特許第5715565号(P5715565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715565ポリビニルアセタール組成物、積層体、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715565
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ポリビニルアセタール組成物、積層体、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/14 20060101AFI20150416BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20150416BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20150416BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150416BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C08L29/14
   C08L67/00
   C08L71/00
   B32B27/00 103
   C03C27/12 D
【請求項の数】32
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2011-525918(P2011-525918)
(86)(22)【出願日】2010年8月4日
(86)【国際出願番号】JP2010063207
(87)【国際公開番号】WO2011016495
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2009-185103(P2009-185103)
(32)【優先日】2009年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-42139(P2010-42139)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-80645(P2010-80645)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 芳聡
(72)【発明者】
【氏名】磯上 宏一郎
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−017745(JP,A)
【文献】 特開2006−028382(JP,A)
【文献】 国際公開第01/042158(WO,A1)
【文献】 特開昭53−139684(JP,A)
【文献】 特開昭59−011954(JP,A)
【文献】 特開昭57−020352(JP,A)
【文献】 特開2001−240435(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096403(WO,A1)
【文献】 特開2008−280480(JP,A)
【文献】 特開昭64−001737(JP,A)
【文献】 特開平11−227114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L29、B32B27/30、C03C27/12、C08L67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール100質量部と、融点が30℃以下であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gであるエステル系可塑剤としてポリエステル0.5〜100質量部とを含有するポリビニルアセタール組成物。
【請求項2】
ポリエステルが非結晶性である請求項1に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルが多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体を含む、請求項1または2に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項4】
前記多価カルボン酸が炭素数4〜12の脂肪族飽和ジカルボン酸である、請求項に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項5】
前記多価アルコールが炭素数2〜12の脂肪族飽和ジオールである、請求項3または4に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項6】
前記多価カルボン酸の平均炭素原子数と前記多価アルコールの平均炭素原子数の合計が8〜20である、請求項3〜5のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルがヒドロキシカルボン酸またはラクトン化合物の重合体を含む、請求項1または2に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項8】
前記ヒドロキシカルボン酸またはラクトン化合物の炭素数が2〜10である、請求項に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルが炭酸化合物と多価アルコールとの縮重合体を含む、請求項1または2に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項10】
前記多価アルコールが炭素数2〜12の脂肪族飽和ジオールである、請求項に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項11】
前記ポリエステルに含まれる化合物が、分子中に水酸基、カルボキシル基およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1個有している、請求項1〜10のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項12】
前記官能基が水酸基である、請求項11に記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項13】
前記ポリエステルのGPC分析に基づく数平均分子量が200〜5,000である、請求項1〜12のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項14】
前記ポリエステルが水酸基化ポリエステルであり、該ポリエステルの水酸基価に基づく数平均分子量が200〜2,500である、請求項1〜13のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項15】
酸価が10.0mgKOH/g以下である請求項1〜14のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項16】
前記ポリビニルアセタールの平均アセタール化度が40〜85モル%、平均ビニルエステル単位含有量が0.01〜30モル%である、請求項1〜15のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項17】
前記ポリビニルアセタールが、粘度平均重合度150〜3000のビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られたものである、請求項1〜16のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項18】
前記ポリビニルアセタールがポリビニルブチラールである、請求項1〜17のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項19】
ガラス転移温度が0〜50℃である、請求項1〜18のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のポリビニルアセタール組成物からなるシート。
【請求項21】
請求項20に記載のシートを含む合わせガラス。
【請求項22】
請求項20に記載のシートを含む太陽電池モジュール。
【請求項23】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、および、ポリオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む組成物からなる層と、請求項20に記載のシートとを含む積層体。
【請求項24】
前記樹脂がポリメタクリル酸メチルである、請求項23に記載の積層体。
【請求項25】
前記樹脂が芳香族ポリカーボネートである、請求項23に記載の積層体。
【請求項26】
前記樹脂が、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の重合体またはそれらの水添物である、請求項23に記載の積層体。
【請求項27】
前記樹脂が、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素の重合体ブロック(X)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエンの重合体ブロック(Y)とを含むブロック共重合体またはその水添物である、請求項26に記載の積層体。
【請求項28】
前記芳香族不飽和炭化水素がスチレンであり、前記脂肪族共役ポリエンがブタジエン、イソプレン、及び、ブタジエンとイソプレンの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項27に記載の積層体。
【請求項29】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の重合体またはそれらの水添物である樹脂を含む組成物からなる層と、
ポリビニルアセタール100質量部と、融点が30℃以下であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gであるエステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤0.5〜100質量部とを含有するポリビニルアセタール組成物からなるシートと
を含む、積層体。
【請求項30】
前記樹脂が、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素の重合体ブロック(X)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエンの重合体ブロック(Y)とを含むブロック共重合体またはその水添物である、請求項29に記載の積層体。
【請求項31】
前記芳香族不飽和炭化水素がスチレンであり、前記脂肪族共役ポリエンがブタジエン、イソプレン、及び、ブタジエンとイソプレンの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項30に記載の積層体。
【請求項32】
請求項23〜31のいずれかに記載の積層体を含む合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリビニルアセタール組成物、積層体、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールは、さまざまな有機・無機基材に対する接着性や相溶性、有機溶剤への溶解性に優れており、種々の接着剤やセラミック用バインダー、各種インク、塗料等や、合わせガラス中間膜として広範に利用されている。
【0003】
近年、合わせガラス中間膜に種々の機能を付与する目的で、可塑化ポリビニルアセタールシートと、ポリビニルアセタール以外の樹脂からなるシートとを積層した、積層中間膜の検討がなされている。例えば、合わせガラス中間膜に高い遮音性能を付与する目的で可塑化ポリビニルアセタールシートと、高い遮音性能を有するスチレン−ジエンブロック共重合体シートを積層した遮音合わせガラス中間膜(特許文献1〜3参照)、あるいはそのような合わせガラスを用いた遮音性の高いパチンコ機用全面板(特許文献4参照)の検討が行われている。
【0004】
これらの先行技術文献においては、可塑化ポリビニルアセタールに使用される可塑剤について特に言及されていないが、例えばポリビニルアセタールの合わせガラス中間膜用途において汎用されている、アジピン酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチルなどの多価カルボン酸と一価アルコールとのカルボン酸エステル化合物、また、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3G8)、トリエチレングリコールジヘプタノエートなどの多価アルコールと一価カルボン酸とのカルボン酸エステル化合物を使用すると、後述する比較例(比較例1および8)からも明らかなように、これら可塑剤が可塑化ポリビニルアセタールシートからスチレン−ジエンブロック共重合体シートに移行し、力学強度の低下や、ヘイズの上昇を起こすことがあった。
【0005】
また、別の高機能化された合わせガラス中間膜として、可塑化ポリビニルアセタールシートとポリカーボネートやポリ(メタ)アクリル酸エステルとの積層により、耐貫通性を高めた中間膜の検討もなされている。
【0006】
しかしながら、後述する比較例(比較例1および8)からも明らかなように、また特許文献5でも指摘されているとおり、可塑化ポリビニルアセタールシートとポリカーボネートやポリ(メタ)アクリル酸エステルとの積層体においても、上記の汎用可塑剤を使用すると可塑剤の移行が起こり、ポリカーボネートやポリ(メタ)アクリル酸エステルの強度低下、ヘイズが上昇するといった問題を引き起こすことがあった。
【0007】
一般に可塑剤を添加した樹脂組成物から他樹脂への可塑剤移行を抑制する目的で、分子量の比較的大きい可塑剤、すなわち高分子可塑剤を使用することがある。そのような高分子量の可塑剤を含む組成物としては、例えばポリビニルブチラールと、ε−カプロラクトンの重合体でありその平均重合度が10〜2,000であるポリカプロラクトンからなる組成物を使用した合わせガラス中間膜として、ポリビニルアセタールとポリ(ε−カプロラクトン)(ダイセル化学工業株式会社製PLACCEL H5)からなる合わせガラス中間膜が開示されている(例えば、特許文献6参照)。ところが、ここで用いられているポリカプロラクトンは高結晶性で融点が比較的高い(融点60℃)ため、組成物を室温付近で長時間放置しておくと中間膜に含まれるポリカプロラクトンが結晶化して相分離を起こし、中間膜の白濁を引き起こすことがあった。また、このポリカプロラクトンは高融点かつ高重合度であるため、ポリビニルアセタールに対する充分な可塑化効果を有しておらず、この合わせガラス中間膜は十分な柔軟性を有していなかった。
【0008】
また、ポリビニルブチラールとポリカプロラクトンとからなる組成物を利用したセラミックバインダーが開示され(例えば、特許文献7参照)や、ポリビニルブチラールとカルボン酸ポリエステルとからなるセラミックバインダーが開示されている(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、特許文献7で開示されている発明は、ポリカプロラクトンのポリビニルアセタールに対する可塑化効果を期待したものではなく、重合度60〜800のポリ(ε−カプロラクトン)を使用する旨の記載があるだけである。実際に該公報で用いられているポリカプロラクトンは高結晶性で融点が比較的高い(融点60℃)ため、ポリビニルアセタールに対する充分な可塑化効果を有しておらず、また、組成物を室温付近で長時間放置しておくと中間膜に含まれるポリカプロラクトンが結晶化して相分離を引き起こすことがあった。また、特許文献8に記載のセラミックバインダーも、ポリエステルのポリビニルアセタールに対する可塑化効果を期待したものではなく、該公報で開示されているポリエステルはポリビニルアセタールに対する可塑化効果を有していない。
【0009】
さらに、ポリビニルアセタールと、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールから選ばれる化合物とジカルボン酸および1価カルボン酸との反応により得られる、分子末端に水酸基やカルボキシル基などの極性基を有さないカルボン酸ポリエステル(末端完全封止カルボン酸ポリエステル)からなる混合物が開示されている(例えば、特許文献9参照)。後述する比較例(比較例2、3、9および10)からも明らかなように、末端完全封止カルボン酸ポリエステルの平均分子量が大きい場合にはポリビニルアセタールとの相溶性が悪く、経時的に相分離を起こすことがあり、また可塑化効果が充分でないという問題があった。一方、末端完全封止カルボン酸ポリエステルの平均分子量が小さい場合には、該末端完全封止カルボン酸ポリエステルに含まれる分子量の低い成分の耐移行性が不十分である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−091491号公報
【特許文献2】特開2005−306326号公報
【特許文献3】特表2001−506198号公報
【特許文献4】特開2007−136057号公報
【特許文献5】WO2007−029541号公報
【特許文献6】特開平07−17745号公報
【特許文献7】特開平08−259334号公報
【特許文献8】特開2008−66556号公報
【特許文献9】特表2005−501156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題を解決するものであり、合わせガラス中間膜、その他用途に好適に使用される可塑化されたポリビニルアセタール組成物であって、さらにそのポリビニルアセタール組成物からなる層と他の樹脂層、例えばポリカーボネートやポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの樹脂層を積層した場合でも、ポリビニルアセタール層から可塑剤の移行が起こらないポリビニルアセタール組成物、また、これを用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると上記目的は、ポリビニルアセタール100質量部と、融点が30℃以下であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gであるエステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤0.5〜100質量部とを含有するポリビニルアセタール組成物を提供すること、または、ポリビニルアセタール100質量部と、非結晶性であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gであるエステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤0.5〜100質量部とを含有するポリビニルアセタール組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリビニルアセタール組成物は、前記エステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤がポリビニルアセタールとの相溶性に優れ、しかも、ポリビニルアセタールを可塑化する効果を有しているため、合わせガラス中間膜など、柔軟なポリビニルアセタールが求められる用途で好適に使用される。また、本発明で使用される前記エステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤に含まれる化合物は、ポリビニルアセタールと高い相溶性を有している一方で、その他の樹脂層、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマーなどに対する移行性が低い。そのため、これら樹脂層の力学強度の低下や、ヘイズの上昇が起こらず、これら樹脂層とポリビニルアセタール組成物からなる層が直接積層される用途、特に、高機能化合わせガラス中間膜用途、または、太陽電池封止材用途などで好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のシート及び結晶シリコンを封止した太陽電池モジュールの一例を表す概略図である。
図2】本発明の積層体および結晶タイプの太陽電池セルを使用した、太陽電池モジュールの一例を表す概略図である。
図3】本発明の積層体および薄膜タイプの太陽電池セルを使用した、太陽電池モジュールの一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、融点が30℃以下であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gであるエステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤、または、非結晶性であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gであるエステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤を含むポリビニルアセタール組成物、および、このポリビニルアセタール組成物(組成物Aともいう)からなるA層と、ポリビニルアセタールとは異なるその他の樹脂を主成分とする組成物BからなるB層とを積層してなる積層体に関するものである。前記エステル系可塑剤としては、後述するポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物があげられ、エーテル系可塑剤としては、ポリエーテル化合物があげられる。
【0016】
まず、本発明で使用されるポリエステルについて説明する。本発明で使用されるポリエステルは融点が30℃以下であり、好適には融点が15℃以下であり、最適には融点が0℃以下である。融点が30℃より高いと、本発明のポリビニルアセタール組成物を30℃以下の温度で使用する場合にポリエステルが結晶化し、ポリビニルアセタール組成物の透明度が低下したり、また力学強度が変化したりすることがあり、好ましくない。または、本発明で使用されるポリエステルは非結晶性である。ここで非結晶性とは、−20℃以上の温度において融点が観測されないことを指す。また、本発明で使用されるポリエステルは水酸基価が15〜450mgKOH/gであり、好適には30〜360mgKOH/g、最適には45〜280mKOH/gであることが好ましい。ポリエステルが特定の水酸基価を有することで、ポリエステルが有する水酸基とポリビニルアセタールに相互作用(水素結合)を持たせることができ、その結果、ポリビニルアセタールとポリエステルの相溶性が優れたものとなり、またポリビニルアセタール組成物から他樹脂へのポリエステルの低移行性、非移行性も優れたものとなる。水酸基価が15mgKOH/gより小さいと、上記相溶性、低移行性、非移行性が十分でないことがあり、また450mgKOH/gより大きいと、これを含むポリビニルアセタール組成物の耐湿性が悪くなることがある。
【0017】
なお、本発明で使用されるポリエステルの種類としては、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体を含むポリエステル(以後、このポリエステルを交互共重合カルボン酸ポリエステルと呼ぶ)、ヒドロキシカルボン酸の重合体を含むポリエステル(以後、この組成物をヒドロキシカルボン酸ポリエステルと呼ぶことがある)、炭酸化合物と多価アルコールとの縮重合体を含むポリエステル(以後、このポリエステルを炭酸ポリエステルと呼ぶことがある)などが挙げられる。
【0018】
本発明における交互共重合カルボン酸ポリエステルは、多価カルボン酸由来の基と多価アルコール由来の基が直接結合し、カルボン酸エステル結合を形成している部分を少なくとも1つ有している化合物(以後、多価カルボン酸と多価アルコールの交互共重合体類と呼ぶことがある)を含む。ここで多価カルボン酸由来の基とは、多価カルボン酸から、多価カルボン酸に含まれるカルボキシル基の−OH部分を除いた基を指す。多価カルボン酸としては、例えば化学式(1):
【0019】
【化1】
(式中、Rは存在しないか、2価の炭化水素基(例えば、脂肪族飽和炭化水素基(アルキレン基など)、脂肪族不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基など)、芳香環を有する炭化水素基(アリーレン基など))である)で表されるジカルボン酸があげられ、多価カルボン酸由来の基としては、例えば化学式(2):
【0020】
【化2】
(式中、Rは存在しないか、2価の炭化水素基(例えば、脂肪族飽和炭化水素基(アルキレン基など)、脂肪族不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基など)、芳香環を有する炭化水素基(アリーレン基など))である)で表されるカルボン酸由来の基があげられる。また、多価アルコール由来の基とは、多価アルコールから多価アルコールに含まれるヒドロキシル基の水素原子を除いた基を指す。多価アルコールとしては、例えば化学式(3):
【0021】
【化3】
(式中、Rは2価の炭化水素基(例えば、脂肪族飽和炭化水素基(アルキレン基など)、脂肪族不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基など)、芳香環を有する炭化水素基(アリーレン基など))である)で表されるジオールがあげられ、多価アルコール由来の基としては、例えば化学式(4):
【0022】
【化4】
(式中、Rは2価の炭化水素基(例えば、脂肪族飽和炭化水素基(アルキレン基など)、脂肪族不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基など)、芳香環を有する炭化水素基(アリーレン基など))である)で表されるジオール由来の基があげられる。
【0023】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールの交互共重合体類を含む交互共重合カルボン酸ポリエステルには、原料となる多価カルボン酸由来の基を少なくとも1つ有している化合物(多価カルボン酸類)や、多価アルコール由来の基を少なくとも1つ有している化合物(多価アルコール類−1)なども含まれていても良い。これらの多くはエステル化反応の未反応残留物またはそれらの誘導体である。
【0024】
多価カルボン酸類を具体的に例示すると、多価カルボン酸、多価カルボン酸のアルカリ金属塩、多価カルボン酸のアルカリ土類金属塩、多価カルボン酸のアンモニウム塩および多価カルボン酸と一価アルコールの間で脱水縮合して得られるカルボン酸エステル化合物などが挙げられる。また多価アルコール類−1を具体的に例示すると、多価アルコール、多価アルコールと一価カルボン酸の間で脱水縮合して得られるカルボン酸エステル化合物などが挙げられる。
【0025】
本発明におけるヒドロキシカルボン酸ポリエステルは、2つのヒドロキシカルボン酸由来の基が直接結合して、カルボン酸エステル結合を形成している部分を少なくとも1つ有している化合物(以後、ヒドロキシカルボン酸の重合体類と呼ぶことがある)を含む。ここでヒドロキシカルボン酸由来の基とは、ヒドロキシカルボン酸から、ヒドロキシカルボン酸に含まれるカルボキシル基の−OH部分およびヒドロキシル基の水素原子を除いた基を指す。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば化学式(5):
【0026】
【化5】
(式中、Rは2価の炭化水素基(例えば、脂肪族飽和炭化水素基(アルキレン基など)、脂肪族不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基など)、芳香環を有する炭化水素基(アリーレン基など))である)で表されるヒドロキシカルボン酸があげられ、ヒドロキシカルボン酸由来の基としては、例えば化学式(6):
【0027】
【化6】
(式中、Rは2価の炭化水素基(例えば、脂肪族飽和炭化水素基(アルキレン基など)、脂肪族不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基など)、芳香環を有する炭化水素基(アリーレン基など))である)で表されるヒドロキシカルボン酸由来の基があげられる。
【0028】
なお、ヒドロキシカルボン酸の重合体類を含むヒドロキシカルボン酸ポリエステルには、原料となるヒドロキシカルボン酸由来の基を少なくとも1つ有している化合物(ヒドロキシカルボン酸類)なども含まれていても良い。これらの多くはエステル化反応の未反応残留物またはそれらの誘導体である。
【0029】
ヒドロキシカルボン酸類を具体的に例示すると、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシカルボン酸のアルカリ土類金属塩、ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシル基と1価カルボン酸の間で脱水縮合して得られるカルボン酸エステル化合物、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基と1価アルコールの間で脱水縮合して得られるカルボン酸エステル化合物、およびヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基とヒドロキシル基が分子内脱水縮合して得られるラクトン化合物などが挙げられる。
【0030】
本発明における炭酸ポリエステルとは、炭酸由来の基(炭酸に含まれる2つの−OH部分を除いた基、すなわちカルボニル基)1つと多価アルコール由来の基2つ、または炭酸由来の基1つと多価アルコール由来の基および1価アルコール由来の基各1つが直接結合して、炭酸結合を形成している部分を少なくとも1つ有している化合物(以後、炭酸化合物と多価アルコールの交互共重合体類と呼ぶ)を含む。ここで1価アルコール由来の基とは、1価アルコールから1価アルコールに含まれるヒドロキシル基の水素原子を除いた基を指す。1価アルコールとしては、例えば化学式(7):
【0031】
【化7】
(式中、Rは1価の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香環を有する炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))である)で表される1価アルコールがあげられ、1価アルコール由来の基としては、例えば化学式(8):
【0032】
【化8】
(式中、Rは1価の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐状のアルキル基、若しくはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香環を有する炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など))である)で表される1価アルコール由来の基があげられる。
【0033】
なお、炭酸化合物と多価アルコールの交互共重合体類を含む炭酸ポリエステルには、炭酸由来の基1つと1価アルコール由来の基2つまたは炭酸由来の基1つと多価アルコール由来の基1つに含まれる水酸基2つが直接結合して炭酸結合を形成している化合物や、炭酸のアルカリ金属塩、炭酸のアルカリ土類金属塩、炭酸のアンモニウム塩などの炭酸塩(以下、炭酸類という)と原料となる多価アルコール由来の基を少なくとも1つ有している化合物(多価アルコール類−2)なども含まれていても良い。これらの多くはエステル化反応の未反応残留物またはそれらの誘導体である。多価アルコール類−2としては、多価アルコール類−1で例示した化合物が挙げられる。
【0034】
本発明で使用されるポリエステルが交互共重合カルボン酸ポリエステルである場合、交互共重合カルボン酸ポリエステルに含まれる多価カルボン酸と多価アルコールの交互共重合体類は70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、最適には95質量%以上であると良い。交互共重合カルボン酸ポリエステルに含まれる多価カルボン酸と多価アルコールの交互共重合体類が70質量%より少ないと、本発明で使用する交互共重合ポリエステルが本来有する、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果や、ポリビニルアセタールとの高い相溶性が発現しないことがある。また交互共重合カルボン酸ポリエステルに含まれる多価カルボン酸類、および多価アルコール類−1はそれぞれ0.001〜25質量%、合計0.01〜30質量%であることが好ましく、好適にはそれぞれ0.001〜9質量%、合計0.01〜10質量%であることが好ましく、最適にはそれぞれ0.001〜4質量%、合計0.01〜5質量%であると良い。
【0035】
本発明で使用されるポリエステルがヒドロキシカルボン酸ポリエステルである場合、ヒドロキシカルボン酸ポリエステルに含まれるヒドロキシカルボン酸の重合体類は80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、最適には95質量%以上であると良い。ヒドロキシカルボン酸ポリエステルに含まれるヒドロキシカルボン酸の重合体類が80質量%より少ないと、本発明で使用するヒドロキシカルボン酸ポリエステルが本来有する、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果や、ポリビニルアセタールとの高い相溶性が発現しないことがある。また、ヒドロキシカルボン酸ポリエステルに含まれるヒドロキシカルボン酸類は0.001〜20質量%、好適には0.001〜10質量%、最適には0.001〜5質量%であると良い。
【0036】
本発明で使用されるポリエステルが炭酸ポリエステルである場合、炭酸ポリエステルに含まれる炭酸化合物と多価アルコールの交互共重合体類は80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、最適には95質量%以上であると良い。炭酸ポリエステルに含まれる炭酸化合物と多価アルコールの交互共重合体類が80質量%より少ないと、本発明で使用する炭酸ポリエステルが本来有する、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果や、ポリビニルアセタールとの高い相溶性が発現しないことがある。また、炭酸ポリエステルに含まれる炭酸類、および多価アルコール類−2はそれぞれ0.001〜15質量%、合計0.01〜20質量%であることが好ましく、好適にはそれぞれ0.001〜9質量%、合計0.01〜10質量%であることが好ましく、最適にはそれぞれ0.001〜4質量%、合計0.005〜5質量%であると良い。
【0037】
本発明で使用されるポリエステルが交互共重合カルボン酸ポリエステル(多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体)である場合、該多価カルボン酸は特に限定されないが、炭素数4〜12、好ましくは炭素数5〜11、より好ましくは炭素数6〜10の脂肪族飽和多価カルボン酸である。該多価カルボン酸は一種類である場合であっても、2種類以上からなる場合であっても良い。同様に、該多価アルコールは特に限定されないが、炭素数2〜12、好ましくは炭素数3〜11、より好ましくは炭素数4〜10の脂肪族飽和多価アルコールである。該多価アルコールは1種類である場合であっても、2種類以上からなる場合であっても良い。さらに、多価カルボン酸の平均炭素原子数と、多価アルコールの平均炭素原子数の合計は特に限定されないが、8〜20であることが好ましく、より好適には8〜16、最適には8〜14であると良い。多価カルボン酸の平均炭素原子数と多価アルコールの平均炭素原子数の合計が8より小さいか、または20より大きいと、交互共重合カルボン酸ポリエステルとポリビニルアセタールとの相溶性が低下したり、可塑化効果が不十分になったりすることがある。ここで、多価カルボン酸の平均炭素原子数とは、用いた多価カルボン酸分子すべての炭素数を合計した値を、用いた多価カルボン酸の分子数で除算することにより求められる。同様に、多価アルコールの平均炭素原子数とは、用いた多価アルコール分子すべての炭素数を合計した値を、用いた多価アルコールの分子数で除算することにより求められる。
【0038】
上記の交互共重合カルボン酸ポリエステルの原料として使用される多価カルボン酸、多価アルコールは、本発明の主旨に反しない限り、従来公知の多価カルボン酸、多価アルコールが使用できる。多価カルボン酸を具体的に例示すると、脂肪族飽和ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、脂肪族不飽和ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニット酸など、3価以上の脂肪族カルボン酸;1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸など、芳香環を有する2価または3価以上のカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸など、が挙げられるがこれに限定されない。また、本発明の主旨に反しない限りこれら多価カルボン酸の任意の炭素原子に結合した水素原子を炭化水素基、アルコキシ基などに置き換えたものも使用することができる。さらに、これら多価カルボン酸のカルボキシル基を酸クロリド基に置き換えた化合物、例えば、アジピン酸ジクロリドなど、また、多価カルボン酸に含まれる2つのカルボキシル基の間で脱水縮合して得られる多価カルボン酸無水物化合物、例えば、無水コハク酸など、および多価カルボン酸のカルボキシル基と1価アルコールの間で脱水縮合して得られる化合物、例えば、アジピン酸ジエチルなども好適に使用できる。これらの中でも特に炭素数4〜12の脂肪族飽和ジカルボン酸、好ましくは炭素数5〜11の脂肪族飽和ジカルボン酸、より好ましくは炭素数6〜10の脂肪族飽和ジカルボン酸が、得られるポリエステルとポリビニルアセタールの相溶性、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果や耐候性に優れ、またそれら多価カルボン酸の入手が容易であるという点で好適である。
【0039】
また、多価アルコールを具体的に例示すると、脂肪族飽和ジオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど、脂肪族不飽和ジオール;2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジオールなど、3価以上の脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−シクロヘキサントリオールなど、芳香環を有する2価または3価以上のアルコール;1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンなど、が挙げられるがこれに限定されない。また、本発明の主旨に反しない限りこれら多価アルコールの任意の炭素原子に結合した水素原子を炭化水素基、アルコキシ基などの官能基に置き換えたものも使用することができる。これらの中でも特に炭素数2〜12の脂肪族飽和ジオール、好ましくは炭素数3〜11の脂肪族飽和ジオール、さらに好ましくは炭素数4〜10の脂肪族飽和ジオールが、得られるポリエステルとポリビニルアセタールの相溶性、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果や対候性に優れ、またそれら多価アルコールの入手が容易であるという点で好適である。
【0040】
本発明で使用されるポリエステルが、ヒドロキシカルボン酸ポリエステル(ヒドロキシカルボン酸の重合体)である場合、該ヒドロキシカルボン酸は特に限定されないが、炭素数2〜10、好ましくは炭素数3〜9、より好ましくは炭素数4〜8の脂肪族ヒドロキシカルボン酸であることが好適である。脂肪族ヒドロキシカルボン酸の炭素数が10より大きくなると、得られるポリエステルのポリビニルアセタールに対する相溶性や、可塑化効果が低下することがある。該ヒドロキシカルボン酸は1種類である場合であっても、2種類以上からなる場合であっても良い。該ヒドロキシカルボン酸の平均炭素原子数は特に限定されないが、4〜8であることが好ましく、より好適には4.5〜7.5、最適には5〜7であると良い。ここで、ヒドロキシカルボン酸の平均炭素原子数とは、用いたヒドロキシカルボン酸分子全ての炭素数を合計した値を、用いたヒドロキシカルボン酸の分子数で除算することにより求められる。
【0041】
ヒドロキシカルボン酸ポリエステルの原料として使用されるヒドロキシカルボン酸は、本発明の主旨に反しない限り従来公知のヒドロキシカルボン酸を使用することができ、また、ヒドロキシカルボン酸の代わりに、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基とヒドロキシル基の間で分子内脱水縮合して得られるラクトン化合物も使用することができる。ヒドロキシカルボン酸を具体的に例示すると、脂肪族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシへキサン酸、8−ヒドロキシへキサン酸、10−ヒドロキシデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸;4−ヒドロキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸などが挙げられるがこれに限定されない。また、本発明の主旨に反しない限り上記ヒドロキシカルボン酸の任意の炭素原子に結合した水素原子を炭化水素基、アルコキシ基などに置き換えたものも使用することができる。これらの中でも特に炭素数2〜10の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくは炭素数3〜9の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、より好ましくは炭素数4〜8の脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好適である。
【0042】
また、ラクトン化合物を具体的に例示すると、脂肪族ラクトン化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、ε−カプロラクトン、ラクチドなど、芳香環を有するラクトン化合物;フタリドなどが挙げられるがこれに限定されない。また、本発明の主旨に反しない限り上記ラクトン化合物の任意の炭素原子に結合した水素原子を炭化水素基、アルコキシ基などに置き換えたものも使用することができる。これらの中でも特に炭素数2〜10の脂肪族ラクトン化合物、好ましくは炭素数3〜9の脂肪族ラクトン化合物、より好ましくは炭素数4〜8の脂肪族ラクトン化合物が好適である。脂肪族ラクトン化合物の炭素数が10より大きいと、得られるポリエステルのポリビニルアセタールに対する相溶性や、可塑化効果が低下することがある。
【0043】
本発明で使用されるポリエステルが炭酸ポリエステル(炭酸化合物と多価アルコールとの縮重合体)である場合、該多価アルコールは特に限定されないが、炭素数2〜12、好ましくは炭素数3〜11、より好ましくは炭素数4〜10の脂肪族多価アルコールである。該多価アルコールは一種類である場合であっても、2種類以上からなる場合であっても良い。該多価アルコールの平均炭素原子数は特に限定されないが、4〜10であることが好ましく、より好適には4〜9、最適には4〜8であると良い。多価アルコールの平均炭素原子数が2より小さいか、または12より大きい場合には、得られるポリエステルのポリビニルアセタールに対する相溶性や、可塑化効果が低下することがある。
【0044】
炭酸ポリエステルの原料として使用される多価アルコールは、本発明の主旨に反しない限り従来公知の多価アルコールを使用することができ、具体的には交互共重合カルボン酸ポリエステルの説明で上述した多価アルコールが挙げられる。また、本発明の趣旨に反しない限りそれら多価アルコールの任意の炭素原子に結合した水素原子を炭化水素基、アルコキシ基などに置き換えたものも使用することができる。これらの中でも特に炭素数2〜12の脂肪族飽和ジオール、好ましくは炭素数3〜11の脂肪族飽和ジオール、さらに好ましくは炭素数4〜10の脂肪族飽和ジオールが、得られるポリエステルとポリビニルアセタールの相溶性、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果に優れ、またそれら多価アルコールの入手が容易であるという点で、好適である。
【0045】
炭酸ポリエステルの原料として使用される炭酸化合物としては特に限定されないが、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸エチレンなど、従来公知の炭酸エステルまたはホスゲンなどが例示される(以後、これらをまとめて炭酸エステル類と呼ぶことがある)。
【0046】
本発明で使用するポリエステルが、交互共重合カルボン酸ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸ポリエステル、炭酸ポリエステルである場合、一般にこれらポリエステルに含まれる直鎖状分子鎖に不規則性を導入することにより、ポリエステルの融点を30℃以下または非結晶性にすることが可能である。不規則性を導入する方法としては、例えば、ポリエステルの原料として使用する多価カルボン酸、多価アルコール、多価ヒドロキシカルボン酸として鎖長の異なるものを合計2種類以上使用したり、あるいは多価カルボン酸、多価アルコール、多価ヒドロキシカルボン酸、その他化合物として、側鎖を有する多価カルボン酸、側鎖を有する多価アルコール、側鎖を有する多価ヒドロキシカルボン酸、側鎖を有するその他化合物を使用する方法が挙げられる。不規則性を導入する程度は、目的に応じて適宜選択可能である。
【0047】
本発明に使用されるポリエステルは、特定の水酸基価を有しているため、ポリビニルアセタールと強い相互作用(水素結合)を持つことができるので、ポリビニルアセタールとの相溶性に優れる。さらにポリエステルが特定の水酸基価を有していることからポリビニルアセタールと強い相互作用を持つ一方で、その他多くの樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体およびその水添物などのポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など、比較的極性の低い官能基を有する樹脂とは、中程度〜弱い相互作用しか持たないか、ほとんど相互作用を持たない。そのため、本発明のポリビニルアセタール組成物と上記樹脂からなる組成物が直接接していても、ポリエステルの移行は起こらないか、またはほとんど起こらないため、本発明の組成物を含むシートと上記樹脂からなる組成物を含むシートを積層して使用する場合、特に高機能化合わせガラス中間膜で特に好適である。
【0048】
本発明のポリビニルアセタール組成物には、特定の水酸基価および特定の融点を有する(もしくは非結晶性の)ポリエステルを使用するが、ポリビニルアセタールとポリエステルの相溶性、および上述のポリエステルの低移行性をより良好なものにするには、ポリエステルに含まれる化合物が、1分子あたり少なくとも1個、より好ましくは2個以上の水酸基、カルボキシル基、および、カルボキシレート基から選ばれる基(以後、これらをまとめて極性官能基とする)を有していることが好ましく(以後このようなポリエステルを、極性官能基化ポリエステルという)、特にポリエステルに含まれる化合物が、1分子あたり少なくとも1個、より好ましくは2個以上の水酸基を有していることが好ましい(以後このようなポリエステルを、水酸基化ポリエステルという)。ここでカルボキシレート基とはカルボキシル基の水素原子を、アルカリ金属、アルカリ土類金属および−NR基(Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す)から選ばれる基に置き換えた基を表す。上記のような極性官能基、特に水酸基を有する化合物はポリビニルアセタールと高い相溶性を有し、一方でポリカーボネート、スチレン系熱可塑性エラストマーなど、比較的極性が低い樹脂への移行性が低いことから、このような化合物からなるポリエステルを使用することは好適である。
【0049】
極性官能基化ポリエステルを具体的に例示すると、本発明で使用するポリエステルが交互共重合ポリエステルである場合、多価カルボン酸と多価アルコールの交互共重合体類、多価カルボン酸類および多価アルコール類−1が、1分子あたり少なくとも1個の極性官能基を有する化合物であるとよい。また、本発明で使用するポリエステルがヒドロキシカルボン酸ポリエステルである場合、ヒドロキシカルボン酸の重合体類、およびヒドロキシカルボン酸類が、1分子あたり少なくとも1個の極性官能基を有する化合物であるとよい。さらに本発明で使用するポリエステルが炭酸ポリエステルである場合、炭酸化合物と多価アルコールの交互共重合体類、炭酸類および多価アルコール類−2が、1分子あたり少なくとも1個の極性官能基を有する化合物であるとよい。これら極性基化ポリエステル、特に極性官能基として水酸基を有する水酸基化ポリエステルは、後述する従来公知の方法により製造可能である。
【0050】
また、本発明のポリビニルアセタール組成物の酸価は特に限定されないが、10mgKOH/g以下であることが好ましく、好適には5mgKOH/g以下、最適には2mgKOH/g以下であると良い。酸価が上記範囲を満たす場合には、ポリビニルアセタール組成物に含まれるポリエステルおよびポリビニルアセタールの分解(加水分解など)が起こりにくいため、長期使用時の耐久性という観点から好適である。本発明のポリビニルアセタール組成物の酸価を上記範囲に調節するには、あらかじめ本発明のポリビニルアセタール組成物に使用するポリビニルアセタール樹脂の酸価を調節する(低くする)、また、本発明のポリビニルアセタール組成物にポリエステルに含まれる酸価を調節する(低くする)方法が好適である。
【0051】
本発明で使用されるポリエステルは従来公知の方法で調製することができ、例えば本発明のポリエステルが交互共重合カルボン酸ポリエステルである場合、多価カルボン酸と多価アルコールを必要に応じて有機溶剤中で混合し、さらに必要に応じて1価カルボン酸、1価アルコールおよび適量の触媒を添加して加熱して、生成する水やその他化合物を留去しながら脱水縮合反応を行なう方法が挙げられる。
【0052】
また、本発明で使用されるポリエステルがヒドロキシカルボン酸ポリエステルである場合、ヒドロキシカルボン酸、または対応するラクトン化合物を必要に応じて有機溶剤に溶解し、好ましくは1価もしくは多価アルコールおよび必要に応じて触媒を添加して加熱して、生成する水(ヒドロキシカルボン酸を用いる場合)やその他不要な化合物を留去しながら脱水縮合反応(ヒドロキシカルボン酸を用いる場合)または開環重合反応(ラクトン化合物を用いる場合)を行なう方法が挙げられる。
【0053】
さらに本発明のポリエステルが炭酸ポリエステルである場合、炭酸エステル類と多価アルコールを必要に応じて有機溶剤中で混合し、さらに必要に応じて1価アルコールおよび適量の触媒を添加して加熱して、生成する化合物(炭酸エステル類と多価アルコールもしくは1価アルコールのエステル交換反応で生成するアルコール、もしくはホスゲンの置換反応で生成する塩化水素など)を留去しながら縮合反応を行なう方法が挙げられる。
【0054】
上記ポリエステルを調製する方法において有機溶剤を使用する場合、本発明の主旨に反しない限りその種類および量は特に限定されず、使用する多価カルボン酸、多価アルコール、炭酸エステル類やその他化合物、また反応温度などに応じて適宜選択可能である。有機溶剤を具体的に例示すると、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、2−ブタノン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン化合物、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル化合物およびジメチルスルホキシド、クロロホルムなどが挙げられる。
【0055】
上記ポリエステルを調製する方法において触媒を使用する場合、その種類および量は本発明の主旨に反しない限り特に限定されず、使用する多価カルボン酸、多価アルコール、その他化合物に応じて適宜選択可能である。触媒の種類を具体的に例示すると、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、チタン酸、テトラアルコキシチタン、チタンテトラカルボキシレートなどのチタン化合物、スズ化合物などのルイス酸のほか、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、酢酸ナトリウムなどの有機塩基も使用できる。また、その量はポリエステルの原料として使用する化合物の総質量に対して0.1〜10,000ppmであることが好ましく、0.5〜1,000ppmであることがより好ましく、1〜200ppmがさらに好ましい。触媒の添加量が0.1ppmより少ないと十分な効果が得られないことがあり、また10000ppmより多くしても格段の効果は得られない。
【0056】
上記ポリエステルを調製する方法において、反応温度は特に限定されないが、100〜250℃、好ましくは150〜230℃であると良い。
【0057】
本発明で使用するポリエステルが交互共重合カルボン酸ポリエステルである場合、交互共重合カルボン酸ポリエステルを調製する際に用いる多価カルボン酸と多価アルコールの比率は特に限定されないが、得られる交互共重合カルボン酸ポリエステルの水酸基価を15〜450mgKOH/gに調節するため、また、本発明のポリビニルアセタール組成物の酸価をできるだけ低く、好ましくは10mgKOH/g以下に調整し、さらにポリエステルを水酸基化ポリエステルとするには、多価アルコールを多価カルボン酸より若干過剰量用い、さらに後述する方法により反応を追い込んでやることが好ましい。具体的には多価アルコールを多価カルボン酸に対して0.5〜30モル%過剰に、より好ましくは1〜15モル%過剰に用いて反応を行なうことが好ましく、さらに反応溶液に含まれるポリエステルの酸価が10mgKOH/g以下、好適には5mgKOH/g以下、最適には2mgKOH/g以下になるまで反応を追い込むことが好ましい。このように多価アルコールを多価カルボン酸より若干過剰に使用し、かつ反応溶液に含まれるポリエステルの酸価が規定値以下になるまで反応を追い込むことで、末端に水酸基が導入された縮重合体からなる水酸基化ポリエステルが得られる。
【0058】
本発明で使用するポリエステルがヒドロキシカルボン酸ポリエステルである場合、ヒドロキシカルボン酸ポリエステルを調製する際に用いる試薬は特に限定されないが、得られるヒドロキシカルボン酸ポリエステルの水酸基価を15〜450mgKOH/gに調節するため、また、本発明のポリビニルアセタール組成物の酸価をできるだけ低く、好ましくは10mgKOH/gに調製し、さらに水酸基化ポリエステルとするには、ヒドロキシカルボン酸、またはラクトン化合物とともに1価アルコールおよび/または多価アルコールを添加し、さらに後述する方法により反応を追い込んでやることが好ましい。具体的には1価アルコールおよび/または多価アルコールをヒドロキシカルボン酸またはラクトン化合物に対して3〜50モル%添加して反応を行なうことが好ましく、5〜35モル%添加して反応を行なうことがより好ましく、原料としてヒドロキシカルボン酸を用いた場合には、反応溶液に含まれるポリエステルの酸価が10mgKOH/g以下、好適には5mgKOH/g以下、最適には2mgKOH/g以下になるまで反応を追い込むことが好ましく、また原料としてラクトン化合物を用いた場合には目的の重合度になるまで反応を行い、残存するラクトン化合物を減圧留去することが好ましい。このようにヒドロキシカルボン酸、またはラクトン化合物とともに1価アルコールおよび/または多価アルコールを添加し、かつ反応溶液に含まれるポリエステルの酸価が規定量以下になるまで反応を追い込むこと(原料にヒドロキシカルボン酸を用いた場合)または残存するラクトン化合物を留去する(原料としてラクトン化合物を用いた場合)ことで、末端に水酸基が導入された重合体からなる水酸基化ポリエステルが得られる。
【0059】
また、本発明で使用するポリエステルが炭酸ポリエステルである場合、炭酸ポリエステルを調製する際に用いる試薬は特に限定されないが、得られる炭酸ポリエステルの水酸基価を15〜450mgKOH/gに調節するため、また、本発明のポリビニルアセタール組成物の酸価をできるだけ低く、好ましくは10mgKOH/gに調製し、さらに水酸基化ポリエステルとするには、多価アルコールを炭酸エステル類より若干過剰量用いることが好ましく、さらに後述する方法により反応を追い込んでやることが好ましい。具体的には多価アルコールを炭酸エステル類に対して0.5〜30モル%過剰に、より好ましくは1〜15モル%過剰に用いることがより好ましく、また目的の重合度になるまで反応を行い、残存する炭酸エステル類を減圧留去することが好ましい。このように多価アルコールを炭酸エステル類より若干過剰に使用し、残存する炭酸エステル類を留去することで、末端に水酸基が導入された縮重合体からなる水酸基化ポリエステルが得られる。
【0060】
本発明で使用するポリエステルの数平均分子量は特に限定されないが、ポリエステルに含まれる成分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析に基づく数平均分子量が200〜5,000、好ましくは250〜3,000、より好ましくは300〜1,500であることが好ましい。GPC分析に基づく数平均分子量が上記範囲を満たす場合に、ポリエステルとポリビニルアセタールの相溶性、ポリエステルとポリビニルアセタールに対する可塑化効果およびポリエステルの他の樹脂層に対する低移行性が良好である。
【0061】
また、本発明で使用するポリエステルが水酸基化ポリエステルである場合、その水酸基化ポリエステルの水酸基価に基づく数平均分子量を200〜2,500にすることが好ましく、より好適には200〜1,200、最適には200〜800であると良い。水酸基化ポリエステルの水酸基価に基づく数平均分子量が上記範囲を満たす場合に、ポリエステルとポリビニルアセタールの相溶性、ポリエステルとポリビニルアセタールに対する可塑化効果およびポリエステルの他の樹脂層に対する低移行性が良好である。ここでポリエステルの水酸基価に基づく数平均分子量は、ポリエステルに含まれる化合物1つ当たりの水酸基の数および水酸基化ポリエステルの水酸基価(mgKOH/g)を用いて下記一般式(1)により計算される値である。
【0062】
【数1】
【0063】
次に、本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物について説明する。本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸エステル化合物は、水酸基価が15〜450mgKOH/gであり、より好ましくは15〜350mgKOH/g、最適には15〜250mgKOH/gである。本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物の水酸基価を上記範囲に調節することで、ポリビニルアセタールに対する優れた相溶性、可塑化効果が得られ、また、炭化水素系重合体への移行性を低くすることができるため、好適である。
【0064】
本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物は、常温で固体のもの、液体のもの、いずれも使用することができるが、融点が30℃以下であり、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは0℃以下であることが好適である。融点が上記範囲を満たすヒドロキシカルボン酸エステル化合物を使用することで、耐寒性に優れるポリビニルアセタール組成物が得られる。
【0065】
また、本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物は、非結晶性である。本発明において、非結晶性であるとは、−20℃以上の温度において融点を有さないことを表す。非結晶性であるヒドロキシカルボン酸エステル化合物を使用することによって、耐寒性に優れるポリビニルアセタール組成物が得られる。
【0066】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステル化合物は単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。ここで本発明のヒドロキシカルボン酸エステル化合物とは、ヒドロキシカルボン酸が有するカルボキシル基と1価または多価アルコールが有する水酸基との間で脱水エステル化することで生成する化合物であれば、特に限定されない。
【0067】
本発明のヒドロキシカルボン酸は、分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物を指し、具体的には脂肪族飽和ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、12−ヒドロキシステアリン酸など、脂肪族不飽和ヒドロキシカルボン酸;2−ヒドロキシクロトン酸、リシノール酸など、芳香環を含むヒドロキシカルボン酸;サリチル酸、没食子酸、マンデル酸などが挙げられる。これらの中でも脂肪族飽和ヒドロキシカルボン酸、また脂肪族不飽和ヒドロキシカルボン酸、特にリシノール酸が、低融点、または非結晶性のヒドロキシカルボン酸組成物が得やすいという観点から好ましい。
【0068】
ヒドロキシカルボン酸エステル化合物の原料となる1価アルコールは特に限定されず、従来公知の1価アルコールを使用可能であるが、例えば1価脂肪族アルコール;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、芳香環を有する1価アルコール;フェノール、ベンジルアルコールなどが例示されるが、これに限定されない。本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物としては、特に炭素数1〜20の1価脂肪族アルコールと、ヒドロキシカルボン酸とのエステル化合物が、ポリビニルアセタールへの相溶性、また可塑化効果の観点から好適である。
【0069】
また、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物の原料となる多価アルコールは特に限定されず、従来公知の多価アルコールを使用可能であるが、例えば2価脂肪族アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジオールなど、3価以上の脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,3,5−シクロヘキサントリオールなど、芳香環を有する2価または3価以上のアルコール;1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどが挙げられるが、これに限定されない。本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物としては、特に炭素数2〜20の多価脂肪族アルコールと、ヒドロキシカルボン酸とのエステル化合物が、ポリビニルアセタールへの相溶性、可塑化効果の観点、および対応するヒドロキシカルボン酸エステル化合物のB層への低移行性の観点から好適である。
【0070】
本発明で使用するヒドロキシカルボン酸エステル化合物を具体的に例示すると、ヒドロキシカルボン酸の1価アルコールエステル;リシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸ブチル、6−ヒドロキシヘキサン酸メチル、6−ヒドロキシヘキサン酸エチル、6−ヒドロキシヘキサン酸ブチル、ヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステル;エチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、ジエチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、トリエチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(3−ヒドロキシ酪酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(4−ヒドロキシ酪酸)エステル、トリエチレングリコールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル、グリセリントリ(リシノール酸)エステル、L−酒石酸ジ(1−(2−エチルヘキシル))、ひまし油の他、ヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステルのk個のヒドロキシカルボン酸由来の基を、水酸基を含まないカルボン酸由来の基または水素原子に置き換えた化合物も使用可能であり、これらヒドロキシカルボン酸エステルは従来公知の方法で得られるものを使用することができる。
【0071】
ここで、kは1以上、(多価アルコールの価数−1)以下の自然数を表す。またヒドロキシカルボン酸由来の基とは、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基から−OH部分を除いた基を表し、水酸基を含まないカルボン酸由来の基とは、水酸基を含まないカルボン酸のカルボキシル基から−OH部分を除いた基を表す。水酸基を含まないカルボン酸由来の基とは、水酸基を含まないカルボン酸のカルボキシル基から−OH部分を除いた基を表す。さらに水酸基を含まないカルボン酸とは、分子内に水酸基(カルボキシル基に含まれる−OH部分は除く)を含まないカルボン酸を表し、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチル酪酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
【0072】
これらのヒドロキシカルボン酸エステル化合物の使用量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール組成物に含まれるポリビニルアセタール100質量部に対して、0.5〜100質量部であり、好適には5〜100質量部、10〜80質量部、最適には20〜60質量部使用することが好ましい。ヒドロキシカルボン酸エステル化合物の使用量が5質量部より少ないと、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果が充分でなく、例えば、本発明の積層体を合わせガラス中間膜に使用する場合の柔軟性が不十分となることがあり、100質量部より多いと、炭化水素系重合体を含む組成物BからなるB層の力学強度の低下やヘイズの上昇を起こすことがある。
【0073】
次に、本発明で使用するポリエーテル化合物について説明する。本発明のポリエーテル化合物の水酸基価は、最適には、15〜450mgKOH/gである。ただし、15〜1000mgKOH/g、または、15〜600mgKOH/gとすることも可能である。本発明のポリエーテル化合物の水酸基価を上記範囲に調節することで、ポリビニルアセタールに対する優れた相溶性、可塑化効果が得られ、また、炭化水素系重合体への移行性を低くすることができるため、好適である。
【0074】
本発明で使用するポリエーテル化合物は、常温で固体のもの、液体のもの、いずれも使用することができるが、融点が30℃以下であり、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは0℃以下であることが好適である。融点が上記範囲を満たす、ポリエーテル化合物を使用することで、耐寒性に優れるポリビニルアセタール組成物が得られる。
【0075】
また、本発明で使用するポリエーテル化合物は、非結晶性である。本発明において、非結晶性であるとは、−20℃以上の温度において融点を有さないことを表す。非結晶性であるポリエーテル化合物を使用することによって、耐寒性に優れるポリビニルアセタール組成物が得られる。
【0076】
本発明で使用するポリエーテル化合物とは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール(以上をまとめて、原料ジオールと呼ぶ)から選ばれる1種類以上の化合物2分子以上(重合度が2以上)、好ましくは2〜100分子(重合度が2〜100)、より好ましくは2〜40分子(重合度が2〜40)を、脱水縮重合した化学構造を有する化合物(原料ジオール重合体とする)、および原料ジオール重合体由来の基を有する化合物を指す。ポリエーテル化合物の重合度は、低くなるほどポリビニルアセタールとの相溶性およびポリビニルアセタールに対する可塑化効果に優れるが、一方でポリエーテル化合物のB層への低移行性が損なわれる傾向がある。ここで原料ジオール重合体由来の基とは、原料ジオール重合体が有する2つの水酸基のどちらか一方の水酸基を除いた基を表す。参考までに、化学式(9):
【0077】
【化9】
には、ポリエチレングリコール(エチレングリコール重合体)を、また、化学式(10):
【0078】
【化10】
には、ポリエチレングリコール由来の基(エチレングリコール重合体由来の基)を表す。
【0079】
原料ジオール重合体を具体的に例示すると、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレングリコール)、ポリ(1,3−プロピレングリコール)、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、ポリ(1,3−ブチレングリコール)、ポリ(1,4−ブチレングリコール)、ポリ(2,3−ブチレングリコール)などの他、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコールから選ばれる2種類以上の化合物のランダム共重合体、またはブロック共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレングリコール)、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、ポリエチレングリコール由来の基を有する化合物、ポリ(1,2−プロピレングリコール)由来の基を有する化合物、および、ポリ(1,2−ブチレングリコール)由来の基を有する化合物からなる群より選ばれる化合物が、ポリビニルアセタールに対する高い相溶性、また可塑化効果に優れ、B層の力学強度の低下やヘイズの上昇が起こりにくい点で好ましい。
【0080】
また、原料ジオール重合体由来の基を有する化合物としては、1価アルコールの水酸基に含まれる水素原子を原料ジオール重合体由来の基で置き換えた化合物、多価アルコールの水酸基に含まれる少なくとも1つの水素原子を原料ジオール重合体由来の基で置き換えた化合物、1価カルボン酸のカルボキシル基に含まれる水素原子を、原料ジオール重合体由来の基で置き換えた化合物、多価カルボン酸のカルボキシル基に含まれる少なくとも1つの水素原子を原料ジオール重合体由来の基で置き換えた化合物、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基に含まれる少なくとも1つの水素原子および/または水酸基に含まれる少なくとも1つの水素原子を原料ジオール重合体由来の基で置き換えた化合物(以上をまとめて、末端変性原料ジオール重合体とする)なども、本発明のポリエーテル化合物として使用することができる。例えば、化学式(11):
【0081】
【化11】
で表されるメタノールの水酸基に含まれる水素原子をエチレングリコール重合体由来の基で置き換えた化合物、化学式(12):
【0082】
【化12】
で表される3−メチル−1,5−ペンタンジオールの水酸基に含まれる水素原子2つをエチレングリコール重合体由来の基で置き換えた化合物、化学式(13):
【0083】
【化13】
で表される2−エチルヘキサン酸のカルボキシル基に含まれる水素原子を、エチレングリコール重合体由来の基で置き換えた化合物、化学式(14):
【0084】
【化14】
で表されるアジピン酸のカルボキシル基に含まれる水素原子2つをエチレングリコール重合体由来の基で置き換えた化合物、化学式(15):
【0085】
【化15】
で表される6−ヒドロキシヘキサン酸のカルボキシル基に含まれる水素原子、および水酸基に含まれる水素原子をエチレングリコール重合体由来の基で置き換えた化合物があげられる。
【0086】
ポリエーテル化合物の数平均分子量は特に限定されないが、200〜2000であることが好ましく、より好ましくは200〜1500、さらに好ましくは200〜1200であると良い。数平均分子量が200より小さくなると、ポリエーテル化合物のA層からB層への移行が起こりやすくなることがあり、数平均分子量が2000より大きくなると、ポリビニルアセタールとの相溶性、またポリビニルアセタールに対する可塑化効果が充分でなくなる傾向にある。なお、ポリエーテル化合物の数平均分子量は水酸基価に基づいて求められる。
【0087】
1価アルコールを具体的に例示すると、1価脂肪族飽和アルコール;メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、デカノール、ドデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、6−ブトキシヘキサノールなど、1価脂肪族不飽和アルコール;アリルアルコール、3−ブテン−1−オールなど、芳香環を有するアルコール;ベンジルアルコールなどが挙げられるが、これに限定されない。また多価アルコールを具体的に例示すると、2価脂肪族飽和アルコール;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2価脂肪族不飽和アルコール;2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジオールなど、3価以上の脂肪族飽和アルコール;グリセリン、ペンタエリトリトール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,3,5−シクロヘキサントリオールなど、および3価以上の脂肪族不飽和アルコール、芳香環を有する2価または3価以上のアルコール;1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどが挙げられるが、これらの中でも1価脂肪族飽和アルコール、2価脂肪族飽和アルコール、3価以上の脂肪族飽和アルコールが、耐候性の観点から好適である。
【0088】
また、1価カルボン酸を具体的に例示すると、1価脂肪族飽和カルボン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、1価脂肪族不飽和カルボン酸;クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、芳香環を有する1価カルボン酸;安息香酸などが挙げられる。多価カルボン酸を具体的に例示すると、2価脂肪族飽和カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2価脂肪族不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニット酸、3価以上の脂肪族飽和カルボン酸;1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、3価以上の脂肪族不飽和カルボン酸、芳香環を有する2価または3価以上のカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、トリメット酸などが挙げられるが、これらの中でも1価脂肪族飽和カルボン酸、2価脂肪族飽和カルボン酸、3価以上の脂肪族飽和カルボン酸が、耐候性の観点から好適である。
【0089】
ヒドロキシカルボン酸を具体的に例示すると、脂肪族飽和ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、12−ヒドロキシステアリン酸など、脂肪族不飽和ヒドロキシカルボン酸;2−ヒドロキシクロトン酸、リシノール酸など、芳香環を含むヒドロキシカルボン酸;サリチル酸、没食子酸、マンデル酸などが挙げられるが、これらの中でも脂肪族飽和ヒドロキシカルボン酸が耐候性の観点から好適である。
【0090】
本発明で使用するポリエーテル化合物を調製する方法は特に限定されないが、例えば従来公知の方法で調整したものを使用可能であり、原料ジオール化合物、1価アルコール、多価アルコール、1価カルボン酸、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、また別途調製した原料ジオール重合体、末端変性原料ジオール重合体から選ばれる化合物と、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、オキセタン、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどから選ばれる化合物とを、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒もしくは酸触媒存在下、必要に応じて適当な有機溶媒中で反応させ、反応後、必要に応じて触媒を中和し、溶剤や未反応の化合物、あるいは低沸点の生成物を減圧留去することで、本発明で使用するポリエーテル化合物を得ることができる。このような製法で得られるポリエーテル化合物は、分子1つ当たり少なくとも1つの水酸基を有しているため、ポリビニルアセタールに対する相溶性、また可塑化効果に優れ、さらに炭化水素系重合体層への移行性が低いため特に好適である。
【0091】
このようにして得られたポリエーテル化合物は、そのまま使用しても良いし、必要に応じて蒸留などの方法によって精製してもよい。また異なる方法で調整した2種類以上のポリエーテル化合物を混合して、本発明で使用するポリエーテル化合物として使用しても良い。
【0092】
本発明のポリエーテル化合物の使用量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール組成物に含まれるポリビニルアセタール100質量部に対して、0.5〜100質量部であり、好適には、5〜100質量部、10〜80質量部、最適には20〜60質量部使用することが好ましい。ポリエーテル化合物の使用量が5質量部より少ないと、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果が充分でなく、例えば、積層体を合わせガラス中間膜に使用する場合の柔軟性が不十分となることがあり、100質量部より多いと、ポリエーテル化合物のB層への移行が起こりやすくなり、炭化水素系重合体を含む組成物BからなるB層の力学強度の低下やヘイズの上昇を起こすことがある。
【0093】
次に、本発明で使用するポリビニルアセタールについて説明する。ポリビニルアセタールは、通常、ビニルアルコール系重合体を原料として製造される。上記ビニルアルコール系重合体は、従来公知の手法、すなわちビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。ビニルエステル系単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、この中でもメタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
【0094】
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
【0095】
また、前記ビニルエステル系単量体を重合する場合、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体と共重合させることもできる。他の単量体の例としては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、その4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、その4級塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステルまたはその無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。これらの単量体は通常、ビニルエステル系単量体に対して10モル%未満の割合で用いられる。
【0096】
また、前記ビニルエステル系単量体を重合する場合、本発明の主旨に反しない限り他の単量体と共重合させることもできる。他の単量体の例としては、組成物Bで使用する炭化水素系重合体の重合に用いられる、前記炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物、あるいは、本発明の効果を阻害しない範囲で炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物と共重合が可能な化合物(例えば、アクリル酸またはその塩、アクリル酸メチル等)として例示された化合物と同じものが挙げられるが、これに限定されない。これらの単量体は通常、ビニルエステル系単量体に対して10モル%未満の割合で用いられる。
【0097】
本発明に用いられるポリビニルアセタールの原料となるビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は用途に応じて適宜選択されるが、150〜3,000のものが好ましく、200〜2,000のものがより好ましい。ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が150より小さいと、ポリビニルアセタールが本来有する力学強度などが発現しないことがあり、3,000より大きいと、ポリビニルアセタールの取り扱い性(溶剤溶解性や溶融混錬性)が悪くなることがある。
【0098】
本発明に用いられるポリビニルアセタールは、例えば、次のような方法によって得ることができる。まず、3〜30質量%濃度のビニルアルコール系重合体の水溶液を、80〜100℃の温度範囲に調整し、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う。その後、反応液を30〜200分かけて、30〜80℃の温度まで昇温し、その温度を10〜300分間、1〜6時間保持する。次に反応液を、好適には室温まで冷却し水洗した後、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加中和後、水洗、乾燥することにより、本発明で用いるポリビニルアセタールが得られる。
【0099】
アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられ、とりわけ塩酸が好ましく用いられる。
【0100】
アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、炭素数1〜8のアルデヒドを用いることが好ましい。炭素数1〜8のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。これらの中でも得られるポリビニルアセタールの力学強度の点で、炭素数4〜6のアルデヒド、特にn−ブチルアルデヒドを用いることが好ましい。すなわち、ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラールが特に好ましい。
【0101】
ポリビニルアセタールの平均アセタール化度は、40〜85モル%であることが好ましく、好適には48〜82モル%、50〜82モル%、さらに好適には55〜81モル%、最適には60〜80モル%であると良い。アセタール化度がこの範囲にあるポリビニルアセタールを使用することで、前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物との相溶性に優れ、また透明性が優れるポリビニルアセタール組成物を得ることができる。また、本発明の目的をより好適に達成するためには、ポリビニルアセタールのビニルエステル単位含有量は0.01〜30モル%、好適には0.05〜15モル%、より好適には0.1〜5モル%であることがよい。ビニルエステル単位含有量がこの範囲にあるポリビニルアセタールは、より耐候性に優れるため好ましい。またビニルアルコール単位含有量は10〜50モル%、好適には12〜40モル%、最適には15〜35モル%であると良い。なお、上記アセタール化度、ビニルエステル単位含有量、ビニルアルコール単位含有量の値は、それぞれ、アセタール化された単位の物質量(ビニルアセタール単位の物質量)、ビニルエステル単位の物質量、ビニルアルコール単位の物質量を、ポリビニルアセタール全体の単量体単位の物質量の合計で除算した値である。
【0102】
本発明のポリビニルアセタール組成物には、本発明の主旨に反しない限り、ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物以外の可塑剤が含まれていても良い。可塑剤としては特に限定されないが、一価カルボン酸エステル系、多価カルボン酸エステル系などのカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤などが挙げられる。これらは目的に応じて適宜選択可能であるが、一般に積層体にしたときにA層からB層に移行し、B層の強度や透明性、あるいはA層とB層の層間接着性を損なうような種類の可塑剤や、また、そのような弊害が生じるほどの添加量を添加することは、好ましくない場合が多い。
【0103】
一価カルボン酸エステル系可塑剤としては、ブタン酸、イソブタン酸、へキサン酸、2−エチルへキサン酸、へプタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリル酸などの一価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールとの縮合反応により得られる化合物のうち、本発明のポリエーテル化合物で無い化合物であり、具体的な化合物を例示すると、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジイソブタノエート、トリエチレングリコールジ2−ヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2−エチルブタノエート、トリエチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、PEG#400ジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。ここでPEG#400とは、平均分子量が350〜450であるポリエチレングリコールを表す。
【0104】
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸などの多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸モノ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2−エチルブチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジドデシルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0105】
リン酸系可塑剤、また亜リン酸系可塑剤としては、リン酸または亜リン酸とメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリ(ブトキシエチル)、亜リン酸トリ(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。
【0106】
これらの中でも特にトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)などが好適である。
【0107】
本発明において、ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、ポリエーテル化合物以外の可塑剤を使用する場合は、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その使用量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール組成物に含まれるポリビニルアセタール100質量部に対して、0.1〜80質量部、0.1〜60質量部、好適には5〜70質量部、5〜50質量部、最適には20〜45質量部を使用することが好ましい。ポリビニルアセタール組成物に含まれるポリビニルアセタール100質量部に対して、可塑剤の使用量が0.1質量部より少ないと十分な可塑化効果が得られないことがあり、80質量部より多くしても、格段の可塑化効果は得られない。
【0108】
本発明のポリビニルアセタール組成物は、ポリビニルアセタール100質量部に対して、融点が30℃以下または非結晶性であり、水酸基価が15〜450mgKOH/gのポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、またはポリエーテル化合物を0.5〜100質量部含有していることが必要であり、より好ましくは5〜90質量部、最適には20〜80質量部含有していると良い。本発明のポリビニルアセタール組成物における前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物の含有量が上記範囲を満たすことで、柔軟性に優れ、また、ポリビニルアセタールが本来有している透明性や力学強度に優れるポリビニルアセタール組成物となる。
【0109】
本発明で使用するポリビニルアセタール組成物の酸価は特に限定されないが、10mgKOH/g以下の酸価を有していることが好ましく、より好ましくは7mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下であると良い。本発明で使用するポリビニルアセタール組成物が上記範囲の酸価を有していることで、長期使用時の劣化が起こりにくいため、好適である。
【0110】
本発明のポリビニルアセタール組成物のガラス転移温度は特に限定されないが、0〜50℃であることが好ましく、より好ましくは5〜45℃、最適には10〜40℃であると良い。本発明のポリビニルアセタール組成物のガラス転移温度が上記範囲を満たすことで、合わせガラス中間膜など、当該ポリビニルアセタール組成物を使用して得られるシートが、常温付近での柔軟性に優れ、また適度な力学強度が発現されるため好適であり、特に本発明の積層体を合わせガラス中間膜として使用する場合に好適である。
【0111】
本発明のポリビニルアセタール組成物には、本発明の主旨に反しない限り、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、その他従来公知の添加剤を含んでいても良い。以下にそれを説明する。
【0112】
本発明のポリビニルアセタール組成物に使用される酸化防止剤としては、その種類は特に限定されないが、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0113】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などがある。
【0114】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などがある。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0115】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどがある。
【0116】
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。酸化防止剤の量が0.001質量部より少ないと十分な効果が発現しないことがあり、また5質量部より多くしても格段の効果は望めない。
【0117】
また、本発明のポリビニルアセタール組成物は、紫外線吸収剤を含んでいても良い。使用される紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,
2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は、の紫外線吸収剤の添加量は、ポリビニルアセタール組成物に対して質量基準で10〜50,000ppmであることが好ましく、100〜10,000ppmの範囲であることがより好ましい。添加量が10ppmより少ないと十分な効果が発現しないことがあり、また50,000ppmより多くしても格段の効果は望めない。これら紫外線吸収剤は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0118】
本発明のポリビニルアセタール組成物は、ポリビニルアセタールと前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。例えば、ポリビニルアセタールと前記ポリエステル等を、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤およびその他添加剤と供にミキシングロール、プラストミルなどで混練することで得られる。また、ポリビニルアセタールと前記ポリエステル等を、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤およびその他添加剤とともにポリビニルアセタールおよびポリエステルの良溶剤に溶解した後、キャスト、乾燥させることでも作製できる。ポリビニルアセタールの良溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムなどが例示されるが、これに限定されない。
【0119】
本発明のポリビニルアセタール組成物はポリビニルアセタール、および、前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物と、必要に応じて添加剤を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。混合方法を具体的に例示するとミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混錬、あるいはポリビニルアセタール組成物の成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられるが、本発明の主旨に反しない限り特に限定されない。
【0120】
本発明のポリビニルアセタール組成物は、これをシートに成形することで種々の用途、特に合わせガラス中間膜として好適に使用することができるので、以下にこのシートについて説明する。本発明のポリビニルアセタール組成物を含むシートは、本発明のポリビニルアセタール組成物を熱プレス成形機、カレンダーロール、押し出し機等の公知の方法でシート状に成形することで得られる。また、その際シート表面にメルトフラクチャー、エンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成しても構わず、特に合わせガラス中間膜として使用する場合には好適である。メルトフラクチャー、エンボスの形状は特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
【0121】
本発明のシートの厚さは20〜10,000μm、好適には20〜3,000μm、さらに好適には20〜1,600μmであることが好ましい。
【0122】
本発明のシートに含まれるポリビニルアセタール組成物には、本発明の主旨に反しない限り中間膜の柔軟性向上を目的として前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物以外に前記した可塑剤を含有していても良い。この場合の前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物と可塑剤の合計含有量は本発明の主旨に反しない限り特に限定されないが、シートの柔軟性や強度を考慮すると、ポリビニルアセタール100質量部に対して、20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜80質量部、最適には30〜70質量部であると良い。
【0123】
本発明のポリビニルアセタール組成物からなるシート又は、ポリビニルアセタール組成物からなる樹脂層と他の樹脂層を積層した積層体を、特に合わせガラス中間膜、太陽電池モジュールなど、ガラスとの接着性を適切に調節する必要がある用途に使用する場合、ポリビニルアセタール組成物に、ガラスとの接着性を調整する目的で接着性改良剤が添加されていても構わず、特に合わせガラス中間膜として使用する場合には好適である。接着性改良剤としては、例えば、国際公開第03/033583号に開示されているものを使用することができ、カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を添加することが好ましく、特に酢酸カリウム及び/または酢酸マグネシウムが好ましい。その添加量は、シートに使用するポリビニルアセタール組成物の質量に対して1〜10,000ppmであることが好ましく、5〜1,000ppmがより好ましく、10〜300ppmが更に好ましい。接着性改良剤の最適な添加量は使用する添加剤により異なり、また、本発明のシートを合わせガラス中間膜として使用する場合には、その合わせガラスが使用される場所によっても異なるが、シートとガラスの接着性を、合わせガラスをパンメル試験(Pummel test;国際公開第03/033583号等に記載)により評価した場合、一般には3〜10に調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3〜6、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7〜10に調整することが好ましい。合わせガラスが高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性改良剤を添加しないことも有用な方法である。
【0124】
本発明のポリビニルアセタール組成物に含まれる前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物は、ポリカーボネート、スチレン系熱可塑性エラストマーの他、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などに対して移行しにくい。そのためこれら樹脂層と本発明のポリビニルアセタール組成物からなる合わせガラス中間膜とを直接積層したものを高機能中間膜として好適に使用することができる。特にポリカーボネートシートやポリ(メタ)アクリル酸エステルとの積層体は非常に高い耐貫通性を有する合わせガラス用中間膜として、またスチレン系熱可塑性エラストマーとの積層体は非常に高い遮音性能を有する合わせガラス中間膜として好適に使用される。
【0125】
また、本発明のシートは、種々の熱可塑性樹脂を主成分とする層と直接積層した場合、本発明のシートに含まれる前記ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸エステル化合物、または、ポリエーテル化合物が、それら熱可塑性樹脂を主成分とする層に対して移行しにくいため好適である。ここで熱可塑性樹脂を主成分とする層とは、当該層の全質量に対する熱可塑性樹脂の割合が60質量%以上、好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上である層を指す。熱可塑性樹脂を例示すると、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ポリエンブロック共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリウレタンおよびポリアセタール樹脂など(以上をまとめて積層相手樹脂とする)が挙げられる。これらの中でも特にポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、またポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ポリエンブロック共重合体などのポリオレフィン系重合体が、本発明のシートと積層させる場合に好適である。以下、これらを順に説明する。
【0126】
本発明のシートと、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネートから選ばれる樹脂を含む組成物(組成物B)からなる層(B層)とを積層することで得られる積層体は、本発明のシートが有する遮音性能と、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネートが有する耐貫通性を併せ持つため好適である。
【0127】
本発明で使用されるポリ(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体であれば特に限定されない。ここで(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体とは、重合体に含まれる(メタ)アクリル酸エステル由来の単位が70質量%以上、好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上である重合体を指す。重合体に含まれる(メタ)アクリル酸エステル由来の単位が70質量%未満であると、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが本来有する透明性や力学強度が発現しないことがある。また当該重合体の原料に使用する(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、従来公知のものを使用可能であり、また2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルを併用することも可能である。(メタ)アクリル酸エステルを具体的に例示すると、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。これらの中でも特にメタクリル酸メチルが、透明性や力学強度の観点から好ましい。
【0128】
また、本発明で使用されるポリカーボネートは特に限定されず、従来公知のものを使用可能であるが、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどの芳香族ジオール化合物と、炭酸ジメチル、炭酸ジフェニル、ホスゲンなどを原料とする芳香族ポリカーボネートが、透明性、力学強度などの点で好適である。
【0129】
本発明のシートと、ポリオレフィン(炭化水素系重合体)を含む組成物、特に後述するブロック共重合体からなる樹脂を含む組成物からなる層とを積層することで得られる積層体は、ブロック共重合体に由来する高い遮音性能を有するため好適である。以下、これについて説明する。
【0130】
組成物Bに含まれる炭化水素系重合体の含有量は、本発明の主旨に反しない限り特に限定されないが、組成物Bの質量に対して30質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最適には90質量%以上であることが好ましい。炭化水素系重合体の含有量が組成物Bの質量に対して30質量%より低くなると、炭化水素系重合体が本来有する低吸水性や種々の力学特性、また後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下したりする傾向がある。
【0131】
本発明で使用する炭化水素系重合体は、炭化水素成分を主成分とする重合体であれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、特に炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物であることが、層間接着性や種々の力学特性に優れ、また入手が容易である点で好ましい。ここで炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはそれらの水添物は、重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が、80質量%以上、好ましくは95質量%以上、最適には98質量%以上である重合体またはそれらの水添物であることが好ましい。重合体に含まれる全単量体単位に占める炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物および炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の合計量の割合が、80質量%より低くなると、ポリオレフィンが本来有する低吸水性や種々の力学特性、また、後述するブロック共重合体が有する遮音性などの特性が低下することがある。
【0132】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物を具体的に例示すると、エチレン、プロピレン、ブチレン、2−ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどの脂肪族モノエン化合物、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3,5−ヘキサトリエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの脂肪族共役ポリエン化合物、また1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどの脂肪族非共役ポリエン化合物などが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0133】
また、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物を具体的に例示すると、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、(1−ナフチル)エチレン、(2−ナフチル)エチレンなどの芳香族モノエン化合物、1−フェニルブタジエン、2−フェニルブタジエンなどの芳香族共役ポリエン化合物、1−フェニル−1,4−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−シクロヘキサジエンなどの芳香族非共役ポリエン化合物が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
【0134】
上記に例示した化合物の他、本発明の効果を阻害しない範囲において、以下の化合物を共重合していてもかまわない。例えば、アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステルまたはその無水物;ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルがあげられる。
【0135】
炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素化合物、および、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物から選ばれる1種類以上の化合物の重合体またはその水添物を具体的に例示すると、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンの他、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、およびそれらの水添物などのブロック共重合体が挙げられる。また、これらの重合方法は特に限定されず、例えば、従来公知の方法で重合したものを使用することが可能である。特に本発明の積層体を遮音性合わせガラス中間膜として使用する場合、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、およびそれらの水添物などの、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物の重合体からなる重合体ブロック(X)と、炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン化合物の重合体からなる重合体ブロック(Y)とのブロック共重合体およびその水添物(これ以降、これらをまとめて単にブロック共重合体と呼ぶ)が制振性、遮音性に優れるため好適に使用される。以下、これについて説明する。
【0136】
本発明で使用されるブロック共重合体は、ブロック(X)部分とブロック(Y)部分を有していれば特に限定されず、例えば[(X)−(Y)]、[(X)−(Y)]−(X)、(Y)−[(X)−(Y)]などのブロック共重合体が使用可能である。ここでk、m、nは任意の自然数である。これらの中でも、ブロック(X)を2つ以上と、ブロック(Y)を1つ以上有するブロック共重合体が好適であり、(X)−(Y)−(X)からなるトリブロック共重合体が特に好適である。また、本発明で使用するブロック共重合体がブロック(X)を2つ以上含む場合、または、ブロック(Y)を2つ以上含む場合、ブロック(X)、ブロック(Y)はそれぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0137】
ブロック共重合体に占めるブロック(X)およびブロック(Y)の含有量は、本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、制振性や遮音性の観点から、ブロック共重合体の全質量に対するブロック(X)の含有量が5〜95質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。ブロック(X)の含有量がこの範囲である場合、ブロック共重合体が本来有する制振性、遮音性などの特性が発現し好適である。
【0138】
ブロック共重合体におけるブロック(X)およびブロック(Y)の重量平均分子量は特に限定されないが、ブロック(X)1つあたりの重量平均分子量が2,500〜75,000であることが好ましく、またブロック(Y)1つあたりの重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。またブロック共重合体の重量平均分子量としては、10,000〜1,000,000であることが好ましく、15,000〜200,000であることがより好ましい。ブロック(X)、ブロック(Y)の重量平均分子量が小さすぎるとブロック共重合体としての性能が発現しないことがある。またブロック共重合体の重量平均分子量が小さすぎると、積層体にしたときの力学強度が低くなりすぎることがあり、ブロック共重合体の重量平均分子量が大きすぎると、成形時の取り扱い性が悪くなる。また、ブロック共重合体のガラス転移温度、融点などは目的に応じて適宜選択可能である。
【0139】
本発明で使用するブロック共重合体のガラス転移温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−50〜50℃であるものが好ましく、−45〜30℃であるものがより好ましく、−40〜20℃であるものがさらに好ましい。ブロック共重合体のガラス転移温度が上記範囲を満たすことで、本発明の積層体の力学物性や種々の特性が好ましいものとなる。
【0140】
本発明で使用するブロック共重合体のtanδのピーク温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、−40〜30℃であることが好ましく、−35〜25℃であることがより好ましく、−30〜20℃であることがさらに好ましい。
【0141】
本発明で使用するブロック共重合体の力学強度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば引っ張り破断強度を指標として表すのであれば、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることがさらに好ましい。
【0142】
本発明で使用するブロック共重合体のMFR値は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えばASTM D1238に従い、荷重2.16kg、温度190℃で測定した場合のMFR値が0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜70g/10分であることがより好ましく、0.1〜50g/10分であることがさらに好ましい。
【0143】
本発明で使用するブロック共重合体は、そのブロック(Y)部分が水添されていても、水添されていなくてもかまわないが、耐候性の観点から水添されていることが好ましく、その水添率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であると良い。
【0144】
このようなブロック共重合体は、従来公知の方法で製造可能であるが、例えば有機リチウム試薬などを開始剤とし、炭素数8〜12の芳香族不飽和炭化水素化合物および炭素数2〜12の脂肪族共役ポリエン化合物を順次添加して反応させる方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0145】
本発明で使用する組成物Bには、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他従来公知の添加剤を添加しても良い。
【0146】
本発明で使用する組成物Bに酸化防止剤を添加する場合、その種類は特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。これらのフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤として具体的には、組成物Aに添加しても良いものとして例示した酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の添加量は、組成物Bの質量に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%の範囲であるとよい。酸化防止剤の添加量が0.001質量%より少ないと十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。
【0147】
本発明で使用する組成物Bに紫外線吸収剤を添加する場合、その種類は特に限定されない。使用される紫外線吸収剤としては、例えば組成物Aに添加しても良い紫外線吸収剤として例示した紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、組成物Bの質量に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがより好ましい。紫外線吸収剤の添加量が0.001質量%より少ないと十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。これら紫外線吸収剤は単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0148】
本発明の組成物Bは、炭化水素系重合体と、必要に応じて添加剤を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。混合方法を具体的に例示するとミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混錬、あるいは組成物Bの成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられるが、本発明の主旨に反しない限り特に限定されない。
【0149】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、共押し出し成形、多層射出成形、ドライラミネーションなど、従来公知の方法で製造可能である。
【0150】
また、本発明の積層体の積層構成は特に限定されず、A層とB層が積層してなる構成を含んでいればA層、B層が2つ以上含まれていてもかまわず、また2つ以上含まれている場合には、それらは同一であっても異なっていても良い。また、本発明の積層体には上記以外の層(C層とする)を含んでいても構わない。C層を具体的に例示すると、ポリエステル層、ポリアミド層、ポリイミド層などが挙げられるがこれに限定されない。本発明の積層体の層構成を具体的に例示すると、A層/B層、A層/B層/A層、A層/B層/A層/B層/A層、B層/A層/B層、A層/B層/B層/A層、A層/B層/C層/B層/A層、A層/B層/C層/A層、A層/B層/C層などが挙げられるが、これに限定されない。
【0151】
本発明の積層体は、A層とB層が積層してなる構成を含んでいれば、各層の厚さは特に限定されないが、A層、B層の厚さは0.001〜5mm、好ましくは0.01〜3mm、最適には0.1〜1.6mmであると良い。本発明の積層体にこれらの層を2つ以上含む場合、それらの厚さは同一であっても異なっていてもかまわない。また、これら各層の厚さは均一であっても良いし、不均一であっても良いが、均一であることが好ましい。
【0152】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、共押し出し成形、多層射出成形、ドライラミネーションなど、従来公知の方法で製造可能である。例えば、A層とB層が積層してなる構成を含む積層体である場合には共押し出し成形することが好ましく、その方法はダイ内で各層成分を接触させるダイ内ラミネーションでも良いし、ダイ外で接触させるダイ外ラミネーションでも良い。また、押し出し温度は適宜選択されるが、150〜300℃、好ましくは180〜250℃であると良い。
【0153】
また、本発明の積層体で使用するA層、B層には、目的に応じて種々の接着剤を添加、あるいは表面に塗布したり、また層の表面にハードコート層などを設けたものも使用可能である。
【0154】
このようにして得られた積層体は種々の用途に使用できるが、例えば(本発明のシート/ポリカーボネート樹脂層/本発明のシート)といった構成の積層体、あるいは(本発明のシート/ポリメタクリル酸メチル/本発明のシート)といった構成の積層体は、その両側をガラスで挟むことで、耐貫通性に非常に優れる合わせガラスとすることができる。また(ポリカーボネート樹脂層/本発明のシート/ポリカーボネート樹脂層)といった構成の積層体、あるいは(ポリメタクリル酸メチル樹脂層/本発明のシート/ポリメタクリル酸メチル樹脂層)といった構成の積層体は、軽量、高透明性、高強度であるとともに、本発明のシート由来の遮音性能に優れる積層体として好適に使用される。
【0155】
本発明のシート又は積層体はそれをガラスで挟むことで、合わせガラスとして好適に使用される。つまり、本発明のシート又は積層体は合わせガラス中間膜用途に好適に使用される。次にこれを説明する。本発明の合わせガラスに使用するガラスは特に限定されず、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射ガラス、強化ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなど従来公知の有機ガラス等が挙げられ、これらは無色、有色、あるいは透明、非透明のいずれであってもよい。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスの厚さは特に限定されないが、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、1〜10mmであることがさらに好ましい。
【0156】
本発明の合わせガラスを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、本発明の合わせガラス中間膜を2枚のフロート板ガラスにはさんだ後に真空バックに入れて、真空状態で100℃、30分間保持することにより、あるいは合わせガラス中間膜を2枚のフロート板ガラスにはさんだ後、30〜120℃に加熱しながらニップロールで処理して予備接着する。得られた予備接着体を、120〜150℃のオートクレーブ内において、1.5〜20kg/cmの圧力で処理することにより、合わせガラスを得ることができる。
【0157】
本発明の積層体を合わせガラス中間膜として使用する場合、積層体の構成は特に限定されないが、本発明の積層体の最表層にガラスとの接着性が適切な層があることが好ましく、特にガラスとして無機ガラスを使用する場合には、最表層はガラスとの接着性に優れるA層であることが好ましい。最表層がA層である本発明の積層体を具体的に例示すると、A層/B層/A層、A層/B層/C層/B層/A層、A層/B層/C層/A層などが挙げられる。
【0158】
本発明の積層体を合わせガラス中間膜として使用する場合、積層体の最表面の形状は特に限定されないが、ガラスとラミネートする際の取り扱い性(泡抜け性)を考慮すると、積層体の最表面にメルトフラクチャー、エンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成したものが好ましい。
【0159】
さらに、本発明の積層体は、太陽電池モジュールの封止材として使用することで、遮音性が求められる分野、特にBIPVなどの建築一体型太陽電池などに好適に使用される。以下、これを説明する。本発明の太陽電池モジュールに使用される太陽電池セルのタイプとしては特に限定されず、特に制限はないが単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶タイプ、アモルファスシリコンおよびそれと多結晶薄膜等との積層物等の薄膜シリコンタイプ、CIS、CIGS、CdTe、GaAsなどを使用した化合物半導体タイプといった薄膜タイプおよび有機太陽電池タイプなどが例示される。
【0160】
太陽電池モジュールの基本的な構成は、結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのケイ素化合物、あるいはCIS、CIGS、CdS/CdTe、GaAsなどからなる発電素子(セル)と、それを外部衝撃などから保護する柔軟な有機ポリマー封止材、さらに封止材の保護や、セル劣化の原因となる水分を遮断する目的で両側をガラスや積層樹脂シート、あるいは単層樹脂シートで挟み込んだ積層構造からなる。
【0161】
一例として、図1に、結晶シリコンを封止した太陽電池モジュールの模式図を示す。本発明のシート又は積層体は、柔軟な有機ポリマー封止材2として使用され、結晶シリコンからなる太陽電池セル3(発電素子)を封止するのに用いられる。この際、使用される積層樹脂シート1としては、特に最内層(封止材2と接する層)にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレートなどの透湿性の低い樹脂層と、含フッ素樹脂などの高耐候性樹脂を使用したもの、すなわち(透湿性の低い樹脂層/耐候性樹脂層)といった構成の積層樹脂シート1を用いるのが一般的である。また、積層樹脂シート1のかわりに単層樹脂シートを用いても良く、単層樹脂シートとしては、高耐候性ポリエステルシートなどが使用されている。また、耐透湿性を高める目的で、これらシートに無機物層を蒸着、積層したもの、あるいは無機物を分散したものも使用される。
【0162】
本発明の太陽電池モジュールに使用される太陽電池セルが結晶タイプの場合、例えば、図2(a)に示すように結晶タイプの太陽電池セル3と、封止材2およびガラス、バックシート等(以下、ガラス等という)1を重ねた後、ラミネートして得られる、図2(b)のような構成を挙げることができる。この場合に使用する封止材2は少なくとも1つが本発明の積層体であれば、それ以外の封止材、例えば、従来公知の架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物や、可塑化ポリビニルアセタールからなる組成物からなる封止材を併用することも可能である。
【0163】
また、本発明の太陽電池モジュールに使用される太陽電池セルが薄膜タイプの場合、例えば、図3(a)に示すように太陽電池セル4が蒸着された表面ガラス(ITO、ATO、FTOなどを含む透明電極層を含んでいても良い)と、封止材2およびガラス等1を重ねた後、ラミネートして得られる、図3(b)のような構成が挙げられる。この場合にも、封止材2として、必要に応じて架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物や、可塑化ポリビニルアセタールからなる組成物からなる封止材を併用して構わない。
【0164】
本発明の太陽電池モジュールは、本発明のシートが封止材2として使用されていること以外は、従来公知の構成でよく、例えば、太陽電池セル3をつなぐ電極、透明電極などを含んでいても良い。
【0165】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は特に制限されないが、例えば、ガラス(封止材2側の面にアモルファスシリコン、CIGSなどの発電素子層が形成されていても良い)/本発明のシート又は積層体(封止材2)/積層樹脂シート1を重ね、従来公知の方法、例えば真空ラミネーターで温度100〜180℃、好適には115〜175℃、最適には120〜170℃で、脱気時間0.1〜10分、プレス圧力0.1〜20kg/cmで、プレス時間1〜120分で加熱圧着する方法によって結晶シリコン3を封止する方法が挙げられる。
【0166】
本発明の太陽電池モジュールに使用されるガラスは特に制限されず、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、従来公知の有機ガラスなどを用いることができる。また、バックシートも特に制限はないが、耐候性に優れ、透湿度の低いものが好ましく使用され、ポリエステル系フィルム,フッ素系樹脂フィルム、およびそれらの積層物、およびそれらに無機化合物が積層されたものなどが使用できる。
【0167】
その他、本発明の太陽電池モジュールには、公知のフレームやジャンクションボックス、シーリング剤、取り付け治具および架台、反射防止膜、太陽熱を利用した各種設備、雨樋構造などと組み合わせることが可能である。
【0168】
本発明の合わせガラス、および、太陽電池モジュールは従来公知の方法で製造することが可能であり、例えば、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮圧着後に、オートクレーブ工程に投入する方法も付加的に行なうことができる。
【0169】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、太陽電池の製造に用いられる公知の装置を使用し、1〜30000Paの減圧下、100〜200℃、特に130〜160℃の温度でラミネートされる。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば、欧州特許第1235683号明細書に記載されており、例えば約20000Paの圧力下、130〜145℃でラミネートされる。
【0170】
ニップロールを用いる場合、例えば、可塑化ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着した後、さらに流動開始温度に近い条件で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜120℃に加熱した後ロールで圧着して接着または仮接着させる方法が挙げられる。
【0171】
仮圧着後に付加的に行なわれるオートクレーブ工程は、モジュールや合わせガラスの厚さや構成にもよるが、例えば、約1〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で0.5〜2時間実施される。
【0172】
このようにして得られた合わせガラスのヘイズ値は特に限定されないが、より低いヘイズ値であることが好ましく、好適な範囲を例示すると、5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下であると良い。
【実施例】
【0173】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「%」および「部」は特に断りのない限り、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0174】
合成例1
(ポリビニルブチラールの調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、n−ブチルアルデヒド384gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、再洗浄、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、ビニルアルコール基の含有量は30モル%であった。また、酸価は0.1mgKOH/gであった。なおPVB−1のブチラール化度、残存する酢酸ビニル基の含有量、酸価はJIS K6728に従って測定した。
【0175】
合成例2
n−ブチルアルデヒド使用量を420gに、また塩酸使用量を820mLに変更し、さらに昇温後の反応温度を65℃に変更した以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−2)を得た。PVB−2のブチラール化度は75モル%、酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、ビニルアルコール基の含有量は24モル%であった。また酸価は0.1mgKOH/gであった。
【0176】
合成例3
(ポリエステルの調製)
500mLセパラブルフラスコに3−メチル−1,5−ペンタンジオール100g、アジピン酸93gを仕込み常圧下、200℃で、生成する水を系外に留去しながらエステル化反応を行った。反応物の酸価が30mgKOH/g以下になった時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート5mgを加え、100〜200mmHgに減圧しながら反応を続けた。酸価が1mgKOH/gになった時点で真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。その後、100℃に冷却して、水5g加えて攪拌しながら2時間反応させて触媒を失活し、減圧下で水を留去して、ポリエステル(PEs−1:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。
【0177】
(ポリエステルの融点測定)
JIS K7121に従い、PEs−1の融点をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、−20℃より低い、もしくは非結晶性であった。(−20℃〜100℃の間で測定し、−20℃以上に融点が観測されない場合には「−20℃より低い、もしくは非結晶性」とした。表1中では単に<−20と記述)。
【0178】
(ポリエステルの水酸基価測定)
JIS K1557に従って測定した。
【0179】
(ポリエステルの酸価測定)
JIS K1557に従って測定した。
【0180】
(ポリエステルのGPC測定に基づく数平均分子量)
測定カラム:Shodex GPC KF−802、KF−802.5、KF−803 in series(昭和電工株式会社製)、測定温度:40℃、溶液:THF0.1%溶液、流速:1mL/分、検出器:IR、対照サンプル:ポリスチレンという条件で測定を行なった。
【0181】
(ポリエステル中の多価カルボン酸と多価アルコールの交互共重合体類の含有量)
(ポリエステルのGPC測定に基づく数平均分子量)時と同様の方法に従ってGPCを測定して、得られた結果(エリア値)から一般式(2)に従って計算した。
【0182】
【数2】
【0183】
(ポリエステルの水酸基価に基づく数平均分子量)
一般式(3)に従って計算した。
【0184】
【数3】
【0185】
(平均炭素原子数)
合成に用いた原料多価カルボン酸量、多価アルコール量と、ポリエステルの調製中に反応器から留去した原料多価カルボン酸量、多価アルコール量との物質収支により、ポリエステルに含まれる多価カルボン酸由来の基、多価アルコール由来の基量を算出し、計算した。
【0186】
合成例4
アジピン酸使用量を97gに変更した以外は合成例3と同様の方法によりポリエステル(PEs−2:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−2の分析結果を表1に示す。
【0187】
合成例5
アジピン酸使用量を100gに変更した以外は合成例3と同様の方法によりポリエステル(PEs−3:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−3の分析結果を表1に示す。
【0188】
合成例6
アジピン酸使用量を105gに変更した以外は合成例3と同様の方法によりポリエステル(PEs−4:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−4の分析結果を表1に示す。
【0189】
合成例7
3−メチル−1,5−ペンタンジオール100gの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオール50g、1,9−ノナンジオール68gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−5:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−5の分析結果を表1に示す。
【0190】
合成例8
3−メチル−1,5−ペンタンジオール100gの代わりに1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールの混合物(混合モル比85:15)136gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−6:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−6の分析結果を表1に示す。
【0191】
合成例9
3−メチル−1,5−ペンタンジオール100gの代わりに1,12−ドデカンジオール171gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−7:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−7の分析結果を表1に示す。
【0192】
合成例10
3−メチル−1,5−ペンタンジオール100gの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオール60gとグリセリン28gの混合物を使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−8:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数3個)を得た。PEs−8の分析結果を表1に示す。
【0193】
合成例11
アジピン酸95gの代わりにセバシン酸131gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−9:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−9の分析結果を表1に示す。
【0194】
合成例12
セバシン酸の使用量を134gに変更した以外は合成例11と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−10:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−10の分析結果を表1に示す。
【0195】
合成例13
セバシン酸の使用量を138gに変更した以外は合成例11と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−11:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−11の分析結果を表1に示す。
【0196】
合成例14
アジピン酸95gの代わりにシクロヘキサンジカルボン酸112gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−12:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−12の分析結果を表1に示す。
【0197】
合成例15
アジピン酸95gの代わりにアジピン酸80gとイソフタル酸17gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−13:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−13の分析結果を表1に示す。
【0198】
合成例16
アジピン酸95gの代わりにコハク酸76gを使用した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−14:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−14の分析結果を表1に示す。
【0199】
合成例17
反応開始時に2−エチルヘキサン酸を31g添加した以外は合成例3と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−15)を得た。PEs−15の分析結果を表1に示す。
【0200】
合成例18
2−エチルヘキサン酸添加量を53gに変更した以外は合成例17と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−16)を得た。PEs−16の分析結果を表1に示す。
【0201】
合成例19
2−エチルヘキサン酸添加量を104gに変更し、触媒失活後に未反応2−エチルヘキサン酸を減圧留去した以外は合成例17と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−17)を得た。PEs−17の分析結果を表1に示す。
【0202】
合成例20
反応開始時に2−エチルヘキサン酸を27g添加し、触媒失活後に未反応2−エチルヘキサン酸を減圧留去した以外は合成例5と同様にして反応を行い、ポリエステル(PEs−18)を得た。PEs−18の分析結果を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
合成例21
500mLセパラブルフラスコに3−メチル−1,5−ペンタンジオール110g、ε−カプロラクトン335g、チタン酸テトラブチル0.5mgをいれ、窒素雰囲気下、165℃、5時間反応を行った後、未反応ε−カプロラクトンを減圧留去して、ポリエステル(PEs−19:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−19の分析結果を表2に示す。
【0205】
合成例22
1Lセパラブルフラスコに1,4−シクロヘキサンジメタノール135g、ε−カプロラクトン370g、チタン酸テトラブチル0.5mgをいれ、窒素雰囲気下、165℃、10時間反応を行った後、未反応ε−カプロラクトンを減圧留去して、ポリエステル(PEs−20:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−20の分析結果を表2に示す。
【0206】
合成例23
500mLセパラブルフラスコにエチレングリコール50g、β−メチル−δ−バレロラクトン400gを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら30℃に調整した。次に1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン2gを添加し、さらに25時間反応を行なった後、未反応β−メチル−δ−バレロラクトンを減圧留去して、ポリエステル(PEs−21:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−21の分析結果を表2に示す。
【0207】
合成例24
500mLセパラブルフラスコに炭酸ジエチル175g、3−メチル−1,5−ペンタンジオール195gおよびチタン酸テトライソプロピル38mgをいれ、窒素雰囲気下で炭酸ジエチルを還流させ、反応進行とともに生成するエタノールを炭酸ジエチルと供に留去しながら反応を行なった。エタノールの留出が減少した段階で昇温を開始して200℃にし、該温度でさらに反応を行なった。エタノールの留出が無くなった時点で反応溶液を冷却し、真空ポンプで減圧後、再度加熱して、未反応の炭酸ジエチルを留去して、ポリエステル(PEs−22:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−22の分析結果を表2に示す。
【0208】
合成例25
3−メチル−1,5−ペンタンジオール175gの代わりに、3−メチル−1,5−ペンタンジオール100g、1,10−ドデカンジオール140gを使用した以外は合成例24と同様の方法によりポリエステル(PEs−23:水酸基化ポリエステル、分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−23の分析結果を表2に示す。
【0209】
合成例26
アジピン酸の代わりにテレフタル酸110gを使用した以外は合成例3と同様の方法によりポリエステル(PEs−24:分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−24の分析結果を表2に示す。
【0210】
合成例27
3−メチル−1,5−ペンタンジオールの代わりに1,9−ノナンジオール136gを使用した以外は合成例5と同様の方法によりポリエステル(PEs−25:分子当たりの水酸基数2個)を得た。PEs−25の分析結果を表2に示す。
【0211】
【表2】
【0212】
実施例1
(組成物A−1の調製)
40gのPVB−1と、16gのPEs−1を、ラボプラストミルで混錬し(150℃、5分)、組成物A−1を得た。以下の項目について測定、評価し、結果を表3に示す。
【0213】
(組成物A−1の酸価測定)
JIS K6728に従って測定した。
【0214】
(組成物A−1のガラス転移温度測定)
JIS K7198に従って動的粘弾性を測定し(周波数:1Hz)、tanδのピーク温度から求めた。
【0215】
(フィルムA−1の作製)
9gのポリビニルアセタール組成物−1を10cm×10cm×0.8mmの型枠内で熱プレスし(12kg/cm、150℃、30分)、フィルムA−1を得た。
【0216】
(フィルムの経時的な相分離有無の評価)
フィルムA−1を30℃、25%RH、30日間静置し、相分離によるフィルムの白濁、およびフィルム表面へのポリエステルの浮き出し有無を目視により確認した。
【0217】
(ポリカーボネートへの可塑剤移行性の評価)
シートB(PC):10cm×10cmのポリカーボネートシート(住友ベークライト株式会社製、ポリカエースECK100、厚さ3mm)とフィルムA−1とを気泡を挟まないように重ね、100℃で、5時間熱処理し、PC積層体を作製した。処理後のシートB(PC)の質量変化率を下記一般式(4)により測定した。またヘイズ変化量を測定した(スガ試験機株式会社製 ヘイズメーター)。
【0218】
【数4】
【0219】
(ポリメタクリル酸メチルへの可塑剤移行性の評価)
シートB(PC)の替わりにシートB(PMMA):ポリメタクリル酸メチルシート(三菱レイヨン株式会社製、アクリライトL、厚さ2mm)を使用した以外は上記と同様に熱処理して、PMMA積層体を作製した。処理後のシートB(PMMA)の質量変化率およびヘイズ変化を測定した。質量変化率は一般式(4)に従って計算した。
【0220】
(炭化水素系重合体への可塑剤移行性の評価)
炭化水素系重合体−1:スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水添物(GPC分析による重量平均分子量100,000、スチレンブロック含有量18質量%、ブタジエンブロックの水添率=99質量%)10gを10cm×10cm×1mmの型枠内で熱プレス(12kg/cm、200℃、30分)して得られたシートB(PO)−1をシートB(PC)の替わりに使用した以外は上記と同様に熱処理して、PO積層体を作製した。処理後のシートB(PO)−1の質量変化率およびヘイズ変化を測定した。質量変化率は一般式(4)に従って計算した。
【0221】
(単層フィルム合わせガラスの作製)
フィルムA−1とフロートガラス(厚さ4mm)2枚を、ガラス/フィルムA−1/ガラスの順に気泡が無いように重ね、真空バック内で100mmHg、145℃で1時間処理して、単層フィルム合わせガラス−1を作製した。
【0222】
(ヘイズ評価)
スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターにより単層フィルム合わせガラス−1のヘイズを評価したところ、0.6であった。
【0223】
(積層体の作製)
フィルムA−1と2枚のシートB(PC)を、シートB(PC)/フィルムA−1/シートB(PC)の順に気泡が無いように重ね、真空バック内で100mmHg、145℃で1時間処理して積層体−1を作製した。
【0224】
(ヘイズ評価)
スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターにより積層体−1のヘイズを評価したところ、0.6であった。
【0225】
(PCを含む合わせガラスの作製)
2枚のフィルムA−1と2枚のフロートガラス(厚さ4mm)、およびシートB(PC)を、ガラス/フィルムA−1/シートB(PC)/フィルムA−1/ガラスの順に気泡が無いように重ね、真空バック内で100mmHg、145℃で1時間処理してPCを含む合わせガラス−1を作製した。
【0226】
(ヘイズ評価)
スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターによりPCを含む合わせガラスのヘイズを評価したところ0.5であった。
【0227】
(POを含む合わせガラスの作製)
2枚のフィルムA−1と2枚のフロートガラス(厚さ4mm)、およびシートB(PO)−1を、ガラス/フィルムA−1/シートB(PO)−1/フィルムA−1/ガラスの順に気泡が無いように重ね、真空バック内で100mmHg、145℃で1時間処理してPOを含む合わせガラス−1を作製した。
【0228】
(ヘイズ評価)
スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターによりPOを含む合わせガラス−1のヘイズを評価したところ0.9であった。
【0229】
実施例2〜4
PEs−1の使用量を、それぞれ13g、19gまたは22gに変更した以外は実施例1と同様の方法により組成物A−2〜組成物A−4を得た。実施例1と同様の方法により、組成物A−2〜組成物A−4について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物A−2〜組成物A−4をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルム、PC積層体・PMMA積層体・PO積層体(以下、PC積層体等という)、単層フィルム合わせガラス、PCを含む合わせガラス及びPOを含む合わせガラスを作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
【0230】
実施例5〜24
PEs−1の代わりに、それぞれ16gのPEs−2〜16、19〜23を使用した以外は実施例1と同様の方法により組成物A−5〜組成物A−24を得た。実施例1と同様の方法により、組成物A−5〜組成物A−24について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物A−5〜組成物A−24をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルム、PC積層体等、単層フィルム合わせガラス、PCを含む合わせガラス及びPOを含む合わせガラスを作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
【0231】
【表3】
【0232】
実施例25〜48
PVB−1の代わりに40gのPVB−2を使用する以外は実施例1〜24と同様の方法により、組成物A−25〜組成物A−48を得た。実施例1と同様の方法により、組成物A−25〜組成物A−48について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物A−25〜組成物A−48をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルム、PC積層体等、単層フィルム合わせガラス、PCを含む合わせガラス及びPOを含む合わせガラスを作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表4に示す。
【0233】
【表4】
【0234】
(炭化水素系重合体−2のNMRによる分析)
合成例28で得られる炭化水素系重合体−2について、重クロロホルムを溶媒とするH−NMR測定により分析した。
【0235】
(炭化水素系重合体−2の重量平均分子量)
合成例28で得られる炭化水素系重合体−2について、テトラヒドロフランを溶媒とするGPC測定によりポリスチレンを標準とする重量平均分子量を測定した。以下に、GPC測定条件を示す。
装置 :SYSTEM11(昭和電工株式会社製)
カラム :MIXED−C 2本(ポリマーラボラトリー社製)
移動相 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
温度 :40℃
濃度 :0.1%
注入量 :100μL
検出器 :RI
標品 :ポリスチレン(ポリマーラボラトリー社製)
【0236】
合成例28
(炭化水素系重合体の合成)
乾燥窒素で置換された200Lの耐圧容器にシクロヘキサン60kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム35gを添加し、次いで、スチレン2.9kgを添加し、50〜52℃で重合した後、THF0.17kgを加え、次いで、ブタジエン26.2kgおよびスチレン2.9kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/C(パラジウム・カーボン)を触媒として、水素圧力2.1MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、炭化水素系重合体−2を得た。得られた炭化水素系重合体−2の重量平均分子量は100,400、スチレン含有量は18質量%、水添率は99モル%であった。
【0237】
また、本発明で使用する他の炭化水素系重合体は以下のとおりである。
炭化水素系重合体−3;
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ポリイソプレン部分は完全水添)、ポリスチレン部分の合計含有量=12%、ガラス転移温度=−32℃、tanδのピーク温度=−17℃、MFR値(ASTM D1238、荷重2.16kg)が190℃で0.5g/10分、−20℃でのtanδ=1.0、0℃でのtanδ=0.8、20℃でのtanδ=0.3
【0238】
炭化水素系重合体−4;
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ポリイソプレン部分は完全水添)、ポリスチレン部分の含有量=22%、ガラス転移温度=−12℃、tanδのピーク温度=−5℃、MFR値(ASTM D1238、荷重2.16kg)が190℃で0.7g/10分、−20℃でのtanδ=0.15、0℃でのtanδ=1.05、20℃でのtanδ=0.4
【0239】
炭化水素系重合体−5;
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ポリイソプレン部分は未水添)、ポリスチレン部分の含有量=20%、ガラス転移温度−12℃、tanδのピーク温度=−1℃、MFR値(ASTM D1238、荷重2.16kg)が190℃で3.8g/10分、−20℃でのtanδ=0.08、0℃でのtanδ=1.05、20℃でのtanδ=0.9
【0240】
実施例49〜52
炭化水素系重合体−1の代わりに炭化水素系重合体2〜5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、炭化水素系重合体を熱プレスして得られるシートとフィルムA−1とのPO積層体を作製し、作製したPO積層体について炭化水素系重合体への可塑剤移行性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0241】
【表5】
【0242】
比較例1
PEs−1の代わりに16gのトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(融点<−20℃、水酸基価は1mgKOH/g以下)を使用する以外は実施例1と同様の方法により組成物CA−1を得た。実施例1と同様の方法により、組成物CA−1について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物CA−1を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルム、PC積層体等および単層フィルム合わせガラスを作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0243】
比較例2〜5
PEs−1の代わりにそれぞれ16gのPEs−17,18,24,25を使用する以外は実施例1と同様の方法により組成物CA−2〜組成物CA−5を得た。実施例1と同様の方法により、組成物CA−2〜組成物CA−5について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物CA−2〜組成物CA−5をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルムおよびPC積層体等を作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0244】
比較例6
PEs−1の代わりに16gのポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製、プラクセル210、水酸基価112mgKOH/g、融点46〜48℃)を使用する以外は実施例1と同様の方法により組成物CA−6を得た。実施例1と同様の方法により、組成物CA−6について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物CA−6を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルムおよびPC積層体等を作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0245】
比較例7
PEs−1の代わりに16gのポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製、プラクセルH1P、融点60℃)を使用する以外は実施例1と同様の方法により組成物CA−7を得た。実施例1と同様の方法により、組成物CA−7について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物CA−7を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルムおよびPC積層体等を作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0246】
比較例8〜14
PVB−1の代わりに40gのPVB−2を使用する以外は比較例1〜7と同様の方法により組成物CA−8〜組成物CA−14を得た。実施例1と同様の方法により、組成物CA−8〜組成物CA−14について、酸価測定、ガラス転移温度測定を行なった。また、組成物A−1の代わりに組成物CA−8〜組成物CA−14をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、フィルム、PC積層体等および単層フィルム合わせガラスを作製し、同様の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0247】
【表6】
【0248】
表6に示すとおり、水酸基価が15mgKOH/gに満たないポリエステルを使用した場合、そのポリエステルの数平均分子量が比較的小さい場合には、当該ポリエステル中の低分子量成分の低移行性が十分でなく、またそのポリエステルの数平均分子量が大きい場合には、当該ポリエステルとポリビニルアセタールの相溶性が十分でなかった。また、融点が30℃を超えるポリエステルを使用した場合は、室温付近以下の温度で長期保管、使用する場合、ポリエステル成分の結晶化により相分離した。
【0249】
(ポリビニルアセタールPVB−3の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温・保持して完全に溶解させた。次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド416gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和後、再洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−3)を得た。得られたPVB−3のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、ビニルアルコール基の含有量は24モル%であった。PVB−3のブチラール化度、残存する酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。
【0250】
(組成物A−53の調製)
40gのPVB−1と、16gのグリセリントリ(リシノール酸)エステル(水酸基価180mgKOH/g、融点<20℃:非結晶性)、0.12gの2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、0.04gの酢酸カリウムおよび0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(150℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物A−53を得た。
【0251】
(組成物A−53の酸価測定)
JIS K6728に従って、組成物A−53の酸価を測定した。
【0252】
(組成物A−53のガラス転移温度測定)
JIS K7198に従って組成物A−53の動的粘弾性を測定し(周波数:1Hz)、tanδのピーク温度から求めた。
【0253】
(組成物A−54の調製)
組成物A−53の調製において、グリセリントリ(リシノール酸)エステルの代わりに16gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g、融点<−20℃:非結晶性)を使用した以外は同様にして、組成物A−54を調整し、同様の測定を行った。なお、本発明で使用したひまし油は、グリセリントリカルボン酸エステルからなる組成物において、リシノール酸エステル基の割合が90モル%、オレイン酸エステル基、リノール酸エステル基、リノレン酸エステル基の合計の割合が8モル%、パルミチン酸エステル基、ステアリン酸エステル基の合計の割合が1モル%、その他のカルボン酸エステル基の割合が1モル%である組成物である(本組成物に含まれるグリセリントリカルボン酸エステルの全分子数に占める、ヒドロキシカルボン酸エステルでない化合物の分子数の割合は1%以下である)。
【0254】
(組成物A−55の調製)
組成物A−53の調製において、グリセリントリ(リシノール酸)エステルの代わりに、トリエチレングリコールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル(水酸基価345mgKOH/g、融点<−20℃:非結晶性)を使用した以外は同様にして、組成物A−55を調整し、同様の測定を行った。
【0255】
(組成物A−56の調製)
組成物A−53の調製において、グリセリントリ(リシノール酸)エステルの代わりに、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル(水酸基価256mgKOH/g、融点−20℃)を使用した以外は同様にして、組成物A−56を調整し、同様の測定を行った。
【0256】
(組成物A−57の調製)
組成物A−53の調製において、グリセリントリ(リシノール酸)エステルの代わりに、L−酒石酸ジ(1−(2−エチルヘキシル))(水酸基価325mgKOH/g、融点<−20℃:非結晶性)を使用した以外は同様にして、組成物A−57を調整し、同様の測定を行った。
【0257】
(組成物A−58の調製)
組成物A−53の調製において、PVB−1の代わりに40gのPVB−3を使用した以外は同様にして、組成物A−58を調整し、同様の測定を行った。
【0258】
(組成物CA−15の調製)
組成物A−53の調製において、グリセリントリ(リシノール酸)エステルの代わりに16gのトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(水酸基価5mgKOH/g以下、融点<−20℃:非結晶性)を使用した以外は同様にして、組成物CA−15を調整し、同様の測定を行った。
【0259】
(組成物B(PO)−2の調整)
100gの炭化水素系重合体−2と0.1gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(200℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物B(PO)−2を得た。
【0260】
(組成物B(PO)−3の調整)
炭化水素系重合体−2の代わりに、炭化水素系重合体−3を使用した以外は、組成物B(PO)−2を調整したのと同様にして、組成物B(PO)−3を得た。
【0261】
(組成物B(PO)−4の調整)
炭化水素系重合体−2の代わりに、炭化水素系重合体−4を使用した以外は、組成物B(PO)−2を調整したのと同様にして、組成物B(PO)−4を得た。
【0262】
(組成物B(PO)−5の調整)
炭化水素系重合体−2の代わりに、炭化水素系重合体−5を使用した以外は、組成物B(PO)−2を調整したのと同様にして、組成物B(PO)−5を得た。
【0263】
(実施例53)
組成物A−53を10cm×10cm×0.3mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm、30分)して得たフィルムA−53と、組成物B(PO)−2を10cm×10cm×0.2mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルムB(PO)−2を(フィルムA−53/フィルムB(PO)−2/フィルムA−53)の順に重ね、10cm×10cm×0.8mmの型枠内で12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−53を得た。
【0264】
(可塑剤移行性の評価)
積層体−53を100℃で5時間処理し、スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターにより処理前後のヘイズ値の変化量を測定した。また、積層体−53に含まれるフィルムA−53の、処理前後での質量変化率を測定した。結果を表7に示す。
【0265】
(POを含む合わせガラスの評価)
積層体−53を10cm×10cm×3mmのガラス2枚の間に挟んだものを50℃、ニップロール処理で脱気後、オートクレーブ処理し(140℃、12kg/cm、2時間)、POを含む合わせガラス−53を得た。スガ試験機株式会社製 ヘイズメーターによりPOを含む合わせガラス−53のヘイズを評価した。結果を表7に示す。
【0266】
(実施例54)
組成物A−53の代わりに組成物A−54を使用した以外は実施例53と同様の方法により、積層体−54、POを含む合わせガラス−54を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0267】
(実施例55)
組成物A−53の代わりに組成物A−55を使用した以外は実施例53と同様の方法により、積層体−55、POを含む合わせガラス−55を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0268】
(実施例56)
組成物A−53の代わりに組成物A−56を使用した以外は実施例53と同様の方法により、積層体−56、POを含む合わせガラス−56を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0269】
(実施例57)
組成物A−53の代わりに組成物A−57を使用した以外は実施例53と同様の方法により、積層体−57、POを含む合わせガラス−57を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0270】
(実施例58)
組成物A−53の代わりに組成物A−58を使用した以外は実施例53と同様の方法により、積層体−58、POを含む合わせガラス−58を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0271】
(実施例59)
組成物B(PO)−2の代わりに組成物B(PO)−3を使用した以外は実施例54と同様の方法により、積層体−59、POを含む合わせガラス−59を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0272】
(実施例60)
組成物B(PO)−2の代わりに組成物B(PO)−4を使用した以外は実施例54と同様の方法により、積層体−60、POを含む合わせガラス−60を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0273】
(実施例61)
組成物B(PO)−2の代わりに組成物B(PO)−5を使用した以外は実施例54と同様の方法により、積層体−61、POを含む合わせガラス−61を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0274】
(比較例15)
組成物A−53の代わりに組成物CA−15を使用した以外は実施例53と同様の方法により、比較例積層体−15、比較例合わせガラス−15を作製し、同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0275】
【表7】
【0276】
(ポリビニルアセタールPVB−4の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド330gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、再洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−4)を得た。得られたPVB−4のブチラール化度(平均アセタール化度)は60モル%、酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、ビニルアルコール基の含有量は39モル%であった。PVB−4のブチラール化度、残存する酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。
【0277】
(ポリビニルアセタールPVB−5の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド275gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、再洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−5)を得た。得られたPVB−5のブチラール化度(平均アセタール化度)は50モル%、酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、ビニルアルコール基の含有量は49モル%であった。PVB−5のブチラール化度、残存する酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。
【0278】
(ポリエーテル化合物PEt−1の調製)
エチレングリコール500g、水酸化カリウム0.6gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下で十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、エチレンオキシド2000gを導入し、攪拌しながら反応を行った。エチレンオキシドを全て導入した後、140℃で1時間反応を行い、その後100℃、0.02気圧下で、未反応のエチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量250のポリエチレングリコールからなる、ポリエーテル化合物−1(PEt−1)を得た。
【0279】
(ポリエーテル化合物の融点測定)
JIS K7121に従い、ポリエーテル化合物−1の融点をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、−20℃より低い、もしくは非結晶性であった。(−20℃〜100℃の間で測定し、−20℃以上に融点が観測されない場合には「−20℃より低い、もしくは非結晶性」とした。表8中では単に<−20と記述)。
【0280】
(ポリエーテル化合物の水酸基価測定)
JIS K1557に従って測定した。結果を表8に示す。
【0281】
(ポリエーテル化合物の水酸基価に基づく数平均分子量)
一般式(3)に従って計算した。結果を表8に示す。
【0282】
(ポリエーテル化合物PEt−2の調製)
エチレングリコール200g、水酸化カリウム0.4gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下で十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、エチレンオキシド1800gを導入し、攪拌しながら反応を行った。エチレンオキシドを全て導入した後、140℃で3時間反応を行い、その後100℃、0.02気圧下で、未反応のエチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量400のポリエチレングリコールからなる、ポリエーテル化合物−2(PEt−2)を得た。得られたPEt−2をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0283】
(ポリエーテル化合物PEt−3の調製)
エチレングリコール120g、水酸化カリウム0.4gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下で十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、エチレンオキシド1500gを導入し、攪拌しながら反応を行った。エチレンオキシドを全て導入した後、140℃で5時間反応を行い、その後100℃、0.02気圧下で、未反応のエチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量600のポリエチレングリコールからなる、ポリエーテル化合物−3(PEt−3)を得た。得られたPEt−3をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0284】
(ポリエーテル化合物PEt−4の調製)
ジエチレングリコールモノラウレート500g、水酸化カリウム0.4gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下で十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、エチレンオキシド1000gを導入し、攪拌しながら反応を行った。エチレンオキシドを全て導入した後、140℃で3時間反応を行い、その後100℃、0.02気圧下で、未反応のエチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量600のポリエチレングリコールモノラウレートからなる、ポリエーテル化合物−4(PEt−4)を得た。得られたPEt−4をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0285】
(ポリエーテル化合物PEt−5の調製)
グリセリン250g、水酸化カリウム0.4gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下で十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、エチレンオキシド1400gを導入し、攪拌しながら反応を行った。エチレンオキシドを全て導入した後、140℃で3時間反応を行い、その後100℃、0.02気圧下で、未反応のエチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量600のグリセリントリ(ポリエチレングリコール)エーテルからなる、ポリエーテル化合物−5(PEt−5)を得た。得られたPEt−5をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0286】
(ポリエーテル化合物PEt−6の調製)
アジピン酸300g、水酸化カリウム0.4gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下で十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、エチレンオキシド800gを導入し、攪拌しながら反応を行った。エチレンオキシドを全て導入した後、140℃で3時間反応を行い、その後100℃、0.02気圧下で、未反応のエチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量500のアジピン酸ジ(ポリエチレングリコール)エステルからなる、ポリエーテル化合物−6(PEt−6)を得た。得られたPEt−6をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0287】
(ポリエーテル化合物PEt−7の調製)
1,2−プロピレングリコール190g、水酸化カリウム1.5gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下に十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度130℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、1,2−プロピレンオキシド1600gを導入し、攪拌しながら反応を行った。1,2−プロピレンオキシドを全て導入した後、130℃で5時間反応を行い、その後、0.02気圧下で未反応の1,2−プロピレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量700のポリ(1,2−プロピレングリコール)からなる、ポリエーテル化合物−7(PEt−7)を得た。得られたPEt−7をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0288】
(ポリエーテル化合物PEt−8の調製)
1,2−プロピレングリコール80g、水酸化カリウム1.5gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下に十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度130℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、1,2−プロピレンオキシド1100gを導入し、攪拌しながら反応を行った。1,2−プロピレンオキシドを全て導入した後、130℃で5時間反応を行い、その後、0.02気圧下で未反応の1,2−プロピレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量1050のポリ(1,2−プロピレングリコール)からなる、ポリエーテル化合物−8(PEt−8)を得た。得られたPEt−8をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0289】
(ポリエーテル化合物PEt−9の調製)
1,2−ブチレングリコール200g、水酸化カリウム1.8gを5L(リットル)のオートクレーブに入れ、減圧下に十分に脱水を行った(50℃、0.05気圧、2時間)。その後、オートクレーブを窒素雰囲気にし、反応温度140℃、反応圧力0.4MPaに維持しながら、1,2−ブチレンオキシド2000gを導入し、攪拌しながら反応を行った。1,2−ブチレンオキシドを全て導入した後、140℃で5時間反応を行い、その後、0.02気圧下で未反応の1,2−ブチレンオキシドを除去した。これを85℃まで冷却し、窒素を導入して常圧に戻した後、濾過して、数平均分子量1000のポリ(1,2−ブチレングリコール)からなる、ポリエーテル化合物−9(PEt−9)を得た。得られたPEt−9をPEt−1と同様の方法で評価した。結果を表8に示す。
【0290】
(組成物A−62の調製)
40gのPVB−5と、16g(PVB100質量部に対して40質量部)のPEt−1、0.12gの2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、0.04gの酢酸カリウムおよび0.05gの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールをラボプラストミル(150℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、組成物A−62を得た。
【0291】
(組成物A−62の酸価測定)
JIS K6728に従って、組成物A−62の酸価を測定した。結果を表9に示す。
【0292】
(組成物A−62のガラス転移温度測定)
JIS K7198に従って、組成物A−62の動的粘弾性を測定し(周波数:1Hz)、tanδのピーク温度から求めた。結果を表9に示す。
【0293】
(組成物A−63の調製)
組成物A−62の調製において、PEt−1の代わりに、PEt−2を使用した以外は同様にして、組成物A−63を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0294】
(組成物A−64の調製)
組成物A−62の調製において、PEt−1の代わりに、PEt−3を使用した以外は同様にして、組成物A−64を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0295】
(組成物A−65の調製)
組成物A−62の調製において、PEt−1の代わりに、PEt−4を使用した以外は同様にして、組成物A−65を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0296】
(組成物A−66の調製)
組成物A−62の調製において、PEt−1の代わりに、PEt−5を使用した以外は同様にして、組成物A−66を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0297】
(組成物A−67の調製)
組成物A−62の調製において、PEt−1の代わりに、PEt−6を使用した以外は同様にして、組成物A−67を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0298】
(組成物A−68の調製)
組成物A−63の調製において、PEt−2の使用量を20g(PVB100質量部に対して50質量部)に変更した以外は同様にして、組成物A−68を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0299】
(組成物A−69の調製)
組成物A−63の調製において、PEt−2の使用量を12g(PVB100質量部に対して30質量部)に変更した以外は同様にして、組成物A−69を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0300】
(組成物A−70の調製)
組成物A−65の調製において、PVB−5の代わりにPVB−4を使用した以外は同様にして、組成物A−70を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0301】
(組成物A−71の調製)
組成物A−65の調製において、PVB−5の代わりにPVB−1を使用した以外は同様にして、組成物A−71を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0302】
(組成物A−72の調製)
組成物A−62の調製において、PEt−1の代わりにPEt−7を使用し、PVB−5の代わりにPVB−1を使用した以外は同様にして、組成物A−72を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0303】
(組成物A−73の調製)
組成物A−72の調製において、PEt−7の代わりに、PEt−8を使用した以外は同様にして、組成物A−73を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0304】
(組成物A−74の調製)
組成物A−72の調製において、PEt−7の代わりに、PEt−9を使用した以外は同様にして、組成物A−74を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0305】
(組成物CA−16の調製)
組成物A−71の調製において、PEt−4の代わりに、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3G8)を使用した以外は同様にして、組成物CA−16を調整し、同様の測定を行った。結果を表9に示す。
【0306】
(実施例62)
組成物A−62を10cm×10cm×0.3mmの型枠内で熱プレス(150℃、12kg/cm2、30分)して得たフィルム(フィルムA−62)と、組成物B(PO)−3を10cm×10cm×0.2mmの型枠内で熱プレス(200℃、12kg/cm、5分)して得たフィルム(フィルムB(PO)−3)を(フィルムA−62/フィルムB(PO)−3/フィルムA−62)の順に重ね、10cm×10cm×0.8mmの型枠内で12kg/cmの圧力下、135℃で30分熱処理し、積層体−62を得た。
【0307】
(可塑剤移行性の評価)
積層体−62を100℃で5時間処理し、スガ試験機株式会社製、ヘイズメーターにより処理前後のヘイズ値の変化量を測定した。また、積層体−62に含まれるフィルムA−62の、処理前後での質量変化率を測定した。結果を表9に示す。
【0308】
(POを含む合わせガラスの評価)
積層体−62を10cm×10cm×3mmのガラス2枚の間に挟んだものを50℃、ニップロール処理で脱気後、オートクレーブ処理し(140℃、12kg/cm、2時間)、POを含む合わせガラス−62を得た。スガ試験機株式会社製、ヘイズメーターにより合わせPOを含むガラス−62のヘイズを評価した。結果を表9に示す。
【0309】
(実施例63)
組成物A−62の代わりに組成物A−63を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−63、POを含む合わせガラス−63を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0310】
(実施例64)
組成物A−62の代わりに組成物A−64を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−64、POを含む合わせガラス−64を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0311】
(実施例65)
組成物A−62の代わりに組成物A−65を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−65、POを含む合わせガラス−65を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0312】
(実施例66)
組成物A−62の代わりに組成物A−66を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−66、POを含む合わせガラス−66を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0313】
(実施例67)
組成物A−62の代わりに組成物A−67を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−67、POを含む合わせガラス−67を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0314】
(実施例68)
組成物A−62の代わりに組成物A−68を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−68、POを含む合わせガラス−68を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0315】
(実施例69)
組成物A−62の代わりに組成物A−69を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−69、POを含む合わせガラス−69を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0316】
(実施例70)
組成物A−62の代わりに組成物A−70を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−70、POを含む合わせガラス−70を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0317】
(実施例71)
組成物A−62の代わりに組成物A−71を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−71、POを含む合わせガラス−71を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0318】
(実施例72)
組成物A−62の代わりに組成物A−72を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−72、POを含む合わせガラス−72を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0319】
(実施例73)
組成物A−62の代わりに組成物A−73を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−73、POを含む合わせガラス−73を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0320】
(実施例74)
組成物A−62の代わりに組成物A−74を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−74、POを含む合わせガラス−74を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0321】
(実施例75)
組成物B(PO)−3の代わりに組成物B(PO)−4を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−75、POを含む合わせガラス−75を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0322】
(実施例76)
組成物B(PO)−3の代わりに組成物B(PO)−5を使用した以外は実施例62と同様の方法により、積層体−76、POを含む合わせガラス−76を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0323】
(比較例16)
組成物A−62の代わりに組成物CA−16を使用した以外は実施例62と同様の方法により、比較例積層体−16、比較例合わせガラス−16を作製し、同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0324】
【表8】
【0325】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0326】
本発明のポリビニルアセタール組成物は、合わせガラス中間膜用途、積層セラミックバインダー用途など、柔軟なポリビニルアセタールが求められる用途で好適に使用される。また、本発明のポリビニルアセタール組成物に含まれるエステル系可塑剤又はエーテル系可塑剤は、ポリビニルアセタールと高い相溶性を有している一方で、その他の樹脂層、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマーなどに対する移行性が低い。そのため、これら樹脂層の力学強度の低下や、ヘイズの上昇が起こらず、これら樹脂層と上記ポリビニルアセタール組成物からなる層が直接積層される用途、特に高機能化合わせガラス中間膜用途などで好適に使用される。
【符号の説明】
【0327】
1 積層樹脂シート、ガラス等
2 封止材
3 太陽電池セル(結晶系)
4 太陽電池セル(薄膜タイプ)
図1
図2
図3