特許第5716091号(P5716091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5716091マイクロリソグラフィ投影露光装置のマルチファセットミラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716091
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィ投影露光装置のマルチファセットミラー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150423BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150423BHJP
   G02B 7/198 20060101ALI20150423BHJP
   G02B 26/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01L21/30 515D
   H01L21/30 531A
   G03F7/20 503
   G02B7/198
   G02B26/02 E
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-525144(P2013-525144)
(86)(22)【出願日】2010年8月25日
(65)【公表番号】特表2013-541829(P2013-541829A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2010005195
(87)【国際公開番号】WO2012025132
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2013年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ハウフ
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−351154(JP,A)
【文献】 特開2009−004775(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/091900(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20− 7/24、 9/00− 9/02
G02B 26/00− 26/08
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のミラーファセットユニット(34)を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置のマルチファセットミラーであって、各ミラーファセットユニットは、
a)ミラー部材(32)であり、
ミラー本体(40)、
該ミラー本体(40)の第1端部に設けた反射コーティング(44)、及び
前記第1端部の反対側に配置した前記ミラー本体(40)の第2端部に設けた作動面(50)
を備えたミラー部材(32)と、
b)傾斜軸(52)を規定する前記ミラー部材(32)用の軸受(54)と、
)静止部材(70)と、
d)前記ミラー部材(32)を前記傾斜軸(52)に対して傾斜させるよう構成され、
接触面(80)、
昇降方向(Z)に沿って前記作動面(50)を動かすよう構成した昇降部材(74)であり、該昇降部材(74)の第1動作状態では、前記作動面(50)が少なくとも主に前記静止部材(70)に載り、前記昇降部材(74)の第2動作状態では、前記作動面(50)が少なくとも主に前記接触面(80)に載る昇降部材(74)、及び
該昇降部材(74)が前記第2動作状態にある間だけ前記接触面(80)を変位させるよう構成した変位部材(76、78)
を備えたアクチュエータ(72)と
を備えたマルチファセットミラー。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記昇降部材(72)及び前記変位部材(76、78)を、いずれも相互に同期した振動運動を行うよう構成したマルチファセットミラー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記ミラー本体(40)は、前記反射コーティング(44)を施した基板(42)と、前記作動面(50)を形成した板(48)と、前記基板(42)を前記板(48)に接続する棒(46)とを備えるマルチファセットミラー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記作動面(50)は凸曲面であるマルチファセットミラー。
【請求項5】
請求項4に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記作動面(50)は、前記傾斜軸(52)に対して垂直な平面で、曲率中心が前記傾斜軸(52)上に位置する円弧プロファイルを有するマルチファセットミラー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記昇降部材(72)及び前記変位部材(74、76)をピエゾスタックにより形成したマルチファセットミラー。
【請求項7】
請求項6に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記スタックを重ねて配置して多軸ピエゾコンポーネントを形成し、前記接触面(80)を前記多軸ピエゾコンポーネントに形成したマルチファセットミラー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記昇降部材(72)が前記第1動作状態にある場合に前記作動面(50)を前記静止部材(70)に押し当てる予圧力を加えるよう構成した予圧デバイス(60)を備えたマルチファセットミラー。
【請求項9】
請求項8に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記予圧デバイス(60)は、弾性部材(90)又は制御可能な圧力部材(60a、60b)を備えるマルチファセットミラー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記静止部材(70)は、前記変位部材(74、76)を少なくとも部分的に包囲するマルチファセットミラー。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマルチファセットミラーにおいて、前記昇降部材(72)を前記静止部材(70)に組み込んだマルチファセットミラー。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のマルチファセットミラーを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のマルチファセットミラーに関する。当該ミラーは、多くの場合、例えば次世代EUV装置の照明系で用いられる。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ(フォトリソグラフィ又は単にリソグラフィとも称する)は、集積回路、液晶ディスプレイ、及び他の微細構造デバイスの製造技術である。マイクロリソグラフィプロセスをエッチングプロセスと共に用いて、基板、例えばシリコンウェーハ上に形成した薄膜積層体にパターンを作製する。製造の各層において、最初に、電磁放射線に対する感度の高い材料であるフォトレジストでウェーハをコーティングする。次に、投影露光装置においてフォトレジストを載せたウェーハにマスクを通して投影光を当てる。マスクは、フォトレジスト上に投影される回路パターンを含む。露光後、フォトレジストを現像して、マスクに含まれた回路パターンに対応する像を生成する。続いて、エッチングプロセスにより回路パターンをウェーハ上の薄膜積層体に転写する。最後に、フォトレジストを除去する。このプロセスを異なるマスクで繰り返すことで、多層微細構造コンポーネントが得られる。
【0003】
投影露光装置は、概して、照明系と、マスクを位置合わせするマスクアライメントステージと、投影対物系(「レンズ」と称する場合もある)と、フォトレジストでコーティングしたウェーハを位置合わせするウェーハアライメントステージとを備える。投影対物系は、照明系によりマスク上で照明される回路パターンを、通常は縮小してフォトレジストに結像する。
【0004】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の開発における主な目的の1つは、ウェーハ上にリソグラフィで画定する形体の寸法の小型化を可能にすることである。形体が小さければ集積密度が高くなり、これは概して、当該装置を用いて作製される微細構造コンポーネントの性能に好ましい影響を及ぼす。
【0005】
リソグラフィで画定できる形体の最小サイズは、投影光の波長に概ね比例する。したがって、上記装置の製造業者は、使用投影光の短波長化に努めている。現在用いられている最短波長は、248nm、193nm、及び157nmであるので、深紫外(DUV)又は真空紫外(VUV)スペクトル域にある。
【0006】
次世代の市販装置は、極紫外(EUV)スペクトル域にある約13.4nmというさらにより短い波長を有する投影光を用いる。EUV光に対して透明な光学材料で利用可能なものがないので、当該装置でレンズ又は他の屈折光学素子を用いることは不可能である。その代わりに、当該装置の光学系は、カトプトリックでなければならず、これは全光学素子(マスクを含む)が反射性でなければならないことを意味する。
【0007】
EUV投影露光装置の照明系は、通常は1つ又は複数のマルチファセットミラーを備える。マルチファセットミラーは、平坦又は湾曲反射面をそれぞれが有する複数のミラー部材(ミラーファセットと称する場合がある)を備える。場合によっては、EUV照明系は、照明系の瞳面における強度分布の決定に用いられる1つのマルチファセットミラーを備える。この強度分布はさらに、EUV投影光がマスクに当たる方向を決定する。これらの方向を変えたい場合、マルチファセットミラーのミラー部材を傾斜させる必要がある。多くの場合、別のマルチファセットミラーを用いて、マスクを共通して照明する複数の二次光源を生成する。原理上、投影対物系において、例えば瞳面内の又は瞳面に密接した位置で、マルチファセットミラーを用いることもできる。
【0008】
マルチファセットミラーには、アクチュエータを用いて個別に調整できるミラー部材を備えるものがある。このようなマルチファセットミラーは、特許文献1に記載されている。この従来技術のマルチファセットミラーの各ミラー部材は、少なくとも概ね切断球形を有する基板を有する。この切断は、反射コーティングを施す平坦又は湾曲領域を画定する。基板は、球形基板の対称軸と一致する長手方向軸を有する作動棒に接続される。マルチファセットミラーの支持板に、球形基板用の複数のソケットが設けられる。作動棒は、ソケットを貫通して支持板の底面から突出する。作動棒のこの突出部は、作動棒を横方向に動かすよう構成したアクチュエータに接続される。作動棒の自由端の横変位が、ミラー部材全体の傾斜運動を引き起こす。
【0009】
特許文献2は、レンズの円周に沿って均等に分配された3つのアクチュエータ部材を備えるレンズ用アクチュエータを記載している。各アクチュエータ部材は、重ねて配置した3つのピエゾスタックを備える。1つのスタックは、1方向に沿ってその長さを変えることができ、他の2つのスタックは、2つのさらに他の方向に沿って剪断変形を行うことができる。これらの方向全てが相互に直交する場合、レンズを任意の方向に沿って動かし、特定の傾斜軸に対して傾斜させることもできる。
【0010】
特許文献3は、マルチファセットミラーのミラー部材を傾斜させるための超音波変換器の使用を記載している。
【0011】
上記マルチファセットミラーのミラー部材の密度が非常に高い場合、単一のアクチュエータを収容するのに利用可能な体積が非常に小さくなる。特に、可能な傾斜角の範囲が大きい場合、(少なくとも概ね)ミラー基板の外周により横方向に囲まれた体積内で作動棒の片側にアクチュエータを配置するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国出願公開第2005/0030653号明細書
【特許文献2】米国出願公開第2009/0225297号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/037476号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、ミラー部材を傾斜させるアクチュエータが非常に小さな横寸法を有することによりミラー部材を高密度実装できる、マイクロリソグラフィ投影露光装置のマルチファセットミラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明の第1態様によれば、複数のミラーファセットユニットを備えるマルチファセットミラーにより達成される。各ミラーファセットユニットは、ミラー本体と、ミラー本体の第1端部に設けた反射コーティングと、第1端部の反対側に配置したミラー本体の第2端部に設けた作動面とを備えたミラー部材を備える。ミラーファセットユニットは、傾斜軸を規定するミラー部材用の軸受と、ミラー部材の非運動時に作動面が載る静止部材(rest member)と、アクチュエータとをさらに備える。アクチュエータは、ミラー部材を傾斜軸に対して傾斜させるよう構成され、接触面及び昇降部材を備える。昇降部材は、昇降方向に沿って作動面を動かすよう構成される。昇降部材の第1動作状態では、作動面が少なくとも主に静止部材に載る。昇降部材の第2動作状態では、作動面が少なくとも主に接触面に載る。アクチュエータは、昇降部材が第2動作状態にある間だけ昇降方向に対して0°以外の角度を形成する横方向に沿って接触面を変位させるよう構成した変位部材をさらに備える。
【0015】
昇降部材及び変位部材の両方を、相互に同期した振動運動を行うよう構成した場合、ミラー部材を大きな傾斜角で非常に迅速に傾斜させることが可能である。
【0016】
本発明は、単一のアクチュエータに利用可能な体積に関する厳しい制約を満たすことができるのが、傾斜運動を複数の小さなステップに分割した場合のみであるという認識に基づく。その場合、これらのステップそれぞれに小さな変位が伴う結果として、アクチュエータのどの部分も、全傾斜プロセス中にミラー部材が行うのと同じ大きな運動を行う必要がない。
【0017】
大きな運動を一連の小さなステップに分割すると言う概念そのものは、当該技術分野で既知であり、上述した米国出願公開第2009/0225297号明細書を参照されたい。しかしながら、この概念をマルチファセットミラーのミラー部材を傾斜させるという課題に適用する場合、これは、3つのアクチュエータをミラー基板の外周に沿って分配した構成となる。このようなアクチュエータでは、アクチュエータの横寸法が非常に大きくなるので、ミラー部材を高密度実装できない。
【0018】
本発明によれば、アクチュエータは、ミラー基板の外周に作用するのではなく、ミラー基板の反対側に配置した作動面に作用する。これにより、アクチュエータをミラー基板の下に配置することが可能となる。ミラー本体が、反射コーティングを供給した基板、作動面を形成した板、及び基板を板に接続する棒を備える場合、アクチュエータを作動面の下に配置することさえできるので、アクチュエータの横寸法を非常に小さく保つことができる。本発明に関して、棒は、長さがそれに対して垂直方向に測定した幅を超える任意の細長い部材である。
【0019】
作動面が凸曲面である場合、作動面と接触面との間の距離は、ミラーを傾斜させた場合に大きく変化しない。
【0020】
作動面は、傾斜軸に対して垂直な平面で、曲率中心が傾斜軸上に位置する円弧プロファイルを有し得る。この場合、作動面は、ミラー部材を傾斜させた場合に接触面までのその距離を変えない。2つの直交傾斜軸がある場合、作動面は球面であり、曲率中心は2つの傾斜軸が交わる点と一致する。
【0021】
昇降部材及び変位部材をピエゾスタックにより形成した場合、ミラー部材の非常に精密な昇降及び変位が可能である。一実施形態では、スタックを重ねて配置して多軸ピエゾコンポーネントを形成する。接触面は、その場合、このコンポーネントの最上スタックに形成される。
【0022】
昇降部材は、静止部材又はその一部が昇降方向に沿って動くよう静止部材に組み込まれ得る。接触面は、その場合、静止部材に組み込まれていない変位部材に形成され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、ミラーファセットユニットは、少なくとも昇降部材が第1動作状態にある場合に作動面を静止部材に押し当てる予圧力を加えるよう構成した予圧デバイスを備える。当該予圧デバイスは、重力の方向に関係なく作動面と静止部材との間に十分な摩擦があることによりミラー部材が摩擦力により所定位置に保たれることを確実にする。予圧デバイスが第2動作状態でも圧力を加える場合、接触面の運動中の摩擦も増大する。
【0024】
予圧デバイスは、弾性部材、例えばばね、又は制御可能な圧力部材、例えばピエゾスタックを含み得る。
【0025】
静止部材は、変位部材を少なくとも部分的に包囲し得る。特に、静止部材は、昇降方向に対して垂直な環状断面を有し得る。他の実施形態では、静止部材は、リングセグメントの形状の断面を有し得る複数のピラーを備える。変位部材を包囲することで、通常は、ミラーファセットユニットの確実で正確な機能を達成するのに役立つ軸対称又はn回対称を有する構成が得られる。
【0026】
ミラー部材を第2傾斜軸に対して傾斜させる場合、ミラーファセットユニットは、昇降部材が第2動作状態にある間だけ昇降方向に対して0°以外の第2角度と横方向に対して0°以外の第3角度とを形成する方向に沿って接触面を変位させるよう構成したさらに別の変位部材を備え得る。
【0027】
昇降部材及び2つの変位部材をピエゾスタックにより形成した場合、これらのスタックを重ねて配置して多軸ピエゾコンポーネントを形成することもできる。
【0028】
昇降部材の第1動作状態でも、作動面と接触面とがある程度接触し得ることに留意すべきである。しかしながら、この場合も、作動面と静止部材との間に作用する摩擦力で十分に作動面が所定位置に保たれることにより、ミラー部材が傾斜できないようにすべきである。
【0029】
マルチファセットミラーは、EUV投影露光装置だけでなく、DUV又はVUV装置の照明系でも用いられる。こうした系では、マルチファセットミラーを2つの直交傾斜軸に対して自由に傾斜させることができ、マルチファセットミラーを用いて、照明系の瞳面における強度分布が規定される。このようなマルチファセットミラーのいくつかの実施形態は、国際公開第2005/026843号明細書に記載されている。本発明は、こうしたDUV又はVUV投影露光装置で用いることもできる。
【0030】
さらに、本発明は、ミラー部材以外の機械コンポーネントを傾斜させるためにも用いられ得る。
【0031】
上記目的は、本発明の第2態様によれば、複数のミラーファセットユニットを備えるマイクロリソグラフィ投影露光装置のマルチファセットミラーにより達成される。各ミラーファセットユニットは、傾斜可能なミラー部材と、傾斜軸を規定するミラー部材用の軸受と、ミラー部材を傾斜軸に対して傾斜させるよう構成したアクチュエータとを備える。アクチュエータは、振動運動を行うよう構成した変位部材と、変位部材の振動運動と同期させた変位時間にミラー部材及び変位部材を断続的に押し合わせるよう構成した押圧・解放システムとを備える。
【0032】
この第2態様による発明も、単一のアクチュエータに利用可能な体積に関する厳しい制約を満たすことができるのが、傾斜運動を複数の小さなステップに分割した場合のみであるという認識に基づく。その場合、これらのステップそれぞれに小さな変位が伴う結果として、アクチュエータのどの部分も、全傾斜プロセス中にミラー部材が行うのと同じ大きな運動を行う必要がない。
【0033】
押圧・解放システムは、1つの傾斜方向に沿ったミラー部材の傾斜運動が望まれる場合、変位時間中に変位部材が2つの相反する方向の一方に沿ってのみ動くよう同期され得る。
【0034】
ミラー部材は、ミラー本体と、ミラー本体の第1端部に設けた反射コーティングと、第1端部の反対側に配置したミラー本体の第2端部に設けた作動面とを備え得る。変位部材は、その場合、変位時間中にのみ作動面に押し当たるよう構成され得る。
【0035】
本発明の種々の特徴及び利点は、添付図面と共に以下の詳細な説明を参照すればより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明によるEUVマイクロリソグラフィ投影露光装置の概略斜視図である。
図2】支持板に取り付けたミラーファセットを備える、本発明の一実施形態によるマルチファセットミラーの簡略斜視図である。
図3図2に示すマルチファセットミラーの部分断面図である。
図4】線IV−IVに沿った図3に示すファセットミラーユニットの一部の上面図である。
図5図3に示すミラーファセットユニットの一動作状態についての図3と同様の断面図である。
図6図3に示すミラーファセットユニットの一動作状態についての図3と同様の断面図である。
図7図3に示すミラーファセットユニットの一動作状態についての図3と同様の断面図である。
図8図3に示すミラーファセットユニットの一動作状態についての図3と同様の断面図である。
図9図3に示すミラーファセットユニットの一動作状態についての図3と同様の断面図である。
図10図3に示すミラーファセットユニットの一動作状態についての図3と同様の断面図である。
図11】代替的な一実施形態による静止部材の上面図及び断面図である。
図12】代替的な一実施形態による静止部材の上面図及び断面図である。
図13】代替的な一実施形態による静止部材の上面図及び断面図である。
図14】代替的な一実施形態による静止部材の上面図及び断面図である。
図15】昇降部材を静止部材の上に配置した代替的な実施形態によるマルチファセットミラーの部分断面図である。
図16図15のミラーファセットユニットを異なる動作状態で示す。
図17】ミラー本体に組み込んだ弾性部材より予圧力を発生させる、さらに別の実施形態によるマルチファセットミラーの部分断面図である。
図18】ピエゾスタックにより予圧力を発生させる、さらに別の実施形態によるマルチファセットミラーの部分断面図である。
図19図18に示すミラーファセットユニットを異なる動作状態で示す。
図20】ミラー本体の基板が切断球形を有する、さらにまた別の実施形態によるマルチファセットミラーの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
I.投影露光装置の全体構成
図1は、本発明に従って設計した投影露光装置10の高度に簡略化した斜視図である。装置10は、EUVスペクトル域の、例えば13.4nmの波長を有する投影光のビーム13を発生させる照明系12を備える。ビーム13は、複数の小さな形体によって形成した反射パターン18を裏側に含むマスク16の視野14を下から照明する。この実施形態では、照野14はリングセグメントの形状を有する。
【0038】
投影対物系20は、照野14内のパターン18を基板24によって支持された感光層22に結像する。通常、感光層22はフォトレジストであり、基板24はシリコンウェーハである。基板24は、感光層22の上面を投影対物系20の像平面に正確に位置付けるようウェーハステージ(図示せず)に配置する。マスク16は、マスクステージ(図示せず)によって投影対物系20の物体平面に位置決めする。投影対物系20は、|β|<1の倍率βを有するので、照野14内のパターン18の縮小像14’が感光層22に形成される。
【0039】
EUV投影光に対して透明な光学材料で利用可能なものがないので、装置10でレンズ又は他の屈折光学素子を用いることは不可能である。その代わりに、照明系12及び投影対物系20は、(絞り以外に)光学素子としてミラーのみを含む。マスク16も反射型である。
【0040】
投影中、マスク16は、図1に示すY方向と一致する走査方向に沿って移動する。照野14は、このとき、照野14よりも大きなパターン面積を照明し続けることができるようマスク16にわたって走査する。投影対物系20が像を反転させた場合(β<0)、図1に矢印A1及びA2で示すように、マスク16及び基板24は投影中に相互に逆の方向に沿って移動する。投影対物系20が像を反転させない場合(β>0)、マスク及び基板24は同じ方向に沿って移動する。いずれの場合も、基板24及びマスク16の速度間の比は、投影対物系20の倍率βに等しい。
【0041】
しかしながら、本発明は、マスク16及び基板24がマスクの投影中に移動しないステッパツールで用いることもできる。
【0042】
II.マルチファセットミラー
DUV又はVUV投影露光装置の照明系は、多くの場合にフライアイレンズ又は回折光学素子等の他の光学ラスタ素子を含む。図1に示すEUV照明系12では、光学ラスタ素子の役割を複数の個別ミラー部材を備えたマルチファセットミラーが担う。
【0043】
図2は、照明系12に含まれ全体を26で示すマルチファセットミラーの斜視図である。マルチファセットミラー26は、複数のミラー部材32を突出させたカバー板30を有する支持構造28を備える。次節IIIでより詳細に説明するように、各ミラー部材32は、ミラー部材を2つの直交傾斜軸に対して傾斜させるよう構成したアクチュエータを備えるファセットミラーユニットの一部である。したがって、ミラー部材32の1つに当たる光は、特定のミラー部材32に対して設定した傾斜角に応じた方向に反射される。
【0044】
実際のマルチファセットミラー26では、通常はミラーファセット32の、したがってミラーファセットユニットの密度がはるかに大きくなることに留意されたい。これが、各ミラーファセットユニットのアクチュエータ及び他のコンポーネントを収容するのに利用可能な体積を厳しく制限する。
【0045】
III.ミラーファセットユニット
図3は、図2に示すマルチファセットミラー26に含まれるミラーファセットユニットの1つの概略的な一定の縮尺でない断面を示す。全体を34で示すミラーファセットユニットを、カバー板30と支持構造28の一部でもある台板36との間に配置する。円形断面を有し得る複数の冷却チャネル38が、台板36を貫通する。装置10の動作中、流体、例えば水等の液体が冷却チャネル38を流れることにより、投影光の吸収により発生した熱をマルチファセットミラー26から対流により除去するようにする。
【0046】
ミラーファセットユニット34の一部であるミラー部材32は、例えば鋼製又は別の金属製であり得る剛性構造であるミラー本体40を備える。ミラー本体40は、反射コーティング44を施した基板42、棒46、及び板48を備える。図示の実施形態では、基板42の上面は平面であり、他の実施形態では、基板42は反射コーティング44を施した湾曲上面を有し得る。基板42は、棒46を介して円形外周を有する板48に接続する。板48のうち図3で下向きの、したがって反射コーティング44に面しない面は、球面状に湾曲している。以下で作動面50と称するこの面の曲率中心は、2つの直交傾斜軸が相互に交差する点と一致する。図3において、この点を小さな点52で示す。
【0047】
点52で交差する傾斜軸はさらに、軸受54により規定され、軸受54は、棒46の一部を包囲し、内径及び外径の小さな第1部分56と内径及び外径の大きな第2部分58とを備える概ね段状スリーブの形状を有する。両部分56、58は、図示のように別個の部品として、又は単一部品により一体的に形成することができる。
【0048】
軸受54の第2部分58は、予圧デバイス60に載る。予圧デバイス60は、ミラーファセットユニット34の支持板64に形成した円形凹部62を突き出て延びる薄い円形ブリッジによって形成される。ブリッジは、弾性特性を有し、軸受54に引張力を加えるよう構成される。この引張力の結果として、軸受54及び傾斜軸においてそれに接続されているミラー本体40は、支持板64に永久的に引き寄せられる。軸受54及びミラー本体40の小さな長手方向運動を可能にするために、軸受54を貫通させるカバー板30のボア66が軸受54の第1部分56の外径よりもわずかに大きな直径を有することで、隙間嵌めを達成することができる。
【0049】
軸受54の第2部分58は、静止部材70及びアクチュエータ72を収容する空洞68を画定する。線IV−IVに沿った図4の断面で見ることができるように、この実施形態の静止部材70は、軸受54の、特にその第2部分58の長手方向軸と一致する長手方向軸を有するスリーブの形状を有する。アクチュエータ72はさらに、静止部材70の内側に形成したキャビティに収容される。
【0050】
アクチュエータ72は、昇降部材74、第1変位部材76、及び第2変位部材78を備える。昇降部材74は、軸受54及び静止部材70の長手方向軸と一致するZ方向に沿ってその長さを変えることができるよう構成される。第1変位部材76は、直交X方向に沿って剪断変形を行うことができるよう構成され、その理由から図3において「x」で示す。第2変位部材78は、X方向及びZ方向に直交するY方向に沿って剪断変形を行うことができるよう構成され、その理由から図3において「y」で示す。
【0051】
図示の実施形態では、昇降部材74及び変位部材76、78は、上記文献である米国出願公開第2009/0225297号明細書に記載のものと同様のピエゾスタックによって形成される。各部材74、76、78を個別に制御して、この実施形態では第1変位部材76の上面である接触面80をZ方向と平行且つZ方向に直交するXY平面と平行に動かすことができるようにすることができる。図3に示す動作状態では、アクチュエータ72の接触面80は、ミラー本体40の作動面50の直近に位置付けられる。
【0052】
VI.ミラーファセットユニットの機能
以下において、図3図10を参照して、アクチュエータ72を用いてミラー部材32をどのように傾斜させることができるかを説明する。図4図10は、ミラーファセットユニットを異なる動作状態で示す。
【0053】
図3において、昇降部材74は、Z方向に沿った長さが最短である第1動作状態にある。その場合、接触面80は、ミラー本体40の作動面50と接触しないか又はわずかにしか接触しないよう後退している。反対に、ミラー本体40の作動面50は、専ら又は少なくとも主に静止部材70に載る。予圧デバイス60が加える予圧により、作動面50は、作動面50と静止部材70との間の摩擦がミラー本体40の傾斜軸に対する運動を防止するのに十分であるような程度に静止部材70に押し当たる。予圧デバイス60はさらに、重力が作動面50と静止部材70との間の摩擦に寄与しないように、ミラーファセットユニット34を上下逆に取り付けた場合でも上記のようになることを確実にする。
【0054】
図5は、昇降部材74をZ軸に沿った長さが最長である第2動作状態で示す。昇降部材74がZ軸に沿って伸長すると、アクチュエータ72の接触面80は、最初にミラー部材32の作動面50と接触する。伸長し続けるにつれて、昇降部材74は、予圧デバイス60が発生させた予圧力に対してミラー部材32全体を持ち上げ、軸受54も持ち上げる。この持ち上げ運動の結果として、ミラー部材32の作動面50は静止部材70から持ち上げられるので、ミラー本体40をその元の位置に固定する摩擦力がなくなる。これを図5に示す。ミラー部材32は、このとき、接触面80を横方向に、すなわち昇降方向Zに対して垂直な(すなわち90°に等しい角度を形成する)XY平面内で変位させた場合に、自由に傾斜運動できる。X方向に沿った接触面80の横方向運動を、図5に矢印81で示す。
【0055】
図6は、ミラーファセットユニット34を昇降部材72の第2動作状態で示すが、第1変位部材76の付加的な剪断変形を伴う結果として、図5に矢印81で示す接触面80の横変位が生じている。ミラー部材32の作動面50がアクチュエータ72の接触面80に完全に(又は少なくとも主に)載るので、接触面80の横変位は、ミラー部材32をY方向と平行な傾斜軸に対して傾斜運動させる。この傾斜軸は、点52を通って図面に対して垂直に延びる。当然ながら、基板42の反射コーティング44もこの傾斜軸に対して傾斜させる。
【0056】
傾斜角は、第1変位部材76で達成できる接触面80の最大変位により制限される。傾斜角を大きくするには、上述の傾斜動作を所望の傾斜角が設定されるまで繰り返さなければならない。
【0057】
図7は、昇降部材72を再度収縮させた後の状態を示す。これにより、ミラー本体40を静止部材70の上に下ろすことができ、ミラー本体40は、そこで摩擦力により所定位置に保持される。接触面80は、この場合も作動面50から離間するので、第1変位部材76は、図7に矢印82で示すようにその元の状態に自由に戻ることができる。
【0058】
図8は、この構成のミラーファセットユニット34を示す。この構成は、ミラー部材32がすでに傾斜していることを除いて図3に示すものと同一である。ここで、図5及び図6を参照して上述したプロセスが繰り返される。図9及び図10は、昇降部材34を再度第2動作状態にしたミラーファセットユニット34の状態を示し、この状態では、接触面80が作動面50と接触しており、ミラー部材32が静止部材70から持ち上がっている。
【0059】
直交傾斜軸、すなわちX方向と平行な軸に対するミラー部材32の傾斜が、同様に行われ得る。この目的で、接触面80をX方向に沿って変位させることが可能な第2変位部材78のみを用いなければならない。昇降部材74が、作動面50が接触面80に少なくとも主に載る第2動作位置にある限り、変位部材76、78の両方を同時に動作させて、Y方向と平行な軸に対するミラー部材32の傾斜運動を直交軸に対する傾斜運動と重ねることができる。
【0060】
アクチュエータ72の部材74、76、及び78をピエゾスタック又は同様の高精度作動素子として構成すれば、ミラー部材32を非常に高確度で傾斜させることができる。変位部材76、78により発生させることができる接触面80の変位それぞれは小さいが、図3図10を参照して上述した動作を非常に高い繰り返し率で行うことができるので、大きな傾斜角も非常に迅速に設定することができる。例えば、全サイクルを1ミリ秒以内で行うことができる。
【0061】
V.代替的な実施形態
図3図10に示す実施形態では、静止部材70は、静止部材70の長手方向軸に対して垂直に配置したXY平面内に延びる平面状の前面84を有する。板48の作動面50は凸曲面であるので、昇降部材74が図3に示すような第1動作状態にある場合、作動面50と静止部材70の前面84との間の接触領域は円形の形状を有する。
【0062】
図11図14は、代替的な実施形態による静止部材70の前面84の種々の構成を示す。板48の形状は、図3図10を参照して上述した実施形態と同じであると仮定する。その場合、接触領域の幾何学的形状、ひいてはミラー部材32が静止部材70に載っている間にミラー部材32を所定位置に保つ摩擦力は、前面84の構成のみに応じて決まる。図11図14のそれぞれが、静止部材70の前面84を示す上面図と、静止部材70及び板48の断面図とを含む。接触領域は86で示し、黒く塗りつぶしてある。
【0063】
図11に示す実施形態では、静止部材70の前面84は、作動面50に対して相補的に凹曲面である。したがって、この実施形態における作動面50と静止部材70との間の接触領域86は、静止部材70の前面84の全領域に等しい。
【0064】
図12に示す実施形態では、静止部材70の前面84は、接触領域86がこの場合も円形の形状を有するような円錐形である。しかしながら、図12の上面図に示すように、この円は、ここでは静止部材の内径にではなく内径と外径との中間に位置決めされる。
【0065】
図13に示す実施形態では、静止部材70は、スリーブではなく120°の角度で離間した3つのピラー88により形成される。各ピラー88は、リングセグメントの幾何学的形状を有する断面を有する。3つのピラー88により画定される前面84は、この場合も円錐形である。しかしながら、図12に示す実施形態とは異なり、円錐角は、接触領域86がピラー88の外径の近くに位置するよう決定される。
【0066】
図14に示す実施形態では、ピラー88が正方形断面を有する。3つのピラー88の前面84は、平面であり、ピラー88の長手方向に対して垂直な平面内に延びる。こうした理由で、作動面50と静止部材70との間の接触領域86は、ピラー88の内縁に位置する3点に限られる。
【0067】
図15及び図16は、図5及び図6と同様の表示で、昇降部材74を静止部材70に組み込んだ実施形態を示す。静止部材は、図4又は図11図14に示すような構成のいずれかを有し得る。この実施形態では、第1変位部材76の上に形成した接触面をZ方向に沿って動かさない。図3図10に示す実施形態とは対照的に、作動面50が少なくとも主に静止部材70に載る第1動作状態は、昇降部材74が最大の長さを有する場合、すなわち延長構成である場合に得られる。この第1動作状態では、図15に示すように、接触面80はミラー部材32の作動面50と接触しない。
【0068】
図16に示すように、昇降部材74が完全に収縮した第2動作状態にある場合、接触面80はミラー部材32の作動面50に接触する。その場合、ミラー部材32は、変位部材76、78を用いて接触面80を横方向に変位させることにより傾斜させることができる。
【0069】
図17は、予圧デバイス60を支持板64の一部であるブリッジではなくミラー本体40の棒46に組み込んだ弾性部材90である実施形態を、図5と同様の表示で示す。これには、軸受54を支持板64に取り付け固定してカバー板30に圧入できるという利点がある。傾斜運動中、上述の実施形態の場合のように、ミラー本体40の基板42はZ方向に沿った運動を一切行わない。その代わりに、ミラー部材32を傾斜させながら棒の長さを縮める。この目的で、棒46を2つの部分46a、46bに分割することができ、これらを図17に概略的に示すように相互に対して伸縮変位させて、棒46の全長を変えることができる。ばねにより形成され得る弾性部材90は、作動面50がアクチュエータ72の接触面80に常に押し当たって十分な摩擦を常に維持することを確実にする。
【0070】
図18は、予圧デバイスがZ方向に沿って長さを変えるよう構成した2つのピエゾスタック60a、60bを含む実施形態を、図5と同様の表示で示す。図18は、接触面80を作動面50から離間させた昇降部材74の第1動作状態で、ミラーファセットユニット34を示す。作動面50と静止部材70との間の十分な摩擦を維持するために、ピエゾスタック60a、60bを、板48の上側に圧力を加えるよう制御する。
【0071】
図19は、昇降部材74が第2動作状態にある場合のこの実施形態のミラーファセットユニット34を示す。アクチュエータ72の接触面80は、その場合、ミラー部材32の作動面50に接触する。この動作状態でも作動面50と接触面80との間の十分な摩擦を維持するために、ピエゾスタック60a、60bは、板48の上側に圧力を加え続ける。したがって、ピエゾスタック60a、60bは、板48と常に接触している。圧力をミラー部材32の傾斜運動中にも加えなければならないので、板48の上側とピエゾスタック60a、60bとの間の摩擦が最小化され得る。
【0072】
この実施形態では、予圧デバイスを形成するピエゾスタック60a、60bを能動制御して、所望の摩擦力が一方で板48と他方でアクチュエータ72又は静止部材70との間に加わるようにしなければならない。
【0073】
図20は、さらにまた別の実施形態によるマルチファセットミラー26の一部の断面図である。各ミラー部材32は、反射コーティング44を施した平坦又は湾曲領域を有する切断球形の本体基板42を有する。棒46は、球形基板42の対称軸と一致する長手方向軸を有する。
【0074】
カバー板は、ミラー部材32の挿入後に相互に取り付けられる上板30a及び下板30bから成る。1つのミラー部材32を図示していない図20の右側で最もよく分かるように、上板30aのボア66aは、円錐台67の形状を有する。下板30bでは、ボアは、逆円錐角を有する上円錐部66b及び下円筒部66b’を有する。上板30aのボア66aは、下板30bの円錐部66bと共に、ミラー部材32の球形基板42用のソケットを形成する。これらのソケットは傾斜軸の位置を規定する。
【0075】
棒46は、下板30bのボア66bを貫通して下板30bの底面から突出する。予圧デバイス60は、この実施形態では、下板30bとミラー本体40の板48との間に延びる弾性部材90により形成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20