一のプライマー層(B−1)を形成する際に使用可能なプライマーとして例示したものと同様のものを使用することができる。前記第一のプライマー層(B−1)と前記第二のプライマー層(B−2)は同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
第二のプライマー層(B−2)を形成する際に使用するプライマーの塗布方法、及び、プライマー層(B−2)の厚さ等もまた、前記第一のプライマー層(B−1)を形成する際に使用するプライマーの塗布方法及び厚さとして例示した方法及び範囲と、同様の方法及び範囲に調整することが好ましい。
前記方法で形成した第二のプライマー層(B−2)に、第二の導電層(E)を構成する第二のめっき核層(E−1)を積層する方法としては、導電性物質を含有する流動体(e−1)を、前記プライマー層(B−2)の一部または全部に塗布し乾燥する方法が挙げられる。
【0247】
前記流動体(e−1)としては、前記第一の導電層(C)の形成に使用可能なものとして例示した流動体(c−1)と同様のものを使用することができる。また、前記流動体(e−1)を塗布及び乾燥する方法もまた、前記流動体(c−1)を塗布及び乾燥する方法と同様の方法を採用することができる。
【0248】
本発明では、前記流動体(c−1)及び流動体(e−1)として同一組成のものを使用してもよく、異なる組成のものを使用してもよい。前記流動体(c−1)及び流動体(e−1)として同一組成のものを用いることによって、前記流動体に適した調整がなされた塗布装置を使用でき、本発明の積層体の生産効率を向上できるため、同一組成のものを使用することが好ましい。
【0249】
また、前記積層体を製造する際に経ることができる工程[5]は、前記第二のめっき核層(E−1)の表面の一部または全部をめっき処理することによって、前記第二のめっき核層(E−1)の表面に前記第二のめっき層(E−2)が積層した第二の導電層(E)を形成する工程である。
【0250】
前記第二のめっき層(E−2)を積層するめっき処理法としては、前記第一のめっき層(C−2)を積層するための方法として例示しためっき処理法と、同一の方法を採用することができる。
【0251】
前記方法で得られた積層体は、導電性パターンとして使用することが可能である。具体的には、銀インク等を用いた電子回路の形成、有機太陽電池や電子書籍端末、有機EL、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、RFID等を構成する各層や周辺配線の形成、プラズマディスプレイの電磁波シールドの配線等を製造する際の導電性パターン、より具体的には回路基板の形成に好適に使用することが可能である。その際、前記積層体を構成する第一の導電層(C)と第二の導電層(E)とは、他の配線等によって接続されていてもよく、それぞれ独立して回路を形成してもよい。また、前記積層体の一部に切削等の加工を施し、前記流動体を塗布等することによって、第一の導電層(C)と第二の導電層(E)とを接続してもよい。
【0252】
前記積層体を導電性パターンに使用する場合、形成しようとする所望のパターン形状に対応した位置に、前記第一の導電層(C)及び前記第二の導電層(E)を形成しうる流動体を塗布し焼成等することによって、所望のパターンを備えた導電性パターンを製造することができる。
【0253】
前記方法で得られた導電性パターン等の積層体は、各層間の剥離等を引き起こすことなく、良好な通電性を維持可能で、薄型であることから、例えば有機太陽電池、電子書籍端末、有機EL、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、非接触ICカード等のRFID等を構成する電子回路の形成、プラズマディスプレイの電磁波シールドの配線等のうち、特に耐久性の求められる用途に好適に使用することができる。特に、前記めっき処理の施された導電性パターンは、長期間にわたり断線等を引き起こすことなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成できることから、例えば、一般に銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)といわれ、フレキシブルプリント基板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)、チップオンフィルム(COF)、及びプリント配線板(PWB)等の用途に使用することが可能である。
【実施例】
【0254】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0255】
[合成例1]ウレタン樹脂(Y−1)の水分散体の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール100質量部(1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール、水酸基当量1000g/当量)と2,2―ジメチロールプロピオン酸17.4質量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール21.7質量部とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート106.2質量部とを、メチルエチルケトン178質量部中で混合し反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0256】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にトリエチルアミンを13.3質量部加えることで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水277質量部を加え十分に攪拌することにより、中和され形成したカルボキシレート基を有するウレタン樹脂の水分散体を得た。
【0257】
次いで、前記水分散液に、25質量%のエチレンジアミン水溶液を8質量部加え、攪拌した後、粒子状のポリウレタン樹脂を鎖伸長させ、次いでエージング・脱溶剤することによって、固形分濃度30質量%のウレタン樹脂(Y−1)の水分散体を得た。ここで得られたウレタン樹脂は、酸価が30、重量平均分子量が55,000であった。
【0258】
[合成例2]ビニル重合体(Y−2)の水分散体の調製
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、脱イオン水115質量部、ラテムルE−118B(花王株式会社製、有効成分25質量%)4質量部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。
【0259】
撹拌下、反応容器中に、メタクリル酸メチル46質量部、アクリル酸n−ブチル45質量部、メタクリル酸2質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5質量部及びN−メチロールアクリルアミド2質量部を含有するビニル単量体混合物と、アクアロンKH−1025(第一工業製薬株式会社製:有効成分25質量%)4質量部と脱イオン水15質量部とを混合して得られたモノマープレエマルジョンの一部(5質量部)を添加し、続いて過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。
【0260】
次いで、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(114質量部)と、過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1.0質量%)30質量部とを、各々別の滴下漏斗を使用して、180分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて60分間撹拌した。
【0261】
前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、反応容器中の水分散体のpHが8.5になるようにアンモニア水(有効成分10質量%)を使用した。
【0262】
次いで、不揮発分が20質量%になるように脱イオン水を使用した後、架橋剤としてトリメトキシメチロールメラミン水溶液(DIC株式会社製、ベッカミンM−3)を、前記水分散体の不揮発分に対して3質量%添加し、200メッシュ濾布で濾過することによって、カルボキシル基及びN−メチロールアクリルアミド基を有するビニル重合体(Y−2)の水分散体を得た。
【0263】
[合成例3]ウレタン−アクリル複合樹脂(Y−3)の水分散体の調製
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水280質量部、合成例1で得たウレタン樹脂(Y−1)の水分散体333質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。
【0264】
80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、コア層を構成するビニル重合体を得るべく、メタクリル酸メチル48質量部、アクリル酸n−ブチル44質量部及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル8質量部を含む単量体混合物と、過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:0.5質量%)20質量部とを別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80±2℃に保ちながら120分間かけて滴下し重合した。
【0265】
滴下終了後、同温度にて60分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、次いで、不揮発分が20質量%になるように脱イオン水を使用した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、前記ウレタン樹脂からなるシェル層と、カルボキシル基を有するビニル重合体からなるコア層とによって構成されるウレタン−アクリル複合樹脂(Y−3)の水分散体を得た。
【0266】
[合成例4]ウレタン−アクリル複合樹脂(Y−4)の水分散体の調製
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水280質量部、合成例1で得たウレタン樹脂(Y−1)の水分散体333質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。
【0267】
80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、コア層を構成するビニル重合体を得るべく、メタクリル酸メチル46質量部、アクリル酸n−ブチル38質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8質量部及びN−n−ブトキシメチルアクリルアミド8質量部を含有する単量体混合物と、過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:0.5質量%)20質量部を別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80±2℃に保ちながら120分間かけて滴下し重合した。
【0268】
滴下終了後、同温度にて60分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、次いで、不揮発分が20質量%になるように脱イオン水を使用した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、前記ウレタン樹脂からなるシェル層と、N−n−ブトキシメチル基を有するビニル重合体からなるコア層とによって構成されるウレタン−アクリル複合樹脂(Y−4)の水分散体を得た。
【0269】
[合成例5]ポリイミドワニス(Y−5)の調製
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン410g(1モル)、及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物192g(0.98モル)をN−メチルピロリドン3400g中で、室温で8時間反応させることによって、ポリイミドワニス(Y−5)を得た。
【0270】
[実施例1]
合成例1で得たウレタン樹脂(Y−1)の水分散体をプライマーとして使用し、それをプライマー層の膜厚が1μmになるように、コロナ処理したポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製Kapton150EN−C,厚さ37.5μm)からなる支持体の表面に、スピンコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で3分間乾燥することによって、前記支持体上に、架橋構造を形成していないプライマー層を備えた積層体を得た。
【0271】
前記架橋前のプライマー層の表面に、後述する流動体1をインクジェット印刷機(コニカミノルタIJ株式会社製インクジェット試験機EB100、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pl)を用いて、線幅100μm、膜厚0.5μmの線を、
図1の符号2に示す逆コの字型に印刷し、その端部に、BSPプローブを接続可能な2mm角のタブを設置し、次いで150℃の条件下で30分間焼成することによって、支持体からなる層の表面に、架橋構造を形成したプライマー層と、第一の導電層を構成する第一のめっき核層とが積層した。
【0272】
次に、前記第一のめっき核層の表面を陰極に設定し、含リン銅を陽極に設定し、硫酸銅を含む電気めっき液を用いて電流密度2A/dm
2で15分間電気めっきを行うことによって、前記第一のめっき核層の表面に、厚み8μmの第一の銅めっき層が積層し第一の導電層を形成し積層体(I)を得た。前記電気めっき液としては、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、トップルチナSF(奥野製薬工業株式会社製の光沢剤)5g/リットルを使用した。
次に、前記絶縁層を形成しうるNICAFLEX CISA2535(ニッカン工業株式会社製、絶縁層の厚さ25μm、接着剤の厚さ35μm)を、前記積層体(I)の第一のめっき層を含む表面に載置し、加圧温度が160℃を超えない範囲で、2MPa〜4MPaの範囲で加圧することによって、前記積層体(I)の表面に絶縁層を積層した。
【0273】
次に、第二のプライマー層を形成しうる樹脂組成物として合成例4で得たウレタン−アクリル複合樹脂(Y−4)の水分散体を用い、それを前記積層体を構成する絶縁層の表面に、スピンコーターを用いて塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で3分間乾燥することによって、前記絶縁層の表面に、第二のプライマー層が積層した積層体(II)を得た。
【0274】
次に、前記積層体(II)の第二のプライマー層の表面に、後述する流動体1をインクジェット印刷機(コニカミノルタIJ株式会社製インクジェット試験機EB100、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pl)を用いて、線幅100μm、膜厚0.5μmの線を
図2の符号2に示すコの字型に印刷し、その端部に、BSPプローブを接続可能な2mm角のタブを設置し、次いで150℃の条件下で30分間焼成することによって、支持体からなる層と第一のプライマー層と第一の導電層と絶縁層と第二のプライマー層と第二のめっき核層とが積層した積層体(III)を得た。
【0275】
次に、前記積層体(III)を構成する前記第二のめっき核層の表面を陰極に設定し、含リン銅を陽極に設定し、硫酸銅を含む電気めっき液を用いて電流密度2A/dm
2で15分間電気めっきを行うことによって、前記第二のめっき核層の表面に、厚み8μmの第二の銅めっき層が積層した第二の導電層を形成した。前記電気めっき液としては、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、トップルチナSF(奥野製薬工業株式会社製の光沢剤)5g/リットルを使用した。
【0276】
前記方法によって、支持体からなる層と第一のプライマー層と第一の導電層と絶縁層と第二のプライマー層と第二の導電層とが積層した積層体(IV)を得た。前記積層体(IV)の一点鎖線23における断面図を
図3に示す。
【0277】
[実施例2]
合成例1で得たウレタン樹脂(Y−1)の水分散体の代わりに、合成例3で得たウレタン−アクリル複合樹脂(Y−3)の水分散体をプライマーとして使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、支持体からなる層と第一のプライマー層と第一の導電層と絶縁層と第二のプライマー層と第二の導電層とが積層した積層体を得た。
【0278】
[流動体1の調製]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール(数平均分子量2,000)20g、ピリジン8.0g及びクロロホルム20mlを含む混合物に、p−トルエンスルホン酸クロライド9.6gを含むクロロホルム(30ml)溶液を、氷冷撹拌しながら30分間滴下した後、浴槽温度40℃で4時間攪拌し、クロロホルム50mlを混合した。
【0279】
次いで、前記生成物を、5質量%塩酸水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和食塩水溶液100mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過、減圧濃縮し、ヘキサンで数回洗浄した後、濾過し、80℃で減圧乾燥することによって、p−トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコールを得た。
【0280】
前記p−トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール5.39g、ポリエチレンイミン(アルドリッチ社製、分子量25,000)20g、炭酸カリウム0.07g及びN,N−ジメチルアセトアミド100mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。
【0281】
次いで、酢酸エチルとヘキサンとの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)300mlを加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物を、酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)100mlを用いて洗浄した後、減圧乾燥することによって、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を得た。
【0282】
前記ポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を0.592g含む水溶液138.8gと、酸化銀10gとを混合し、25℃で30分間攪拌した。
【0283】
次いで、ジメチルエタノールアミン46gを攪拌しながら徐々に加え、25℃で30分間攪拌した。
【0284】
次いで、10質量%アスコルビン酸水溶液15.2gを攪拌しながら徐々に加え20時間攪拌を続けることによって銀の分散体を得た。
【0285】
前記銀の分散体にイソプロピルアルコール200mlとヘキサン200mlの混合溶剤を加え2分間攪拌した後、3000rpmで5分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にイソプロピルアルコール50mlとヘキサン50mlの混合溶剤を加えて2分間攪拌した後、3000rpmで5分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にさらに水20gを加えて2分間攪拌して、減圧下有機溶剤を除去した。さらに水10gを加えて攪拌分散した後、該分散体を−40℃の冷凍機に1昼夜放置して凍結し、これを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製 FDU−2200)で24時間処理することによって、灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなる銀含有紛体を得た。
【0286】
上記で得た銀含有粉体25.9gを、エチレングリコール45gとイオン交換水55gと混合し、3時間攪拌することによって、インクジェット印刷用の導電性インクに使用可能な流動体1を調製した(銀の含有割合20質量%、ポリエチレンイミンの質量割合1質量%、粘度10mPa・s)。
【0287】
[実施例3]
絶縁層を形成しうるNICAFLEX CISA2535(ニッカン工業株式会社製、絶縁層の厚さ25μm、接着剤の厚さ35μm)の代わりに、「TFA−5602525」は、京セラケミカル株式会社製のフィルム(絶縁層の厚さ12μm、接着層の厚さ20μm)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、支持体からなる層と第一のプライマー層と第一の導電層と絶縁層と第二のプライマー層と第二の導電層とが積層した積層体を得た。
【0288】
[実施例4]
絶縁層を形成する樹脂組成物として、NICAFLEX CISA2535(ニッカン工業株式会社製、絶縁層の厚さ25μm、接着剤の厚さ35μm)の代わりに、合成例5で得たポリイミドワニス(Y−5)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、支持体からなる層と第一のプライマー層と第一の導電層と絶縁層と第二のプライマー層と第二の導電層とが積層した積層体を得た。
【0289】
[実施例5]
第一のプライマー層を形成しうるプライマーとして、ウレタン−アクリル複合樹脂(Y−3)の水分散体の代わりに、合成例2で得たビニル重合体(Y−2)の水分散体を使用すること以外は、実施例3と同様の方法で、支持体からなる層と第一のプライマー層と第一の導電層と絶縁層と第二のプライマー層と第二の導電層とが積層した積層体を得た。
【0290】
[比較例1]
第一のプライマー層を設けないこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を製造することを試みた。
しかし、めっき工程中に第一の導電層が支持体から剥離し、導通の低下または断線を引き起こしたため、絶縁層、第二のプライマー層及び第二の導電層を形成しなかった。
【0291】
[比較例2]
第二のプライマー層を設けないこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を製造することを試みた。
しかし、第二の導電層が絶縁層から剥離し、第二の導電層の導通の低下または断線を引き起こした。
【0292】
[密着性の評価方法]
前記積層体を構成する第二の導電層の表面にセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製,CT405AP−24,24mm)を指で圧着した後、前記セロハン粘着テープを、前記積層体の表面に対して90度方向に剥離した。剥離したセロハン粘着テープの粘着面を目視で観察し、その付着物の有無に基づいて前記密着性を評価した。
【0293】
前記剥離したセロハン粘着テープの粘着面に、導電層や絶縁層やプライマー層を構成する成分が全く付着していなかったものを「A」、前記第二の導電層と粘着テープとが接触した面積に対して3%未満の範囲の第二の導電層が剥離し、粘着テープの粘着面に付着したものを「B」、前記第二の導電層と粘着テープとが接触した面積に対して3%以上30%未満の範囲の第二の導電層が剥離し、粘着テープの粘着面に付着したものを「C」、前記第二の導電層と粘着テープとが接触した面積に対して30%以上の範囲の第二の導電層が剥離し、粘着テープに付着したものを「D」と評価した。
【0294】
[耐湿熱試験後の密着性の評価方法]
実施例及び比較例で得た積層体を、温度85℃及び相対湿度85%の環境下に1000時間放置した。
【0295】
前記放置後の積層体を用いること以外は、前記[密着性の評価方法]に記載した方法と同一の方法で、その密着性を評価した。
【0296】
[導通性の評価方法(第一の導電層)]
ロレスタGP MCP T610型(三菱化学アナリティック社製の抵抗率計)を用い、前記積層体を構成する第一の導電層に接続した2つのタブにBSPプローブを接触させ、導通があるかを確認した。導通があったものを「A」、導通がなかったもの、または、導通せずめっき層を形成できなかったものを「D」と評価した。
【0297】
[耐湿熱試験後の導通性の評価方法(第一の導電層)]
実施例及び比較例で得た積層体を、温度85℃及び相対湿度85%の環境下に1000時間放置した。
【0298】
前記放置後の積層体を用いること以外は、前記[導通性の評価方法(第一の導電層)]に記載した方法と同一の方法で、その絶縁性を評価した。
【0299】
[導通性の評価方法(第二の導電層)]
ロレスタGP MCP T610型(三菱化学アナリティック社製の抵抗率計)を用い、前記積層体を構成するの第二の導電層に接続した2つのタブにBSPプローブを接触させ、導通があるかを確認した。導通があったものを「A」、導通がなかったもの、または、導通せずめっき層を形成できなかったものを「D」と評価した。
【0300】
[耐湿熱試験後の導通性の評価方法(第二の導電層)]
実施例及び比較例で得た積層体を、温度85℃及び相対湿度85%の環境下に1000時間放置した。
【0301】
前記放置後の積層体を用いること以外は、前記[導通性の評価方法(第二の導電層)]に記載した方法と同一の方法で、その絶縁性を評価した。
【0302】
[絶縁層の絶縁性の評価方法]
ロレスタGP MCP T610型(三菱化学アナリティック社製の抵抗率計)を用い、第一の導電層に接続した1つのタブにBSPプローブの一方を接触させ、他方のBSPプローブを第二の導電層に接続した1つのタブに接触させ、導通の有無を確認した。導通がなく、第一の導電層と第二の導電層との絶縁性が維持できていたものを「A」、導通があったものを「D」と評価した。
【0303】
[耐湿熱試験後の絶縁性の評価方法]
実施例及び比較例で得た積層体を、温度85℃及び相対湿度85%の環境下に1000時間放置した。
【0304】
前記放置後の積層体を用いること以外は、前記[絶縁層の絶縁性の評価方法]に記載した方法と同一の方法で、その絶縁性を評価した。
【0305】
【表1】
【0306】
【表2】
【0307】
表1及び表2中の「Kapton150EN−C」は、東レ・デュポン株式会社製のポリイミドフィルム(厚み37.5μm)を表す。「TFA−5602525」は、京セラケミカル株式会社製のフィルム(絶縁層の厚さ12μm、接着層の厚さ20μm)を表す。「NICAFLEX CISA 2535」は、ニッカン工業株式会社製のフィルム(絶縁層の厚さ25μm、接着剤層の厚さ35μm)を表す。