(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0016】
図1に示すように、実施の形態1における容器1は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料のブロー成形にて形成されたプラスチック容器であって、円筒状の胴部3と、胴部3よりも小径の筒状を呈し、胴部3の一端に連なる口部5とを備えている。この容器1では、口部5の先端に形成された開口7から胴部3内に飲料(内容物)を流入させたり、胴部3内の飲料を流出させることができる。
【0017】
胴部3に形成される座屈パターン事前体8は、捩りによる座屈現象の解析や実験に基づき形状が設定されたものであって、峰線9(9Aも含む)と、谷線10と、凸面11と、凹面12とを有している。
【0018】
図2の展開図に示すように、峰線9は、胴部3の周方向に間隔をおいて6本設けられており、それぞれ胴部3の高さ方向に延びている。谷線10は、隣り合う2つの峰線9毎に形成された結果、6本設けられており、それぞれ2つの峰線9の上下端を掛け渡すように胴部3の高さ方向に延びている。凸面11及び凹面12は、峰線9と谷線10との間に交互に形成されている。なお、峰線9や谷線10の設置数は、上記の6本に限らず、任意に設定され得る。
【0019】
峰線9及び谷線10は、これらの上端同士或いは下端同士を結ぶ胴部3の周回りの線S1,S2に対して、それぞれ傾斜角α,βをもって延びている(
図1では、峰線9が、線S2に対して傾斜角αをもって延び、谷線10が、線S2に対して傾斜角βをもって延びる状態を示す)。
【0020】
以上の構成を有する容器1は、捩りにより折り畳まれる胴部3の壁部分が、スナップスルー現象により折り返ることで体積が減少するとともに、胴部3の壁部分が折り返った後では、復元することなく、体積の減少した状態が安定するものである。以下、
図3〜5を参照して、実施の形態1における容器1の減容化手順について説明する。
【0021】
まず、容器1の両端部を把持して、容器1を軸回り(軸線G回り)に捩る。その結果、容器1は、
図3(a)の状態から
図3(b)の状態になる。
図3(b)の状態では、座屈パターン事前体8は座屈パターン13に変化しており、座屈パターン13では、峰線9及び谷線10に沿うしわS(9),S(10)が生じるとともに、しわS(9),S(10)を折目として凸面11及び凹面12が屈曲することで、径方向の凹凸が生じている。そして、座屈パターン事前体8が座屈パターン13に変化した結果、容器1は、軸方向に潰されて容積が減少している。
【0022】
図4は、
図3(b)のA−A線断面図である。座屈パターン13の発生位置における胴部3の内部は、屈曲した壁(凸面11及び凹面12に相当)によって輪郭が構成されており、本実施の形態1では、その断面が、六角形を呈している。
【0023】
そして、座屈パターン事前体8が座屈パターン13に変化した後においては、胴部3の他端側を一端側に向けて押し込む。この結果、胴部3に圧縮力が付加されて、座屈パターン13は、径方向内側に突出する山折り形状になる(
図5(a)参照)。
【0024】
そして、さらに胴部3の他端側を一端側に向けて押し込むと、座屈パターン13は、山折りの頂部13aが徐々に一端側に移動するように傾いていく。
図5(b)は、この傾斜の進行により、座屈パターン13の傾きが、胴部3の径方向と略平行になった状態を示している。
【0025】
そして、さらに胴部3の他端側を一端側に向けて押し込むと、座屈パターン13が、座屈パターン13の付根13b近傍の胴部3の壁によって内向きに押さえられる。この結果、座屈パターン13には、付根13bをヒンジとして反転しようとする力が働き、スナップスルー現象が生じる。すなわち、座屈パターン13は、付根13bをヒンジとして、頂部13aが徐々に一端側に向くように傾いていくことで、不安定な状態になった後、
図3(c),
図5(c)に示すように、軸方向一端側に折り返されて、安定状態に移行する。この折り返しにより、容器1は、さらに一層、容積が減少する。
【0026】
そして、座屈パターン13が折り返された後では、座屈パターン13は、付根13b近傍の胴部3の壁によって内向きに押さえられるため、折り返されたまま復元することなく、その状態が維持される。
【0027】
ここで本実施の形態1では、小さな捩り力で容器1を
図3(a)から
図3(b)へと変化させて潰せるように、座屈パターン事前体8の形状が設定されている。以下、この形状の設定方法について説明する。
【0028】
図6は、軸回りの捩りが加えられることで、円筒体にしわが発生した状態を示している。トルク荷重を徐々に増すように円筒体に軸回りの捩りを加えると、トルク荷重が小さい初期段階では、円筒体に変形は生じない。しかしながら、トルク荷重がある値(後述の臨界トルクや最大トルクに相当)に達すると、円筒体には、径方向の凹みである座屈セルCが周方向に略等間隔で生じて、この座屈セルCを起点として、径方向の凹凸変位であるしわSが高さ方向に延びる。すなわち、トルク荷重がある値に達したときには、エネルギー勾配が極値になることで、円筒体に座屈が生じて、数nや傾斜角のしわSが出現する。この際に現れるしわSの数nや傾斜角は、それまでに円筒体に蓄積された歪みエネルギーVbに応じて定まる。
【0029】
図7は、円筒体に蓄積される歪みエネルギーVbと、円筒体に生じるしわSの数nとの関係を例示している。
図7には、6の数のしわSを生じさせる歪みエネルギーVbsが、6以外の数のしわSを生じさせる歪みエネルギーVbに比して小さな円筒体についての曲線が示されている。この円筒体では、6の数のしわSを生じさせる歪みエネルギーVbsは、他の数のしわSを生じさせる歪みエネルギーVbに比して小さくなっており、歪みエネルギーVbがVbsに達したときには、エネルギー勾配が極値となって、しわSが生じて、その数は6になる。
【0030】
図8は、初期不整の有る円筒体と、初期不整の無い完全系の円筒体についてのトルク荷重Tと径方向の凹凸変位との関係を示している。初期不整とは、断面が真円ではない部位であって、本実施の形態の容器1(
図1参照)では、座屈パターン事前体8に相当する。
【0031】
しわSが生じるときに円筒体に蓄積されている歪みエネルギーVbs(
図7参照:以下、しわ発生時の歪みエネルギーVbs)は、捩りに抵抗する円筒体の耐力と比例する関係にあり、円筒体の耐力が小さいほど、しわ発生時の歪みエネルギーVbsも小さくなる。
【0032】
初期不整の無い完全系の円筒体は、臨界トルク(
図8参照)を超えるトルク荷重Tが加えられるまでは径方向の変位を生ぜず、トルク荷重Tが臨界トルクを超えた時から径方向の凹凸変位を生じるようになる。これに対して、初期不整の有る不完全系の円筒体は、トルク荷重Tが所定値に達するまでは、トルク荷重Tに比例した径方向の凹凸変位を生じる。そして、トルク荷重Tが所定値に達した時点において、円筒体に蓄積される歪みエネルギーVbがVbs(
図7参照)に達して、歪みエネルギーVbの勾配(或いは全ポテンシャルエネルギーの勾配)が極値となる。この場合において、円筒体には、径方向の凹凸変位としてのしわSが生じる。そして、トルク荷重Tが所定値を越えた以降では、単位荷重当たりの凹凸変位量が大きくなって、円筒体は、急激な凹凸変位を生じるようになる。上記の所定値は、最大トルク(
図8参照)と称され、この値により、不完全系の円筒体の捩りに抵抗する耐力を示すことができる。
【0033】
また、完全系の円筒体の捩りに抵抗する耐力は、上記の臨界トルクによって示すことができるが、上記不完全系の円筒体の最大トルクは、臨界トルクに比して小さい。このことから、初期不整を円筒体に設けた場合には、捩りに抵抗する耐力が小さくなることで、しわ発生時の歪みエネルギーVbs(
図7参照)も小さくなり、その結果、円筒体は、小さな捩り力で、座屈を起こし、しわSが周期的に生じるようになる。
【0034】
そして、円筒体にしわSが生じた時点から、さらに円筒体に付加するトルク荷重を増していくと、円筒体には、しわSを折目として壁が屈曲して径方向の凹凸が生じる。この際、凹凸の発生位置における円筒体の内部は、その断面形状が、先に生じていたしわSの数nや傾斜角λに応じて定められる(しわSの傾斜角λは、しわSの延びる方向が、円筒体の周方向に対して傾斜する角度である)。
【0035】
図9は、径方向の凹凸発生位置における内部の断面形状が異なる三つの円筒体についてのトルク荷重と径方向変位との関係を例示している。
図9には、断面が正七角形になる円筒体についての釣合い曲線と、断面が正五角形になる円筒体についての釣合い曲線と、断面が正六角形になる円筒体についての釣合い曲線とが示されている。
【0036】
上記の3つの円筒体は、それぞれ初期不整の有る不完全系の円筒体であって、これらの最大トルクは、それぞれ完全系の円筒体(初期不整以外の幾何学的条件が同一の円筒体)の臨界トルクに比して、小さくなっている。
【0037】
また、円筒体は、その幾何学的条件に応じて、凹凸発生位置における内部の断面形状が、任意の多角形に階層的に対称性が低下する「力学的な対称性の破れ」を生じるが、上記の3つの円筒体は、幾何学的条件としての初期不整の形状が異なっていたことから、凹凸の発生位置における断面形状に相違が生じたものとなっている。これら断面形状が異なる円筒体では、
図9に示すように、最大トルクの大きさが異なっており、最大トルクが小さな円筒体ほど、しわ発生時の歪みエネルギーVbs(
図7参照)が小さく、小さな捩り力で径方向の凹凸変位を生じ易い。
図9に示す例では、断面が正七角形になる円筒体、断面が正五角形になる円筒体、断面が正六角形になる円筒体の順に、最大トルク・しわ発生時の歪みエネルギーVbsが小さく、径方向の凹凸変位が生じ易い。
【0038】
以上に鑑み、本実施の形態1では、座屈パターン13(
図3(b)参照)の発生位置における胴部3の内部が、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが最小になる多角形断面となるように、峰線9及び谷線10の数や、峰線9及び谷線10の傾斜角α,β(
図1参照)が設定される。
【0039】
具体的には、以下の式1,2に基づき、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが最小になるときのしわSの数n
minやしわSの傾斜角λ
minが取得される。そして、軸回りの捩りが胴部3に加えられた際に、数n
minや傾斜角λ
minのしわSが生じるように、峰線9及び谷線10の数や傾斜角α,βが設定される。
【数1】
【数2】
【0040】
式1は、しわ発生時の歪みエネルギーVbsの算出式である。式2は、仮定されたしわSの数nやしわSの傾斜角λを入力値とするものであって、数nや傾斜角λのしわSが生じる状況下における(x,y)位置の径方向のたわみw(x,y)が算出される。式1,2において、Eは胴部3のヤング係数、νはポアソン比、Lは胴部3の高さ、Rは胴部3の半径、tは胴部3の壁厚であり、式2のA
iは、しわSの傾斜角λ等に応じて設定される未知係数である。また、式2では、べき数mの数値(1或いは2)を選択することで、容器の端部の支持条件(境界条件)を、単純支持と両端支持とのいずれかに設定することができる。
【0041】
式1,2によれば、式2により算出されるたわみw(x,y)が、式1に入力されることで、数nや傾斜角λのしわSが生じるときに、胴部3に蓄積されているしわ発生時の歪みエネルギーVbsが算出される。よって、式1の出力値が最小になるときの式2の入力値を求めることで、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが最小になるときのしわSの数n
minやしわSの傾斜角λ
minを取得することができる。
【0042】
本実施の形態1では、峰線9や谷線10の数や傾斜角α,βが、式1,2により取得される数n
minや傾斜角λ
minのしわSを生じさせるように設定された結果、座屈パターン13の発生位置における胴部3内部の断面形状は、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが最も小さくなる六角形(
図4参照)に調整されている。つまり、断面が他の多角形になる場合に比して、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが小さくなるように調整されている。このため、本実施の形態の容器1は、初期不整(座屈パターン事前体に相当)の無い完全系の容器や、異なる初期不整が設けられた他の不完全系の容器に比して、捩りに抵抗する耐力が小さい。より具体的には、容器1の最大トルクは、初期不整以外の幾何学的条件が同一である完全系の容器の臨界トルクや、他の不完全系の容器の最大トルクに比して小さい。これにより、容器1は、小さな捩り力で座屈パターン事前体8が座屈パターン13に変化して径方向の凹凸変位が生じるため、容易に潰され得る。なお、座屈パターン事前体8が座屈パターン13に変化した後では、容器1は、捩り力の増加に応じて、径が縮小していく。
【0043】
なお、式1,2によって取得されるしわSの数n
minやしわSの傾斜角λ
minは、胴部3の高さL、胴部3の半径R、胴部3の壁厚t、胴部3の材質に関する特性値(ヤング係数E・ポアソン比ν)に応じて異なる。よって本発明によれば、しわSの数n
minやしわSの傾斜角λ
minに基づき、峰線9及び谷線10の数や、峰線9及び谷線10の傾斜角α,βが設定されることで、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが最小になるときの胴部3内部の断面形状は、上記の六角形に限らず、任意の多角形に調整され得る。
【0044】
そして本実施の形態1では、より小さな捩り力で、容器1を潰すことができるように、座屈パターン13の発生位置における胴部3内部の断面形状が、さらに詳細に調整される。
【0045】
図10は、捩りにより径方向の凹凸が発生した位置における内部の断面形状が、六角形になる円筒体についてのトルク荷重と径方向変位との関係を例示している。
【0046】
断面形状が正多角形になる第1の円筒体と、断面形状が第1の円筒体と同じ角数の多角形になるものの、この多角形の辺の長さが不均一である第2の円筒体との最大トルクを比較すると、
図10の例に示すように、断面形状が不均一な多角形となる第2の円筒体は、断面形状が正多角形となる第1の円筒体に比して、最大トルクが小さく、小さな捩り力で径方向の凹凸変位を生じる。
【0047】
これに鑑み、本実施の形態では、不均一な多角形の断面形状を生じさせるように、座屈パターン事前体8のデザインが設定されている。すなわち、座屈パターン事前体8が備える6つの峰線9(
図2参照)のうち、一の峰線9Aの傾斜角αAは、6つの峰線9の傾斜角αの平均値に対して、5%以上14%以下の差をもって設定される。具体的には、峰線9Aの傾斜角αAは、60°に設定され、他の5つの峰線9の傾斜角αは、65°,66°,65°,63°,64°に設定されている。この設定によれば、6つの傾斜角αの平均値は、63.3°であり(63.3°=(65°+66°+65°+63°+60°+64°)/6)、この平均値に対して、峰線9Aの傾斜角αA(=60°)は、5.2%の差をもっている(5.2%=(63.3°−60°)/63.3°×100%)。
【0048】
この結果、
図4に示すように、座屈パターン13の発生位置における胴部3内部の断面形状は、辺の長さが不均一な六角形状に調整されている。これにより、本実施の形態1の容器1は、断面形状が正六角形になる場合に比して、最大トルクが小さく、小さな捩り力で潰される。
【0049】
なお、断面形状を不均一な多角形にするために、谷線10の傾斜角βを調整するようにしてもよい。この場合、座屈パターン事前体8が備える6つの谷線10(
図2参照)のうち、いずれか1つの谷線10の傾斜角βは、6つの谷線10の傾斜角βの平均値に対して、5%以上14%以下の差をもって設定される。
【0050】
次に、本発明の実施の形態2の容器20について、
図11〜15を参照して説明する。なお、
図11〜15において、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付している。
【0051】
図11に示すように、容器20では、胴部21が高さ方向の一端側になるにつれて径が拡大する筒状に形成されており、この胴部21の中央に、峰線9、谷線10、凸面11、及び凹面12を有する座屈パターン事前体22が形成されている。
【0052】
そして本実施の形態においても、式1,2により取得される数n
minや傾斜角λ
minのしわSを胴部21に生じさせるように、峰線9や谷線10の数や向きが設定されており、この結果、峰線9や谷線10は、5本ずつ設けられ、それぞれ胴部21の周回りの線S2(峰線9や谷線10の下端同士を結ぶ線)に対して傾斜角α,βをもって高さ方向に延びている。
【0053】
そして、一の峰線9Aの傾斜角αA(
図12参照)は、5つの峰線9の傾斜角αの平均値に対して、5%以上14%以下の差をもって設定される。具体的には、
図12に示すように、峰線9Aの傾斜角αAは、75.6°に設定され、他の5つの峰線9の傾斜角αは、それぞれ67.9°,67.9°,60.9°,61.8°に設定されている。この設定によれば、5つの傾斜角αの平均値は、66.8°であり(66.8°=(67.9°+75.6°+67.9°+60.9°+61.8°)/5)、この平均値に対して、峰線9Aの傾斜角αA(=75.6°)は、13.2%の差をもっている(13.2%=(75.6°−66.8°)/66.8°×100%)。
【0054】
図13は、実施の形態2における容器20の減容化手順を示す概略図である。
図13〜15を参照して、容器20が潰されていく過程について説明する。
【0055】
まず、容器20の両端部を把持して、容器20を軸回り(軸線G回り)に捩ると、容器20は、
図13(a)の状態から
図13(b)の状態に変化する。
図13(b)の状態では、座屈パターン事前体22が座屈パターン23に変化することで、胴部21に径方向の凹凸が生じており、この結果、容器20は、軸方向に潰されて、容積が減少している。
【0056】
図14は、
図13(b)のB−B線断面図であり、座屈パターン23の発生位置における胴部21の断面形状を示している。本実施の形態では、数n
minや傾斜角λ
minのしわSを生じさせるように、峰線9及び谷線10の数や、峰線9及び谷線10の傾斜角α,βが設定されることで、座屈パターン23の発生位置における胴部21内部の断面形状は、しわ発生時の歪みエネルギーVbsが最小となる五角形に調整されている。これにより、容器20は、最大トルク(捩りに抵抗する耐力)が小さく、小さな捩り力で、座屈パターン事前体22から座屈パターン23に変化して、径方向の凹凸変位を生じる。これにより、容器20は、容易に潰され得る。
【0057】
そして、峰線9Aの傾斜角αAが、5つの峰線9の傾斜角αの平均値に対して、5%以上14%以下の差をもって設定されていることから、座屈パターン23の発生位置における胴部3内部の断面形状は、辺の長さが不均一な五角形に調整されている。これにより、本実施の形態の容器20は、断面形状が正五角形になる場合に比して、最大トルクが小さく、小さな捩り力で潰される。
【0058】
そして
図13(b)に示したように、座屈パターン事前体22が座屈パターン23に変化した後においては、胴部21の他端側を一端側に向けて押し込む。この結果、胴部21に圧縮力が付加されて、座屈パターン23は、径方向内側に突出する山折り形状になる(
図15(a)参照)。
【0059】
そして、さらに胴部21の他端側を一端側に向けて押し込むと、座屈パターン23は、その頂部23aが徐々に一端側に移動するように傾いていき、この結果、
図15(b)に示すように、座屈パターン23の傾きが胴部21の径方向と略平行になる。
【0060】
そして、さらに胴部21の他端側を一端側に向けて押し込むと、座屈パターン23は、スナップスルー現象により、
図13(c),15(c)に示すように、座屈パターン23の付根23bをヒンジとして軸方向一端側に折り返されて安定する。これにより、容器20は、容積がさらに減少する。この状態において、座屈パターン23は、付根23b近傍の胴部21の壁によって内向きに押さえられるため、折り返されたまま復元することなく、その状態が維持される。これにより、容器20は、容積が減少した状態が確実に維持される。
【0061】
実施の形態2によれば、胴部21の径が一端側になるにつれて拡大しているので、
図13(b)の状態から胴部21の他端側を一端側に押し込む際には、径差のギャップによって、胴部21の他端側を一端側の内部の奥深くまで挿入することができる。これにより、座屈パターン23は、確実に軸方向一端側に折り返され、また、折り返された後では、復元しにくくなる。
【0062】
本発明は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0063】
例えば、実施の形態1,2では、峰線9及び谷線10の数や、峰線9及び谷線10の傾斜角α,βを設定するために、式1に代えて、後述の式3を用いるようにしてもよい。式3は、von Karman−Donnellの方程式であり、第1項において、しわ発生時の歪みエネルギーVbsを算出する式1が含まれている。
【0064】
式3が用いられる場合には、式3への入力値を算出するために、式2の他に、式4も使用される。式4は、式2と同様に、仮定されたしわSの数nや傾斜角λを入力値とするものであって、数nや傾斜角λのしわλが生じる状況下における(x,y)位置の応力φ(x,y)が算出される。また、式4でも、式2と同様に、べき数mの数値(1或いは2)を選択することで、容器の端部の支持条件(境界条件)を、単純支持と両端支持とのいずれかに設定することができる。
【0065】
そして、式3によれば、式2,4により仮定されたたわみw(x,y)や応力φ(x,y)が入力されることで、数nや傾斜角λのしわSが生じるときに、胴部3,21に蓄えられる力学エネルギーVが算出される。よって、式3の出力値が最小になるときの式2,3の入力値を求めることで、力学エネルギーVが最小になるときのしわSの数n
minやしわSの傾斜角λ
minを取得することができる。そして、数n
minや傾斜角λ
minのしわSを胴部3,21に生じさせるように、峰線9及び谷線10の数や、峰線9及び谷線10の傾斜角α,βが設定されることで、座屈パターン13,23の発生位置における胴部3,21内部の断面形状は、力学エネルギーVsが最小になるときの多角形に調整される。この結果、容器20は、小さな捩り力で、座屈パターン事前体8,22が座屈パターン13,23に変化して径方向の凹凸を生じるようになる。
【数3】
【数4】
【0066】
また、実施の形態1,2における胴部3,21の材料は、アルミニウム、スチール、あるいは紙によって構成されてもよい。この場合においても、容器1を軸回りに捩ることで、座屈パターン事前体8,22を座屈パターン13,23に変化させて圧縮させることでより、容器1,20の容積を減少させることができる。
【0067】
また、実施の形態1,2における座屈パターン事前体8,22は、容器1,20の軸方向に複数設けられてもよい。このようにすれば、容器1,20に軸回りの捩りを加えることによって、座屈パターン13,23が複数の箇所で生じる。これにより、容器1,20の容積を、大きく減少させることができる。
【0068】
また、本発明の容器は、上記実施形態で述べた飲料用容器の他、菓子等の食料を収容する容器としても適用され得る。