(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最外トレンチ溝の幅をWt_outer、前記内側トレンチ溝のうち、前記最外トレンチ溝側から該最外トレンチ溝も含めて数えてM番目までの内側トレンチ溝の幅を、それぞれWt_outer2、・・・、Wt_outerMとし、その他の内側トレンチ溝の幅をWt_inner、前記複数のトレンチ溝の深さをDr、前記塗布工程後の前記リッジ型光導波路の配列方向中央付近のリッジ型光導波路上における前記有機絶縁材料の厚さをDp、前記塗布工程後の前記サポート部上における前記有機絶縁材料の内側の厚い平坦部である前記有機絶縁材料の盛り上がった部分の厚さをDp_outer、前記塗布工程後の前記サポート部上における前記有機絶縁材料の外側の薄い平坦部である前記有機絶縁材料の盛り上がった部分の裾部の厚さをDp_flat、前記リッジ型光導波路のメサ幅をWm、前記リッジ型光導波路間の間隔をWp-p、前記リッジ型光導波路の数をN(ただし、N≧M、M≧3)とすると、前記Wt_outerおよびWt_outer2、・・・、Wt_outerMを、以下の式
(Dp+Dr)×(Wt_outer+Wt_outer2+・・・+Wt_outerM)+Dp_flat×{Wt_inner×(2×N−M)+Wm×N+(Wp-p−Wt_inner)×(N−1)}=(Dp+Dr)×Wt_inner×(2×N−2)+Dp×{Wm×N+(Wp-p-Wt_inner)×(N−1)}
を満たすように設定することを特徴とする請求項1に記載の半導体導波路アレイ素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リッジ型光導波路において、トレンチ溝を有機絶縁材料で埋めた構造は、以下のような工程で形成する。まず、トレンチ溝を形成することによってリッジ型光導波路を形成した半導体積層構造の表面に有機絶縁材料を塗布し、トレンチ溝を埋める。つぎに、塗布した有機絶縁材料をエッチングして、リッジ型光導波路の上部を露出させる。つぎに、露出したリッジ型光導波路の上部に対して電極構造を形成する。このとき、電極構造は、リッジ型光導波路の上部から、トレンチ溝を埋めている有機絶縁材料の表面、およびリッジ型光導波路に隣接して形成されたサポートメサの上面にわたって形成される。
【0007】
ここで、半導体積層構造の表面に塗布する有機絶縁材料の厚さが薄いと、その表面は、半導体積層構造の表面のトレンチ溝による凹凸形状を反映して、表面内で厚さに分布ができる。そうすると、エッチングによりリッジ型光導波路の上部を露出させる工程において、リッジ型光導波路によって露出の程度が不均一となる、または露出しないものが形成されることとなる。露出しない場合、電極構造とリッジ型光導波路とが通電しなくなるため、素子の製造歩留まりが低下する。
【0008】
また、電極構造を形成しないパッシブのリッジ型光導波路から構成される半導体光導波路アレイ素子の場合は、リッジ型光導波路の上部を露出させる工程は行なわないが、有機絶縁材料の表面に凹凸があると問題になる場合がある。たとえば、有機絶縁材料の表面を下面にして半導体光導波路アレイ素子を基板に載置するようないわゆるジャンクションダウン構造を形成しようとする場合、有機絶縁材料の表面に凹凸があると半導体光導波路アレイ素子を安定して基板に載置することができないため、素子の製造歩留まりが低下する。
【0009】
これに対して、有機絶縁材料の厚さを厚くすると、半導体積層構造の表面の凹凸形状の影響が及びにくくなり、表面内での厚さの分布が解消される。たとえば、粘性が1000〜7000cpsのポリイミドの場合は、凹凸形状がない半導体積層構造の表面における塗布後の厚さが8μm以上になるように塗布条件を設定すれば、ポリイミドの表面内で厚さの分布は生じない。
【0010】
しかしながら、有機絶縁材料の塗布後の厚さを8μmよりも厚くすると、ウェットエッチングでは有機絶縁材料を均一な量だけエッチングすることが困難になるため、エッチング量の不均一によって表面内で厚さに分布ができてしまう。この分布を防止するためには、ドライエッチングを用いてエッチバックすることが有効である。
【0011】
ところが、ドライエッチングを用いる場合は、エッチング工程に時間とコストが掛かるという問題がある。また、ドライエッチングを用いる場合は、エッチング前に有機絶縁材料を硬化させる(キュアする)熱処理を行う必要があるが、このキュアによって有機絶縁材料が大きく収縮する。たとえば、ポリイミドの場合は、塗布後の厚さが8〜16μmの場合に、キュアによって厚さが5〜10μmになり、体積がおよそ40%だけ収縮する。このように、厚く塗布した有機絶縁材料のキュアの際の収縮によって、光導波路に大きな応力が掛かることとなる。このような応力は、有機絶縁材料の剥離を引き起こす原因となるなど、素子の信頼性を低下する要因となるおそれがある。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、信頼性および製造歩留まりが高い半導体導波路アレイ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る半導体導波路アレイ素子の製造方法は、リッジ型光導波路がアレイ状に配列された半導体光導波路アレイ素子の製造方法であって、スラブ型光導波路を有する半導体積層構造に複数のトレンチ溝を並べて形成し、前記トレンチ溝により離間されてアレイ状に配列されたリッジ型光導波路を形成する光導波路形成工程と、前記リッジ型光導波路を形成した半導体積層構造の表面を覆い、かつ前記複数のトレンチ溝を埋めるように有機絶縁材料を塗布する塗布工程と、前記有機絶縁材料をウェットエッチングし、前記アレイ状に配列されたリッジ型光導波路の上部を露出させるエッチング工程と、前記複数のトレンチ溝を埋めた有機絶縁材料を硬化させる熱処理工程と、を含み、前記光導波路形成工程において、前記複数のトレンチ溝のうち最も外側に位置する最外トレンチ溝の幅を、前記最外トレンチ溝よりも内側に位置する内側トレンチ溝の幅よりも広くすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る半導体導波路アレイ素子の製造方法は、上記の発明において、前記最外トレンチ溝の幅をWt_outer、前記内側トレンチ溝のうち、前記最外トレンチ溝側から該最外トレンチ溝も含めて数えてM番目までの内側トレンチ溝の幅を、それぞれWt_outer2、・・・、Wt_outerMとし、その他の内側トレンチ溝の幅をWt_inner、前記複数のトレンチ溝の深さをDr、前記塗布工程後の前記リッジ型光導波路の配列方向中央付近のリッジ型光導波路上における前記有機絶縁材料の厚さをDp、前記塗布工程後の前記最外トレンチ溝の外側の半導体積層構造上における前記有機絶縁材料の、内側の平坦部の厚さをDp_outer、外側の平坦部の厚さをDp_flat、前記リッジ型光導波路のメサ幅をWm、前記リッジ型光導波路間の間隔をWp-p、前記リッジ型光導波路の数をN(ただし、N≧M、M≧3)とすると、前記Wt_outerおよびWt_outer2、・・・、Wt_outerMを、以下の式
(Dp+Dr)×(Wt_outer+Wt_outer2+・・+Wt_outerM)+Dp_flat×{Wt_inner×(2×N−M)+Wm×N+(Wp-p−Wt_inner)×(N−1)}=(Dp+Dr)×Wt_inner×(2×N−2)+Dp×{Wm×N+(Wp-p-Wt_inner)×(N−1)}
を満たすように設定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る半導体導波路アレイ素子の製造方法は、上記の発明において、前記有機絶縁材料としてポリイミドまたはベンゾシクロブテン(BCB)樹脂を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、信頼性および製造歩留まりが高い半導体導波路アレイ素子の製造方法を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明に係る半導体導波路アレイ素子の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各層の厚さや厚さの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0019】
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る半導体導波路アレイ素子の製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態1に係る製造方法よって製造した半導体導波路アレイ素子であるDFBレーザアレイを備えた集積型半導体レーザ素子の模式的な平面図である。
【0020】
図1に示すように、この集積型半導体レーザ素子100は、DFBレーザアレイ1と、DFBレーザアレイ1と接続した多モード干渉(Multi-Mode Interference:MMI)型の光合流器2と、光合流器2と接続した半導体光増幅器3と、半導体光増幅器と接続した半導体光変調器4とが、基板上にモノリシックに集積されたものである。DFBレーザアレイ1は、波長1530nm〜1630nmにおいて互いに異なるレーザ発振波長を有するDFBレーザ1a−1〜1a−6と、サポートメサ1b−1〜1b−5とが、交互に並べられて配置したものである。DFBレーザ1a−1〜1a−6、サポートメサ1b−1〜1b−5、光合流器2、半導体光増幅器3、および半導体光変調器4はリッジ型光導波路で構成されている。符号5、8、9はリッジ型光導波路を形成するためのトレンチ溝であるが、これについては後で詳述する。
【0021】
この集積型半導体レーザ素子100は以下のように動作する。まず、DFBレーザ1a−1〜1a−6のうち選択されたいずれか一つが電流を注入されてレーザ光を出力する。光合流器2が出力されたレーザ光を半導体光増幅器3に入力させる。半導体光増幅器3が入力されて増幅する。そして、半導体光変調器4が増幅したレーザ光を変調し、レーザ信号光として出力する。集積型半導体レーザ素子100は、選択するDFBレーザ1a−1〜1a−6を変更することによって、波長可変の光送信器として機能する。
【0022】
図2は、
図1に示す集積型半導体レーザ素子のA−A線要部断面図であり、DFBレーザアレイ1の断面構造を示している。
図2に示すように、DFBレーザアレイ1は、n側電極101を裏面に形成し、かつバッファ層としての役割も果たすn型のInPからなる下部クラッド層を表面に形成した、n型のInPからなる基板102上に、活性コア層103と、p型のInPからなる上部クラッド層104と、1.15QのGaInAsPからなるエッチストップ層105と、p型のInP層と1.25QのGaInAsP層との周期構造が長さ方向に形成されたグレーティング層106と、p型のInPからなる上部クラッド層107と、p型のInGaAsPからなるコンタクト層108とが積層した半導体積層構造を有している。ここで、1.15Qとは、バンドギャップ波長が1.15μmとなる組成を意味する。また、グレーティング層106の周期構造の周期は、DFBレーザ1a−1〜1a−6のそれぞれで互いに異なっている。その結果、DFBレーザ1a−1〜1a−6は、グレーティング層106の周期により定まる互いに異なる波長のレーザ光を出力することができる。
【0023】
DFBレーザ1a−1〜1a−6およびサポートメサ1b−1〜1b−5の間の領域には、コンタクト層108からエッチストップ層105の表面に到るまでの深さにトレンチ溝が形成されている。このトレンチ溝によってDFBレーザ1a−1〜1a−6およびサポートメサ1b−1〜1b−5が離間されるとともに、そのリッジ形状が形成されている。なお、DFBレーザアレイ1の幅方向の最も外側に位置するトレンチ溝を最外トレンチ溝5とし、最外トレンチ溝5の内側に位置するトレンチ溝を内側トレンチ溝6とする。最外トレンチ溝5の外側は溝構造がないサポート部7である。また、最外トレンチ溝5の幅は内側トレンチ溝6の幅よりも広くなっている。これについては後に詳述する。
【0024】
各トレンチ溝5、6の内壁を含めた半導体積層構造の表面はSiNからなる保護膜109によって覆われている。また、各トレンチ溝5、6は有機絶縁材料であるポリイミド110によって埋められている。DFBレーザ1a−1〜1a−6の上部においては、保護膜109は除去されてコンタクト層108が露出しており、そこにコンタクト層108と接触するようにp側電極111が形成されている。このp側電極111はポリイミド110の表面に到るまで延設している。さらに、p側電極111上には電極パッド112および金メッキ113が順次積層形成されている。電極パッド112および金メッキ113はポリイミド110の表面を介して隣接するサポートメサ1b−1〜1b−5またはサポート部7の上部に到るまで延設しており、ポリイミド110およびサポートメサ1b−1〜1b−5またはサポート部7によって保持されている。
【0025】
DFBレーザアレイ1は、本実施の形態1に係る製造方法により製造したことによって、ポリイミド110が剥離せず、かつp側電極111、電極パッド112、および金メッキ113により構成される電極構造がDFBレーザ1a−1〜1a−6と確実に通電することとなる。これについては後に詳述する。
【0026】
図3は、
図1に示す集積型半導体レーザ素子100のB−B線要部断面図であり、半導体光増幅器3の断面構造を示している。
図3に示すように、半導体光増幅器3は、n側電極101を裏面に形成し下部クラッド層を表面に形成した基板102上に、活性コア層103と、上部クラッド層104と、エッチストップ層105と、上部クラッド層107と、コンタクト層108とが積層した半導体積層構造を有している。また、半導体光増幅器3の両側には、コンタクト層108からエッチストップ層105の表面に到るまでの深さにトレンチ溝8が形成されている。このトレンチ溝8によって半導体光増幅器3のリッジ形状が形成されている。
【0027】
トレンチ溝8の内壁を含めた半導体積層構造の表面は保護膜109によって覆われている。また、トレンチ溝8はポリイミド110によって埋められている。半導体光増幅器3の上部においては、保護膜109は除去されてコンタクト層108が露出しており、そこにコンタクト層108と接触するようにp側電極111が形成されている。このp側電極111はポリイミド110の表面に到るまで延設している。さらに、p側電極111上には電極パッド112および金メッキ113が順次積層形成されている。電極パッド112および金メッキ113はポリイミド110の表面を介して隣接するサポート部7の上部に到るまで延設しており、ポリイミド110およびサポート部7によって保持されている。
【0028】
図4は、
図1に示す集積型半導体レーザ素子100のC−C線要部断面図であり、光合流器2の断面構造を示している。
図4に示すように、光合流器2は、n側電極101を裏面に形成した基板102上に、ノンドープのInPからなる下部クラッド層114と、1.35QのGaInAsPからなる受動コア層115と、ノンドープのInPからなる上部クラッド層116と、エッチストップ層105と、上部クラッド層107とが積層した半導体積層構造を有している。また、光合流器2の両側には、上部クラッド層107からエッチストップ層105の表面に到るまでの深さにトレンチ溝9が形成されている。このトレンチ溝9によって光合流器2のリッジ形状が形成されている。また、トレンチ溝9の内壁を含めた半導体積層構造の表面は保護膜109によって覆われている。また、トレンチ溝9はポリイミド110によって埋められている。
【0029】
なお、半導体光変調器4については、半導体光増幅器3と同一の断面構造を有している。
【0030】
(製造方法)
つぎに、集積型半導体レーザ素子100の製造方法について、
図5〜
図9を参照して説明する。
【0031】
はじめに、MOCVD(Metal Organic chemical Vapor Deposition)結晶成長装置を用い、成長温度600度において、基板102上にバッファ層を成長し、さらに、活性コア層103、上部クラッド層104、エッチストップ層105、GaInAsP層120、およびp型のInPからなるキャップ保護層121を順次成長する(
図5(a)参照)。
【0032】
なお、各半導体層の特性を例示すると、活性コア層103は、InGaAsPからなり、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造の上下に3段階の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH:Separate Confinement Heterostructure)を形成したMQW−SCH構造を有する。なお、MQWは例えば、6層の厚さ6nmの井戸層と厚さ10nmの障壁層とが交互に積層された、いわゆる6QWの構造を有する。また、上部クラッド層104、エッチストップ層105、GaInAsP層120、およびキャップ保護層121の厚さはそれぞれ30nm、10nm、20nm、10nmである。
【0033】
つぎに、DFBレーザ1a−1〜1a−6を形成すべき領域において、ICP(Inductive Coupling Plasma)−RIE(Reactive Ion Etcher)によって、GaInAsP層120の底面に到る深さまで、周期240nm程度の回折格子状にエッチングする(
図5(b)参照)。なお、上記周期は、DFBレーザ1a−1〜1a−6を形成すべき各領域によって異なるようにする。
【0034】
つぎに、DFBレーザ1a−1〜1a−6、半導体光増幅器3、および半導体光変調器4を形成すべきアクティブ領域をSiNからなる保護マスクM1で覆い、アクティブ領域以外の領域(以下、パッシブ領域とする)をICP−RIEと硫酸によるウェットエッチングとにより、活性コア層103の底面に到る深さまでエッチングし、活性コア層103を除去する(
図5(c)参照)。
【0035】
つぎに、パッシブ領域に、光合流器2を形成するための半導体積層構造を形成する。具体的には、下部クラッド層114、受動コア層115、上部クラッド層116、およびエッチストップ層105を順次バットジョイント成長によって再成長する(
図5(d)参照)。なお、受動コア層115の厚さはたとえば300nmとし、活性コア層103と厚さ方向の中心を一致させて接続するようにする。これによって、DFBレーザアレイ1、光合流器2、半導体光増幅器3、および半導体光変調器4を構成するリッジ型光導波路を形成するためのスラブ型光導波が形成される。
【0036】
つぎに、保護マスクM1を除去した後に全面に上部クラッド層107とコンタクト層108とを順次成長する。これによって、DFBレーザアレイ1、光合流器2、半導体光増幅器3、および半導体光変調器4を構成するリッジ型光導波路を形成するためのスラブ型光導波が形成される。その後、パッシブ領域のコンタクト層108を除去する(
図5(e)、(f)参照)。
【0037】
つぎに、
図1のA−A線断面に対応する
図6を用いて説明する。まず、トレンチ溝を形成するための保護マスクM2を形成し、ICP−RIEによってドライエッチングを行なう(
図6(a)参照)。このとき、エッチストップ層105までエッチングしないようにする。つぎに、塩酸:燐酸=1:3のエッチャントにより、エッチストップ層105の表面まで等方的にエッチングを行ない、その後、バッファードフッ酸によって保護マスクM2を除去する(
図6(b)参照)。これによって、各トレンチ溝5、6、8、9が形成されるとともに、DFBレーザアレイ1を形成するためのリッジ型光導波路10、ならびに光合流器2、半導体光増幅器3、および半導体光変調器4を形成するためのリッジ型光導波路が形成される。その後、全面に保護膜109を形成する(
図6(c)参照)。なお、最外トレンチ溝5は、その幅が内側トレンチ溝6の幅よりも広くなるように形成する。トレンチ溝8、9の幅はたとえば最外トレンチ溝5と同一にする。
【0038】
つぎに、全面にポリイミド110を塗布する。ここで、最外トレンチ溝5の幅を内側トレンチ溝6の幅よりも広くなるように形成していることによって、DFBレーザアレイ1を形成する領域において、ポリイミド110の表面はいっそう平坦になる。
【0039】
以下、その理由を
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態1に係る製造方法を従来の製造方法と比較して説明する図である。なお、符号10A、10BはそれぞれDFBレーザ、サポートメサを形成するためのリッジ型光導波路であるが、リッジ型光導波路を符号10A、10Bで区別しない場合は符号10で示している。従来の製造方法では、
図7(b)に示すように、最外トレンチ溝5´と内側トレンチ溝6とを同じ幅で形成している。このため、半導体積層構造の表面に供給されたポリイミド110は、内側トレンチ溝6と最外トレンチ溝5´とが形成された溝形成領域においては、一部が各トレンチ溝内に入り込むため、その厚さが薄くなる。これに対して、溝構造がないサポート部7では、ポリイミド110の厚さは溝形成領域での厚さよりも厚くなる。その結果、溝形成領域からサポート部7にかけて、ポリイミド110の表面に段差Sが形成されることとなる。
【0040】
これに対して、本実施の形態1に係る製造方法では、
図7(a)に示すように、最外トレンチ溝5の幅を内側トレンチ溝6の幅よりも広くなるように形成している。このため、段差Sを形成しているポリイミド110の一部が、よりいっそう最外トレンチ溝5に入り込むことになる。その結果、ポリイミド110の段差Sは、
図7(b)の場合よりもサポート部7側へ移動することとなる。
【0041】
すなわち、本実施の形態1によれば、ポリイミド110の段差Sが、DFBレーザアレイ1を形成する領域から離れるように移動するため、当該領域においてポリイミド110はいっそう平坦になり、リッジ型光導波路10の上部を露出させる工程において、その露出の程度が不均一となることが抑制される。その結果、DFBレーザアレイ1の製造歩留まりが高くなる。
【0042】
また、トレンチ溝が存在するにもかかわらずポリイミド110が平坦になるため、ポリイミド110の塗布厚さ(リッジ型光導波路10上におけるポリイミド110の厚さ)は2μm以下と薄くてよい。そのため、ウェットエッチングによって均一な量のエッチングができるので、エッチングによる厚さの不均一の発生を防止できる。それとともに、ウェットエッチングを採用する場合にはキュアをエッチング前に行なわなくてもよいため、ポリイミド110の剥離が防止されるので、DFBレーザアレイ1の信頼性の低下を防止することができる。
【0043】
なお、
図7(a)に示すように、最外トレンチ溝5の幅5aをWt_outer、内側トレンチ溝6の幅6aをWt_inner、各トレンチ溝5、6の深さ5b、6bをDr、ポリイミド110の塗布後のリッジ型光導波路10の配列方向中央付近のリッジ型光導波路10上におけるポリイミド110の厚さ110aをDp、最外トレンチ溝5の外側の半導体積層構造であるサポート部7上におけるポリイミド110の厚い内側の平坦部の厚さ110bをDp_outer、さらにサポート部7上におけるポリイミド110の薄い外側の平坦部のポリイミド厚さ110cをDp_flat、リッジ型光導波路10のメサ幅10aをWm、サポートメサ用のリッジ型光導波路10Bと隣り合うDFBレーザ用のリッジ型光導波路10A間の間隔10bをWp-p、リッジ型光導波路10の数をNとすると、Wt_outerを、以下の式(1)
【0044】
(Dp+Dr)×Wt_outer+Dp_flat×{Wt_inner×(2×N−3)+Wm×N+(Wp-p-Wt_inner)×(N−1)}=(Dp+Dr)×Wt_inner×(2×N−2)+Dp×{Wm×N+(Wp-p−Wt_inner)×(N−1)} ・・・ (1)
【0045】
を満たすように設定することが好ましい。ただし、N≧3である。これによって、すべてのリッジ型光導波路10に対してリッジ型光導波路10上におけるポリイミド110の厚さがDpとなり、均一な厚さとなる。
【0046】
なお、この場合には、式(1)に用いられているポリイミド厚さDp、Dr、Dp_outer、およびDp_flatの値を設計する前に、予め、
図7(b)に示すようなトレンチ幅が一定なサンプルを作製し、段差計や断面の走査型電子顕微鏡による観察等により、求めておく必要がある。
【0047】
また、式(1)は、最外トレンチ溝5の幅のみを広げる例であるが、最外トレンチ溝5の幅Wt_outerと、さらにその内側の内側トレンチ溝6のうち、片側の最外トレンチ溝5側から最外トレンチ溝5も含めて数えて2番目の内側トレンチ溝の幅を広げるようにしてもよい。ここで、当該2番目の内側トレンチ溝の幅をWt_outer2と置き換え、他の内側トレンチ溝の幅はWt_innerのままとすると、この場合は、Wt_outerおよびWt_outer2を、以下の式(2)
【0048】
(Dp+Dr)×(Wt_outer+Wt_outer2)+Dp_flat×{Wt_inner×(2×N−4)+Wm×N+(Wp-p−Wt_inner)×(N−1)}=(Dp+Dr)×Wt_inner×(2×N−2)+Dp×{Wm×N+(Wp-p-Wt_inner)×(N−1)} ・・・ (2)
を満たすように設定することが好ましい。ただし、N≧3である。
【0049】
さらに、最外トレンチ溝5の幅Wt_outerと、さらにその内側の内側トレンチ溝6のうち、片側の最外トレンチ溝5側から最外トレンチ溝5も含めて数えてM番目までの内側トレンチ溝の幅を広げるようにしてもよい。ここで、当該M番目までの内側トレンチ溝の幅をそれぞれWt_outer2、・・・、Wt_outerMと置き換え、他の内側トレンチ溝6の幅はWt_innerのままとすると、この場合は、Wt_outerおよびWt_outer2、・・・、Wt_outerMを、以下の式(3)
【0050】
(Dp+Dr)×(Wt_outer+Wt_outer2+・・・+Wt_outerM)+Dp_flat×{Wt_inner×(2×N−M)+Wm×N+(Wp-p−Wt_inner)×(N−1)}=(Dp+Dr)×Wt_inner×(2×N−2)+Dp×{Wm×N+(Wp-p-Wt_inner)×(N−1)} ・・・ (3)
を満たすように設定することが好ましい。ただし、N≧M、M≧3である。
【0051】
また、ポリイミド110の塗布をスピンコートによって行なう場合は、スピンコートの回転数が1500〜5000rpm、ポリイミド110の粘性が1000cps以上の場合、以下の式(4)が成り立つ。
K×(Dp+Dr)=Dp_outer ・・・ (4)
ここで、Kはスピンコートの回転数とポリイミド110の粘性で決まる定数である。式(4)によれば、Dp_outerとDp+Drとの関係が規定される。したがって、式(4)の条件の下に式(1)〜(3)のいずれか一つを適用すれば、Wt_outerをいっそう容易に設定することができる。
【0052】
なお、
図8は、
図7(a)と同様の構造を有するリッジ型光導波アレイを作製して測定した最外トレンチ溝の幅(Wt_outer)と最外トレンチ溝におけるポリイミドの厚さとの関係を示す図である。なお、最外トレンチ溝におけるポリイミドの厚さは、アレイの配列方向中央付近の内側トレンチ溝におけるポリイミドの厚さとの差分である。また、作製したリッジ型光導波アレイにおいて、式(1)におけるWt_innerは3μm、Drは3μm、Wmは2μm、Wp-pは25μm、Nは12と設定した。
図8に示すように、Wt_outerを3μmより広い4μm〜6μmに設定した場合に、中心付近の内側トレンチ溝と最外トレンチ溝とでのポリイミドの厚さの差は100nm以内となり、リッジ型光導波アレイ内でのポリイミドの厚さが均一となる。
【0053】
図9を用いて集積型半導体レーザ素子100の製造方法についてさらに説明する。
図7(a)のようにポリイミド110を塗布した後に、2.38質量%の酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)によってウェットエッチングを行ない、リッジ型光導波路10の上部を露出させるいわゆる頭出しを行なう。上述したようにDFBレーザアレイ1を形成する領域においてポリイミド110は表面が平坦であるから、各リッジ型光導波路10は均一に頭だしがされることとなる。その後、各トレンチ溝5、6、8、9に残されたポリイミド110をキュアして熱硬化する(
図9(a)参照)。
【0054】
つぎに、フォトリソグラフィ技術によって、DFBレーザ1a−1〜1a−6を形成するためのリッジ型光導波路10、ならびに半導体光増幅器3および半導体光変調器4を形成するためのリッジ型光導波路以外の領域をレジストで覆い、レジストで覆わなかったリッジ型光導波路の上部の保護膜109をRIEによってエッチング除去する。これによってコンタクト層108を露出させる。その後レジストを除去する(
図9(b)参照)。
【0055】
つぎに、フォトリソグラフィ技術によって、p側電極111を形成するためのパターンを有するレジストを形成し、全面にAuZn膜を蒸着した後にアセトンによるリフトオフを行なう。これによってp側電極111を形成する(
図9(c)参照)。
【0056】
つぎに、Ti/Ptの2層構造の電極パッド112、およびp側電極111と電極パッド112との接触抵抗を低減するための金メッキ113を形成する((
図9(d)、(e)参照))。なお、このp側電極111、電極パッド112、および金メッキ113の形成は、半導体光増幅器3および半導体光変調器4を形成するためのリッジ型光導波路に対しても行なう。
【0057】
その後、基板102の裏面全面を研磨し、研磨した裏面にAuGeNi/Au膜を蒸着してn側電極101を形成した後、オーミックコンタクトをとるために430℃で焼結(シンタ)する。最後に、素子分離して集積型半導体レーザ素子100が完成する。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態1に係る製造方法よって製造したDFBレーザアレイ1、およびこれを備えた集積型半導体レーザ素子100は、信頼性および製造歩留まりが高いものとなる。
【0059】
なお、上記実施の形態に係るDFBレーザアレイおよびこれを備えた集積型半導体レーザ素子は、波長1550nm帯用にその化合物半導体や電極等の材料、サイズ等が設定されている。しかしながら、各材料やサイズ等は、光通信波長帯域内の増幅すべき光の波長に応じて適宜設定でき、特に限定はされない。
【0060】
また、上記実施の形態では、半導体光導波路アレイ素子を構成する各リッジ型光導波路の幅、および各トレンチ溝の深さが等しいが、各リッジ型光導波路の幅または各トレンチ溝の深さは異なっていてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態では、有機絶縁材料としてポリイミドを用いているが、ベンゾシクロブテン(BCB)樹脂などの他の有機絶縁材料を用いてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、半導体導波路アレイ素子がDFBレーザアレイであるが、本発明はリッジ型光導波路がアレイ状に配列されたあらゆる半導体光導波路アレイ素子に適用可能である。たとえば、本発明は、パッシブなリッジ型光導波路をアレイ状に配列して複数の光信号を並列的に導波する半導体導波路アレイ素子、半導体光増幅器アレイ、あるいは半導体光変調器アレイを製造する場合にも適用できる。また、上記実施の形態では、リッジ型光導波路が、トレンチ溝がコア層に到達しない深さに形成されたローメサ構造のものであるが、トレンチ溝がコア層よりも深い位置まで形成されたハイメサ構造のリッジ型光導波路である場合にも本発明は適用できる。