(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記副領域設定部は、前記位置補正情報から前記描画領域内の最大位置補正量を抽出し、前記最大位置補正量に基づき前記副領域を設定することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
前記副領域設定部は、前記位置補正情報から前記主領域内の最大位置補正量を抽出し、前記最大位置補正量に基づき前記主領域に従属する前記副領域を設定することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
前記副領域設定部は、前記位置補正情報から前記主領域周辺の位置補正量を抽出し、前記対応付け部において前記主領域内を主に描画する前記描画データストライプに対応付けられると予想されるサブフィールドに対応する領域を、前記副領域として設定することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13は、従来技術の問題点を示す図である。
図13(a)は、通常の走行ストライプと描画データストライプの関係を示す図である。
【0008】
ここで、走行ストライプとは、一回のステージ移動で描画可能な領域であり、そのストライプ幅(
図13(a)では実線矩形の短辺方向)は装置構成上決定される。基本的には電子ビームの偏向器の偏向幅で決まる。
【0009】
また、描画データストライプとは、一回のステージ移動で描画する領域に対応するデータ領域である。そのストライプ幅(
図13(a)では点線矩形の短辺方向)は、走行ストライプとの間に所定のマージンを備え、走行ストライプのストライプ幅内におさまるよう設定される。このように、走行ストライプの枠内に描画データストライプがおさまるようにすることで、描画精度を担保している。
【0010】
もっとも、例えば、電子ビーム描画装置の機械的な誤差や、ステージ上の試料の反り等に起因して、描画データ内の図形位置が、試料上に描画される際に、設計値からずれる場合が生ずる。このため、上述したようなGMCにより、描画前に描画データ内の図形の位置補正が行われる。
【0011】
図13(b)は、GMC後の走行ストライプと描画データストライプとの関係を示す図である。図のように、GMCにおける位置補正量が、走行ストライプと描画データストライプとの間のマージンよりも大きくなり、描画データストライプが走行ストライプの枠からはみ出すことが生じ得る。そうすると、はみ出した領域の図形の描画が不可能になる。また、仮に完全にはみ出さなかったとしても、図形の描画精度が劣化するおそれがある。
【0012】
上述した問題を解決するために、
図13(c)に示すように、走行ストライプの幅に対して、この走行ストライプで描画する描画データストライプの幅を十分狭く設定する方法が考えられる。すなわち、マージンを十分大きくとる方法が考えられる。
【0013】
この方法によれば、位置補正の結果、描画する図形が移動しても、十分なマージンがあるため走行ストライプの端部に図形が位置して精度が劣化するという問題が生じにくい。しかし、描画データストライプの幅を狭くするため、結果的に予定される全ての領域を描画するためのステージ移動回数が多くなり、描画のスループットが劣化するという問題がある。
【0014】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正によっても描画の精度が劣化せず、同時に、高いスループットを確保できる荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、描画領域内に複数の図形が定義されたレイアウトデータが入力され、このレイアウトデータを記憶するレイアウトデータ記憶部と、図形を試料上に描画する際に、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正情報を記憶する位置補正情報記憶部と、レイアウトデータを並列してデータ処理する際の単位領域となる複数の主領域を描画領域内に設定する主領域設定部と、位置補正情報を用いて、主領域に従属し主領域に隣接する副領域を設定する副領域設定部と、主領域と副領域に、図形を分配する図形分配部と、図形を主領域と副領域とがさらに分割されたサブフィールドに分配する図形変換部と、サブフィールドの位置を位置補正情報に基づき補正する位置補正部と、
位置が補正された前記サブフィールドが前記主領域に対応する領域内にあるか否かの判断を行い、位置が補正されたサブフィールドと、描画データストライプとの対応付けを行う対応付け部と、サブフィールドに分配された図形を荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換するショット変換部と、ショットデータを用いて試料上に順次荷電粒子ビームを照射することで描画を行う描画部とを、有することを特徴とする。
【0016】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、副領域設定部は、位置補正情報から描画領域内の最大位置補正量を抽出し、この最大位置補正量に基づき副領域を設定することが望ましい。
【0017】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、副領域設定部は、位置補正情報から主領域内の最大位置補正量を抽出し、この最大位置補正量に基づき主領域に従属する副領域を設定することが望ましい。
【0018】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、副領域設定部は、位置補正情報から主領域周辺の位置補正量を抽出し、対応付け部において主領域を主に描画する描画データストライプに対応付けられると予想されるサブフィールドに対応する領域を副領域として設定することが望ましい。
【0019】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、描画領域内に複数の図形が定義されたレイアウトデータが入力され、レイアウトデータを記憶するレイアウトデータ記憶工程と、図形を試料上に描画する際に、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正情報を記憶する位置補正情報記憶工程と、レイアウトデータを並列してデータ処理する際の単位領域となる複数の主領域を描画領域内に設定する主領域設定工程と、位置補正情報を用いて、主領域に従属し主領域に隣接する副領域を設定する副領域設定工程と、主領域と副領域に、図形を分配する図形分配工程と、図形を主領域と副領域とがさらに分割されたサブフィールドに分配する図形変換工程と、サブフィールドの位置を位置補正情報に基づき補正する位置補正工程と、
位置が補正された前記サブフィールドが前記主領域に対応する領域内にあるか否かの判断を行い、位置が補正されたサブフィールドと、描画データストライプとの対応付けを行う対応付け工程と、サブフィールドに分配された図形を荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換するショット変換工程と、ショットデータを用いて試料上に順次荷電粒子ビームを照射することで描画を行う描画工程とを、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正によっても描画の精度が劣化せず、同時に、高いスループットを確保できる荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。ただし、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでもかまわない。
【0023】
本明細書中、レイアウトデータとは、試料に描画するパターンの基データである。例えば、CADデータ等から生成され、図形等が、例えば、図形の頂点等の座標で定義されている。
【0024】
また、本明細書中、ショットとは、荷電粒子ビームの1回の照射により荷電粒子が照射される領域を意味する。
【0025】
また、本明細書中、ショットデータとは、荷電粒子ビームによる描画を行う上での最終的なデータ形式を有するデータである。
【0026】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の電子ビーム描画装置は、描画領域内に複数の図形が定義されたレイアウトデータが入力され、このレイアウトデータを記憶するレイアウトデータ記憶部と、図形を試料上に描画する際に、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正情報を記憶する位置補正情報記憶部と、を備える。そして、レイアウトデータを並列してデータ処理する際の単位領域となる複数の主領域を描画領域内に設定する主領域設定部と、上記位置補正情報を用いて、主領域に従属し主領域に隣接する副領域を設定する副領域設定部と、を備えている。そして、主領域と副領域に、複数の図形を分配する図形分配部と、図形を主領域と副領域とがさらに分割されたサブフィールドに分配する図形変換部と、サブフィールドの位置を上記位置補正情報に基づき補正する位置補正部と、を備えている。そして、位置が補正されたサブフィールドと、一回のステージ移動の描画時のデータ単位である描画データストライプとの対応付けを行う対応付け部と、サブフィールドに分配された図形を荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換するショット変換部と、を備えている。さらに、ショットデータを用いて試料上に順次荷電粒子ビームを照射することで描画を行う描画部とを、備えている。
【0027】
本実施の形態の電子ビーム描画装置は、GMCによる位置補正の前に、あらかじめGMCための位置補正情報を用いて描画データの処理領域を決めることで、GMC後にも、走行ストライプの枠を超えない描画データストライプを、描画データストライプ幅を犠牲にすることなく形成できる。したがって、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正によっても描画の精度が劣化せず、同時に、高いスループットを確保できる荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することが可能となる。
【0028】
図1は、本実施の形態の電子ビーム描画装置の概略構成図である。この電子ビーム描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。電子ビーム描画装置100は、描画部102と、この描画部102の描画動作を制御する制御部104から構成されている。電子ビーム描画装置100は、試料110に所定のパターンを描画する。
【0029】
描画部102の試料室108内に試料110を載置するステージ112が収容されている。ステージ112は、制御部104によって、X方向(紙面左右方向)、Y方向(紙面表裏方向)およびZ方向(紙面上下方向)に駆動される。試料110として、例えば、半導体装置が形成されるウェハにパターンを転写するための露光用マスクがある。また、このマスクには、例えば、まだ何もパターンが形成されていないマスクブランクスも含まれる。
【0030】
マスクブランクスは、例えば石英ガラス上に遮光膜となるクロムが塗布されている。電子ビーム描画装置のステージ112上に載置される際に、例えばレジストが塗布される。
【0031】
試料室108の上方には、電子ビーム光学系114が設置されている。電子ビーム光学系114は、電子銃116、各種レンズ118、120、122、124、126、ブランキング用偏向器128、ビーム寸法可変用偏向器130、ビーム走査用の副偏向器132、ビーム走査用の主偏向器134、及び可変成形ビームで描画するための、ビーム成形用の第1のアパーチャ136、第2のアパーチャ138などから構成されている。
【0032】
制御部104は、レイアウトデータ記憶部106、位置補正情報記憶部107、データ処理部140、制御回路150を備える。
【0033】
レイアウトデータ記憶部106は、描画するパターンの基データであるレイアウトデータが入力され、このレイアウトデータが記憶する機能を備える。レイアウトデータは描画領域内に複数の図形が定義される。レイアウトデータは例えば半導体集積回路の回路パターンである。レイアウトデータ記憶部106は、記憶媒体であれば良く、例えば、磁気ディスク等を用いることができる。
【0034】
位置補正情報記憶部107は、図形を試料上に描画する際に、図形を試料110の所定の位置に描画するための位置補正情報を記憶する機能を備える。例えば、あらかじめ測定された電子ビーム描画装置の機械的な誤差や、ステージ上の試料の反り等に起因した位置ズレ量を記憶する。この位置補正情報は、例えば、レイアウトデータの描画領域全面を所定のグリッド寸法でメッシュ状に分割した状態での、各メッシュの頂点の位置の補正すべき位置ズレ量のデータである。位置補正情報記憶部107は、記憶媒体であれば良く、例えば、磁気ディスク等を用いることができる。
【0035】
データ処理部140は、さらに、主領域設定部141、副領域設定部142、図形分配部143、図形変換部144、位置補正部145、対応付け部146、ショット変換部147を備える。データ処理部140は、レイアウトデータを電子ビーム描画装置100に固有の内部制御フォーマットデータであるショットデータへと変換する機能を有する。
【0036】
主領域設定部141は、レイアウトデータを複数の計算機で並列してデータ処理する際の単位領域となる複数の主領域を、レイアウトデータの描画領域内に設定する機能を備える。すなわち、レイアウトデータの描画領域をデータ処理のために、複数の領域に分割する。
【0037】
副領域設定部142は、位置補正情報記憶部107に記憶される位置補正情報を用いて、主領域に従属し、主領域に隣接する副領域を設定する機能を備える。この副領域は後にGMCにより位置補正された図形を、描画データストライプ内に漏れなく取り込むことを目的として設定される。
【0038】
図形分配部143(またはローカライズ処理部)は、レイアウトデータに定義された図形の集合(セルともいう)を、複数の計算機により並列処理する際の単位領域となる分散処理領域毎に分配(ローカライズ)する。分散処理領域は、例えば、1回の1方向のステージ移動で描画される範囲である描画データストライプ領域を、移動方向に対して垂直に更に細分化した領域である。
【0039】
本実施の形態においては、分散処理領域は、主領域と副領域とを併合させた領域にあたる。
【0040】
図形変換部144は、分散処理領域毎に定義されたサブフィールドに各セル内の図形を分配する。サブフィールドは、レイアウトデータの描画領域(全描画領域)を、例えば、全描画領域の左下隅を基点として、メッシュ状に分割した領域である。そのサイズは、例えば、副偏向器132の偏向幅を基準に設定される。
【0041】
位置補正部145は、各サブフィールドの位置を上記位置補正情報に基づき補正する機能を備える。この位置補正が、いわゆるGMCである。この位置補正により、図形を試料上に描画する際に、図形を試料110の所定の位置、例えば、設計上のレイアウトに対応する位置に描画することが可能となる。
【0042】
対応付け部146では、位置補正されたサブフィールドと、一回のステージ移動の描画時のデータ単位である描画データストライプとの対応付けを行う機能を備える。すなわち、位置補正後の各々のサブフィールドを、複数の描画データストライプのうち、どの描画データストライプに割り振るかを決定する。
【0043】
ショット変換部147では、各サブフィールドに分配された図形を、荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換する機能を備える。
【0044】
制御回路150は、データ処理部140で生成されたショットデータに基づき描画部102を制御する機能を備える。
【0045】
描画部102は、ショットデータを用いて試料110上に順次電子ビームを照射することで描画を行う機能を備える。
【0046】
データ処理部140、制御回路150の各機能の処理は、例えば、CPU等の演算処理デバイスや電気回路等のハードウェアを用いて実施される。或いは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせを用いて実施させても構わない。
【0047】
図1では、実施の形態を説明する上で、必要な構成部分以外については記載を省略している。電子ビーム描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0048】
次に、電子ビーム描画装置100を用いた、描画方法について
図1、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態で採用されるベクタ走査方式(2次元走査方式)及びステージ連続移動方式の描画方法の説明図である。
【0049】
制御部104での処理を説明する前に、便宜上、描画部102の動作について
図1および
図2を用いて説明する。描画部102では、制御部104で生成されたショットデータを用いて、試料110に描画する。
【0050】
実際の描画にあたっては、電子銃116から発せられる電子ビームをビーム寸法可変用偏向器130及びビーム成形用の第1のアパーチャ136、第2のアパーチャ138により、ビーム形状を可変に制御し、ベクタ走査方式およびステージ連続移動方式により描画処理する。
【0051】
まず、試料110上の描画すべきパターン202は短冊状の描画データストライプ204と呼ばれる領域に分割され、描画データストライプ204を更にサブフィールド206と呼ばれる領域に分割し、その内部を必要な部分のみ、
図1の第1のアパーチャ136、第2のアパーチャ138により成形された可変成形ビーム208を偏向してサブフィールド206に配置された図形207を描画する。1回の可変成形ビーム208の照射で照射される領域がショットに対応する。
【0052】
この時、ステージ112(
図1)を連続移動させながら描画処理が行われる。この時、副偏向器132および主偏向器134(
図1)の2段の偏向器が用いられ、サブフィールド206の位置決めは制御部104より送られる主偏向位置データに従って主偏向器134(
図1)で行い、サブフィールド206の描画は同じく制御部104より送られる副偏向位置データ、ショットサイズデータ等に従って副偏向器132で行われる。
【0053】
1つのサブフィールド206の描画が終了すると、次のサブフィールド206の描画に移る。さらに複数のサブフィールド206の集合である描画データストライプ204の描画が終了したら、X方向に連続移動していたステージ112(
図1)を、Y方向にステップ移動させる。上記処理を繰り返して各描画データストライプ領域を順次描画するようになっている。ここで、描画データストライプ204は、例えば、主偏向器134(
図1)の偏向幅で決まる短冊状の描画領域であり、サブフィールド206は、例えば、副偏向器132(
図1)の偏向幅で決まる単位描画領域である。
【0054】
データ処理部140では、上記描画部102の描画処理を実行するためのショットデータをレイアウトデータから作成する。
【0055】
次に、本実施の形態の電子ビーム描画方法について説明する。
図3は、本実施の形態の電子ビーム描画方法の工程図である。
【0056】
まず、レイアウトデータ記憶工程(S1−1)において、レイアウトデータ記憶部106に、描画するパターンの基データであるレイアウトデータが入力され、このレイアウトデータが記憶される。そして、位置補正情報記憶工程(S1−2)において、位置補正情報記憶部107に、図形を試料上に描画する際に、図形を試料110の所定の位置に描画するための位置補正情報を記憶する。
【0057】
次に、主領域設定工程(S2)において、主領域設定部141が複数の主領域を、レイアウトデータの描画領域内に設定する。すなわち、レイアウトデータの描画領域をデータ処理のために、複数の主領域に分割する。主領域は、レイアウトデータ記憶部106に記憶されるレイアウトデータを複数の計算機で並列してデータ処理する際の単位領域となる領域である。
【0058】
次に、副領域設定工程(S3)において、副領域設定部142が位置補正情報記憶部107に記憶される位置補正情報を用いて、主領域に従属する副領域を設定する。
【0059】
図4は、本実施の形態の副領域の設定方法を説明する図である。
図4(a)は、レイアウトデータの全描画領域(チップ領域)300を、M1〜M8で表わされる主領域1〜8に分割した状態を示す図である。例えば、各主領域のデータ処理の時間を、できるだけ揃えるために各主領域のデータ量が同程度になるよう分割される。
【0060】
本実施の形態においては、位置補正情報から描画領域(チップ領域)内の最大位置補正量を抽出し、この最大位置補正量に基づき副領域を設定する。
【0061】
矩形に設定される各主領域の短辺側の幅が、描画データストライプの短辺側の幅に相当する。例えば、
図4(a)では、M1が第1の描画データストライプ、M2とM3が第2の描画データストライプ、M4、M5とM6が第3の描画データストライプ、M7とM8が第4の描画データストライプに相当する。
【0062】
図4(b)、
図4(c)はそれぞれ、M5(主領域5)、M6(主領域6)に副領域を設定した状態の図である。位置補正情報記憶部107に記憶される位置補正情報は、例えば、メッシュに分割されたチップ領域のメッシュの頂点に対する位置補正量の集合である。本実施の形態では、これらの位置補正量の描画領域(チップ領域)内の最大値(最大位置補正量)を、例えば、副領域設定部142で抽出し、その値をM1〜M8各々の主領域の上下左右4辺に固定値として与えることで副領域を設定する。
【0063】
したがって、
図4(b)のM5に与えられる値d5、および、
図4(c)のM6に与えられる値d6もそれぞれ等しく上記最大値となる。
【0064】
次に、図形分配工程(S4)において、図形分配部143が分散処理領域となる各々の主領域と副領域とを併合した領域に、レイアウトデータ中の複数の図形を分配する。
【0065】
次に、図形変換工程(S5)において、図形変換部144が分散処理領域毎に定義されたサブフィールドに各セル内の図形を分配する。
【0066】
次に、位置補正工程(S6)において、位置補正部145が各サブフィールドの位置を上記位置補正情報に基づき補正する。この補正がいわゆるGMCである。
【0067】
次に、対応付け工程(S7)において、対応付け部146が、位置が補正されたサブフィールドと、一回のステージ移動の描画時のデータ単位である描画データストライプとの対応付けを行う。
【0068】
図5は、本実施の形態の電子ビーム描画方法の説明図である。
図5(a)が図形分配工程、
図5(b)が図形変換工程、
図5(c)は位置補正工程および対応付け工程の説明図である。
【0069】
図5(a)に示すように、図形分配工程では主領域と副領域が併合した分散処理領域400に、各々に図形が定義されるセルA、セルB、セルCが分配される。ここで、分散領域400中、便宜上、主領域に対応する領域を400a、副領域に対応する領域を400bと符号付けする。仮に、主領域に対応する領域400aだけを分散領域とした場合には分配されないセルCも、ここでは分散領域400に分配されることがわかる。
【0070】
図5(b)に示すように、図形変換工程では、分散処理領域400がサブフィールド(SF)に分割される。そして、各サブフィールドにセルA、セルB、セルC内の図形を分配する。サブフィールド(SF)のうち、主領域に対応する領域400aのサブフィールドをSFa、副領域に対応する領域400bのサブフィールドをSFbと符号付けする。セルC内の図形は、図中右下方のサブフィールドSFbに分配されることがわかる。
【0071】
図5(c)に示すように、位置補正工程では各サブフィールドの位置を、位置補正情報に基づき補正する。すなわち、位置ズレ量分だけ補償されるよう移動される。
【0072】
対応付け工程において、位置が補正されたサブフィールドと、描画データストライプとの対応付けが行われる。この図では、描画データストライプは、主領域に対応する領域(破線で囲まれる領域)400aと同一であるものとする。
【0073】
対応付け工程においては、移動後に主領域に対応する領域(破線で囲まれる領域)400a内に入るサブフィールドを、この描画データストライプに対応づけるものとする。サブフィールドが主領域に対応する領域400a内にあるか否かの判断は、例えば、図中サブフィールドの左下隅の角が、領域400a内にあるか否かで判断する。
【0074】
図5(c)から明らかなように、図形変換工程でセルC内の図形が配分されていた図中右下方のサブフィールドSFb(図中太枠で囲まれるサブフィールドSFb)が、破線で囲まれる描画データストライプに対応付けられていることが分かる。
【0075】
ショット変換工程(S8)において、ショット変換部147が、各サブフィールドに分配された図形を、荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換する。
【0076】
そして、描画工程(S9)において、描画部102は、ショットデータを用いて試料110上に順次電子ビームを照射することで描画を行う。
【0077】
図6は、本実施の形態の電子ビーム描画方法の作用の説明図である。
図6(a)はGMCによる位置補正前の描画データストライプと、サブフィールドの関係を示す図、
図6(b)はGMCによる位置補正後の描画データストライプと、サブフィールドの関係を示す図である。
【0078】
仮に、
図6(a)のサブフィールド毎に数字で表記したように、GMC前に、描画データストライプとサブフィールドの対応付けがなされていたとする。そうすると、
図6(b)の×印で示すように、GMC後には、いくつかのサブフィールドが、対応付けられていた描画データストライプの枠外に出てしまう事態が生ずる。そうすると、このようなサブフィールドに割り当てられていた図形の描画精度が劣化するおそれがある。
【0079】
図7は、本実施の形態の電子ビーム描画方法の作用の説明図である。本実施の形態においては、サブフィールドの位置補正後、すなわち、GMC後にサブフィールドと描画データストライプとの対応付けを行う。したがって、
図7(b)に示すように、描画データストライプの枠外に出たサブフィールド(○付きの数字が付されたサブフィールド)は、そのサブフィールドがあらたに入った描画データストライプに対応づけられる。そして、その描画データストライプで描画される。これにより、上述の描画精度劣化問題を解決している。
【0080】
図8は、本実施の形態の電子ビーム描画方法の作用の説明図である。サブフィールドの位置補正後にサブフィールドと描画データストライプとの対応付けを行なったとしても、描画データストライプにあらたに入ってくるサブフィールドに本来描画すべき図形が配分されていない場合は、この図形が描画されないという問題が生ずる。
【0081】
図8は、主領域と副領域を併合した領域を分散処理領域400とした
図5に対し、分散処理領域を主領域に対応する領域400aのみにした場合の、図形分配工程〜対応付け工程を説明する図である。副領域がないために、描画データストライプにあらたに入ってくるサブフィールド(
図8(c)中、ハッチングされるサブフィールド)に、セルC中の図形が定義されていないことがわかる。
【0082】
本実施の形態においては、図形分配工程の前に、主領域に従属し主領域に隣接する副領域を設定して、分散処理領域に加える。この処理により、位置補正後に、描画データストライプにあらたに入ってくるサブフィールドにも図形が配分されるようにしている。
【0083】
以上、本実施の形態では、サブフィールドの位置補正後にサブフィールドと描画データストライプとの対応付けをおこなうため、サブフィールドの位置補正によっても描画の精度が劣化しない。また、サブフィールドの位置補正後にサブフィールドと描画データストライプとの対応付けをおこなうため、走行ストライプと描画データストライプのマージンを小さくすることが可能である。そして、副領域を設定することにより、描画データストライプに必要な図形データが、対応付け後の描画データストライプにも配分されることを保証している。よって、本実施の形態によれば、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正によっても描画の精度が劣化せず、同時に、高いスループットを確保できる荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することが可能となる。
【0084】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、副領域の設定方法以外については、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0085】
本実施の形態においては、副領域設定工程において、副領域設定部は、位置補正情報から各主領域内の最大位置補正量を抽出し、この最大位置補正量に基づき各主領域に従属する各副領域を設定する。
【0086】
図9は、本実施の形態の副領域の設定方法を説明する図である。
図9(a)は、レイアウトデータの全描画領域(チップ領域)300を、M1〜M8で表わされる主領域1〜8に分割した状態を示す図である
【0087】
図9(b)、
図9(c)はそれぞれ、M5(主領域5)、M6(主領域6)に副領域を設定した状態の図である。位置補正情報記憶部107に記憶される位置補正情報は、例えば、メッシュに分割されたチップ領域のメッシュの頂点に対する位置補正量の集合である。本実施の形態では、これらの位置補正量の、各主領域内における最大値(最大位置補正量)を、例えば、副領域設定部142で抽出し、その値をM1〜M8各々の主領域の上下左右4辺に与えることで副領域を設定する。
【0088】
したがって、
図9(b)のM5に与えられる値d5は、M5内における最大位置補正量であり、
図9(c)のM6に与えられる値d6は、M6内における最大位置補正量である。
【0089】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と比較して、主領域毎に副領域の大きさが最適化される。したがって、不要に副領域の大きさが大きくなることでデータ処理時間が増大し、スループットが悪化することを抑制できる。
【0090】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、副領域の設定方法以外については、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0091】
本実施の形態においては、副領域設定工程において、副領域設定部は、位置補正情報から主領域周辺の位置補正量を抽出し、対応付け部において主領域内の図形を主に描画する描画データストライプに対応付けられると予想されるサブフィールドに対応する領域を副領域として設定する。
【0092】
図10は、本実施の形態の副領域の設定方法を説明する図である。
図10(a)は、レイアウトデータの全描画領域(チップ領域)300を、M1〜M8で表わされる主領域1〜8に分割した状態を示す図である
【0093】
図10(b)は、M5(主領域5)に副領域を設定した状態の図である。位置補正情報記憶部107に記憶される位置補正情報は、例えば、メッシュに分割されたチップ領域のメッシュの頂点に対する位置補正量の集合である。
【0094】
本実施の形態では、主領域周辺の位置補正量を抽出し、後にサブフィールドをGMCにより位置補正する際に、主領域に対応する描画データストライプに移動してくると予想さえるサブフィールドを含む領域を副領域に設定する。
図10(b)では、副領域A5a、副領域A5bの2つの副領域が設定されている。場合によっては、副領域がまったく設定されない場合も、3つ以上設定される場合もあり得る。
【0095】
なお、第1および第2の実施の形態と同様、主領域と副領域を併合した領域を分散処理領域として扱う。
【0096】
本実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態の場合と比較して、さらに主領域毎に副領域の大きさが最適化される。したがって、不要に副領域の大きさが大きくなることでデータ処理時間が増大し、スループットが悪化することを一層抑制できる。
【0097】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、主領域と副領域を別個の分散処理領域として扱い、サブフィールドの位置補正の前に、2つの領域のデータを併合すること以外については、第3の実施の形態と同様である。したがって、第3の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0098】
図11は、本実施の形態の副領域の設定方法を説明する図である。
図11(b)に示すように、主領域と副領域をそれぞれ別個の分散処理領域として扱う。
【0099】
図12は、本実施の形態の電子ビーム描画方法の工程図である。図に示すように、図形変換工程(S5)と、位置補正工程(S6)との間に、主領域と副領域のデータを併合する主副併合工程(S10)設けられる。
【0100】
本実施の形態によっても、第1および第2の実施の形態の場合と比較して、さらに主領域毎に副領域の大きさが最適化される。したがって、不要に副領域の大きさが大きくなり、データ処理時間が増大することでスループットが悪化することを一層抑制できる。
【0101】
なお、本実施の形態においては、主領域と副領域に同一のセルが抽出される場合があるので、抽出されるセルの論理和(OR)をとり、セルの多重配置を防止する処理が必要となる。
【0102】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、描画対象となる試料110が、マスクブランクスではなく、PSM(Phase Shift Mask)の1層目がパターニングされたマスクであること以外については、基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0103】
試料110がPSM(Phase Shift Mask)の1層目がパターニングされたマスクである場合、2層目の、例えばシフター材料をパターニングする場合を例にする。この場合、描画する2層目の図形の位置補正として、例えば、1層目のパターニングの際のエッチング等のプロセス起因の位置ズレの補正が要求される場合がある。
【0104】
本実施の形態においては、PSMの1層目が描画された後、上記プロセス起因の位置ズレ量も含めて測定を行い、位置補正情報記憶部107に位置情報として記憶する。
【0105】
本実施の形態によれば、描画前の試料に、例えば、PSMのプロセス起因等のズレがあった場合であっても、GMCによりこのズレに対する位置補正を行う。このような場合も、図形を試料の所定の位置に描画するための位置補正によっても描画の精度が劣化せず、同時に、高いスループットを確保できる荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することが可能となる。
【0106】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0107】
例えば、試料として、マスク、マスクブランクス、PSMマスク以外の試料についても適用が可能である。
【0108】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【0109】
例えば、実施の形態においては、2段の偏向器を用いたモデルについて説明したが、3段以上の偏向器が搭載された電子ビーム描画装置においても本発明を適用することが可能である。