【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、試料の調製および物性の分析に用いた装置および条件は、下記のとおりである。
【0050】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
条件A(特に記載しない限りは本条件を使用)
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
条件B
装置:(株)島津製作所製 LC−10AD (HPLC)
カラム:Shodex KF−804L
カラム温度:60℃
溶媒:1.0g/L LiCl N−メチル−2−ピロリドン溶液
検出器:UV(280nm)
検量線:標準ポリスチレン
(2)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 ND−2
(3)プローブ型超音波照射装置(分散処理)
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UIP1000
(4)超音波洗浄器(分散処理)
装置:東京硝子器械(株)製 FU−6H
(5)抵抗率計(表面抵抗測定)
装置:三菱化学(株)製 ロレスタ−GP
プローブ:三菱化学(株)製 直列4探針プローブ ASP(探針間距離:5mm)
(6)ヘイズメーター(全光透過率測定)
装置:日本電色工業(株)製 NDH5000
(7)小型高速冷却遠心機(遠心分離)
装置:(株)トミー精工製 SRX−201
(8)紫外・可視・近赤外分光光度計(吸光度測定)
装置:(株)島津製作所製 UV−3600
測定波長:400〜1650nm
(9)近赤外蛍光分光装置(蛍光スペクトル測定)
装置:HORIBA Jobin Yvon社製 NanoLog
励起波長:500〜900nm
測定(蛍光)波長:945〜1450nm
(10)エアブラシ
装置:アネスト岩田(株)製 Revolution HP−TR2
ノズル口径:0.5mm
ボトル容量:15mL
(11)紫外線可視分光光度計(光透過率スペクトル)
装置:(株)島津製作所製 SHIMADZU UV−3600
(12)エリプソメーター(屈折率、膜厚)
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
(13)示差熱天秤(TG−DTA)
装置:(株)リガク製 TG−8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25℃−750℃
(14)UV/Vis照射示差走査熱量計(Photo−DSC)
装置:(株)NETZSCH製 Photo−DSC 204 F1 Phoenix
昇温速度:40℃/分
測定温度:25℃−350℃
【0051】
CNT−1:未精製MWCNT(CNT社製 “C Tube 100” 外径10〜30nm)
CNT−2:未精製SWCNT(Carbon Nanotechnologies社製 HiPco)
CNT−3:精製SWCNT(Unidym社製)
CNT−4:細径MWCNT(Cheap Tubes社製 “MWNTs>95wt%/<8nm” 外径<8nm)
CNT−5:中繊維径MWCNT−1(昭和電工(株)製 “VGCF−X” 外径:15nm)
CNT−6:中繊維径MWCNT−2(Hanwha Nanotech社製 “CM−95” 外径:10〜15nm)
CNT−7:中繊維径MWCNT−3(Nanocyl社製 “Nanocyl−7000” 外径:10nm)
CNT−8:太径MWCNT(Cheap Tubes社製 “MWCNTs>95wt%/20−40nm” 外径:20〜40nm)
CNT−9:極太径MWCNT(Cheap Tubes社製 “MWCNTs>95wt%/>50nm 外径>50nm)
CNT−10:精製SWCNT−1(KH Chemicals社製)
CNT−11:精製SWCNT−2(名城ナノカーボン(株)製 “FH−P”)
CNT−12:精製SWCNT−3(Hanwha Nanotech社製 “ASP−100F”)
PVP:ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製 K15)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
CHN:シクロヘキサノン
【0052】
[1]分散剤(トリアリールアミン系高分岐ポリマー)の合成1
[実施例1]高分岐ポリマーPTPA−pAAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン[東京化成工業(株)製、以下同様]3.0g(12.2mmol)、p−アニスアルデヒド[純正化学(株)製]1.7g(12.4mmol(トリフェニルアミンに対して1.01eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.26g(1.4mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら120℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をクロロホルム10gで希釈し、メタノール100gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をクロロホルム10gに再溶解させ、メタノール100gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−pAA(以下、単にPTPA−pAAという)3.2gを得た。
得られたPTPA−pAAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは42,000、多分散度Mw/Mnは5.83であった(ここでMnは同条件で測定される数平均分子量を表す。以下同様。)。
【0053】
[実施例2]高分岐ポリマーPTPA−PBA−1の合成
窒素下、50mL四口フラスコに、トリフェニルアミン1.0g(4.1mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製、以下同様]1.5g(8.2mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.23g(1.2mmol(0.3eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間15分反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF20gで希釈し、アセトン50g、メタノール50gおよび28%アンモニア水4gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF20gに再溶解させ、アセトン50gおよびメタノール50gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−PBA−1(以下、単にPTPA−PBA−1という)1.2gを得た。
得られたPTPA−PBA−1の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13,000、多分散度Mw/Mnは2.93であった。
【0054】
[実施例3]高分岐ポリマーPTPA−PBA−2の合成
窒素下、50mL四口フラスコに、トリフェニルアミン1.0g(4.1mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド1.5g(8.2mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.23g(1.2mmol(0.3eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間25分反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF20gで希釈し、アセトン50g、メタノール50gおよび28%アンモニア水4gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF20gに再溶解させ、アセトン50gおよびメタノール50gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−PBA−2(以下、単にPTPA−PBA−2という)1.6gを得た。
得られたPTPA−PBA−2の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは41,000、多分散度Mw/Mnは6.62であった。
【0055】
[実施例4]高分岐ポリマーPTPA−TAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン5.0g(20.4mmol)、3−チオフェンアルデヒド[東京化成工業(株)製]4.6g(40.8mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]8.9g(46.9mmol(2.3eq))、および1,4−ジオキサン15gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら80℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。50分間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF150gで希釈し、アセトン200g、メタノール200gおよび28%アンモニア水8gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF100gに再溶解させ、アセトン200gおよびメタノール200gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−TA(以下、単にPTPA−TAという)6.7gを得た。
得られたPTPA−TAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは77,000、多分散度Mw/Mnは11.25であった。なお、分子量測定には条件Bを使用した。
【0056】
[実施例5]高分岐ポリマーPTPA−TPAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン3.0g(12.2mmol)、テレフタルアルデヒド[純正化学(株)製]0.84g(6.2mmol(0.51eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.23g(1.4mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら110℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF10gで希釈し、アセトン100gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をTHF10gに再溶解させ、アセトン100gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−TPA(以下、単にPTPA−TPAという)2.2gを得た。
得られたPTPA−TPAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは45,000、多分散度Mw/Mnは7.10であった。
【0057】
[実施例6]高分岐ポリマーPTPA−TFMBAの合成
窒素下、50mL四口フラスコに、トリフェニルアミン1.0g(4.1mmol)、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]1.4g(8.2mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.23g(1.2mmol(0.3eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。40分間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をトルエン20gで希釈し、アセトン50g、メタノール50gおよび28%アンモニア水4gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をトルエン20gに再溶解させ、アセトン50gおよびメタノール50gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−TFMBA(以下、単にPTPA−TFMBAという)0.99gを得た。
得られたPTPA−TFMBAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,200、多分散度Mw/Mnは1.78であった。
【0058】
[合成例1]高分岐ポリマーPTPA−BA−1の合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン3.0g(12.2mmol)、ベンズアルデヒド[純正化学(株)製、以下同様]1.3g(12.3mmol(1.01eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.26g(1.4mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をクロロホルム20gで希釈し、メタノール100gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をクロロホルム20gに再溶解させ、アセトン100gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−BA−1(以下、単にPTPA−BA−1という)2.8gを得た。
得られたPTPA−BA−1の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは11,000、多分散度Mw/Mnは2.75であった。
【0059】
[合成例2]高分岐ポリマーPTPA−BA−2の合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン3.0g(12.2mmol)、ベンズアルデヒド2.0g(18.4mmol(1.5eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.24g(1.3mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。1時間40分反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF10gで希釈し、アセトン100gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−BA−2(以下、単にPTPA−BA−2という)2.3gを得た。
得られたPTPA−BA−2の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは81,000、多分散度Mw/Mnは12.04であった。
【0060】
[合成例3]高分岐ポリマーPTPA−DPABAの合成
窒素下、50mL四口フラスコに、トリフェニルアミン0.5g(2.1mmol)、4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]1.1g(4.1mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.19g(1.0mmol(0.5eq))、および1,4−ジオキサン2.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。3時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF10gで希釈し、アセトン50g、メタノール50gおよび28%アンモニア水4gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF10gに再溶解させ、アセトン50gおよびメタノール50gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−DPABA(以下、単にPTPA−DPABAという)0.64gを得た。
得られたPTPA−DPABAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13,000、多分散度Mw/Mnは2.89であった。
【0061】
[合成例4]高分岐ポリマーPTPA−FAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン5.0g(20.4mmol)、36〜38%ホルムアルデヒド液[和光純薬工業(株)製]2.6g(30.6mmol(1.5eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.41g(2.1mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン5.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら110℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF17gで希釈し、アセトン85gおよびヘキサン85gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をTHF17gに再溶解させ、アセトン85gおよびヘキサン85gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−FA(以下、単にPTPA−FAという)2.6gを得た。
得られたPTPA−FAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,700、多分散度Mw/Mnは1.79であった。
【0062】
[参考例1]直鎖ポリマーPDPA−BAの合成
窒素下、100mL四口フラスコにジフェニルアミン[東京化成工業(株)製]2.0g(11.8mmol)、ベンズアルデヒド1.3g(11.9mmol(1.01eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.25g(1.3mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン2.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF20gで希釈し、メタノール70gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする直鎖ポリマーPDPA−BA(以下、単にPDPA−BAという)2.7gを得た。
得られたPDPA−BAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32,000、多分散度Mw/Mnは5.78であった。
【0063】
[参考例2]高分岐ポリマーPTPA−Brの合成
トリフェニルアミンを繰り返し単位として有する高分岐ポリマーの末端ブロモ体PTPA−Br(以下、単にPTPA−Brという)を、特開平10−306143号公報に記載された、トリス(4−ブロモフェニル)アミンのモノグリニャール化合物をニッケル(II)錯体の存在下で重縮合させる方法により合成した。
得られたPTPA−Brの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,400であった。
【0064】
[2]カーボンナノチューブ含有組成物および薄膜の製造1
[実施例7]PTPA−BA−1を用いたCNT−1の分散(1)
分散剤として合成例1で合成したPTPA−BA−1 0.50gをNMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液1.0gに、ブチルセロソルブ0.25gを添加し、薄膜作製用の組成物を調製した。得られた組成物50μLを、スリット幅25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃でおよそ2分間乾燥することで透明で均一なMWCNT/PTPA−BA−1薄膜複合体を作製した。
【0065】
[実施例8]PTPA−BA−1を用いたCNT−1の分散(2)
PTPA−BA−1の添加量を0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−BA−1薄膜複合体を作製した。
【0066】
[実施例9]PTPA−BA−2を用いたCNT−1の分散
分散剤を合成例2で合成したPTPA−BA−2に変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−BA−2薄膜複合体を作製した。
【0067】
[実施例10]PTPA−pAAを用いたCNT−1の分散(1)
分散剤を実施例1で合成したPTPA−pAAに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−pAA薄膜複合体を作製した。
【0068】
[実施例11]PTPA−pAAを用いたCNT−1の分散(2)
分散剤およびその添加量を実施例1で合成したPTPA−pAA 0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−pAA薄膜複合体を作製した。
【0069】
[実施例12]PTPA−PBA−1を用いたCNT−1の分散
分散剤を実施例2で合成したPTPA−PBA−1に変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−
PBA−1薄膜複合体を作製した。
【0070】
[実施例13]PTPA−TAを用いたCNT−1の分散
分散剤を実施例4で合成したPTPA−TAに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−TA薄膜複合体を作製した。
【0071】
[実施例14]PTPA−TPAを用いたCNT−1の分散
分散剤を実施例5で合成したPTPA−TPAに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−TPA薄膜複合体を作製した。
【0072】
[実施例15]PTPA−DPABAを用いたCNT−1の分散
分散剤を合成例3で合成したPTPA−DPABAに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−DPABA薄膜複合体を作製した。
【0073】
[実施例16]PTPA−FAを用いたCNT−1の分散
分散剤を合成例4で合成したPTPA−FAに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−FA薄膜複合体を作製した。
【0074】
[比較例1]PDPA−BAを用いたCNT−1の分散
分散剤を参考例1で合成したPDPA−BAに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PDPA−BA薄膜複合体を作製した。
【0075】
[比較例2]PVPを用いたCNT−1の分散(1)
分散剤をPVPに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PVP薄膜複合体を作製した。
【0076】
[比較例3]PVPを用いたCNT−1の分散(2)
分散剤およびその添加量をPVP0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PVP薄膜複合体を作製した。
【0077】
[比較例4]PTPA−Brを用いたCNT−1の分散
分散剤を参考例2で合成したPTPA−Brに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−Br薄膜複合体を作製した。
【0078】
上記実施例7〜16および比較例1〜4で得られた薄膜複合体の薄膜均一性、表面抵抗および全光透過率を評価した。なお、薄膜の均一性については、目視により、以下の基準に従って評価した。各評価結果を表1に示す。
<薄膜均一性>
○:凝集物のような塊や膜ムラ(濃淡)が全く確認できない。
△:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が見られる。
×:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が薄膜の殆どの部分で見られ、膜としての評価ができない。
【0079】
また、別途、得られたMWCNT含有分散液を、室温(およそ25℃)で1ヶ月静置後、分散液中の沈降物の存在を目視にて確認し、以下の基準に従って、本分散液の分散安定性を評価した。評価結果を表1に併せて示す。
<分散安定性>
○:沈降物が確認できない。
△:沈降物が見られる。
×:分散状態を保てず、MWCNTの大部分が沈降物として現れる。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示されるように、類似骨格を有する直鎖ポリマー(PDPA−BA)との比較として、実施例7および比較例1を比較すると、本発明の分散剤を用いることでCNTを高濃度で安定に分散できることが明らかであり、高分岐構造を有することがCNTを分散する上で重要であることがわかる。また、公知の分散剤であるPVPとの比較として、CNT/分散剤混合比が同一である、実施例7,9,10,12,13,14,15,16および比較例2、並びに実施例8,11および比較例3を比較すると、PVPの場合には表面抵抗値および全光透過率を参考値として示すものの、薄膜が不均一であり、正確な評価ができなかったのに対して、本発明の分散剤を用いた場合には薄膜を調製した際のCNTの均一性が高く、結果として表面抵抗値は安定して10
3〜10
4Ω/□レベルを示し、全光透過率も同等以上であった。以上の点から、本発明の分散剤が高導電性で均一な薄膜複合体を得る上で、有利であることが明らかとなった。
また、例えば実施例7および実施例10,14との比較、並びに実施例8および実施例11との比較で明らかなように、本発明の分散剤は、反応に用いるアルデヒド類(官能基)により得られる薄膜複合体の特性(表面抵抗値、全光透過率)が調整可能であり、このような点でも有利であることが明らかとなった。
【0082】
[実施例17]PTPA−BA−1を用いたCNT−2の分散
分散剤として合成例1で合成したPTPA−BA−1 1mgをNMP5mLに溶解させ、この溶液へSWCNTとしてCNT−2 0.5mgを添加した。この混合物に、超音波洗浄器を用いて室温で1時間超音波処理を行い、室温(およそ25℃)で10,000G、1時間の遠心分離により、上澄み液として黒色透明なSWCNT含有分散液を回収した。
得られた黒色透明なSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S
11バンド(1,400〜1,000nm)、S
22バンド(1,000〜600nm)、および金属性バンド(600〜450nm)の吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
さらに、得られたSWCNT含有分散液の近赤外蛍光スペクトルを測定したところ、孤立分散している半導体性CNTのみに観察されるカイラリティーに対応した蛍光発光が観察され、このことからもSWCNTが孤立分散していることが確認された。
得られたSWCNT含有分散液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基板上に滴下し、スリット幅27μmのバーコーターで展開し、透明で均一なCNT−2/PTPA−BA−1薄膜複合体を得た。
【0083】
[実施例18]PTPA−BA−1を用いたCNT−3の分散
SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、半導体性S
11バンド、S
22バンド、および金属性バンドの吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
また、この分散液を実施例17と同様にPET基板上に滴下し、スリット幅27μmのバーコーターで展開し、透明で均一なCNT−3/PTPA−BA−1薄膜複合体を得た。
【0084】
[実施例19]PTPA−PBA−1を用いたCNT−2の分散
分散剤を実施例2で合成したPTPA−PBA−1に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例17の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
さらに、近赤外蛍光スペクトル測定から、孤立分散している半導体性CNTのみに観察されるカイラリティーに対応した蛍光発光が観察され、このことからもSWCNTが孤立分散していることが確認された。
また、この分散液を実施例17と同様にPET基板上に滴下し、スリット幅27μmのバーコーターで展開し、透明で均一なCNT−2/PTPA−PBA−1薄膜複合体を得た。
【0085】
[実施例20]PTPA−PBA−1を用いたCNT−3の分散
分散剤を実施例2で合成したPTPA−PBA−1に、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例18の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
さらに、近赤外蛍光スペクトル測定から、孤立分散している半導体性CNTのみに観察されるカイラリティーに対応した蛍光発光が観察され、このことからもSWCNTが孤立分散していることが確認された。
また、この分散液を実施例17と同様にPET基板上に滴下し、スリット幅27μmのバーコーターで展開し、透明で均一なCNT−3/PTPA−PBA−1薄膜複合体を得た。
【0086】
[実施例21]PTPA−PBA−2を用いたCNT−2の分散
分散剤を実施例3で合成したPTPA−PBA−2に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例17の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
さらに、近赤外蛍光スペクトル測定から、孤立分散している半導体性CNTのみに観察されるカイラリティーに対応した蛍光発光が観察され、このことからもSWCNTが孤立分散していることが確認された。なお、
図2に得られた近赤外蛍光スペクトルを示す。
また、この分散液を実施例17と同様にPET基板上に滴下し、スリット幅27μmのバーコーターで展開し、透明で均一なCNT−2/PTPA−PBA−2薄膜複合体を得た。
【0087】
[実施例22]PTPA−PBA−2を用いたCNT−3の分散(1)
分散剤を実施例3で合成したPTPA−PBA−2に、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例18の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
さらに、近赤外蛍光スペクトル測定から、孤立分散している半導体性CNTのみに観察されるカイラリティーに対応した蛍光発光が観察され、このことからもSWCNTが孤立分散していることが確認された。なお、
図3に得られた近赤外蛍光スペクトルを示す。
また、この分散液を実施例17と同様にPET基板上に滴下し、スリット幅27μmのバーコーターで展開し、透明で均一なCNT−3/PTPA−PBA−2薄膜複合体を得た。
【0088】
[実施例23]PTPA−PBA−2を用いたCNT−3の分散(2)
実施例22において、CNT−3添加量を1.0mgに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例22の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0089】
[実施例24]PTPA−PBA−2を用いたCNT−3の分散(3)
実施例22において、CNT−3添加量を2.5mgに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例23の場合よりも更に強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
なお、実施例22〜24で得られた分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図4に示す。
【0090】
[実施例25]PTPA−TAを用いたCNT−2の分散
分散剤を実施例4で合成したPTPA−TAに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例17の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0091】
[実施例26]PTPA−TAを用いたCNT−3の分散
分散剤を実施例4で合成したPTPA−TAに、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例18の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0092】
[実施例27]PTPA−TFMBAを用いたCNT−2の分散
分散剤を実施例6で合成したPTPA−TFMBAに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例17の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0093】
[実施例28]PTPA−TFMBAを用いたCNT−3の分散
分散剤を実施例6で合成したPTPA−TFMBAに、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例18の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0094】
[実施例29]PTPA−DPABAを用いたCNT−2の分散
分散剤を合成例3で合成したPTPA−DPABAに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例17の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0095】
[実施例30]PTPA−DPABAを用いたCNT−3の分散
分散剤を合成例3で合成したPTPA−DPABAに、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度が実施例18の場合よりも強く観察され、SWCNTがより高濃度で孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0096】
[実施例31]PTPA−FAを用いたCNT−2の分散
分散剤を合成例4で合成したPTPA−FAに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0097】
[実施例32]PTPA−FAを用いたCNT−3の分散
分散剤を合成例4で合成したPTPA−FAに、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定から、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0098】
[比較例5]CNT−2単独での分散
分散剤のPTPA−BA−1を添加しない以外は実施例17と同様の操作を行ったが、SWCNTを分散させることはできなかった。
【0099】
[比較例6]PTPA−Brを用いたCNT−2の分散
分散剤を参考例2で合成したPTPA−Brに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒味を帯びた透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。しかし、その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定では、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度は実施例17の場合と比較して弱く、SWCNTを高濃度で孤立分散状態にまで分散させることは困難であった。
【0100】
[比較例7]PVPを用いたCNT−2の分散
分散剤をPVPに変更した以外は、実施例17と同様にして、黒味を帯びた透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。しかし、その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定では、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度は実施例17の場合と比較して非常に弱く、SWCNTを孤立分散状態にまで分散させることは困難であった。
【0101】
[比較例8]PVPを用いたCNT−3の分散
分散剤をPVPに、SWCNTをCNT−3に変更した以外は、実施例17と同様にして、黒色透明なSWCNT含有分散液を作製し、これを評価した。しかし、その紫外可視近赤外吸収スペクトル測定では、SWCNTが孤立分散している時に確認される吸収の強度は実施例18の場合と比較して弱く、SWCNTを高濃度で孤立分散状態にまで分散させることは困難であった。
【0102】
[3]分散剤(トリアリールアミン系高分岐ポリマー)の合成2
[実施例33]高分岐ポリマーPTPA−PBA−3の合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン[Zhenjiang Haitong Chemical Industry社製]8.0g(32.6mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド[三菱ガス化学(株)製、製品名4−BPAL]11.9g(65.2mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[江南化工(株)製]1.2g(6.5mmol(0.2eq))、および1,4−ジオキサン16gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら85℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。4時間30分反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF40gで希釈し、メタノール400gおよび28%アンモニア水4gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−PBA−3(以下、単にPTPA−PBA−3という)14.9gを得た。
PTPA−PBA−3の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13,000、多分散度Mw/Mnは3.39であった。
【0103】
[実施例34]高分岐ポリマーPTPA−PBA−4の合成
窒素下、1L四口フラスコに、トリフェニルアミン[Zhenjiang Haitong Chemical Industry社製]80.0g(326mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド[三菱ガス化学(株)製、製品名4−BPAL]118.9g(652mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[江南化工(株)製]12.4g(65mmol(0.2eq))、および1,4−ジオキサン160gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら85℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。6時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF560gで希釈し、28%アンモニア水80gを加えた。その混合溶液をメタノール4000gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF640gに再溶解させ、メタノール4000gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−PBA−4(以下、単にPTPA−PBA−4という)122.9gを得た。
PTPA−PBA−4の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは19,000、多分散度Mw/Mnは4.35であった。
【0104】
[実施例35]高分岐ポリマーPTPA−PBA−5の合成
窒素下、200mL四口フラスコに、トリフェニルアミン[東京化成工業(株)製]5.0g(20.4mmol、)、4−フェニルベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]7.4g(40.8mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]1.2g(6.1mmol(0.3eq))、および1,4−ジオキサン10gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。45分間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF100gで希釈し、アセトン250g、メタノール250gおよび28%アンモニア水20gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF100gに再溶解させ、アセトン250gおよびメタノール250gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−PBA−5(以下、単にPTPA−PBA−5という)5.7gを得た。
PTPA−PBA−5の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,400、多分散度Mw/Mnは1.90であった。
【0105】
[実施例36]高分岐ポリマーPTPA−PBA−6の合成
窒素下、1L四口フラスコに、トリフェニルアミン[Zhenjiang Haitong Chemical Industry社製]80.0g(326mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド[三菱ガス化学(株)製、製品名4−BPAL]118.8g(652mmol(2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[江南化工(株)製]12.4g(65.2mmol(0.2eq))、および1,4−ジオキサン160gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら85℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。6時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF560gで希釈し、28%アンモニア水80gを加えた。その混合溶液をアセトン2000gおよび水400gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF640gに再溶解させ、アセトン2000gおよび水400gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−PBA−6(以下、単にPTPA−PBA−6という)115.1gを得た。
PTPA−PBA−6の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、多分散度Mw/Mnは3.82であった。
【0106】
[4]カーボンナノチューブ含有組成物および薄膜の製造2
[実施例37]PTPA−PBA−3を用いたCNT−1の分散
分散剤として実施例33で合成したPTPA−PBA−3 0.50gをNMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液1.0gに、CHN0.25gを添加し、薄膜作製用の組成物を調製した。得られた組成物50μLを、スリット幅25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃でおよそ2分間乾燥することで透明で均一なMWCNT/PTPA−PBA−3薄膜複合体を作製した。
得られた薄膜複合体の薄膜均一性、表面抵抗および全光透過率を評価した。なお、薄膜の均一性については、目視により、以下の基準に従って評価した。評価結果を表2に示す。また、別途、得られたMWCNT含有分散液を、室温(およそ25℃)で1ヶ月静置後、分散液中の沈降物の存在を目視にて確認し、以下の基準に従って、本分散液の分散安定性を評価した。評価結果を表2に併せて示す。
<薄膜均一性>
○:凝集物のような塊や膜ムラ(濃淡)が全く確認できない。
△:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が見られる。
×:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が薄膜の殆どの部分で見られ、膜としての評価ができない。
<分散安定性>
○:沈降物が確認できない。
△:沈降物が見られる。
×:分散状態を保てず、MWCNTの大部分が沈降物として現れる。
【0107】
[実施例38]PTPA−PBA−3を用いたCNT−4の分散
MWCNTをCNT−4に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0108】
[実施例39]PTPA−PBA−3を用いたCNT−5の分散
MWCNTをCNT−5に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0109】
[実施例40]PTPA−PBA−3を用いたCNT−6の分散
MWCNTをCNT−6に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0110】
[実施例41]PTPA−PBA−3を用いたCNT−7の分散
MWCNTをCNT−7に、超音波処理時間を60分間にそれぞれ変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0111】
[実施例42]PTPA−PBA−3を用いたCNT−8の分散
MWCNTをCNT−8に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0112】
[実施例43]PTPA−PBA−3を用いたCNT−9の分散
MWCNTをCNT−9に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0113】
[比較例9]PVPを用いたCNT−1の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−1に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0114】
[比較例10]PVPを用いたCNT−4の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−4に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0115】
[比較例11]PVPを用いたCNT−5の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−5に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0116】
[比較例12]PVPを用いたCNT−6の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−6に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0117】
[比較例13]PVPを用いたCNT−7の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−7に、超音波処理時間を60分間にそれぞれ変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0118】
[比較例14]PVPを用いたCNT−8の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−8に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0119】
[比較例15]PVPを用いたCNT−9の分散
分散剤をPVPに、MWCNTをCNT−9に変更した以外は、実施例37と同様にMWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
【0120】
【表2】
【0121】
表2に示されるように、薄膜作製の際にCHNを添加することにより、均一な薄膜複合体の作製が可能であった。公知の分散剤であるPVPと比較すると、特にCNT−1(実施例37と比較例9)あるいはCNT−6(実施例40と比較例12)を用いた場合に顕著であるように、PVPの場合には表面抵抗値および全光透過率を参考値として示すものの、薄膜が不均一であり、正確な評価ができなかったのに対して、本発明の分散剤を用いた場合には薄膜を調製した際のCNTの均一性が高く、結果として表面抵抗値は安定して10
4Ω/□レベルを示し、全光透過率も同等以上であった。
またMWCNT種が同一である実施例39と比較例11(CNT−5)、実施例41と比較例13(CNT−7)、実施例42と比較例14(CNT−8)、実施例43と比較例15(CNT−9)をそれぞれ比較すると、本発明の分散剤を用いて作製したMWCNT薄膜複合体は、公知の分散剤であるPVPを用いた場合よりも表面抵抗値が1〜2桁程も低く、全光透過率も同等以上であった。これらの結果から、本発明の分散剤が高導電性で均一な薄膜複合体を得る上で、有利であることが明らかとなった。
さらに、より外径が細いMWCNT(CNT−4)の分散では、表2に示されるように、本発明の分散剤を用いた場合にのみ、MWCNTが均一に分散したMWCNT含有分散液が得られ、薄膜複合体の調製が可能であった。CNT−4のようなより外径の細いMWCNTを用いることで、薄膜複合体の透明性の向上が期待できるため、本発明の分散剤は透明性の点でも有利であることが明らかとなった。
以上の結果から、本発明の分散剤が高導電性で均一な薄膜複合体を得る上で有利であると共に、市販のMWCNTの分散において幅広く適用可能であることが明らかとなった。
【0122】
[実施例44]PTPA−PBA−4およびウリル系架橋剤を用いたCNT−1薄膜複合体の熱硬化
分散剤として実施例34で合成したPTPA−PBA−4 0.50gをNMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液10.0gに、ウリル系架橋剤として1,3,4,6−テトラ
キス(メトキシメチル)グリコールウリル0.02g、硬化触媒としてピリジニウムp−トルエンスルホナート0.005g、およびCHN2.5gを添加し、薄膜作製用の組成物を調製した。得られた組成物50μLを、スリット幅25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃でおよそ2分間乾燥することで黒色透明で均一なMWCNT/PTPA−PBA−4薄膜複合体を作製した。この薄膜複合体を、さらに250℃で20分間ポストベークし、熱硬化を行った。
得られた薄膜複合体の、熱硬化前後の表面抵抗、全光透過率および鉛筆硬度を評価した。なお、鉛筆硬度については、JIS K5600−5−4に準じて、手かき法により測定した。評価結果を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
実施例44で得られた薄膜複合体は均一であり、架橋剤および触媒を添加して薄膜複合体を作製した場合でもMWCNTの分散性は維持された。さらに高温でポストベークして熱硬化することで、鉛筆硬度の大幅な向上が確認された。このことから、本発明の分散剤を用いて作製したMWCNT薄膜複合体は、ウリル系架橋剤などの適当な架橋剤を用い、高温でポストベークすることで熱硬化することが明らかであり、薄膜複合体として硬度や溶媒耐性の求められる用途に好適に用いることができる。
【0125】
[実施例45]PTPA−PBA−5を用いたCNT−3の分散
分散剤として実施例35で合成したPTPA−PBA−5 2mgをNMP50mLに溶解させ、この溶液へSWCNTとしてCNT−3 2mgを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で10分間超音波処理を行い、室温(およそ25℃)で10,000G、1時間の遠心分離により、上澄み液として黒色透明なSWCNT含有分散液を回収した。
得られた黒色透明なSWCNT含有分散液を、エアブラシ(窒素圧力0.2MPa)を用いて、230℃のホットプレートで加熱しているガラス基板上にスプレー塗布することで、均一なSWCNT/PTPA−PBA−5薄膜複合体を作製した。また、エアブラシによりスプレー塗布するSWCNT含有分散液の量を調整することで、膜厚の異なる薄膜複合体を作製し、得られた薄膜複合体の表面抵抗及び全光透過率を評価した。評価結果を全光透過率に対する表面抵抗の関係として
図5に示す。また、全光透過率が約90%の薄膜複合体の表面抵抗を表4に示す。
【0126】
[実施例46]PTPA−PBA−5を用いたCNT−10の分散
SWCNTをCNT−10に変更した以外は、実施例45と同様にSWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を
図5および表4に併せて示す。
【0127】
[実施例47]PTPA−PBA−5を用いたCNT−11の分散
SWCNTをCNT−11に変更した以外は、実施例45と同様にSWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を
図5および表4に併せて示す。
【0128】
[実施例48]PTPA−PBA−5を用いたCNT−12の分散
SWCNTをCNT−12に変更した以外は、実施例45と同様にSWCNT含有分散液を作製し評価を行った。評価結果を
図5および表4に併せて示す。
【0129】
[比較例16]PVPを用いたCNT−3の分散
分散剤をPVPに変更した以外は、実施例45と同様の操作を行ったが、SWCNTの分散性が低く、均一な薄膜複合体の作製および評価が困難であった。
【0130】
[比較例17]PVPを用いたCNT−10の分散
分散剤をPVPに、SWCNTをCNT−10に変更した以外は、実施例45と同様の操作を行ったが、SWCNTの分散性が低く、均一な薄膜複合体の作製および評価が困難であった。
【0131】
[比較例18]PVPを用いたCNT−11の分散
分散剤をPVPに、SWCNTをCNT−11に変更した以外は、実施例45と同様の操作を行ったが、SWCNTの分散性が低く、均一な薄膜複合体の作製および評価が困難であった。
【0132】
[比較例19]PVPを用いたCNT−12の分散
分散剤をPVPに、SWCNTをCNT−12に変更した以外は、実施例45と同様の操作を行ったが、SWCNTの分散性が低く、均一な薄膜複合体の作製および評価が困難であった。
【0133】
【表4】
【0134】
本発明の分散剤を用いることで、様々な市販SWCNTの分散が可能であると共に、公知分散剤であるPVPと比較して、均一なSWCNT含有分散液を調製することができ、分散液から透明性・導電性に優れた薄膜複合体を調製できる。また
図5に示されるように、ガラス基板にスプレー塗布するSWCNT含有分散液の量を調整することで、幅広い範囲で全光透過率および表面抵抗の調整された薄膜複合体を作製でき、幅広い用途に適用可能である。
さらに表4に示されるように、全光透過率が約90%の薄膜複合体の表面抵抗は10
3〜10
4Ω/□レベルであり、同程度の表面抵抗を示す薄膜複合体で比較すると、MWCNTを用いた場合と比較して全光透過率の高い薄膜複合体を調製できる。このことから、本発明の分散剤とSWCNTを用いることで薄膜複合体の透明性の向上が期待でき、高導電性かつ高透明性で均一な薄膜複合体を得る上で、有利であることが明らかとなった。
【0135】
[5]カーボンナノチューブ含有組成物および成形体の製造(マトリックス樹脂配合)
[実施例49]PTPA−PBA−6を用いたCNT−1と熱可塑性樹脂の複合化
マトリックス樹脂としてポリアミド樹脂[(株)クラレ製 “ジェネスタPA9MT”]3.82g、MWCNTとしてCNT−1 0.04g(全体の1質量%)、および分散剤として実施例36で合成したPTPA−PBA−6 0.04g(全体の1質量%、CNT:分散剤=1:1)を、混練機[(株)東洋精機製作所製 “ラボプラストミルマイクロ”(混練部ミキサ容量5mL)]を用いて、温度270℃、回転数50rpm(実効回転数150rpm)で5分間溶融混練し、複合化させた。
得られた複合体をペレタイズし、直径2.5cm、厚さ約2mmの真鋳製の金型に充填した後、270℃でホットプレスすることにより円盤状の成形体を作製した。得られた成形体の表面抵抗を高抵抗率計[三菱化学(株)製 “ハイレスタUP”(URSプローブ、レジテーブルを接続して使用)]により、印加電圧1000Vとして評価した。評価結果を表5に示す。
【0136】
[比較例20]分散剤を用いないCNT−1と熱可塑性樹脂の複合化
ポリアミド樹脂の添加量を3.86gに変更し、分散剤を添加しなかった以外は、実施例49と同様に成形体を作製し評価を行った。評価結果を表5に併せて示す。
【0137】
【表5】
【0138】
表5に示されるように、実施例49で作製した成形体の表面抵抗は10
14Ω/□レベルであり、分散剤を添加しない比較例20で作製した成形体と比較して表面抵抗の低下が確認された。これは、本発明の分散剤を用いることで、溶融混練の際に溶融した樹脂中でMWCNTがより均一に分散されたと考えられ、作製した成形体中でより均一に分散したMWCNT同士が接触し、導電ネットワークが形成されるのに有利であったためと考えられる。この結果から、本発明の分散剤を使用することで、低いCNTの添加量でも高導電性の樹脂複合体を得る上で、有利であることが明らかとなった。
【0139】
上記のように、本発明の分散剤を用いることで、分散剤の添加量を増加させずにCNTを高濃度で安定に分散でき、分散剤によるCNT特性の阻害を抑えて薄膜複合体を得る上で有利であることが明らかである。また、本発明の分散剤を用いた場合では、CNTの精製処理、すなわちCNTの表面状態や不純物の量に関わらず、CNTを高濃度で安定に分散できることが明らかであり、公知の分散剤であるPVPと比較して幅広いCNTの分散に適用可能である。
以上の点から、本発明の分散剤が幅広い応用に向けて、均一な分散液・薄膜複合体を得る上で有利であることが明らかとなった。
【0140】
[6]トリアリールアミン系高分岐ポリマーの合成
[実施例50]高分岐ポリマーPTPA−NAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン3.0g(12.2mmol)、1−ナフトアルデヒド[純正化学(株)製]2.0g(12.5mmol(トリフェニルアミンに対して1.02eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.26g(1.4mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン3.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をクロロホルム20gで希釈し、メタノール100gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をクロロホルム20gに再溶解させ、アセトン100gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−NA(以下、単にPTPA−NAという)2.3gを得た。
得られたPTPA−NAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,400、多分散度Mw/Mnは1.49であった。
【0141】
[実施例51]高分岐ポリマーPTPA−AAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン5.0g(20.4mmol)、9−アントラセンカルボキシアルデヒド[純正化学(株)製]4.3g(20.6mmol(1.01eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]1.5g(7.6mmol(0.4eq))、および1,4−ジオキサン5.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をクロロホルム20gで希釈し、メタノール200gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をクロロホルム20gに再溶解させ、アセトン200gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−AA(以下、単にPTPA−AAという)4.1gを得た。
得られたPTPA−AAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,900、多分散度Mw/Mnは1.31であった。
【0142】
[合成例5]高分岐ポリマーPTPA−BA−3の合成
窒素下、100mL四口フラスコに、トリフェニルアミン10.0g(40.8mmol)、ベンズアルデヒド[純正化学(株)製、以下同様]6.5g(61.4mmol(1.52eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.81g(4.3mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン10gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。2時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をクロロホルム30gで希釈し、メタノール300gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をクロロホルム30gに再溶解させ、アセトン300gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする高分岐ポリマーPTPA−BA
−3(以下、単にPTPA−BA−3という)8.7gを得た。
得られたPTPA−BA−3の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,800、多分散度Mw/Mnは2.10であった。
【0143】
[参考例3]直鎖ポリマーPDPA−BA−2の合成
窒素下、100mL四口フラスコにジフェニルアミン[東京化成工業(株)製]2.0g(11.8mmol)、ベンズアルデヒド1.3g(11.9mmol(1.01eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[関東化学(株)製]0.25g(1.3mmol(0.1eq))、および1,4−ジオキサン4.0gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら100℃まで昇温して溶解させ、重合を開始した。45分間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をクロロホルム20gで希釈し、メタノール100gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、得られた固体をクロロホルム8gに再溶解させ、メタノール100gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、60℃で10時間減圧乾燥し、目的とする直鎖ポリマーPDPA−BA
−2(以下、単にPDPA−BA
−2という)2.3gを得た。
得られたPDPA−BA
−2の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは9,900、多分散度Mw/Mnは2.47であった。
【0144】
[各ポリマーの熱分析]
上記実施例1,2,4,5,50,51、合成例5および参考例3で得られた各ポリマーについて、DSCによりガラス転移温度(Tg)を、TG−DTAにより5%重量減少温度(Td
5%)をそれぞれ測定した。結果を表6に示す。
【0145】
[7]膜形成用組成物および薄膜の製造
【0146】
[実施例52〜58]高分岐ポリマー薄膜の作製および特性評価
実施例1,2,4,5,50,51および合成例5で得られた高分岐ポリマー1.0gをそれぞれCHN9.0gに溶解させ、各高分岐ポリマーの10質量%ワニスを薄黄色透明溶液として得た。
得られたワニスを、ガラス基板上にスピンコーターを用いて膜厚がおよそ300nmとなるように塗布した。この塗布膜を、100℃のホットプレートで1分間、さらに250℃で5分間焼成し、各高分岐ポリマーの薄膜をそれぞれ得た。
得られた薄膜それぞれについて、エリプソメーターにより550nmおよび633nmにおける屈折率、ならびに膜厚を測定した。結果を表6に併せて示す。また、得られた薄膜の光透過率スペクトルを
図6〜12に示す。
【0147】
また、別途、得られたワニスを、温度23℃、相対湿度55RH%で1ヶ月静置後、ワニスを目視で確認した。何れの高分岐ポリマーも析出することはなく、これらのワニスは保存安定性に優れていることが確認された。
【0148】
[比較例21]直鎖ポリマー薄膜の作製および特性評価
参考例3で得られたPDPA−BA−2について、実施例52と同様に薄膜を作製し評価を行った。結果を表6に併せて示す。また、光透過率スペクトルを
図13に示す。
【0149】
【表6】
【0150】
表6に示されるように、各高分岐ポリマーのTd
5%は401〜551℃であり、直鎖ポリマー(PDPA−BA
−2)の337℃に比べ、非常に耐熱性に優れていることが確認された。また、各高分岐ポリマーからなる薄膜の屈折率は、波長550nmで1.720〜1.776、波長633nmで1.702〜1.747の範囲にあり、非常に高屈折率であることが確認された。
また、
図6〜13に示されるように、実施例52〜58で得られた薄膜は、比較例21で得られた薄膜に比べて可視光領域である400〜800nmの透過率が高く、高い透明性を有していることが確認された。
【0151】
以上に示したように、本発明の高分岐ポリマーは、透明性と耐熱性に優れ、高い屈折率を有し、かつ、様々な溶媒への溶解性に優れているため、液晶表示素子の保護膜、TFTアレイ平坦化膜、カラーフィルター等のオーバーコート、スペーサー材、ELディスプレイの光取り出し向上膜、撮像素子の光取り入れ向上層、LED素子における光取り向上層等に応用可能である。