【文献】
Kenichi Ishii et al,Activation of the Silkworm Cytokine byBacterial and Fungal Cell Wall Components via a Reactive OxygenSpecies-triggered echanism,J.Biol.Chem,2008年 1月,Vol.283,No.4,pp.2185-2191
【文献】
関水和久,モデルカイコを用いた有効性スクリーニング,化学と薬学の教室,2007年,No.157, pp.10-22
【文献】
谷中昭典,消化器疾患に対するサプリメントを科学する 第8 回 イソチオシアネ-ト-スルフォラファン含有食品による胃癌化学予防の可能性-,GI Res,2007年,Vol.15,No.6,Page.514-522
【文献】
春日洋二 他,食品の免疫学的評価に関する研究 (第1報)食品成分の抗体生産増強作用について,岐阜県保健環境研究所報,1996年,No.4,Page.1-4,表1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の具体的形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲内で任意に変形することができる。
【0034】
本発明は、少なくとも、上記の工程(2)ないし(4)を含む製造方法で製造されたものであることを特徴とし、下記の態様1と態様2を含んでいる。
【0035】
[態様1]
本発明は、好ましくは、上記の工程(1)ないし(4)を含む製造方法で製造されたものである。以下、これを「態様1」とする。
態様1は、更に、上記工程(3)より前の工程として、(A)植物体を、自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する工程、を行うことが特に好ましい。
【0036】
[態様2]
本発明は、好ましくは、上記の工程(2)ないし(4)を含む製造方法であって、上記工程(3)より前の工程として、(A)植物体を、自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する工程を行う製造方法で製造されたものである。以下、これを「態様2」とする。
態様2は、更に、植物体を粉砕、細断又はすりおろしを行う前に上記工程(3)を行い、次いで、(1’)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程を行った後に上記工程(4)、を行うことが特に好ましい。
【0037】
以下、それぞれの工程ごとに説明する。なお、上記した通り、本願発明や態様によっては、下記する各工程の幾つかは、要件として必須でない場合があるが、形式的に工程(1)から順番に説明する。なお、本発明のうち態様1は、工程(1)ないし(4)を全て含むので、まず、態様1の説明をすることになる。そして、次いで、態様2を後述する。
【0038】
[態様1]
<工程(1)>
工程(1)は、植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程である。本発明における植物体は、自然免疫活性化作用を有する物質又は組成物を含有する可能性のあるものであればその種類を問わない。自然免疫活性化作用の有無や強弱について、何ら情報のない植物体であっても適用することができる。また、植物体組織が生きている状態でその組織を破壊して抽出することが好ましいが、乾燥物や粉末状であっても差し支えない。それは、後述する完全変態型昆虫は、倫理上やコスト上の問題が少ないので、ごく初期のスクリーニング段階から、多くの種類の植物体、及び多くの状態の植物体の評価に用いることができ、さまざまな抽出条件の検討にも用いることができるので、対象となる植物体の種類や状態は、広く採ることができ、特に限定されない。
【0039】
植物体は、粉砕、細断又はすりおろしされるが、植物組織が破壊されたり、表面積が大きくなったりして抽出し易くなれば、それらの方法には特に限定はなく、公知の方法が使用し得る。粉砕、細断又はすりおろしする装置としては、特に限定はないがホモジナイザー等の粉砕機等が挙げられる。
【0040】
工程(1)「植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程」の前工程及び/又は後工程として他の工程を加えることも可能である。「他の工程」としては、細胞組織破壊、凍結、乾燥、加熱、保存、薬品処理、酵素処理等が挙げられる。これらは、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させ易くしたり、自然免疫活性化成分を溶出させ易くしたりするために行われる。「他の工程」では、少なくとも自然免疫活性化成分を実質的に溶出させない又は系外に出さないことが好ましく、自然免疫活性化成分以外の成分も自然免疫活性化成分も溶出させない又は系外に出さない(散逸させない)ことが、その後の工程(2)〜(4)を確実に行うために好ましい。
【0041】
なお、前記したように、「工程(3)より前に行う工程(1)」は、態様1では必須の工程であるが、本願発明や態様2では必須の工程ではない。
【0042】
<工程(2)>
工程(2)は、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを、自然免疫活性を評価するための指標として用いて、上記した工程(1)の処理物から自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件、及び自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件を選定する工程である。
【0043】
[完全変態型昆虫の幼虫]
本発明に用いられる完全変態型昆虫とは、卵、幼虫、蛹、成虫の成長過程を経る昆虫をいう。完全変態型昆虫としては、例えば、鱗翅目(チョウ、ガ等)、双翅目(ハエ等)、膜翅目(ハチ、アリ等)、甲虫目(カブトムシ等)等に属する昆虫が挙げられる。下記の(5)〜(7)の要件を満たすため、完全変態型昆虫の幼虫(以下、単に「幼虫」と略記する場合がある)が本発明には用いられる。本発明においては、これらの完全変態型昆虫の幼虫の緩行性筋収縮の大きさを測定するので、体長が長く、イモムシ形態のものが好ましい。その点、鱗翅目又は甲虫目に属する昆虫の幼虫が適しており、中でもカイコガの幼虫(以下、「カイコ」と略記する)は、下記の(1)〜(7)を満たすので、特に好適に用いることができる。
【0044】
(1)入手が容易である。
(2)飼育する方法が既に確立されており、更に飼育に利便性がある。
(3)ヒト等の哺乳類の内臓・器官と類似する性質が、これまでの研究である程度分かっている。
(4)遺伝系統が確立されており、遺伝的均一性の維持ができている。
(5)比較的大型で、動きが緩慢であり、実質上無毛なので、定量的に扱いやすい。
(6)狭いスペースで多数の個体を飼育でき、倫理的な問題も少ない。
(7)齢を揃える等、同じ状態の個体を揃えることが容易である。
【0045】
それに対し、カマキリやバッタ等に代表される不完全変態型昆虫の幼虫は、緩行性筋収縮の大きさを測定するには不適であり、生育状態を揃えることが難しく、動きも活発で、完全変態型昆虫の幼虫と比べた場合、不利な点が多い。
【0046】
本発明においては、上記幼虫の大きさや齢数は、幼虫の種類、幼虫の形態、操作上の観点等から選択されればよく特に限定はないが、例えばカイコの場合、3齢以上の幼虫を用いることが好ましい。4齢〜5齢の幼虫がより好ましく、5齢の幼虫が特に好ましい。ただ、卵から育てた場合等、より早く試験に供する幼虫を確保したい場合には、3齢や4齢幼虫を用いることも可能である。
【0047】
試験動物として用いる昆虫の幼虫の大きさは特に限定はないが、被検物質の投与、臓器の取り出し、血液の採取等の容易さの観点から、体長が1cm以上である幼虫が好ましく、1.5cm以上15cm以下がより好ましく、2cm以上10cm以下が特に好ましい。
【0048】
本発明にカイコを用いる場合には、その品種は特に限定されない。これらは受精卵から育てて用いてもよいし、必要な齢の幼虫を入手して試験を実施してもよい。カイコガの受精卵やカイコの入手先としては、愛媛蚕種、上田蚕種等がある。緩行性筋収縮活性の大きさの測定を行う場合、筋肉への余分な信号の入力を排除するために幼虫は断頭筋肉標本として使用することが好ましい。
【0049】
この緩行性筋収縮活性の大きさが自然免疫活性化の指標となる理由は、本発明者が以下のメカニズムの存在を見出したことによる。すなわち、自然免疫活性化物質(ペプチドグリカン、β−グルカン等が例示される)が、自然免疫系を持つ生物の体内に入ると免疫担当細胞の受容体に結合し、その結果として活性酸素種が産生され、それが完全変態型昆虫の幼虫の場合には麻痺ペプチドであるBmPPの活性化をもたらし、活性化されたBmPPが筋肉細胞に作用して筋肉の収縮を促すというメカニズムである。筋収縮はこれ以外に神経伝達物質が作用した場合にも起こるが、その場合の筋収縮は試料を投与してから数秒以内に終了する速い反応であるのに対して、自然免疫系が活性化された場合の筋収縮は、収縮の完了に約10分程度を要する緩行性筋収縮なので、両者は明確に区別することができる。
【0050】
また、この評価方法(指標)は、マクロファージ等の免疫担当細胞を用いた評価方法に比べて自然免疫活性化物質の体内動態を反映できるという利点がある。更に、培養細胞を用いて評価を行う場合に、「自然免疫活性化作用の可能性があるとされて擬陽性物質と評価されてしまい問題となるLPS」の影響を受けない(LPSは自然免疫活性化作用があると評価されない)という利点もある。従って、精製の進んでいないさまざまな成分を含んでいる組成物の体内における自然免疫活性化作用の評価を行うという本発明には特に適した指標となっている。
【0051】
[一次スクリーニング]
[評価方法の正確性・有効性]
本発明における植物体は、自然免疫活性化作用を有する物質又は組成物を含有する可能性のあるものであればその種類に限定はなく、自然免疫活性化作用の有無や強弱について、何ら情報のない植物体であってもよい。従って、本発明の工程(2)に先立って、どの植物体からの抽出物が自然免疫活性を有するかを、まず一次スクリーニングすることも好ましい。例えば、一次スクリーニング用の抽出方法としては特に限定はないが、次の方法が好ましいものとして挙げられる。
【0052】
すなわち、要すれば、ホモジナイザー等の粉砕機によって、粉砕、細断、すりおろし等をして組織破壊処理を行った植物体を、要すれば、オートクレーブ処理等の加熱処理をした後に遠心処理して上清を得る。この上清をそのまま緩行性筋収縮活性の大きさを測定するための試料として用いてもよいが、凍結乾燥等で乾燥し、生理食塩水等に溶かしてから一次スクリーニング用の試料としてもよい。この一次スクリーニング用試料の抽出方法や試料の調製方法は、上記には限定されず、目的に応じて任意に選択して行えばよい。
【0053】
定量的評価のために、生理食塩水等で段階希釈してから、カイコ等の完全変態型昆虫の幼虫の緩行性筋収縮活性の大きさの測定に供する。緩行性筋収縮活性の大きさの測定は、例えば、カイコの断頭筋肉標本に対して、例えば試料0.05mLを血液内注射し、緩行性筋収縮の経時的変化を記録することにより行う。緩行性筋収縮活性の大きさは、注射前の体長から注射後の体長を引き算し、その値を注射前の体長で割り算した値を「C値」(Contraction Value)として評価することができる(K Sekimizuら;J.Biochem.137,199−203(2005)参照)。C値はレコーダーにより記録し、緩行性筋収縮活性の大きさが最大となったときの値とした。また相互比較を容易とするために、C値が0.15の場合の(グラフ上でC値を0.15に内挿した)緩行性筋収縮活性を1ユニットと定義した。
【0054】
各評価を行う際には、測定間にブレがあるかどうかを確認するために、ネガティブコントロールとポジティブコントロールを測定することが好ましい。例えば、生理食塩液0.05mLをネガティブコントロール(C値0.05以下を許容)、空気0.2mLをポジティブコントロール(C値0.2〜0.4内に収まる場合を許容)として完全変態型昆虫の幼虫の筋肉標本に投与し、測定の信頼度の目安とすることが好ましい。
【0055】
完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性で自然免疫活性化作用が評価できる機序は前記した通りであるが、実際に評価できることは後述する実施例中の試験例で確かめられている。すなわち、試験例1によると、自然免疫活性化作用が確認された植物体は、ブロッコリー、菜の花、パセリ、ニンジン、ピーマン、ミニトマト、カボチャ、ネギ(根)、ゴボウ、パクチー、キウリであった(表1参照、表1には一部未記載)。一方、ホウレンソウ、ニンニク、ダイコン、ショウガ、トウビョウ、キャベツは何れも、カイコの緩行性筋収縮活性を示さなかった(表1参照、表1には一部未記載)。自然免疫活性化作用が確認されたものの中では、特に、アブラナ科のブロッコリー(7.2ユニット/mg:5回の平均値)、菜の花(アブラナの花部分2.1ユニット/mg)の活性が明確に高く、その他ではセリ科のパセリとニンジンが、0.6〜1ユニット/mg程度と比較的高い自然免疫活性化作用を示した。
【0056】
アブラナ科2種とセリ科3種の植物体で活性の高いものを認めたことから、以下に述べる本発明の自然免疫活性化組成物とその製造方法の対象とする植物体として、アブラナ科とセリ科の植物体は好ましい。他のアブラナ科の植物体は例えば、キャベツ、ケール、カリフラワー、芽キャベツ、ハクサイ、コマツナ、チンゲン菜、野沢菜、広島菜、ミズナ、ワサビ等であり、セリ科植物体は例えば、セリ、アシタバ、セロリ、ミツバ、クミン、フェンネル等である。ダイコンはアブラナ科であるが活性を示さなかった。これは他の2種と評価部位が異なるためと考えられる。因みにブロッコリーの場合でも根は活性を示さなかった(表2参照)。
【0057】
以上の結果から、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件と活性化成分を溶出させる抽出条件の検討又は選択に、本発明が適用できるかの検討を行う対象として、明確に自然免疫活性化作用の高かったブロッコリーを選択した。すなわち、抽出条件の検討又は選択にブロッコリーを選択したのは、現時点でブロッコリーが最もC値が大きかった(1ユニットを示す質量が小さかった)からであり、本発明の自然免疫活性化組成物とその製造方法はブロッコリーからの抽出物に限定されるものではない。
【0058】
[工程(2)の態様]
工程(2)は、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを、自然免疫活性を評価するための指標として用いて、前記した工程(1)の処理物から「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件、及び自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件」(以下、括弧内を単に「抽出条件」と略記することがある)を選定する工程である。
【0059】
本発明における「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件」とは、以下の(a)、(b)及び(c)を含有する。
(a)自然免疫活性を抑制又は低減する物質群を溶出させる抽出条件
(b)自然免疫活性化作用を有する物質の効果を阻害する物質群を溶出させる抽出条件
(c)自然免疫活性化を示さない物質群を溶出させる抽出条件
【0060】
(a)で溶出される物質群は、自然免疫活性化作用を有する物質とは独立に自然免疫活性を落とす物質群であり、(b)で溶出される物質群は、自然免疫活性化作用を有する物質群に作用してその効果を阻害し結果として総合的に自然免疫活性を落とす物質群であり、(c)で溶出される物質群は、自然免疫活性に関しては何れの効果も示さずに単に増量させている物質群である。このうち、(a)及び/又は(b)、すなわち「自然免疫活性化を阻害する物質群を溶出させる抽出条件」であることが、単に自然免疫活性化組成物の純度を上げて組成物の単位質量中の「自然免疫活性化作用を有する物質」の含有量を上げるに止まらず、積極的に自然免疫活性化作用を著しく増強させるため好ましい。なお、「物質群」には複数物質に限られず単一物質も含まれる。
【0061】
更に、本発明における「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件」は、下記(d)であることが、その一部であっても自然免疫活性化成分を廃棄してしまわない等のために好ましい。
(d)自然免疫活性化成分を実質的に溶出させない抽出条件
【0062】
「自然免疫活性化成分以外の成分」としては特に限定はないが、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩等の塩類;ブドウ糖、ショ糖等の糖類等が挙げられる。なお、水は「自然免疫活性化成分以外の成分」には含まれない。
【0063】
上記抽出条件を検討する為に、まず抽出時間を20分に固定して水抽出温度を変動させてそれぞれの抽出温度で抽出されてくるものの自然免疫活性化作用について検討を行った。その結果、抽出温度が80℃から121℃までの試料は緩行性筋収縮活性を認めたが、60℃の試料は緩行性筋収縮活性が認められないという結果が得られた(表3参照)。また60℃で抽出処理を行った後の抽出残渣に対して121℃で2度目の水抽出を行ったところ、この場合の抽出物は最初から121℃で抽出操作を行ったものと比較して凍結乾燥物1mg当たりの活性が2.5倍高まる結果を与えることが判明した(表4参照)。
【0064】
上記の抽出条件の場合に自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物が得られた理由は不明であるが、例えば、ブロッコリー中に含まれる多くの成分の内、60℃の水抽出条件では、(a)自然免疫活性化を抑制又は低減する物質群が優先的に抽出され、(b)自然免疫活性化作用を有する物質の効果を阻害する物質群が優先的に抽出され、及び/又は、(c)自然免疫活性化を示さない物質群が優先的に抽出され、その結果、抽出残渣からの抽出物から高い温度で抽出された組成物に、自然免疫活性化を示す物質群が濃縮され(上記(c))、又は自然免疫活性化を示す物質群の効果が十分発揮され(上記(a)と(b))、「自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物」が得られたと考えられる。
【0065】
このような形での自然免疫活性化作用の増強が可能となったのは、種々の物質の生体内での相互作用を総合的に評価することが可能だからである。また、植物体の種類、産地、保存状態、抽出部位、抽出条件等の多くの条件のうち、抽出条件の特定が有効であることが分かったのは、莫大な数の条件を振って試行錯誤による多くの検討が可能になったからであり、更に、多くの抽出条件のうち、温度の違いが有効であることが分かったのは、多くの抽出条件を振っての試行錯誤による多くの検討が可能になったからであり、上記評価方法や指標がコスト的にも倫理的にも有利であり、また簡便で短時間で結果が分かるからである。
【0066】
本発明の実施例の結果は、あくまでも植物体の種類、部位、組織破壊方法、抽出装置、抽出時間、圧力、抽出溶媒等の諸条件の総和として得られた結果であって、抽出温度は本発明において、抽出物の性質を決める主要な要因であることは確かであるが、抽出温度に限定されるものではない。本発明における「抽出条件」としては特に限定はないが、抽出前組織破壊条件、抽出前乾燥条件、抽出前加熱条件、抽出前保存条件等の抽出前処理条件;抽出温度、抽出時間、抽出圧力、抽出溶媒、抽出時攪拌条件、抽出装置等の抽出中処理条件;酵素抽出法か否か等が挙げられる。
【0067】
「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件」には、「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる洗浄条件」も含まれる。「自然免疫活性化成分以外の成分」は不要であるので、抽出成分を確保する必要はないからである。従って、「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件」としては水洗も好ましい。
【0068】
上記自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件が、「抽出温度80℃未満で水抽出又は水洗すること」であることが、自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物を得るために好ましい。抽出温度が重要であることがブロッコリーで確認されたので、上記条件はブロッコリーのみならず植物体全体に適用され得る。限定されるわけではないが、自然免疫活性化成分以外の成分には硝酸塩等の塩が予想され、例えば、極めて水に溶解し易い物質には、「自然免疫活性化成分以外の成分」や「自然免疫を非活性化する成分」が多いであろうという考察によって、ブロッコリー以外の他の植物体に対しても、ブロッコリーでの種々の抽出条件が応用できる根拠となっている。
【0069】
上記自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件は、0℃〜60℃で水抽出又は水洗することがより好ましく、5℃〜40℃で水抽出又は水洗することが特に好ましく、10℃〜35℃で水抽出又は水洗することが更に好ましく、15℃〜30℃で水抽出又は水洗することが最も好ましい。温度が低過ぎると、自然免疫活性化成分以外の成分を抽出する効率が落ちたり、無駄に低温にするためにコストがかかったりする場合がある。一方、温度が高過ぎると、自然免疫活性化成分をも溶出させてしまう場合がある。
【0070】
上記自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件は、「抽出温度80℃以上で水抽出すること」であることが、抽出効率を上げ、自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物を得るために好ましい。かかる抽出温度が重要であることがブロッコリーで確認されたので、上記条件は植物体全体に適用され得る。かかる水抽出の温度は、90℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましく、110℃以上が更に好ましく、120℃以上が最も好ましい。
【0071】
抽出溶媒は水に限定されず、水以外に、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルペンタン、ノルマルヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール系分散媒類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等の2価のアルコール類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノイソプロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−プロパノール、2−メチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノ−1−ブタノール等のアミノ基含有アルコール類等を挙げることができる。中でも、純水;エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン等の水溶性溶媒が好ましい。これらは単独でも、2種以上混合して使用してもよい。また、水に一定量含有させてもよい。更に、水等の抽出溶媒には、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の水溶性塩類を溶解させてもよい。
【0072】
純水以外で抽出した場合には、抽出後、常法に従って水に溶媒置換して、完全変態型昆虫の幼虫に投与することが好ましい。投与試料の調製は、前記一次スクリーニングの項で記載したものと同様である。すなわち、ホモジナイザー等を用いて、粉砕、細断、すりおろし等の適当な組織破壊処理を行った植物体を、例えばオートクレーブ処理等の抽出処理をした後に遠心処理して上清を得ることが好ましい。
【0073】
この上清をそのまま投与試料として用いてもよいが、得られる緩行性筋収縮活性の大きさ、C値等の相互比較をし易くするために、投与試料の質量を規格化するための処理をすることも好ましい。例えば、かかる上清を凍結乾燥等で乾燥し、生理食塩水等に溶かし、場合によりオートクレーブ処理して完全溶解させてから投与試料とすることも好ましい。植物体のセルロースやペクチンを酵素分解して固液分離する酵素抽出法を行ってもよい。植物体が組織破壊処理を行った形で市場に供給されているものの場合は、工程(2)の直前の粉砕処理等は省略してもよい。
【0074】
上記投与試料は、「ユニット/mg」の値をグラフから内挿して得るために、生理食塩水等で段階希釈してから、カイコ等の完全変態型昆虫の幼虫に投与することが好ましい。緩行性筋収縮活性の大きさの測定は、好ましくはカイコ5齢幼虫の断頭筋肉標本に対して、例えば0.05mL程度の投与試料を血液内に注射し、緩行性筋収縮活性の大きさの経時的変化を記録することにより行う。下記式で定義されるC値は、緩行性筋収縮の大きさ(下記式における分子)が最大となったときの値である。
[C値]=([注射前の体長]−[注射後の体長])/[注射前の体長]
【0075】
また、定量的比較を容易とするために、C値が0.15の場合の(グラフ上でC値を0.15に内挿した)緩行性筋収縮活性を1ユニットと定義した。ネガティブコントロールとポジティブコントロールに関しても、前記一次スクリーニングの項で記載したものと同様である。
【0076】
本発明の工程(2)において、自然免疫活性化作用を示す抽出条件の選定は、工程(1)の処理物に対しての抽出で選定した抽出条件だけでなく、抽出残渣に対して改めて抽出して選定した抽出条件でもよいことは言うまでもない。
【0077】
<工程(3)>
工程(3)は、「工程(1)の処理物から、工程(2)で選定された自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件で抽出操作を行う工程」である。工程(3)の抽出操作は、工程(2)で選定された抽出条件で実質的に行うが、そっくりに行う必要はなく、多少の修正を加えてもよい。例えば、工業的な生産に応じて、適宜、拡大則等に則って修正してもよい。
【0078】
自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件については、抽出温度80℃未満で水抽出又は水洗することが好ましい。抽出温度は70℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましく、50℃以下が更に好ましい。また、15〜30℃の室温で溶出することもコストを考えると好ましい。抽出温度が高過ぎると、自然免疫活性化成分を抽出させてしまう場合がある。上記自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件は、自然免疫活性化成分以外の成分を水洗する操作であることが、簡便であり、自然免疫活性化成分を溶出させないために特に好ましい。ここで、水洗水は15〜30℃の室温の水であることが好ましい。
【0079】
<工程(4)>
工程(4)は、工程(3)を行った後の抽出残渣から、工程(2)で選定された自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件で抽出操作を行う工程である。工程(4)の抽出操作は、工程(2)で選定された抽出条件で実質的に行うが、そっくりに行う必要はなく、多少の修正を加えてもよい。例えば、工業的な生産に応じて、適宜、拡大則等に則って修正してもよい。また、工程(1)の処理物に対しての抽出で選定した抽出条件だけでなく、工程(3)を行った後の抽出残渣に対して、工程(2)で改めて抽出して選定した抽出条件でもよい。
【0080】
工程(4)において、自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件は、抽出温度80℃以上で水抽出することが抽出効率の点で好ましく、熱水抽出であることが特に好ましい。ここで、「熱水」とは90℃以上の水をいう。100℃以上がより好ましく、110℃以上が特に好ましく、120℃以上が更に好ましい。100℃以上の水での抽出にはオートクレーブ等を用いることが好ましい。
【0081】
態様1においても、上記工程(3)より前の工程として、(A)植物体を、自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する工程、を行うことが特に好ましい。工程(A)については、それを必須工程とする態様2の個所で詳述するので、態様1でもその記載が適用できる。工程(A)を行う場合には、工程(3)より前に行うことが必要であるが、工程(1)の前でも後でもよく、また、工程(3)の直前でもよい。
【0082】
工程(A)を加えることで、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させ易くできる。また、「加熱により自然免疫活性化成分以外の成分に変化する物質」が植物体に含まれる場合、その物質を工程(A)によって「自然免疫活性化成分以外の成分」に変化させて、水等に溶出させ易くする効果もある。また、前加熱によって、自然免疫活性化成分以外の成分を植物体の表面に移行させ溶出させ易くしたり、植物体の表面構造をそれぞれの成分が溶出させ易くしたりする効果もある。
【0083】
[態様2]
態様2は、上記の工程(2)ないし(4)を含む製造方法であって、上記工程(3)より前の工程として、(A)植物体を、自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する工程を行う製造方法で製造されたものである。態様2は、態様1と違い、工程の最初に(1)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程、を行うことを必須としていない。それに代えて、工程(3)より前の工程として、(A)植物体を、自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する工程、を必須としている。以下、「自然免疫活性化成分以外の成分」と「自然免疫活性化成分」とを総称して「成分」と略記することがある。
【0084】
<工程(1)〜工程(4)>
態様2における、工程(1)〜工程(4)は、態様1の個所で説明したものと同様のものが用いられる。また、好ましい範囲も同様である。
【0085】
<工程(A)>
工程(A)における前加熱の方法は、植物体中の自然免疫活性化成分以外の成分も、自然免疫活性化成分も、何れも実質的に散逸させない方法であれば特に限定はなく、オートクレーブ内加熱、マイクロ波照射、電気炉内加熱、ガス炉内加熱、接炎、赤外線照射等が好ましいものとして挙げられる。前加熱に用いられる装置も特に限定はないが、例えば、オートクレーブ、電子レンジ、電気炉、ガス炉、バーナー、赤外線照射装置等が挙げられる。
【0086】
工程(A)における前加熱の温度は、効果を奏せば特に限定はないが、植物体の温度として、70〜160℃が好ましく、85〜140℃がより好ましく、100〜120℃が特に好ましい。温度が低過ぎる場合は、上記した効果を奏さない場合、特に、自然免疫活性化成分以外の成分が植物体から溶出させられるような状態にできない場合があり、また、「自然免疫活性化成分以外の成分」の前駆体を「自然免疫活性化成分以外の成分」に変えて比較的低温の水で溶出させ易くできない場合がある。一方、温度が高過ぎる場合は、自然免疫活性化成分が分解したり、加熱コストが無駄になったりする場合がある。
【0087】
工程(A)における前加熱の時間も上記効果を奏する範囲であれば特に限定はなく、加熱装置、加熱原理、植物体の形状等によって適宜調節すればよいが、マイクロ波照射以外では、10秒〜30分が好ましく、20秒〜10分がより好ましく、30秒〜3分が特に好ましい。マイクロ波照射では、10秒〜10分が好ましく、20秒〜5分がより好ましく、30秒〜3分が特に好ましい。
【0088】
「自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する」とは、かかる成分を系外に実質的に出さないように前加熱することを意味する。従って、水等の液体媒体中で加熱しないことが好ましく、真空下、又は空気、不活性気体等の気体雰囲気下(1気圧未満、1気圧、1気圧を超える気圧の何れでもよい)での加熱が好ましい。言い換えると、上記工程(A)における前加熱は、植物体を液体媒体中で加熱しない加熱であることが好ましい。操作の容易性から、植物体の周りを容器で覆ったり、ラップ等で包んだりして、後加熱の後のものを全て回収できるようになっていることが好ましい。植物体に含まれる水分は散逸してもよい。オートクレーブ等を用い、密閉状態又は加圧(1気圧を超える気圧)下で工程(A)の前加熱を行うこともできる。
【0089】
本発明における工程(A)で行う前加熱は、単に抽出効率を上げるために行っているものではなく、植物体内部から植物体外部に自然免疫機能を活性化する成分をできるだけ漏出させないようにして、自然免疫機能を活性化しない成分のみを除去し易くすることを目的として行うものである。
【0090】
植物体中の成分を実質的に散逸させないように前加熱することによって、工程(4)でまとめて抽出すべき自然免疫活性化成分の前加熱段階での消失(ロス)を防止することができる。また、自然免疫活性化成分以外の成分は、工程(A)の前加熱段階で消失(ロス)しても、そもそもこれは不要の成分であるため問題はない。しかしながら、自然免疫活性化成分以外の成分は水に溶解し易いため、前加熱で水を共存させると、前加熱は100℃以上で行うことが好ましいので、必然的に自然免疫活性化成分も前加熱段階で消失(ロス)してしまうことになる。従って、水等の液体媒体中での前加熱では、前加熱を例えば80℃以上(好ましくは100℃以上)で行うことを前提にすれば、自然免疫活性化成分の消失(ロス)なしに、自然免疫活性化成分以外の成分を選択的に溶出させることは難しい。従って、いっそのこと、何れの成分をも実質的に散逸させないように前加熱することが、選択的な抽出の実現、加熱条件の簡略化、前加熱装置の入手容易性等のためによい。
【0091】
なお、上記した前加熱の効果を考慮すると、自然免疫活性化成分以外の成分に関しては、前加熱で若干の消失(ロス)があったとしても、その操作は工程(A)に含まれ、本発明の態様2にも含まれる。
【0092】
前記した前加熱条件の検討も、その後の抽出液を完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを、自然免疫活性を評価するための指標として用いて行われる。完全変態型昆虫の幼虫は倫理的問題が少なく多くの実験が可能であるため、初めてこのような検討が可能になった。
【0093】
工程(A)を加えることで、植物体から成分を溶出させ易くできる。中でも自然免疫活性化成分以外の成分を極めて溶出させ易くできる。前加熱によって、自然免疫活性化成分以外の成分が極めて容易に溶出されるようになるので、工程(3)の前までに又は工程(3)の直前に、(1’)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程、を行う必要がなくなり、水洗等を含む工程(3)の簡易化が可能になる。例えば、ブロッコリー、ニンジン等の野菜を、粉砕等をせずにそのまま工程(A)を行い、更に粉砕等をせずにそのまま水洗等を含む工程(3)を行えば、植物体を塊のまま(植物体自体の形のまま)処理できるので、取り扱いが容易となり、濾過の必要性、有効成分の散逸のおそれがなくなる等、工程の簡易化が可能になる。工程(A)を行うことによって、植物体を塊のまま(植物体自体の形のまま)水洗等を行っても、十分に自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させ抽出することができるようになった。
【0094】
以上のことは、本発明者は、工程(2)と同じ実験を行うことで確かめている。すなわち、工程(3)の前に、(1’)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程を行う必要がないことは、その後の水洗水、抽出液等を、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを指標として確かめている。例えば、工程(A)の後、植物体を塊のまま(植物体自体の形のまま)、工程(3)において水洗を行った後の水洗水には、「自然免疫活性を抑制又は低減する物質」等の「自然免疫活性化成分以外の成分」が多く含まれている。すなわち、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件、及び、自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件を明確に分けられることは、完全変態型昆虫の緩行性筋収縮活性の大きさを指標として確かめている。
【0095】
更に工程(A)の効果としては、前加熱によって、自然免疫活性化成分以外の成分を植物体の表面に移行させ溶出させ易くしたり、植物体の表面構造をそれぞれの成分が溶出させ易くしたりすることが挙げられる。自然免疫活性化成分以外の成分が、細胞内の(加熱された)水に溶解して、表面に移行するとも考えられる。
【0096】
また、「加熱により自然免疫活性化成分以外の成分に変化する物質」が植物体に含まれている場合もある。その場合は、その物質を加熱することによって「自然免疫活性化成分以外の成分」に変化させて、水等に溶出させ易くする効果もある。すなわち、後に行う工程(4)では加熱下に水抽出することが好ましいが、工程(A)を行わず工程(4)での加熱により初めて、自然免疫活性化成分以外の成分に変化させてしまうと、自然免疫活性化成分以外の成分を除去し損なってしまうので、予め前加熱で(予め工程(A)で)自然免疫活性化成分以外の成分に変化させて、水等に溶出させ易くして工程(3)で取り除いてしまうことが可能である。このような成分としては明確ではなくまた特に限定はないが、例えば、植物体における加熱したときに出てくる苦味成分等が挙げられる。
【0097】
このような検討も、抽出液を完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを、自然免疫活性を評価するための指標として用いて行われる。完全変態型昆虫の幼虫は倫理的問題が少ないので多くの実験が可能であるため、初めてこのような検討も可能になった。
【0098】
以下に、工程(A)に関し、具体的に、「マイクロ波照射による前加熱」を例にとって更に具体的に説明するが、本発明の工程(A)における前加熱の方法や装置は、これに限定されるものではない。
【0099】
[マイクロ波照射による植物体の加熱]
【0100】
マイクロ波照射に用いるマイクロ波発生装置は特に限定はないが、出力が100W〜2000Wのものが好ましく、100W〜500Wのものが特に好ましい。照射周波数は900MHz〜3000MHzのものが好ましく、2450MHzのものが特に好ましい。例えば、家庭用や業務用の電子レンジをマイクロ波発生装置として使用することができる。
【0101】
照射出力、照射周波数、照射時間、照射距離等のマイクロ波照射条件は、対象とする植物体の種類、植物体に対する細断等の前処理の有無、前処理の種類や程度、製造スケール等の諸条件に応じて変化する。従って、かかる照射条件は、後述する完全変態型昆虫の幼虫を用いた、各段階の処理物の評価結果を参考にして決定することが好ましい。
【0102】
「マイクロ波照射による加熱条件」は、上記照射条件によって決まる。かかる「マイクロ波照射による加熱条件」は、後述する完全変態型昆虫の幼虫を用いた際の緩行性筋収縮活性の大きさを指標として設定することが、操作が簡便であり、自然免疫活性化作用の大きさの評価が正確であるために好ましい。
【0103】
具体的には、一定質量の植物体を用意し、照射出力を固定して、照射時間を一定の間隔で変動させて各処理物を評価する、又は、照射時間を固定して照射出力を変動させて各段階の処理物を評価する等の方法で照射条件を設定する。
【0104】
本発明法における「マイクロ波照射による加熱」は、全ての成分の抽出効率を単純に向上させるために行うものではないので、適切な「マイクロ波照射による加熱条件」は、後述する完全変態型昆虫の幼虫を用いた評価系で決定することが好ましい。従って、照射エネルギー、照射電力、照射時間は特に限定されるものではないが、植物体10gを用いた場合、装置の設定電力と照射時間から求めた照射エネルギーは、1kJ〜100kJが好ましく、4kJ〜40kJがより好ましく、8kJ〜20kJが特に好ましい。照射電力は装置の設定電力として、100W〜2000Wが好ましく、100W〜500Wが特に好ましい。また、照射時間は5〜200秒が好ましく、10〜100秒がより好ましく、20〜40秒が特に好ましい。植物体が10gより多い場合、比例的に大きくなるとは限らないが、植物体の質量にほぼ応じて増加させることが好ましい。
【0105】
照射条件が弱すぎると、植物体から自然免疫活性化成分以外の成分を除去し難くなったり、自然免疫活性化組成物を抽出し難くなったりして、自然免疫活性化作用が増強された組成物が得られない場合がある。一方、照射条件が強すぎても、植物体から自然免疫活性化成分以外の成分を除去し難くなったり、自然免疫活性化組成物を抽出し難くなったりして、自然免疫活性化作用が増強された組成物が得られない場合がある。
【0106】
マイクロ波照射に際し、植物体はその種類や処理量に応じて、細断等の前処理の有無や前処理の種類若しくは程度を選択すればよい。前処理としては、例えば、粉砕、細断、すりおろし等が挙げられる。また、細断しなくてもマイクロ波照射によって容易に加熱することができるものであれば、前処理を行わずにそのまま照射してもよい。更に、下記するように、前加熱を行うと、粉砕、細断又はすりおろし等の前処理を行わなくても、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させることができるので、前処理をしないか細断程度に留めることも、後の溶出操作の容易性を考慮すると好ましい。少なくとも、マイクロ波照射による加熱に適した大きさに切断した後にマイクロ波照射に供することが好ましい。
【0107】
また照射に際し、受け皿に乗せた状態でそのまま照射してもよいし、専用容器に入れて蓋をした後に照射してもよいし、ラップ等で覆った後に照射してもよい。かかる条件は、自然免疫機能を活性化する成分を分解させたり、漏洩、散逸しない条件に設定し、最終的な評価結果が良くなるように設定する。そのため、ラップで覆った後に照射することが特に好ましい。
【0108】
<工程(3)>
態様1の個所で前述した通り、工程(3)の自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件については、抽出温度80℃未満で水抽出又は水洗することが好ましい。抽出温度は70℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましく、50℃以下が更に好ましい。また、15〜30℃の室温で溶出することもコストを考えると好ましい。植物体を塊のまま(植物体自体の形のまま)でこの温度でも、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させることが可能である。抽出温度が高過ぎると、自然免疫活性化成分を溶出させてしまう場合がある。上記自然免疫活性化成分以外の成分は、水洗によって除くことが、簡便であり、自然免疫活性化成分を溶出させないために特に好ましい。ここで、水洗水は15〜30℃の室温の水であることが、コストや簡便性のために好ましい。
【0109】
更に、工程(A)を行い、植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程を行わずに工程(3)を行うときは以下が好ましい。すなわち、「自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作」としては、洗浄、抽出等が挙げられる。洗浄溶媒又は抽出溶媒としては特に限定はないが、水が好ましい。後述する「自然免疫活性化成分以外の成分」には水に溶解し易いものが多いためである。「自然免疫活性化成分以外の成分」は通常は不要であるため、除去された成分を廃棄する操作である「洗浄」が好ましい。「洗浄」の中でも、洗浄溶媒として水を用いる「水洗」が特に好ましい。
【0110】
洗浄溶媒又は抽出溶媒の温度は特に限定はないが、0℃〜60℃が好ましく、5℃〜40℃がより好ましく、10℃〜35℃が特に好ましく、15℃〜30℃が更に好ましい。温度が低すぎると、自然免疫活性化成分以外の成分を抽出する効率が落ちたり、無駄に低温にするためにコストがかかったりする場合がある。一方、温度が高すぎると、自然免疫活性化成分をも溶出させてしまう場合がある。
【0111】
特に好ましい態様である「水洗」は、流水にさらす、水に漬ける等の方法で行えばよい。水量は植物体の種類、スケール、自然免疫活性化成分以外の成分の種類等によって変化するが、植物体10gを用いた場合、500mL〜4Lが好ましく、1L〜2Lが特に好ましい。植物体が10gより多い場合、比例的に大きくなるとは限らないが、植物体の質量にほぼ応じて増加させることが好ましい。水には、水溶性溶媒、界面活性剤、水溶性塩等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることも好ましい。水溶性溶媒としては特に限定はないが、エタノール、ブチレングリコール等が挙げられる。
【0112】
「自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作」は1段階の操作には限定されない。すなわち、例えば、水以外の溶媒を用いて「自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作」を行い、その後に水洗を行ってもよい。また、温度を2段階以上に変化させて、2段階以上の操作で除去してもよい。
【0113】
<工程(1’)>
態様2では、(1’)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程は必須ではない。しかしながら、工程(4)の少なくとも前の段階までには工程(1’)を行うことが、自然免疫活性化成分の溶出効率を向上させるために好ましい。工程(1’)を行うときは特に限定はなく、工程(A)の直前でも、工程(3)の直前でも、工程(4)の直前でもよいが、上記工程(3)を行い、次いで、(1’)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程を行った後に上記工程(4)を行うことが好ましい。工程(1’)は、工程(3)の後で工程(4)の前に行うと、植物体を塊のまま(植物体自体の形のまま)工程(3)が行えるので、工程(3)の簡易化が可能であり好ましい。前記したように、工程(A)を行うと、植物体を塊のまま(植物体自体の形のまま)工程(3)に供しても、十分に自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させることができる。
【0114】
態様1における工程(1)は最初に行うのに対し、態様2における工程(1’)は、行う時期(段階)に制限はなく、工程(3)と工程(4)の間に行うのが好ましいため、(1)、(1’)と表現は変えたが、用いる方法や装置は同じものが使用できる。
【0115】
<工程(4)>
態様2における工程(4)は、前記した態様1における工程(4)と同じである。
【0116】
<態様2の好ましい形態>
以上述べた、工程の順番をも考慮した態様2の最良の形態を記載すると以下のようになる。ただし、工程(2)は、以下の順番に従わず、別途行ってそれぞれの抽出条件を定めておくことができることは言うまでもない。すなわち、態様2の特に好ましい製造方法は、少なくとも、以下の工程(A)ないし(4)を含む上記の「植物体由来の自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物の製造方法」である。
(A)植物体を、自然免疫活性化成分以外の成分と自然免疫活性化成分の散逸が実質的にない状態で前加熱する工程
(2)完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを、自然免疫活性を評価するための指標として用いて、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件、及び自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件を選定する工程
(3)工程(2)で選定された自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件で抽出操作を行う工程
(1’)植物体を粉砕、細断又はすりおろしする工程
(4)工程(3)を行った後の抽出残渣から、工程(2)で選定された自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件で抽出操作を行う工程
【0117】
<工程(2)と本発明の効果>
完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさを、自然免疫活性を評価するための指標として用いることは、精製の進んでいないさまざまな成分を含んでいる組成物の、体内における自然免疫活性化作用の評価を行うには極めて適した方法となっている。従って、これを指標として評価した結果、前記のような製造方法が、優れた自然免疫活性化組成物の製造方法として見出された。すなわち、植物体を前加熱し、次いでその植物体から自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作を行った後に、自然免疫活性化組成物を抽出すると、得られた植物体由来の組成物は、極めて顕著な自然免疫活性化を示すようになる。
【0118】
前記したように、「自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作の条件」は、効率よく自然免疫活性化成分以外の成分が除去されていることを、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性を測定することで設定することが好ましい。また、「自然免疫活性化組成物を抽出する条件」も、効率よく自然免疫活性化組成物を抽出していることを、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性を測定することで設定することが好ましい。また、前加熱の条件も、上記各段階の液を、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性を測定することで設定することが好ましい。
【0119】
各段階で得られた液(自然免疫活性化成分以外の成分を除去した液、又は、自然免疫活性化組成物を抽出した液)は、そのまま完全変態型昆虫の幼虫に投与してもよく、遠心処理して上清を得て投与してもよい。また、得られた液をそのまま緩行性筋収縮活性の大きさを測定するための試料として用いてもよいが、凍結乾燥等で乾燥し、生理食塩水等に溶かしてから試料としてもよい。投与する試料の調製方法は、上記には限定されず、目的に応じて任意に選択して行えばよい。
【0120】
<植物体>
本発明における植物体は特に限定はないが、野菜であることが自然免疫活性化を示すものが多い点で好ましい。野菜としては、前記したように、カイコに投与した際の緩行性筋収縮活性を測定することで確認された、ブロッコリー、菜の花、パセリ、ニンジン、ピーマン、ミニトマト、カボチャ、ネギ(根)、ゴボウ、パクチー、キウリ等が好ましい。アブラナ科2種とセリ科3種の植物体で活性の高いものを認めたことから、アブラナ科とセリ科の植物体が特に好ましい。アブラナ科の植物体としては、例えば、ケール、カリフラワー、芽キャベツ、ハクサイ、コマツナ、チンゲン菜、野沢菜、広島菜、ミズナ、ワサビ等があり、セリ科の植物体としては、例えば、セリ、アシタバ、セロリ、ミツバ、クミン、フェンネル等がある。これらは、本発明における植物体として特に好ましい。中でも、ブロッコリーがより好ましく、更にその中でも、ブロッコリーの花芽又は蕾の部分が、自然免疫活性がより高いために特に好ましい。
【0121】
<工程の評価>
ブロッコリーの産地、部位、新鮮さ、等と自然免疫活性の関係を表2に示す。表2によると、部位別の自然免疫活性化作用の差が明確に認められ、花芽又は蕾部分は茎や根に比べて高い自然免疫活性化作用を示しことが明らかとなった。また、新鮮さの影響も認められ、新鮮なものの方が良い値を示した。産地の差も認められたが、新鮮さの影響の結果を考慮すると流通経路の違い等の影響も考えられる。
【0122】
<組成物の形態と用途>
本発明の自然免疫活性化組成物は、抽出操作を行った液自身でも、凍結乾燥等で溶媒を留去した後の固形分だけでもよい。自然免疫活性化組成物を含む液は、他の材料と混合した後に、タブレット、粉末等にして、飲食品の原材料として用いることができる。また上清液を凍結乾燥や噴霧乾燥により乾燥処理した後に、通常行われる方法に従って粉末状やタブレット状に加工して用いることもできる。乾燥に際して、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトース、トレハロース等の賦形剤を添加した上で乾燥を行えばその後の粉末化、タブレット化等が容易となるため好ましい。
【0123】
本発明の自然免疫活性化組成物には、更に薬理学的に許容しうる補助剤としての製剤用物質を混合することで、自然免疫活性化作用を持つ剤として用いることもできる。製剤用物質は製剤の剤型により適宜選択することができるが、例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、乳化剤、可溶化剤等を挙げることができる。更に、製剤用物質を具体的に例示すると、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、牛乳蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、及び溶剤、例えば滅菌水及び一価又は多価アルコール、例えばグリセロールを挙げることができる。
【0124】
本発明の自然免疫活性化組成物を飲食品に混合して使用する場合には、通常の食品用原材料と同様に取り扱えばよく、飲料、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルト等の食品として知られているあらゆる種類の食品に使用することが可能である。また家畜やペット等の飼料用に用いることもできる。またその配合量は特に限定されるものではなく、食品の種類、摂取量、主な摂取対象者等を勘案して個別に決定すればよい。
【0125】
本発明の自然免疫活性化組成物の摂取対象者は、健常者も種々の疾患に対する抵抗力を高めるという意味でもちろん摂取対象者であり、各種の疾患を有する者も自然免疫機能の低下に伴う疾患者に限定することなく、全身の自然免疫機能の活性化を目的としてほとんどの疾患を有する者に使用することができる。更に動物に対しても、飼料や動物用薬品等の種々の形態で適用することができる。
【実施例】
【0126】
以下、試験例、実施例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例等に限定されるものではない。
【0127】
<完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさで自然免疫活性化作用の大きさを評価できることの立証>
試験例1
[各種植物体からの熱水抽出物の緩行性筋収縮活性の測定]
完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさで自然免疫活性化作用の大きさを評価できることは前記した通りであるが、その更なる立証のためにできるだけ多くの野菜類について、カイコ断頭筋肉標本の緩行性筋収縮活性を測定した。また、本発明における好ましい植物体を選定するために、各種野菜類の自然免疫活性化作用をカイコ断頭筋肉標本の緩行性筋収縮活性をその指標として評価した。
【0128】
[[試料調製方法1]]
各野菜10gに水20mLを加え、ポリトロン(登録商標)ホモジナイザーを用いてジュース状にホモジナイズしてから、121℃20分間オートクレーブ処理を行った。その後、処理液を8000rpm10分間遠心処理し、上清を熱水抽出液とした。これを凍結乾燥により乾燥し、生理食塩水でおよそ100mg/mLの濃度となるよう調整し、オートクレーブ処理して完全溶解してから、緩行性筋収縮の測定に供した。
【0129】
[[試料調製方法2]]
各野菜を凍結乾燥し、乳鉢で粉砕した後、各サンプル1gに対して5mLの蒸留水を加え、8000rpm、5分の遠心処理を施した。沈殿に蒸留水3mLを加え、オートクレーブで121℃20分間処理した。これを室温にて8000rpm、10分の遠心処理により上清を得て、熱水抽出液とした。以下は、試料調製方法1と同様に操作を行った。
【0130】
[[緩行性筋収縮活性の測定]]
緩行性筋収縮の測定は、Hamamoto H., Kamimura M., Sekimizu K., J.Biol.Chem. Jan.25;283(4):2185-91(2008)に記載の方法に従って行った。すなわち、5齢カイコの断頭筋肉標本に、上記試料0.05mLを血液内投与し、C値が最大となったとき(約10分後)に体長を測定して、注射前の体長から注射後の体長を引き算し、その値を注射前の体長で割り算した値であるC値(Contraction Value)を測定した。0.9%生理食塩液で1/1、1/4、1/16、1/64、1/256に系列段階希釈した液で、それぞれC値を測定し、C値が0.15のときの(横軸濃度、縦軸C値のグラフ上でC値を0.15に内挿したときの)緩行性筋収縮活性を1unitsと定義し、単位質量当たり何unitsを示すかを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0131】
また、生理食塩液0.05mLをネガティブコントロール(C値0.05以下を許容)、空気0.2mLをポジティブコントロール(C値が0.2〜0.4内に収まる場合を許容)として同時に測定に供した。
【0132】
参考に、市販のアガリクス、ハナビラタケから熱水抽出処理を行った試料の緩行性筋収縮活性(自然免疫活性化作用)の測定も行った。
また、後述するブロッコリーの実施例4の結果(表6の結果)も表1中に記載した。
【0133】
【表1】
【0134】
[結果]
表1において、「units/g原料」は、野菜そのもの1gが示す緩行性筋収縮活性を示し、「units/mg」は、凍結乾燥品1mgが示す緩行性筋収縮活性を示す。
また、表1において、同じ材料(野菜、植物体)で複数行に亘って記載してあるのは、異なった試験日の結果である。なお、菜の花は、アブラナの花部分である。
【0135】
表1より、ブロッコリー、菜の花、パセリ、ニンジン、ピーマン、ミニトマト、カボチャ、ネギ(根)に緩行性筋収縮活性を認め、自然免疫活性化作用があることが分かった。特にブロッコリーは明確に他の野菜より高い自然免疫活性化作用を示した。一方、ホウレンソウ、ニンニク、ダイコン、ショウガ、トウビョウには、緩行性筋収縮活性が認められず、自然免疫活性化作用がないことが分かった。
【0136】
試験例2
[野菜熱水抽出物の抗ウイルス効果の検討(バキュロウイルスを投与したカイコに対する野菜熱水抽出物の効果の有無の検討)]
本発明者は、カイコが黄色ブドウ球菌感染モデル動物として用いることができることを既に報告している(例えば、特開2007−327964号公報)。そこで、バキュロウイルス投与カイコに、試験例1の試料調製方法2で調製したブロッコリー、ニンジン、ピーマン、ホウレンソウ、ニンニク、ショウガの各試料を、試験例1と同様に0.05mL投与して、カイコのウイルス感染による死を遅延させる効果があるかどうかを測定した。この際、生理食塩水を「抗ウイルス効果なし」の対照として投与し、市販のアガリクスからの抽出物を「抗ウイルス効果」ありの参考品として投与した。
【0137】
結果を、上記表1の最右欄に記した。
表1の抗ウイルス効果は以下の通りである。
++:生理食塩水に比べ12時間以上の差が認められる
+:生理食塩水に比べ6〜12時間の差が認められる
−:生理食塩水に比べ6時間未満の差しか認められない
【0138】
表1から、ブロッコリーは生理食塩水と比べてカイコの死を12時間以上遅延させる効果があり、ニンジン、ピーマン、カボチャにもカイコの死を遅延させる効果が認められた。一方、ホウレンソウ、ニンニク、ショウガには、カイコの死を遅延させる効果が殆ど認められなかった。緩行性筋収縮活性と抗ウイルス効果には強い相関があった。この結果から、緩行性筋収縮モデルで得られた結果は、抗ウイルス効果等の実際的な自然免疫活性化作用の指標となっていると判断できた。
【0139】
試験例3
[ブロッコリーの産地、部位、鮮度と、自然免疫活性化作用との関係の検討]
ブロッコリーを本発明に適用するに当たり、供試材料として自然免疫活性化作用に影響する可能性のある基本性状を確認するために、産地(日本:埼玉、米国)、その部位(花芽、茎(花芽に向けて分かれている部分)、茎(直径15mm位の花芽に向けて分かれていない部分))と、花芽の新鮮さ(収穫直後、3週間保存後)につき、試験例1の試料調製方法2で調製した試料のカイコにおける緩行性筋収縮活性を試験例1と同様に検討した。なお、部位、新鮮さの検討は埼玉産を用いた。その結果を表2に示す。
【0140】
ブロッコリーの産地、部位、鮮度と自然免疫活性化(緩行性筋収縮活性)作用との関係
【表2】
それぞれの項目毎に並べて評価したので、項目が異なる場合には同一試料ではないため、数値が異なっている場合がある。
【0141】
[結果]
ブロッコリーの部位(花芽又は蕾、茎A(花芽又は蕾に向けて分かれている部分)、茎B(花芽又は蕾に向けて分かれていない直径15mm位の部分)について同様に評価した結果、花芽又は蕾では、255units/g原料、茎Aでは180units/g原料の緩行性筋収縮活性を示したが、茎Bでは40units/g原料以下の緩行性筋収縮活性しか示さなかった。なお、「units/g原料」は、野菜そのもの1gが示す緩行性筋収縮活性である。
【0142】
試験例3の結果から、特にブロッコリーの花芽又は蕾の部分からは、他の部分に比較して、極めて優れた自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。産地は国内(埼玉)産が活性が高く、部位別では花芽部分が活性が高く、新鮮なものの活性が高いという結果が得られた。試験例3の結果から、本発明に用いられる評価方法を活用することで、より自然免疫活性の高いブロッコリー等の野菜類の栽培条件や保存条件を含む流通条件等の確立も可能と考えられる。従って、以下の実施例では埼玉産の花芽部分で新鮮なブロッコリーを使用した。
【0143】
<態様1>
実施例1
[ブロッコリーの「自然免疫活性化成分以外の成分」を溶出させる抽出条件と「自然免疫活性化成分」を溶出させる抽出条件の検討]
上記試験例では、抽出条件は、121℃、20分間オートクレーブ処理であったが、カイコ緩行性筋収縮モデルで自然免疫活性化作用が認められない抽出条件と認められる抽出条件について検討した。
【0144】
工程(1)
各野菜10gに水20mLを加え、ポリトロン(登録商標)ホモジナイザーを用いてジュース状にホモジナイズした。
【0145】
工程(2)
水抽出温度を60℃、80℃、95℃、105℃、121℃、抽出時間を20分として、それぞれの条件で得られた試料のカイコにおける緩行性筋収縮活性を測定した。結果を表3に示す。
【0146】
ブロッコリーの水抽出温度と自然免疫活性化(緩行性筋収縮活性)作用との関係
【表3】
【0147】
60℃での抽出物では緩行性筋収縮活性がなく、80℃での抽出物では121℃での抽出物と遜色ない緩行性筋収縮活性を示した。従って、「60℃以下の温度での抽出」が、「自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件」といえる。また、「80℃未満での抽出」では、自然免疫活性化成分を充分には溶出させないと考えられる。また、「80℃以上の温度での抽出」が、「自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件」といえる。
【0148】
実施例2
[自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させる抽出条件と自然免疫活性化成分を溶出させる抽出条件を組み合わせた方法]
工程(1)、工程(3)、工程(4)
50℃、60℃で水抽出を行ったものの抽出残渣に対して、80℃、121℃で水抽出を行った試料のカイコ緩行性筋収縮活性を評価した。
ブロッコリーの花芽部分4gに対して水8mLを加えて、ジューサーで破砕後、50℃又は60℃で20分間処理し(抽出1)、8000rpm10分間遠心処理して上清を取り除いた。沈殿部分(抽出残渣)に水6mLを加えて、よく攪拌するためにジューサーで破砕し、80℃又は121℃で20分間処理し(抽出2)、8000rpm10分間遠心処理して上清を回収し、試験例1の試料調製方法1の方法で測定用試料とした。また、121℃20分で一段階抽出を行ったものを対照とした。結果を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
表4中、括弧内は実測値ではないが、表3の結果から、80℃抽出でも121℃抽出と同等又は同等以上の活性を示していることから、また、抽出1が50℃と60℃で収率(抽出量)が殆ど変わらないことから、「抽出1の温度60℃、抽出2の温度121℃」の測定値(2.18units/mg)とほぼ同等の測定値が得られると考えられる。
【0151】
表4から、本発明を実施した場合に、緩行性筋収縮活性が対照の1.5倍に増加した。従って、本発明によれば、自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。
【0152】
前記表1等から、緩行性筋収縮モデルで得られた結果と、抗ウイルス効果等の実際的な自然免疫活性化作用の結果とは、極めて良い相関があった。これより、「工程(A)における前加熱の条件」、「自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作の条件」及び/又は「自然免疫活性化組成物を抽出する条件」を、完全変態型昆虫の幼虫に投与した際の緩行性筋収縮活性の大きさで、自然免疫活性化作用の大きさを評価して、かかる条件を最適に設定することが可能であることが分かった。また、自然免疫活性化作用の大きい自然免疫活性化組成物が得られる植物体のスクリーニングに、完全変態型昆虫の幼虫に投与する緩行性筋収縮モデルが使用できることが分かった。
【0153】
<態様2>
実施例3
[マイクロ波照射により加熱したブロッコリーからの自然免疫活性化作用が増大した自然免疫活性化組成物の調製]
工程(A)
ブロッコリー(愛知県産)を房ごとに、はさみで切り取り、9.7gをラップで2重に包み、マイクロ波照射による加熱を行った。すなわち、上記の材料を電子レンジ(日立製作所社製、MRO−N75)に入れ、目盛り「強」(500W)で、40秒間加熱した。照射周波数は2450MHzであった。
【0154】
工程(2)
工程(2)に関しては後述する。
【0155】
工程(3)
加熱後、流水(水道水20℃)1Lにて、5秒間洗浄し、水分を拭き取った。
【0156】
工程(1’)
次いで、花芽又は蕾の部分を切り取り、その部分3.3gを50mL遠心管(BD Falcon(登録商標) 352027)に入れ、蒸留水6.6mLを加え、ホモジナイザー(ポリトロン(登録商標) PT3000、株式会社セントラル科学貿易)で、26.0×1000rpmにて、25秒間処理した。
【0157】
工程(4)
処理してドロドロした状態となった液を、121℃で20分間オートクレーブにかけた後、冷却遠心機で8000rpmにて、25℃、10分間遠心処理し、7mLの上清(熱水抽出液)を回収した。
【0158】
上記上清(熱水抽出液)を、1mLずつ2mL用遠心管に分注し、9時間凍結乾燥し、36.1mgの自然免疫活性化組成物を得た。
【0159】
比較例1
実施例1において、流水による洗浄を行わないこと以外は、実施例1と同様に操作を行い、凍結乾燥品の自然免疫活性化組成物を得た。
【0160】
比較例2
実施例1において、マイクロ波照射による加熱と流水による洗浄を行わないこと以外は、実施例1と同様に操作を行い、凍結乾燥品の自然免疫活性化組成物を得た。
【0161】
比較例3
ブロッコリーの花芽又は蕾の部分4gに対して水8mLを加えて、ホモジナイザーで破砕後、60℃で20分間処理し、8000rpm10分間遠心処理して上清を取り除いた。沈殿部分(抽出残渣)に水6mLを加えて、よく攪拌するためにホモジナイザーで破砕し、121℃で20分間処理し、8000rpm10分間遠心処理して上清を回収した。
【0162】
上記上清を、1mLずつ2mL用遠心管に分注し、9時間凍結乾燥し、自然免疫活性化組成物を得た。
【0163】
測定例1
[各熱水抽出物のカイコ断頭筋肉標本の筋収縮活性測定]
[[試料調製方法]]
実施例3と比較例1〜3で得た各凍結乾燥品に、0.9%生理食塩液を1mL加えて121℃で20分間オートクレーブにかけて溶解させた。この液を0.9%生理食塩液で1/1、1/4、1/16、1/64、1/256に系列段階希釈した。
【0164】
[[緩行性筋収縮活性の測定]]
上記の各希釈液50μLを用いて、試験例1と同様に緩行性筋収縮活性を測定し、乾燥品1mgが何unitsを示すかを求めた。得られた結果を以下の表5に示す。なお、実施例3は日を変えて6回、比較例2は日を変えて11回の平均値である。
【0165】
【表5】
【0166】
工程(2)
実施例3で、マイクロ波照射後、20℃の流水によって洗浄を5秒行ったが、その洗浄水を同様に評価したところ、緩行性筋収縮活性は全く示さなかった。これより、自然免疫活性化成分以外の成分が20℃の流水による洗浄で除去されたことが明らかになった。
【0167】
工程(2)
比較例3で、熱水抽出に先立って、60℃水で20分抽出したが、その抽出物を同様に評価したところ、緩行性筋収縮活性は全く示さなかった。これより、自然免疫活性化成分以外の成分が60℃の水による抽出で除去されたことが明らかになった。
【0168】
[結果]
前記表1、上記表5の結果から以下のことが分かった。すなわち、上記自然免疫活性化組成物の製造方法により製造された自然免疫活性化組成物(実施例3)は、マイクロ波照射による加熱とそれに次ぐ水洗がないもの(比較例2)に比べて、22倍の緩行性筋収縮活性を示した。また、マイクロ波照射による加熱はしたがそれに次ぐ水洗がないもの(比較例1)に比べても、4.6倍の緩行性筋収縮活性を示した。また、マイクロ波照射による加熱をせずに、60℃水で20分抽出した後の沈殿部分(抽出残渣)(比較例3)に比べても、11倍の緩行性筋収縮活性を示した。
【0169】
これより、マイクロ波照射により加熱し、次いで自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作を行った後に、自然免疫活性化組成物を抽出することによって、自然免疫活性化が顕著に増大した自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。
【0170】
試験例1等で自然免疫活性が認められたアブラナ科、セリ科等の植物体、具体的には、ブロッコリー、菜の花、パセリ、ニンジン、ピーマン、ミニトマト、カボチャ、ネギ(根)、ゴボウ、パクチー、キウリ等でも、マイクロ波照射により加熱し、自然免疫活性化成分以外の成分を除去する操作を行った後に、自然免疫活性化組成物を抽出することによって、同様に自然免疫活性化が顕著に増大した自然免疫活性化組成物が得られると考えられる。
【0171】
また、自然免疫活性化の絶対値的にも、特定の野菜からの抽出物からは、自然免疫機能を活性化する効果が大きい自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。特にブロッコリーからの抽出物からは、極めて優れた自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。
【0172】
実施例4
[態様2における工程(A)の加熱条件の検討]
工程(A)
ブロッコリーを房ごとに、はさみで切り取り、約10gをラップで2重に包み、表6に示した条件でマイクロ波照射による加熱を行った。すなわち、上記の材料を電子レンジ(日立製作所社製、MRO−N75)に入れ、電子レンジの出力目盛りと加熱時間を変化させて前加熱を行った。
【0173】
工程(2)
工程(2)については、上記試験例、実施例等で、ブロッコリーの形を有したままで、室温での水洗で、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させられることが分かっている。また、121℃の水で、20分間処理すると、自然免疫活性化成分を溶出させられることが分かっている。
【0174】
工程(3)
加熱後、水道水(20℃)の流水で、20秒かけて2Lで水洗し、次いで水分を拭き取った。
【0175】
工程(1’)
次いで、花芽と蕾の部分のみ3.4〜3.9gを50mL遠心管(BD Falcon(登録商標) 352027)に入れ、蒸留水6.8〜7.8mLを加え、ホモジナイザー(ポリトロン(登録商標) PT3000、株式会社セントラル科学貿易)で、26.0×1000rpmにて、25秒間処理した。
【0176】
工程(4)
処理してドロドロした状態となった液を、121℃で20分間オートクレーブにかけた後、冷却遠心機で8000rpmにて、25℃、10分間遠心処理し、7mLの上清(熱水抽出液)を回収した。
【0177】
上記上清(熱水抽出液)を、1mLずつ2mL用遠心管に分注し、9時間凍結乾燥し、測定試料(自然免疫活性化組成物)を得た。
【0178】
測定例1と同様にして、原料1g当たりの緩行性筋収縮活性と凍結乾燥品1mg当たりの緩行性筋収縮活性を求めた。結果を以下の表6に示す。No.4−1は、日を変えての11点の平均であり、No.4−3は、日を変えての4点の平均であり、その他は、それぞれ日を変えての2点の平均である。
【0179】
【表6】
【0180】
[結果]
表6より、工程(A)において前加熱すると、緩行性筋収縮活性が大きくなり、自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。工程(A)における前加熱の最適条件も分かった。
【0181】
実施例5
[態様2における工程(3)の条件の検討]
工程(A)
ブロッコリー(愛知県産)を房ごとに、はさみで切り取り、約10gをラップで2重に包み、マイクロ波照射による加熱を行った。すなわち、上記の材料を電子レンジ(日立製作所社製、MRO−N75)に入れ、目盛り「強」(500W)で、40秒間加熱した。すなわち、20000Jのエネルギーで加熱した。照射周波数は2450MHzであった。
【0182】
工程(2)
工程(2)については、上記試験例、実施例等で、ブロッコリーの形を有したままで、室温での水洗で、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させられることが分かっている。また、121℃の水で、20分間処理すると、自然免疫活性化成分を溶出させられることが分かっている。
【0183】
工程(3)
加熱後、水道水(20℃)で、以下の表6に示した条件で水洗し、水分を拭き取った。
【0184】
工程(1’)
次いで、花芽又は蕾の部分を切り取り、その部分3.3gを50mL遠心管(BD Falcon(登録商標) 352027)に入れ、蒸留水6.6mLを加え、ホモジナイザー(ポリトロン(登録商標) PT3000、株式会社セントラル科学貿易)で、26.0×1000rpmにて、25秒間処理した。
【0185】
工程(4)
処理してドロドロした状態となった液を、121℃で20分間オートクレーブにかけた後、冷却遠心機で8000rpmにて、25℃、10分間遠心処理し、7mLの上清(熱水抽出液)を回収した。
【0186】
上記上清(熱水抽出液)を、1mLずつ2mL用遠心管に分注し、9時間凍結乾燥し、測定試料(自然免疫活性化組成物)を得た。
【0187】
測定例1と同様にして、原料1g当たりの緩行性筋収縮活性と凍結乾燥品1mg当たりの緩行性筋収縮活性を求めた。結果を以下の表7に示す。
【0188】
【表7】
【0189】
[結果]
表7より、工程(3)において20℃の水で水洗すると、緩行性筋収縮活性が大きくなり、自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。水洗の最適条件も分かった。
【0190】
実施例6
[態様2における工程(A)の加熱方法の検討]
工程(A)
工程(A)として、「電子レンジ処理」、「オートクレーブ処理」及び「処理なし」の3点比較するため、それぞれを以下のように処理した。
【0191】
<電子レンジ処理>
ブロッコリーを房ごとに、はさみで切り取り、約10gをラップで2重に包み、電子レンジ(日立製作所社製、MRO−N75)に入れ、目盛り「強」(500W)で、40秒間加熱した。すなわち、20000Jのエネルギーで加熱した。照射周波数は2450MHzであった。
【0192】
<オートクレーブ処理>
ブロッコリーを房ごとに、はさみで切り取り、そのまま、約10gをオートクレーブに入れ、105℃で1分間加熱した。
【0193】
<処理なし>
工程(A)を行わなかった。
【0194】
工程(2)
工程(2)については、上記試験例、実施例等で、ブロッコリーの形を有したままで、室温での水洗で、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させられることが分かっている。また、121℃の水で、20分間処理すると、自然免疫活性化成分を溶出させられることが分かっている。
【0195】
工程(3)
加熱後、水道水(20℃)の流水で、20秒かけて2Lで水洗し、次いで水分を拭き取った。
【0196】
工程(1’)
次いで、花芽又は蕾の部分を切り取り、その部分約6gを50mL遠心管(BD Falcon(登録商標) 352027)に入れ、蒸留水約12mLを加え、ホモジナイザー(ポリトロン(登録商標) PT3000、株式会社セントラル科学貿易)で、26.0×1000rpmにて、25秒間処理した。
【0197】
工程(4)
処理してドロドロした状態となった液を、121℃で20分間オートクレーブにかけた後、冷却遠心機で8000rpmにて、25℃、10分間遠心処理し、約12mLの上清(熱水抽出液)を回収した。
【0198】
上記上清(熱水抽出液)を、1mLずつ2mL用遠心管に分注し、9時間凍結乾燥し、測定試料(自然免疫活性化組成物)を得た。
【0199】
同じ工程を、北海道産ブロッコリー2点と群馬県産ブロッコリー1点の計3点で行った。
【0200】
測定例1と同様にして、凍結乾燥品1mg当たりの緩行性筋収縮活性を求めた。結果を
図1に示す。
【0201】
[結果]
図1より、工程(A)において前加熱処理をすると、緩行性筋収縮活性が大きくなり、自然免疫活性化作用が増強された自然免疫活性化組成物が得られることが分かった。また、
図1より、電子レンジで、20000Jで処理をしたものは、処理なし(工程(A)の前加熱なし)に比べて、約20倍の自然免疫活性化作用の増加が見られた。また、
図1より、オートクレーブで、105℃で1分間、前加熱をしたものは、処理なし(工程(A)の前加熱なし)に比べて、約40倍の自然免疫活性化作用の増加が見られた。