(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板に形成された金属層をプラズマエッチングする工程を経て積層構造中に前記金属層を有するパターンを形成した後、前記金属層を構成する金属を含み前記パターンの側壁部に堆積した堆積物を除去するプラズマ処理方法であって、
前記金属層の側壁部に、前記金属の酸化物又は塩化物を形成する保護層形成工程と、
フッ素原子を含むガスのプラズマを作用させて前記堆積物を除去する堆積物除去工程と、
前記保護層形成工程及び前記堆積物除去工程の後、水素を含むプラズマを作用させて前記金属の酸化物又は塩化物を還元する還元工程と
を具備したことを特徴とするプラズマ処理方法。
基板に形成された金属層をプラズマエッチングする工程を経て積層構造中に前記金属層を有するパターンを形成した後、前記金属層を構成する金属を含み前記パターンの側壁部に堆積した堆積物を除去する堆積物の除去プロセスを有する半導体装置の製造方法であって、
前記堆積物の除去プロセスは、
前記金属層の側壁部に、前記金属の酸化物又は塩化物を形成する保護層形成工程と、
フッ素原子を含むガスのプラズマを作用させて前記堆積物を除去する堆積物除去工程と、
前記保護層形成工程及び前記堆積物除去工程の後、水素を含むプラズマを作用させて前記金属の酸化物又は塩化物を還元する還元工程と
を具備したことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るプラズマ処理方法における被処理基板としての半導体ウエハの断面構成を拡大して示すものである。また、
図2は、本実施形態に使用するプラズマ処理装置としてのプラズマエッチング装置の断面概略構成を模式的に示す図である。まず、
図2を参照してプラズマエッチング装置の構成について説明する。
【0014】
プラズマエッチング装置1は、電極板が上下平行に対向し、プラズマ形成用電源が接続された容量結合型平行平板エッチング装置として構成されている。
【0015】
プラズマエッチング装置1は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等からなり円筒形状に成形された真空処理チャンバ2を有しており、この真空処理チャンバ2は接地されている。真空処理チャンバ2内の底部にはセラミックなどの絶縁板3を介して、被処理基板、例えば半導体ウエハWを載置するための略円柱状のサセプタ支持台4が設けられている。さらに、このサセプタ支持台4の上には、下部電極を構成するサセプタ(載置台)5が設けられている。このサセプタ5には、ハイパスフィルター(HPF)6が接続されている。
【0016】
サセプタ支持台4の内部には、冷媒室7が設けられており、この冷媒室7には、冷媒が冷媒導入管8を介して導入されて循環し冷媒排出管9から排出される。そして、その冷熱がサセプタ5を介して半導体ウエハWに対して伝熱され、これにより半導体ウエハWが所望の温度に制御される。
【0017】
サセプタ5は、その上側中央部が凸状の円板状に成形され、その上に半導体ウエハWと同様に円形とされ、半導体ウエハWと略同じ径の静電チャック11が設けられている。静電チャック11は、絶縁材の間に電極12を配置して構成されている。そして、電極12に接続された直流電源13から例えば1.5kVの直流電圧が印加されることにより、例えばクーロン力によって半導体ウエハWを静電吸着する。
【0018】
絶縁板3、サセプタ支持台4、サセプタ5、静電チャック11には、半導体ウエハWの裏面に、伝熱媒体(例えばHeガス等)を供給するためのガス通路14が形成されており、この伝熱媒体を介してサセプタ5の冷熱が半導体ウエハWに伝達され半導体ウエハWが所定の温度に維持されるようになっている。
【0019】
サセプタ5の上端周縁部には、静電チャック11上に載置された半導体ウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング15が配置されている。このフォーカスリング15は、エッチングの面内均一性を向上させる作用を有する。
【0020】
サセプタ5の上方には、このサセプタ5と平行に対向して上部電極21が設けられている。この上部電極21は、絶縁材22を介して、真空処理チャンバ2の上部に支持されている。上部電極21は、電極板24と、この電極板24を支持する導電性材料からなる電極支持体25とによって構成されている。電極板24は、例えば、導電体または半導体で構成され、多数の吐出孔23を有する。この電極板24は、サセプタ5との対向面を形成する。
【0021】
上部電極21における電極支持体25の中央にはガス導入口26が設けられ、このガス導入口26には、ガス供給管27が接続されている。さらにこのガス供給管27には、バルブ28、並びにマスフローコントローラ29を介して、処理ガス供給源30が接続されている。処理ガス供給源30から、プラズマ処理のための処理ガスが供給される。
【0022】
真空処理チャンバ2の底部には排気管31が接続されており、この排気管31には排気装置35が接続されている。排気装置35はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、真空処理チャンバ2内を所定の減圧雰囲気、例えば1Pa以下の所定の圧力まで真空引き可能なように構成されている。また、真空処理チャンバ2の側壁にはゲートバルブ32が設けられており、このゲートバルブ32を開いた状態で半導体ウエハWが隣接するロードロック室(図示せず)との間で搬送されるようになっている。
【0023】
上部電極21には、第1の高周波電源40が接続されており、その給電線には整合器41が介挿されている。また、上部電極21にはローパスフィルター(LPF)42が接続されている。この第1の高周波電源40は、例えば、50〜150MHzの範囲の周波数の高周波電力を供給するよう構成されている。このように周波数の高い高周波電力を印加することにより、真空処理チャンバ2内に好ましい解離状態でかつ高密度のプラズマを形成することができる。
【0024】
下部電極としてのサセプタ5には、第2の高周波電源50が接続されており、その給電線には整合器51が介挿されている。この第2の高周波電源50は、第1の高周波電源40より低い周波数の範囲の高周波電力を供給するよう構成されている。このような範囲の周波数の高周波電力を印加することにより、被処理基板である半導体ウエハWに対してダメージを与えることなく適切なイオン作用を与えることができるようになっている。第2の高周波電源50の周波数としては、例えば20MHz以下程度の周波数が用いられる。
【0025】
上記構成のプラズマエッチング装置1は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置1の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース部62と、記憶部63とが設けられている。
【0026】
ユーザインターフェース部62は、工程管理者がプラズマエッチング装置1を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0027】
記憶部63には、プラズマエッチング装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース部62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置1での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)に格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0028】
上記構成のプラズマエッチング装置1によって、半導体ウエハWのプラズマエッチングを行う場合、まず、半導体ウエハWは、ゲートバルブ32が開放された後、図示しないロードロック室から真空処理チャンバ2内へと搬入され、静電チャック11上に載置される。そして、直流電源13から直流電圧が印加されることによって、半導体ウエハWが静電チャック11上に静電吸着される。次いで、ゲートバルブ32が閉じられ、排気装置35によって、真空処理チャンバ2内が所定の真空度まで真空引きされる。
【0029】
その後、バルブ28が開放されて、処理ガス供給源30から所定の処理ガスが、マスフローコントローラ29によってその流量を調整されつつ、処理ガス供給管27、ガス導入口26を通って上部電極21の中空部へと導入され、さらに電極板24の吐出孔23を通って、
図2の矢印に示すように、半導体ウエハWに対して均一に吐出される。
【0030】
そして、真空処理チャンバ2内の圧力が、所定の圧力に維持される。その後、第1の高周波電源40から所定の周波数の高周波電力が上部電極21に印加される。これにより、上部電極21と下部電極としてのサセプタ5との間に高周波電界が生じ、処理ガスが解離してプラズマ化する。
【0031】
他方、必要に応じて第2の高周波電源50から、上記の第1の高周波電源40より低い周波数の高周波電力が下部電極であるサセプタ5に印加される。これにより、プラズマ中のイオンがサセプタ5側へ引き込まれ、イオンアシストによりエッチングの異方性が高められる。なお、後述するプラズマ処理の各実施例では、この第2の高周波電源50からの高周波電力の印加は行わない。
【0032】
そして、所定のプラズマエッチング処理が終了すると、高周波電力の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが真空処理チャンバ2内から搬出される。
【0033】
次に、
図1を参照して本実施形態に係る半導体ウエハWの断面構成について説明する。
図1に示すように、半導体ウエハWには、上側から順に、二酸化シリコン(SiO
2)層101、タングステン(W)層102、窒化チタン(TiN)層103、ポリシリコン(Poly−Si)層104、窒化チタン(TiN)層105、タングステン(W)層106、二酸化シリコン(SiO
2)層107が、この順で積層されるように形成されている。
【0034】
上記二酸化シリコン(SiO
2)層101、タングステン(W)層102、窒化チタン(TiN)層103、ポリシリコン(Poly−Si)層104、窒化チタン(TiN)層105、タングステン(W)層106は、プラズマエッチングにより、所定のパターンにパターニングされており、このパターンの側壁部には、堆積物(デポ物)110が堆積している。このようなパターニングのためのプラズマエッチングは、例えば、
図2に示したプラズマエッチング装置1によって行うことができる。
【0035】
堆積物110は、二酸化シリコン(SiO
2)層101、タングステン(W)層102、窒化チタン(TiN)層103、ポリシリコン(Poly−Si)層104、窒化チタン(TiN)層105、タングステン(W)層106をプラズマエッチングする際の残渣を含んでいる。すなわち、堆積物110は、金属であるタングステンとチタンとを含んでおり、その主成分はタングステン(酸化物)である。
【0036】
上記の堆積物110が残ったまま、後工程でCVDを行うと、堆積物110が異常成長の原因(核)となる。このため、堆積物110を除去する必要がある。この堆積物110の除去の際に、ウエット洗浄を用いるとパターン倒れが発生する恐れがある。また、加熱処理又はフッ素含有ガスによるガス処理による方法では、上記の積層構造をプラズマエッチングした際に生成された堆積物110を除去することができない。
【0037】
一方、フッ素を含有するガス、例えば、NF
3、CHF
3、CH
2F
2等のガスを用いたプラズマに晒すと、堆積物110は除去できるが、パターン中の各層、特に金属層であるタングステン(W)層102、タングステン(W)層106がサイドエッチングされてパターンが細くなってしまう。
【0038】
実際に、比較例1として、
図2に示した平行平板型のプラズマ処理装置を用い、以下の条件で処理チャンバー内にプラズマを発生させて堆積物110の除去を行った。
処理ガス:NF
3/O
2/Ar=20/30/180 sccm
圧力:1.33Pa(10mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):40/40/30℃
時間:30秒
【0039】
上記のプラズマ処理の結果、堆積物110は減少したが、パターン中の構造物であるポリシリコン(Poly−Si)層104、二酸化シリコン(SiO
2)層101、特にタングステン(W)層102、タングステン(W)層106がサイドエッチングされてパターンが細くなってしまった。
【0040】
そこで、本実施形態では、パターンの側壁部、特に金属層(タングステン(W)層102、タングステン(W)層106)の側壁部に、当該金属層を構成する金属(W)の酸化物又は塩化物からなる保護層を形成する保護層形成工程と、フッ素原子を含むガスのプラズマを作用させて堆積物110を除去する堆積物除去工程とを行う。これにより、サイドエッチングによってパターンが細くなってしまうことを防止しつつ堆積物110を除去する。また、上記保護層形成工程及び堆積物除去工程の後、水素を含むプラズマを作用させて、パターンの側壁部に形成された酸化物又は塩化物を還元する還元工程を行う。
【0041】
保護層形成工程と、堆積物除去工程は、これらの工程を交互に繰り返して複数回行う方法(サイクル処理)、同時に行う方法、保護層形成工程を最初に1回行った後、堆積物除去工程を行う方法のいずれかによって行うことができる。
【0042】
保護層形成工程と、堆積物除去工程とを交互に繰り返して複数回行うサイクル処理では、保護層形成工程に、酸素ガスのプラズマを作用させて金属層を構成する金属の酸化物を生成するプラズマ処理を用いることができる。また、サイクル処理における保護層形成工程には、塩素ガス等の塩素原子を含むガスのプラズマを作用させて金属層を構成する金属の塩化物を生成するプラズマ処理を用いることもできる。
【0043】
保護層形成工程と、堆積物除去工程とを同時に行う場合は、堆積物除去工程をプラズマ処理によって行うことから、保護層形成工程もプラズマ処理によって行うことになる。したがって、保護層形成工程は、酸素ガスのプラズマを作用させて金属層を構成する金属の酸化物を生成するプラズマ処理、または、塩素ガス等の塩素原子を含むガスのプラズマを作用させて金属層を構成する金属の塩化物を生成するプラズマ処理を用いることになる。
【0044】
保護層形成工程を1回のみ行った後堆積物除去工程を行う方法を用いる場合、保護層形成工程は、上記したようなプラズマ処理によって行ってもよく、またプラズマ処理に限らず、例えば、酸素ガス雰囲気下で半導体ウエハWを所定温度、例えば250℃に加熱して熱酸化により金属層を構成する金属の酸化物を生成する方法によって行ってもよい。
【0045】
堆積物除去工程では、フッ素原子を含むガスとして、例えば、NF
3、CHF
3、CH
2F
2等の少なくともいずれか1種を用いることができる。また、パターンに含まれる金属としては、上記したタングステン(W)やチタン(Ti)がある。
【0046】
実施例1として、以下の条件で、保護層形成工程と堆積物除去工程とを交互に繰り返して複数回行うサイクル処理を行った。
(保護層形成工程)
処理ガス:O
2/Ar=200/800 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/30℃
時間:10秒
(堆積物除去工程)
処理ガス:NF
3/O
2/Ar=8/200/800 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/30℃
時間:5秒
【0047】
上記のサイクル処理を、堆積物除去工程の合計時間が20秒となるように4回繰り返して行った。
【0048】
また、比較例2として、上記の堆積物除去工程のみを続けて20秒行った。
【0049】
上記の実施例1と比較例2とを比較すると、堆積物の残存する最大膜厚はどちらも7nmとなり、堆積物の除去速度は略同一であることが分かった。
【0050】
また、
図1に示したパターン構造のタングステン部分のパターン幅(CD)は、実施例1では、20.3nm、比較例2では、18.5nmとなり、実施例1では比較例2に比べて明らかにタングステン部分のサイドエッチングによるパターン細りを抑制できた。
【0051】
上記の実施例1のように、酸素プラズマによる保護層形成工程を、フッ素プラズマによる堆積物除去工程の間に挟むことによって、パターン構造のCDを保ちながら、堆積物除去の速度については、堆積物除去工程のみを行った場合と同等とすることができ、場合によっては加速することができることもあった。なお、加速できる部分に関しては堆積物中に有機物を含む可能性がある。また、堆積物は最初から酸化されているため、酸化処理による保護層形成工程を加えても、堆積物除去工程における堆積物除去の速度が落ちないと考えられる。
【0052】
次に、保護層形成工程と堆積物除去工程とを同時に行う実施例2として、以下の条件でプラズマ処理を行った。
【0053】
処理ガス:CHF
3/O
2/N
2=4/200/500 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/30℃
時間:144秒
【0054】
上記の実施例2では、O
2/CHF
3の流量比を50とした。この実施例2に対する比較例3として、
処理ガス:CHF
3/O
2/N
2=4/100/500 sccm
とし、O
2/CHF
3の流量比を25としてプラズマ処理を行った。これらの実施例2と比較例3とを比較すると、比較例3では、堆積物は除去できたが、
図1に示した構造のタングステン部分のパターン幅が細くなり、パターンの倒れが生じた。これに対して、実施例2では、堆積物を除去することができ、かつ、パターンの倒れが生じるようなことはなかった。
【0055】
上記の実施例2及び比較例3から明らかなように、保護層形成工程と堆積物除去工程とを同時に行う場合、酸素ガスとフッ素原子を含むガスの流量比(酸素ガスの流量/フッ素原子を含むガスの流量)は、25より大きくすることが好ましく、50程度とすることがさらに好ましい。
【0056】
実施例3として、以下の条件で保護層形成工程と堆積物除去工程とを交互に繰り返して複数回行うサイクル処理を行った。
(保護層形成工程)
処理ガス:Cl
2/N
2=160/500 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/30℃
時間:5秒
(堆積物除去工程)
処理ガス:NF
3/O
2/N
2=4/200/500 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/30℃
時間:5秒
【0057】
上記のサイクル処理を、堆積物除去工程の合計時間が20秒となるように4回繰り返して行ったところ、前述した比較例1と同様な速度で堆積物を除去することができた。また、
図1に示した構造のタングステン部分のパターン幅(CD)は、19.8nmとなり、前述した実施例1と略同等となった。したがって、実施例3では、サイドエッチングによるタングステン部分のパターン細りを有効に抑制しつつ、堆積物を効率良く除去することができることが分かった。
【0058】
上記のように、保護層形成工程においてCl
2ガスのプラズマを用いて金属の塩化物の保護層を形成する場合も、酸素ガスのプラズマを用いて金属の酸化物の保護層を形成する場合と同様に、Cl
2ガスの流量とNF
3ガス等のフッ素原子を含むガスの流量比(Cl
2のガス流量/NF
3のガス流量)を高く、例えば25より大きくし、例えば50程度とすることにより、保護層形成工程と堆積物除去工程とを同時に行うことができる。
【0059】
実施例4として、堆積物除去工程の前に、熱酸化による保護層形成工程を1回行った場合の効果を確認するための実験を以下の条件で実施した。
(保護層形成工程)
処理ガス:O
2/N
2=3000/600 sccm
圧力:172.9Pa(1300mTorr)
温度:250℃
時間:25秒
(堆積物除去工程)
処理ガス(1):CHF
3/N
2/O
2=4/200/500 sccm
処理ガス(2):N
2/Cl
2=500/160 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/30℃
時間:処理ガス(1)8秒+処理ガス(2)5秒を18サイクル
【0060】
上記実施例4の保護層形成工程は、酸素雰囲気で半導体ウエハを加熱することによる熱酸化によって保護層を形成するものである。また、比較例4として、上記保護層形成工程を行わずに、上記実施例4と同一の堆積物除去工程のみを行った。これらの実施例4と比較例4とを比較したところ、実施例4では、比較例4に比べて、特にパターンが密に形成されている部分において、
図1に示した構造のタングステン部分のパターン幅(CD)の減少を抑制しつつ堆積物を効率良く除去できていることが分かった。
【0061】
なお、上記の実施例1〜4では、フッ素原子を含むガスとして、CHF
3ガス、NF
3ガスを使用したが、他のフッ素原子を含むガス、例えばCH
2F
2ガスを使用した場合も同様な結果となった。
【0062】
また、上記の実施例1〜4では、希釈ガスとしてArあるいはN
2を使用したが、他の不活性ガス、例えばHeを使用しても良い。
【0063】
次に、還元処理についての実施例5について説明する。上記の実施例4における堆積物除去工程と同一の処理を行った後の半導体ウエハ(表面にタングステン層を形成したブランケットウエハ)の状態をXPSで測定したところ、タングステンが酸化されたため、タングステン(W)と酸素(O)の存在比(W/O)が、0.72となっていた。また、ハロゲンが残留し、Clが5.2%、Fが1.9%存在していた。これに希フッ酸(DHF)0.5%によるウエット洗浄(希フッ酸による1分間の洗浄の後、蒸留水(DIW)による1分間の洗浄)を行ったところ、タングステン(W)と酸素(O)の存在比(W/O)が、1.61、Cl及びFが0%となった。
【0064】
実施例5では、以下の条件で、上記の実施例4における堆積物除去工程と同一の処理を行った後の半導体ウエハ(表面にタングステン層を形成したブランケットウエハ)にH
2プラズマによる還元処理を行った。
処理ガス:H
2/Ar=40/960 sccm
圧力:106.4Pa(800mTorr)
高周波電力(上部/下部):300/0W
温度:60℃
時間:1分
【0065】
上記のH
2プラズマによる還元処理を行った後の半導体ウエハは、タングステン(W)と酸素(O)の存在比(W/O)が、1.58、Cl及びFが0%となり、希フッ酸(DHF)によるウエット洗浄を行った場合と略同様な状態に回復させることができた。
【0066】
実施例6として、以下の条件で保護層形成工程と堆積物除去工程とを交互に繰り返して複数回行うサイクル処理を行った。
(保護層形成工程)
処理ガス:Cl
2/Ar/O
2=250/500/50 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):150/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/20℃
時間:5秒
(堆積物除去工程)
処理ガス:CHF
3/O
2/Ar=4/300/500 sccm
圧力:13.3Pa(100mTorr)
高周波電力(上部/下部):150/0W
温度(中央部/周縁部/冷媒):60/60/20℃
時間:8秒
【0067】
上記のサイクル処理を、30回繰り返して行った。上記の保護層形成工程では、タングステンの表面にWOCl
4を保護層として形成する。この実施例6においても、堆積物を除去することができた。また、
図1に示した構造のタングステン部分のパターン幅(CD)は、21.8nmとなり、サイドエッチングによるタングステン部分のパターン細りを有効に抑制することができた。また、実施例6では、処理ガスにN
2ガスを使用しないので、潮解性のあるNH
4FやNH
4Clに起因するパーティクル(時間と共に増加する。)の発生を防止することができる。
【0068】
以上説明したとおり、本実施形態及び実施例によれば、サイドエッチングによるパターン細りを抑制しつつ、ドライ処理によってパターン側壁に堆積した金属を含む堆積物を効率良く除去することができる。なお、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。