特許第5716675号(P5716675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716675
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】電極保護膜形成剤
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20150423BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   G02F1/1333 505
   C08G77/26
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-544268(P2011-544268)
(86)(22)【出願日】2010年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2010071502
(87)【国際公開番号】WO2011068128
(87)【国際公開日】20110609
【審査請求日】2013年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2009-274662(P2009-274662)
(32)【優先日】2009年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】元山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】村梶 慶太
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−341288(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/088039(WO,A1)
【文献】 特開2008−156596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極保護膜の上層に液晶配向膜が形成される液晶表示素子用の電極保護膜を得るための電極保護膜形成剤であり、式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(2)で表されるアルコキシシランをみ、かつ式(1)で表されるアルコキシシランが、全アルコキシシラン中、0.5〜60モル%含まれ、かつ式(2)で表されるアルコキシシランが全アルコキシシラン中、40〜99.5モル%含むアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンを含有することを特徴とする電極保護膜形成剤。
{Si(OR (1)
(Rはウレイド基で置換された炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基であり、pは1又は2の整数を表す。)
(RSi(OR4−n (2)
(Rは、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、イソシアネート基若しくはアクリロキシ基で置換されていてもよい、炭素原子数1〜8の炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基であり、nは0〜3の整数を表す。)
【請求項2】
式(2)におけるnが0である、テトラアルコキシシランである請求項1に記載の電極保護膜形成剤。
【請求項3】
前記式(1)で表されるアルコキシシランが、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン及びγ−ウレイドプロピルトリプロポキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の電極保護膜形成剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の電極保護膜形成剤を基板に塗布し、焼成して得られる、その上層に液晶配向膜が形成される液晶表示素子用の電極保護膜。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の電極保護膜形成剤を基板に塗布し、室温〜120℃の温度で乾燥した後、焼成する電極保護膜の形成方法。
【請求項6】
焼成温度が、100〜180℃である、請求項に記載の電極保護膜の形成方法。
【請求項7】
請求項に記載の電極保護膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に用いられる、ポリシロキサンを含有する電極保護膜形成剤、電極保護膜及び該電極保護膜を有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造において、透明電極の絶縁、保護を目的に透明電極と液晶配向膜の間に酸化物被膜を形成することが行われている。酸化物被膜の形成方法は、蒸着法、スパッタリング法等で代表される気相法と酸化物被膜形成用塗布液を用いる塗布法が知られている。この中で、生産性や大型基板への被膜形成の容易さから、塗布法が多く用いられている。塗布液としては、テトラアルコキシシランの加水分解物及びその他の金属アルコキシドや金属キレート化合物との複合物が知られている。金属アルコキシドを用いて塗布液が調製される場合、一般に金属アルコキシドはケイ素を除いては加水分解速度が速く、反応制御が困難である。そのため、アルコキシドの加水分解速度を調整する目的で、アセチルアセトン等のキレート化剤を作用させることが試みられている。しかし、一般にキレート化された化合物は、熱分解温度が高くなり、450℃以上の焼成が望ましいとされている。(例えば、特許文献1参照。)
別の方法として、シリカ−チタニア系塗布液において、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドの加水分解物に鉱酸を添加することで、キレート化等の安定化手段を用いずに透明なコーティング剤とすることが試みられている。この場合も、少なくとも300℃以上の焼成が必要とされている。(例えば、特許文献2参照。)
また、最近ではプラスチックLCDや電子ペーパー等、基材にプラスチック板やプラスチックフィルムを使用するディスプレイも提案され、200℃以下の低温でも十分な硬度が得られ、かつ上層配向剤が欠陥無く塗布できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−258959号公報
【特許文献2】特開昭55−25487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1および特許文献2の方法では、200℃以下の焼成温度で十分な硬度の電極保護膜が得られ難い。そして、電極保護膜の上層に液晶配向膜を形成する際に、配向膜にはじきやピンホールが発生するという問題がある。
本発明では、150℃以下の低温で焼成した場合でも十分な硬度の電極保護膜を形成できる電極保護膜形成剤、電極保護膜及び該電極保護膜を有する液晶表示素子を提供することを目的とする。液晶表示素子に用いる場合、電極保護膜の上層にはじきやピンホールの発生が抑制された液晶配向膜を形成できる電極保護膜形成剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の状況に鑑み鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.電極保護膜の上層に液晶配向膜が形成される液晶表示素子用の電極保護膜を得るための電極保護膜形成剤であり、式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(2)で表されるアルコキシシランを含み、かつ式(1)で表されるアルコキシシランが、全アルコキシシラン中、0.5〜60モル%含まれ、かつ式(2)で表されるアルコキシシランが全アルコキシシラン中、40〜99.5モル%含むアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンを含有することを特徴とする電極保護膜形成剤。
{Si(OR (1)
(Rはウレイド基で置換された炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基であり、pは1又は2の整数を表す。)
(RSi(OR4−n (2)
(Rは、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、イソシアネート基若しくはアクリロキシ基で置換されていてもよい、炭素原子数1〜8の炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基であり、nは0〜3の整数を表す。)
2.式(2)におけるnが0である、テトラアルコキシシランである上記1に記載の電極保護膜形成剤。
3.前記式(1)で表されるアルコキシシランが、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン及びγ−ウレイドプロピルトリプロポキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記1又は2に記載の電極保護膜形成剤。
4.上記1〜のいずれかに記載の電極保護膜形成剤を基板に塗布し、焼成して得られる、その上層に液晶配向膜が形成される液晶表示素子用の電極保護膜。
5.上記1〜のいずれかに記載の電極保護膜形成剤を基板に塗布し、室温〜120℃の温度で乾燥した後、焼成する電極保護膜の形成方法。
6.焼成温度が、100〜180℃である、上記に記載の電極保護膜の形成方法。
7.上記に記載の電極保護膜を有する液晶表示素子。


【発明の効果】
【0006】
本発明の電極保護膜形成剤から得られる電極保護膜は、150℃以下という低温の硬化条件で十分な硬度を有するため、プラスチック基板等の耐熱性の低い基板に適用可能である。また、液晶表示素子に用いる場合には、形成した電極保護膜の上にはじきやピンホールを抑制した液晶配向膜を形成することができる。そのためプラスチック基板等の耐熱性の低い基板でも表示特性に優れた液晶表示素子の製造に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の電極保護膜形成剤は、ウレイド基を持つポリシロキサンを含有することを最大の特徴とするものである。そのため100〜150℃という低温においても十分な硬度を有する電極保護膜を形成することが可能である。
従来、シロキサンポリマー又は酸化物前駆物質から形成される酸化物薄膜は、焼成温度が低い場合は、塗膜中に残存するアルコキシ基が十分に分解しない。そのため、液晶表示素子に用いる場合は、界面特性が異なるポリイミド系配向膜と十分な親和性、密着性を得ることができず、配向膜を形成する際にはじきやピンホールが発生する原因になると推定できる。本発明では、電極保護膜形成剤にウレイド基を含有することにより、ポリイミド系配向剤との親和性が向上し、はじきやピンホールが抑制できるだけでなく、電極保護膜形成剤を100〜150℃の低温で焼成した場合でも十分に硬化するものと推察される。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0008】
[ポリシロキサン]
本発明の電極保護膜形成剤は、下記式(1)で表されるアルコキシシランを含むアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンである。
{Si(OR (1)
式(1)中、Rはウレイド基で置換された炭素原子数1〜12の炭化水素基であるが、詳述すると、炭素原子数1〜12の炭化水素基の任意の水素原子がウレイド基で置換された基を表す。Rは、好ましくはウレイド基で置換された炭化水素基の炭素原子数1〜7である。Rは炭素原子数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。pは1又は2の整数を表す。R、Rは直鎖構造でも、分岐構造を有していてもよい。
式(1)で表されるアルコキシシランにおいて、pが1の場合は式(1−1)で表されるアルコキシシランである。
Si(OR (1−1)
また、pが2の場合は式(1−2)で表されるアルコキシシランである。
(RO)Si−R1−Si(OR (1−2)
式(1−1)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではでない。例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリプロポキシシラン、(R)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、(R)−N−1−フェニルエチル−N’−トリメトキシシリルプロピルウレア等が挙げられる。
なかでも、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、又はγ−ウレイドプロピルトリメトキシシランは、市販品として入手が容易であるため特に好ましい。
式(1−2)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではでない。例えば、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス[3−(トリエトキシシリル)エチル]ウレア、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]ウレア等が挙げられる。なかでも、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレアは、市販品として入手が容易であるため特に好ましい。
式(1)で表されるアルコキシシランは、電極保護膜形成剤を得るために用いる全アルコキシシラン中において、0.5モル%未満の場合には良好な液晶配向膜の印刷性が得られない場合があるため、0.5モル%以上が好ましい。より好ましくは1.0モル%以上である。更に好ましくは2.0モル%以上である。また、60モル%を超える場合は、形成される電極保護膜が十分に硬化しない場合があるため、60モル%以下が好ましい。より好ましくは50モル%以下である。更に好ましくは40モル%以下である。
【0009】
また、本発明の電極保護膜形成剤は、式(1)で表されるアルコキシシランとともに、下記式(2)で表されるアルコキシシランの少なくとも1種を含むアルコキシシランを重縮合して得ることができる。
(RSi(OR4−n (2)
(Rは、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、イソシアネート基若しくはアクリロキシ基で置換されていてもよい、炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基であり、nは0〜3、好ましくは0〜2の整数を表す。)
式(2)で表されるアルコキシシランのRは、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、イソシアネート基若しくはアクリロキシ基で置換されていてもよい、炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜6の炭化水素基である。Rは上述したRと同義であり、好ましい範囲も同様である。Rの例としては、脂肪族炭化水素;脂肪族環、芳香族環若しくはヘテロ環のような環構造;不飽和結合;酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子等を含んでいてもよく、分岐構造を有していてもよい、炭素原子数が1〜6の有機基である。加えて、Rはハロゲン原子、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、イソシアネート基、アクリロキシ基などで置換されていてもよい。
【0010】
以下にこのような式(2)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
式(2)のアルコキシシランにおいて、Rが水素原子である場合のアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン等が挙げられる。
又、その他の式(2)のアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3―アミノプロピルジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0011】
本発明の電極保護膜形成剤は、基板との密着性、膜の硬度、上層液晶配向膜の印刷性等の、本発明の効果を損なわない限りにおいて、このような特定の有機基を一種又は複数種有していてもよい。
式(2)で表されるアルコキシシランにおいて、nが0であるアルコキシシランは、テトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、式(1)で表されるアルコキシシランと縮合し易いので、本発明のポリシロキサンを得るために好ましい。
このような式(2)においてnが0であるアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランがより好ましく、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが特に好ましい。
式(2)で表されるアルコキシシランを併用する場合、電極保護膜形成剤を得るために用いる全アルコキシシラン中において、式(2)で表されるアルコキシシランが40〜99.5モル%であることが好ましい。より好ましくは、50〜99.5モル%である。更に好ましくは60〜99.5モル%である。
本発明では、電極保護膜形成剤は式(1)で表されるアルコキシシランと、式(2)で表されるアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種の化合物とを重縮合して得られるポリシロキサンであることが好ましい。
本発明の電極保護膜形成剤は、膜の硬度、上層液晶配向膜の印刷性等の、本発明の効果を損なわない限りにおいて、このような一種又は複数種のアルコキシシランを併用していてもよい。
【0012】
[ポリシロキサンの製造方法]
本発明に用いるポリシロキサンを得る方法は特に限定されないが、本発明においては、上記した式(1)のアルコキシシランを必須成分とするアルコキシシランを有機溶媒中で縮合させて得られる。通常、ポリシロキサンは、このようなアルコキシシランを重縮合して、有機溶媒に均一に溶解した溶液として得られる。
本発明における重縮合する方法としては、例えば、上記アルコキシシランをアルコール又はグリコールなどの溶媒中で加水分解・縮合する方法が挙げられる。その際、加水分解・縮合反応は、部分加水分解及び完全加水分解のいずれであってもよい。完全加水分解の場合は、理論上、アルコキシシラン中の全アルコキシド基の0.5倍モルの水を加えればよいが、通常は0.5倍モルより過剰量の水を加えるのが好ましい。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5〜2.5倍モルであるのが好ましく、より好ましくは0.75〜1.5倍モルである。
また、通常、加水分解・縮合反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸、フマル酸などの酸;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、トリエチルアミンなどのアルカリ;塩酸、硫酸、硝酸などの金属塩などの触媒が用いられる。加えて、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、更に、加水分解・縮合反応を促進させることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択できる。例えば、50℃で24時間加熱・撹拌したり、還流下で1時間加熱・撹拌するなどの方法が挙げられる。
また、別法として、アルコキシシラン、溶媒及び蟻酸、蓚酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸の混合物を加熱して重縮合させる方法が挙げられる。例えば、アルコキシシラン、溶媒及び蓚酸の混合物を加熱して重縮合する方法が挙げられる。具体的には、予めアルコールに蓚酸を加えて蓚酸のアルコール溶液とした後、該溶液を加熱した状態で、アルコキシシランを混合する方法である。その際、用いる蓚酸の量は、アルコキシシランが有する全アルコキシ基の1モルに対して0.2〜2モルとすることが好ましい。この方法における加熱は、液温50〜180℃で行うことができる。好ましくは、液の蒸発、揮散などが起こらないように、還流下で数十分〜十数時間加熱する方法である。
【0013】
ポリシロキサンを得る際に、アルコキシシランを複数種用いる場合は、複数種のアルコキシシランをあらかじめ混合した混合物として用いてもよいし、複数種のアルコキシシランを順次混合して用いてもよい。
アルコキシシランを重縮合する際に用いられる溶媒(以下、重合溶媒ともいう)は、アルコキシシランを溶解するものであれば特に限定されない。また、アルコキシシランが溶解しない場合でも、アルコキシシランの重縮合反応の進行とともに溶解するものであればよい。一般的には、アルコキシシランの重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、又はアルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。
【0014】
このような重合溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール,ジアセトンアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミド、m−クレゾール等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記の重合溶媒を複数種混合して用いてもよい。
上記の方法で得られたポリシロキサンの重合溶液(以下、重合溶液ともいう。)は、原料として仕込んだ全アルコキシシランのケイ素原子をSiOに換算した濃度(以下、SiO換算濃度と称す。)を20質量%以下とすることが一般的である。この濃度範囲において任意の濃度を選択することにより、ゲルの生成を抑え、均質な溶液を得ることができる。
本発明においては、上記の方法で得られたポリシロキサンの重合溶液をそのまま電極保護膜形成剤としてもよいし、必要に応じて、上記の方法で得られた溶液を、濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり又は他の溶媒に置換して、電極保護膜形成剤としてもよい。
その際、用いる溶媒(以下、添加溶媒ともいう)は、重合溶媒と同じでもよいし、別の溶媒でもよい。この添加溶媒は、ポリシロキサンが均一に溶解している限りにおいて特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
かかる添加溶媒の具体例としては、上記の重合溶媒の例として挙げた溶媒のほかに、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
これらの溶媒は、電極保護膜形成剤の粘度の調整、又はスピンコート、フレキソ印刷、インクジェット、スリットコート等で電極保護膜形成剤を基板上に塗布する際の塗布性を向上できる。
【0016】
[その他の成分]
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記ポリシロキサン以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマー、レベリング剤、更に界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、又はフッ化マグネシウム微粒子等の微粒子が好ましく、特にコロイド溶液の状態にあるものが好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状及び屈折率の調整、その他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001〜0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001〜0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液を用いて形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
【0017】
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、電極保護膜形成剤の安定性の観点から、pH又はpKaが1〜10に調整されていることが好ましい。pH又はpKaは、より好ましくは2〜7である。
コロイド溶液の分散媒に用いる有機溶剤としては、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類を挙げることができる。これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して分散媒として使用することができる。
【0018】
メタロキサンオリゴマー、及びメタロキサンポリマーとしては、ケイ素、チタン、アルミニウム、タンタル、アンチモン、ビスマス、錫、インジウム、亜鉛等の単独又は複合酸化物前駆体が用いられる。メタロキサンオリゴマー、及びメタロキサンポリマーとしては、市販品であっても、金属アルコキシド、硝酸塩、塩酸塩、カルボン酸塩等のモノマーから、加水分解等の常法で処理することにより得られたものであってもよい。
市販品のメタロキサンオリゴマー、及びメタロキサンポリマーの具体例としては、コルコート社製のメチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS−485、SS−101等のシロキサンオリゴマー又はシロキサンポリマー、関東化学社製のチタニウム−n−ブトキシドテトラマー等のチタノキサンオリゴマーが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、レベリング剤及び界面活性剤等は、公知のものを用いることができ、特に市販品は入手が容易なので好ましい。
また、ポリシロキサンに、上記したその他の成分を混合する方法は、ポリシロキサンと同時でも、後であってもよく、特に限定されない。
【0019】
[電極保護膜]
本発明の電極保護膜形成剤を、電極又は電極付き基材に塗布し、熱硬化することで所望の電極保護膜を得ることができる。電極保護膜形成剤の塗布方法は、公知又は周知の方法を採用できる。例えば、ディップ法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、フレキソ印刷法、インクジェット法、スリットコート法等を採用できる。これらの中でも、フレキソ印刷法、スリットコート法、インクジェット法、スプレーコート法、及びグラビアコート法において良好な塗膜を形成することができる。
その際、用いる基材は、プラスチック;ガラス;ATO、FTO(fluorine−doped tin oxide)、ITO、IZO等の透明電極付ガラス;セラミックス等の基材を挙げることができる。プラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等が挙げられる。基材の形状は、板又はフィルム等が挙げられる。
【0020】
電極保護膜形成剤は、塗布前に、フィルター等を用いて濾過することが一般的である。
基材に形成された塗膜は、室温〜120℃の温度、好ましくは60〜90℃で乾燥させた後、好ましくは温度100〜180℃、更に好ましくは150〜180℃で熱硬化する。その際、乾燥に要する時間は、30秒間以上であればよいが、10分間以下で充分である。
熱硬化に要する時間は、適宜選択することができるが、5分間以上であればよい。低い硬化温度を選択する場合は、硬化時間を長くすることで充分な硬さを有する電極保護膜を得られやすい。
なお、本発明の電極保護膜形成剤は、温度180℃を超える硬化温度であっても充分な硬さを有する硬化被膜を得ることができる。
また、熱硬化に先立ち、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を用いてエネルギー線(紫外線等)を照射することも有効である。乾燥した塗膜にエネルギー線を照射することで、更に硬化温度を低下できたり、被膜の硬さを高めたりすることができる。エネルギー線の照射量は必要に応じて適宜選択することができるが、通常、数百〜数千mJ/cmが適当である。
本発明の電極保護膜は、この被膜上への液晶配向材の印刷性が良好であるため、はじきやピンホールを抑制した液晶配向膜を形成することができる。
従って、本発明の電極保護膜形成剤は、上記した如き特性を有する電極保護膜を形成できるため、液晶表示素子の表示特性向上に非常に有用である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
本実施例において、用いた化合物の略号は以下のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
APS:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
GPS:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
MPS:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
UPS:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
MPMS:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
TET:テトラエトキシチタン
AN:硝酸アルミニウム九水和物
HG:ヘキシレングリコール(別名:2−メチル−2,4−ペンタンジオール)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル(別名:1−メトキシ−2−プロパノール)
BCS:ブチルセロソルブ(別名:1−ブトキシ−2−エタノール)
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル(別名:1−ブトキシ−2−プロパノール)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
1,4−BDO:1,4−ブタンジオール
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
【0022】
[合成例1]
温度計、及び還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコにMeOH39.0gを投入し、撹拌下でこのMeOHに蓚酸18.0gを少量ずつ添加することにより、蓚酸のメタノール溶液を調製した。次いで、この溶液をその還流温度まで加熱し、還流下のこの溶液中にテトラエトキシシラン10.4g、APS1.1g、GPS2.4g、MPS1.0g、UPSを92%含有するメタノール溶液8.6g(UPS含有量:7.9g)とMeOH19.5gの混合物を45分間かけて滴下した。滴下終了後も、還流下に加熱を5時間続けた後、冷却することによりポリシロキサンの溶液(L1)を調製した。
さらに300mlフラスコ中で、ポリシロキサン溶液L1の100gと、溶媒としてHG64.0g、NMP48.0g、1,及び4−BDO32.0gを混合した。次に、NEWロータリーバキュームエバポレーター(東京理化器械社製、NE−1)により60℃で20mmHg(2.67kPa)まで徐々に減圧しながら溶媒を留去して、184.0gの溶媒をNMPに置換した溶液(以下、置換溶液とも記す。)を得た。その後、この置換溶液184.0gにPGME16.0gを混合して、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン溶液(LA1)を得た。
【0023】
[合成例2]
温度計、及び還流管を備え付けた200ml四つ口反応フラスコにMeOH34.8g、TEOS27.8g、及びUPSを92%含有するメタノール溶液9.6g(UPS含有量:8.8g)を投入して撹拌し、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めMeOH17.64g、水9.00g及び触媒として蓚酸1.50gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、滴下終了後30分室温下で撹拌した。その後、還流下で1時間加熱後、放冷してSiO換算固形分濃度が10質量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液30.0gに対し、HG35.0gとBCS35.0gを混合し、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン希釈溶液(LA2)を得た。
【0024】
[合成例3]
温度計、及び還流管を備え付けた200ml四つ口反応フラスコにPGME31.8gとTEOS33.0gを投入して撹拌し、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、あらかじめPGME15.9g、水15.0g及び触媒として蓚酸0.2gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、滴下終了後30分室温下で撹拌した。その後、還流下で30分加熱後、UPSを92%含有するメタノール溶液2.4g(UPS含有量:2.2g)、及びPGME1.8gを混合した溶液を投入し、さらに還流下で30分加熱後、放冷してSiO換算固形分濃度が10質量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液30.0gに対し、PGME60.0g、及びHG10.0gを混合し、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン希釈溶液(LA3)を得た。
【0025】
[合成例4]
温度計、及び還流管を備え付けた200ml四つ口反応フラスコにPGME31.5gとTEOS31.2g、及びMPMS2.1gを投入して撹拌し、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、あらかじめPGME15.7g、水15.0g及び触媒として蓚酸0.3gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、滴下終了後30分室温下で撹拌した。その後、還流下で30分加熱後、UPSを92%含有するメタノール溶液2.4g(UPS含有量:2.2g)、及びPGME1.8gを混合した溶液を投入し、さらに還流下で30分加熱後、放冷してSiO換算固形分濃度が10質量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液30.0gに対し、PGME60.0g、及びHG10.0gを混合し、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン希釈溶液(LA4)を得た。
【0026】
[合成例5]
温度計、及び還流管を備え付けた200ml四つ口反応フラスコにHG20.6g、BCS6.9g、及びTEOS37.5gを投入して撹拌し、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、あらかじめHG10.3g、BCS3.4g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.5gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、滴下終了後30分室温下で撹拌した。その後、還流下で30分加熱後、UPSを92%含有するメタノール溶液5.8g(UPS含有量:5.3g)、HG3.2g、及びBCS1.1gを混合した溶液を投入し、さらに還流下で30分加熱後、放冷してSiO換算固形分濃度が12質量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液30.0gに対し、HG41.9g、BCS7.1g及びPB40.9gを混合し、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン希釈溶液(LA5)を得た。
【0027】
[合成例6]
合成例2で得られたポリシロキサン溶液LA2の90gと、コロイダルシリカ微粒子(製品名:メタノールシリカゾル、日産化学工業社製;SiO換算固形分濃度が30質量%)3.0g、及びMeOH7.0gを室温下で30分間撹拌して、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン希釈溶液(LA6)を得た。
【0028】
[比較合成例1]
温度計、及び還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコにEtOH40.3gを投入し、撹拌下で、このEtOHに蓚酸18.0gを少量ずつ添加することにより、蓚酸のエタノール溶液を調製した。次いで、この溶液をその還流温度まで加熱し、還流下のこの溶液中にTEOS20.8gとEtOH20.8gの混合物を45分間かけて滴下した。滴下終了後も、還流下に加熱を5時間続けた後、冷却することによりポリシロキサンの溶液を調製した。
さらに300mlフラスコ中で、このポリシロキサン溶液100gと、溶媒としてHG64.0g、NMP48.0g、及び1,4−BDO32.0gを混合した。次に、NEWロータリーバキュームエバポレーター(東京理化器械社製、NE−1)により60℃で20mmHg(2.67kPa)まで徐々に減圧しながら溶媒を留去して、184.0gの置換溶液を得た。その後、この置換溶液184.0gにPGME16.0gを混合して、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン溶液(LB1)を得た。
【0029】
[比較合成例2]
温度計、及び還流管を備え付けた200ml四つ口反応フラスコにHG23.7g、BCS7.9g、及びTEOS41.7gを投入して撹拌し、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、あらかじめHG11.8g、BCS3.9g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.2gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、滴下終了後30分室温下で撹拌した。その後、還流下で60分加熱後、放冷してSiO換算固形分濃度が12質量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液30.0gに対し、HG55.2g、BCS9.2g及びPB55.6gを混合し、SiO換算固形分濃度が3質量%のポリシロキサン希釈溶液(LB2)を得た。
【0030】
[比較合成例3]
300mlフラスコに純水2.5g、エタノール64.8g及び触媒としてANを2.7g仕込み、撹拌して均一な溶液を得た。この溶液にTEOSを14.3g加え、室温で30分撹拌した。その後、TETを15.7g添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を、溶媒をHGに置換する前の溶液(置換前溶液)とした。
さらに300mlフラスコ中で、得られた置換前溶液の24.0gと、HG25.87gを混合した。次に、NEWロータリーバキュームエバポレーター(東京理化器械社製、NE−1)により60℃で20mmHg(2.67kPa)まで徐々に減圧しながら溶媒を留去して、28.9gの置換溶液を得た。その後、置換溶液28.9gにPGME11.1gを混合して、SiO換算固形分濃度が 質量%のポリチタノシロキサン溶液(LB3)を調製した。
【0031】
[電極保護膜の評価]
得られた溶液(LA1〜LA6)、及び(LB1〜LB3)から形成される電極保護膜について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、水接触角及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果から、本発明により得られる電極保護膜は、150℃以下という低温の硬化温度においても、一般的にその被膜を液晶表示素子の電極保護膜(絶縁膜)として使用する場合に充分な硬度とされる5H以上の鉛筆硬度を示した。
そして、この被膜上に、ポリアミド酸タイプだけでなく、可溶性ポリイミドタイプの液晶配向剤を使用した場合であっても、はじきやピンホールのない優れた成膜性を示した。
【0034】
[鉛筆硬度]
合成例(LA1〜LA6)、及び比較合成例(LB1〜LB3)のポリシロキサン溶液(塗布液)をクロマトディスク(倉敷紡績社製、孔径0.45μm)を用いて濾過した。その後、厚さ0.7mmのITO付ガラス基板(ITOの膜厚が140nm)上に滴下して、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用いて、回転数300rpmで5秒間の予備回転の後、回転数2000〜5000rpmで20秒間回転させて塗膜を形成した。次いで、温度80℃のホットプレート上で3分間乾燥させた後、ホットプレート上で硬化温度150℃として15分間加熱して硬化被膜を得た。得られた硬化被膜の鉛筆硬度を試験法(JIS K5400)に準拠して測定した。
【0035】
[水接触角]
協和界面科学社製の自動接触角計CA−Z型を使用して、純水の3マイクロリットルを滴下したときの接触角を測定した。なお、使用した基板の態様と保護膜の作製方法は、[鉛筆硬度]の測定の場合と同じである。
【0036】
[液晶配向膜印刷性]
上記した[鉛筆硬度]と同様の方法で形成した硬化被膜上に、S15型印刷機(飯沼ゲージ製作所社製、アニロックスロール(300#)、凸版(網点400L30%75°))を用いて、液晶配向剤(日産化学工業社製、サンエバー(登録商標)SE−3140 0735(商品名;ポリアミド酸タイプ)、SE−7492 062M(商品名;ポリアミド酸/可溶性ポリイミドブレンドタイプ)、SE−5291 062B(商品名;可溶性ポリイミドタイプ))を塗布した。その後、温度80℃のホットプレート上で、3分間乾燥して液晶配向膜を形成した。形成した液晶配向膜を目視で観察し、液晶配向膜にはじき、ピンホール及びムラがない良好な場合を○、ピンホール又はムラが生じている場合を△、はじきを生じて基板上に充分に成膜されていない状態を×とした。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の電極保護膜形成剤は、フレキソ印刷法、スリットコート法、インクジェット法、スプレーコート法、及びグラビアコート法での塗膜形成能に優れ、低温で充分に硬化できる電極保護膜を形成することできる。さらに、形成された電極保護膜は、その上層にはじきやピンホールを抑制した液晶配向膜を形成することができる。そのため、特に低温での焼成が必要なプラスチック基板を使用する液晶表示装置、あるいは液晶方式の電子ペーパーなどの電極保護膜として有用である。
なお、2009年12月02日に出願された日本特許出願2009−274662号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。