(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715859
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】保護膜被覆方法及び保護膜被覆装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-60386(P2011-60386)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-195544(P2012-195544A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−207984(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0059620(US,A1)
【文献】
特開2004−188475(JP,A)
【文献】
特開2010−125351(JP,A)
【文献】
特開2010−93189(JP,A)
【文献】
特開2009−49339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/78
H01L 21/312−21/32
H01L 21/47 −21/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハをリング状フレームに装着された保護テープに貼着した状態で保持するスピンナーテーブルを備えた保護膜形成装置を用い、ウェーハの表面に液状樹脂を被覆して保護膜を形成する保護膜形成方法であって、
該スピンナーテーブルで該リング状フレームを保持するフレーム保持工程と、
該スピンナーテーブルで該ウェーハの表面を上側に向けて保持するウェーハ保持工程と、
該リング状フレームを該ウェーハに対して相対的に上昇させて該リング状フレームと該ウェーハとですり鉢形状の凹部を形成する凹部形成工程と、
該凹部形成工程後、該スピンナーテーブルに保持されたウェーハの表面を覆う水の層を形成する水層形成工程と、
該水の層におけるウェーハの中心部に液状樹脂を滴下する液状樹脂滴下工程と、
該スピンナーテーブルを回転させ該ウェーハの回転に伴って水の層に働く遠心力により該水の層を飛散させるとともに滴下した液状樹脂を拡張させて該ウェーハの表面に樹脂被膜を被覆する樹脂被膜被覆工程と、
を含む保護膜形成方法。
【請求項2】
前記樹脂被膜被覆工程では、前記フレームを前記ウェーハに対して相対的に下降させることで前記すり鉢形状をフラット形状に戻すことにより、水の層の拡張に伴って滴下した液状樹脂を拡張させて該ウェーハの表面に樹脂被膜を形成する
請求項1に記載の保護膜形成方法。
【請求項3】
ウェーハの表面に液状樹脂を被覆して保護膜を形成する保護膜被覆装置であって、
リング状フレームに装着された保護テープに貼着された状態のウェーハを保持するウェーハ保持手段と、該リング状フレームを保持するリング状フレーム保持手段とを備えたスピンナーテーブルと、
該スピンナーテーブルを回転駆動する回転駆動手段と、
該スピンナーテーブルに保持されたウェーハに水を供給する水供給手段と、
該スピンナーテーブルに保持されたウェーハに液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段と、
該リング状フレーム保持手段と該ウェーハ保持手段とを相対的に上下動作させる上下動手段と、
を具備している樹脂被膜被覆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ウェーハの表面に樹脂被膜を被覆する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウェーハは、分割予定ラインに沿ってレーザー照射が行われて個々のデバイスに分割され、各種電子機器等に利用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
シリコン等から構成されたウェーハにレーザー光線を照射すると、デブリが飛散してウェーハの表面に付着し、デバイスの品質を低下させるという問題があることから、ウェーハの表面にポリビニルアルコール(PVA)等から構成される液状樹脂を被覆して保護膜を形成し、デブリが飛散しても保護膜によってデバイスの表面を保護して品質低下を防止する技術が本出願人によって提案され、実用に供されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
ところが、液状樹脂とウェーハとは親和性が低いため、例えば直径300mmのウェーハの表面に厚さ4μmの保護膜を形成する場合には、保護膜として被覆されるPVA等の液状樹脂は0.3cc程度あれば足りるにもかかわらず、実際には19〜30ccの液状樹脂が使用され、そのうちの98〜99%近くが廃棄されており、極めて不経済であるという問題がある。
【0005】
そこで、かかる問題を解消するために、ウェーハの表面を覆う水の層を形成し、PVA等の液状樹脂を滴下する方法により、PVA等の液状樹脂を効率よく被覆できる方法及び装置が提案され、実用に供されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−120334号公報
【特許文献2】特開2004−188475号公報
【特許文献3】特開2010−125351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ウェーハの撥水性や装置の傾きに起因して、ウェーハの表面を覆う水の層の形成に100秒以上に時間を要しているという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点にかんがみなされたもので、PVA等の液状樹脂をウェーハに効率よく被覆できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、ウェーハをリング状フレームに装着された保護テープに貼着した状態で保持するスピンナーテーブルを備えた保護膜形成装置を用い、ウェーハの表面に液状樹脂を被覆して保護膜を形成する保護膜形成方法に関するもので、以下の各工程により構成される。
(1)スピンナーテーブルでリング状フレームを保持するフレーム保持工程、
(2)スピンナーテーブルでウェーハの表面を上側に向けて保持するウェーハ保持工程、
(3)リング状フレームをウェーハに対して相対的に上昇させてリング状フレームとウェーハとですり鉢形状の凹部を形成する凹部形成工程、
(4)凹部形成工程後、スピンナーテーブルに保持されたウェーハの表面を覆う水の層を形成する水層形成工程、
(5)水の層におけるウェーハの中心部に液状樹脂を滴下する液状樹脂滴下工程、
(6)スピンナーテーブルを回転させウェーハの回転に伴って水の層に働く遠心力により水の層を飛散させるとともに滴下した液状樹脂を拡張させてウェーハの表面に樹脂被膜を被覆する樹脂被膜被覆工程。
【0010】
上記保護膜形成方法において、樹脂被膜被覆工程では、フレームをウェーハに対して相対的に下降させることですり鉢形状をフラット形状に戻すことにより、水の層の拡張に伴って滴下した液状樹脂を拡張させてウェーハの表面に樹脂被膜を形成することが望ましい。
【0011】
第二の発明は、上記保護膜形成方法の実施に好適な保護膜被覆装置に関するもので、リング状フレームに装着された保護テープに貼着された状態のウェーハを保持するウェーハ保持手段と、リング状フレームを保持するリング状フレーム保持手段とを備えたスピンナーテーブルと、スピンナーテーブルを回転駆動する回転駆動手段と、スピンナーテーブルに保持されたウェーハに水を供給する水供給手段と、スピンナーテーブルに保持されたウェーハに液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段と、リング状フレーム保持手段とウェーハ保持手段とを相対的に上下動作させる上下動手段とを具備するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る樹脂被膜被覆工程では、リング状フレームに装着された保護テープにウェーハを貼着した状態のリング状フレームをウェーハに対して相対的に上昇させてリング状フレームとウェーハとですり鉢形状の凹部を形成し、その凹部に水を供給してウェーハの表面に水の層を形成した後、ウェーハの中心部に液状樹脂を滴下し、スピンナーテーブルを回転させて遠心力により水の層を飛散させるとともに滴下した液状樹脂を拡張させてウェーハの表面に樹脂被膜を被覆するため、液状樹脂を効率よくウェーハの表面全体に行き渡らせて被覆することができる。また、滴下した液状樹脂のほとんどがウェーハの表面に被覆されるため、極めて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】保護テープを介してリング状フレームに支持されたウェーハをスピンナーテーブルに保持した状態を略示的に示す断面図である。
【
図3】リング状フレームを上昇させてウェーハの表面と保護テープとで凹部を形成した状態を略示的に示す断面図である。
【
図4】凹部に水を供給してウェーハの表面上に水の層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【
図5】水の層の上に液状樹脂を滴下する状態を略示的に示す断面図である。
【
図6】スピンナーテーブルを回転させて水の層を飛散させ、ウェーハの表面に樹脂被膜を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1 装置構成
図1に示す保護膜被覆装置1は、ウェーハの表面に液状樹脂を被覆して保護膜を形成する装置であり、回転駆動手段2によって駆動されて回転可能なスピンナーテーブル3を備えている。
【0015】
スピンナーテーブル3に保持されるウェーハWは、リング状フレームFの開口部を塞ぐように装着された保護テープTに貼着される。スピンナーテーブル3は、リング状フレームFに装着された保護テープTに貼着された状態のウェーハWを保持するウェーハ保持手段4と、保護テープTを介してウェーハWと一体化されたリング状フレームFを保持するリング状フレーム保持手段5とから構成されている。
【0016】
スピンナーテーブル3の周囲には、スピンナーテーブル3のウェーハ保持手段4に保持されたウェーハWに水を供給する水供給手段6が配設されている。水供給手段6は、図示しない水源に連通し旋回可能な基部60と、基部60から水平方向に延びるとともに先端部が下方に湾曲した噴出部61とから構成される。
【0017】
スピンナーテーブル3の周囲には、スピンナーテーブル3のウェーハ保持手段4に保持されたウェーハWに液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段7が配設されている。液状樹脂供給手段7は、図示しない液状樹脂のタンクに連通し旋回可能な基部70と、基部70から水平方向に延びるとともに先端部が下方に湾曲した滴下部71とから構成される。
【0018】
ウェーハ保持手段4は、保護テープTを介してウェーハWを吸引保持することができる保持テーブル40と、保持テーブルの下端に連結された軸部41と、軸部41を昇降させる昇降駆動部42とを備えており、軸部41と昇降駆動部42とで保持テーブル40を上下動作させる上下動手段43が構成されている。
図2に示すように、保持テーブル40は、図示しない吸引源に連通する吸引部40aを備えている。
図1の昇降駆動部42及び軸部41としては、例えばエアシリンダ及びピストンロッドを使用することができ、上下動手段43は、リング状フレーム保持手段5とウェーハ保持手段4とを相対的に上下動作させるための手段として機能する。なお、
図2以降では、上下動手段43は図示していない。
【0019】
図2に示すように、リング状フレーム保持手段5は、リング状フレームFを下方から支持する支持台50と、支持台50に取り付けられリング状フレームFを上方から押圧する押圧部51と、支持台50の下端に連結された複数の軸部52と、軸部52を昇降させる複数の昇降駆動部53とを備えており、軸部52と昇降駆動部53とで支持台50を上下動作させる上下動手段54を構成している。押圧部51は、エアの注入などによって回転軸510を中心として回転することができる。また、昇降駆動部53及び軸部52としては、例えばエアシリンダ及びピストンロッドを使用することができる。上下動手段43は、リング状フレーム保持手段5とウェーハ保持手段4とを相対的に上下動作させるための手段として機能する。
【0020】
図2に示すように、スピンナーテーブル3を回転駆動する回転駆動手段2は、モータ20と、モータ20によって回転駆動される回転軸21と、回転軸21の回転に伴って回転する基台22とから構成され、基台22には昇降駆動部53が固定されている。モータ20が回転軸21を回転させると、基台22も回転し、ウェーハ保持手段4及びフレーム保持手段5が回転する構成となっている。基台22は、平面部220と、その周縁部から下方に垂下する垂下部221とから構成されている。
【0021】
スピンナーテーブル3の下方には、受け手段8が配設されている。受け手段8は、基台22を構成する垂下部221の内周側に位置する内側壁80と、垂下部221よりも外周側に位置する外側壁81と、内側壁80の下端部と外側壁81の下端部とをつなぐ底板82とから構成されている。
【0022】
2 保護膜被覆方法
次に、ウェーハWの表面W1に保護膜を被覆する場合における保護膜被覆装置1の動作について説明する。
図2に示すように、保護テープTの外周部にリング状フレームFを貼着してリング状フレームFの開口部を保護テープTによって塞ぎ、その塞がれた部分の保護テープTにウェーハWの裏面W2を貼着する。このようにして、ウェーハWが保護テープTを介してリング状フレームFと一体化されて支持された状態となり、ウェーハWの表面W1が上側に向いて露出した状態となる。
【0023】
(1)フレーム保持工程
図2に示すように、保護テープTを介してウェーハWと一体化されたリング状フレームFをスピンナーテーブル3のフレーム保持手段5の支持台50に載置する。そして、押圧部51を支持台50に向けて(
図2における矢印Aの方向に)回転させ、支持台50と押圧部51とでリング状フレームFを挟持して保持する。
(2)ウェーハ保持工程
図2に示すように、保護テープTを介してリング状フレームFと一体化されたウェーハWをスピンナーテーブル3のウェーハ保持手段4の保持テーブル40に載置する。そして、吸引部40aに負圧を作用させることにより、ウェーハWの表面W1が上側になって露出した状態で、保護テープTを介してウェーハWの裏面W2側を吸引保持する。なお、フレーム保持工程及びウェーハ保持工程は、どちらを先に行ってもよいし、両工程を同時に行ってもよい。
(3)凹部形成工程
フレーム保持工程及びウェーハ保持工程の後、リング状フレームFをウェーハWに対して相対的に上昇動作させる。具体的には、
図3に示すフレーム保持手段5の上下動手段54が支持台50を上昇させるか、ウェーハ保持手段4の上下動手段43が保持テーブル40を下降させるか、または、上下動手段54が支持台50を上昇させるとともに上下動手段43が保持テーブル40を下降させることで、フレーム保持手段5とウェーハ保持手段4とを相対的に上下動させる。このようにしてリング状フレームFをウェーハWに対して相対的に上昇させると、ウェーハWとフレームFとの間に高低差が生じるとともに、保護テープTによって斜面90が形成される。そして、ウェーハWの表面W1を底面91とし、この底面91と斜面90とで、すり鉢形状の凹部9が形成される。
【0024】
(4)水層形成工程
凹部形成工程の後、
図4に示すように、水供給手段6を旋回させ、噴出部61をスピンナーテーブル3に保持されたウェーハWの上方に移動させ、噴出部61から水610を吐出させる。そうすると、すり鉢状の凹部9に水が溜まり、ウェーハWの表面W1を覆う水の層61aが形成される。
【0025】
(5)液状樹脂滴下工程
水層形成工程の後、水供給手段6の噴出部61をウェーハWの上方から退避させ、
図5に示すように、液状樹脂供給手段7を旋回させて滴下部71をウェーハWの中心部の上方に移動させる。そして、その状態で滴下部71から液状樹脂710を滴下する。例えば、ウェーハWの直径が300mmであり、4μmの厚さの樹脂を被覆しようとする場合は、2cc程度の液状樹脂710を滴下する。液状樹脂710としては、例えば粘度が50〜70センチポアズのポリビニルアルコールを使用することができる。滴下された液状樹脂710は、その粘度により、水層61aの上に滞留する。
【0026】
(6)樹脂被膜被覆工程
液状樹脂滴下工程の後、
図6に示すように、リング状フレーム保持手段5をウェーハ保持手段4に対して相対的に下降させることにより、すり鉢状の凹部9が形成されていない状態、すなわちウェーハWとリング状フレームFとの間に段差がなくなり保護テープTが水平状となったフラット形状に戻し、スピンナーテーブル3を回転させる。そうすると、ウェーハWの回転に伴って水の層61aに遠心力が働き、その遠心力によって水の層61aを形成していた水61bが外周側に飛散するとともに、滴下した液状樹脂710が、水平方向外周側に拡張されてウェーハWの表面W1の一面に行き渡り、樹脂被膜71aがウェーハWの表面W1の上に形成される。
【0027】
以上のように、リング状フレームFをウェーハに対して相対的に上昇させて凹部を形成し、凹部に水を供給してウェーハの表面上に水の層を形成し、その上から液状樹脂を滴下した後、ウェーハを回転させて水の層を飛散させて液状樹脂をスピンコートすることにより、ウェーハの表面に効率よく樹脂被膜を被覆することができる。
【符号の説明】
【0028】
1:保護膜被覆装置
2:回転駆動手段
20:モータ 21:回転軸
22:基台 220:平面部 221:垂下部
3:スピンナーテーブル
W:ウェーハ W1:表面 W2:裏面
T:保護テープ
F:リング状フレーム
4:ウェーハ保持手段
40:保持テーブル 40a:吸引部
41:軸部 42:昇降駆動部 43:上下動手段
5:リング状フレーム保持手段
50:支持台 51:押圧部 510:回転軸
52:軸部 53:昇降駆動部 54:上下動手段
6:水供給手段 60:基部
61:噴出部 610:水 61a:水の層
7:液状樹脂供給手段 70:基部 71:滴下部
8:受け手段 80:内側壁 81:外側壁 82:底板
9:凹部 90:斜面 91:底面