(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物からなる基板の表面に、銀(Ag)または銅(Cu)を主体とする金属のペーストを印刷して導体パターンを形成する工程と、
前記導体パターンが形成された前記基板を焼成し、前記ガラスセラミックス組成物を焼結するとともに前記金属ペーストを焼成して、銀(Ag)または銅(Cu)を主体とする金属のみからなる厚膜導体層を形成する工程と、
前記厚膜導体層に対してウェットブラスト処理を行い、該厚膜導体層の表面を0.02μm以下の表面粗さRaに平坦化する工程と、
前記ウェットブラスト処理により表面が平坦化された前記厚膜導体層の上に、ニッケル(Ni)−金(Au)メッキ層を形成する工程と
を備えることを特徴とする素子搭載用基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度実装化や処理速度の高速化に伴い、低誘電率で低配線抵抗という優れた特徴を有する低温(同時)焼成セラミックス基板(LTCC基板)の使用が拡大している。また、発光ダイオード(LED)素子のような半導体素子を搭載するための基板として、LTCC基板の使用が検討されている。
【0003】
LTCC基板は、通常のセラミックスの焼成温度より低い800〜1000℃程度の温度で焼成されるもので、ガラスとセラミックスフィラー(例えば、アルミナフィラーやジルコニアフィラー)とからなるグリーンシートを所定の枚数重ね合わせ、熱圧着により一体化した後焼成することにより作製される。
【0004】
LTCC基板の表面には、銀(Ag)や銅(Cu)のような導体金属を主体とするペーストを印刷し焼成してなる厚膜導体層が形成されている。そして、このような厚膜導体層のうちで特に素子との接続がなされる端子部(電極)には、ワイヤボンディング性、密着強度、および耐候性を保つために、ニッケル(Ni)メッキと金(Au)メッキの積層メッキ(Ni/Auメッキ)が施されている。このようなNi/Auメッキにより耐硫化性を付与し、厚膜導体層が空気中等の硫黄(S)分と反応して変色するのを防止している。
【0005】
しかし、LED素子等を搭載するための基板においては、近年、耐硫化性の高さが求められており、ワイヤボンディング部に必要とされる従来からのメッキ厚(Niメッキ厚3〜5μm/Auメッキ厚0.1〜0.3μm)では、JIS−C−60068−2−43に拠る硫化試験においてNi/Auメッキ部に黒色の変色が生じ、硫化試験に合格することができないという問題があった。
【0006】
本発明者らの研究によれば、このようなNi/Auメッキ部の変色の原因は、表面に露出したNiメッキ層によって硫化ニッケルが生じることにあることがわかった。
すなわち、Ag等の厚膜導体には粒界の空隙や表面の凹凸が存在するため、Niメッキ層を形成してもその空隙や表面の凹凸が残り、最上層のAuメッキを施しても完全にNiメッキ層を覆うことができないためAuメッキ層の下地層であるNiメッキ層が表面に露出することになる。そして、この露出したNiメッキ層と硫黄(S)分とが反応することで黒色の硫化ニッケルが発生したものと考えられる。
【0007】
従来から、このような接続端子部(電極)の硫化(変色)を防止する技術として、Niメッキ層の上にシリコーン樹脂等による保護コートを施す方法や、厚膜導体層を構成する導体に使われるAg粉末の粒径を小さくし、焼結性を良好にして粒界を残りにくくする方法や、メッキに代えてペースト印刷により厚膜Au層を形成したり、Auメッキ層を厚くするなどの方法などが知られている。
【0008】
しかしながら、Ag粉末の粒径を小さくし、焼結性を良好にすると基板との焼成収縮のタイミングが合わなくなってしまい、基板が反ってしまう。また厚膜Au層を形成したり、Auメッキ層を厚くするとコストが著しく上昇するという問題があった。
【0009】
また、LTCC基板上に形成された導体層の表面を処理し、メッキ性を良好にする技術として、メッキ工程の前にLTCC基板の表面に対してウェットブラスト処理を施し、導体層の表面に浮き出したガラスを除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
しかしながらこの方法では、厚膜導体(Ag)の粒界の空隙や表面の凹凸をなくし、耐硫化性を高めることはできなかった。すなわち、特許文献1には、ウェットブラスト処理の条件が詳細に記載されているわけではないが、ガラス除去のためのブラスト処理は、ガラスという固い物質を短時間のブラストで破砕し除去するものであり、そのような目的のためのブラスト処理条件では、導体(Ag)粒子の隙間を埋めるとともに凹凸をなくし、導体層の表面を、通常の厚さのAuメッキ層でも完全に覆うことができる程度に平坦(平滑)にすることは困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1〜
図4は、それぞれ本発明の素子搭載用基板10を示す断面図である。素子搭載用基板10は、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物の焼結体からなる低温焼成セラミックス基板(LTCC基板)1を有しており、一方の主面(図中上面)がLED素子のような素子(半導体素子)が搭載される搭載面1aとなっている。LTCC基板1の形状、厚さ、大きさ等は特に制限されない。LTCC基板1は、
図1および
図2に示すように、平面状のものでもよいし、
図3および
図4に示すように、基板端部に側壁1bが設けられ、キャビティ内に搭載面1aが形成された形状のものでもよい。また、LTCC基板1を構成するガラスセラミックス組成物の焼結体の原料組成、焼結条件等については、後述する製造方法において説明する。
【0021】
LTCC基板1の搭載面1aには、LED素子等の素子と電気的に接続される接続端子(電極)である厚膜導体層2が形成されている。厚膜導体層2は、銀(Ag)または銅(Cu)を主体とする導体金属から構成されており、後述するように、導体金属のペーストをスクリーン印刷等で印刷し焼成することにより形成されている。厚膜導体層2は、
図1および
図3に示すように、搭載面1aと同一の高さに形成することができる。また、
図2および
図4に示すように、搭載面1aに凹部1cを形成し、凹部1c内(底面)に厚膜導体層2を形成してもよい。これらの厚膜導体層2は、表面がウェットブラスト処理により平坦化(平滑化)されており、0.02μm以下の表面粗さRaを有している。また、このように表面が平坦化された厚膜導体層2の上に、ニッケル(Ni)メッキ層とその上に形成された金(Au)メッキ層との積層構造を有するNi/Auメッキ層3が形成されており、厚膜導体層2の表面が隙間なく完全に覆われている。厚膜導体層2の表面粗さRaが0.02μmを超える場合には、Ni/Auメッキ層3によって厚膜導体層2の表面を完全に覆うことが難しく、耐硫化性が不十分となる。厚膜導体層3の表面粗さRaは0.01μm以下であることがより好ましい。
【0022】
LTCC基板1の搭載面1aと反対側の主面である非搭載面1bにも、外部接続用の端子(電極)として厚膜導体層2を形成することができる。このような構造では、非搭載面1bに形成された厚膜導体層2の表面も、搭載面1aに形成された厚膜導体層3と同様に、ウェットブラスト処理により平坦化することが好ましい。すなわち、非搭載面1bに形成された厚膜導体層2も、0.02μm以下の表面粗さRaを有するようにウェットブラスト処理により平坦化されており、その上にNi/Auメッキ層3が形成され厚膜導体層2の表面が隙間なく完全に覆われた構造とすることが好ましい。なお、図中符号4は、搭載面1aの素子接続用端子と非搭載面1bの外部接続用端子とを電気的に接続する貫通導体部を示す。
【0023】
本発明の素子搭載用基板10においては、LTCC基板1の表面に形成された銀(Ag)または銅(Cu)等の金属からなる厚膜導体層2が、ウェットブラスト処理により表面粗さRaが0.02μm以下に平坦化されており、その上にNi/Auメッキ層3が形成されて、厚膜導体層2の表面が隙間なく完全に覆われているので、硫化試験において変色が生じることがなく、耐硫化性に優れている。
【0024】
本発明の素子搭載用基板1は、以下に示すようにして製造することができる。
【0025】
[グリーンシートの形成]
まず、グリーンシートを形成する。グリーンシートは、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させることで形成することができる。
【0026】
ガラス粉末は、必ずしも限定されるものではないものの、ガラス転移点(Tg)が550℃以上700℃以下のものが好ましい。ガラス転移点(Tg)が550℃未満の場合には、後述する脱脂が困難となるおそれがあり、700℃を超える場合には、収縮開始温度が高くなり、寸法精度が低下するおそれがある。
【0027】
ガラス粉末としては、例えばSiO
2を57〜65mol%、B
2O
3を13〜18mol%、CaOを9〜23mol%、Al
2O
3を3〜8mol%、K
2OおよびNa
2Oから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5〜6mol%含有するガラスの粉末が用いられる。ガラス粉末の50%粒径(D
50)は0.5μm以上2μm以下であることが好ましい。ガラス粉末のD
50が0.5μm未満の場合には、ガラス粉末が凝集しやすく、取り扱いが困難となるばかりでなく、均一に分散させることが困難となる。一方、D
50が2μmを超える場合には、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。なお、本明細書において、粒径はレーザ回折・散乱法により得られるものである。
【0028】
セラミックスフィラーとしては、従来からLTCC基板の製造に用いられるものを用いることができる。例えば、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、アルミナ粉末とジルコニア粉末との混合物等を好適に用いることができる。セラミックスフィラーのD
50は、0.5μm以上4μm以下であることが好ましい。
【0029】
このようなガラス粉末とセラミックスフィラーとを、例えばガラス粉末が30質量%以上50質量%以下、セラミックスフィラーが50質量%以上70質量%以下となるように配合し混合することによりガラスセラミックス組成物を得ることができ、このガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、溶剤等を添加することによりスラリーを得ることができる。
【0030】
バインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、アクリル樹脂等を好適に用いることができる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等を用いることができる。また、溶剤としては、トルエン、キシレン、ブタノール等の芳香族系またはアルコール系の有機溶剤を用いることができる。さらに、分散剤やレべリング剤を併用することも可能である。
【0031】
こうして形成されたグリーンシートを、打抜き型あるいはパンチングマシーンを使用して所定の寸法角に切断し、同時に所定位置に層間接続用のビアホールを打抜き形成することができる。
【0032】
[金属ペーストの印刷]
グリーンシートの表面に、導体金属のペーストをスクリーン印刷等の方法で印刷することにより、未焼成の導体パターンを形成する。また、前記した層間接続用のビアホール内に導体金属のペーストを充填することによって、未焼成の層間接続部を形成する。導体金属のペーストとしては、例えば銀(Ag)または銅(Cu)を主成分とする金属粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを用いる。金属粉末としては、銀(Ag)粉末、銀とパラジウムとの混合粉末、銀と白金との混合粉末等が好ましく用いられる。なお、本発明においては、グリーンシートに含まれるガラス成分により導体金属と基板との接着力を十分に確保することができるので、導体金属の電気抵抗(抵抗値)を上げないために、ガラスフリットが配合されていない金属ペーストを使用することが好ましい。
【0033】
[グリーンシートの積層および焼成]
未焼成の導体パターンが形成されたグリーンシートを、位置合わせしつつ複数枚重ねて加熱および加圧して一体化した後、500℃以上600℃以下の温度で加熱することにより、グリーンシートに含まれる樹脂等のバインダーを分解・除去する脱脂を行う。その後、さらに800〜1000℃程度の温度で加熱し、グリーンシートを構成するガラスセラミックス組成物を焼成する。この焼成により、ガラスセラミックス基板内部および表面(表裏面)に形成された金属ペーストも同時に焼成され、銀(Ag)または銅(Cu)を主体とする金属からなる厚膜導体層が形成される。
【0034】
[ウェット(湿式)ブラスト処理]
ガラスセラミックス基板(LTCC基板)の表面に形成された厚膜導体層に対して、ウェットブラスト処理を行う。すなわち、研磨材(ブラスト粉末)を液体媒体(例えば水)と混合してなるブラスト液を、高圧で厚膜導体層に噴射する(吹き付ける)。このウェットブラスト処理により、導体粒子の隙間を埋め、厚膜導体層の表面を平坦化(平滑化)する。研磨材の粒径やブラスト液の噴射速度、噴射圧力、処理時間等を調整することで、処理後の厚膜導体層の表面粗さRaを0.02μm以下にすることができる。
【0035】
研磨材としては、例えばアルミナまたはジルコニア等のセラミック粉末を使用することができる。ブラストの効率を上げるため、アルミナ粉末の破砕粉の使用が好ましい。研磨材の粒径は、25〜150μmの範囲とすることが好ましい。研磨材の粒径が25μm未満では、LTCC基板の切断用溝等に研磨材が入り込んでしまい、異物となって素子の搭載を阻害するおそれがある。一方、研磨材の粒径が150μmを超える場合には、素子の搭載部であるキャビティ壁面付近の厚膜導体層を効率よくブラストすることができない。研磨材の50%粒径(D
50)は80〜100μmの範囲が好ましい。より好ましいD
50は90μmである。
【0036】
研磨材(ブラスト粉末)と液体媒体(例えば水)との混合比率は、研磨材がブラスト液全体の20〜60体積%とする。研磨材の混合比率が20体積%未満では、ウェットブラストの効率が著しく低くなり、厚膜導体層の表面を十分に平坦化することができない。一方、研磨材の比率が60体積%を超えると、ブラスト液の粘度が高くなりすぎてかえってブラスト効率が低下する。最も好ましい混合比率は、研磨材が40体積%、水が60体積%の比率である。
【0037】
また、このような比率で混合されたブラスト液を噴射する圧力は、ボロンカーバイド製ノズルの噴射口が直径8mmのとき、1.2〜1.8kg/cm
2とすることが好ましい。ブラスト液の噴射圧力が1.2kg/cm
2未満では、厚膜導体層の表面に浮き出したガラスの除去には効果が認められるが、厚膜導体層の表面粗さRaが0.02μm以下になるような十分な平坦化を行なうことはできない。したがって、良好な耐硫化性を付与することができない。ブラスト液の噴射圧力が1.8kg/cm
2を超えると、厚膜導体層の表面にブラスト材であるアルミナ粉末が付着してしまい、表面を平坦化する効果が小さくなる。
【0038】
また、ボロンカーバイド製ノズルの噴射口の直径は、5〜10mmのものが使用できる。前記噴射口の直径が5mm未満では、流速が速くなりすぎて厚膜導体層のみならず、ガラスセラミックス基板上のガラスを多量に除去して、強度を低下させたり、厚膜導体層の表面にブラスト材であるアルミナ粉末が付着したりして、表面を平坦化するする効果が小さくなる。10mm超では、厚膜導体層の表面に浮き出したガラスの除去には効果が認められるが、厚膜導体層の表面粗さRaが0.02μm以下になるような十分な平坦化を行うことが難しくなる。
【0039】
ウェットブラスト工程では、ベルトコンベアで連続的に搬送されるLTCC基板の厚膜導体層に向けて、搬送面より5cm程度上に配置されたボロンカーバイド製ノズルの噴射口からブラスト液を噴射する方法を採ることができる。コンベアの搬送速度は1〜1.5m/分とすることが好ましい。搬送速度が1m/分未満では、厚膜導体層にブラスト材であるアルミナ粉末が付着してしまい、表面を平坦化する効果が小さい。搬送速度が1.5m/分を超えると、ブラストの効果が小さく、硫化防止に十分な平坦化を行なうことはできない。
【0040】
[メッキ工程]
ウェットブラスト処理により、表面粗さRaが0.02μm以下に平坦化された厚膜導体層の上に、Niメッキを行った後Auメッキを行い、Ni/Auメッキ層を形成する。Niメッキは、例えばスルファミン酸ニッケル浴を使用して電界メッキによって5〜10μmの厚みに形成される。金メッキは、例えばシアン化金カリウム浴を使用して電界メッキによって0.2〜0.5μmの厚みに形成することができる。
【0041】
前工程で下層の厚膜導体層にウェットブラスト処理が施され、導体(例えばAg)粒子の隙間が埋められ凹凸が均されて、表面粗さRaが0.02μm以下に平坦化されているので、前記した厚さのNi/Auメッキ層により厚膜導体層の上を完全に覆うことができる。したがって、Niメッキ層が露出することがなく、耐硫化性に優れており、Ni/Auメッキ層の上にシリコーン樹脂等の保護コートを被覆しなくても、JIS−C−60068−2−43に準拠する硫化試験において、Auメッキ膜表面に硫化ニッケルの析出による黒色欠点のないAuメッキ膜を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の実施例を説明する。なお本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に説明する方法で、
図1に示す構造の素子搭載用基板10を作製した。
【0043】
まず、素子搭載用基板10を作製するための本体用グリーンシートを作製した。本体用グリーンシートは、SiO
2が60.4mol%、B
2O
3が15.6mol%、Al
2O
3が6mol%、CaOが15mol%、K
2Oが1mol%、Na
2Oが2mol%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕して基板本体用ガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0044】
この基板本体用ガラス粉末が40質量%、アルミナフィラー(昭和電工社製、商品名:AL−45H)が60質量%となるように配合し、混合することによりガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)0.5gを配合し、混合してスラリーを調製した。
【0045】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させ、焼成後の厚さが0.15mmとなる本体用グリーンシートを製造した。
【0046】
一方、導電性粉末(大研化学工業社製、商品名:S400−2)に、ビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比90:10の割合で配合し、固形分が87質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って金属ペーストを製造した。
【0047】
本体用グリーンシートの未焼成貫通導体に相当する部分に孔空け機を用いて直径0.3mmの貫通孔を形成し、スクリーン印刷法により金属ペーストを充填して未焼成貫通導体ペースト層を形成すると共に、未焼成厚膜導体層を形成して、厚膜導体層付き本体用グリーンシートを得た。
【0048】
上記で得られた厚膜導体層付き本体用グリーンシートを、550℃で5時間保持して脱脂を行い、さらに870℃で30分間保持して焼成を行って試験用の素子搭載用基板10を製造した。
【0049】
素子搭載用基板10における2に相当する厚膜導体層に以下の条件でウェットブラスト処理を施した。
【0050】
研磨材(ブラスト粉末)と液体媒体(水)との混合比率は、研磨材がブラスト液全体の40体積%とした。さらにこのような比率で混合されたブラスト液を噴射する圧力は、1.5kg/cm
2とし、ベルトコンベアで連続的に搬送させながら厚膜導体層に向けて、搬送面より5cm上に配置されたボロンカーバイド製ノズルの直径8mmの噴射口からブラスト液を噴射することにより、厚膜導体層の表面粗さRaが0.01μmの厚膜導体表面を得た。尚、ベルトコンベアの搬送速度は1.2m/分とした。
【0051】
得られた厚膜導体表面にスルファミン酸ニッケル浴を用いた電界メッキによって7μmのNiメッキ膜を形成し、その表面にシアン化金カリウム浴を用いた電界メッキによって0.3μmの厚みのAuメッキ膜を形成した。こうして得られた素子搭載用基板10をJIS−C−60068−2−43に準拠する硫化試験において100時間暴露させたところ、Auメッキ膜表面に硫化ニッケルの析出による黒色欠点のないAuメッキ膜を得ることができた。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは明らかである。