(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の入力端子と、第2の入力端子と、前記第1の入力端子と極性が同じである第1の出力端子と、前記第1の入力端子と極性が逆である第2の出力端子と、を備える全差動型の演算増幅器と、
一端に入力信号が入力され、他端に前記第1の入力端子が接続される第1の入力インピーダンス素子と、
一端に基準電圧が入力され、他端に前記第2の入力端子が接続される第2の入力インピーダンス素子と、
前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続される第1の負帰還インピーダンス素子と、
前記第1の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される第2の負帰還インピーダ
ンス素子と、
前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される正帰還インピーダンス素子と、
を含み、
前記第2の負帰還インピーダンス素子は、第3の負帰還インピーダンス素子と第4の負帰還インピーダンス素子とを含み、
前記第1の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第3の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、
前記正帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第4の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、
前記正帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第1の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、
前記第1の入力インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第2の入力インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しいことを特徴とするシングル差動変換回路。
第1の入力端子と、第2の入力端子と、前記第1の入力端子と極性が同じである第1の出力端子と、前記第1の入力端子と極性が逆である第2出力端子と、を備える全差動型の演算増幅器と、
一端に入力信号が入力され、他端に前記第1の入力端子が接続される第1の入力インピーダンス素子と、
一端に基準電圧が入力され、他端に前記第2の入力端子が接続される第2の入力インピーダンス素子と、
前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続される第1の負帰還インピーダンス素子と、
前記第1の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される第2の負帰還インピーダンス素子と、
前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される正帰還インピーダンス素子と、
を含み、
前記第1の負帰還インピーダンス素子と前記正帰還インピーダンス素子とを並列に接続した結果得られるインピーダンス値は、前記第2の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と等しく、
前記正帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第1の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、
前記第1の入力インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第2の入力インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しいことを特徴とするシングル差動変換回路。
【背景技術】
【0002】
シングルエンドで入力された信号を増幅し、互いに位相の極性が逆である2つの信号に変換して出力する回路がある。このような回路を、本明細書では、シングル差動変換回路と記す。
図4は、従来の一般的なシングル差動変換回路を説明するための図である。
図4に示したシングル差動変換回路は、全差動型の演算増幅器104、演算増幅器104の反転入力端子104a、非反転入力端子104cに接続された2つの入力インピーダンス素子101a、101b、反転入力端子104aと非反転出力端子104bとの間と、非反転入力端子104cと反転出力端子104dとの間とに接続された2つの負帰還インピーダンス素子102a、102bを備えている。入力インピーダンス素子101a、101bのインピーダンスはいずれもZ1、負帰還インピーダンス素子102a、102bのインピーダンスはいずれもZ2である。
【0003】
また、図中のVipはシングル差動変換回路に入力される信号の電圧を示し、Von、Vopはシングル差動変換回路から出力される信号の電圧を示している。Vsp、Vsnは演算増幅器104の入力電圧である。以上の物理量を示す記号の添え字である「p」、「n」は、電圧の位相を表していて、「p」の添え字で表される電圧と「n」の添え字で表される電圧とは、互いに交流電圧の直流成分となる電圧値を基準として振幅が反転している電圧であって、換言すれば位相が互いに180度相違している。
【0004】
本明細書では、互いに位相が180度相違する2つの信号の関係を「逆相」あるいは「位相の極性が逆」と記し、位相が一致している2つの信号の関係を「同相」あるいは「位相の極性が同じ」と記す。また、同相と逆相との関係を、「位相が反転した」とも記す。さらに、一の信号の入出力に割り当てられた一の端子と、この端子に割り当てられた信号と逆相の信号に割り当てられた端子との関係を、「極性が逆である」というものとする。また、一の信号の入出力に割り当てられた一の端子と、この端子に割り当てられた信号と同相の信号に割り当てられた端子との関係を、「極性が同じである」というものとする。
【0005】
図4に示した一般的なシングル差動変換回路では、電圧Vipの変動に応じて入力電圧Vsp(≒Vsn)が変動することが知られている。このため、従来技術では、Vsp、Vsnの変動を考慮してシングル差動変換回路を設計することが必要であり、この点により、特に低電圧のシングル差動変換回路の設計条件が制限されるという不具合を生じていた。
上記した不具合を解消することを目的とした従来技術としては、例えば、
図5に示す回路が開示されている特許文献1が挙げられる。特許文献1には、図中に示した外部から入力される信号の電圧Vin、抵抗値R1、R2、R3、R4の間に、以下の式によって表される関係があることが記載されている。そして、式中に示した同相電圧VCM=(Vsp+Vsn)/2を小さくするようにR1〜R4を設定することにより、電圧Vinによらず同相電圧VCMを小さくすることができるとしている。
VCM/Vin
=R3/[R1+R2(R1+R3)/(R2+R4)]・R2/(R2+R4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した式のVCM/Vinは、抵抗値R3または抵抗値R2を0にすることによって0にすることができる。しかしながら、抵抗値R3を0または抵抗値R2を0にすれば、
図5に示した回路はシングル差動変換回路として機能しない。また、同相電圧VCMを小さく抑えるために抵抗値R3または抵抗値R2を小さくすると、抵抗値R3と抵抗値R1との比と、抵抗値R4と抵抗値R2との比とがアンバランスになり、安定的な回路動作を乱す原因となるため、抵抗値R3や抵抗値R2は十分に小さな値とはできず、結果として同相電圧VCMを十分小さく抑えることができなかった。つまり、上記した従来技術では、同相電圧VCMを抑制することはできるものの、十分に小さく抑えることはできず、電圧Vinの変動による演算増幅器404の入力電圧の変動を増幅器としての機能を維持したまま十分に低減することはできなかった。すなわち、従来技術では、増幅器としての機能を維持したまま、同相電圧VCMを十分に低減することができなかった。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、増幅器としての機能を維持したまま、外部から入力される電圧の変動による演算増幅器の入力電圧の変動を十分に低減することができるシングル差動変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様のシングル差動変換回路は、第1の入力端子(例えば
図1に示した反転入力端子104a)と、第2の入力端子(例えば
図1に示した非反転入力端子104c)と、前記第1の入力端子と極性が同じである第1の出力端子(例えば
図1に示した反転出力端子104d)と、前記第1の入力端子と極性が逆である第2の出力端子(例えば
図1に示した非反転出力端子104b)と、を備える全差動型の演算増幅器(例えば
図1に示した演算増幅器104)と、一端に入力信号が入力され、他端に前記第1の入力端子が接続される第1の入力インピーダンス素子(例えば
図1に示した入力インピーダンス素子101a)と、一端に基準電圧が入力され、他端に前記第2の入力端子が接続される第2の入力インピーダンス素子(例えば
図1に示した入力インピーダンス素子101b)と、前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続される第1の負帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した負帰還インピーダンス素子102b)と、前記第1の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される第2の負帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した負帰還インピーダンス素子100)と、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される正帰還インピーダンス
素子(例えば
図1に示した正帰還インピーダンス素子103a)と、を含み、前記第2の負帰還インピーダンス素子は、第3の負帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した負帰還インピーダンス素子103b)と第4の負帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した負帰還インピーダンス素子102a)とを含み、前記第1の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第3の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、前記正帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第4の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等し
く、前記正帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第1の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、前記第1の入力インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第2の入力インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しいことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様のシングル差動変換回路は、第1の入力端子(例えば
図1に示した反転入力端子104a)と、第2の入力端子(例えば
図1に示した非反転入力端子104c)と、前記第1の入力端子と極性が同じである第1の出力端子(例えば
図1に示した反転出力端子104d)と、前記第1の入力端子と極性が逆である第2出力端子(例えば
図1に示した非反転出力端子104b)と、を備える全差動型の演算増幅器(例えば
図1に示した演算増幅器104)と、一端に入力信号が入力され、他端に前記第1の入力端子が接続される第1の入力インピーダンス素子(例えば
図1に示した入力インピーダンス素子101a)と、一端に基準電圧が入力され、他端に前記第2の入力端子が接続される第2の入力インピーダンス素子(例えば
図1に示した入力インピーダンス素子101b)と、前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続される第1の負帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した負帰還インピーダンス素子102b)と、前記第1の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される第2の負帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した負帰還インピーダンス素子100)と、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続される正帰還インピーダンス素子(例えば
図1に示した入力インピーダンス素子103a)と、を含み、前記第1の負帰還インピーダンス素子と前記正帰還インピーダンス素子とを並列に接続した結果得られるインピーダンス値は、前記第2の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と等し
く、前記正帰還インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第1の負帰還インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しく、前記第1の入力インピーダンス素子のインピーダンス値と前記第2の入力インピーダンス素子のインピーダンス値とが等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明の態様のシングル差動変換回路によれば、外部からシングル差動変換回路に入力される電圧が変動しても、電圧の変動に伴う演算増幅器の入力電圧の変動を増幅器としての機能を維持したまま十分に低減することができる。このような本発明によれば、外部から入力される電圧の変動による演算増幅器の入力電圧の変動を増幅器としての機能を維持したまま十分に低減することができるシングル差動変換回路を提供することができる。
また、このようなシングル差動変換回路によれば、演算増幅器は変動しない所定の入力電圧を基準にして動作すればよいことになる。このため、演算増幅器として、コモンモードインプットレンジが狭い増幅器を使用することが可能となって、シングル差動変換回路の設計の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明に係る一実施形態を説明する。
(回路構成)
図1は、本実施形態のシングル差動変換回路を説明するための図である。
図1に示したシングル差動変換回路は、演算増幅器104と、2つの入力インピーダンス素子101a、101b、負帰還インピーダンス素子100、102b、正帰還インピーダンス素子103a、コモンモードフィードバック回路(図中にCMFBと記す)105を含む。負帰還インピーダンス素子100は、負帰還インピーダンス素子102a、103bを含んでいる。コモンモードフィードバック回路105は、演算増幅器104から出力されるコモンモード電圧を検出し、フィードバックする回路である。コモンモードフィードバック回路105により、出力コモンモード電圧を一定の値に維持できる。
【0020】
演算増幅器104は、全差動型の演算増幅器であって、反転入力端子104a、反転入力端子104aと極性が逆である非反転入力端子104c、非反転出力端子104b、非反転出力端子104bと極性が逆である反転出力端子104dを備えている。反転入力端子104aは、入力インピーダンス素子101aを介して信号入力端子106に接続される。また、信号入力端子106には外部から電圧Vipの信号が入力される。
反転入力端子104aと非反転出力端子104bとの間には負帰還インピーダンス素子102aが接続される。非反転出力端子104bは、信号出力端子108に接続される。このとき、信号出力端子108から出力される電圧をVonとする。
非反転入力端子104cは、入力インピーダンス素子101bを介して信号入力端子107に接続される。信号入力端子107にはアナロググランドが印加されている。
【0021】
非反転入力端子104cと反転出力端子104dとの間には負帰還インピーダンス素子102bが接続される。反転出力端子104dは、信号出力端子109に接続される。このとき、信号出力端子109から出力される電圧をVopとする。
さらに、本実施形態では、反転入力端子104aと非反転出力端子104bとの間に負帰還インピーダンス素子103bが、非反転入力端子104cと非反転入力端子104cと極性が同じである非反転出力端子104bとの間に正帰還インピーダンス素子103aが接続されている。
【0022】
以上述べたインピーダンス素子のうち、本実施形態では、入力インピーダンス素子101a、101bのインピーダンス値をZ1、負帰還インピーダンス素子102a、102bのインピーダンス置をZ2、正帰還インピーダンス素子103a、負帰還インピーダンス素子103bのインピーダンス値をZ3とする。
なお、入力インピーダンス素子101aのインピーダンス値と入力インピーダンス素子101bのインピーダンス値との比、負帰還インピーダンス素子102aのインピーダンス値と負帰還インピーダンス素子102bのインピーダンス値との比、正帰還インピーダンス素子103aのインピーダンス値と負帰還インピーダンス素子103bのインピーダンス値との比が、それぞれ等しければ、入力インピーダンス素子101a、101bのインピーダンス値が同じであり、負帰還インピーダンス素子102a、102bのインピーダンス値が同じであり、正帰還インピーダンス素子103a、負帰還インピーダンス素子103bのインピーダンス値が同じである場合と同様の効果を奏する。
【0023】
演算増幅器104の反転入力端子104a、非反転入力端子104cは、互いに極性が逆であり、入力信号と基準電圧を示す信号とがそれぞれ入力される。また、信号出力端子108、109は、位相の極性が互いに逆である信号が出力される。図中の「n」、「p」の添え字は、信号の位相の極性を示すものであり、「n」の添え字で示した信号と、「p」の添え字で示した信号とは互いに極性が逆の関係になっている。「n」の添え字で示した信号同士、「p」の添え字で示した信号同士は、互いに極性が同じ関係になっている。
【0024】
このような構成のシングル差動変換回路によれば、2つの入力端子のうちの一の入力端子と、2つの出力端子のうち、当該一の入力端子と極性が同じである出力端子との間に接続される正帰還インピーダンス素子103a、負帰還インピーダンス素子103bを設けたため、反転入力端子104a、非反転入力端子104cに接続されるノードに等しいインピーダンス値によって帰還をかけることができる。このため、電圧Vipが変動しても、正帰還インピーダンス素子103a、負帰還インピーダンス素子103bが変動に応じた帰還をかけて演算増幅器の入力電圧Vsn、Vspの変動を抑えることができる。
【0025】
図2は、
図1に示した演算増幅器104の内部を説明するための回路図である。図中の入力端子104a、104cと出力端子104b、104dは
図1の同名端子に相当する。
また、図示したように、演算増幅器104には正電源電圧VDD、負電源電圧VSS、演算増幅器104を流れる電流を決定するためのVbiasp、Vbiasnが印加されている。
【0026】
(動作)
次に、以上説明した本実施形態のシングル差動変換回路の動作を、式を使って説明する。
(1)従来のシングル差動変換回路の動作
ここでは、本実施形態のシングル差動変換回路の動作と比較するため、先ず、
図4に示した従来のシングル差動変換回路の動作について式を使って説明する。なお、以下の式中のVip、Von、Vin、Vop、Vsn、Vsp、Z1、Z2、Z3は、全て
図4中に示した、あるいは
図4の説明において記した物理量である。
【0027】
図4に示した従来のシングル差動変換回路において、キルヒホッフの法則にしたがって
図4中のVspが印加されるノードに流れ込む電流の総和が0となる条件は、以下の式によって表される。
(Vip−Vsp)/Z1+(Von−Vsp)/Z2=0
上記の式を変形することにより、式(1)を得る。
(1/Z1+1/Z2)Vsp=Vip/Z1+Von/Z2 …式(1)
【0028】
図4中のVsnが印加されるノードに流れ込む電流についても同様に、以下の式(2)が得られる。
0−Vsn/Z1+(Vop−Vsn)/Z2=0
(1/Z1+1/Z2)Vsn=Vop/Z2 …式(2)
【0029】
差動出力電圧Vop−Vonを求めるために、式(1)と式(2)の両辺をそれぞれ引き算すると、
(1/Z1+1/Z2)(Vsp−Vsn)
=Vip/Z1+(Von−Vop)/Z2
を得る。
演算増幅器104の利得が充分高ければ、Vsp=Vsnとみなすことができるので、式(3)を得る。
Vop−Von=(Z2/Z1)Vip …式(3)
【0030】
一方、演算増幅器104の入力電圧Vsp、Vsnを求めるためには、式(1)と式(2)の両辺をそれぞれ足し合わせて、以下の式を得る。
(1/Z1+1/Z2)(Vsp+Vsn)
=Vip/Z1+(Von+Vop)/Z2
上記の式を変形すると、式(4)が得られる。
1/2/(Vsp+Vsn)
=Vip/Z1/2/(1/Z1+1/Z2)+(Vop+Von)/Z2/2/(1/Z1+1/Z2)
=Z2Vip/2/(Z1+Z2)+Z1(Vop+Von)/2/(Z1+Z2)…式(4)
【0031】
ここで、(Vop+Von)/2は、
図4に示したシングル差動変換回路の出力コモン電圧を表している。
図4に示したシングル差動変換回路は、コモン電圧を、コモンモードフィードバック回路105を用いてアナロググラウンド(=0)になるように制御されている。なお、
図4に示したシングル差動変換回路では、インピーダンス値Z1、Z2の関係だけで差動出力電圧(Vop−Von)が決まるが、Vop、Vonが一意に決まらない。コモンフィードバック回路105は、Vop、Vonのコモン電圧を決定するための回路である。
【0032】
演算増幅器104の利得が充分高ければ、Vsp=Vsnとみなすことができ、式(4)の左辺はVsp(=Vsn)と考えられる。このため、式(4)から、以下の式(5)を得ることができる。
Vsp=Vsn=Z2・Vip/2/(Z1+Z2) …式(5)
式(5)から、従来のシングル差動変換回路では、演算増幅器104の入力電圧Vsp(=Vsn)が、外部から入力される信号の電圧Vipに依存して変化することが分かる。
【0033】
(2)本実施形態のシングル差動変換回路の動作
次に、
図1に示した本実施形態のシングル差動変換回路の動作を説明する。
図1に示したシングル差動変換回路において、Vspの信号が入力されるノードに流れ込む電流の総和が0になる条件は、キルヒホッフの法則にしたがって、以下の式によって表される。
(Vip−Vsp)/Z1+(Von−Vsp)/Z2+(Von−Vsp)/Z3=0
この式を変形すると、式(6)を得る。
Vsp(1/Z1+1/Z2+1/Z3)=Vip/Z1+Von/Z2+Von/Z3
…式(6)
Vsnが入力されるノードについても同様に、式(7)が得られる。
(0−Vsn)/Z1+(Vop−Vsn)/Z2+(Von−Vsn)/Z3=0
Vsn(1/Z1+1/Z2+1/Z3)=Vop/Z2+Von/Z3
…式(7)
【0034】
差動出力電圧Vop−Vonを求めるために、式(6)と式(7)との両辺をそれぞれ減算すると、以下の式が得られる。
(1/Z1+1/Z2+1/Z3)(Vsp−Vsn)=Vip/Z1+(Von−Vop)/Z2
上記した式では、演算増幅器104の利得が充分高ければ、Vsn=Vspとみなすことができる。このとき、式(8)が得られる。
Vop−Von=Z2・Vip/Z1 …式(8)
式(8)は従来回路における式(3)と同じであるから、本実施形態は従来回路と同じ利得を持つことがわかる。
式(8)において、Vop=−Vonであるから、以下の式(9)が得られる。
Vop=−Von=Z2・Vip/2/Z1 …式(9)
【0035】
一方、演算増幅器104の入力電圧Vsp、Vsnを求めるためには、式(6)と式(7)の両辺をそれぞれ加算する。加算の結果、式(10)が得られる。
(1/Z1+1/Z2+1/Z3)(Vsp+Vsn)
=(Vip/Z1)+(Von+Vop)/Z2+2Von/Z3 …式(10)
(Vop+Von)/2=0であるから、式(9)、(10)により、以下の式(11)が得られる。
(1/Z1+1/Z2+1/Z3)(Vsp+Vsn)
=Vip/Z1−Z2・Vip/Z1/Z3=(1/Z1−Z2/Z1/Z3)]Vip
…式(11)
【0036】
式(11)において、Vsp、Vsnは、演算増幅器104の利得が充分高ければ、Vsp=Vsnとみなすことができる。このとき、式(11)から、式(12)を得ることができる。
Vsp=Vsn=[(1/Z1−Z2/Z1/Z3)Vip/2]/(1/Z1+1/Z2+1/Z3)
…式(12)
式(12)において、インピーダンス値Z3、Z2を等しいとすれば、
Vsp=Vsn=0 …式(13)
が成立する。
【0037】
つまり、本実施形態では、
図1に示したインピーダンス素子102a、102bのインピーダンス値Z2と、インピーダンス素子103aのインピーダンス値Z3を等しい値とすることにより、入力電圧Vsp、Vsnを、外部から入力される電圧Vipに依存しないようにすることが可能になる。そして、入力電圧Vsp、Vsnが外部から入力される電圧Vipに依存しない実施形態では、入力電圧Vsp、Vsnの電圧Vipによる変動を増幅器としての機能を維持したまま完全になくすことができる。
また、式(12)において、インピーダンス値Z3、Z2を近い値とすれば、
Vsp=Vsn≒0 …式(14)
が成立する。
【0038】
つまり、本実施形態では、
図1に示したインピーダンス素子102a、102bのインピーダンス値Z2と、インピーダンス素子103aのインピーダンス値Z3が近い値であるとき、入力電圧Vsp、Vsnの電圧Vipによる変動を増幅器としての機能を維持したまま十分に低減することができる。
なお、本実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。すなわち、本実施形態では、負帰還インピーダンス素子100を、負帰還インピーダンス素子102a、103bの2つの素子によって構成している。しかし、
図1に示したように、負帰還インピーダンス素子100は、負帰還インピーダンス素子102a、103bを並列に接続した場合に得られるインピーダンス値を持った1つの素子として構成することができる。ただし、負帰還インピーダンス素子100のインピーダンス値Z4は、式(15)となる。
Z4=Z2・Z3/(Z2+Z3) ・・・式(15)