特許第5713545号(P5713545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713545
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】斜入射干渉計
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   G01B9/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-182265(P2009-182265)
(22)【出願日】2009年8月5日
(65)【公開番号】特開2011-33567(P2011-33567A)
(43)【公開日】2011年2月17日
【審査請求日】2012年7月4日
【審判番号】不服2014-7148(P2014-7148/J1)
【審判請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 豊
(72)【発明者】
【氏名】大峠 怜也
【合議体】
【審判長】 新川 圭二
【審判官】 清水 稔
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−241914(JP,A)
【文献】 特開平6−26830(JP,A)
【文献】 特開2003−273006(JP,A)
【文献】 特開2004−226399(JP,A)
【文献】 米国特許第6249351(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部からの光を、被測定面に対して出射する測定光と測定基準となる参照光とに分割し、前記測定光を前記被測定面に対して斜めに出射する光分割部と、
前記参照光および前記被測定面にて反射した前記測定光を合成して合成光とする光合成部と、
前記合成光により形成される干渉縞に基づいて前記被測定面の形状を検出する検出部とを備え、
前記光分割部は、前記参照光が直接前記光合成部に至る姿勢で前記参照光を出射し、
前記光分割部から前記光合成部に至る前記参照光の光路中には、前記参照光の波面の向きを反転させる像反転部が設けられている
ことを特徴とする斜入射干渉計。
【請求項2】
請求項1に記載の斜入射干渉計において、
前記像反転部は、底角が等しい断面台形形状に形成されたダブプリズムからなり、
前記ダブプリズムは、一方の端面に入射した光を底面側に屈折させ、前記底面で前記光を他方の端面に向けて反射した後、前記他方の端面から前記光を、前記一方の端面に対する前記光の入射方向と等しい方向に沿って出射する
ことを特徴とする斜入射干渉計。
【請求項3】
請求項1に記載の斜入射干渉計において、
前記像反転部は、複数の反射ミラーを有し、前記複数の反射ミラーにより入射光を奇数回反射した後、入射方向と等しい方向に沿って出射する
ことを特徴とする斜入射干渉計。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれかに記載の斜入射干渉計において、
前記光分割部は、分割部材と、第1折曲部材とを備え、
前記分割部材は、前記光源部から出射された光を前記測定光と前記参照光とに分割するとともに、前記参照光が直接前記光合成部に至る姿勢で前記参照光を出射し、
前記第1折曲部材は、前記分割部材から出射されて前記第1折曲部材に入射する前記測定光を前記被測定面に向けて斜めに出射し、前記測定光の光路を前記被測定面側に折り曲げ、
前記光合成部は、第2折曲部材と、合成部材とを備え、
前記第2折曲部材は、前記被測定面にて反射し前記第2折曲部材に入射する前記測定光を前記合成部材に向けて出射し、前記測定光の光路を前記合成部材側に折り曲げ、
前記合成部材は、前記分割部材から出射された前記参照光および前記第2折曲部材から出射された前記測定光を合成して合成光とする
ことを特徴とする斜入射干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜入射干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、うねりの大きな被測定面を測定できる干渉計として斜入射干渉計が知られている。斜入射干渉計としては、例えば測定光および参照光が等しい光路を辿る共通光路型のものが知られている(例えば、特許文献1の図11参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載の共通光路型の斜入射干渉計1Dの構成を示す図である。
斜入射干渉計1Dは、光源部100Dと、光分割部および光合成部としてのプリズム200Dと、検出部400Dとを備える。光源部100Dは、レーザ光源101と、レンズ102、103とを備える。プリズム200Dは、入射光を、被測定面Sに入射させる測定光、および測定基準となる参照光に分割する光分割部としての機能と、参照光および測定光を合成して合成光(干渉光)とする光合成部としての機能とを備える。検出部400Dは、レンズ401と、CCD(Charge Coupled Device) を有する撮像手段402と、CPU(Central Processing Unit)を有する図示しない演算手段とを備える。
【0004】
レーザ光源101から出射された光は、レンズ102、103により平行光とされた後、プリズム200Dに入射し、一部はプリズム200Dの底面200D1にて反射し参照光となり、残りは測定光としてプリズム200D外へ出射されて被測定面Sに入射する。被測定面Sに入射した測定光は、該被測定面Sにて反射した後、プリズム200Dに入射して参照光と合成され、合成光となる。合成光は、レンズ401を介し、撮像手段402上に干渉縞を形成する。干渉縞は、撮像手段402に撮像される。図示しない演算手段は、撮像手段402にて撮像された干渉縞画像に基づいて演算処理を行い、被測定面Sの形状を得る。
【0005】
次に、レーザ光源101から出射された光の波面の歪みが測定精度に与える影響について図6を参照して説明する。図6では、光の進行方向先端側から基端側を見た場合における各光の波面をRの像で表している。
光は、反射を1回経るごとに波面の向きが反転する。斜入射干渉計1Dでは、参照光は、プリズム200Dの底面200D1における反射を1回経ており、測定光は、被測定面Sにおける反射を1回経ているので、合成光成分の参照光および測定光の波面の向きは、共にレーザ光源101から出射された光の波面の向きに対し反転し、向きが等しくなる。従って、参照光の波面と測定光の波面との差から形成される干渉縞においては、レーザ光源101から出射された光の波面に歪みがあったとしても、その歪みは相殺される。そのため、斜入射干渉計1Dでは、レーザ光源101から出射された光の波面の歪みは、測定精度に影響を与えない。
【0006】
斜入射干渉計としては、上述した共通光路型のほか、参照光および測定光が異なる光路を辿る非共通光路型のものも知られている(例えば、特許文献1の図1参照)。
図7は、特許文献1に記載の非共通光路型の斜入射干渉計1Eの構成を示す図である。
以下、図6の斜入射干渉計1Dの機能部位と同一機能部位には同一符号を付し、その説明を省略若しくは簡略化する。また、図7中、両側矢印の記号は、紙面に平行な直線偏光成分を示し、二重丸の記号は、紙面に垂直な直線偏光成分を示している。
【0007】
斜入射干渉計1Eは、光源部100Eと、光分割部200Eと、光合成部としてのビームスプリッタ300Eと、検出部400Eとを備える。光源部100Eは、前述の光源部100Dと同様の構成である。光分割部200Eは、ビームスプリッタ201と、1/2波長板202とを備える。検出部400Eは、1/4波長板403、レンズ404、3分割プリズム405、偏光板406A〜406C、撮像手段407A〜407C、および演算手段408を備える。検出部400Eは、位相をシフトさせた3つの干渉縞画像を得ることができるようになっており、解析時間の短縮化および耐震性の向上を図ることができるようになっている。
【0008】
レーザ光源101から出射された光は、レンズ102,103を介してビームスプリッタ201に入射し、参照光と測定光とに分割される。参照光は、1/2波長板202を透過した後、ビームスプリッタ300Eに入射する。測定光は、被測定面Sに入射し該被測定面Sにて反射した後、ビームスプリッタ300Eに入射する。ビームスプリッタ300Eに入射した参照光および測定光は合成されて合成光となり、ビームスプリッタ300Eから出射される。ビームスプリッタ300Eから出射された合成光は、1/4波長板403、レンズ404、3分割プリズム405、および偏光板406A〜406Cにより、位相がシフトされた3つの光に分割され、各光は、各撮像手段407A〜407C上で干渉縞を形成する。各干渉縞は、各撮像手段407A〜407Cに撮像される。演算手段408は、撮像手段407A〜407Cにて撮像された3つの干渉縞画像に基づいて演算処理を行い、被測定面Sの形状を得る。
【0009】
この斜入射干渉計1Eでは、参照光は反射を経ないので、波面の向きは、レーザ光源101から出射された光の波面の向きと等しくなる。一方、測定光は、被測定面Sにおける反射を1回経ているので、波面の向きは、レーザ光源101から出射された光の波面の向きに対し反転する。従って、合成光成分の参照光および測定光の波面の向きが互いに反転することとなるので、合成光から撮像手段407A〜407C上に形成される干渉縞においては、レーザ光源101から出射された光の波面の歪みが相殺されない。そのため、この斜入射干渉計1Eでは、レーザ光源101から出射された光の波面の歪みが測定精度に影響を与えることとなる。
【0010】
そこで、非共通光路型の斜入射干渉計において、合成光成分の参照光および測定光の波面の向きを揃えることができるものが開発されている(例えば、特許文献2の図1参照)。
図8は、特許文献2に記載の非共通光路型の斜入射干渉計1Fの構成を示す図である。
斜入射干渉計1Fは、光源部100Fと、光分割部200Fと、光合成部としての回折格子300Fと、検出部400Fとを備える。光源部100Fは、レーザ光源101と、レンズ104とを備える。光分割部200Fは、回折格子203と、参照鏡204とを備える。検出部400Fは、レンズ409、410と、視野スクリーン411とを備える。
【0011】
レーザ光源101から出射された光は、レンズ104を介して回折格子203に入射し、測定光と参照光とに分割される。測定光は、被測定面Sにて反射した後、回折格子300Fに入射する。参照光は、参照鏡204にて反射した後、回折格子300Fに入射する。回折格子300Fに入射した測定光および参照光は合成されて合成光となり、回折格子300Fから出射された後、レンズ409、410を介して視野スクリーン411上に干渉縞を形成する。従って、この干渉縞を撮像手段により撮像し、演算手段により、撮像手段にて撮像された干渉縞画像に基づいて演算処理を行うことで被測定面Sの形状を得ることができる。
【0012】
この斜入射干渉計1Fでは、測定光および参照光は、共に反射を1回経ることとなるので、波面の向きを共にレーザ光源101から出射された光の波面の向きに対して反転させることができ、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きを揃えることができる。そのため、レーザ光源101から出射された光の波面の歪みは、視野スクリーン411上に形成される干渉縞において相殺されることとなり、該波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−32690号公報
【特許文献2】米国特許第6,249,351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上の斜入射干渉計1D〜1Fにはいずれも欠点がある。
斜入射干渉計1Dは、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きを揃えることができ、レーザ光源101から出射される光の波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できる。しかしながら、斜入射干渉計1Dは、プリズム200Dの底面200D1を被測定面Sにほぼ接触するまで非常に近接させなければ測定精度が著しく低下してしまうという幾何光学的な制約があるため、プリズム200Dの底面200D1と被測定面Sとの距離管理を精密に行う必要があり、利便性が悪いという問題がある。
【0015】
斜入射干渉計1Eは、光分割部200Eおよびビームスプリッタ300Eと被測定面Sとの距離管理を精密に行う必要はなく、利便性は良好だが、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きが反転してしまうため、レーザ光源101から出射される光の波面の歪みが測定精度に影響を与えてしまうという問題がある。
【0016】
斜入射干渉計1Fは、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きを揃えることができ、レーザ光源101から出射される光の波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できる。また、光分割部200Fおよび回折格子300Fと被測定面Sとの距離管理を精密に行う必要はなく、利便性も良好である。しかしながら、斜入射干渉計1Fでは、参照鏡204および回折格子203を用いるので、特殊な構成になってしまうという問題がある。
【0017】
本発明の目的は、特殊な構成とすることなく、光源部から出射される光の波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できるとともに、利便性を良好にできる斜入射干渉計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の斜入射干渉計は、光源部と、前記光源部からの光を、被測定面に対して出射する測定光と測定基準となる参照光とに分割し、前記測定光を前記被測定面に対して斜めに出射する光分割部と、前記参照光および前記被測定面にて反射した前記測定光を合成して合成光とする光合成部と、前記合成光により形成される干渉縞に基づいて前記被測定面の形状を検出する検出部とを備え、前記光分割部は、前記参照光が直接前記光合成部に至る姿勢で前記参照光を出射し、前記光分割部から前記光合成部に至る前記参照光の光路中には、前記参照光の波面の向きを反転させる像反転部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、光分割部から光合成部に至る測定光または参照光の光路中に設けられた像反転部により、測定光または参照光の波面の向きを反転させることで、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きを揃えることができる。従って、合成光により形成される干渉縞において、光源部から出射された光の波面の歪みを相殺できるので、該波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できる。
測定光および参照光は、光分割部から出射され、それぞれ異なる光路を辿った後、光合成部により合成される。従って、本発明の斜入射干渉計は、非共通光路型として構成されるので、光分割部および光合成部と、被測定面との距離管理を精密に行う必要がなく、利便性を良好にできる。
光分割部は、参照光が直接合成部に至る姿勢で参照光を出射する。従って、基本的な構成が、一般的な従来の非共通光路型の斜入射干渉計(例えば図7の斜入射干渉計1E)と同様なので、従来の斜入射干渉計の測定光または参照光の光路中に像反転部を設けることで本発明の斜入射干渉計とすることができ、製造を容易にできる。
以上のように、本発明は、特殊な構成とすることなく、光源部から出射される光の波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できるとともに、利便性を良好にできる。
【0020】
本発明の斜入射干渉計では、上述のように、前記像反転部は、前記光分割部から前記光合成部に至る参照光の光路中に設けられていることを特徴とする
ここで、参照光は、光分割部から、該光分割部から直接光合成部に至る姿勢で出射されるが、測定光は、光分割部から被測定面に向けて斜めに出射され、該測定面での反射を経た後、光合成部に至るので、参照光の光路は測定光の光路に比べ短くなる。参照光と測定光との光路長の差が光源部から出射される光の可干渉距離以上になると、干渉縞のコントラストが低下してしまい、測定精度が悪化してしまうという問題がある。
しかしながら、本発明では、像反転部を参照光の光路中に設けるので、像反転部により参照光の光路長を大きくすることで、参照光と測定光との光路長の差を可干渉距離以下にできる。そのため、干渉縞のコントラストを良好にでき、測定精度を良好に維持できる。
【0021】
本発明の斜入射干渉計では、前記像反転部は、底角が等しい断面台形形状に形成されたダブプリズムからなり、前記ダブプリズムは、一方の端面に入射した光を底面側に屈折させ、前記底面で前記光を他方の端面に向けて反射した後、前記他方の端面から前記光を、前記一方の端面に対する前記光の入射方向と等しい方向に沿って出射することが好ましい。
【0022】
本発明によれば、像反転部は、入射光を底面により1回反射することで入射光の波面の向きを反転させるダブプリズムからなる。ダブプリズムは、入射方向と出射方向とが等しいので、従来の斜入射干渉計の測定光または参照光の光路中に簡単に設けることができ、製造を容易にできる。また、ダブプリズムは、屈折率が空気より大きいので、入射光の光路長を大きくできる。そのため、ダブプリズムを参照光の光路中に設けることで、参照光の光路長を大きくでき、参照光と測定光との光路長の差を可干渉距離以下にできる。
【0023】
本発明の斜入射干渉計では、前記像反転部は、複数の反射ミラーを有し、前記複数の反射ミラーにより入射光を奇数回反射した後、入射方向と等しい方向に沿って出射することが好ましい。
本発明によれば、像反転部は、複数の反射ミラーにより入射光を奇数回反射することで、入射光の波面の向きを反転させて該像反転部外に出射する。この像反転部も、入射方向と出射方向とが等しいので、従来の斜入射干渉計の測定光または参照光の光路中に簡単に設けることでき、製造を容易にできる。また、像反転部は、入射光を内部で奇数回反射するので、入射光の光路長を大きくできる。そのため、本発明の像反転部を参照光の光路中に設けることで、参照光の光路長を大きくでき、参照光と測定光との光路長の差を可干渉距離以下にできる。
【0024】
本発明の斜入射干渉計では、前記光分割部は、分割部材と、第1折曲部材とを備え、前記分割部材は、前記光源部から出射された光を前記測定光と前記参照光とに分割するとともに、前記参照光が直接前記光合成部に至る姿勢で前記参照光を出射し、前記第1折曲部材は、前記分割部材から出射されて前記第1折曲部材に入射する前記測定光を前記被測定面に向けて斜めに出射し、前記測定光の光路を前記被測定面側に折り曲げ、前記光合成部は、第2折曲部材と、合成部材とを備え、前記第2折曲部材は、前記被測定面にて反射し前記第2折曲部材に入射する前記測定光を前記合成部材に向けて出射し、前記測定光の光路を前記合成部材側に折り曲げ、前記合成部材は、前記分割部材から出射された前記参照光および前記第2折曲部材から出射された前記測定光を合成して合成光とすることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、光分割部および光合成部は、それぞれ分割部材および合成部材とは別に、測定光の光路を折り曲げるための例えば反射ミラーからなる折曲部材を備える。従って、光分割部および光合成部の各折曲部材の姿勢を調整することで、被測定面に対する測定光の入射角度を容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る斜入射干渉計の構成を示す図。
図2】参照光および測定光の波面の向きを示す斜視図。
図3】本発明の第2実施形態に係る斜入射干渉計の構成を示す図。
図4】本発明の第3実施形態に係る斜入射干渉計の構成を示す図。
図5】本発明の参考例に係る斜入射干渉計の構成を示す図。
図6】共通光路型の従来の斜入射干渉計の構成を示す図。
図7】非共通光路型の従来の斜入射干渉計の構成を示す図。
図8】非共通光路型の他の従来の斜入射干渉計の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る斜入射干渉計1の構成を示す図である。
斜入射干渉計1は、光源部100と、光分割部200と、光合成部300と、検出部400と、像反転部としてのダブプリズム500とを備える。
光源部100は、レーザ光源101と、レンズ102、103とを備える。レーザ光源101としては、可干渉距離が数10mm〜数100mmの簡易安定化レーザ光源が用いられている。
【0028】
光分割部200は、入射光を、被測定面Sに対して出射する測定光と、測定基準となる参照光とに分割し、参照光を光合成部300側に出射するとともに、測定光を被測定面Sに対して斜めに出射する。光分割部200は、分割部材としての偏光ビームスプリッタ205と、第1折曲部材としての反射ミラー206とを備える。
【0029】
偏光ビームスプリッタ205は、レーザ光源101から出射されレンズ102、103を介して入射する光のうち、S偏光を参照光として該光が直接光合成部300に至る姿勢で反射するとともに、P偏光を測定光として透過する。
反射ミラー206は、偏光ビームスプリッタ205を透過した測定光を被測定面S側に反射し、測定光の光路を折り曲げる。
【0030】
光合成部300は、光分割部200から出射された参照光と、被測定面Sにて反射した測定光とを合成して合成光とし、該合成光を検出部400側に出射する。光合成部300は、第2折曲部材としての反射ミラー301と、合成部材としての偏光ビームスプリッタ302とを備える。
反射ミラー301は、被測定面Sにて反射した測定光を偏光ビームスプリッタ302側に反射し、測定光の光路を折り曲げる。
偏光ビームスプリッタ302は、偏光ビームスプリッタ205から出射された参照光を反射するとともに、反射ミラー301にて反射した測定光を透過することで、参照光および測定光を合成して合成光とし、該合成光を検出部400側に出射する。
【0031】
検出部400は、1/4波長板403、レンズ404、3分割プリズム405、偏光板406A〜406C、撮像手段407A〜407C、および演算手段408を備える。検出部400は、合成光により各撮像手段407A〜407C上に形成される干渉縞に基づいて被測定面Sの形状を検出する。
【0032】
ダブプリズム500は、底角が等しい断面台形形状を有する角柱棒状の光学部材であり、屈折率が空気より大きい光学ガラスから形成されている。ダブプリズム500は、光分割部200から光合成部300に至る参照光の光路中に設けられている。ダブプリズム500は、一方の端面501に入射した参照光を底面502側に屈折させ、底面502で参照光を他方の端面503に向けて反射した後、他方の端面503から参照光を、一方の端面501に対する参照光の入射方向と等しい方向に沿ってダブプリズム500外へ出射する。
【0033】
図2は、参照光および測定光の波面の向きを示す斜視図である。
光は、反射を1回経るごとに波面の向きが反転する。従って、図2において、レーザ光源101から出射された光Lの波面の向きを光Lの進行方向先端側から見て(目のマーク参照)逆Rの像で表すと、合成光成分の参照光は、反射を偏光ビームスプリッタ205、ダブプリズム500の底面502、偏光ビームスプリッタ302にて計3回経るので、波面の向きは反転し、Rの像で表される。
【0034】
また、合成光成分の測定光も、反射を反射ミラー206、被測定面S、反射ミラー301にて計3回経るので、波面の向きは反転し、Rの像で表される。従って、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きは共にRの像で表され、波面の向きが等しくなるので、これら波面の向きが等しい測定光および参照光の合成光から形成される干渉縞においては、レーザ光源101から出射された光の波面の歪みは相殺される。そのため、斜入射干渉計1では、該歪みが測定精度に影響を与えることを防止できる。
【0035】
以上の本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
ダブプリズム500により、参照光の波面の向きを反転させ、合成光成分の測定光および参照光の波面の向きを揃えるので、合成光により形成される干渉縞において、光源部100から出射された光の波面の歪みを相殺でき、該波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できる。
斜入射干渉計1は、参照光および測定光が異なる光路を辿る非共通光路型として構成されているので、光分割部200および光合成部300と、被測定面Sとの距離管理を精密に行う必要がなく、利便性を良好にできる。
【0036】
光分割部200は、参照光が直接合成部に至る姿勢で参照光を出射する。従って、基本的な構成が、一般的な従来の非共通光路型の斜入射干渉計と同様なので、従来の斜入射干渉計の参照光の光路中にダブプリズム500を設けることで本実施形態の斜入射干渉計1とすることができ、製造を容易にできる。
以上のように、斜入射干渉計1は、特殊な構成とすることなく、光源部100から出射される光の波面の歪みが測定精度に影響を与えることを防止できるとともに、利便性を良好にできる。
【0037】
レーザ光源101として、可干渉距離が数m以上の安定化レーザ光源を用いることもできるが、本実施形態では、コスト面やノイズの発生量を考慮し、レーザ光源101として、可干渉距離が数10mm〜数100mmと短い簡易安定化レーザ光源を用いている。参照光の光路は、部材間205,206および部材間301,302の距離や被測定面Sでの反射を経ない分、測定光の光路に比べて短くなるので、参照光および測定光の光路設定によっては、両光の光路長の差が可干渉距離以上となり、干渉縞のコントラストが低下して測定精度が悪化してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、屈折率が空気より大きいダブプリズム500を参照光の光路中に設けたことにより、参照光の光路長を大きくできるので、参照光と測定光との光路長の差を確実に可干渉距離以下にできる。そのため、干渉縞のコントラストを良好にでき、測定精度を良好に維持できる。
【0038】
像反転部として、入射方向と出射方向とが等しいダブプリズム500を用いるので、従来の斜入射干渉計の参照光の光路中にダブプリズム500を簡単に設けることでき、斜入射干渉計1の製造を容易にできる。
光分割部200および光合成部300は、それぞれ光を分割および合成するための偏光ビームスプリッタ205、302とは別に、測定光の光路を折り曲げるための反射ミラー206、301を備えている。そのため、これらの反射ミラー206、301の姿勢を調整することで、被測定面Sに対する測定光の入射角度を容易に変更できる。
【0039】
〔第2実施形態〕
図3は、本実施形態に係る斜入射干渉計1Aの構成を示す図である。
本実施形態では、像反転部がイメージローテータミラー500Aからなる点が特徴である。イメージローテータミラー500Aは、3枚の反射ミラー504、505、506を備え、これらの反射ミラー504、505、506により参照光を3回反射し、その波面を反転させた後、入射方向と等しい方向に沿って出射する。
【0040】
このような本実施形態でも、イメージローテータミラー500Aにより参照光を3回反射することで、参照光の波面の向きを反転させ、合成光成分の測定光と参照光との波面の向きを揃えることができるので、測定精度を良好に維持できる。また、イメージローテータミラー500Aは、入射方向と出射方向とが等しいので、従来の斜入射干渉計の参照光の光路中に簡単に設けることでき、斜入射干渉計1Aの製造を容易にできる。加えて、イメージローテータミラー500Aは、参照光を3回反射することにより、参照光の光路長を大きくできるので、参照光と測定光との光路長の差を確実に可干渉距離以下にできる。
なお、本実施形態では、3枚の反射ミラー504、505、506で参照光を3回反射させる構成としているが、参照光を反射させる回数は3回に限定されず、奇数回反射させることができれば反射ミラーの枚数も3枚に限定されない。
【0041】
〔第3実施形態〕
図4は、本実施形態に係る斜入射干渉計1Bの構成を示す図である。
本実施形態では、像反転部としてのダブプリズム500Bを測定光の光路中に設けた点が特徴である。
このような本実施形態でも、像反転部として、入射方向と出射方向とが等しいダブプリズム500Bを用いるので、従来の斜入射干渉計の測定光の光路中にダブプリズム500Bを簡単に設けることができ、斜入射干渉計1Bの製造を容易にできる。また、ダブプリズム500Bにより測定光の波面を反転させるので、合成光成分の測定光と参照光との波面の向きを揃えることができ、測定精度を良好に維持できる。
【0042】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、光分割部200〜200Bおよび光合成部300〜300Bは、偏光ビームスプリッタ205、302に加え、測定光の光路を折り曲げるための折曲部材として、反射ミラー206、301を備えていたが、光分割部および光合成部は、図7の従来の斜入射干渉計1Eのように、ビームスプリッタのみを備えていてもよく、折曲部材は備えていなくてもよい。
前記各実施形態では、検出部400〜400Bは、位相をシフトさせた3つの干渉縞を得ることができたが、検出部は、位相をシフトさせた複数の干渉縞を得ることができなくてもよく、干渉縞に基づいて被測定面の形状を検出できればよい。
【0043】
図5は、本発明の参考例に係る斜入射干渉計1Cの構成を示す図である。
本参考例では、像反転部が1枚の反射ミラー500Cからなる点が特徴である。また、本参考例では、参照光の偏光ビームスプリッタ205から反射ミラー500Cに至る光路と、測定光の反射ミラー206から被測定面Sに至る光路とが平行に設定されるとともに、参照光の反射ミラー500Cから偏光ビームスプリッタ302に至る光路と、測定光の被測定面Sから反射ミラー301に至る光路とが平行に設定される。
【0044】
このような本参考例でも、反射ミラー500Cが参照光を1回反射することで、参照光の波面の向きを反転させ、合成光成分の測定光と参照光との波面の向きを揃えることができるので、測定精度を良好に維持できる。また、像反転部を1枚の反射ミラー500Cから構成するので、斜入射干渉計1Cの構成を簡素にできる。加えて、参照光の光路を反射ミラー500Cを経由させることでV字状にするので、参照光の光路長を大きくでき、参照光と測定光との光路長の差を可干渉距離以下にできる。
【符号の説明】
【0045】
1-1B 斜入射干渉計
100-100B 光源部
200-200B 光分割部
205 偏光ビームスプリッタ(分割部材)
206 反射ミラー(第1折曲部材)
300-300B 光合成部
301 反射ミラー(第2折曲部材)
302 偏光ビームスプリッタ(合成部材)
400-400B 検出部
500、500B ダブプリズム(像反転部)
500A イメージローテータミラー(像反転部)
504-506 反射ミラー
S 被測定面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8