特許第5717318号(P5717318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717318
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20150423BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20150423BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20150423BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20150423BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20150423BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20150423BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20150423BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20150423BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/0525
   H01M10/0585
   H01M4/485
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/58
   H01M4/66 A
   H01M2/26 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2008-557926(P2008-557926)
(86)(22)【出願日】2007年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2007052531
(87)【国際公開番号】WO2008099468
(87)【国際公開日】20080821
【審査請求日】2010年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 守
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 昭一
(72)【発明者】
【氏名】増村 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】笹川 浩
(72)【発明者】
【氏名】坂井 徳幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆幸
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−102056(JP,A)
【文献】 特開2004−158222(JP,A)
【文献】 特開2007−005279(JP,A)
【文献】 特開2004−213938(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/135790(WO,A1)
【文献】 特開2001−015152(JP,A)
【文献】 特開2001−068150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層、イオン伝導性無機物質層及び負極活物質層をこの順に連続して有するセル単位が、セル単位同士の正極活物質層と負極活物質層とが接するようにして、複数個、積層され、最上層及び最下層の両方に集電体層を有する積層体を含み、積層体は一括焼成体であり、前記積層体の各層の界面が焼結状態を有して接している全固体二次電池。
【請求項2】
正極活物質の始発材料である仮焼された粉末、負極活物質の始発材料である仮焼された粉末及びイオン伝導性無機物質の始発材料である仮焼された粉末について、一括焼成の温度に加熱した後の線収縮率をそれぞれa%、b%及びc%とした場合、最大値と最小値の差が6%以内である、請求項記載の全固体二次電池。
【請求項3】
一括焼成は、900〜1100℃において、1〜3時間行ったものである、請求項1又は2記載の全固体二次電池。
【請求項4】
正極活物質層が、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiCuO、LiCoVO、LiMnCoO、LiCoPO及びLiFePOよりなる群から選択されるリチウム化合物からなり;
負極活物質層が、Li4/3Ti5/3、LiTiO及びLiM1M2(M1、M2は遷移金属であり、s、t、uは任意の正数)よりなる群から選択されるリチウム化合物からなり;
イオン伝導性無機物質が、Li3.25Al0.25SiO、LiPO及びLiPSi(式中x、y、zは任意の正数)よりなる群から選択されるリチウム化合物からなる、請求項1〜のいずれか1項記載の全固体二次電池。
【請求項5】
正極活物質層が、LiMnからなり、
負極活物質層が、Li4/3Ti5/3からなり、
イオン伝導性無機物質層が、Li3.50.5Si0.5からなる、請求項1〜のいずれか1項記載の全固体二次電池。
【請求項6】
正極活物質の始発材料が、700〜800℃で仮焼された粉末であり、
負極活物質の始発材料が、700〜800℃で仮焼された粉末であり、
イオン伝導性無機物質の始発材料が、900〜1000℃で仮焼された粉末である、請求項1〜のいずれか1項記載の全固体二次電池。
【請求項7】
集電体層が、Ag、Pd、Au及びPtのいずれかの金属、又はAg、Pd、Au及びPtのいずれかを含む合金、あるいはそれらの金属及び合金から選ばれる2種以上の混合物からなる、請求項1〜のいずれか1項記載の全固体二次電池。
【請求項8】
全固体二次電池が、引出電極を、それぞれ、積層体の上端及び下端に有する、請求項1〜のいずれか1項記載の全固体二次電池。
【請求項9】
下記工程(1)〜(3):
(1)正極活物質の仮焼粉末を含む正極ペースト、負極活物質の仮焼粉末を含む負極ペースト及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を含むイオン伝導性無機物質ペースト、並びに集電体の金属粉末を含む集電体ペーストを準備する工程;
ここで、正極活物質の始発材料である仮焼された粉末、負極活物質の始発材料である仮焼された粉末及びイオン伝導性無機物質の始発材料である仮焼された粉末について、一括焼成の温度に加熱した後の線収縮率をそれぞれa%、b%及びc%とした場合、最大値と最小値の差が6%以内であり、
(2)基材上に、正極ペースト、イオン伝導性無機物質ペースト、負極ペーストの順序で塗布することを繰り返す工程;並びに
(3)基材を剥離させた後、上端及び下端の両方に集電体ペーストを塗布し、乾燥させた後、各層の界面が焼結状態を有して接するように一括焼成し、積層体を得る工程;
を含む全固体二次電池の製造方法。
【請求項10】
下記工程(1’)〜(4’):
(1’)正極活物質の仮焼粉末を含む正極ペースト、負極活物質の仮焼粉末を含む負極ペースト及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を含むイオン伝導性無機物質ペースト、並びに集電体の金属粉末を含む集電体ペーストを準備する工程;
ここで、正極活物質の始発材料である仮焼された粉末、負極活物質の始発材料である仮焼された粉末及びイオン伝導性無機物質の始発材料である仮焼された粉末について、一括焼成の温度に加熱した後の線収縮率をそれぞれa%、b%及びc%とした場合、最大値と最小値の差が6%以内であり、
(2’)基材上にイオン伝導性無機物質ペースト、正極ペースト及び負極ペーストをそれぞれ塗布し、乾燥させた後に、基材を剥離させて、イオン伝導性無機物質シート、正極シート及び負極シートを作製する工程;
(3’)正極シート、イオン伝導性無機物質シート及び負極シートの順になるように、交互に積み重ねて、加圧成形した後、集電体ペーストを上端及び下端に塗布し、乾燥させて積層ブロックを得る工程;並びに
(4’)各層の界面が焼結状態を有して接するように積層ブロックを一括焼成し、積層体を得る工程;
を含む全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一括焼成体である直列型の積層体を含む全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池は、有機溶媒を使用する非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)を中心に、使用する正極活物質、負極活物質及び有機溶媒電解液等の最適化が図られてきた。非水電解液二次電池は、それを使用するデジタル家電製品の大発展とともに、生産量が著しく増大している。
【0003】
しかしながら、非水電解液二次電池は、可燃性の有機溶媒電解液を使用すること、及び使用する有機溶媒電解液が電極反応により分解し、電池の外装缶を膨張させ、場合により電解液の漏出を起こすおそれもあることから、発火の危険性も指摘されている。
【0004】
このため、有機溶媒電解液に代えて固体電解質を使用する全固体二次電池が着目されている。全固体二次電池は、構造的には、セパレータを必要とせず、電解液の漏出のおそれがないため外装缶が不要である。
【0005】
また、全固体二次電池は、性能的にも、有機溶媒電解液を使用しないため、発火の危険性のない電池を構成できる他、固体電解質がイオン選択性を有するため、副反応が少なく効率を高めることができ、その結果、充放電サイクル特性に優れた電池が期待できる。
【0006】
例えば、特許文献1には、リチウム金属片を使用せずに、薄膜化した電極と固体電解質とを有する全固体型の基板搭載型二次電池が開示されている。この二次電池では、電極及び電解質をスパッタ法や電子ビーム蒸着法、加熱蒸着法等で成膜して、構成物を可能な限り薄くすることにより、リチウム二次電池の小型・軽量化を図っている。
【0007】
また特許文献2には、スパッタ法で成膜した正極活物質、固体電解質、負極活物質からなる薄膜固体二次電池セルを2層以上積層した積層型薄膜固体リチウムイオン二次電池が開示されている。この積層型薄膜固体リチウムイオン二次電池は、直列又は並列で接続するように素子を積層化しているので、大電圧又は大電流電源として電気自動車等の大電力機器への応用が可能であること、等の効果を奏するとされている。しかしながら、これらの先行技術に開示された薄膜の全固体リチウムイオン二次電池は、いずれもスパッタ法等で製造されたものであり、電極や固体電解質の薄膜の成膜速度が極めて遅い。例えば、正極活物質、固体電解質及び負極活物質から構成される厚さ1.0μmの電池を基板上に製造する場合、成膜時間が10時間以上にもなる。成膜速度が遅いこのような方法を工業的に採用することは生産性の点で、ひいては製造コストの点で難しい。
【0008】
一方、スパッタ法以外の方法による全固体二次電池としては、特許文献3、特許文献4、特許文献5に挙げられるような焼成体を使用したものが提唱されている。しかし、特許文献3の技術は、平板上の集電体の両面を挟んで対称になるようにして、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層を積層していくことを特徴としており、このような積層の仕方は工業的には極めて現実的ではなく、多層化には不適当であることは明らかである。また、特許文献4の技術は、結着材を含有する正極材料と固体電解質と負極材料をマイクロ波加熱焼成した後に、この焼成体の外側に正極集電体、負極集電体を形成するというものであり、単層の電池構造であって、多層化することができないものである。特許文献5は、直列型の構造について開示しておらず、また集電体として融点の高いSnO等が用いられているため、焼成による焼結が不十分で、電子導通の確保が難しく、電池内での偏充放電の発生や電池内部抵抗が増大しやすいものである。
【特許文献1】特開平10−284130号公報
【特許文献2】特開2002−42863号公報
【特許文献3】特開2001−126756号公報
【特許文献4】特開2001−210360号公報
【特許文献5】特開2006−261008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、工業的に採用し得る量産可能な方法で製造でき、かつ優れた二次電池性能を有する全固体二次電池の実現が依然として要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、工業的に採用し得る量産可能な方法で製造でき、かつ優れた二次電池性能を有する全固体二次電池、特に全固体リチウムイオン二次電池である。具体的には、本発明は、正極活物質層、イオン伝導性無機物質層及び負極活物質層をこの順に連続して有するセル単位が、セル単位同士の正極活物質層と負極活物質層とが対向するようにして、複数個、積層され、場合により、最上層及び最下層のいずれか又は両方に集電体層を有する積層体を含み、積層体は一括焼成体であることを特徴とする全固体二次電池に関する。なお、一括焼成とは、積層体を構成する各層の材料を積み重ねて積層ブロックを形成した後に焼成することをいう。全固体二次電池は、金属層を介して、セル単位が積層されていること、一括焼成が900〜1100℃において、1〜3時間行ったものであること、が好ましい。また、本発明は、正極活物質層、イオン伝導性無機物質層及び負極活物質層をこの順に連続して有するセル単位が、セル単位同士の正極活物質層と負極活物質層とが対向するようにして、複数個、積層され、場合により、最上層及び最下層のいずれか又は両方に集電体層を有する積層体を含み、各層は焼結状態となっていることを特徴とする全固体二次電池に関する。これらの全固体二次電池においては、隣接する層の界面が焼結状態を有していることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、正極活物質層、イオン伝導性無機物質層及び負極活物質層をこの順に連続して有するセル単位が、セル単位同士の正極活物質層と負極活物質層とが対向するようにして、複数個、積層され、場合により、最上層及び最下層のいずれか又は両方に集電体層を有する積層体を含み、少なくともイオン伝導性無機物質層のイオン伝導性無機物質の始発材料は仮焼された粉末であることを特徴とする全固体二次電池に関する。この全固体二次電池においては、積層体は一括焼成されたものであることが好ましい。
【0012】
上記の全固体二次電池においては、金属層を介して、セル単位が積層されていること;正極活物質層が、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiCuO、LiCoVO、LiMnCoO、LiCoPO及びLiFePOよりなる群から選択されるリチウム化合物からなり、負極活物質層が、Li4/3Ti5/3、LiTiO及びLiM1M2(M1、M2は遷移金属であり、s、t、uは任意の正数)よりなる群から選択されるリチウム化合物からなり、イオン伝導性無機物質が、Li3.25Al0.25SiO、LiPO及びLiPSi(式中x、y、zは任意の正数)よりなる群から選択されるリチウム化合物からなること;正極活物質層が、LiMnからなり、負極活物質層が、Li4/3Ti5/3からなり、イオン伝導性無機物質層が、Li3.50.5Si0.5からなること;正極活物質層、負極活物質層及びイオン伝導性無機物質層をそれぞれ構成する正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質の始発材料は仮焼された粉末であること;正極活物質の始発材料である仮焼された粉末、負極活物質の始発材料である仮焼された粉末及びイオン伝導性無機物質の始発材料である仮焼された粉末について、一括焼成の温度に加熱した後の線収縮率をそれぞれa%、b%及びc%とした場合、最大値と最小値の差が6%以内であること;正極活物質の始発材料が、700〜800℃で仮焼された粉末であり、負極活物質の始発材料が、700〜800℃で仮焼された粉末であり、イオン伝導性無機物質の始発材料が、900〜1000℃で仮焼された粉末であり、かつ、正極活物質の始発材料である仮焼された粉末、負極活物質の始発材料である仮焼された粉末及びイオン伝導性無機物質の始発材料である仮焼された粉末について、一括焼成の温度に加熱した後の線収縮率をそれぞれa%、b%及びc%とした場合、最大値と最小値の差が6%以内であること;集電体層が、Ag、Pd、Au及びPtのいずれかの金属、又はAg、Pd、Au及びPtのいずれかを含む合金、あるいはそれらの金属及び合金から選ばれる2種以上の混合物からなること;全固体二次電池が、引出電極を、それぞれ、積層体の上端及び下端に有すること、が好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、下記工程(1)〜(3):(1)正極活物質の仮焼粉末を含む正極ペースト、負極活物質の仮焼粉末を含む負極ペースト及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を含むイオン伝導性無機物質ペースト、並びに場合により集電体の粉末を含む集電体ペースト及び金属層を構成する金属粉末を含む金属層ペーストを準備する工程;(2)基材上に、正極ペースト、イオン伝導性無機物質ペースト、負極ペースト、場合により金属層ペーストの順序で塗布し、場合により乾燥させることを繰り返す工程;並びに(3)基材を剥離させた後、場合により、上端及び下端のいずれか一方又は両方に集電体ペーストを塗布し、場合により乾燥させた後、一括焼成し、積層体を得る工程;を含む全固体二次電池の製造方法に関する。また、本発明は、下記工程(1’)〜(4’):(1’)正極活物質の仮焼粉末を含む正極ペースト、負極活物質の仮焼粉末を含む負極ペースト及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を含むイオン伝導性無機物質ペースト、並びに場合により集電体の粉末を含む集電体ペースト及び金属層を構成する金属粉末を含む金属層ペーストを準備する工程;(2’)基材上にイオン伝導性無機物質ペースト、正極ペースト及び負極ペーストをそれぞれ塗布し、場合により乾燥させた後に、基材を剥離させて、イオン伝導性無機物質シート、正極シート及び負極シート、並びに場合により金属層シートを作製する工程;(3’)正極シート、イオン伝導性無機物質シート及び負極シート、並びに場合により金属層シートの順になるように、交互に積み重ねて、好ましくは加圧成形した後、場合により集電体ペーストを上端又は下端に塗布し、場合により乾燥させて積層ブロックを得る工程;並びに(4’)積層ブロックを一括焼成し、積層体を得る工程;を含む全固体二次電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の全固体二次電池は、簡便で、かつ長時間を要することもない方法で製造でき、効率の点で優れるため、工業的に採用することができ、製造コストが安価であるという優れた効果を奏する。加えて、本発明の全固体二次電池において、セル単位を複数個、積層し、場合により最上層及び最下層のいずれか又は両方に集電体層を備えた積層体は、電池の充放電特性に優れるという効果を奏する。特に、一括焼成により、各層間で良好な固体−固体界面の接合を有する焼結体である積層体が得られ、内部抵抗が小さく、エネルギー効率が良好な電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の全固体二次電池の基本構造のセル単位を示す図である。
図2】本発明の全固体二次電池の積層体を示す図である。
図3】本発明の全固体二次電池の別の実施態様の積層体を示す図である。
図4】本発明の全固体二次電池のさらに別の実施態様の積層体を示す図である。
図5】本発明の全固体二次電池の繰り返し充放電特性を示す図である。
図6】本発明の全固体二次電池の繰り返し充放電サイクルに伴う充放電容量を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
2 セル単位
3 積層体
4 正極活物質層
5 負極活物質層
6 イオン伝導性無機物質層
7 最下層の集電体(正極集電体)層
8 最上層の集電体(負極集電体)層
13 積層体
20 金属層
23 積層体
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に、本発明の全固体二次電池を構成する最も基本的なセル単位2の構造を示す。セル単位2は、正極活物質層4、イオン伝導性無機物質層6及び負極活物質層5が、この順に連続した構造を有する。
【0018】
図2に、本発明の全固体二次電池を構成する積層体の構造を示す。積層体3は、セル単位2が複数個、それぞれの正極活物質層4と負極活物質層5とが対向するように積層される。
【0019】
全固体二次電池は、下端に正極活物質層と接する正極引出電極が設けられ、上端に負極活物質層と接する負極引出電極が設けられていることが好ましい。本明細書において、上端及び下端は、相対的な位置関係を示すものであることに留意されたい。
【0020】
図3に、本発明の全固体二次電池を構成する積層体の別態様を示す。積層体13は、セル単位2が複数個、それぞれの正極活物質層4と負極活物質層5とが対向するように積層され、かつ最上層及び最下層にそれぞれ集電体層を備えた構造を有する。最上層及び最下層の集電体層のいずれか一方は、正極活物質層と接続し、正極集電体となり、他方は、負極活物質層と接続し、負極集電体ととなる。図3においては、最下層の集電体層7は正極活物質層4と接し、正極集電体となり、最上層の集電体層8は負極活物質層5と接し、負極集電体となる。本明細書において、最上層及び最下層は、相対的な位置関係を示すものであることに留意されたい。
【0021】
この態様においては、集電体層が引出電極として機能することができる。図3では、最下層の集電体層7が正極引出電極、最上層の集電体層8が負極引出電極として機能することができる。あるいは、集電体層上に、別個に引出電極を設けることもでき、例えば、下端に集電体層7と接する正極引出電極、上端に集電体層8と接する負極引出電極を設けることもできる。
【0022】
さらに、図4に、本発明の全固体二次電池を構成する積層体のさらに別態様を示す。積層体23は、セル単位2が金属層20を介して積層された構造を有する。金属層を介在させることにより、イオンの移動が個々のセル単位内にとどめられ、直列型の全固体二次電池として一層確実に機能することが期待できる。図4の積層体23は、集電体層を備えているが、集電体層は上記のとおり任意である。
【0023】
全固体二次電池の積層体において、セル単位2の数は、2個以上であれば、いわゆる直列型の全固体二次電池を形成することができる。セル単位数は、要求される全固体二次電池の容量や電流値に基づいて幅広く変化させることができ、3個以上の場合に、本発明のメリットをより享受でき、例えば10〜500個といった多層構造をとする場合にメリットが顕著である。
【0024】
本発明の全固体二次電池を構成するイオン伝導性無機物質層、正極活物質層及び負極活物質層、並びに任意の集電体層及び金属層の各材料は、以下のとおりである。
【0025】
イオン伝導性無機物質層は、Li3.25Al0.25SiO、LiPO、LiPSi(式中x、y、zは任意の正数)よりなる群から選択されるリチウム化合物からなることが好ましいが、これらに限定されない。Li3.50.5Si0.5がより好ましい。
【0026】
正極活物質層は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiCuO、LiCoVO、LiMnCoO、LiCoPO、LiFePOよりなる群から選択されるリチウム化合物からなることが好ましいが、これらに限定されない。LiCoO、LiMnO、LiMnがより好ましい。
【0027】
負極活物質層は、Li4/3Ti5/3、LiTiO、LiM1M2(M1、M2は遷移金属であり、s、t、uは任意の正数)よりなる群から選択されるリチウム化合物からなることが好ましいが、これらに限定されない。Li4/3Ti5/3、LiTiOがより好ましい。
【0028】
任意の集電体層は、正極集電体及び負極集電体として機能する場合のいずれも、Ag、Pd、Au及びPtのいずれかの金属からなることができ、あるいは、Ag、Pd、Au及びPtのいずれかを含む合金からなることもできる。合金の場合、Ag、Pd、Au及びPtから選ばれる2種以上の合金が好ましく、例えばAg/Pd合金である。また、これらの金属及び合金は、単独でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。正極集電体としての集電体層と負極集電体としての集電体層とは同一の材料を用いてもよく、異なっていてもよい。特に、Ag、Pdからなる合金又は混合粉末は、混合割合によって、銀融点(962℃)からパラジウム融点(1550℃)まで連続的かつ任意に融点を変化させることができるため一括焼成温度にあわせた融点調整が可能であり、電子導電性も高いことから電池内部抵抗を最小限に抑えることができるという利点がある。
【0029】
任意の金属層は、上記の集電体層と同様の材料を用いることができる。金属層と集電体層とは、同一の材料を用いてもよく、異なっていてもよい。
【0030】
本発明の全固体二次電池において、積層体は、イオン伝導性無機物質、正極活物質及び負極活物質、並びに任意の集電体層及び金属層の各材料をペースト化したものを使用して作製することができる。
【0031】
ここで、ペースト化に使用する正極活物質層、負極活物質層及びイオン伝導性無機物質層の始発材料は、それぞれの原料である無機塩等を仮焼した粉末を使用することができる。仮焼により、原料の化学反応を進め、一括焼成後にそれぞれの機能を十分に発揮させる点からは、正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質についての仮焼温度は、それぞれ700℃以上であることが好ましい。
【0032】
なお、仮焼した正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質を用いて各層を形成する場合、一括焼成後に、それぞれの物質は収縮する傾向にある。一括焼成後の正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質の収縮の度合いを揃えて、クラックや歪みによる曲がりや剥離の発生を抑制し、良好な電池特性を得るために、イオン伝導性無機物質が、正極活物質及び負極活物質よりも高い温度で仮焼したものであることが好ましい。具体的には、700〜800℃で仮焼した正極活物質及び700〜800℃で仮焼した負極活物質と、900〜1000℃、好ましくは950〜1000℃で仮焼したイオン伝導性無機物質とを組み合わせて用いることができる。
【0033】
さらに、正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質について、一括焼成の温度まで加熱した際の線収縮率を、それぞれa%、b%及びc%とした場合、最大値と最小値の差が6%以内となるように仮焼温度を調整して仮焼した正極極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質を用いることが好ましい。これにより、クラックや歪みによる曲がりや剥離の発生を抑制し、良好な電池特性が得られる。
【0034】
ここで、線収縮率とは、以下のようにして測定した値である。
(1)測定対象の粉末を0.5t/cm2〔49MPa〕でプレスして厚さ0.8〜1.2mmの試験片を作製し、これをカットして縦1.5mm、横1.5mm、厚さ0.8〜1.2mmの試験片を作製する。
(2)熱分析計(マックサイエンス株式会社製)を用いて、熱機械分析法により、試験片に対し0.44g/mmの荷重を加えながら所定の温度まで加熱した後の厚みの変化を測定する。
(3)測定値を以下の式に代入した値を線収縮率とする。
【0035】
【0036】
例えば、700〜800℃で仮焼したLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiCuO、LiCoVO、LiMnCoO、LiCoPO、LiFePO等の正極活物質、700〜800℃で仮焼したLi4/3Ti5/3、LiTiO、LiM1M2(M1、M2は遷移金属であり、s、t、uは任意の正数)等の負極活物質を、900〜1000℃で仮焼したLi3.25Al0.25SiO、LiPO、LiPSi(式中x、y、zは任意の正数)等のイオン伝導性無機物質と、線収縮率a%、b%、c%の最大値と最小値の差が6%以内となるように組み合わせて用いることができる。
【0037】
各材料のペースト化の方法は、特に限定されず、例えば、有機溶媒とバインダーのビヒクルに、上記の各材料の粉末を混合してペーストを得ることができる。例えば、集電体ペーストは、ビヒクルに、AgとPdの金属粉末の混合物、Ag/Pd共沈法による合成粉末又はAg/Pd合金の粉末を混合して調製することができる。
【0038】
各材料のペーストを基材上に所望の順序で塗布し、場合により乾燥させた後、場合により基材を剥離し、積層ブロックを得て、これを一括焼成して積層体を得ることができる。また、積層体の部分(セル単位等)ごとに、基材上に、その部分に対応する順序で各ペーストを塗布し、場合により乾燥させた後、基材を剥離したものを準備し、それらを積み重ねて加圧成形した後、一括焼成して作製することもできる。ペーストの塗布は、特に限定されず、スクリーン印刷、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
【0039】
具体的には、下記工程(1)〜(3):
(1)正極活物質の仮焼粉末を含む正極ペースト、負極活物質の仮焼粉末を含む負極ペースト及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を含むイオン伝導性無機物質ペースト、並びに場合により集電体の粉末を含む集電体ペースト及び金属層を構成する金属粉末を含む金属層ペーストを準備する工程;
(2)基材上に、正極ペースト、イオン伝導性無機物質ペースト、負極ペースト、場合により金属層ペーストの順序で塗布し、場合により乾燥させることを繰り返す工程;並びに
(3)基材を剥離させた後、場合により、上端及び下端のいずれか一方又は両方に集電体ペーストを塗布し、場合により乾燥させた後、一括焼成し、積層体を得る工程;
を含む全固体二次電池の製造方法が挙げられる。
【0040】
あるいは、下記工程(1’)〜(4’):
(1’)正極活物質の仮焼粉末を含む正極ペースト、負極活物質の仮焼粉末を含む負極ペースト及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を含むイオン伝導性無機物質ペースト、並びに場合により集電体の粉末を含む集電体ペースト及び金属層を構成する金属粉末を含む金属層ペーストを準備する工程;
(2’)基材上にイオン伝導性無機物質ペースト、正極ペースト及び負極ペーストをそれぞれ塗布し、場合により乾燥させた後に、基材を剥離させて、イオン伝導性無機物質シート、正極シート及び負極シート、並びに場合により金属層シートを作製する工程;
(3’)正極シート、イオン伝導性無機物質シート及び負極シート、並びに場合により金属層シートの順になるように、交互に積み重ねて、好ましくは加圧成形した後、場合により集電体ペーストを上端又は下端に塗布し、場合により乾燥させて積層ブロックを得る工程;並びに
(4’)積層ブロックを一括焼成し、積層体を得る工程;
を含む全固体二次電池の製造方法が挙げられる。あるいは、この製造方法において、金属層を介在させる場合は、金属層シートを独立して用意せずに、例えば正極シートの正極ペースト層、又は負極シートの負極ペースト層上に、金属粉末を含む金属層ペーストを塗布し、場合により乾燥させたものを用いることもできる。
【0041】
一括焼成は、空気中で行うことができ、例えば焼成温度900〜1100℃、1〜3時間とすることができる。このような温度で焼成することにより、各層が焼結状態であり、隣接する層の界面も焼結状態を有するようにすることができる。このことは、仮焼された粉末粒子から形成される各層の粒子間が焼結状態であり、隣接する層の粒子間も焼結状態にあることを意味する。
【0042】
また、引出電極を積層体の上端及び下端のいずれか一方又は両方に設けることができ、例えば、導電性粉末(例えば、Ag粉末)、ガラスフリット、ビヒクル等を含む引出電極ペーストを積層体の上端及び下端に塗布後、600〜900℃の温度で焼成して設けることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、部表示は、断りのない限り、重量部である。
【0044】
実施例1
(正極シートの作製)
正極活物質として、以下の方法で作製したLiMnを用いた。
LiCOとMnCOとを出発材料とし、これらをモル比1:4となるように秤量し、水を分散媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を分散媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥して正極活物質の仮焼粉末を得た。この仮焼粉体の平均粒径は0.30μmであった。また、組成がLiMnであることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0045】
次いで、この仮焼粉末100部に、エタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合し、その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して正極ペーストを調整した。この正極ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形した後、PETフィルムを剥離して厚さ13μmの正極シートを得た。
【0046】
(負極シートの作製)
負極活物質として、以下の方法で作製したLi4/3Ti5/3を用いた。
LiCOとTiOを出発材料として、これらをモル比2:5となるように秤量し、水を分散媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を分散媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥して負極活物質の仮焼粉末を得た。この仮焼粉末の平均粒径は0.32μmであった。また、組成がLi4/3Ti5/3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0047】
次いで、この仮焼粉末100部に、エタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合し、その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して負極ペーストを調整した。この負極ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形した後、PETフィルムを剥離して厚さ13μmの負極シートを得た。
【0048】
(イオン伝導性無機物質シートの作製)
イオン伝導性無機物質として、以下の方法で作製したLi3.5Si0.50.5を用いた。
LiCOとSiOと市販のLiPOを出発材料として、これらをモル比2:1:1となるように秤量し、水を分散媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を950℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を分散媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥してイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を得た。この仮焼粉末の平均粒径は0.54μmであった。また、組成がLi3.5Si0.50.5であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0049】
このイオン伝導性無機物質の仮焼粉末100部に、エタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合し、その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合してイオン伝導性無機物質ペーストを調製した。このイオン伝導性無機物質ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形した後、PETフィルムを剥離して厚さ13μmのイオン伝導性無機物質シートを得た。
【0050】
(引出電極ペーストの作製)
Ag粉末100部とガラスフリット5部を混合し、バインダーとしてエチルセルロース10部、溶媒としてジヒドロターピネオール60部とを加えて、三本ロールミルで混練・分散して引出電極ペーストを作製した。
【0051】
これらのシート及びペーストを用いて、以下のようにして全固体二次電池を作製した。
【0052】
(積層体の作製)
負極シート、イオン伝導性無機物質、正極シートを、この順にセル単位が2個になるように積み重ねた。その後、これを温度80℃で圧力1000kgf/cm〔98MPa〕で成形し、次いで切断して積層ブロックを作製した。その後、積層ブロックを焼成して積層体を得た。一括焼成は、空気中で昇温速度200℃/時間で1000℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。こうして得られた焼結後の積層体における各イオン伝導性無機物質の厚さは7μm、正極活物質の厚さは7μm、負極活物質の厚さは7μmであった。
【0053】
(引出電極の形成)
積層体の上端、下端に引出電極ペーストを塗布し、750℃で焼成し、実施例1の全固体二次電池を得た。
【0054】
比較例1として、セル単位を1個にして同様に比較例1の全固体二次電池を作製した。
【0055】
(評価)
実施例1の全固体二次電池が電池動作することを確認し、さらに引出電極にリード線を取り付け、繰り返し充放電試験を行った。測定条件は、充電及び放電時の電流はいずれも2μA、充電時及び放電時の打ち切り電圧をそれぞれ8V、0.5Vとし、充放電時間300分以内とした。比較例1の電池についても同様に測定を行った。その結果を図5に示す。
【0056】
図6に示すように、本発明の全固体二次電池は優れた繰り返し充放電特性を示しており、二次電池として優れた機能を備えていることがわかる。また、図6に示すように、充放電容量は3サイクル目までは変動が見られるが、それ以降は安定してほぼ一定の曲線を示した。充放電が安定した3サイクル目の放電開始電圧は3.8V、充電容量及び放電容量はそれぞれ9μAh、6.5μAhであった。
【0057】
比較例2
実施例1と同じ正極ペースト、負極ペースト、イオン伝導性無機物質ペーストを用いて、実施例1と同じ直列構造となるように、アルミナ基板上に一のペーストを塗布し、焼成した後に、次のペーストを塗布し、焼成することを逐一繰り返して、全固体電池を作製することを試みた。焼成温度は、実施例1と同じ温度とした。
【0058】
しかしながら、アルミナ基板上にイオン伝導性無機物質ペーストを塗布し、焼成して得られたイオン伝導性無機物質層の上に、正極ペーストを塗布して、焼成したところ、イオン伝導性無機物質層と正極活物質層とが大きく剥離してしまい、次の工程に移ることができず、このような方法では、実施例1と同じ直列構造の全固体二次電池を作製することができないことがわかった。これは、二度目の焼成において、既に焼成を経ているイオン伝導性無機物質層がそれ以上収縮しないのに対して、初めての焼成となる正極活物質層は収縮するため、層間で挙動が異なり、それにより割れや剥がれが生じたものと考えられる。また、比較例2のような方法では逐一焼成する必要があり、生産効率が非常に悪い。
【0059】
実施例2
仮焼温度を表1に示す温度に変更した以外は、実施例1と同様にして正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を得た。各仮焼粉末について、線収縮率を、以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(1)測定対象の仮焼粉末を0.5t/cm2〔49MPa〕でプレスして0.8〜1.2mmの試験片を作製し、これをカットして縦1.5mm、横1.5mm、厚さ0.8〜1.2mmの試験片を作製した。
(2)熱分析計(マックサイエンス株式会社製)を用いて、熱機械分析法により、試験片に対し0.44g/mmの荷重を加えながら昇温して1000℃に加熱した後の厚みの変化を測定した。
(3)測定値を以下の式に代入し、線収縮率を求めた。
【0061】
【0062】
【0063】
様々な仮焼温度の正極活物質、負極活物質及びイオン伝導性無機物質の仮焼粉末を組み合わせて、実施例1と同様にして電池を作製し、クラックや剥離の発生を観察した。表2に結果を示す。
【0064】
【0065】
全固体二次電池が、仮焼温度が700〜800℃の正極活物質及び負極活物質と、仮焼温度が900〜1000℃のイオン伝導性無機物質の組み合わせを使用したものであり、かつ線収縮率a、b、cの最大値と最小値の差が6%以内の場合に、クラックや剥離の発生がなく、電池として、特に良好に動作することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明はこのように、簡単に直列接続ができる構造の全固体二次電池であり、さらに積層数を重ねることで電圧を大きくできるので、産業上おおいに利用できる発明である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6