(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の様々な電子機器を搭載した自動車には、これらの電子機器に情報を伝達したり、電力を供給するワイヤハーネスが車両の至る所に配索されている。ワイヤハーネスを、車両を構成する取付対象に対して所定の配索経路に沿って固定する固定構造として、例えば、
図11に示す係止型のワイヤハーネス固定構造500や特許文献1に開示されているワイヤハーネス固定構造等が挙げられる。
【0003】
上述の係止型のワイヤハーネス固定構造500は、
図11(a)に示すように、ワイヤハーネス700に取り付けられるハーネス側治具510と、車両を構成する取付対象600に設けられた係止孔630とで構成されている。ハーネス側治具510は、傘形状の係止部521を中央部分に突出させて設けたクランプ520と、該クランプ520をワイヤハーネス700に取り付けるためのビニルテープ530とで構成されている。また、係止孔630は、平坦な取付対象600の所定箇所に設けられている。
【0004】
そして、クランプ520を、ワイヤハーネス700と共にビニルテープ530で巻き回すことでワイヤハーネス700に取り付け、
図11(b)及び(c)に示すように、係止部521を係止孔630に対して取付対象600の一方側610から挿入し、他方側620に突出させた状態で係止することで、ワイヤハーネス固定構造500によりワイヤハーネス700を取付対象600に固定することができる。
【0005】
しかし、上記ワイヤハーネス固定構造500は、ワイヤハーネス700が取り付けられる取付対象600に係止孔630を設ける必要がある。さらに、取付対象600の上記他方側620に係止部521が突出した状態で係止するための空間が必要であり、固定可能な取付対象600の場所は限られていた。
【0006】
また、特許文献1に開示されているワイヤハーネス固定構造は、ワイヤハーネスに取り付けられるハーネス側治具と、車両を構成する取付対象に凹設された配索溝とで構成されている。ハーネス側治具は、短冊形状を有し、一方の面に接着剤が塗布されていると共に、雌雄一対の面ファスナのうちの一方側を他方の面に備えており、上記一方の面を内側にしてワイヤハーネスの外周に巻き回して接着剤で固着している。また、配索溝は、平坦な底部を有し、該底部に雌雄一対の面ファスナのうちの他方側を固着させて備えている。
【0007】
このように構成された上記ワイヤハーネス固定構造は、ワイヤハーネスに巻き回された面ファスナの一方側と、配索溝の平坦な底部に固着している面ファスナの他方側とを係着させることでワイヤハーネスを取付対象に固定することができる。
【0008】
ところが、上記ワイヤハーネス固定構造は、接触断面における上記面ファスナ同士の係着範囲が小さいために係着力が弱いという欠点があり、ワイヤハーネスの自重や車両の振動等により、ワイヤハーネスが取付対象から外れ易く問題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、取付対象の構成を変更することなく、取付対象の所望の位置に、容易に安定してワイヤハーネスを固定できるワイヤハーネス固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、ワイヤハーネスを車両の取付対象に固定するワイヤハーネス固定構造であって、前記ワイヤハーネスに取り付けるハーネス側治具と、前記車両の前記取付対象に取り付ける車両側治具とで構成し、前記ハーネス側治具を、ハーネス側固定手段と、該ハーネス側固定手段を前記ワイヤハーネスに取り付けるハーネス取付手段とで構成し、前記ハーネス側固定手段及び前記車両側治具の対向するそれぞれの対向部分を、互いに面接触可能なハーネス側固定面及び前記車両側固定面で構成し、前記ハーネス側固定面及び前記車両側固定面の少なくとも一方に、脱着可能に接続する接続手段を備え
、前記ハーネス取付手段を、前記ハーネス側固定手段の少なくとも一部分における前記ワイヤハーネスの配索方向の両端から前記ハーネス側固定手段の外方へ向かって突出する突出形状で形成した取付突部を有する構成とし、前記ハーネス側固定手段を、基準固定部と、該基準固定部に対して角度可変に連設する角度可変固定部とで構成すると共に、前記取付突部を、前記基準固定部の両端から突出する構成としたことを特徴とする。
上記接続手段は、面ファスナやバネホック等の接続手段で構成してもよく、さらには、前記ハーネス側固定面又は前記車両側固定面に備えた面状の磁石で構成してもよい。
【0012】
この発明により、取付対象の構成を変更することなく、取付対象の所望の位置に、容易に安定してワイヤハーネスを固定することができる。
詳しくは、前記ワイヤハーネス固定構造は、前記ハーネス側治具を前記ワイヤハーネスに取り付けると共に、前記車両側治具を前記取付対象に取り付ける。そして、互いに面接触可能な前記ハーネス側固定面及び前記車両側固定面の少なくとも一方に備えた前記接続手段で、前記ハーネス側固定面と前記車両側固定面とを接続することにより、前記取付対象に前記ワイヤハーネスを固定することができる。
【0013】
よって、例えば、上述の係止部を係止孔に係止させてワイヤハーネスを取付対象に固定する従来の係止型のワイヤハーネス固定構造と異なり、前記取付対象に係止孔を設ける必要がない。さらに、前記取付対象の他方側に係止部が突出した状態で係止するための空間を必要としないため、従来よりも取付対象におけるワイヤハーネスを取り付ける位置の自由度が高い。
【0014】
また、脱着可能な前記接続手段を、互いに面接触可能な前記ハーネス固定面及び前記車両側面に備えたことにより、前記ハーネス固定手段と前記車体側治具とを接続し直すことができ、また、面接触状態で接続することができるため、ワイヤハーネスが取付対象から外れ難い。
従って、上述の如く、取付対象の構成を変更することなく、取付対象の所望の位置に、容易に安定してワイヤハーネスを固定することができる。
【0015】
また、前記ハーネス取付手段を、前記ハーネス側固定手段の少なくとも一部分における前記ワイヤハーネスの配索方向の両端から前記ハーネス側固定手段の外方へ向かって突出する突出形状で形成した取付突部を有する構成とすることによれば、前記取付突部を、前記ハーネス側固定手段の少なくとも一部分における前記ワイヤハーネスの配索方向の両端から外方へ向かって突出する突出形状で形成したことにより、1つの前記ハーネス側治具を、前記ワイヤハーネスの配索方向に離間している2ヶ所において前記ワイヤハーネスに取り付けることができる。このため、前記ワイヤハーネスに前記ハーネス側治具を安定して取り付けることができる。
【0016】
従って、前記車両の振動等により前記ハーネス側治具が前記ワイヤハーネスから外れたり、前記ワイヤハーネスの配索方向が変更されることを防止できる。この結果、上述のように前記ハーネス固定手段と前記車体側治具とを面接触状態で接続することに加え、前記ハーネス側治具を前記ワイヤハーネスに2ヶ所で取り付けることで、前記取付対象に前記ワイヤハーネスをより安定して固定することができる。
【0017】
また、前記ハーネス側固定手段を、基準固定部と、該基準固定部に対して角度可変に連設する角度可変固定部とで構成すると共に、前記取付突部を、前記基準固定部の両端から突出する構成とすることによれば、前記ハーネス側固定手段は、前記角度可変固定部を備えているため、凸曲面状、或いは、角部分を有する前記取付対象においても、該取付対象の当該形状に沿うように前記基準固定部に対する前記角度可変固定部の角度を変更することができる。従って、前記ハーネス側固定手段と前記車両側治具との接触面積を広く確保して前記ワイヤハーネスを前記取付対象に固定することができる。
【0018】
この発明の態様として、前記接続手段を、互いに係着可能な一対の面ファスナで構成し、該面ファスナの一方側を前記ハーネス側固定面に備えると共に、他方側を前記車両側固定面に備えることができる。
【0019】
この発明により、面ファスナの係着面同士を互いに重ねて係着させることができるため、強い係着力で係着でき、さらに、係着面の大きさを調整することで所望の係着力を容易に得ることができる。従って、ワイヤハーネスの自重や車両の振動等により、前記ワイヤハーネスが前記取付対象から外れたり、前記取付対象の予め定められた位置からずれることをより確実に防止できる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記ハーネス側固定面と前記車両側固定面とを、
同程度の面の大きさ及び形状で形成することができる。
【0021】
この発明により、前記車両側固定面が設置された前記取付対象の所定の位置に、前記ワイヤハーネスを正確に効率良く取り付けることができる。
詳しくは、例えば、ルーフライナーのような不織布をその表面に一様に有する取付対象に、前記ハーネス側治具を直接係着させて取り付ける場合には、取り付けるに際して目印となるものがないため、ワイヤハーネスを取付対象の所定の位置に正確に固定することは困難である。
【0022】
これに対して、この発明のワイヤハーネス固定構造は、前記ハーネス側固定面と前記車両側固定面とが同程度の大きさ及び形状を有する構成であるため、前記車両側固定面を前記取付対象の所定の位置に設置することで、前記取付対象に前記ハーネス側固定面を取り付けるに際して、前記車両側固定面が目印となる。
従って、前記車両側固定面が設けられている前記取付対象の所定の位置に、前記ワイヤハーネスを正確に効率良く取り付けることができる。
【0023】
また、この発明の態様として、前記ハーネス側固定手段と前記車両側治具とを、可撓性を有する構成とすることができる。
【0024】
この発明により、前記ハーネス側固定手段と前記車両側治具とを、曲面部分を含む前記取付対象に対してもこれらを該曲面部分に沿って取り付けることができる。従って、前記ワイヤハーネス固定構造により、平坦な前記取付対象のみならず曲面部分を含む前記取付対象に対しても前記ワイヤハーネスを所望の位置に安定して固定することができる。
【0025】
また、この発明の態様として、前記ハーネス取付手段を、前記取付突部と取付帯とで構成し、前記取付帯を、前記ワイヤハーネスに沿って前記取付突部を配置した状態で、前記取付突部と前記ワイヤハーネスとの外周への巻き回しを許容する長さに形成することができる。
上記取付帯は、例えば、ビニルテープ、インシュロック或いは面ファスナを一方の面に備えた帯状の布とすることができる。
【0026】
この発明により、前記ハーネス側治具は、前記取付帯を前記取付突部と前記ワイヤハーネスの外周に巻き回すだけで、前記ワイヤハーネスに取り付けることができ、単純な作業で容易に前記ワイヤハーネスに装着することができる。また、様々な径のワイヤハーネスに対してハーネス側治具を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明により、取付対象の構成を変更することなく、取付対象の所望の位置に、容易に安定してワイヤハーネスを固定できるワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
この発明のワイヤハーネス固定構造1について
図1乃至
図7と共に説明する。
図1は自動車400におけるワイヤハーネス200の配索例についての概略図を示している。また、
図2は第1実施形態のワイヤハーネス固定構造1の説明図を示している。
詳しくは、
図2(a)はワイヤハーネス固定構造1におけるワイヤハーネス200に取り付けるハーネス側固定部材20の斜視図を示している。また、
図2(b)及び(c)はワイヤハーネス固定構造1における取付対象300に取り付ける車両側治具80の斜視図を示している。なお、、
図2(b)は車両側治具80における接着面83の側から見た斜視図を示し、
図2(c)は車両側治具80における雌型面ファスナ92を備えた車両側固定面85の側から見た斜視図を示している。
【0030】
また、
図3はハーネス側治具10をワイヤハーネス200に取り付けた状態の底面側からの斜視図を示し、
図4は車両側治具80を平坦な取付対象300に取り付けて、ハーネス側治具10と車両側治具80とを対向させた状態の斜視図を示している。
また、
図5はワイヤハーネス固定構造1により、ワイヤハーネス200を平坦な取付対象300に固定した状態の斜視図を示し、
図6は
図5における矢印Yの方向から見た正面図を示している。
さらに、
図7はワイヤハーネス固定構造1によりワイヤハーネス200を凹曲面状の取付対象300に固定した状態の断面図を示している。
【0031】
自動車400には、
図1に例示するように、搭載している様々な電子機器に情報を伝達したり、電力を供給するワイヤハーネス200が自動車400の至る所に配索されている。このワイヤハーネス200は、以下で説明するワイヤハーネス固定構造1により、自動車400を構成する様々な材質及び形状の取付対象に取り付けられてる。
【0032】
ワイヤハーネス固定構造1は、
図2(a)に示すハーネス側治具10と、
図2(b)及び(c)に示す車両側治具80とで構成している。
さらに、ハーネス側治具10は、
図3に示すように、ハーネス側固定部材20とビニルテープ60とで構成している。
【0033】
ここで、ハーネス側固定部材20は、
図2(a)に示すように、雄型面ファスナ91、及び、該雄型面ファスナ91の形状を保持するハーネス側面状基部34からなるハーネス側固定手段30と、ハーネス側面状基部34の両側から突出する取付突部40とで構成している。
雄型面ファスナ91は、後述する雌型面ファスナ92とで一対の面ファスナ90を構成し、可撓性を有すると共に平面視略正方形の面状に形成している。
【0034】
また、ハーネス側面状基部34は、可撓性を有すると共に上述の雄型面ファスナ91と同じ面の大きさを有する平面視略正方形の平坦な面状に形成され、該ハーネス側面状基部34に、雄型係着面91aが露出するように雄型面ファスナ91が接着固定されている。
【0035】
また、取付突部40は、平面視略正方形状のハーネス側面状基部34における対向側面34R,34Lの中央からハーネス側面状基部34に対して外方に向かって、該対向側面34R,34Lに垂直かつハーネス側面状基部34の両面に対して面一に突出する短冊形状に形成している。
【0036】
さらに、取付突部40は、基端側に位置する取付突部本体部分41と、先端側に位置する取付突部先端部分45とで構成している。
詳しくは、取付突部本体部分41は、上述のように基端側に位置し、平面視長方形の帯状に形成している。さらに、取付突部先端部分45は、取付突部本体部分41に対して先端側に配置され、幅方向Wの両側に突出する先端突出片46を備えている。
【0037】
なお、取付突部40の幅方向Wの長さは、ハーネス側固定具10を取り付けるワイヤハーネス200の径と同程度の長さで形成している。また、取付突部本体部分41の長手方向Lの長さを後述するビニルテープ60の幅よりも長く形成している。
また、ビニルテープ60は、取付突部40の長手方向Lとワイヤハーネス200の配索方向Xとを一致させて、取付突部40をワイヤハーネス200に沿って配置した状態で、取付突部40における取付突部本体部分41とワイヤハーネス200との外周への巻き回しを許容する長さに形成している(
図3参照)。さらに、ビニルテープ60は、上述のように取付突部本体部分41の長手方向Lの長さよりも短い幅を有している。なお、上述の取付突部40とビニルテープ60とでハーネス側取付手段50を構成している。
【0038】
一方、車両側治具80は、
図2(b)及び(c)に示すように、雌型面ファスナ92と、雌型面ファスナ92の形状を保持する車両側面状基部84とで構成する。
雌型面ファスナ92は、可撓性を有すると共に上述の雄型面ファスナ91、及び、ハーネス側面状基部34と同一の面の大きさを有する平面視略正方形の面状に形成している。
【0039】
さらに、車両側面状基部84は、可撓性を有すると共に雌型面ファスナ92と同じ面の大きさを有する平面視略正方形の面状に形成している。そして、車両側面状基部84は、車両側面状基部84を取付対象300に貼り付ける側の面の全面を接着剤が塗布された接着面83とし、その他方側の車両側固定面85に、雄型係着面92aが露出するように雄型面ファスナ92が接着固定されている。
【0040】
続いて、上述のように構成するハーネス側治具10を、
図3に示す状態にワイヤハーネス200に取り付ける取付方法について説明する。
先ず、ワイヤハーネス200における所定の取り付け位置において、ハーネス側治具10における取付突部40の長手方向Lと、ワイヤハーネス200の配索方向Xとを一致させた状態で、ハーネス側治具10をワイヤハーネス200に沿って配置する。
【0041】
そして、取付突部40の取付突部本体部分41を通るように、ハーネス側治具10とワイヤハーネス200の外周にビニルテープ60を引っ張りながら巻き回す。
このようにして、ハーネス側面状基部34を挟んでワイヤハーネス200の配索方向Xに離間した2ヶ所においてビニルテープ60を巻き回すことにより、
図3に示すように、ハーネス側治具10をワイヤハーネス200の所定の位置に取り付ける。
【0042】
これに対し、上述のように構成する車両側治具80は、
図4に示すように、取付対象300における所定の位置に、雌型面ファスナ92が露出するように接着面83を押し当てて接着固定する。
【0043】
次に、ハーネス側治具10を取り付けたワイヤハーネス200を、車両側治具80を取り付けた取付対象300に固定する方法について説明する。
上述のようにハーネス側治具10と車両側治具80とを取り付けた状態で、
図4に示すように、ハーネス側治具10のハーネス側固定面35に備えた雄型面ファスナ91と、車両側治具80の車両側固定面85に備えた雌型面ファスナ92とが互いに対向するように配置する。
【0044】
さらに、
図5及び
図6に示すように、ハーネス側治具10のハーネス側固定手段30と車両側治具80とを端を揃えて重ね合わせて、面ファスナ90を構成する雄型面ファスナ91と雌型面ファスナ92とを面接触状態で係着させることにより、ワイヤハーネス固定構造1は、ワイヤハーネス200を取付対象300に固定することができる。
【0045】
上述のワイヤハーネス200を取付対象300に固定するワイヤハーネス固定構造1の構成及び固定方法により、以下に述べる作用効果を奏する。
ワイヤハーネス固定構造1は、取付対象300の構成を変更することなく、様々な材質及び形状の取付対象300の所望の位置に、容易に安定してワイヤハーネス200を固定することができる。
【0046】
詳しくは、ワイヤハーネス固定構造1は、ハーネス側治具10をワイヤハーネス200に取り付けると共に、車両側治具80を接着面83により取付対象300に接着して取り付ける。そして、ハーネス側治具10のハーネス側固定面35に備えた雄型面ファスナ91と、車両側治具80の車両側固定面85に備えた雌型面ファスナ92とを係着することで、ワイヤハーネス200を取付対象300に固定することができる。
【0047】
従って、例えば、従来の係止型のワイヤハーネス固定構造と異なり、取付対象300に係止孔を設ける必要がない。さらに、取付対象300の他方側に係止部が突出した状態で係止するための空間を必要としないため、従来よりも取付対象300におけるワイヤハーネス200を取り付ける位置の自由度が高い。
【0048】
また、ワイヤハーネス固定構造1は、車両側治具80を接着面83により取付対象300に接着固定するため、自動車400の内部に存在する様々な取付対象300の表面、例えば、材質が金属やプラスチックである取付対象300の表面に、車両側治具80を接着固定することができる。
【0049】
また、ハーネス側治具10におけるハーネス側固定手段30、並びに、車両側治具80は可撓性を有するため、これらを曲面状の取付対象300に対しても該曲面に沿って取り付けることができる。従って、ワイヤハーネス固定構造1により、平坦な取付対象300のみならず曲面状の取付対象300に対してもワイヤハーネス200を固定することができる。
【0050】
詳しくは、上述のワイヤハーネス固定構造1は、ハーネス側固定手段30と車両側治具80とが可撓性を有する構成であるため、例えば、
図7に示すような凹曲面状の取付対象300に対してもワイヤハーネス200を固定することができる。もちろん、図示省略するが凸状の曲面部分を有する取付対象に対してもワイヤハーネス200を固定することができる。
【0051】
また、ワイヤハーネス固定構造1は、ハーネス側固定面35及び車両側固定面85に脱着自在な一対の面ファスナ90を備えた構成であるため、固定位置を間違えても容易に取り外して所望の位置に付け替えることができる。さらに、雄型面ファスナ91と雌型面ファスナ92とを面接触状態で係着することができるため、ワイヤハーネス200が取付対象300からは外れ難い。
【0052】
従って、上述の如く、取付対象300の構成を変更することなく、様々な材質及び形状の取付対象300の所定の位置に容易に安定してワイヤハーネス200を固定することができる。
その結果、上述のワイヤハーネス固定構造1だけで自動車400に配索されている全てのワイヤハーネス200を固定することが可能である。
【0053】
さらに、上述のように、ワイヤハーネス固定構造1は、取付対象300に係止孔を設ける必要がないため、パッキン等の防塵、防水対策などの追加工や追加処理が不要であり、取付対象300の強度に影響を与えることなくワイヤハーネス200を取付対象300に対して固定することができる。
【0054】
また、ワイヤハーネス固定構造1は、ハーネス側固定面35に雄型面ファスナ91を備えると共に、車両側固定面85に雌型面ファスナ92を備えたことにより、面ファスナ90同士を面接触状態で係着する構成であるため、強い係着力を得ることができ、しかも、面ファスナ90の面の大きさを調整することで所望の係着力を得ることができる。
【0055】
その結果、ワイヤハーネス200の自重や自動車400の振動等により、ワイヤハーネス200が取付対象300から外れたり、取付対象300の予め定められた位置からずれることを防止できる。
しかも、ワイヤハーネス固定構造1は、雄型面ファスナ91と雌型面ファスナ92とを係着させることでワイヤハーネス200を取付対象300に固定するため、容易な作業で確実に固定することができる。
【0056】
また、ハーネス側固定面35と、車両側固定面85とを互いに同じ大きさ及び形状で形成したことにより、取付対象300の所定の位置に取り付けた車両側治具80の車両側固定面85を目印にして、ワイヤハーネス200を取付対象300の所定の位置に正確に効率良く取り付けることができる。
【0057】
詳しくは、例えば、ルーフライナーのような不織布をその表面に一様に有する取付対象に、ワイヤハーネス側治具を直接係着させて取り付ける場合には、取り付けるに際して目印となるものがない。このため、ワイヤハーネス200を予め設計された配索経路に沿って取付対象300の所定の位置に正確に固定することは困難である。
【0058】
これに対して、ワイヤハーネス固定構造1は、ハーネス側固定面35と車両側固定面85とが同程度の大きさ及び形状を有する構成であるため、車両側治具80を取付対象300の所定の位置に車両側固定面85が上向きとなるように取り付けることで、車両側固定面85がハーネス側固定面35を接続固定するに際して目印となる。
【0059】
従って、取付対象300の所定の位置に設置した車両側固定面85を目印として、ワイヤハーネス200を予め設計された配索経路に沿って取付対象300に正確に効率良く固定することができる。
【0060】
また、ハーネス側治具10は、ハーネス側固定手段30の両端から外方へ向かって突出した短冊形状の取付突部40を備えることにより、1つのハーネス側固定手段30を、ワイヤハーネス200に対して配索方向Xにおいて離間している2ヶ所で取り付けることができる。
【0061】
このため、1ヶ所で固定する場合に比べて、強固に固定することができると共にワイヤハーネス200の配索方向Xを規制することができる。従って、ワイヤハーネス200にハーネス側固定手段30を安定して取り付けることができる。これにより、自動車400の振動によりハーネス側治具10がワイヤハーネス200から外れたり、ワイヤハーネス200の配索方向が変更されることを防止できる。この結果、取付対象300にワイヤハーネス200をより安定して固定することができる。
【0062】
また、取付突部40の取付突部本体部分41を通るように、ビニルテープ60をハーネス側治具10とワイヤハーネス200の外周とに単純に巻き回すだけで取り付けることができる。従って、単純な作業で容易にワイヤハーネス200に装着することができる。さらに、様々な径のワイヤハーネス200に対してハーネス側治具10を取り付けることができる。
【0063】
また、取付突部40は、幅方向Wに突出する先端突出片46を備えているため、巻き回されたビニルテープ60に対して、取付突部40がワイヤハーネス200の配索方向Xにずれて、ビニルテープ60から取付突部40が外れることを防止できる。その結果、ハーネス側治具10がワイヤハーネス200から外れることを防止できる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のワイヤハーネス固定構造1Aについて
図8及び
図9と共に説明する。
図8は第2実施形態のワイヤハーネス固定構造1Aの説明図を示し、
図9はワイヤハーネス固定構造1Aによって、曲面部分及び角部分を有する取付対象300に対してワイヤハーネス200を固定している状態の説明図を示している。
【0065】
詳しくは、
図8(a)はワイヤハーネス固定構造1Aにおけるワイヤハーネス200に取り付けるハーネス側固定部材20Aの斜視図を示し、
図8(b)はハーネス側固定部材20Aの正面図を示している。
また、
図9(a)は凸曲面状の取付対象300に対して固定している状態の正面図を示し、
図9(b)は
図9(a)の曲面部分よりも曲率の大きい凸曲面状の取付対象300に対して固定している状態の正面図を示している。さらに、
図9(c)は角部を有する取付対象300に対して固定している状態の正面図を示している。
【0066】
第2実施形態のワイヤハーネス固定構造1Aは、
図8に示すハーネス側治具10Aと、
図9に示す車両側治具80Aとで構成している。
ハーネス側治具10Aは、ハーネス側固定部材20Aとビニルテープ60Aとで構成している。
【0067】
ここで、ハーネス側固定部材20Aは、
図8に示すように、雄型面ファスナ91Aを備えていないことを除いて、上述の実施形態1のハーネス側固定部材20と同様の構成である固定部材取付部21Aと、雄型面ファスナ91Aをハーネス側固定面35Aに備えた固定部材係着部22Aとで構成している。
【0068】
固定部材取付部21Aは、可撓性を有すると共に平面視略正方形の面状に形成された面状取付基部34Aと、該面状取付基部34Aの両側から突出している取付突部40Aとで構成している。
なお、面状取付基部34A及び取付突部40Aは、それぞれ上述の第1実施形態のハーネス側面状基部34及び取付突部40と同じ構成であるため説明を省略する。
【0069】
また、固定部材係着部22Aは、長方形状に形成された雄型面ファスナ91Aと、該雄型面ファスナ91Aの形状を保持している面状中央基部31A及び2枚の面状角度可変基部32Aとで構成している。
雄型面ファスナ91Aは、可撓性を有し、上記面状取付基部34Aの幅方向Wの長さと同程度の幅を有すると共に、該幅の3倍程度の長手方向Zの長さを有する長方形状に形成している。さらに、面状中央基部31A及び2枚の面状角度可変基部32Aは、それぞれが可撓性を有すると共に、面状取付基部34Aと同程度の面の大きさを有する底面視略正方形の面状に形成している。
【0070】
また、面状中央基部31Aにおけるハーネス側固定面35Aに、雄型係着面91aAが露出するように雄型面ファスナ91の中央部分が接着固定されている。
また、面状角度可変基部32Aにおけるハーネス側固定面35Aに、雄型係着面91aAが露出するように、雄型面ファスナ91における中央部分に対する長手方向Zの外側部分が接着固定されている。
【0071】
さらに、面状中央基部31Aのハーネス側固定面35Aとは反対側の面と、面状取付基部34Aの一方側の面とを、固定部材係着部22Aの長手方向Zが長手方向Lと一致するように接着することで、固定部材取付部21Aと固定部材係着部22Aとを一体構成している。
なお、ビニルテープ60Aは、第1実施形態のビニルテープ60と同様の構成であるため説明を省略する。
【0072】
面状取付基部34A、面状中央基部31A、及び、雄型面ファスナ91Aのうち面状中央基部31Aに貼り付いている雄型面ファスナ中央部分95Aとで基準固定部37Aを構成している。また、上記面状角度可変基部32A、及び、雄型面ファスナ91Aのうち面状角度可変基部32Aに貼り付いている雄型面ファスナ端部分97Aとで角度可変固定部38Aを構成している。さらに、上記基準固定部37Aと角度可変固定部38Aとでハーネス側固定手段30Aを構成している。
上述のようなハーネス側固定手段30Aの構成により、角度可変固定部38Aは、基準固定部37Aに対する角度を所望の角度に変更することができる。
【0073】
一方で、
図9に示す車両側治具80Aは、雌型面ファスナ92Aと、雌型面ファスナ92Aの形状を保持している車両側面状基部84Aとで構成している。
雌型面ファスナ92Aは、可撓性を有すると共に上述の雄型面ファスナ91Aと同一の面の大きさを有する略正方形の面状に形成している。
【0074】
さらに、車両側面状基部84Aは、可撓性を有すると共に雌型面ファスナ92Aと同じ面の大きさを有する略正方形の面状に形成している。そして、車両側面状基部84は、車両側面状基部84を取付対象300に貼り付ける側の面の全面を接着剤が塗布された接着面83Aとし、その他方側の車両側固定面85Aに、雄型係着面92aAが露出するように雄型面ファスナ92Aが接着固定されている。
【0075】
ハーネス側治具10Aは、上述のハーネス側治具10と同様の方法でワイヤハーネス200に取り付けられる。また、車両側治具80Aも上述の車両側治具80と同様の方法で取付対象300の形状に沿って取り付けられる。
【0076】
上述のようにハーネス側治具10Aと車両側治具80Aとを取り付けた状態で、雄型面ファスナ91Aの形状が、車両側治具80Aにおける雌型面ファスナ92Aの形状と一致するように、角度可変固定部38Aの基準固定部37Aに対する角度、及び、角度可変固定部38Aの形状を変更してハーネス側治具10Aを車両側治具80Aに接続固定する。
【0077】
上述のワイヤハーネス200を取付対象300に固定するワイヤハーネス固定構造1Aの構成及び固定方法により、上述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する他、以下の作用効果を奏する。
ハーネス側治具10Aは、角度可変固定部38Aを備えていることにより、
図9(a)に示すように、凸曲面状の取付対象300の当該形状に沿うように角度可変固定部38Aの基準固定部37Aに対する角度を変更して、雄型面ファスナ92Aに対して雄型面ファスナ91Aを密着させることができる。従って、ワイヤハーネス固定構造1Aは、広い係着面積を確保して、ワイヤハーネス200を凸曲面状の取付対象300に固定することができる。
【0078】
さらに、
図9(b)に示すように、より曲率の大きな凸曲面状の取付対象300に対しても、上述のように当該形状に沿うように角度可変固定部38Aの基準固定部37Aに対する角度を変更すると共に、角度可変固定部38Aを屈曲させて、雄型面ファスナ92Aに対して雄型面ファスナ91Aを密着させることができる。従って、ワイヤハーネス固定構造1Aは、広い係着面積を確保して、ワイヤハーネス200を曲率の大きな凸曲面状の取付対象300に固定することもできる。
【0079】
また、
図9(c)に示すように、取付対象300の角部分の形状に沿うように角度可変固定部38Aの基準固定部37Aに対する角度を変更して、雄型面ファスナ92Aに対して雄型面ファスナ91Aを密着させることができる。従って、ワイヤハーネス固定構造1Aは、広い係着面積を確保して、ワイヤハーネス200を取付対象300の角部分に固定することもできる。
【0080】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
取付帯は、ビニルテープ60,60Aに対応し、
以下同様に、
接続手段は、面ファスナ90,90Aに対応し、
一対の面ファスナの一方側は、雄型面ファスナ91,91Aに対応し、
一対の面ファスナの他方側は、雌型面ファスナ92,92Aに対応し、
車両は、自動車400に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0081】
例えば、上述の実施形態では、ハーネス側固定面35,35Aに雄型面ファスナ91,91Aを備え、車両側固定面85,85Aに雌型面ファスナ92,92Aを備えた構成であるが、反対に、ハーネス側固定面35,35Aに雌型面ファスナ92,92Aを備え、車両側固定面85,85Aに雄型面ファスナ91,91Aを備えた構成であってもよい。
【0082】
また、例えば、上述の実施形態において、ハーネス取付手段を、取付突部本体41,41Aのみを有する取付突部と、該取付突部の
図2における底面にワイヤハーネス200の径と同程度の内径を有すると共に、下部に間隙を有するリング状部材とで一体構成してもよい。
【0083】
また、例えば、上述の実施形態において、取付突部を、ワイヤハーネス200のY字状又は十字状に分岐する分岐部の分岐方向に沿うように、上述のハーネス側面状基部34、面状取付基部34AからY字状又は十字状に突出する構成であってもよい。
上記ハーネス側治具の構成により、ワイヤハーネス200のY字状又は十字状に分岐する分岐部に対して上記ハーネス側治具を取り付けて、ワイヤハーネス200を取付対象300に固定することができる。
【0084】
また、例えば、他の実施形態として、ワイヤハーネス固定構造1A′のハーネス側治具10A′を、
図10(a)に示すように、一枚の平面視長方形状の面状基材19A′を破線に沿って切断し、
図10(b)に示すように、該面状基材19A′のハーネス側固定面35A′の全面に雌雄一対の面ファスナ90A′のうちの一方側を貼り付けて構成してもよい。
【0085】
上記ハーネス側治具10A′の構成により、一枚の面状基材19A′からハーネス側治具10A′を製造することができる。従って、製造コストを抑えて安価なワイヤハーネス固定構造1A′を提供することができる。
【0086】
また、上述の第2実施形態では、面状中央基部31Aと面状角度可変基部32Aとを各々別部材で構成しているが、面状中央基部31Aと面状角度可変基部32Aとの間を接続する接続部分を設けて一体に構成してもよい。
また、上述の全ての実施形態において、ハーネス側固定手段30,30A,30A′を、可撓性を有しない構成としてもよい。