(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の技術では、インクの吐出量をドットごとに制御しなければならないので、制御や構造が複雑になり、精細なメンテナンスが必要になるという難点があった。
【0009】
特許文献3及び4に記載の技術では、最外周の暗ドットの数を半数からゼロに少なくすることにより、インクの滲みを防止できるとしている。しかしながら、この技術では、最外周の暗ドットの数が半数からゼロになることにより、特に1セルあたりのドットの数が少ない場合、暗セルの反射率が高くなってしまうことがあった。その結果、暗セルのコントラストが低下して、暗セルを明セルと誤認識する可能性があり、情報の読み取り精度の低下を引き起こすおそれがあった。
【0010】
本発明者は、上記した従来の問題を解決するための研究を行っている過程で、読み取り精度を低下させる最も大きな原因を見出し、その原因を解決することによって上記した従来の問題を解消した。
図10(A)は理想形状の二次元シンボルの拡大図であり、
図10(B)はインクジェット方式で実際に印刷した二次元シンボルの拡大図である。二次元シンボルは、明セル10と、暗セル20とで構成されており、接点30,30’は、矩形の暗セル20同士が対角線方向で接する点を示している。
図10(B)に示すように、少なくとも連続する二辺で暗セル20に隣接する明セル10において、矩形の暗セル20同士が対角線方向で接する接点30’では、暗セル20のインク同士が馴染んで滲み、明セル10の頂部に広がって明セル10の領域A’の面積が小さくなっていた。すなわち、二次元シンボルで読み取り精度を低下させる主な原因がこうした現象であることを見出し、この現象が二次元シンボル情報の読み取り精度の低下を引き起こすおそれがあることを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者が見出した従来の問題の主原因を解決するためになされたものであって、その目的は、複雑な処理を行うことなく、且つ読み取り精度の高い二次元シンボル及びその印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明にかかる二次元シンボルは、複数のドットからなる矩形
且つ複数の明セルと
矩形且つ複数の暗セルとが縦横に配列されて構成され、
複数の前記暗セルのうち、前記明セルの少なくとも連続する二辺に隣接する暗セルは、対角線方向で接する該暗セルの頂部の1又は2以上のドット
のみが明ドットで形成され、
該暗セルの前記頂部の1又は2以上の明ドットに形成されたドット以外の該暗セルのドットが暗ドットで形成され、複数の前記暗セルのうち、前記明セルの少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル以外の暗セルは、該暗セルを構成するすべてのドットが暗セルであることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、明セルの少なくとも連続する二辺に隣接する暗セルは、対角線方向で接する該暗セルの頂部の1又は2以上のドットが明ドットで形成されているので、その暗セル同士が接する接点でインク同士が馴染んで滲むことがない。その結果、インクが明セルの頂部に広がって明セルの面積を小さくするという従来の現象を生じさせないので、二次元シンボル情報の読み取り精度の低下を引き起こすのを防ぐことができる。こうした本発明によれば、従来技術のような複雑な処理や装置を適用する必要がなく、しかも、読み取り精度の高い二次元シンボルを提供できる。
【0016】
本発明に係る二次元シンボルにおいて、前記暗セルの頂部の1又は2以上の明ドットは、正方形又は長方形の前記暗セルの四辺に内接する円又は楕円を描いた場合に、該円又は楕円が横切るドットのうち、該ドットの該円又は楕円の外側の面積が該ドットの面積の半分以上になるドット及び該ドットの外側にあるドット、又は、長方形の前記暗セルの三辺に内接する2つの円を描いた場合に、該円と該暗セルの連続する二辺に囲まれた領域内で、該円が横切るドットのうち、該ドットの該円の外側の面積が該ドットの面積の半分以上になるドット及び該ドットの外側にあるドットである。
【0017】
この発明によれば、暗セルの頂部の1又は2以上の明ドットは、正方形又は長方形の暗セルの四辺に内接する円又は楕円を描いた場合に、その円又は楕円が横切るドットのうち、そのドットの円又は楕円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドット及びそのドットの外側にあるドット、又は、長方形の暗セルの三辺に内接する2つの円を描いた場合に、その円と暗セルの連続する二辺に囲まれた領域内で、その円が横切るドットのうち、そのドットの円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドット及びそのドットの外側にあるドットであるので、例えば、多数のドットで暗セルが形成される場合に、暗セル同士が対角線方向で接する接点でインク同士が馴染んで滲むことがない。
【0018】
本発明に係る二次元シンボルにおいて、記暗セルのうち、1行又は1列毎の暗セルが暗ドットのみで形成されている、又は、前記全ての暗セルは、4つの頂部のうち一辺の両側の2つの頂部の1又は2以上のドットが明ドットで形成され、該明ドット以外が暗ドットで形成されているように構成する。
【0019】
この発明によれば、暗セルのうち1行又は1列毎の暗セルは暗ドットのみで形成されている、又は、全ての暗セルは、4つの頂部のうち一辺の両側の2つの頂部の1又は2以上のドットが明ドットで形成され、その明ドット以外が暗ドットで形成されているので、対角線方向で隣接する暗セルの頂部のドットのいずれか一方のみが明ドットで形成される。そのため、暗セル同士の頂部の暗ドットが対角線方向に接しないので、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。また、暗セルの反射率が高くなるのを抑制できるので、暗セルのコントラストの低下を抑えることができる。その結果、情報の読み取り精度の高い二次元シンボルを提供できる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る二次元シンボルの印刷方法は、複数のドットからなる矩形
且つ複数の明セルと
矩形且つ複数の暗セルとが縦横に配列された二次元シンボルの印刷方法であって、
複数の前記暗セルのうち、前記明セルの少なくとも連続する二辺に隣接する暗セルを、対角線方向で接する該暗セルの頂部の1又は2以上のドット
のみが明ドットとな
り、該暗セルの前記頂部の1又は2以上の明ドットに形成されたドット以外の該暗セルのドットが暗ドットとなり、複数の前記暗セルのうち、前記明セルの少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル以外の暗セルは、該暗セルを構成するすべてのドットが暗セルとなるように印刷することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る二次元シンボルの印刷方法において、前記暗セルの頂部の1又は2以上の明ドットは、正方形又は長方形の前記暗セルの四辺に内接する円又は楕円を描いた場合に、該円又は楕円が横切るドットのうち、該ドットの該円又は楕円の外側の面積が該ドットの面積の半分以上になるドット及び該ドットの外側にあるドット、又は、長方形の前記暗セルの三辺に内接する2つの円を描いた場合に、該円と該暗セルの連続する二辺に囲まれた領域内で、該円が横切るドットのうち、該ドットの該円の外側の面積が該ドットの面積の半分以上になるドット及び該ドットの外側にあるドットである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る二次元シンボル及びその印刷方法によれば、暗セル同士が対角線方向で接する接点でインク同士が馴染んで滲むことがないので、インクが明セルの頂部に広がって明セルの面積を小さくするという従来の現象を生じさせない。その結果、二次元シンボル情報の読み取り精度の低下を引き起こすのを防ぐことができると共に、従来技術のような複雑な処理や装置を適用する必要がなく、しかも、読み取り精度の高い二次元シンボルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る二次元シンボル及びその印刷方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[二次元シンボル]
(基本構成)
本発明に係る二次元シンボル1(1A,1B)は、2進コードで表される情報を記録でき、記録された情報を光学的に読み取ることができるものであり、例えば
図1〜
図7に示すように、複数の明ドット100で形成される矩形の明セル10と、複数の暗ドット200で形成される矩形の暗セル20とが縦横に配列されて構成される。さらに、明セル10の少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル20は、対角線方向に接するその暗セル20の頂部の1又は2以上のドットが明ドット100で形成される点に特徴がある。
【0027】
明セル10は、複数の未着色の明ドット100が縦横に配列されて形成される。明セル10の形状は矩形であり、そのサイズは、行×列がnドット×mドット(n,mは3以上の整数)である。なお、本明細書中で「矩形」とは正方形及び長方形を意味する。
【0028】
暗セル20は、複数の着色された暗ドット200が縦横に配列されて形成される。暗ドット200は、着色されたドットであり、着色されていない部分が結果として明ドット100となる。そのため、暗セル20が形成されていない部分が明セル10となる。なお、暗セル20の形状及びサイズは、明セル10と同様である。また、
図1〜
図7では、理解を容易にするために暗セル20を灰色で表しているが、通常は、
図8に示すように、暗セル20は黒色で表される。
【0029】
二次元シンボル1の種類は、スタック式とマトリックス式とがあり、このうちスタック式としては
図8(A)の「PDF417」等があり、マトリックス式としては
図8(B)に示すように、二次元シンボル1の3つの角に四角形の切り出しシンボルを有する「QRコード」(デンソーウェーブ社の登録商標)や、
図8(C)に示すように、二次元シンボル1の連続する二辺にL字形の線の切り出しシンボルを有する「DataMatrix」等がある。切り出しシンボルとは、二次元シンボル1の方向性を表すものである。本発明は、このような形式に限定されず、どのような二次元シンボル1にも適用できる。
【0030】
図9の二次元シンボル1は、4つのセルが縦横に配列されて構成されたものであり、その4つのセルの頂部(「角部」のことである。)が接する接点30を中心に、右上(第1象限)のセルから右下(第4象限)のセルまで、明セル10、暗セル20,明セル10及び暗セル20の順に配列されて構成されたものである。暗セル20は、左上の頂部C1から、右回りにC2,C3及びC4の4つの頂部がある。また、明セル10も同様に、左上の頂部から右回りにC’1,C’2,C’3及びC’4の4つの頂部がある。
【0031】
図9において、明セル10の少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル20とは、暗セル20のように、例えば右上の明セル10の頂部C’1とC’4を結ぶ一辺と、頂部C’4とC’3を結ぶ一辺とからなる連続する二辺に隣接している2つの暗セル20である。また、暗セル20が対角線方向に接するとは、暗セル20のように、暗セル20の対角線の方向で暗セル20同士が互いに接することであり、さらに詳しくは、左上の暗セル20の頂部C3と、右下の暗セル20の頂部C1とが接点30で暗セル20の対角線の方向で互いに接することである。
【0032】
二次元シンボル1は、一部の暗セル20の頂部の1又は2以上のドットが明ドット100で形成される第1実施形態(
図1に示す二次元シンボル1A)と、全ての暗セル20の4つの頂部の1又は2以上のドットが明ドット100で形成される第2実施形態(
図4に示す二次元シンボル1B)とに分けられる。以下詳しく説明する。
【0033】
(第1実施形態の二次元シンボル)
第1実施形態に係る二次元シンボル1Aは、例えば
図1に示すように、明セル10の少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル20b〜20hが、対角線方向で接する暗セル20b〜20hの頂部のドットを明ドットで形成しているものである。
【0034】
二次元シンボル1Aには、
図1に示すように、2つの明セル10の頂部と2つの暗セル20の頂部とが接している接点30及び接点32と、1つの明セル10の頂部と3つの暗セル20の頂部が接している接点31とがある。以下にそれぞれについて説明する。
【0035】
明セル10a、明セル10b、暗セル20d及び暗セル20gの4つのセルの頂部は、接点30で互いに接している。また、暗セル20d及び暗セル20gは、明セル10a及び明セル10bのいずれも連続する二辺に隣接しており、暗セル20dの頂部と暗セル20gの頂部とは、接点30で対角線方向に接している。すなわち、
図9で説明した符号を用いれば、暗セル20dの右下の頂部C3と、暗セル20gの左上の頂部C1とが対角線方向に接している。そして、二次元シンボル1Aでは、この対角線方向に接する暗セル20dの頂部C3の1つのドットと、暗セル20gの頂部C1の1つのドットとが明ドットで形成されている。そのため、暗セル20dと暗セル20gとが対角線方向に接する接点30で暗ドット同士が接しないので、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。
【0036】
暗セル20b、暗セル20a、暗セル20d及び明セル10aの4つのセルの頂部は、接点31で互いに接している。また、暗セル20b及び暗セル20dは、明セル10aの連続する二辺に隣接しており、暗セル20bの頂部と暗セル20dの頂部とは、接点31で対角線方向に接している。すなわち、
図9で説明した符号を用いれば、暗セル20bの左下の頂部C4と、暗セル20dの右上の頂部C2とが対角線方向に接している。そして、二次元シンボル1Aでは、この対角線方向に接する暗セル20bの頂部C4の1つのドットと、暗セル20dの頂部C2の1つのドットとが明ドットで形成されている。そのため、暗セル20bと暗セル20dとが対角線方向に接する接点31で暗ドット同士が接しないので、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。
【0037】
また、暗セル20aの頂部C3のドットは暗ドットで形成されているが、暗セル20bの頂部C4及び暗セル20dの頂部C2の1つのドットは明ドットで形成されているので、暗セル20aの頂部C3の暗ドットは、他の暗セル20の頂部の暗ドットと接していない。そのため、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。
【0038】
暗セル20e及び暗セル20fの頂部は、接点32で互いに接しているが、暗セル20e及び暗セル20fは、明セル10の連続する二辺に隣接していないものであり、暗セル20eの頂部と暗セル20fの頂部とは対角線方向で接していない。そのため、インク同士が馴染んで滲むおそれがないので、暗セル20e及び暗セル20fの頂部のドットを明ドットで形成する必要はない。
【0039】
なお、二次元シンボル1Aには、3つの明セル10の頂部と1つの暗セル20の頂部が接する接点や、4つの明セル10の頂部が接する接点があるが、これらの接点では、暗セル同士のインクが馴染んで滲むおそれがないので、暗セルの頂点を明ドットにする必要はない。また、4つの暗セル20の頂部が接している接点では、インク同士が馴染んで滲むことによる問題は生じないので、暗セルの頂点を明ドットにする必要はない。
【0040】
二次元シンボル1Aの暗セル20の頂部の1又は2以上の明ドットは、例えば
図2及び
図3に示すように、暗セル20に内接する仮想の円を描いた場合に、その仮想円が横切るドットのうち、そのドットの仮想円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドット及びそのドットの外側にあるドットとすることができる。
【0041】
図2は、二次元シンボル1Aの4ドット×4ドットの正方形の暗セル20に内接する仮想円40を描いた例である。暗セル20のうち、暗セル20dを例に説明すると、暗セル20dの四辺に内接するように描かれた仮想円40は、
図9で説明した頂部C3において、暗ドット200a、明ドット100a及び暗ドット200bを横切っている。ドットの仮想円40の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドットとは、明ドット100aのことであり、すなわち、明ドット100aは、明ドット100aが仮想円40に横切られて分けられた2つの面積のうち、仮想円40の外側の面積の方が仮想円40の内側の面積よりも大きいものである。一方、暗ドット200a及び暗ドット200bは、そのドットの仮想円40の外側の面積がそのドットの面積の半分未満のドットである。
【0042】
図3は、二次元シンボル1Aの7ドット×7ドットの正方形の暗セル20に内接する仮想円40を描いた例である。暗セル20のうち、暗セル20dを例に説明すると、暗セル20dの四辺に内接する仮想円41は、
図9で説明した頂部C3において、暗ドット200c、明ドット100c、明ドット100d及び暗ドット200dを横切っている。そして、明ドット100c及び明ドット100dは、そのドットの仮想円41の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドットである。また、明ドット100eは、明ドット100c及び明ドット100dの外側にあるドットである。一方、暗ドット200c及び暗ドット200dは、そのドットの仮想円41の外側の面積がそのドットの面積の半分未満のドットである。
【0043】
このように、暗セル20の頂部の2つ以上のドットを明ドットで形成された二次元シンボル1は、暗セル20の頂部の1つのドットを明ドットで形成された二次元シンボル1Aに比べて、さらにインク同士が馴染んで滲むことを防止できる。そのため、暗セル20が多数のドットで形成されている場合や、印刷媒体が、インクが定着し難くて、インク同士の馴染みが生じやすいプラスチックや金属等である場合により好ましく適用できる。なお、暗セル20の頂部の2つ以上のドットを明ドットで形成する場合、どのドットを明ドットするかを決定する方法は、この方法に限定されない。
【0044】
以上、第1実施形態の二次元シンボル1Aによれば、暗セル20同士が対角線方向に接する接点でインク同士が馴染んで滲むことがないので、インクが明セル10の頂部に広がって明セル10の面積を小さくするという従来の現象を生じさせない。その結果、二次元シンボル1Aの情報の読み取り精度の低下を引き起こすのを防ぐことができると共に、従来技術のような複雑な処理や装置を適用する必要がなく、しかも、読み取り精度の高い二次元シンボル1Aを提供できる。
【0045】
(第2実施形態の二次元シンボル)
第2実施形態の二次元シンボル1Bは、
図4に示すように、全ての暗セル20が、4つの頂部の1又は2以上のドットを明ドットで形成し、その明ドット以外を暗ドットで形成しているものである。すなわち、こうした二次元シンボル1Bは、二次元シンボル1Aに比べて、暗セル20の頂部のドットが明ドットで形成されている箇所がさらに多くなっており、また、二次元シンボル1Aと異なり、暗セル20のパターンが1種類で構成されているものである。
【0046】
二次元シンボル1Bには、
図4に示すように、2つの明セル10の頂部と2つの暗セル20の頂部とが接している接点30及び接点32と、1つの明セル10の頂部と3つの暗セル20の頂部が接している接点31とがある。このうち、接点30は、
図1の二次元シンボル1Aの接点30と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0047】
接点31では、
図1の二次元シンボル1Aの接点31と比べて、暗セル20aの右下の頂部C3の1つのドットが明ドットで形成されている。そのため、暗セル20同士の頂部の暗ドットが対角線方向に接しないので、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。なお、接点32でも、暗セル20同士の頂部の暗ドットが対角線方向に接しないので、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。
【0048】
このような二次元シンボル1Bは、二次元シンボル1Aと異なり、暗セル20のパターンが1種類であるため、暗セル20をどのように配置するかによって暗セル20の頂部のドットを明ドットにするという印刷制御を行う必要がないので、二次元シンボル1Aよりも、さらに複雑な処理を行うことなく印刷できる。
【0049】
また、二次元シンボル1Bの暗セル20は、4つの頂部のドット以外は暗ドット200で形成されているので、暗セル20の反射率が高くなるのを抑制でき、暗セル20のコントラストの低下を抑えることができる。
【0050】
二次元シンボル1Bは、
図5に示すように、暗セル20の頂部の2つ以上のドットを明ドットで形成してもよい。この構成は、上記の「第1実施形態の二次元シンボル」の
図3で説明した内容と同様であるので、同じ符号を用いて説明を省略する。また、この構成の効果も上記の「第1実施形態の二次元シンボル」で説明した内容と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0051】
暗セル20が長方形である場合、暗セル20の頂部の1又は2以上の明ドットは、
図6(A)に示すように、暗セル20に内接する仮想の楕円を描いた場合に、その仮想楕円が横切るドットのうち、そのドットの仮想楕円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドット及びそのドットの外側にあるドットとすることができる。また、
図6(B)に示すように、暗セル20の三辺に内接する仮想の2つの円を描いた場合に、その仮想円と暗セル20の連続する二辺に囲まれた領域内で、その仮想円が横切るドットのうち、そのドットの仮想円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドット及びそのドットの外側にあるドットとすることができる。
【0052】
図6(A)は、8ドット×10ドットの長方形の暗セル20に、その四辺に内接する仮想楕円42を描いた例である。仮想楕円42は、
図9で説明した頂部C2において、暗ドット200e、明ドット100f、明ドット100g、暗ドット200f、明ドット100i及び暗ドット200gを横切っている。そして、明ドット100f、明ドット100g及び明ドット100iは、そのドットの仮想楕円42の外側の面積がそのドットの面積の半分以上であるドットである。また、明ドット100hは、明ドット100f、明ドット100g及び明ドット100iの外側にあるドットである。一方、暗ドット200e、暗ドット200f及び暗ドット200gは、そのドットの仮想楕円42の外側の面積がそのドットの面積の半分未満のドットである。なお、楕円とは、楕円の公式から得られる楕円でもよいし、そうでなくてもよい。
【0053】
図6(B)は、8ドット×10ドットの長方形の暗セル20に、暗セル20の上下と左側の三辺に内接する仮想円43と、暗セル20の上下と右側の仮想円43’との2つの仮想円を描いた例である。頂部C2において、明ドット100g及び明ドット100iは、仮想円43’と、頂部C1と頂部C2を結ぶ一辺と頂部C2と頂部C3を結ぶ一辺からなる連続する二辺とに囲まれた領域で、仮想円43’が横切るドットのうち、そのドットの仮想円43’の外側の面積がそのドットの面積の半分以上になるドットである。また、明ドット100hは、明ドット100g及び明ドット100iの外側にあるドットである。一方、暗ドット200h、暗ドット200f及び暗ドット200gは、そのドットの仮想円43’の外側の面積がそのドットの面積の半分未満のドットである。
【0054】
なお、二次元シンボル1Bを構成する暗セル20が長方形の場合について説明したが、この構成は、第1実施形態の二次元シンボル1Aを構成する暗セル20が長方形であっても同様に適用できる。
【0055】
以上、第2実施形態の二次元シンボル1Bによれば、暗セル20同士が対角線方向に接する接点でインク同士が馴染んで滲むことがないので、インクが明セル10の頂部に広がって明セル10の面積を小さくするという従来の現象を生じさせない。その結果、二次元シンボル1Bの情報の読み取り精度の低下を引き起こすのを防ぐことができると共に、従来技術のような複雑な処理や装置を適用する必要がなく、しかも、読み取り精度の高い二次元シンボル1Bを提供できる。
【0056】
(応用例)
二次元シンボル1の応用例は、
図7に示すように、対角線方向で隣接する暗セル20の頂部のドットのいずれか一方のみを明ドット100で形成して、二次元シンボル1を構成したものである。
【0057】
図7(A)は、
図1に示す第1実施形態の二次元シンボル1Aにおいて、1行毎の暗セル20を暗ドットのみで形成された通常の暗セル20で構成したものである。すなわち、明セル10の少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル20が、対角線方向で接する1行毎の暗セル20の頂部の1又は2以上のドットを明ドットで形成しているものである。また、図示しないが、1列毎の暗セル20を暗ドットのみで形成してもよい。
【0058】
図7(B)は、
図4に示す第2実施形態の二次元シンボル1Bにおいて、1行毎の暗セル20を暗ドットのみで形成された通常の暗セル20で構成したものである。すなわち、1行毎の暗セル20が、4つの頂部の1又は2以上のドットを明ドットで形成し、その頂部のドット以外を暗ドットで形成しているものである。また、図示しないが、1列毎の暗セル20を暗ドットのみで形成してもよい。
【0059】
図7(C)は、
図4に示す第2実施形態の二次元シンボル1Bにおいて、暗セル20の左側の1辺の両側のドットを明ドットで形成した暗セル20のみで構成したものであり、
図9で説明した符号を用いれば、暗セル20の頂部C1と頂部C4とを結ぶ一辺の両側のドットを明ドットで形成した暗セル20のみで構成したものである。すなわち、全ての暗セル20が、4つの頂部のうち一辺の両側の2つの頂部の1又は2以上のドットを明ドットで形成し、その明ドット以外を暗ドットで形成しているものである。なお、図示しないが、暗セル20の頂部C1と頂部C2を結ぶ一辺の両側のドットを明ドットで形成した暗セル20のみで構成してもよいし、暗セル20の頂部C2と頂部C3を結ぶ一辺の両側のドットを明ドットで形成した暗セル20のみで構成してもよいし、暗セル20の頂部C3と頂部C4を結ぶ一辺の両側のドットを明ドットで形成した暗セル20のみで構成してもよい。
【0060】
以上、二次元シンボル1の応用例によれば、対角線方向で隣接する暗セル20の頂部のドットのいずれか一方のみが明ドットで形成されるので、暗セル20同士の頂部の暗ドットが対角線方向に接しない。そのため、インク同士が馴染んで滲むおそれがない。また、暗セル20の反射率が高くなるのを抑制でき、そのコントラストの低下を抑えることができる。
【0061】
さらに、
図7(A)に示した応用例は、頂部が明ドットで形成される暗セル20の数が約半分になるので、暗セル20をどのように配置するかによって暗セル20の頂部のドットを明ドットにするという複雑な印刷制御を行う作業の負荷を低減できる。また、
図7(B)に示した応用例は、暗セル20の4つの頂部のドットを明ドットで形成した暗セル20との2種類なので、複雑な処理を行うことなく印刷できる。また、
図7(C)に示した応用例も、暗セル20のパターンが1種類なので、複雑な処理を行うことなく印刷できる。
【0062】
[二次元シンボルの印刷方法]
本発明に係る二次元シンボル1の印刷方法は、
図1〜
図7に示した複数のドットからなる矩形の明セル10と暗セル20とが縦横に配列された二次元シンボル1を印刷する方法であって、明セル10の少なくとも連続する二辺に隣接する暗セル20を、対角線方向で接するその暗セル20の頂部の1又は2以上のドットが明ドットとなるように印刷することを特徴とする。
【0063】
印刷媒体には、インクが塗布されて印刷される。二次元シンボル1を印刷する手段は特に限定されないが、例えば、トナー方式やインクジェット方式のプリンタを用いる手段が挙げられる。インクジェット方式のプリンタには、例えば、静電気力を利用してインクを貯蔵したインク室の容積を増減させて、インクノズルからインクを吐出させて塗布する静電駆動方式や、インクノズル内のヒータを熱して発生させた気泡の圧力によってインクを吐出させて塗布する方式等があるが、本発明はいずれのインクジェット方式のプリンタにも適用できる。なお、本願でいう「インク」とは、インクジェット方式で通常用いるインクの他、トナー方式で用いるトナーも含むものとする。
【0064】
二次元シンボル1の印刷媒体は、印刷可能であれば特に限定されないが、例えば、紙、布、プラスチック、OHP用シート、金属等が挙げられる。
【0065】
印刷する二次元シンボル1を二次元シンボル1Aとするか二次元シンボル1Bとするかは、暗セル20を形成するドットの数や、プリンタの制御機能等を考慮して任意に選択される。例えば、暗セル20を形成するドットの数が少ない場合は、暗セル20の一部の頂部が明ドットで形成されている二次元シンボル1Aの方が、暗セル20の反射率が高くなるのを抑制し、暗セル20のコントラストの低下をより抑制できるので好ましい。また、プリンタの制御機能によって暗ドットの印刷する位置を制御するのが難しい場合は、暗セル20のパターンが1種類である二次元シンボル1Bの方が、暗セル20をどのように配置するかによって暗セル20の頂部のドットを明ドットにするという複雑な処理を行う必要がないので好ましい。
【0066】
頂部の2つ以上のドットが明ドットで印刷される暗セル20は、暗セル20が正方形のときは、その暗セル20の四辺に内接する円を描いた場合に、その円が横切るドットのうち、そのドットの円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上となるドット及びそのドットの外側にあるドットを明ドットで印刷してもよい。また、暗セル20が長方形のときは、その暗セル20の四辺に内接する楕円を描いた場合に、その楕円が横切るドットのうち、そのドットの楕円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上となるドット及びそのドットの外側にあるドットを明ドットで印刷してもよい。また、暗セル20が長方形のときは、その暗セル20の三辺に内接する2つの円を描いた場合に、その円と暗セル20の連続する二辺とに囲まれた領域内で、その円が横切るドットのうち、そのドットの円の外側の面積がそのドットの面積の半分以上となるドット及びそのドットの外側にあるドットを明ドットで印刷してもよい。
【0067】
以上、本発明に係る二次元シンボル1の印刷方法によれば、暗セル20同士が対角線方向に接する接点でインク同士が馴染んで滲むことがないので、インクが明セル10の頂部に広がって明セル10の面積を小さくするという従来の現象を生じさせない。その結果、二次元シンボル1の情報の読み取り精度の低下を引き起こすのを防ぐことができると共に、従来技術のような複雑な処理や装置を適用する必要がなく、しかも、読み取り精度の高い二次元シンボル1を提供できる。
【実施例】
【0068】
実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の例に限定解釈されるものではない。
【0069】
[実施例1]
パソコン用の二次元シンボル生成ソフトを用いて、「1234567890123456789」のコードを、DataMatrix形式で、1つのセルのサイズを6ドット×6ドットとした二次元シンボルのビットマップ画像を作成した。この二次元シンボルを構成する全ての暗セル20は、
図4に示す二次元シンボル1Bのように、4つの頂部の1つのドットが明ドット100で形成され、その頂部のドット以外が暗ドット200で形成されているものとした。上記のビットマップ画像をインクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、iP4700)によって、単位セルの1辺の長さを0.3mmとして印刷した。インクはRGB表記で、色の明度を最小値の0から最大値の255までとしたときのR(赤)=0,G(緑)=0,B(青)=0で表される黒色とし、印刷媒体は、白色の上質紙とした。
【0070】
[実施例2]
インクをRGB表記でR=0,G=0,B=204で表される青色とした以外は、実施例1と同様にして、二次元シンボルを印刷した。
【0071】
[実施例3]
二次元シンボルをQRコード形式とした以外は、実施例1と同様にして、二次元シンボルを印刷した。
【0072】
[比較例1]
二次元シンボルを構成する暗セル20を、暗ドット200のみで形成された通常の暗セル20とした以外は、実施例1と同様にして、二次元シンボルを印刷した。
【0073】
[比較例2]
インクをRGB表記でR=0,G=0,B=204で表される青色とした以外は、比較例1と同様にして、二次元シンボルを印刷した。
【0074】
[比較例3]
二次元シンボルをQRコード形式とした以外は、比較例1と同様にして、二次元シンボルを印刷した。
【0075】
[評価]
上記した実施例1〜3及び比較例1〜3で印刷した二次元シンボルを、TruCheck USB CCDリモートイメージャー(WebScan,Inc.製)を用いて、「最大反射率」、「最小反射率」、「コントラスト」、「モジュレーション」、「誤り訂正未使用率」、「復号」及び「印刷精度」を評価した。
【0076】
「最大反射率」は、明セル10の白さを表し、0%〜100%の値で表される。この値が大きい程、明セル10が白いことを示している。また、「最小反射率」は、暗セル20の黒さを表し、0%〜100%の値で表される。この値が小さい程、暗セル20が黒いことを示している。また、「コントラスト」は、「最大反射率」と「最小反射率」の差を表すものである。結果を表1に示した。
【0077】
「モジュレーション」は、明セル10と暗セル20との隣接部分の境界の色調のシャープさを示しており、すなわち、明セル10と暗セル20との隣接部分の境界の色調の明確さを示すものである。ここで、「モジュレーション」は、「A」,「B」,「C」,「D」及び「F」の5段階評価で表され、「A」が最も明セル10と暗セル20との隣接部分の境界の色調がシャープであることを示しており、「B」〜「F」は、その順番で明セル10と暗セル20との隣接部分の境界の色調のシャープさが劣ることを示している。結果を表1に示した。
【0078】
「誤り訂正未使用率」は、二次元シンボルの一部箇所の読み取り異常を補正するために、予め二次元シンボル内に組み込まれた補正機能の未使用率である。ここで、「誤り訂正未使用率」は、「A」,「B」,「C」,「D」及び「F」の5段階評価で表され、「A」は正しい二次元シンボルであることを示しており、「B」〜「F」は、その順番で二次元シンボルの欠陥が多くなることを示している。結果を表1に示した。
【0079】
「復号」は、二次元シンボルから情報を読み取れたかを表している。ここで、「復号」は、「A」及び「F」の2段階評価で表され、「A」が二次元シンボルから情報を正しく情報が読み取れたことを示しており、「F」が二次元シンボルから情報を読み取れなかったことを示している。結果を表1に示した。
【0080】
「印刷精度」は、上記した評価結果のうち、最低の評価が総合評価として判定されるものである。ここで、「印刷精度」は、「A」,「B」,「C」,「D」及び「F」の5段階評価で表され、「A」が最も印刷精度が高いものであり、「B」〜「F」は、その順番で「印刷精度」が劣るものである。
【0081】
【表1】
【0082】
[結果]
実施例1の二次元シンボルの「最大反射率」及び「最小反射率」は、比較例1の二次元シンボルと比べて、それぞれ1%ずつ大きくなっており、結果として、両者の「コントラスト」は同等であった。また、実施例1の二次元シンボルの「誤り訂正未使用率」及び「復号」は、比較例1の二次元シンボルと同等であった。一方、実施例1の二次元シンボルの「モジュレーション」及び「印刷精度」は「A」であったが、比較例1の二次元シンボルの「モジュレ−ション」及び「印刷精度」は「C」であり、「モジュレーション」及び「印刷精度」は実施例1の方が優れていた。
【0083】
実施例2の二次元シンボルの「最大反射率」及び「最小反射率」は、比較例1の二次元シンボルと比べて、それぞれ2%ずつ大きくなっており、結果として、両者の「コントラスト」は同等であった。また、実施例2の二次元シンボルの「誤り訂正未使用率」及び「復号」は、比較例2の二次元シンボルと同等であった。一方、実施例2の二次元シンボルの「モジュレーション」及び「印刷精度」は「A」であったが、比較例2の二次元シンボルの「モジュレ−ション」及び「印刷精度」は「B」であり、「モジュレーション」及び「印刷精度」は実施例2の方が優れていた。
【0084】
実施例3の二次元シンボルの「最大反射率」、「最小反射率」、「コントラスト」、「誤り訂正未使用率」及び「復号」はいずれも比較例3の二次元シンボルと同等であった。一方、実施例1の二次元シンボルの「モジュレーション」及び「印刷精度」は「A」であったが、比較例3の二次元シンボルの「モジュレ−ション」及び「印刷精度」は「B」であり、「モジュレーション」及び「印刷精度」は実施例3の方が優れていた。
【0085】
以上の結果から、実施例1〜3の二次元シンボルは、比較例1〜3の二次元シンボルと比べて、「モジュレーション」が向上していた。これは、実施例1〜3の二次元シンボルは、全ての暗セル20の4つの頂部の1つのドットが明ドット100で形成されているので、暗セル20同士が接する接点でインク同士が馴染んで滲まなくなり、明セル10と暗セル20との隣接部分の境界の色調がシャープになったためと考察される。
【0086】
また、実施例1〜3の二次元シンボルは、比較例1〜3の二次元シンボルと比べて、「最大反射率」及び「最小反射率」が同等又は大きかった。これは、実施例1〜3の二次元シンボルは、全ての暗セル20の4つの頂部の1つのドットが明ドット100で形成されているので、暗セル20同士が接する接点でインク同士が馴染んで滲まなくなり、明セル10の白さが向上し、その一方、暗セル20の黒さが低下したためと考察される。結果として、実施例1〜3及び比較例1〜3の二次元シンボルの「コントラスト」は同等となり、二次元シンボル1Bは、全ての暗セル20の4つ頂部の1つのドットが明ドット100で形成されていても、通常の二次元シンボルと同等のコントラストであった。
【0087】
よって、二次元シンボル1Bは、コントラストの低下が抑えられ、且つ、明セル10と暗セル20との隣接部分の境界の色調がシャープになっているので、従来の二次元シンボルに比べて読み取り精度の高いものであった。