特許第5715456号(P5715456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715456アルキルスルホニルカルバメートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715456
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】アルキルスルホニルカルバメートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/36 20060101AFI20150416BHJP
   C07C 311/53 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C07C303/36
   C07C311/53
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-57020(P2011-57020)
(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-193132(P2012-193132A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宗明
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 智洋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256130(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/108662(WO,A1)
【文献】 特開平01−224356(JP,A)
【文献】 特開平10−036336(JP,A)
【文献】 特表平10−510273(JP,A)
【文献】 米国特許第03799760(US,A)
【文献】 特表2009−520813(JP,A)
【文献】 溶剤ハンドブック,1985年,第6刷,第507〜512頁
【文献】 JOC,1958年,Vol.23,p.923-926
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/36
C07C 311/53
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるアルキルスルホンアミドと式(2):
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるハロ炭酸アルキルエステルとを、親水性有機溶媒、アルカリ金属炭酸塩及び水を含む反応液中で反応させて、式(3):
【化3】

(式中、Rは式(1)におけるRと同じ基を示し、Rは式(2)におけるRと同じ基を示す。)で表されるアルキルスルホニルカルバメートを生成させる工程を備え
前記反応液中の前記水の量は、前記アルキルスルホンアミド100質量部に対して、10〜400質量部である、
アルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属炭酸塩の一部が、懸濁粒子として前記反応液中に分散している、請求項1に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【請求項3】
前記親水性有機溶媒が、ケトン類及びエーテル類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む、請求項1又は2に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【請求項4】
前記親水性有機溶媒がアセトンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムである、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルスルホニルカルバメートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルスルホニルカルバメートは、種々の医薬、農薬等の中間体として有用である。従来、アルキルスルホニルカルバメートの製造方法として、いくつかの方法が知られている。例えば、乾燥アセトン溶媒中で、アルキルスルホンアミドとクロロ炭酸アルキルエステルとを、炭酸カリウムを用いて反応させ、アルキルスルホニルカルバメートを合成する方法(非特許文献1)を挙げることができる。この方法では、クロロ炭酸アルキルエステルが一般に水と容易に反応して分解してしまうおそれがあることから、反応が禁水条件で行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Organic Chemistry,23(6),923−926(1958)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の方法をはじめとする従来の方法によれば、アルキルスルホニルカルバメートを製造するために、リフラックス条件下において例えば15時間程度の長時間を要する。工業的な製造のためには、反応速度の更なる向上が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、従来の方法と比較してより速い反応速度でアルキルスルホニルカルバメートを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示すとおりの、アルキルスルホニルカルバメートの製造方法に関する。
項1.式(1):
【0007】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるアルキルスルホンアミドと式(2):
【0008】
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるハロ炭酸アルキルエステルとを、親水性有機溶媒、アルカリ金属炭酸塩及び水を含む反応液中で反応させて、式(3):
【0009】
【化3】

(式中、Rは式(1)におけるRと同じ基を示し、Rは式(2)におけるRと同じ基を示す。)で表されるアルキルスルホニルカルバメートを生成させる工程を備える、アルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
項2.アルカリ金属炭酸塩の一部が、懸濁粒子として前記反応液中に分散している、項1に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
項3.親水性有機溶媒がアセトンである、項1又は2に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
項4.アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムである、項1〜3のいずれか一項に記載のアルキルスルホニルカルバメートの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の方法と比較してより速い反応速度でアルキルスルホニルカルバメートを製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態に係る方法は、アルキルスルホンアミドとハロ炭酸アルキルエステルとを、親水性有機溶媒、アルカリ金属炭酸塩及び水を含む反応液中で反応させて、アルキルスルホニルカルバメートを生成させる工程を備える。本実施形態に係る方法は、通常は禁水条件で行われるアルキルスルホンアミドとハロ炭酸アルキルエステルとの反応を、親水性有機溶媒、アルカリ金属炭酸塩及び水を含む反応液中で反応させることが特徴の一つである。
【0013】
本実施形態に係る方法において原料として用いられるアルキルスルホンアミドは、下記式(1)で表される。
【0014】
【化4】
【0015】
式(1)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり得る。
【0016】
式(1)のアルキルスルホンアミドは、例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、プロパンスルホンアミド、iso−プロパンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、iso−ブタンスルホンアミド、sec−ブタンスルホンアミド及びtert−ブタンスルホンアミド等から選ばれる。
【0017】
式(1)のアルキルスルホンアミドを製造する方法は、特に制限されない。例えば、Journal of Medicinal Chemistry,1994,37,240−247に記載の方法等によれば、比較的容易にアルキルスルホンアミドを製造することができる。
【0018】
アルキルスルホンアミドと反応させるハロ炭酸アルキルエステルは、式(2)で表される。
【0019】
【化5】
【0020】
式(2)中、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0021】
Xは、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0022】
は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり得る。これらの中でもエチル基が好適である。
【0023】
式(2)のハロ炭酸アルキルエステルは、例えば、クロロ炭酸メチルエステル、クロロ炭酸エチルエステル、クロロ炭酸プロピルエステル、クロロ炭酸iso−プロピルエステル、クロロ炭酸ブチルエステル、クロロ炭酸iso−ブチルエステル、クロロ炭酸sec−ブチルエステル、クロロ炭酸tert−ブチルエステル、ブロモ炭酸メチルエステル、ブロモ炭酸エチルエステル、ブロモ炭酸プロピルエステル、ブロモ炭酸iso−プロピルエステル、ブロモ炭酸ブチルエステル、ブロモ炭酸iso−ブチルエステル、ブロモ炭酸sec−ブチルエステル及びブロモ炭酸tert−ブチルエステル等から選ばれる。これらの中でも入手が容易であること等から、クロロ炭酸エチルエステルが特に好ましい。
【0024】
ハロ炭酸アルキルエステルの割合は、アルキルスルホンアミド1モルに対して0.8〜2.5モルであることが好ましい。この割合が0.8モル未満であると、反応が完結しにくくなる傾向があり、2.5モルを超えると、副生成物が多く生成され収率が低下する可能性がある。同様の観点から、ハロ炭酸アルキルエステルの割合は、アルキルスルホンアミド1モルに対して1.0〜2.0モルであることがより好ましい。
【0025】
反応溶媒として用いられる親水性有機溶媒は、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、並びに、ジエチルエーテル、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含む。これらの中でもアセトン及びテトラヒドロフランが好ましい。さらに、安価で毒性が低い等の観点からアセトンが好ましい。
【0026】
親水性有機溶媒の割合は、アルキルスルホンアミド100質量部に対して、好ましくは300〜2500質量部である。
【0027】
アルカリ金属炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等から選ばれる少なくとも1種を含む。これらの中でも、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが特に好適である。アルカリ金属炭酸塩は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
アルカリ金属炭酸塩の割合は、アルキルスルホンアミド1モルに対して0.5〜5.0モルであることが好ましい。この割合が0.5モル未満であると収率が低下する傾向があり、5.0モルを超えると、それに見合う効果が得られにくく、経済的に不利になる傾向がある。同様の観点から、アルカリ金属炭酸塩の割合は、アルキルスルホンアミド1モルに対して2.0〜3.0モルであることがより好ましい。
【0029】
反応液中の水の量は、アルキルスルホンアミド100質量部に対して、好ましくは10〜400質量部である。水の量が10質量部未満であると、反応促進の効果が小さくなる傾向があり、400質量部を超えると、ハロ炭酸アルキルエステルの分解が起こりやすくなり、その結果としてアルキルスルホニルカルバメートの収率が低下する可能性がある。同様の観点から、水の量は、アルキルスルホンアミド100質量部に対して、より好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは20〜150質量部である。
【0030】
本実施形態に係る方法の手順は特に制限されないが、例えば、まず反応容器中にアルキルスルホンアミド、親水性有機溶媒及び水を含み、アルキルスルホンアミドの一部又は全部が溶解している反応液を準備し、そこにアルカリ金属炭酸塩を加え、その後、反応液にハロ炭酸アルキルエステルを加える方法が挙げられる。ハロ炭酸アルキルエステルを反応液に加える方法は特に限定されないが、例えば1〜5時間をかけてハロ炭酸アルキルエステルを反応液に滴下することができる。
【0031】
反応液に加えられたアルカリ金属炭酸塩の一部は、反応開始から反応終了までの間、懸濁粒子として反応液中に分散していることが好ましい。親水性有機溶媒へのアルカリ金属炭酸塩の溶解性は一般に低いことから、親水性有機溶媒中では、アルカリ金属炭酸塩の少なくとも一部が未溶解のまま反応液に懸濁することが多い。本実施形態に係る方法の場合、反応液中に水が更に存在していることにより、アルカリ金属炭酸塩の一部が反応液に溶解し易くなり、その結果、大きな反応促進の効果が奏されると考えられる。しかも、理由は詳らかではないが、アルカリ金属炭酸塩の一部が未溶解の状態で当該反応を行うと、水によるハロ炭酸アルキルエステルの分解が起こりにくく、その結果として高い収率が維持され易いと考えられる。
【0032】
アルキルスルホンアミドとハロ炭酸アルキルエステルとを反応させる温度は、特に限定されないが、20〜60℃であることが好ましく、45〜60℃であることがより好ましい。反応時間は、滴下時間及び反応温度等により異なるために一概にはいえない。例えばハロ炭酸アルキルエステルを滴下する場合、反応時間は、滴下終了後、0.5〜3時間であることが好ましい。
【0033】
式(1)のアルキルスルホンアミドと式(2)のハロ炭酸アルキルエステルとの反応により、式(3)で表されるアルキルスルホニルカルバメートが生成する。式(3)中のRは式(1)のRと同じ基、Rは式(2)のRと同じ基である。
【0034】
【化6】
【0035】
生成したアルキルスルホニルカルバメートは、例えば、水洗、抽出、濃縮等の常法の工程を経て単離することができる。
【0036】
式(3)のアルキルスルホニルカルバメートは、例えば、エチル−メタンスルホニルカルバメート、エチル−sec−ブタンスルホニルカルバメート又はエチル−tert−ブタンスルホニルカルバメート等であり得る。本実施形態に係る方法は、これらアルキルスルホニルカルバメートを製造する上で特に好適である。
【実施例】
【0037】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0038】
アルキルスルホニルカルバメートの純度は、以下の条件のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)測定から求めた。
・装置:島津LC10Aシステム
・カラム:YMC−Pack 4.6mmφ×25cm(GL Science社製)
・検出器:RI
・カラム温度:40℃
・注入量:10μl
・移動相:メタノール/水(りん酸0.1wt%添加)=30/70
・移動相流量:1.0ml/min
【0039】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを備え付けた3L容の四つ口フラスコに、sec−ブタンスルホンアミド68.6g(0.5モル)、アセトン1500g、水35g、及び炭酸カリウム207.3g(1.5モル)を仕込んで、sec−ブタンスルホンアミドが溶解し、炭酸カリウムが懸濁している反応液を調製した。50℃に昇温した後、反応液にクロロ炭酸エチルエステル108.5g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、副生した無機塩を除去するために、水800gを添加してから35質量%塩酸水溶液208.3g(2.0モル)を滴下した。その後酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル溶液を濃縮することにより、エチル−sec−ブタンスルホニルカルバメート94.2g(収率90%)を得た。得られたエチル−sec−ブタンスルホニルカルバメートの純度をHPLCにより測定したところ、99.0面積%であった。
【0040】
実施例2
撹拌機、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを備え付けた3L容の四つ口フラスコに、tert−ブタンスルホンアミド68.6g(0.5モル)、アセトン1500g、水35g、及び炭酸カリウム207.3g(1.5モル)を仕込んで、tert−ブタンスルホンアミドが溶解し、炭酸カリウムが懸濁している反応液を調製した。50℃に昇温した後、反応液にクロロ炭酸エチルエステル108.5g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、副生した無機塩を除去するために、水800gを添加してから35質量%塩酸水溶液208.3g(2.0モル)を滴下した。その後酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル溶液を濃縮することにより、エチル−tert−ブタンスルホニルカルバメート94.2g(収率90%)を得た。得られたエチル−tert−ブタンスルホニルカルバメートの純度をHPLCにより測定したところ、99.1面積%であった。
【0041】
実施例3
撹拌機、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを備え付けた3L容の四つ口フラスコに、iso−プロパンスルホンアミド61.6g(0.5モル)、アセトン1500g、水35g、及び炭酸カリウム207.3g(1.5モル)を仕込んで、iso−プロパンスルホンアミドが溶解し、炭酸カリウムが懸濁している反応液を調製した。50℃に昇温した後、反応液にクロロ炭酸エチルエステル108.5g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、副生した無機塩を除去するために、水800gを添加してから35質量%塩酸水溶液208.3g(2.0モル)を滴下した。その後酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル溶液を濃縮することにより、エチル−iso−プロパンスルホニルカルバメート88.8g(収率91%)を得た。得られたエチル−iso−プロパンスルホニルカルバメートの純度をHPLCにより測定したところ、99.1面積%であった。
【0042】
実施例4
撹拌機、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを備え付けた3L容の四つ口フラスコに、tert−ブタンスルホンアミド68.6g(0.5モル)、アセトン1500g、水35g、及び炭酸カリウム207.3g(1.5モル)を仕込んで、tert−ブタンスルホンアミドが溶解し、炭酸カリウムが懸濁している反応液を調製した。50℃に昇温した後、反応液にクロロ炭酸メチルエステル94.5g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、副生した無機塩を除去するために、水800gを添加してから35質量%塩酸水溶液208.3g(2.0モル)を滴下した。その後酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル溶液を濃縮することにより、メチル−tert−ブタンスルホニルカルバメート87.9g(収率90%)を得た。得られたメチル−tert−ブタンスルホニルカルバメートの純度をHPLCにより測定したところ、99.1面積%であった。
【0043】
比較例1
撹拌機、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを備え付けた3L容の四つ口フラスコに、sec−ブタンスルホンアミド68.6g(0.5モル)、アセトン1500g、及び炭酸カリウム207.3g(1.5モル)を仕込んで、sec−ブタンスルホンアミドが溶解し、炭酸カリウムが懸濁している反応液を調製した。50℃に昇温した後、反応液にクロロ炭酸エチルエステル108.5g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間攪拌し、反応液の一部を分取して、無機塩の除去等の前処理をした後にHPLCにて分析したところ、エチル−tert−ブタンスルホニルカルバメートは29.5面積%であり、原料のtert−ブタンスルホンアミドは70.5面積%であった。引き続き、13時間攪拌し、反応終了後、溶媒を留去し、副生した無機塩を除去するために、水800gを添加してから35質量%塩酸水溶液208.3g(2.0モル)を滴下した。その後酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル溶液を濃縮することにより、エチル−sec−ブタンスルホニルカルバメート93.1g(収率89%)を得た。得られたエチル−sec−ブタンスルホニルカルバメートの純度をHPLCにより測定したところ、99.0面積%であった。
【0044】
以上の実験結果から示されるように、親水性有機溶媒(アセトン)及び水を含む反応液を用いた実施例によれば、2時間の反応によって高い収率でアルキルスルホニルカルバメートを生成させることができた。一方、水を含まない反応液を用いた比較例では、2時間の反応では原料が多く残存し、反応が十分に進行していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る方法によれば、例えば、抗ガン剤、抗肥満剤及び高脂血症剤等の医薬中間体、並びに、種々の農薬の合成用中間体として有用なアルキルスルホニルカルバメートを、十分に高い反応速度で製造することができる。