特許第5714946号(P5714946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714946
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/147 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   F24F3/147
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-55763(P2011-55763)
(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-189301(P2012-189301A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 章
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】榎本 量
(72)【発明者】
【氏名】植田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】久角 喜徳
(72)【発明者】
【氏名】堀 司
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−329371(JP,A)
【文献】 特開2003−074906(JP,A)
【文献】 特開2003−287241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する通気性吸湿体からなり、吸湿部に通流させる気体の水分を吸着するとともに、吸着した水分を再生部に通流させる気体放出するデシカントロータと、
前記デシカントロータの前記吸湿部を通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる冷却器と、気体を加熱自在な加熱手段と、ケーシングとを備えた空調システムであって、
気体を加湿可能な加湿機を備え、
気体を前記デシカントロータの前記吸湿部及び前記冷却器を記載順に通流させて空調する第1空調流路と、気体を前記冷却用媒体として前記冷却器に導き、前記加熱手段にて加熱し、前記デシカントロータの前記再生部を通過させて空調する第2空調流路とを形成可能に構成され、
第1気体を前記第1空調流路にて空調した後に前記加湿機にて加湿して空調用空気として空調対象空間へ導くとともに再生用空気を前記デシカントロータの前記再生部へ導く第1運転状態と、第2気体を前記第2空調流路にて空調した後に前記加湿機にて加湿して空調用空気として前記空調対象空間へ導くとともに吸湿用空気を前記デシカントロータの前記吸湿部へ導く第2運転状態とを、択一的に切り替える切替手段が設けられており、
前記切替手段は、第1気体を前記第1空調流路へ導くと共に再生用空気を前記第2空調流路へ導く前記第1運転状態と、第2気体を前記第2空調流路へ導き吸湿用空気を前記第1空調流路へ導く前記第2運転状態とに切り替える第1四方弁と、
前記第1空調流路にて空調された第1気体を前記加湿機へ導いた後に空調用空気として前記空調対象空間へ導くと共に前記第2空調流路を通流した再生用空気を排気として空調対象空間の外部へ導く前記第1運転状態と、前記第2空調流路にて空調された第2気体を前記加湿機へ導いた後に空調用空気として前記空調対象空間へ導くと共に前記第1空調流路を通流した吸湿用空気を排気として前記空調対象空間へ導く前記第2運転状態とに切り替える第2四方弁とから構成され、
前記ケーシングは、少なくとも、前記デシカントロータ、前記冷却器、前記加熱手段、前記第1空調流路、前記第2空調流路、前記第1四方弁、及び前記第2四方弁を内部に含み、
さらに前記ケーシングの内部において、前記第1四方弁及び前記第2四方弁の回転軸を同軸に配置するとともに、前記第1四方弁及び前記第2四方弁の前記回転軸に直交する方向で、前記第1四方弁と前記第2四方弁との間の部位に、前記ケーシングの内部空間の一部を分離して前記気体を通流する空間を形成する分離壁を備え、
前記空間は、少なくとも前記第1気体が通流する空間と、前記第2気体が通流する空間とを別々に構成している空調システム。
【請求項2】
前記加湿機は、空調用空気としての第1気体又は第2気体へ直接水を噴霧して加湿するように構成されている請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動する通気性吸湿体からなり、吸湿部に通流させる気体の水分を吸着するとともに、吸着した水分を再生部に通流させる気体を放出するデシカントロータと、前記デシカントロータの前記吸湿部を通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる冷却器と、気体を加熱自在な加熱手段とを備えた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11に示すように、特に夏季等で空調対象空間Sを除湿冷房することを目的として、吸湿部12aに通流させる気体の水分を吸着するとともに、吸着した水分を再生部12bに通流させる気体に放出する第1デシカントロータ12を備えると共に、第1デシカントロータ12の吸湿部12aを通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる第1冷却器50と、第2吸湿部13aに通流させる気体の水分を吸着するとともに、吸着した水分を第2再生部13bに通流させる気体に放出する第2デシカントロータ13と、当該第2デシカントロータ13の第2吸湿部13aを通流した後の気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる第2冷却器14とを備えたものが知られている(特許文献1を参照。)。
当該空調システムでは、室外空気OAを、第1デシカントロータ12の吸湿部12aを通流させて除湿し、これにより温度上昇した室外空気OAを第1冷却器50にて冷却し、さらに、第2デシカントロータ13の第2吸湿部13aを通過させて除湿し、これにより温度上昇した室外空気OAを第2冷却器14にて冷却し、最後に、当該室外空気OAを、第1デシカントロータ12の再生部12bを通過させて冷却することで、適切に除湿冷却された空調用空気SAを空調対象空間Sに導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−57953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示の技術では、外気を除湿するデシカントロータとして、第1デシカントロータ12と第2デシカントロータ13の2つのデシカントロータを備えているとともに、外気を冷却する冷却器として、第1デシカントロータ12の吸湿部12aにて昇温された空調用空気SAを冷却する第1冷却器50と、第2デシカントロータ13の第2吸湿部13aにて昇温された空調用空気SAを冷却する第2冷却器14の2つの冷却器とを備えていたため、空調システムの構成要素が多く、コンパクト化が難しいという問題があった。
また、室外空気OAは、空調用空気SAとして空調対象空間Sに導かれるまでに、第1デシカントロータ12の第1吸湿部12a、熱交換器としての第1冷却器50、第2デシカントロータ13の第2吸湿部13a、熱交換器としての第2冷却器14、及び第1デシカントロータ12の第1再生部12aを通流する必要があり、圧力損失が高いという問題があった。
また、除湿冷房機能しか有しないため、加湿暖房機能を必要とする冬場には利用できないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造で圧力損失を抑制できながらも、除湿冷房機能と加湿暖房機能の双方を発揮可能な空調システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空調システムは、回転駆動する通気性吸湿体からなり、吸湿部に通流させる気体の水分を吸着するとともに、吸着した水分を再生部に通流させる気体放出するデシカントロータと、
前記デシカントロータの前記吸湿部を通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる冷却器と、気体を加熱自在な加熱手段と、ケーシングとを備えた空調システムであって、
気体を加湿可能な加湿機を備え、
気体を前記デシカントロータの前記吸湿部及び前記冷却器を記載順に通流させて空調する第1空調流路と、気体を前記冷却用媒体として前記冷却器に導き、前記加熱手段にて加熱し、前記デシカントロータの前記再生部を通過させて空調する第2空調流路とを形成可能に構成され、
第1気体を前記第1空調流路にて空調した後に前記加湿機にて加湿して空調用空気として空調対象空間へ導くとともに再生用空気を前記デシカントロータの前記再生部へ導く第1運転状態と、第2気体を前記第2空調流路にて空調した後に前記加湿機にて加湿して空調用空気として前記空調対象空間へ導くとともに吸湿用空気を前記デシカントロータの前記吸湿部へ導く第2運転状態とを、択一的に切り替える切替手段が設けられており、
前記切替手段は、第1気体を前記第1空調流路へ導くと共に再生用空気を前記第2空調流路へ導く前記第1運転状態と、第2気体を前記第2空調流路へ導き吸湿用空気を前記第1空調流路へ導く前記第2運転状態とに切り替える第1四方弁と、
前記第1空調流路にて空調された第1気体を前記加湿機へ導いた後に空調用空気として前記空調対象空間へ導くと共に前記第2空調流路を通流した再生用空気を排気として空調対象空間の外部へ導く前記第1運転状態と、前記第2空調流路にて空調された第2気体を前記加湿機へ導いた後に空調用空気として前記空調対象空間へ導くと共に前記第1空調流路を通流した吸湿用空気を排気として前記空調対象空間へ導く前記第2運転状態とに切り替える第2四方弁とから構成され、
前記ケーシングは、少なくとも、前記デシカントロータ、前記冷却器、前記加熱手段、前記第1空調流路、前記第2空調流路、前記第1四方弁、及び前記第2四方弁を内部に含み、
さらに前記ケーシングの内部において、前記第1四方弁及び前記第2四方弁の回転軸を同軸に配置するとともに、前記第1四方弁及び前記第2四方弁の前記回転軸に直交する方向で、前記第1四方弁と前記第2四方弁との間の部位に、前記ケーシングの内部空間の一部を分離して前記気体を通流する空間を形成する分離壁を備え、
前記空間は、少なくとも前記第1気体が通流する空間と、前記第2気体が通流する空間とを別々に構成している点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、除湿冷房運転を行う夏場にあっては、切替手段により第1運転状態に切り替えることで、第1気体を、デシカントロータの吸湿部にて除湿し、冷却器にて冷却した後に、加湿機にて水分を供給してその水分の蒸発潜熱が奪われる形態で第1気体を冷却して、適切に除湿冷却された第1気体を空調用空気として空調対象空間に供給できる。
一方、加湿暖房運転を行う冬場にあっては、切替手段により第2運転状態に切り替えることで、第2気体を、冷却用媒体として冷却器に導いて加熱し、加熱手段にてさらに加熱し、デシカントロータの再生部にて加湿した後、加湿機にてさらに加湿して、適切に加湿加熱された第2気体を空調用空気として空調対象空間に供給できる。
即ち、上記特徴構成によれば、切替手段を適切に働かせることにより、除湿冷房機能を発揮できるだけでなく、加湿暖房機能をも発揮できる空調システムを提供することができる。
また、上記構成によれば、加湿機が、空調用空気を空調対象空間に導かれる直前で加湿するように設けられているので、除湿冷房運転である第1運転状態にあっては、空調用空気から加湿に伴って加えられる水分の蒸発潜熱を奪う形態で冷却して、十分な除湿冷却性能を発揮できる。結果、デシカントロータ及び冷却器を、夫々1つ設けるという簡易な構成においても、適切に除湿冷房性能を発揮できる。
以上より、構成の簡略化を図ることができるとともに、圧力損失を低減しながらも、除湿冷房性能及び加湿暖房性能の双方を適切に発揮する空調システムを実現できた。
また、上記特徴構成によればさらに、切替手段を第1四方弁及び第2四方弁という比較的簡易な構成にて実現でき、当該第1四方弁及び第2四方弁を記載の如く働かせることで、状況に応じて、空調対象空間に対し、低湿低温の空調用空気、又は高湿高温の空調用空気の何れをも導くことができる。
即ち、上記特徴構成によればさらに、切替手段として第1四方弁と第2四方弁とを設ける比較的簡易な構成により、除湿冷房運転のみならず、加湿暖房運転をも適切に実行することができる。
また、上記特徴構成によればさらに、第1四方弁と第2四方弁とを、互いの回転軸を同軸に配置することで、当該第1四方弁及び第2四方弁へ向けて導かれる気体の通流方向、及び第1四方弁及び第2四方弁から送り出される気体の通流方向を、第1四方弁と第2四方弁の回転軸に直交する方向に揃えることができる。これに加えて、第1四方弁と第2四方弁との間の部位に、第1四方弁と第2四方弁との回転軸に直交する分離壁を設け気体を通流する空間を形成することで、当該分離壁にて、少なくとも、第1四方弁へ導かれる気体及び第1四方弁から送り出される気体と、第2四方弁へ導かれる気体及び第2四方弁から送り出される気体とを、その通流方向で、簡易な構成にて分離した状態で通流させるこができる。結果、ケーシング内部において、空気通流用の配管を極力設けない構成とし、複雑な流路を形成することなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0010】
本発明の空調システムの更なる特徴構成は、
前記加湿機は、空調用空気としての第1気体又は第2気体へ直接水を噴霧して加湿するように構成されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、空調用空気として第1気体を空調対象空間へ供給する場合、加湿機は、第1気体へ直接水を噴霧するものであるので、それによる水分の蒸発に伴う蒸発潜熱が第1気体から奪われる形態で、適切に第1気体を冷却することができる。
一方、空調用空気として第2気体を空調対象空間へ供給する場合、加湿機は、第2気体へ直接水を噴霧して加湿できる。さらに、その噴霧量を調整する制御を行うことにより、第2気体の加湿状態を所望の状態に調整できる。
また、加湿機は、直交熱交換器に比べて圧力損失を抑制する構造にできる。これにより、直交熱交換器にて第1気体を冷却する場合に比べて、第1気体を圧送するファンの駆動力を低減でき、省エネルギ化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】除湿冷房運転を行うときの流路を示す概略構成図である。
図2】除湿冷房運転を行うときの気体の状態をプロットした空気線図である。
図3図3に示す気体の状態の変化を示す表である。
図4】加湿暖房運転を行うときの流路を示す概略構成図である。
図5】加湿暖房運転を行うときの気体の状態をプロットした空気線図である。
図6図5に示す気体の状態の変化を示す表である。
図7】除湿冷房運転を行う際に、外部から室外空気(第1気体)を導入して空調用空気として空調対象空間へ送りだすときの気体通流状態を示す斜視図である。
図8】除湿冷房運転を行う際に、外部から室内空気(再生用空気)を導入して排気として空調対象空間の外部へ送り出すときの気体通流状態を示す斜視図である。
図9】加湿暖房運転を行う際に、外部から室外空気(第1気体)を導入して空調用空気として空調対象空間へ送り出すときの気体通流状態を示す斜視図である。
図10】加湿暖房運転を行う際に、外部から室内空気(吸湿用空気)を導入して空調用空気として空調対象空間へ送り出すときの気体通流状態を示す斜視図である。
図11】従来技術の流路構成を示す概略構成図である。
図12】従来技術における気体の状態をプロットした空気線図である。
図13図12における気体の状態の変化を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る空調システムの特徴は、デシカント空調装置として簡易な構造を保ちながらも、除湿冷房運転及び加湿暖房運転の双方を実行すべく、切替手段として第1四方弁10及び第2四方弁17を備えるとともに、空調対象空間Sに供給される直前の空調用空気SAを加湿可能な加湿機11を備えている点にある。以下、上記特徴を有する本発明の空調システムを、図面に基づいて説明する。
【0016】
この空調システムは、除湿冷房運転においては、図1の流路構成において、室外空気OA(第1気体)を、第1空調流路R1(図1で二点鎖線)に導いて空調した後、加湿機11にて加湿して空調用空気SAとし、当該空調用空気SAを空調対象空間Sに導いており、加湿暖房運転においては、図4の流路構成において、室外空気OA(第2気体)を、第2空調流路R2(図4で一点鎖線)に導いて空調した後、加湿機11にて加湿して空調用空気SAとし、当該空調用空気SAを空調対象空間Sに導くように構成されている。
そこで、以下では、本発明の空調システムの基本的な構成、第1空調流路R1、第2空調流路R2の構成及び働きについて順に説明し、その後、除湿冷房運転、加湿暖房運転について説明する。
【0017】
〔空調システムの各構成機器の説明〕
本発明の空調システムは、基本的な構成として、空気に直接水を噴霧して加湿可能な加湿機11、デシカントロータ12、冷却器14、加熱器15(加熱手段の一例)を備えたものである。具体的には、空調システムは、回転駆動する通気性吸湿体12cからなり、吸湿部12aに通流させる気体の水分を吸着するとともに、吸着した水分を再生部12bに通流させる気体に放出するデシカントロータ12と、デシカントロータ12の吸湿部12aを通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる冷却器14と、デシカントロータ12の再生部12bに導かれる空気を温水Wとの熱交換により加熱する加熱器15とを備えている。
【0018】
ここで、デシカントロータについて、説明を加えると、デシカントロータ12の通気性吸湿体は、図示しない駆動用モータにより回転駆動するように構成されている。図1、4では、上方側(図1、4で矢印Zの先端側)に位置するデシカントロータ12の一部を吸湿部12aとし、下方側(図1、4で矢印Zの基端側)に位置するデシカントロータ12の一部を再生部12bとして示している。デシカントロータ12の通気性吸湿体12cが、駆動用モータにより回転駆動されると、吸湿部12aに相当する部位及び再生部12bに相当する部位が回転方向に連続的に変化するように構成されている。そして、デシカントロータ12は、例えば、1時間に数10回転の一定速度で回転駆動される。前記デシカントロータ12における通気性吸湿体12cは、吸湿性高分子を主成分として構成されている。そして、吸湿性高分子として、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムを用いる。デシカントロータ12は、直径200mmのハニカム状の基材にポリアクリル酸ナトリウム粉末を保持して構成されている。ここで、デシカントロータ12の厚みは、30〜60mm程度のものを好適に用いることができる。
【0019】
そして、第1空調流路R1(図1図4で二点鎖線で示される流路)が、デシカントロータ12の吸湿部12a、冷却器14の順に接続され、夫々に順に気体を通流させている。さらに、第1空調流路R1には、後述する第1四方弁10の下流側でデシカントロータ12の吸湿部12aの上流側に、気体を第1空調流路R1に上述の如く通流させるべく、気体をデシカントロータ12の吸湿部12aの側へ送り出す第1ファン18が設けられている。
【0020】
これにより、第1空調流路R1を通流する気体は、デシカントロータ12の吸湿部12aにて除湿され、冷却器14にて冷却用媒体と熱交換する形態で冷却される。
詳細は後述するが、図1に示す第1運転状態にあっては、気体として室外空気OA(第1気体)を、第1空調流路R1にて空調した後、加湿機11に導いて、加湿機11の加湿に伴って加えられた湿分の蒸発に伴う蒸発潜熱を奪わせる形態で冷却して、適切に除湿冷却された空調用空気SAとして空調対象空間Sに供給して、除湿冷房運転が実現する。
【0021】
一方、第2空調流路R2(図1図4において一点鎖線で表される流路)は、冷却器14、加熱器15、デシカントロータ12の再生部12bに順に接続され、夫々に順に気体を通流させている。さらに、第2空調流路R2には、気体を第2空調流路R2へ上述の如く通流させるべく、デシカントロータ12の再生部12bの下流側で後述する第2四方弁17の上流側に、気体を上流側から吸引して下流側へ圧送する第2ファン16が設けられている。
これにより、第2空調流路R2を通流する気体は、冷却器14に冷却用冷媒として導かれ、当該冷却器14にて高温の気体と熱交換する形態で加熱され、加熱器15にて温水Wと熱交換する形態で加熱され、デシカントロータ12の再生部12bにて加湿されて、加湿加熱された状態となる。
詳細は後述するが、図4に示す第2運転状態にあっては、気体としての室外空気OA(第2気体)を、第2空調流路R2にて空調した後、加湿機11に導いて十分に加湿し、適切に加湿加熱された空調用空気SAとして空調対象空間Sに供給して、加湿暖房運転が実現する。
【0022】
尚、本発明の空調システムでは、上述の如く、加湿機11を空調対象空間Sに導かれる直前の空調用空気SAを加湿するように設け、適切な除湿冷却性能を発揮することにより、図11の従来技術にて設けられていた2段目の第2デシカントロータ13、及び第2冷却器14を省略して、構成の簡素化を図っている。
【0023】
〔除湿冷房運転〕
除湿冷房運転を実行するには、まず、図示しない制御装置による制御により、第1四方弁10と第2四方弁17とを、図1に示す第1運転状態へと切り換え制御する。具体的には、制御装置は、第1四方弁10を、室外空気OA(第1気体)を第1空調流路R1へ導くと共に室外空気RA(再生用空気)を第2空調流路R2へ導く状態に切り替え制御し、第2四方弁17を、第1空調流路R1にて空調された室外空気OA(第1気体)を加湿機11へ導いた後に空調用空気SAとして空調対象空間Sへ導く状態に択一的に切り替え制御する。
このとき、特に、室外空気OA(第1気体)が空調用空気SAへと空調される過程について説明すると、第1四方弁10及び第2四方弁17が第1運転状態(図1の状態)に切り換えられている状態で、第1ファン18を働かせることにより、室外空気OA(第1気体)が、第1四方弁10を介して第1空調流路R1に導かれ、デシカントロータ12の吸湿部12aにて除湿され、冷却器14にて冷却され、第2四方弁17にて加湿機11へ導かれ、当該加湿機11にて加湿されて、空調用空気SAとして空調対象空間Sに導かれる。
【0024】
尚、当該除湿冷房運転では、室内空気RAが、冷却用媒体として冷却器14を通流した後、加熱器15を通流して、再生用空気としてデシカントロータ12の再生部12bを通流して、第2ファン16にて第2四方弁17へ向けて圧送される。室内空気RAは、第2四方弁17を通過して、空気排出管37を介して排気VAとして、空調対象空間Sの外部へ導かれる。
【0025】
〔除湿冷房運転における空調性能〕
これまで説明してきたように、本発明の空調システムは、室外空気OA(第1気体)を第1空調流路R1にて空調した後、さらに、加湿機11にて室外空気OA(第1気体)を加湿し、室外空気OA(第1気体)から加湿による湿分の蒸発に伴う蒸発潜熱を奪う形態で冷却することで、比較的簡易な構成を維持しながらも、室外空気OA(第1気体)を適切に除湿冷却できるものである。
そこで、以下では、本発明の除湿冷房運転において除湿冷房性能と、従来技術の除湿冷房性能とを、図2、3、12、13に基づいて、比較することで評価する。図2、3に示されるP1−P8は、図1における回路上に示す点に対応しており、図2は、各点で示す気体の状態(温度、絶対湿度、相対湿度)を示した空気線図であり、図3の表では、P1−P8における温度・絶対湿度・相対湿度の値を示している。一方、図12、13に示されるP1−P11は、従来技術である図11における回路上に示す点に対応しており、図12は、各点で示す気体の状態(温度、絶対湿度、相対湿度)を示した空気線図であり、図13の表は、P1−P11における温度・相対湿度・絶対湿度の値を示したものである。
図1の例では、室外空気OAの温度は35℃で、相対湿度は45%である。また、別のエアコンによる冷房や除湿を行わない場合、室外空気OAの温度は27.0℃で、相対湿度は65.0%である。また、第1空調流路R1へ導かれる室外空気OAの流量は100m3/hであり、加熱器15に導かれる温水Wは、温度が75℃で1L/分の流量で供給されるものとし、加湿機11における水噴霧量は5.3g/分とした。
【0026】
まず、本発明と従来技術との除湿性能について比較する。従来技術では、室外空気OAが、計測点P1−P2、P3−P4を通流する過程で除湿され、空調用空気SAとなったときには、絶対湿度が、4.4g/kg乾燥空気だけ低下している。一方、本発明にて除湿冷房運転を行う場合において、室外空気OAが、計測点P1−P2を通流する過程で除湿され、空調用空気SAとなったときには、絶対湿度が2.5g/kg乾燥空気だけ低下している。これにより、除湿性能については、従来技術よりも低下しているものの、除湿機能を適切に発揮しているといえる。
尚、図2図3によると、空調用空気SAは、温度19.5℃、相対湿度95%となっており、この場合における不快指数を計算すると66.8となる。これは、10%の人が不快と感じる不快指数75よりも低い値となっており、良好な除湿性能が発揮できているといえる。
【0027】
次に、本発明と従来技術との冷房性能について比較する。従来技術では、室外空気OAが、計測点P2−P3、P4−P5を通流する過程で冷却され、空調用空気SAとなったときには、温度が、6.5℃だけ低下し、28.5℃となっている。一方、本発明にて除湿冷房運転を行う場合において、室外空気OAは、計測点P2−P3、P3−P4を通流する過程で冷却され、空調用空気SAとなったときには、温度が、15.5℃だけ低下しており、19.5℃となっている。これにより、冷房性能については、従来技術よりも飛躍的に高まっているといえる。特に、本発明では、15℃以上の温度低下を実現できており、真夏等であっても十分な冷房効果を気体できる。当該冷房効果は、図2の空気線図に示されているように、室外空気OAが、計測点P3−P4までの間において、加湿機11にて加湿され、その湿分の蒸発に伴う蒸発潜熱を奪われる形態で冷却されている効果が大きいためである。
【0028】
本発明の空調システムは、第1四方弁10及び第2四方弁17を適切に働かせることにより、従来技術では実現できなかった除湿冷房運転と加湿暖房運転との切り換えを実現している。
【0029】
〔加湿暖房運転〕
加湿暖房運転を実行するには、除湿冷房運転を実行した場合と同様に、図示しない制御装置により、第1四方弁10及び第2四方弁17を図4に示す第2運転状態へと切り換え制御する。
具体的には、制御装置は、第1四方弁10を、室外空気OA(第2気体)を第2空調流路R2へ導くと共に室内空気RA(吸湿用空気)を第1空調流路R1へ導く状態に切り替え制御し、第2四方弁17を第2空調流路R2にて空調された室外空気OA(第2気体)を加湿機11へ導いた後に空調用空気SAとして空調対象空間Sへ導く状態に択一的に切り替え制御する。
このとき、特に、室外空気OA(第2気体)が空調用空気SAへと空調される過程について説明すると、第1四方弁10及び第2四方弁17が第2運転状態(図4に示す状態)に切り換えられている状態で、第2ファン16を働かせることにより、室外空気OA(第2気体)が、第1四方弁10を介して第2空調流路R2に導かれ、冷却器14に冷却用媒体として導かれて加熱され、加熱器15にて温水Wと熱交換する形態で加熱され、デシカントロータ12の再生部12bにて加湿される形態で適切に加湿され、第2四方弁17を介して加湿機11へ導かれ、当該加湿機11にて加湿された後に空調用空気SAとして空調対象空間Sに導かれる。
【0030】
尚、加湿暖房運転において、室内空気RAは、第1四方弁10を介して第1ファン18に導かれ、第1ファン18にて下流側へ圧送され、吸湿用空気としてデシカントロータ12の吸湿部12aを通流し、被冷却用媒体として冷却器14を通流し、第2四方弁17を介して、排気VAとして空調対象空間Sの外部へ導かれる。
【0031】
〔加湿暖房運転における空調性能〕
以下に、本発明の加湿暖房運転の加湿暖房性能を、図5、6に基づいて評価する。図5、6に示されるP1−P8は、図4における回路上に示す点であり、図5は、各点で示す気体の状態(温度、絶対湿度、相対湿度)を示した空気線図であり、図6の表では、P1−P8での温度・相対湿度・絶対湿度の値を示している。
【0032】
空調用空気SAとしての室外空気OAの温度は、計測点P1−P5の間において、室外空気OAが冷却器14に冷却用媒体として供給されることで加熱され、加熱器15にて温水Wと熱交換して加熱された後、デシカントロータ12の再生部12b、加湿機11を通過することで、最終的には7℃から44.5℃まで昇温する。
一方、空調用空気SAとしての室外空気OAの絶対湿度は、計測点P1−P5の間において、冷却器14、加熱器15を通過した後、デシカントロータ12の再生部12bにて加湿され、加湿機11にて加湿されることで、最終的には4.8g/kg乾燥空気から14.4g/kg乾燥空気まで増加する。
以上より、本発明の空調システムは、適切に加湿暖房性能を発揮しているといえる。
【0033】
〔空調システムのパッケージ化〕
本発明の空調システムは、各構成機器、第1空調流路R1、第2空調流路R2をケーシング30の内部にパッケージ化し、コンパクト化を図っている。そこで、以下では、まず、図7(a)(b)に基づいて、ケーシング30の内部における各構成機器の配置、第1空調流路R1、第2空調流路R2の形成について説明する。その後、図7に基づき、除湿冷房運転時における室外空気OAが空調されて空調用空気SAとなる流れを説明し、図8に基づき、除湿冷房運転時における室内空気RAが排気VAとなる流れを説明し、図9に基づき、加湿暖房運転時における室外空気OAが空調されて空調用空気SAとなる流れを説明し、図10に基づき、加湿暖房運転時における室内空気RAが排気VAとなる流れについて説明する。
【0034】
図7は、ケーシング30の内部に、上述の構成機器を配置したときの斜視図を示している。ここで、空調システムは、ケーシング30の内部にて、上述した各構成機器に対し、室外空気OA及び室内空気RAを適切に導くべく、室外空気OA及び室内空気RAが、ケーシング30の内部の一方側(図7(a)で矢印Xの先端側)と、他方側(図7(a)で矢印Xの基端側)とに形成した流路を通流するように構成されている。当該構成を適切に示すべく、図7(a)は、ケーシング30の内部の一方側を紙面手前側(図7(a)で矢印Xの先端側)に向けた状態を示しており、図7(b)は、ケーシング30の内部の他方側を紙面手前側(図7(b)で矢印Xの基端側)に向けた状態を示している。尚、詳細は後述するが、ケーシング30の内部の一方側に形成される流路は、途中で他方側に導かれ、ケーシング30の内部の他方側に形成される流路は、途中で一方側に導かれるように形成されている。
【0035】
本発明の空調システムは、図7に示すように、ケーシング30の内部に、加湿機11、デシカントロータ12、第1ファン18、冷却器14、加熱器15、第2ファン16、第1四方弁10、及び第2四方弁17が、コンパクトに配置されている。
具体的には、第1四方弁10及び第2四方弁17を、互いの回転軸Lを同軸上に配置した状態で、ケーシング30の側面の一方側から他方側への方向(図7(a)の矢印X方向)視で、互いに重なるように配置されている。これにより、回転軸L周りで回転する第1四方弁10及び第2四方弁17を、ケーシング30の内部において適切に機能する状態で、コンパクトに収納することができる。
さらに、第1四方弁10及び第2四方弁17との間には、第1四方弁10と第2四方弁17の回転軸Lと直交する状態で、ケーシング30の上方側(図7(a)(b)で矢印Zの先端側)の略半分の領域を、ケーシング30の内部領域の一方側(図7(a)で矢印X先端側)と他方側(図7(a)で矢印X基端側)とに二分する第1分離壁31が設けられている。そして、当該第1分離壁31とケーシング30等により、室内空気RA及び室外空気OAを通流する流路を、ケーシング30の内部領域の一方側を通流する流路と、ケーシング30の内部領域の他方側を通流する流路とに分離している。このように流路を形成することで、ケーシング30内部において、空気通流用の配管を極力設けない構成とし、構成の簡略化を図っている。
【0036】
以下では、具体的な室外空気OA及び室内空気RAの空気の通流路を順に説明する形態で、ケーシング30の内部における各構成機器の配置関係等を説明する。尚、図面において、空気の流れは、各構成機器の内部を通流する場合を点線で、それ以外の場合を実線で示している。
〔除湿冷房運転時における室外空気OAの通流路及びその流れ〕
図7(a)(b)に示す状態では、第1四方弁10及び第2四方弁17が、図1に示す第1運転状態を実現可能な状態に切り替えられている状態である。
ケーシング30の上面32(図7(a)で矢印Zの先端側の面)には、第1空気流入口33が、ケーシング30の内部領域の一方側(図7(a)で矢印Xの先端側)に配置された第1四方弁10に室外空気OAを流入可能な状態で、設けられている。
第1四方弁10の下流側には、第1流路形成空間V1が、第1分離壁31及びケーシング30等によって形成されており、当該第1流路形成空間V1の内部には、室外空気OAを吸引して下流側へ圧送する第1ファン18が設けられている。
第1流路形成空間V1の下流側には、第2分離壁34及びケーシング30等によって形成された第2流路形成空間V2が形成されており、当該第2流路形成空間V2には、第1ファン18の吹出口、デシカントロータ12の吸湿部12a、及び冷却器14の被冷却媒体流入口14cが、記載順に室外空気OAを通流可能な状態で配置されている。
第2流路形成空間V2の下流側には、第1分離壁31及びケーシング30等によって形成された第3流路形成空間V3が形成されており、当該第3流路形成空間V3には、冷却器14の被冷却媒体流出口14dと、当該冷却器14を出た室外空気OAが導かれる形態で第2四方弁17が設けられている。
第3流路形成空間V3の下流側には、第2四方弁17及び加湿機11が設けられると共に当該加湿機11を通過した室外空気OAを空調用空気SAとが設けられている。
以上の如く、流路が形成されることで、室外空気OAは、第1空気流入口33から第1四方弁10を介して第1流路形成空間V1に導かれ、第1流路形成空間V1にて第1ファン18にて第2流路形成空間V2に導かれ、第2流路形成空間V2にてデシカントロータ12の吸湿部12aを通流した後、被冷却流体として冷却器14を通流する。
室外空気OAは、冷却器14を通流しているときに、ケーシング30の内部領域の一方側(図7(a)で矢印Xの基端側)から他方側(図7(a)で矢印Xの先端側)へと導かれる。
そして、第2四方弁17を介して加湿機11を通流した後、空調用空気SAとして空調対象空間(図示せず)へ導かれる。
【0037】
〔除湿冷房運転時における室内空気RAの通流路及びその流れ〕
図8(a)(b)に示す状態では、第1四方弁10及び第2四方弁17が、図1に示す第1運転状態を実現可能な状態に切り替えられている状態である。
ケーシング30の側面の一方側(図8(a)で矢印Xの先端側)には、室内空気RAを流入する第2空気流入口36が設けられ、当該第2空気流入口36から流入した室内空気RAを流入可能に第1四方弁10が配置されている。
第1四方弁10の下流側には、第1分離壁31及びケーシング30等によって形成された第4流路形成空間V4が形成され、当該第4流路形成空間V4には、冷却器14の冷却用媒体流入口14aが設けられている。
第4流路形成空間V4の下流側には、第2分離壁34及びケーシング30等によって形成された第5流路形成空間V5が形成され、当該第5流路形成空間V5には、冷却器14の被冷却用媒体流出口14b、加熱器15、デシカントロータ12の再生部12b、第2ファン16、及び第2ファン16によって圧送された室内空気RAが導かれる第2四方弁17が、室内空気RAの通流路に沿う状態で記載順に設けられている。
第5流路形成空間V5の下流側には、第2四方弁17を出た室内空気RAを外部へ排出する空気排出管37が設けられている。
以上の如く、流路が形成されることで、室内空気RAは、第2空気流入口36からケーシング30の内部に導かれ、第1四方弁10を介して第4流路形成空間V4に導かれ、冷却用媒体として冷却器14を通流した後、加熱器15を通流して、再生用空気としてデシカントロータ12の再生部12bを通流して、第2ファン16にて第2四方弁17へ向けて圧送される。室内空気RAは、第2四方弁17を通過して、空気排出管37を介して排気VAとして、空調対象空間(図示せず)の外部へ導かれる。
尚、室内空気RAは、冷却器14を通流しているときに、ケーシング30の内部領域の他方側(図8(a)で矢印Xの先端側)から一方側(図8(a)で矢印Xの基端側)へと導かれる。
【0038】
〔流路の切り換え〕
除湿冷房運転時と加湿暖房運転時における流路は、第1四方弁10及び第2四方弁17が、回転軸Lを軸心として同じ回転角(本実施形態では90°)だけ回転することで切り換えられる。以下、第1四方弁10と第2四方弁17の切り換えにより、流路が図9、10に示す状態に設定されている場合において、加湿暖房運転時の空気の流れについて説明する。
尚、図9、10に示す加湿暖房運転時の第1四方弁10及び第2四方弁17の切り替え状態は、図4に示す第2運転状態を実行する場合の状態に対応している。
【0039】
〔加湿暖房運転時における室外空気OAの流れ〕
加湿暖房運転時における室外空気OAは、図9(a)(b)に示すように、上述した除湿冷房運転時にける室内空気RAとほぼ同様の流路を通流する。そこで、以下では、流路及び流路に設けられた空調システムの構成要素の説明は割愛し、流路を通流する室外空気OAの流れについてのみ説明する。
室外空気OAは、第1空気流入口33から第1四方弁10を介して、第4流路形成空間V4に導かれる。さらに、第4流路形成空間V4の下流側の第5流路形成空間V5に導かれ、冷却用媒体として冷却器14を通流し、加熱器15を通流して、デシカントロータ12の吸湿部12aを通流した後、第2ファン16にて、第2四方弁17の側へ圧送される。その後、加湿機11を通過して、空調用空気SAとして空調対象空間(図示せず)に導かれる。
【0040】
〔加湿暖房運転時における室内空気RAの流れ〕
加湿暖房運転時における室内空気RAは、図10(a)(b)に示すように、上述した除湿冷房運転時における室外空気OAとほぼ同様の流路を通流する。そこで、以下では、流路及び流路に設けられた空調システムの構成要素の説明は割愛し、流路を通流する室内空気RAの流れについてのみ説明する。
室内空気RAは、第2空気流入口36からケーシング30の内部に流入し、第1四方弁10を介して、第1流路形成空間V1に導かれ、第1ファン18にて第2流路形成空間V2へ圧送され、第2流路形成空間V2にて吸湿用空気としてデシカントロータ12の吸湿部12aを通流し、被冷却用媒体として冷却器14を通流し、第2四方弁17を介して空気排出管37へ導かれて、排気VAとして空調対象空間(図示せず)の外部へ導かれる。
【0041】
参考例
(A)
上記実施形態において、空調システムは、ケーシング30の内部に、加湿機11、デシカントロータ12、第1ファン18、冷却器14、加熱器15、第2ファン16、第1四方弁10、及び第2四方弁17が、全体としてコンパクトとなるように適切に配置されているものとした。しかしながら、例えば、上記構成機器のすべてが、ケーシング30の内部に設けられている必要はなく、その一部がケーシング30の外部に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の空調システムは、デシカントロータの機能を適切に発揮させ、全体としての空調能力を維持させながらも、構成の簡素化を図ることができる空調システムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
OA :室外空気
RA :室内空気
SA :空調用空気
VA :排気
S :空調対象空間
R1 :第1空調流路
R2 :第2空調流路
L :第1、2四方弁の回転軸
10 :第1四方弁
11 :加湿機
12 :デシカントロータ
12a :吸湿部
12b :再生部
14 :冷却器
15 :加熱器(加熱手段の一例)
17 : 第2四方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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