(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の磁気センサが3個のホール素子であって、該3個のホール素子のうち中心位置にある第2のホール素子と、該第2のホール素子に対して等間隔に配置された第1及び第3のホール素子とを備え、
前記比較判定手段は、前記第2のホール素子からの出力信号の第2の差分信号の正負を判定して、該第2の差分信号が正(0を含む)ならば、前記第1のホール素子からの出力信号の第1の差分信号を出力し、該第2の差分信号が負ならば、前記第3のホール素子からの出力信号の第3の差分信号を出力し、
前記除算手段は、前記第2の差分信号を前記第1の差分信号で除算、又は前記第2の差分信号を前記第3の差分信号で除算することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
前記第1のホール素子の出力電圧をVa1、Va2とし、前記第2のホール素子の出力電圧をVb1、Vb2とし、前記第3のホール素子の出力電圧をVc1、Vc2とした場合に、
前記第1のホール素子の前記出力電圧Va1とVa2から第1の差分電圧Vha=Va1−Va2を得る第1の差動増幅器と、前記第2のホール素子の前記出力電圧Vb1とVb2から第2の差分電圧Vhb=Vb1−Vb2を得る第2の差動増幅器と、前記第3のホール素子の前記出力電圧Vc1とVc2から第3の差分電圧Vhc=Vc2−Vc1を得る第3の差動増幅器とを備え、
前記比較判定手段は、前記第2の差分電圧Vhbの正負を判定して、該第2の差分信号が正(0を含む)ならば、前記第1の差分信号Vhaを出力し、該第2の差分信号が負ならば、前記第3の差分信号Vhcを出力し、
前記除算手段は、前記第2の差分電圧Vhbを前記第1の差分電圧Vhaで除算(Vhb/Vha)、又は前記第2の差分電圧Vhbを前記第3の差分電圧Vhcで除算(Vhb/Vhc)することを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
前記磁石が、1対のN極S極を異極が隣り合うように2対着磁した磁石又は1対のN極S極を持つ2つの磁石を異極が隣り合うように並べた磁石又は1対のN極S極を持つ1つの磁石であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
前記複数の磁気センサが3個のホール素子であって、該3個のホール素子のうち中心位置にある第2のホール素子と、該第2のホール素子に対して等間隔に配置された第1及び第3のホール素子とを備え、
前記比較判定ステップは、前記第2のホール素子からの出力信号の第2の差分信号の正負を判定して、該第2の差分信号が正(0を含む)ならば、前記第1のホール素子からの出力信号の第1の差分信号を出力し、該第2の差分信号が負ならば、前記第3のホール素子からの出力信号の第3の差分信号を出力し、
前記除算ステップは、前記第2の差分信号を前記第1の差分信号で除算、又は前記第2の差分信号を前記第3の差分信号で除算することを特徴とする請求項7に記載の位置検出方法。
前記第1のホール素子の出力電圧をVa1、Va2とし、前記第2のホール素子の出力電圧をVb1、Vb2とし、前記第3のホール素子の出力電圧をVc1、Vc2とした場合に、
前記第1のホール素子の前記出力電圧Va1とVa2から第1の差分電圧Vha=Va1−Va2を得る第1の差動増幅ステップと、前記第2のホール素子の前記出力電圧Vb1とVb2から第2の差分電圧Vhb=Vb1−Vb2を得る第2の差動増幅器と、前記第3のホール素子の前記出力電圧Vc1とVc2から第3の差分電圧Vhc=Vc2−Vc1を得る第3の差動増幅ステップとを有し、
前記比較判定ステップは、前記第2の差分電圧Vhbの正負を判定して、該第2の差分信号が正(0を含む)ならば、前記第1の差分信号Vhaを出力し、該第2の差分信号が負ならば、前記第3の差分信号Vhcを出力し、
前記除算ステップは、前記第2の差分電圧Vhbを前記第1の差分電圧Vhaで除算(Vhb/Vha)、又は前記第2の差分電圧Vhbを前記第3の差分電圧Vhcで除算(Vhb/Vhc)することを特徴とする請求項8に記載の位置検出方法。
前記磁石が、1対のN極S極を異極が隣り合うように2対着磁した磁石又は1対のN極S極を持つ2つの磁石を異極が隣り合うように並べた磁石又は1対のN極S極を持つ1つの磁石であることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の位置検出方法。
【背景技術】
【0002】
近年、位置検出装置を用いた電子機器として、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、携帯電話カメラなどが挙げられる。それらにおける手振れ補正装置や、ズームやオートフォーカスのためのレンズ位置制御装置などは、駆動部とフィードバック用の位置検出部から構成されている。これらは、その普及にともない、小型軽量でかつ組み立て性がよく安価な構成が望まれている。なかでも、ボイスコイルモータ駆動用磁石と磁気センサを用いて、1つの磁石で駆動と位置検出を兼ねる構成は、「機構体積」が抑えられるため、小型化の要求が特に強いカメラの手振れ補正用レンズの位置制御などに広く用いられている。
【0003】
図1は、従来の手振れ補正用レンズユニットの取り付けられたアクチュエータモジュールを説明するための構成図で、この種のアクチュエータモジュールには、駆動用磁石と磁気センサを備えた位置検出装置が設けられている。このアクチュエータモジュール10は、実装基板11上に移動可能に配置された手振れ補正用レンズ16を保持したレンズバレル15と、このレンズバレル15に取り付けられたX軸駆動兼位置検出用磁石12Xと、実装基板11上に設けられ、X軸駆動兼位置検出用磁石12Xのほぼ真下に配置されたX軸駆動用コイル14X及びX軸用磁気センサ13Xとを備えているとともに、レンズバレル15に取り付けられたY軸駆動兼位置検出用磁石12Yと、実装基板11上に設けられ、Y軸駆動兼位置検出用磁石12Yの真下に配置されたY軸駆動用コイル14Y及びY軸用磁気センサ13Yとを備えている。
【0004】
このような構成により、レンズバレル15の移動すべき位置を指令する信号及びX軸用及びY軸用磁気センサ13X,13Yによって検出された位置信号に基づいて、X軸及びY軸駆動用コイル14X,14Yに流す駆動電流を制御している。
【0005】
図2は、磁石を用いた場合の「機構体積」を説明するための図で、「機構体積」とは、
図2に示すように、磁石が占める体積及び磁石と磁気センサとの間の空間が占める体積のことをいう。つまり、多極磁石3の幅をA、奥行きをB、厚さをL、磁気センサのセンサ面までのギャップをGとした場合に、「機構体積」はA×B×(L+G)で表される。
【0006】
図3(a),(b)は、1個の磁気センサを用いた従来の位置検出方式(方式1)を説明するための図で、「1センサ検出方式(方式1)」を示しており、
図3(a)は、
図2に示された磁石を用いた場合の磁気センサとの配置関係を示した図で、
図3(b)は、
図3(a)における磁石移動量に対する1個の磁気センサの出力電圧の関係を示す図である。図中符号21は実装基板、22は磁気センサ、23はアクチュエータ駆動兼位置検出用の4極の多極磁石を示している。
【0007】
図3(a)において、実装基板21上に1個の磁気センサ22を設け、その上に空間を介して磁石23が配置されている。この磁石23は、実装基板21の平面上に沿って
図3(a)中の矢印方向に移動するものである。
【0008】
一般的に磁石と磁気センサは、
図3(a)のように配置され、磁石は、
図2のように1つの磁石に、N極S極を異極が隣り合うように2対着磁したものを磁極面がセンサ面に平行となるよう配置されることで、磁石の移動に伴い
図3(b)に示すような出力変化が生じる。この磁極面が磁石移動方向と直交するよう、磁石を
図2のY軸まわりに90°回転させて配置しても同様の出力変化が生じる。また、磁石には1対のN極S極を持つ2つの磁石を異極が隣り合うように並べたものを用いてもよいし、1対のN極S極を持つ1つの磁石を用いて磁極面が磁石移動方向と直交するよう配置しても、同様の出力変化が生じる。磁石が矢印方向に、もしくは磁気センサが矢印方向と逆方向に移動した場合、その移動量に応じて
図3(b)に示すようなセンサ出力電圧の変化(信号B)が生じる。この信号Bは、ゼロクロスポイント近傍では高いリニアリティを持ち、これに基づいて磁石と磁気センサの相対的な位置関係を特定することができる。
【0009】
図21(a)及び
図4(a)乃至(c)は、「方式1」において、
図2のような1つの磁石にN極S極を異極が隣り合うように2対着磁した磁石を用いて、所定の磁石移動距離0.5mmとした場合に、後述するリニアリティに対する条件「条件1」を達成することができる最小機構体積での実施例を示す図であり、
図21(a)は、そのときの磁石と磁気センサの配置関係を示しており、
図4(a)乃至(c)は、磁石移動距離に対する磁気センサの電圧変化及び位置検出誤差の変化を示している。Aを9.10mm、Bを1.00mm、Lを1.30mm、Gを3.20mmとし、「機構体積」は40.95mm
3である。磁石の残留磁束密度を1380mT、センサ感度を2.2mV/mT、出力ノイズの標準偏差σ=0.09mVとしている。
図4(a)は所定の磁石移動距離0.5mmにおける磁気センサの電圧変化、
図4(b)は、磁石移動距離に対する位置検出誤差の変化を示しており、実線はセンサの出力ノイズを考慮しない場合、破線はセンサの出力ノイズを考慮した場合を示している。
図4(c)は、
図4(b)の縦軸スケールを±5μmから±0.5μmに変更したものである。ここで、位置検出誤差とは、
図4(a)における磁石移動距離±0.25mm地点での2出力を結ぶ理想直線とセンサ出力電圧との乖離量から求まる非線形性誤差である。なお、
図4(b)の破線は、センサ出力電圧に±3σ=±0.27mVを加えた上で、乖離量を求め、そこから算出された位置検出誤差を示している。
【0010】
上述した「1センサ検出方式(方式1)」を用いたものとして、例えば、特許文献1のものがある。この特許文献1に記載のものは、補正レンズを光軸に対して垂直面内で互いに直交する2方向に移動制御することにより像ぶれを補正する像ぶれ補正装置に関するもので、固定枠に2方向移動自在に支持されて補正レンズを有する移動枠と、この移動枠に取付けられて少なくとも2つのコイルパターンを有する積層基板と、固定枠にコイルパターンに対向する部位に設けられたマグネットと、移動枠に設けられて補正レンズの位置を検出する位置検出センサと、積層基板上のコイルパターンと位置検出センサへの配線を、積層基板から固定枠側に引き出すフレキシブルプリント板とを具備したものである。
【0011】
しかしながら、このような従来の「1センサ検出方式(方式1)」による構成では、温度変化によりセンサ出力電圧が変化すると、位置検出誤差が大きくなるという問題を抱えている。仮に室温で得られる信号Bに基づいて理想直線を求める場合、磁気センサ及び磁石の温度特性により、例えば、低温では信号Aのように出力が大きくなったり、高温では信号Cのように信号が小さくなったりすることで、理想直線からの乖離量が大きくなり、位置検出誤差が大きくなる。さらに、
図22は、条件1を満たす最小機構体積と磁石移動距離の関係を各方式について示したものだが、これによると高いリニアリティを長距離にわたって確保する場合は機構体積が大きくなるといった問題を抱えていることがわかる。
【0012】
図5(a),(b)は、2個の磁気センサを用いた従来の位置検出方式(方式2)を説明するための図で、上述した「1センサ検出方式(方式1)」の問題点を解決するために2個の磁気センサを用いた「差分・和分割り算方式(方式2)」を示しており、
図5(a)は、磁石と磁気センサとの配置関係を説明するための構成図で、
図5(b)は、
図5(a)における磁石移動量に対する2個の磁気センサの出力電圧の関係を示す図である。図中符号31は実装基板、32a,32bは磁気センサ、33はアクチュエータ駆動兼位置検出用の4極の多極磁石を示している。
【0013】
実装基板31上に2個の磁気センサ32a,32bを設け、その上に空間を介して磁石33が配置されている。このような構成により、磁石33が
図5(a)に示すような矢印方向に、あるいは、2個の磁気センサ32a、32bが
図5(a)に示した矢印方向と逆方向に移動した場合、
図5(b)に示すような出力電圧の変化が生じる。2つのセンサ出力電圧(信号D、E)の差を、2つのセンサ出力電圧の和で除算した結果は、
図8に示すようにゼロクロスポイント近傍では高いリニアリティ領域を持っており、この高いリニアリティ領域を利用することで位置検出が可能である。つまり、この除算結果に基づいて、磁石と2つの磁気センサの相対的な位置関係を特定することができる。
【0014】
以下では、磁気センサにホール素子を用いた場合について説明する。
図6は、ホール素子の複数の端子を示す図であり、ここではホール素子の各端子を、T1がVcの駆動電圧の入力端子、T3はGND端子、T2はVout(+)の正極端子、T4はVout(−)の負極端子とする。
図5(a)に示した磁気センサ32aにホール素子を用いる場合、端子T1とT3間に駆動電圧を印加すると、端子T2と端子T4間において、端子T2側を+として見たときに、N極を印加すると、正の差動出力が得られるとする。したがって、磁石が移動すると、
図5(b)に示すように、出力信号Dが得られる。
【0015】
同様に、
図5(a)に示した磁気センサ32bにもホール素子を用いる場合、端子T1とT3間に、端子T1側を+として駆動電圧を印加すると、端子T2と端子T4間において、端子T2側を+としてみたとき、N極印加時に正の差動電圧が得られる。磁石が移動すると、
図5(b)に示すように、出力信号E’が得られる。ここで、磁気センサ32bに用いられるホール素子において、端子T2と端子T4で、端子T4を+として出力電圧を取り出すと、N極の印加に対して負の差動電圧が得られるようになり、出力信号Eのような特性が得られる。出力信号Eは出力信号E’の正負を反転した出力信号に等しい。なお、端子T3側を+、端子T1側を−として駆動電圧を印加し、端子T2と端子T4において、端子2側を+としてみたときも同様に出力信号Eの特性が得られる。
【0016】
図7は、
図5(b)に示した高いリニアリティ領域における2つの磁気センサの差分及び和分の出力電圧と磁石移動量との関係を示す図で、
図8は、
図5(b)に示した高いリニアリティ領域における2つのホール素子の差分÷和分と磁石移動量との関係を示す図である。
【0017】
得られた信号D、Eの差分F=(D−E)及び信号D、Eの和分G=(D+E)は、
図7に示したようになり、差分を和分で割ることにより、
図8の正規化した値H=(D−E)/(D+E)を算出し、この高いリニアリティを持つ値Eに基づいて磁石と2つの磁気センサの相対位置関係を求めることができる。磁気センサにホール素子以外を用いる場合でも、磁気センサ32aをN極(S極)が印加されることで、正(負)出力を得られるようにし、磁気センサ32bをN極(S極)が印加されることで、負(正)出力を得られるようにして、上述の演算を行えばよい。
【0018】
このような「差分・和分割り算方式(方式2)」によれば、除算過程において、磁気センサが持つ出力電圧の温度係数及び磁石が作る磁束密度の温度係数が打ち消されるため、除算結果は温度に依存しない量であり、温度変化によって位置検出誤差が大きくなることはなく、また、
図22に示すように、方式1より比較的小さな機構体積で高いリニアリティを長距離にわたって確保できる。
【0019】
図21(b)及び
図9(a)乃至(d)は、「方式2」において、
図2のような1つの磁石にN極S極を異極が隣り合うように2対着磁した磁石を用いて、所定の磁石移動距離0.5mmとした場合に、後述する「条件1」を達成することができる最小機構体積での実施例を示す図であり、
図21(b)は、そのときの磁石と磁気センサの配置関係を示しており、
図9(a)乃至(d)は磁石移動距離に対する磁気センサの電圧変化と差分と和分の割り算による演算結果の変化及び位置検出誤差の変化を示している。Aを2.80mm、Bを0.40mm、Lを0.40mm、Gを0.80mmとし、「機構体積」は1.34mm
3である。ピッチ(ホール素子間距離)を1.80mmとし、磁石の残留磁束密度を1380mTとし、センサ感度を2.2mV/mTとし、出力ノイズの標準偏差σ=0.09mVとしている。
図9(a)は、磁石移動距離に対する磁気センサの電圧変化を8mmにわたって示した図であり、
図9(b)は所定の磁石移動距離0.5mmにおける2出力の差÷和の変化を示している。
図9(c)は、実線が出力ノイズを考慮しない場合、破線は出力ノイズ±3σ=0.27mVを考慮した場合の磁石移動距離に対する位置検出誤差を示す図で、
図9(d)は、
図9(c)の縦軸スケールを±5μmから±0.5μmに変更したものである。
【0020】
上述した「差分・和分割り算方式(方式2)」を用いたものとして、例えば、特許文献2のものがある。この特許文献2に記載のものは、撮影光軸に対して直交する平面内で撮像素子を移動させることによりブレを補正する撮像装置に関するもので、第1の方向に沿って配置された2つのホール素子によって各々検出された電圧値に基づいて、その差分をその和分で除することによって、基台部、第1の磁石ユニット、第1のコイル及び第1のヨークによって形成される第1の磁界の変化量であって、基準位置に対する第1の方向における可動部の移動量を判定するものである。
【0021】
このように、上述した特許文献2には、ホール素子を2個用い、前述のとおり2素子から逆極性の電圧を得て、2出力の差÷和の演算結果を参照することで、分母分子でホール素子が持つ出力電圧の温度係数、及び、磁石が作る磁束密度の温度係数が打ち消され、かつ、比較的長い距離で高いリニアリティを確保できる構成が開示されている。
【0022】
図10は、本発明に係る位置検出装置の前提となる位置検出方式(方式2)を用いた位置検出装置を説明するためのブロック構成図で、
図5(a)に示した2個の磁気センサにホール素子を用いた「差分・和分割り算方式(方式2)」を用いた場合を示している。図中符号41a,41bはホール素子、42a,42bは差動増幅器、43は減算器、44は加算器、45は除算器を示している。
【0023】
第1のホール素子41aの入力端子T1、T3間に入力電圧を印加すると、出力端子T2,T4から、Va1とVa2の出力電圧を得る。これらの電圧が差動増幅器42aに入力されると、その出力電圧VhaはVa1−Va2となる。N極が印加されるとVhaは正の値をとるとする。同様に、第2のホール素子41bの入力端子T1、T3間に入力電圧を印加すると、出力端子T2,T4から、Vb1とVb2の出力電圧を得る。Vb2−Vb1となるよう、これらの電圧を差動増幅器42bに入力すると、その出力電圧Vhb=Vb2−Vb1は、N極が印加されると負の値をとるとする。すなわち、第1及び第2のホール素子41a,41bに同極性の磁場が印加されるとき、VhaとVhbは逆極性となるように出力電圧方向を設定する。
【0024】
差動増幅器42a,42bの出力電圧VhaとVhbとが減算器43に入力されると、Vha−Vhbが出力される。また、差動増幅器42a,42bの出力電圧VhaとVhbとが加算器44に入力されると、Vha+Vhbが出力される。これらの出力電圧を除算器45に入力されると、(Vha−Vhb)/(Vha+Vhb)が出力される。
【0025】
つまり、上述した「差分・和分割り算方式(方式2)」を用いた位置検出装置のブロック構成図を用いることにより、
図5(b)に示すような出力電圧の変化が生じ、前記
図5(b)における信号D及び信号Eの差分を和分で割った演算が行われ、その結果は、
図8に示すようにゼロクロスポイント近傍では高いリニアリティ領域を持っており、この高いリニアリティ領域を利用することで位置検出が可能となる。しかしながら、この「差分・和分割り算方式(方式2)」では、高いリニアリティを長い距離にわたって確保するには、後述する
図22に示すとおり、やはり「機構体積」が大きくなるという問題がある。
【0026】
図11(a),(b)は、2個の磁気センサを用いた従来の他の位置検出方式(方式3)を説明するための図で、「2出力割り算方式(方式3)」を示しており、
図11(a)は、磁石と磁気センサとの配置関係を説明するための構成図で、
図11(b)は、
図11(a)における磁石移動量に対する2個の磁気センサの出力電圧の関係を示す図である。図中符号51は実装基板、52a,52b磁気センサ、53はアクチュエータ駆動兼位置検出用の4極の多極磁石を示している。
【0027】
実装基板51上に2個の磁気センサ52a,52bを設け、その上に空間を介して磁石53が配置されている。このような構成により、磁石53が
図11(a)に示すような矢印方向に、あるいは、2個の磁気センサ52a、52bが
図11(a)に示した矢印方向と逆方向に移動した場合、
図11(b)に示すような出力電圧の変化が生じる。2つのセンサ出力電圧(信号I、J)を除算した結果は、
図13に示すように磁石中心近傍の狭い領域では高いリニアリティ領域を持っており、この高いリニアリティ領域を利用することで位置検出が可能である。
図12は、
図11(b)に示した高いリニアリティ領域における2つの磁気センサの出力電圧の拡大図で、
図13は、
図11(b)に示した高いリニアリティ領域における2つの磁気センサの出力電圧の割り算による出力電圧と磁石移動量との関係を示す図である。
【0028】
上述した「2出力割り算方式(方式3)」を用いたものとして、例えば、特許文献3のものがある。この特許文献3に記載のものは、カメラのオートフォーカスやズーム位置の原点検出を行うために位置検出装置及び位置検出方法に関するもので、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、この磁気検出素子に対して相対移動する磁束発生体と、磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備えたものである。つまり、磁気センサを2個配置し、2出力の除算結果を参照することによって温度特性の問題を解決することができるというものである。これは、除算結果が、磁気センサの磁気感度の温度係数が分母分子で打ち消されて温度に依存しない量であるためである。また、磁気センサを2つ配置し、2つのセンサ出力電圧(信号I、J)の除算結果のみに基づいて、相対位置を特定することもできる。
【0029】
図14は、本発明に係る位置検出装置の前提となる他の位置検出方式(方式3)を用いた位置検出装置を説明するためのブロック構成図で、図中符号54a,54bはホール素子、55a,55bは差動増幅器、61はMUX(マルチプレクサ;選択回路)、62はクロック信号発生回路、63はプレアンプ、64はサンプル・ホールド回路(S/H)、65はローパスフィルタ(LPF)、66はPIレギュレータ、67はオペアンプ、68はフィードバック用サンプル・ホールド回路(FBS/H)、69は基準電圧(Vref)発生回路を示している。
【0030】
マルチプレクサ(MUX;選択回路)61は、ホール素子54aの信号成分か、ホール素子54bの信号成分を選択する機能を有する選択回路である。プレアンプ(演算増幅器)63は、ホール素子54a,54bの出力電圧を増幅する演算増幅器である。サンプル・ホールド回路(S/H)64は、MUX61からの信号に基づいてクロック信号発生回路(Clock)62から発生されるクロック信号によりプレアンプ63からの信号をサンプリングする回路である。ローパスフィルタ(LPF)65はサンプル・ホールド回路64に接続され、位置検出信号−Vref・Bhb/Bhaを出力する。また、フィードバック用サンプル・ホールド回路(FB S/H)68は、プレアンプ63からの信号をPI(proportion integral;比例・積分)レギュレータ66に入力する回路である。
【0031】
このPIレギュレータ66は、基準電圧(Vref)発生回路69と抵抗RとコンデンサCとオペアンプ67からなり、フィードバック用サンプル・ホールド回路68は、オペアンプ67の反転入力端子に抵抗Rを介して接続されている。また、オペアンプ67の非反転入力端子は接地されている。また、オペアンプ67の反転入力端子と出力端子間には、直列接続された抵抗RとコンデンサCが接続されている。
【0032】
このPIレギュレータ66は、フィードバック用サンプル・ホールド回路68によってサンプリングされた信号を基準電圧Vrefの電圧レベルになるようにPI制御するレギュレータである。さらに、PIレギュレータ66は、ホール素子54a,54bのそれぞれに駆動電流を供給するものである。
【0033】
次に、この位置検出装置の信号処理回路の動作について説明する。
ホール素子54a(あるいは54b)から出力されたホール素子電圧Vhaは、クロック信号発生回路62によって発生されるクロック信号によりホール素子54a(あるいは54b)を選択したときに、MUX61を介してプレアンプ63に接続され、所定の増幅率Aによって増幅される。今仮に、プレアンプ63によって増幅された信号を、フィードバック用サンプル・ホールド回路68を介してPIレギュレータ66に取り込む信号をホール素子54aのホール電圧Vhaとし、サンプル・ホールド回路64及びローパスフィルタ65を介して出力される信号をホール素子54bのホール電圧Vhbとする。
【0034】
ホール素子54aのホール電圧Vhaは、プレアンプ63で増幅され、A・K・Bha(Aはプレアンプの増幅率、Kは定数、Bha1はホール素子54aが受ける磁束密度)になったとすると、PIレギュレータ66はフィードバック制御によって
A・K・Bha+Vref=AGND(=0)・・・(1)
になるように、PI出力のバイアス点を自動的に変化させる。
【0035】
このとき、このPI出力と同じバイアス点にてホール素子54bを駆動することを考える。同じバイアス点で駆動されており、サンプル・ホールド回路64に取り込まれる増幅後のホール素子54bのホール電圧VhbはA・K・Bhbとなる。
【0036】
よって、K=−Vref/A・Bhaであるから、ホール素子54bのホール電圧Vhbは
−Vref・Bhb/Bha・・・(2)
となる。
【0037】
ホール電圧は、磁束密度と比例するので、上記(2)式は、ホール素子54aとホール素子54bの出力電圧を割り算していることと等価であることがわかる。つまり、この場合におけるVhbの出力変化量は、2つの磁気センサの一方の出力を反転させて除算した結果、−Vhb/Vhaの出力変化量に等価である。
【0038】
ホール素子54a,54bともにN極を印加することで正出力が得られるようになっている場合、磁石移動量に応じて
図11及び
図12の信号I、J’が得られる。信号J’の正負を反転させた信号が信号Jである。よって(信号J)/(信号I)=−(信号J’)/(信号I)=−Vhb/Vhaとなる。
【0039】
この(信号J)/(信号I)という量は、
図13のように、ある程度のリニアリティをもって変化する量であるため、それを参照することで精度のよい位置検出が可能であり、また、磁気センサ及び磁石の温度特性の影響を受けない量であるため、位置検出精度は温度変化により悪化することはない。しかしながら、この「2出力割り算方式(方式3)」では、方式1や方式2で得られる程度の高いリニアリティは確保することができないという問題がある。方式3では後述する「条件1」を満たすことはできない。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図15(a),(b)は、本発明に係る3個の磁気センサを用いた位置検出方式(方式4)を説明するための図で、「領域2分割2出力割り算方式(方式4)」を示す図である。
図15(a)は、磁石と3個の磁気センサとの配置関係を説明するための構成図で、
図15(b)は、
図15(a)における磁石移動量に対する3個のホール素子の出力電圧の関係を示す図である。図中符号71は実装基板、72a,72b,72cは3個の磁気センサ、73はアクチュエータ駆動兼位置検出用の4極の多極磁石を示している。この多極磁石は、
図2のように1つの磁石に、N極S極を異極が隣り合うように2対着磁したものを磁極面がセンサ面に平行となるよう配置されることで、磁石の移動に伴い
図15(b)に示すような出力変化が生じる。この磁極面が磁石移動方向と直交するよう、磁石を
図2のY軸まわりに90°回転させて配置しても同様の出力変化が生じる。また、磁石には1対のN極S極を持つ2つの磁石を異極が隣り合うように並べたものを用いてもよいし、1対のN極S極を持つ1つの磁石を用いて磁極面が磁石移動方向と直交するよう配置しても、同様の出力変化が生じる。
【0055】
磁気センサ72bは、2対のN極S極の境界直下に配置され、磁気センサ72bを中心に、等間隔に、磁石移動方向に沿って磁気センサ72a,72cが配置されている。磁気センサ72a,72bは、N極(S極)が印加されたときに正(負)の電圧を出力し、磁気センサ72cは、負(正)の電圧を出力するよう接続されている。
【0056】
実装基板71上に3個の磁気センサ72a,72b,72cを設け、その上に空間を介して磁石73が配置されている。磁石73もしくは3個の磁気センサ72a,72b,72cを実装基板71に対して平行な面内において、3個の磁気センサ72a,72b,72cが並んでいる方向に動かすと、3個の磁気センサ72a,72b,72cから
図15(b)の出力信号K,L,Mが得られる。
図16は、
図15(b)の高いリニアリティ領域における3個の磁気センサの出力電圧の拡大図で、
図17は、
図15(b)に示した高いリニアリティ領域における3個の磁気センサのうち各々2個の磁気センサの出力電圧の割り算結果と磁石移動量との関係を示す図で、「領域2分割2出力割り算方式(方式4)」を示す図である。
【0057】
この3つの信号は、以下のように場合に分けて演算される。(1)磁気センサ72bの出力信号Lが負のとき、磁気センサ72bの出力信号Lを磁気センサ72cの出力信号Mで除算する。(2)磁気センサ72bの出力信号Lが正のとき、磁気センサ72bの出力信号Lを磁気センサ72aの出力信号Kで除算する。(3)磁気センサ72bの電圧が0のとき、信号Lを信号M,Kいずれで除算してもよい。このように演算すると、
図17に示すように、この演算結果は、不連続点のない高いリニアリティを持つ演算結果が得られる。
【0058】
なお、磁気センサ72bにN極(S極)が印加されたときに負(正)の電圧を出力するとしてもよい。この場合、磁気センサ72bの電圧が正のときは信号Lを信号Mで除算し、負のときは信号Lを信号Kで除算すれば、右肩上がりの
図17とは逆に右肩さがりの演算結果が得られる。また、磁気センサ72a,72cは、互いに同極性の磁束密度が印加されるときに、逆極性の電圧を出力するよう設定さえすれば、同じ演算により同様の右肩下がり、もしくは右肩上がりの結果が得られる。
【実施例】
【0059】
図21(c)及び
図18(a)乃至(d)は、「方式4」において、
図2のような1つの磁石にN極S極を異極が隣り合うように2対着磁した磁石を用いて、所定の磁石移動距離0.5mmとした場合に、後述する「条件1」を達成することができる最小機構体積での実施例を示す図であり、
図21(c)は、そのときの磁石と磁気センサの配置関係を示しており、
図18(a)乃至(d)は磁石移動距離に対するホール素子の電圧変化と割り算による演算結果の変化及び位置検出誤差の変化を示している。Aを0.50mm、Bを0.50mm、Lを0.55mm、Gを0.75mmとし、「機構体積」は0.33mm
3である。ピッチ(ホール素子間距離/直線上に並ぶ3つのホール素子のうち、端の第1ホール素子ともう一方の端の第3ホール素子との距離)を0.70mmとし、磁石の残留磁束密度を1380mTとし、センサ感度を2.2mV/mTとし、出力ノイズの標準偏差σ=0.09mVとしている。
図18(a)は、磁石移動距離に対する磁気センサの電圧変化を8mmにわたって示した図であり、
図18(b)は所定の磁石移動距離0.5mmに対する除算結果の変化を示している。
図18(c)は、実線が出力ノイズを考慮しない場合、破線は出力ノイズ±3σ=0.27mVを考慮した場合の磁石移動距離に対する位置検出誤差を示す図で、
図18(d)は、
図18(c)の縦軸スケールを±5μmから±0.5μmに変更したものである。
【0060】
なお、
図21(d)は、所定の磁石移動距離0.5mmに対し、条件1を満たす場合の各方式で機構体積などの比較表を示す図であり、方式4はいずれの方式より、機構体積が小さく済むことがわかる。さらに、
図22が示すとおり、所定の磁石移動距離0.1〜5.0mmにおいても、従来の2つの方式、つまり、方式1及び方式2に比べ、本発明における方式4は常に比較的小さな機構体積で同移動距離、同精度を達成することが出来る。なお、方式3は条件1を満たすことができないため
図22には記載していない。
【0061】
さらに、このようにして、除算結果を出力信号とした場合、その信号はホール素子が持つ温度係数に依らず、磁石と各ホール素子との位置関係のみで決まる量であり、温度によって変化する量でないため、位置検出誤差が大きくなることはない。
【0062】
図19は、本発明に係る位置検出装置の一実施例を説明するためのブロック構成図で、図中符号81a,81b,81cはホール素子、82a,82b,82cは差動増幅器、83は比較判定回路、84は除算器を示している。
【0063】
本発明の位置検出装置は、実装基板上に設けられた複数のホール素子と、このホール素子上に空間を介して設けられた多極磁石とを備えたものである。
【0064】
比較判定回路83は、多極磁石又はホール素子を前記実装基板上に沿って移動させたときの複数のホール素子のうちの1つのホール素子からの出力信号の正負を判定して、他のホール素子からの出力信号を出力するものである。
【0065】
除算器84は、比較判定回路83によって判定された正負の出力信号に応じて、1つのホール素子の出力信号を他のホール素子からの出力信号で除算するものである。
【0066】
つまり、複数のホール素子が3個のホール素子81a,81b,81cであって、この3個のホール素子のうち中心位置にある第2のホール素子81bと、この第2のホール素子に対して等間隔に配置された第1及び第3のホール素子81a,81cとを備え、比較判定回路83は、第2のホール素子81bからの出力信号の第2の差分信号の正負を判定して、この第2の差分信号が正ならば、第1のホール素子81aからの出力信号の第1の差分信号を出力し、第2の差分信号が負ならば、第3のホール素子81cからの出力信号の第3の差分信号を出力するものである。なお、第2の差分信号が0ならば、第1の差分信号、もしくは、第2の差分信号、いずれを比較判定回路83から出力しても同じ結果が得られるが、以下では第2の差分信号が0の場合ならば、第1の差分信号を出力するとする。除算器84が、第2の差分信号を第1の差分信号で除算する、もしくは、第2の差分信号を第3の差分信号で除算するものである。なお、
図19では、ホール素子81a、81b、81cのそれぞれの入力端子T2,T4はVDDとGNDに対して並列に接続されているが、これは直列に接続されても良い。
【0067】
さらに具体的に説明すると以下のようになる。
ホール素子を使う場合、ホール素子81a,81b,81cにはそれぞれT1にVDD、T3にGNDが接続されている。第1のホール素子81aの入力端子T1、T3間に入力電圧を印加すると、出力端子T2,T4には、Va1とVa2の出力電圧を得る。これらの電圧が差動増幅器82aに入力されると、その出力電圧VhaはVa1−Va2となる。つまり、ホール素子81aでは、T2の出力Va1とT4の出力Va2の差動増幅を行い、Vha=Va1−Va2が出力されるように接続される。この場合、N極(S極)が印加されると、Vhaは正(負)となるとする。
【0068】
同様に、第2のホール素子81bの入力端子T1、T3間に入力電圧を印加すると、出力端子T2,T4には、Vb1とVb2の出力電圧を得る。これらの電圧が差動増幅器82bに入力されると、その出力電圧VhbはVb1−Vb2となる。つまり、ホール素子81bでは、T2の出力Vb1とT4の出力Vb2の差動増幅を行い、Vhb=Vb1−Vb2が出力されるように接続される。この場合、N極(S極)が印加されると、Vhbは正(負)となるとする。
【0069】
同様に、第3のホール素子81cの入力端子T1、T3間に入力電圧を印加すると、出力端子T2,T4には、Vc1とVc2の出力電圧を得る。これらの電圧が差動増幅器82cに入力されると、その出力電圧VhcはVc2−Vc1となる。つまり、ホール素子81cでは、T2の出力Vc1とT4の出力Vc2の差動増幅を行い、Vhc=Vc2−Vc1が出力されるように接続される。この場合、N極(S極)が印加されると、Vhcは負(正)となるとする。
【0070】
このように、第1,第2,第3のホール素子81a,81b,81cに同極性の磁場が印加されるとき、VhaとVhbが同極性、かつ、VhaとVhcが逆極性となるように駆動電圧方向及び出力電圧方向を設定すればよい。
【0071】
比較判定回路83は、例えば、コンパレータとセレクタから構成され、第2のホール素子からの差動増幅器の出力電圧Vhbが、Vhb≧0ならVhaを出力し、Vhb<0ならVhcを出力するものである。この出力電圧V1(Vha又はVhc)は除算器84によって、Vhb/V1が演算される。つまり、高リニアリティ領域における第2のホール素子81bの出力電圧がVhb≧0の領域とVhb<0の領域に分割されて、それぞれ除算器84によって演算することにより、
図17に示すような出力特性が得られる。
【0072】
このように、除算結果を出力信号とした場合、その信号は磁気センサ及び磁石が持つ温度係数に依らず、磁石と各磁気センサとの位置関係のみで決まる量であり、温度変化による位置検出精度の悪化に影響を与えない。また、機構体積も従来に比べて小さくすることができる。
【0073】
図20は、
図14に示した「方式3」で用いられるブロック構成を本発明に適用させた信号処理部の具体的な回路構成図で、除算過程をPIレギュレータを用いて実現する回路構成図である。マルチプレクサ(MUX;選択回路)91とプレアンプ(演算増幅器)93とクロック信号発生回路(Clock)92とサンプル・ホールド回路(S/H)94とローパスフィルタ(LPF)95とPI(proportion integral;比例・積分)レギュレータ96とから構成されており、PIレギュレータ96は、フィードバック用サンプル・ホールド回路(FB S/H)98と、基準電圧(Vref)発生回路99と抵抗器とコンデンサとオペアンプ97とから構成されている。
【0074】
以下、磁気センサにホール素子を用いた場合の本発明の位置検出方式(方式4)をPIレギュレータを用いて実現する位置検出装置の機能について説明する。
図20のようなPIレギュレータ96を用いた制御回路でも実行的に2出力を除算することができる。
【0075】
MUX91は、ホール素子81a又はホール素子81cの信号成分か、ホール素子81bの信号成分を選択する機能を有する選択回路である。プレアンプ93は、ホール素子81a,81b,81cの出力電圧を増幅する演算増幅器である。サンプル・ホールド回路94は、MUX91からの信号に基づいてクロック信号発生回路92から発生されるクロック信号によりプレアンプ93からの信号をサンプリングする回路である。ローパスフィルタ95はサンプル・ホールド回路94に接続され、位置検出信号−Vref・Bhb/B1を出力する。また、フィードバック用サンプル・ホールド回路98は、プレアンプ93からの信号をPIレギュレータ96に入力する回路である。
【0076】
このPIレギュレータ96は、基準電圧発生回路99と抵抗RとコンデンサCとオペアンプ97からなり、フィードバック用サンプル・ホールド回路98は、オペアンプ97の反転入力端子に抵抗Rを介して接続されている。また、オペアンプ97の非反転入力端子は接地されている。また、オペアンプ97の反転入力端子と出力端子間には、直列接続された抵抗RとコンデンサCが接続されている。
【0077】
このPIレギュレータ96は、フィードバック用サンプル・ホールド回路98によってサンプリングされた信号を基準電圧Vrefの電圧レベルになるようにPI制御するレギュレータである。このPIレギュレータ96は、抵抗RとコンデンサCとによって、決定される時定数によってPI制御を行い、離散的にサンプリングされる信号を発振することなく制御することを可能にしている。クロック信号発生回路92は、サンプル・ホールド回路94及びフィードバック用サンプル・ホールド回路98に取り込む信号を決定するクロック信号を生成する回路である。さらに、PIレギュレータ96は、ホール素子81a,81b,81cのそれぞれに駆動電流を供給するものである。
【0078】
上述した
図20のMUX91に、
図19のV1とVhbを接続すれば、最終出力として、−Vref・Bhb/B1が得られる。B1はホール素子a、cいずれかに印加される磁束密度である。−Vref・Bhb/B1の変化量は、Vhb/V1の変化量と等価である。
【0079】
また、分母が一定となるように、複数の磁気センサの各入力値を制御した上で、分子を位置出力として検出することでも実現できる。また、分母が一定となるように、磁気センサの各出力値に補正ゲインを掛けた上で、分子を位置出力として検出することでも実現できる。そのほか、実行的に2出力の除算結果(比)を用いる方法であれば、方法は問わない。
【0080】
また、磁石は、永久磁石に限らず、同様の磁束密度変化を磁気センサに与えられるものであれば、例えばコイルなどの電磁石であっても良い。また、当然、磁石が移動しても、素子が移動してもよい。また、磁気センサにはホール素子のほか、磁気抵抗素子、ピックアップコイル、磁気インピーダンス素子など、磁束密度に比例して出力電圧が得られるものであれば、あらゆる磁気センサが利用可能である。
【0081】
以下では、「条件1」の定義について述べる。上述した方式1乃至4において、「所定の磁石移動距離0.1mm〜5mmに対し、位置検出誤差の最大値(以下、「精度1」と定義)が0.1%F.S.以下かつ±3σの出力ノイズを考慮した場合の位置検出誤差の最大値(以下、「精度2」と定義)が1%F.S.以下である場合」を条件1と定義する。条件1を満たす最小機構体積と磁石移動距離の関係は、各方式について
図22に示している。
【0082】
図23(a),(b)は、「精度1」「精度2」と「%F.S.」を説明するための図で、
図23(a)は出力ノイズを考慮しない場合、
図23(b)は出力ノイズを考慮する場合を示している。「F.S」はフルスケール(Full Scale)を意味している。
【0083】
「精度1」「精度2」と「%F.S.」の定義は、
図23に示す通りである。検知すべき全領域(Full Scale=F.S.)において得られる信号の端点と端点を結ぶ直線を理想直線と定義し、実信号と理想直線との乖離量を位置検出誤差と定義した場合、その系が持つ位置検出誤差の最大値をその系の「精度1」と定義する。また、信号に±3σのノイズを含む場合、
図23のように得られる信号に±3σノイズ(ここでは±0.27mV)を加えた信号をもとに、精度を算出したものを「精度2」と定義する。なお、信号の演算を含む方式(方式2及び方式4)における「精度2」は、信号に±3σノイズを加えたうえで演算し、その結果をもとに算出されるものとする。「精度1」「精度2」はいずれも位置検出装置にとって、重要な性能指標のひとつである。なお、「%F.S.」とは、位置検出誤差量をF.S.に対する百分率で表したものである。例えば、全磁石移動距離が0.5mmの場合、F.S.=0.5mmであり、0.1[%F.S.]=0.5[μm]である。なお、上述した方式3では、方式1や方式2で得られる程度の高いリニアリティを確保することができず、条件1を達成できる構成が存在しないため、
図22に記載していない。
【0084】
図22より、従来の2つの位置検出方式(方式1及び方式2)に比べ、本発明の位置検出方式(方式4)は、比較的小さな機構体積で同移動距離、同精度を達成することが出来るということがわかる。
【0085】
図24は、本発明に係る位置検出方法の一実施例を説明するためのフローチャートを示す図である。本発明の位置検出方法は、実装基板上に設けられた複数の磁気センサと、この磁気センサ上に空間を介して設けられた磁石とを備えた位置検出装置における位置検出方法である。
【0086】
磁石又は磁気センサを実装基板上に沿って移動させたときの複数の磁気センサのうちの1つの磁気センサからの出力信号の正負を判定して、判定結果に基づいて他の磁気センサからの出力信号を選択的に出力する比較判定ステップと、この比較判定ステップによって判定された正負の出力信号に応じて、1つの磁気センサの出力信号を他の磁気センサからの出力信号で除算する除算ステップとを有している。
【0087】
また、複数の磁気センサが3個のホール素子であって、この3個のホール素子のうち中心位置にある第2のホール素子と、この第2のホール素子に対して等間隔に配置された第1及び第3のホール素子とを備え、比較判定ステップは、第2のホール素子からの出力信号の第2の差分信号の正負を判定して、この第2の差分信号が正(0を含む)ならば、第1のホール素子からの出力信号の第1の差分信号を出力し、この第2の差分信号が負ならば、第3のホール素子からの出力信号の第3の差分信号を出力する。また、除算ステップは、第2の差分信号を第1の差分信号で除算する、もしくは、第2の差分信号を第3の差分信号で除算する。
【0088】
さらに具体的に説明すると、第1のホール素子の出力電圧をVa1、Va2とし、第2のホール素子の出力電圧をVb1、Vb2とし、第3のホール素子の出力電圧をVc1、Vc2とした場合に、第1のホール素子の出力電圧Va1とVa2から第1の差分電圧Vha=Va1−Va2を得る第1の差動増幅ステップと、第2のホール素子の前記出力電圧Vb1とVb2から第2の差分電圧Vhb=Vb1−Vb2を得る第2の差動増幅ステップと、第3のホール素子の前記出力電圧Vc1とVc2から第3の差分電圧Vhc=Vc2−Vc1を得る第3の差動増幅ステップとを有し、比較判定ステップは、第2の差分電圧Vhbの正負を判定して、第2の差分信号が正(0を含む)ならば、第1の差分信号Vhaを出力し、第2の差分信号が負ならば、第3の差分信号Vhcを出力する。除算ステップは、第2の差分電圧Vhbを第1の差分電圧Vhaで除算(Vhb/Vha)する、もしくは、第2の差分電圧Vhbを第3の差分電圧Vhcで除算(Vhb/Vhc)する。
【0089】
このように、除算結果を出力信号とした場合、その信号は磁気センサ及び磁石が持つ温度係数に依らず、磁石と各磁気センサとの位置関係のみで決まる量であり、温度変化による位置検出精度の悪化に影響を与えない。また、機構体積も従来に比べて小さくすることができる。