(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アセタール化に用いられる化合物が、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒド、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒドのヘミアセタール化物、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒドの完全アセタール化物、炭素数7〜20の芳香族アルデヒド、炭素数7〜20の芳香族アルデヒドのヘミアセタール化物、および、炭素数7〜20の芳香族アルデヒドの完全アセタール化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の高分子電解質ゲル組成物。
前記カチオン性官能基が、第四級アンモニウム基、イミダゾリウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質ゲル組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のビニルアセタール系重合体は高分子電解質ゲル組成物用であって、高分子電解質ゲル組成物を製造するために使用される。そして当該ビニルアセタール系重合体はカチオン性官能基を含む。
【0027】
本発明のビニルアセタール系重合体としては、カチオン性官能基とビニルアセタール系重合体の骨格とが1つまたは2つ以上の共有結合のみを介して結合された構造を有するものが挙げられ、例えば、式(I)に示したアセタール基を含む構成単位(アセタール単位)を繰り返し単位に含む高分子化合物が挙げられる。このような高分子化合物の具体例としては、式(I)に示したアセタール基を含む構成単位(アセタール単位)と、式(II)に示した水酸基を含む構成単位(ビニルアルコール単位)と、式(III)に示したエステル結合を含む構成単位(例えば、ビニルエステルに由来する構成単位(ビニルエステル単位)など)とを繰り返し単位に含む高分子化合物を好ましく例示することができる。この高分子化合物は、上記の構成単位以外にさらに式(IV)に示した化学修飾した水酸基を含む構成単位を繰り返し単位に含んでいてもよい。またこの高分子化合物は、上記の構成単位以外にさらに式(V)に示したビニル化合物に由来する構成単位を繰り返し単位に含んでいてもよい。この高分子化合物においては、式(I)に示したアセタール基を含む構成単位(アセタール単位)のQ
a、式(III)に示したエステル結合を含む構成単位のQ
c、式(IV)に示した化学修飾した水酸基を含む構成単位のQ
d、および、式(V)に示したビニル化合物に由来する構成単位のQ
eの少なくとも1つがカチオン性官能基を含んでいればよく、例えば、この高分子化合物に、式(IV)に示した化学修飾した水酸基を含む構成単位および式(V)に示したビニル化合物に由来する構成単位が含まれない場合は、式(I)に示したアセタール基を含む構成単位(アセタール単位)もしくは式(III)に示したエステル結合を含む構成単位またはその両方がカチオン性官能基を含んでいればよい。
【0028】
上記の高分子化合物が複数含むことのできる式(I)に示したアセタール基を含む構成単位(アセタール単位)において、Q
aは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また上記の高分子化合物が複数含むことのできる式(III)に示したエステル結合を含む構成単位において、Q
bおよびQ
cのそれぞれは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また上記の高分子化合物が複数含むことのできる式(IV)に示した化学修飾した水酸基を含む構成単位において、Q
dおよびQ
fのそれぞれは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。さらに上記の高分子化合物が複数含むことのできる式(V)に示したビニル化合物に由来する構成単位において、Q
eおよびQ
gのそれぞれは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
上記の高分子化合物において各繰り返し単位の配列順序は特に限定されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよい。
【0030】
式(I)〜(V)中、Q
a、Q
cおよびQ
eは、水素原子、ハロゲン原子、1個以上の炭素原子を有する置換基、またはカチオン性官能基である。Q
bは、単結合、または、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の2価の炭化水素鎖である。これらの2価の炭化水素鎖は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。Q
dは、1個以上の炭素原子を有する置換基、またはカチオン性官能基である。Q
fおよびQ
gは、水素原子、またはメチル基である。なお、Q
a、Q
c、Q
dおよびQ
eによって表される1個以上の炭素原子を有する置換基はカチオン性官能基を含むものであってもよい。
【0031】
上記のカチオン性官能基としては、例えば、第四級アンモニウム基(ピペリジニウム基、ピペラジニウム基、モルホリニウム基等を含む)、イミダゾリウム基(ベンゾイミダゾリウム基等を含む)、ピラゾリウム基、ピリジニウム基、ピリダジニウム基、ピリミジニウム基、ピラジニウム基、トリアジニウム基、キノリニウム基、オキサゾリニウム基(ベンゾオキサゾリニウム基等を含む)、イソオキサゾリニウム基、チアゾリニウム基(ベンゾチアゾリニウム基等を含む)、イソチアゾリニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基(チオフェニウム基(例えば、ベンゾチオフェニウム基、ジベンゾチオフェニウム基等)等を含む)などが挙げられる。本発明のビニルアセタール系重合体は、1種のカチオン性官能基を有していても、2種以上のカチオン性官能基を有していてもよい。これらのカチオン性官能基の中でも、原料の入手性に優れるとともに、本発明のビニルアセタール系重合体を容易に得ることができることから、第四級アンモニウム基、イミダゾリウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
上記の第四級アンモニウム基としては、例えば、式(VI)に示したものが挙げられる。上記のイミダゾリウム基としては、例えば、式(VII−a)〜(VII−e)のいずれかに示したものが挙げられる。上記のピリジニウム基としては、例えば、式(VIII−a)〜(VIII−d)のいずれかに示したものが挙げられる。上記のホスホニウム基としては、例えば、式(IX)に示したものが挙げられる。上記のスルホニウム基としては、例えば、式(X)に示したものが挙げられる。
【0038】
上記の式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ、1個以上の炭素原子を有する置換基であり、A
1、A
2、A
3、A
4およびA
5は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、または1個以上の炭素原子を有する置換基である。これらの置換基は、それぞれ全て同一でもよく、一部または全部が互いに異なっていてもよい。
【0039】
本発明のビニルアセタール系重合体を得る方法としては、例えば、
(1)酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体とカチオン性官能基を含む重合性単量体とを共重合して得られる共重合体をケン化した後、アセタール化する方法、
(2)ビニルアルコール系重合体を、カチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いてアセタール化する方法、
(3)ビニルアルコール系重合体にカチオン性官能基を含むアルコールまたはカチオン性官能基を含むエポキシ化合物を反応させて、エーテル結合を介してカチオン性官能基を導入した後、アセタール化する方法、
(4)ビニルアルコール系重合体にカチオン性官能基を含むカルボン酸またはその誘導体を反応させて、エステル結合を介してカチオン性官能基を導入した後、アセタール化する方法、
(5)ビニルアセタール系重合体にカチオン性官能基を含むアルコールまたはカチオン性官能基を含むエポキシ化合物を反応させて、エーテル結合を介してカチオン性官能基を導入する方法、
(6)ビニルアセタール系重合体にカチオン性官能基を含むカルボン酸またはその誘導体を反応させて、エステル結合を介してカチオン性官能基を導入する方法、
あるいは、上記の方法の2種以上を組み合わせた方法などが挙げられる。これらの中でも、特に方法(1)および(2)が好適に採用される。
【0040】
方法(1)で使用される、上記のカチオン性官能基を含む重合性単量体の例としては、第四級アンモニウム基を有する重合性単量体、イミダゾリウム基を有する重合性単量体、ピリジニウム基を有する重合性単量体、ホスホニウム基を有する重合性単量体、スルホニウム基を有する重合性単量体などが挙げられる。
【0041】
上記の第四級アンモニウム基を有する重合性単量体としては、例えば、アリルトリメチルアンモニウム、アリルトリエチルアンモニウム、アリルエチルジメチルアンモニウム、アリルトリベンジルアンモニウム、1−アリル−1−メチルピロリジニウム等のアリルトリアルキルアンモニウム;ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルジエチルアンモニウム、ジアリルエチルメチルアンモニウム、ジアリルジベンジルアンモニウム、1,1−ジアリルピロリジニウム等のジアリルジアルキルアンモニウム;(3−アクリルアミド−1,3−ジメチルブチル)トリメチルアンモニウム、(3−メタクリルアミド−1,3−ジメチルブチル)トリメチルアンモニウム、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム、(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム、(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)トリメチルアンモニウム、(3−メタクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)トリメチルアンモニウム等の(メタ)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムなどが挙げられる。
【0042】
上記のイミダゾリウム基を有する重合性単量体としては、例えば、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム、2,3−ジメチル−1−ビニルイミダゾリウム、2−エチル−3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム、3−メチル−2−フェニル−1−ビニルイミダゾリウム、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムなどが挙げられる。
【0043】
上記のピリジニウム基を有する重合性単量体としては、例えば、1−メチル−2−ビニルピリジニウム、1−メチル−3−ビニルピリジニウム、1−メチル−4−ビニルピリジニウム、1−エチル−2−ビニルピリジニウム、1−エチル−3−ビニルピリジニウム、1−エチル−4−ビニルピリジニウムなどが挙げられる。
【0044】
上記のホスホニウム基を有する重合性単量体としては、例えば、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルホスホニウム、(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルホスホニウム、(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)トリメチルホスホニウム、トリメチル(2−ビニルベンジル)ホスホニウム、トリメチル(3−ビニルベンジル)ホスホニウム、トリメチル(4−ビニルベンジル)ホスホニウム、トリブチル(2−ビニルベンジル)ホスホニウム、トリブチル(3−ビニルベンジル)ホスホニウム、トリブチル(4−ビニルベンジル)ホスホニウムなどが挙げられる。
【0045】
上記のスルホニウム基を有する重合性単量体としては、例えば、ジメチル(2−ビニルフェニル)スルホニウム、ジメチル(3−ビニルフェニル)スルホニウム、ジメチル(4−ビニルフェニル)スルホニウムなどが挙げられる。
【0046】
上記のカチオン性官能基を含む重合性単量体のカチオンに対応するアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、六フッ化リン酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、過塩素酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル酸イオン、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチル酸イオン、四塩化アルミン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオンなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
上記のカチオン性官能基を含む重合性単量体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドが特に好ましい。
【0048】
方法(1)において、ビニルエステル系単量体とカチオン性官能基を含む重合性単量体とを共重合する際の条件は特に限定されず、通常のビニルエステル系重合体を製造する場合の条件を採用できる。また、得られた共重合体をケン化する際の条件も特に限定されず、例えば、通常のビニルエステル系重合体をアルカリ、酸、アンモニア水等によりケン化する場合の条件を採用できる。
【0049】
また、方法(1)において、アセタール化に用いられる化合物としては、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒド、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒドのヘミアセタール化物、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒドの完全アセタール化物、炭素数7〜20の芳香族アルデヒド、炭素数7〜20の芳香族アルデヒドのヘミアセタール化物、および、炭素数7〜20の芳香族アルデヒドの完全アセタール化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
このうち、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒド、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒドのヘミアセタール化物、および、炭素数1〜15の脂肪族アルデヒドの完全アセタール化物の例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピラン、グルコピラノース、ガラクトピラノース、マンノピラノース、アラビノピラノース、キシロピラノース、リボピラノース、リキソピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、グロピラノース、イドピラノース、タロピラノース、エリトロフラノース、トレオフラノース、アラビノフラノース、キシロフラノース、リボフラノース、リキソフラノース、n−ブチルアルデヒドジメチルアセタール等が挙げられる。
【0051】
また、炭素数7〜20の芳香族アルデヒド、炭素数7〜20の芳香族アルデヒドのヘミアセタール化物、および、炭素数7〜20の芳香族アルデヒドの完全アセタール化物の例としては、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0052】
上記のアセタール化に用いられる化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましく、特にn−ブチルアルデヒドが好ましい。
【0053】
アセタール化する際の条件としては、例えば、アセタール化を行う重合体(典型的には、カチオン性官能基を含むビニルアルコール系重合体)の水溶液と上記のアセタール化に用いられる化合物(アルデヒド等)とを、酸触媒の存在下にアセタール化反応させて重合体の粒子を析出させる水媒法;アセタール化を行う重合体を有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下に上記のアセタール化に用いられる化合物(アルデヒド等)とアセタール化反応させ、この反応液から、得られるアセタール化物に対する貧溶媒(水等)により重合体を析出させる溶媒法などが挙げられる。これらの方法のうちで水媒法が好ましい。また、酸触媒としては塩酸、硝酸、硫酸、炭酸等の無機酸や酢酸、プロピオン酸等の有機酸を用いることができる。このうち特に塩酸、硝酸が好ましく用いられる。
【0054】
方法(2)、(3)および(4)で使用されるビニルアルコール系重合体としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体を重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することにより得られるものを使用することができ、酢酸ビニルの単独重合体をケン化して得られるポリビニルアルコールを好ましく使用することができる。
【0055】
方法(2)で使用される、上記のカチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物の例としては、第四級アンモニウム基を有する化合物、イミダゾリウム基を有する化合物、ピリジニウム基を有する化合物、ホスホニウム基を有する化合物、スルホニウム基を有する化合物などが挙げられる。
【0056】
上記の第四級アンモニウム基を有する化合物としては、例えば、(ホルミルメチル)トリメチルアンモニウム、(1−ホルミルエチル)トリメチルアンモニウム、(2−ホルミルエチル)トリメチルアンモニウム、(1−ホルミルプロピル)トリメチルアンモニウム、(2−ホルミルプロピル)トリメチルアンモニウム、(3−ホルミルプロピル)トリメチルアンモニウム、(2−ホルミルフェニル)トリメチルアンモニウム、(3−ホルミルフェニル)トリメチルアンモニウム、(4−ホルミルフェニル)トリメチルアンモニウム、(4−ホルミルベンジル)トリメチルアンモニウム、トリエチル(ホルミルメチル)アンモニウム、トリエチル(1−ホルミルエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ホルミルエチル)アンモニウム、トリエチル(1−ホルミルプロピル)アンモニウム、トリエチル(2−ホルミルプロピル)アンモニウム、トリエチル(3−ホルミルプロピル)アンモニウム、トリエチル(2−ホルミルフェニル)アンモニウム、トリエチル(3−ホルミルフェニル)アンモニウム、トリエチル(4−ホルミルフェニル)アンモニウム、2−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオテトラヒドロピラン、2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルモルホリン−4−イウム、(2,2−ジエトキシエチル)トリメチルアンモニウム、[(1,3−ジオキサン−2−イル)メチル]トリメチルアンモニウム、2−メトキシ−4,4−ジメチルモルホリン−4−イウム、2−エトキシ−4,4−ジメチルモルホリン−4−イウム、4,4−ジメチル−2−プロピルオキシモルホリン−4−イウム、4,4−ジメチル−2−(1−メチルエトキシ)モルホリン−4−イウム、4,4−ジメチル−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)モルホリン−4−イウム、2−ベンジルオキシ−4,4−ジメチルモルホリン−4−イウム、2−エトキシ−4−メチル−4−ベンジルモルホリン−4−イウムなどが挙げられる。
【0057】
上記のイミダゾリウム基を有する化合物としては、例えば、3−(ホルミルメチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(1−ホルミルエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(2−ホルミルエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(1−ホルミルプロピル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(2−ホルミルプロピル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(3−ホルミルプロピル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(ホルミルメチル)−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(1−ホルミルエチル)−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(2−ホルミルエチル)−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(1−ホルミルプロピル)−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(2−ホルミルプロピル)−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(3−ホルミルプロピル)−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,2−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,4−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,5−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,2,4−トリメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,2,5−トリメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,2,4,5−テトラメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1,2−ジエチル−3−(ホルミルメチル)−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、3−(2−ホルミルエチル)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、3−(3−ホルミルプロピル)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(ホルミルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、3−(ホルミルメチル)−1,2−ジメチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、1,2−ジエチル−3−(ホルミルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、2−ホルミル−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(ホルミルメチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(2−ホルミルエチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(3−ホルミルプロピル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1,3−ジエチル−2−ホルミル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−ホルミル−1,3−ジメチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、4−ホルミル−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(2−ホルミルエチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(3−ホルミルプロピル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1,3−ジエチル−4−ホルミル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−ホルミル−1,3−ジメチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム、2−ヒドロキシ−4−(3−メチルイミダゾリオ)テトラヒドロピラン、3−(2,2−ジメトキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1−エチル−3−(2,2−ジメトキシエチル)−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(2,2−ジメトキシエチル)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウムなどが挙げられる。
【0058】
上記のピリジニウム基を有する化合物としては、例えば、1−メチルピリジニウム−2−カルボアルデヒド、1−メチルピリジニウム−3−カルボアルデヒド、1−メチルピリジニウム−4−カルボアルデヒドなどが挙げられる。
【0059】
上記のホスホニウム基を有する化合物としては、例えば、(ホルミルメチル)トリメチルホスホニウム、トリエチル(ホルミルメチル)ホスホニウム、トリエチル(2−ホルミルエチル)ホスホニウム、(2−ホルミルエチル)トリイソプロピルホスホニウム、トリブチル(2−ホルミルエチル)ホスホニウム、トリエチル(3−ホルミルプロピル)ホスホニウム、(3−ホルミルプロピル)トリイソプロピルホスホニウム、トリブチル(3−ホルミルプロピル)ホスホニウム、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウム、(2−ホルミルエチル)トリフェニルホスホニウム、(3−ホルミルプロピル)トリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシ−4−トリブチルホスホニオテトラヒドロピラン、トリブチル(1,3−ジオキソラン−2−イル)ホスホニウム、トリブチル(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)ホスホニウム、(1,3−ジオキサン−2−イルメチル)トリフェニルホスホニウム、(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)トリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0060】
上記のスルホニウム基を有する化合物としては、例えば、4−ホルミルフェニルジメチルスルホニウム、4−ホルミルフェニルジフェニルスルホニウム、2−ヒドロキシ−4−ジメチルスルホニオテトラヒドロピラン、2,2−ジメトキシエチルジメチルスルホニウム、2,2−ジメトキシエチルジフェニルスルホニウム、2,2−ジエトキシエチルジメチルスルホニウム、2,2−ジエトキシエチルジフェニルスルホニウムなどが挙げられる。
【0061】
上記のカチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物のカチオンに対応するアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、六フッ化リン酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、過塩素酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル酸イオン、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチル酸イオン、四塩化アルミン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオンなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0062】
上記のカチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、六フッ化リン酸(ホルミルメチル)トリメチルアンモニウム、六フッ化リン酸3−(2,2−ジメトキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウムが特に好ましい。
【0063】
方法(2)においては、後述するアセタール化度やカチオン性官能基含有量などを所望の範囲とするために、カチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物からなる群より選ばれる少なくとも1種とともに、カチオン性官能基を含まないアルデヒド、カチオン性官能基を含まないアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含まないアルデヒドの完全アセタール化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を併用することが好ましい。このような化合物の例としては、方法(1)において、アセタール化に用いられる化合物の例として上記した化合物が挙げられる。
【0064】
方法(2)において、ビニルアルコール系重合体をアセタール化する際の条件としては、例えば、ポリビニルアルコールにn−ブチルアルデヒドを酸触媒の存在下反応させてポリビニルブチラールを製造する際に採用されるような公知の条件を採用できる。
【0065】
方法(3)で使用される、上記のカチオン性官能基を含むアルコール、および、カチオン性官能基を含むエポキシ化合物の例としては、第四級アンモニウム基を有するアルコール類、イミダゾリウム基を有するアルコール類、ピリジニウム基を有するアルコール類、ホスホニウム基を有するアルコール類、スルホニウム基を有するアルコール類、第四級アンモニウム基を有するエポキシ化合物、イミダゾリウム基を有するエポキシ化合物、ピリジニウム基を有するエポキシ化合物、ホスホニウム基を有するエポキシ化合物、スルホニウム基を有するエポキシ化合物などが挙げられる。
【0066】
上記の第四級アンモニウム基を有するアルコール類としては、例えば、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、(3−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、トリエチル(3−ヒドロキシプロピル)アンモニウム、(4−ヒドロキシブチル)トリメチルアンモニウム、トリエチル(4−ヒドロキシブチル)アンモニウムなどが挙げられる。
【0067】
上記のイミダゾリウム基を有するアルコール類としては、例えば、3−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1,2−ジエチル−3−(ヒドロキシメチル)−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(3−ヒドロキシプロピル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(4−ヒドロキシブチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(3−ヒドロキシプロピル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(4−ヒドロキシブチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(ヒドロキシメチル)−1,3,4−トリメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−(ヒドロキシメチル)−1,3,4,5−テトラメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(3−ヒドロキシプロピル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(4−ヒドロキシブチル)−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(ヒドロキシメチル)−1,2,3−トリメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−(ヒドロキシメチル)−1,2,3,5−テトラメチル−1H−イミダゾール−3−イウムなどが挙げられる。
【0068】
上記のピリジニウム基を有するアルコール類としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)−1−メチルピリジニウム、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピリジニウム、2−(3−ヒドロキシプロピル)−1−メチルピリジニウム、2−(4−ヒドロキシブチル)−1−メチルピリジニウム、3−(ヒドロキシメチル)−1−メチルピリジニウム、4−(ヒドロキシメチル)−1−メチルピリジニウム、1−エチル−3−(ヒドロキシメチル)ピリジニウムなどが挙げられる。
【0069】
上記のホスホニウム基を有するアルコール類としては、例えば、(ヒドロキシメチル)トリメチルホスホニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウム、(3−ヒドロキシプロピル)トリメチルホスホニウム、(4−ヒドロキシブチル)トリメチルホスホニウム、トリエチル(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、(ヒドロキシメチル)トリプロピルホスホニウム、トリイソプロピル(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、トリブチル(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、(ヒドロキシメチル)トリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0070】
上記のスルホニウム基を有するアルコール類としては、例えば、(ヒドロキシメチル)ジメチルスルホニウム、(2−ヒドロキシエチル)ジメチルスルホニウム、(3−ヒドロキシプロピル)ジメチルスルホニウム、(4−ヒドロキシブチル)ジメチルスルホニウム、ジブチル(ヒドロキシメチル)スルホニウム、(ヒドロキシメチル)ジフェニルスルホニウムなどが挙げられる。
【0071】
上記の第四級アンモニウム基を有するエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルトリメチルアンモニウム、トリエチルグリシジルアンモニウム、グリシジルトリプロピルアンモニウム、グリシジルトリイソプロピルアンモニウム、トリブチルグリシジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0072】
上記のイミダゾリウム基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3−グリシジル−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、1,2−ジエチル−3−グリシジル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−グリシジル−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−グリシジル−1,3,4−トリメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、2−グリシジル−1,3,4,5−テトラメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−グリシジル−1,3−ジメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−グリシジル−1,2,3−トリメチル−1H−イミダゾール−3−イウム、4−グリシジル−1,2,3,5−テトラメチル−1H−イミダゾール−3−イウムなどが挙げられる。
【0073】
上記のピリジニウム基を有するエポキシ化合物としては、例えば、2−グリシジル−1−メチルピリジニウム、3−グリシジル−1−メチルピリジニウム、4−グリシジル−1−メチルピリジニウム、1−エチル−3−グリシジルピリジニウムなどが挙げられる。
【0074】
上記のホスホニウム基を有するエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルトリメチルホスホニウム、トリエチルグリシジルホスホニウム、グリシジルトリプロピルホスホニウム、グリシジルトリイソプロピルホスホニウム、トリブチルグリシジルホスホニウム、グリシジルトリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0075】
上記のスルホニウム基を有するエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルジメチルスルホニウム、ジブチルグリシジルスルホニウム、グリシジルジフェニルスルホニウムなどが挙げられる。
【0076】
上記のカチオン性官能基を含むアルコール、および、カチオン性官能基を含むエポキシ化合物のカチオンに対応するアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、六フッ化リン酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、過塩素酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル酸イオン、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチル酸イオン、四塩化アルミン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオンなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0077】
上記のカチオン性官能基を含むアルコール、および、カチオン性官能基を含むエポキシ化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、六フッ化リン酸グリシジルトリメチルアンモニウム、六フッ化リン酸3−グリシジル−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウムが特に好ましい。
【0078】
方法(3)において、ビニルアルコール系重合体に、上記のカチオン性官能基を含むアルコールまたはカチオン性官能基を含むエポキシ化合物を反応させる際の条件としては、通常、アルコールに硫酸を作用させてエーテルを得る場合や、アルコールに酸触媒の存在下エポキシドを反応させる場合の条件を採用できる。
【0079】
方法(3)において、得られたカチオン性官能基を含むビニルアルコール系重合体のアセタール化に用いられる化合物としては、方法(1)において、アセタール化に用いられる化合物の例として上記した化合物が挙げられる。また、当該アセタール化に用いられる化合物の一部または全部は、方法(2)において、カチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物の例として上記した化合物であってもよい。
アセタール化する際の条件としては、例えば、ポリビニルアルコールにn−ブチルアルデヒドを酸触媒の存在下反応させてポリビニルブチラールを製造する際に採用されるような公知の条件を採用できる。
【0080】
方法(4)で使用される、上記のカチオン性官能基を含むカルボン酸、および、当該カチオン性官能基を含むカルボン酸の誘導体の例としては、第四級アンモニウム基を有する化合物、イミダゾリウム基を有する化合物、ピリジニウム基を有する化合物、ホスホニウム基を有する化合物、スルホニウム基を有する化合物などが挙げられる。
【0081】
上記の第四級アンモニウム基を有する化合物としては、例えば、ベタイン(グリシンベタイン)、アラニンベタイン、フェニルアラニンベタイン、ロイシンベタイン、(2−カルボキシフェニル)トリメチルアンモニウム、(3−カルボキシフェニル)トリメチルアンモニウム、(4−カルボキシフェニル)トリメチルアンモニウム、(2−カルボキシフェニル)トリエチルアンモニウム、(3−カルボキシフェニル)トリエチルアンモニウム、(4−カルボキシフェニル)トリエチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0082】
上記のイミダゾリウム基を有する化合物としては、例えば、3−(カルボキシメチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(カルボキシメチル)−1,2−ジエチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(1−カルボキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム、3−(2−カルボキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウムなどが挙げられる。
【0083】
上記のピリジニウム基を有する化合物としては、例えば、2−カルボキシ−1−メチルピリジニウム、3−カルボキシ−1−メチルピリジニウム、4−カルボキシ−1−メチルピリジニウム、3−カルボキシ−1−エチルピリジニウムなどが挙げられる。
【0084】
上記のホスホニウム基を有する化合物としては、例えば、トリメチルホスホニオ酢酸、トリブチルホスホニオ酢酸、トリフェニルホスホニオ酢酸、2−トリブチルホスホニオ安息香酸、3−トリブチルホスホニオ安息香酸、4−トリブチルホスホニオ安息香酸などが挙げられる。
【0085】
上記のスルホニウム基を有する化合物としては、例えば、ジメチルスルホニオ酢酸、ジブチルスルホニオ酢酸、ジフェニルスルホニオ酢酸、2−ジブチルスルホニオ安息香酸、3−ジブチルスルホニオ安息香酸、4−ジブチルスルホニオ安息香酸などが挙げられる。
【0086】
上記のカチオン性官能基を含むカルボン酸、および、当該カチオン性官能基を含むカルボン酸の誘導体のカチオンに対応するアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、六フッ化リン酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、過塩素酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル酸イオン、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチル酸イオン、四塩化アルミン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオンなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0087】
上記のカチオン性官能基を含むカルボン酸、および、当該カチオン性官能基を含むカルボン酸の誘導体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、六フッ化リン酸ベタイン、六フッ化リン酸(4−カルボキシフェニル)トリメチルアンモニウムが特に好ましい。
【0088】
方法(4)において、ビニルアルコール系重合体に、上記のカチオン性官能基を含むカルボン酸またはその誘導体を反応させる際の条件としては、通常、アルコールとカルボン酸を酸または塩基触媒下で反応させてエステルを得る場合の条件を採用できる。
【0089】
方法(4)において、得られたカチオン性官能基を含むビニルアルコール系重合体のアセタール化に用いられる化合物としては、方法(1)において、アセタール化に用いられる化合物の例として上記した化合物が挙げられる。また、当該アセタール化に用いられる化合物の一部または全部は、方法(2)において、カチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物の例として上記した化合物であってもよい。
アセタール化する際の条件としては、例えば、ポリビニルアルコールにn−ブチルアルデヒドを酸触媒の存在下反応させてポリビニルブチラールを製造する際に採用されるような公知の条件を採用できる。
【0090】
方法(5)および(6)で使用されるビニルアセタール系重合体としては、上述の、方法(2)、(3)および(4)で使用されるビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られたものが好適に用いられる。
ビニルアルコール系重合体のアセタール化に用いられる化合物としては、方法(1)において、アセタール化に用いられる化合物の例として上記した化合物が挙げられる。また、当該アセタール化に用いられる化合物の一部または全部は、方法(2)において、カチオン性官能基を含むアルデヒド、カチオン性官能基を含むアルデヒドのヘミアセタール化物、および、カチオン性官能基を含むアルデヒドの完全アセタール化物の例として上記した化合物であってもよい。
アセタール化する際の条件としては、例えば、ポリビニルアルコールにn−ブチルアルデヒドを酸触媒の存在下反応させてポリビニルブチラールを製造する際に採用されるような公知の条件を採用できる。
【0091】
方法(5)で使用される、上記のカチオン性官能基を含むアルコール、および、カチオン性官能基を含むエポキシ化合物の例としては、方法(3)で使用されるカチオン性官能基を含むアルコール、および、カチオン性官能基を含むエポキシ化合物の例として上記した化合物が挙げられる。また、ビニルアセタール系重合体に、上記のカチオン性官能基を含むアルコールまたはカチオン性官能基を含むエポキシ化合物を反応させる際の条件としては、通常、アルコールに硫酸を作用させてエーテルを得る場合や、アルコールに酸触媒の存在下エポキシドを反応させる場合の条件を採用できる。
【0092】
方法(6)で使用される、上記のカチオン性官能基を含むカルボン酸、および、当該カチオン性官能基を含むカルボン酸の誘導体の例としては、方法(4)で使用されるカチオン性官能基を含むカルボン酸、および、当該カチオン性官能基を含むカルボン酸の誘導体の例として上記した化合物が挙げられる。また、ビニルアセタール系重合体に、上記のカチオン性官能基を含むカルボン酸またはその誘導体を反応させる際の条件としては、通常、アルコールとカルボン酸を酸または塩基触媒下で反応させてエステルを得る場合の条件を採用できる。
【0093】
上記の方法(1)において得られるカチオン性官能基を含むビニルアルコール系重合体、上記の方法(2)、(3)および(4)で使用されるビニルアルコール系重合体、および、上記の方法(5)および(6)で使用されるビニルアセタール系重合体の原料となるビニルアルコール系重合体の重合度は、JIS K 6726−1994に規定するポリビニルアルコール試験方法に準じて測定される平均重合度として、好ましくは100〜5000の範囲であり、より好ましくは150〜3500の範囲であり、さらに好ましくは200〜2500の範囲である。
【0094】
また、上記の方法(1)において得られるカチオン性官能基を含むビニルアルコール系重合体、上記の方法(2)、(3)および(4)で使用されるビニルアルコール系重合体、および、上記の方法(5)および(6)で使用されるビニルアセタール系重合体の原料となるビニルアルコール系重合体のケン化度は、好ましくは80モル%以上である。
【0095】
本発明のビニルアセタール系重合体のアセタール化度は、好ましくは0.1〜85モル%の範囲であり、より好ましくは1〜83モル%の範囲であり、さらに好ましくは10〜80モル%の範囲である。なお本明細書において「アセタール化度」とは、アセタール単位を構成する構成単位、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計モル数に対する、アセタール単位を構成する構成単位のモル数の割合を意味する。ここで、1つのアセタール単位は2つの構成単位から形成されると考えられることから、アセタール単位を構成する構成単位のモル数は、通常、アセタール単位のモル数の2倍になる。具体的には、ビニルアセタール系重合体が、上記の式(I)に示したアセタール基を含む構成単位(アセタール単位):n
Iモル、上記の式(II)に示した水酸基を含む構成単位(ビニルアルコール単位):n
IIモル、および上記の式(III)に示したエステル結合を含む構成単位:n
IIIモルから形成される場合には、アセタール化度は以下の式により求めることができる。
アセタール化度(モル%)=100×[n
I×2]/[n
I×2 + n
II + n
III]
【0096】
また本明細書においては、アセタール化度のうち、ホルムアルデヒドのアセタールに相当するアセタール単位に基づくものを「ホルマール化度」、アセトアルデヒドのアセタールに相当するアセタール単位に基づくものを「アセトアセタール化度」、ブチルアルデヒドのアセタールに相当するアセタール単位に基づくものを「ブチラール化度」と特に称することとする。例えば、ビニルアセタール系重合体が、上記の式(I)に示したアセタール基を含む構成単位であってQ
aがプロピル基である構成単位(ブチルアルデヒドのアセタールに相当するアセタール単位):n
I(Bu)モル、上記の式(I)に示したアセタール基を含む構成単位であってQ
aがメチル基である構成単位(アセトアルデヒドのアセタールに相当するアセタール単位):n
I(Ac)モル、上記の式(II)に示した水酸基を含む構成単位(ビニルアルコール単位):n
IIモル、および上記の式(III)に示したエステル結合を含む構成単位:n
IIIモルから形成される場合には、ブチラール化度およびアセトアセタール化度は以下の式により求めることができる。
ブチラール化度(モル%)=100×[n
I(Bu)×2]/[n
I(Bu)×2 + n
I(Ac)×2 + n
II + n
III]
アセトアセタール化度(モル%)=100×[n
I(Ac)×2]/[n
I(Bu)×2 + n
I(Ac)×2 + n
II + n
III]
【0097】
本発明のビニルアセタール系重合体のビニルエステル系単量体単位の含有量は好ましくは0.01〜20モル%の範囲であり、より好ましくは0.05〜15モル%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜10モル%の範囲である。なお、本明細書において、ビニルエステル系単量体単位の含有量はビニルアセタール系重合体を構成する全構成単位(但し、2つの構成単位から構成される1つのアセタール単位は2つの構成単位と考えるものとする)のモル数に占めるビニルエステル系単量体単位のモル数の割合を意味する。また、ビニルエステル系単量体単位の含有量のうち、酢酸ビニル単位に基づくものを「酢酸ビニル単位の含有量」と特に称することとする。
【0098】
本発明のビニルアセタール系重合体のビニルアルコール単位の含有量は好ましくは0.1〜50モル%の範囲であり、より好ましくは1〜40モル%の範囲であり、さらに好ましくは10〜30モル%の範囲である。なお、本明細書において、ビニルアルコール単位の含有量はビニルアセタール系重合体を構成する全構成単位(但し、2つの構成単位から構成される1つのアセタール単位は2つの構成単位と考えるものとする)のモル数に占めるビニルアルコール単位のモル数の割合を意味する。
【0099】
また、本発明のビニルアセタール系重合体のカチオン性官能基含有量は、該ビニルアセタール系重合体を製造する方法によって異なる。方法(1)および(3)〜(6)のうちのいずれかを採用した場合は、好ましくは0.01〜30モル%の範囲であり、より好ましくは0.05〜20モル%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜10モル%の範囲である。方法(2)を採用した場合は、好ましくは0.1〜85モル%の範囲であり、より好ましくは1〜83モル%の範囲であり、さらに好ましくは10〜80モル%の範囲である。なお、本明細書において、カチオン性官能基含有量はビニルアセタール系重合体を構成する全構成単位(但し、2つの構成単位から構成される1つのアセタール単位は2つの構成単位と考えるものとする)のモル数に占めるカチオン性官能基のモル数の割合を意味する。
【0100】
本発明のビニルアセタール系重合体はゲルの調製が容易になることから、カチオン性官能基を含まないアセタール単位を2種以上含むことが好ましく、上記の式(I)に示したアセタール基を含む構成単位であってQ
aがカチオン性官能基を含まない構成単位を2種以上含むことがより好ましい。このようなビニルアセタール系重合体の具体例としては、上記の式(I)に示したアセタール基を含む構成単位において、Q
aがプロピル基である構成単位と、Q
aがメチル基である構成単位とを、前者/後者=40/60〜80/20のモル割合で含むもの;Q
aがプロピル基である構成単位と、Q
aがフェニル基である構成単位とを、前者/後者=40/60〜80/20のモル割合で含むものなどが挙げられる。
【0101】
本発明のビニルアセタール系重合体は、高分子電解質ゲル組成物を製造するために使用される限り、その用途に特に制限はないが、電解液保持性およびイオン伝導性に優れ、高い機械的強度および形状保持性を有していて架橋のための余計な工程を必要とせず、サイクル特性に優れた二次電池を与えることのできる高分子電解質ゲル組成物となることから、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液とを含有し、当該ビニルアセタール系重合体と当該電解液との重量比が0.5:99.5〜9:91である高分子電解質ゲル組成物に使用する
必要がある。本発明はこのような、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液とを含有し、当該本発明のビニルアセタール系重合体と当該電解液との重量比が0.5:99.5〜9:91である高分子電解質ゲル組成物を包含する。当該本発明の高分子電解質ゲル組成物は、通常、いわゆるゲル状となっている。
【0102】
本発明の高分子電解質ゲル組成物に使用される電解液としては、電解質を含むものを使用することができ、好ましくは、電解質および非水系溶媒を含有するもの、例えば、電解質を非水系溶媒に溶解したものを使用することができる。電解液は、必要に応じて各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0103】
上記の電解質としては、非水系溶媒に溶解してイオンを生ずることのできるものを使用することができ、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF
3SO
3Li)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO
2CF
3)
2)、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO
2C
2F
5)
2)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO
2CF
3)
3)、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO
2C
2F
5)
3)、四塩化アルミン酸リチウム(LiAlCl
4)、六フッ化ケイ酸リチウム(Li
2SiF
6)等のリチウム塩が挙げられる。また、リチウム塩以外にも、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。これらの電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、リチウム塩が好ましく、六フッ化リン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが特に好ましい。
【0104】
上記の非水系溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン;炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の炭酸エステル;1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル;アセトニトリル等のニトリル;スルホラン系化合物;リン酸類;リン酸エステル;ピロリドン類などが挙げられる。これらの非水系溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ラクトン、炭酸エステルが好ましく、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチルがより好ましい。また、炭酸エステルを使用する場合には、電解質の解離の促進とカチオンの易動度の両立の観点から、環状の炭酸エステルと鎖状の炭酸エステルとを併用するのが好ましい。
【0105】
本発明の高分子電解質ゲル組成物が含有する電解液において、電解質の濃度は、25℃の電解液として、好ましくは0.01〜20モル/Lの範囲であり、より好ましくは0.05〜10モル/Lの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜5モル/Lの範囲である。
【0106】
本発明の高分子電解質ゲル組成物において、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液との重量比は、本発明のビニルアセタール系重合体:電解液=0.5:99.5〜9:91である。この重量比よりも本発明のポリビニルアセタール系重合体が多い場合には、イオン伝導性が損なわれる傾向があり、逆に電解液が多い場合には、液漏れが生じて安全性が損なわれる傾向がある。当該重量比は、イオン伝導性、電解液保持性などの観点から、本発明のビニルアセタール系重合体:電解液=1:99〜8:92が好ましく、本発明のビニルアセタール系重合体:電解液=3:97〜6:94がより好ましい。なお、上記の重量比におけるビニルアセタール系重合体の重量には、ビニルアセタール系重合体が含むカチオン性官能基のカウンターアニオンの重量を含めないものとする。
【0107】
本発明の高分子電解質ゲル組成物は、高い機械的強度および形状保持性を有していて架橋のための余計な工程を必要としないため、架橋工程を経ずに製造されることが好ましいが、本発明の高分子電解質ゲル組成物の用途などに応じて、架橋促進剤による架橋工程などを経て製造されてもよい。
【0108】
本発明の高分子電解質ゲル組成物は、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液のみから構成されていてもよいが、これら以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、充填材、上記の架橋促進剤やその反応生成物などが挙げられる。本発明の高分子電解質ゲル組成物に占める、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液の合計の割合は、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましい。
【0109】
本発明の高分子電解質ゲル組成物は、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液とを混合前の重量比で0.5:99.5〜9:91の割合で混合したり、あるいは本発明のビニルアセタール系重合体に対し電解液を含浸前の重量比でビニルアセタール系重合体の重量:電解液の重量=0.5:99.5〜9:91の割合で含浸させるなどして製造することができる。これらの中でもより均一な高分子電解質ゲル組成物が得られることから、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液とを混合する方法が好ましい。本発明の高分子電解質ゲル組成物、またはそれからなる成形体を製造するための具体的な方法としては、以下に示すような第1〜第3の方法が例示される。
【0110】
第1の方法は、本発明のビニルアセタール系重合体を有機溶媒に溶解させたものに上記電解液を加えるなどして、本発明のビニルアセタール系重合体が有機溶媒に溶解したものと電解液とを混合した後、成形加工の前または後に有機溶媒を蒸発させて取り除く方法である。有機溶媒としては、本発明のビニルアセタール系重合体を溶解することのできるものであれば特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;メチレンクロライド、クロロホルム等の塩素化炭化水素;トルエン、キシレン、スチレン、ピリジン等の芳香族炭化水素;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;酢酸等のカルボン酸などが挙げられる。
【0111】
第2の方法は、本発明のビニルアセタール系重合体と電解液との混合物を、所定の形状に成形加工する方法であり、例えば、第1の方法に記載したような有機溶媒を使用しない方法が挙げられる。
【0112】
第3の方法は、本発明のビニルアセタール系重合体をキャスト成膜、溶融押出成膜等により成膜してフィルムを作製し、このフィルムを上記電解液に含浸する方法である。
【0113】
本発明の高分子電解質ゲル組成物は、上記した本発明のカチオン性官能基を含むビニルアセタール系重合体を用いているため、架橋のための余計な工程がなくても電解液保持性に優れるとともに分子鎖中のカチオン性官能基が電解質の電離を促進することができ、イオン伝導性が向上するものと推測される。また、分子鎖中のカチオン性官能基が電解質に含まれるアニオンを効率的にトラップしてカチオンの輸率を向上させることができることから、本発明の高分子電解質ゲル組成物を用いて二次電池を製造した際にそのサイクル特性が向上するものと推測される。
【0114】
本発明の高分子電解質ゲル組成物の用途は特に制限されないが、本発明の高分子電解質ゲル組成物が有する優れた電解液保持性、イオン伝導性、機械的強度および形状保持性などを活かすことができることから電池やキャパシタの構成部材として使用することが好ましく、特にサイクル特性に優れたものとなることから二次電池やキャパシタの構成部材として使用することがより好ましく、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタの構成部材として使用することがさらに好ましく、リチウムイオン二次電池の構成部材として使用することが特に好ましい。
【0115】
高分子電解質ゲルを用いる二次電池は、通常、一対の電極、セパレータおよび各電極とセパレータの間に配設された高分子電解質ゲルを有している。そして、本発明の高分子電解質ゲル組成物は、当該二次電池の高分子電解質ゲルとして使用することができる。二次電池における本発明の高分子電解質ゲル組成物の形状は、目的とする二次電池の形状やその製造方法等にもよるが、例えば、厚さ1〜500μmの薄膜状や、あるいは、一対の電極とその間に配設されたセパレータにおける各隙間やこれらの周囲に溶融状態の高分子電解質ゲルが連続的に入り込んだ後に固化して形成される形状などが挙げられる。
【0116】
上記一対の電極の一方を構成する正極としては、正極集電体に正極活物質層が形成された構造を有するものを使用することができ、他方を構成する負極としては、負極集電体に負極活物質層が形成された構造を有するものを使用することができる。また、高分子電解質ゲルを用いる二次電池は外装部材を有していることが好ましい。外装部材によって上記の電極、セパレータおよび高分子電解質ゲルの全体を包むことにより、二次電池を保護することができる。
【0117】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどを素材とする板や箔を用いることができ、アルミニウム箔が好ましい。
【0118】
正極活物質層は、例えば、正極活物質と結着剤とを含み、必要に応じてさらに導電助剤を含んでいてもよい。
【0119】
正極活物質層に含まれる正極活物質としては、リチウムを吸蔵および脱離することのできる物質を用いることができ、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物や、リチウム含有遷移金属リン酸化合物などが挙げられ、具体的には、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Co
0.5O
2、LiNi
0.5Co
0.3Mn
0.2O
2、LiFePO
4、LiFe
0.5Mn
0.5PO
4などが挙げられる。
【0120】
正極活物質層に含まれる結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。
【0121】
正極活物質層に含まれる導電助剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0122】
正極は、例えば、正極活物質を結着剤と必要に応じてさらに導電助剤とともにN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒中に分散・混練し、その後、正極集電体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより製造することができる。正極活物質層は正極集電体の片面にのみ形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0123】
負極集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレスなどを素材とする板や箔を用いることができ、銅箔が好ましい。
【0124】
負極活物質層は、例えば、負極活物質と結着剤とを含み、必要に応じてさらに導電助剤を含んでいてもよい。
【0125】
負極活物質層に含まれる負極活物質としては、リチウムを吸蔵および脱離することのできる物質を用いることができ、例えば、リチウム金属;天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン等の炭素材料;酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン等の金属酸化物;ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子材料;リチウムと合金を形成可能な金属元素もしくは半金属元素の単体、合金または化合物などが挙げられる。
上記のリチウムと合金を形成可能な金属元素もしくは半金属元素の単体としては、例えば、マグネシウム、ホウ素、ヒ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、カドミウム、銀、亜鉛、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、パラジウム、白金等が挙げられる。また、上記のリチウムと合金を形成可能な金属元素もしくは半金属元素の合金または化合物としては、例えば、LiAl、AlSb、CuMgSb、SiB
4、SiB
6、Mg
2Si、Mg
2Sn、Ni
2Si、TiSi
2、MoSi
2、CoSi
2、NiSi
2、CaSi
2、CrSi
2、Cu
5Si、FeSi
2、MnSi
2、NbSi
2、TaSi
2、VSi
2、WSi
2、ZnSi
2、SiC、Si
3N
4、Si
2N
2O、SiO、SiO
2、SnO、SnO
2、SnSiO
3、LiSiO、LiSnO等が挙げられる。
高分子電解質ゲル組成物を用いた二次電池の場合、容量の大きなリチウム金属を負極に利用できる利点がある。負極活物質としてリチウム金属を使用すると、黒鉛粉末などの炭素材料を使用した場合に比べて二次電池の電池容量を飛躍的に向上させることができる。
負極活物質は粉末の状態で用いてもよいし、フィルムやシートの状態で用いてもよいし、負極集電体上に薄膜を形成して用いてもよいが、粉末の状態で用いられるのが好ましい。
【0126】
負極活物質層に含まれる結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0127】
負極活物質層に含まれる導電助剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0128】
負極は、例えば、負極活物質を結着剤と必要に応じてさらに導電助剤とともに溶媒中に分散・混練し、その後、負極集電体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより製造することができる。負極活物質層は負極集電体の片面にのみ形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0129】
上記のセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;多孔質ビニロン等の合成樹脂から形成される微孔性膜や不織布;セラミック製の不織布などを素材とする多孔質体を用いることができる。セパレータは単層構造を有していても、2種以上の多孔質体を積層してなる積層構造を有していてもよい。
【0130】
上記の外装部材としては、例えば、ニッケルやステンレス製の円筒形や角型の金属缶、アルミラミネートフィルムなどを用いることができる。特に、アルミラミネートフィルムを外装部材として用いた場合には、二次電池の形状を自由に設計することができ、金属缶を外装部材として用いた場合よりも二次電池を軽量にすることができる。本発明の高分子電解質ゲル組成物を用いると、アルミラミネートフィルムを外装部材として用いて高分子を含有しない電解液のみを用いた二次電池を作製する場合に問題となる液漏れが抑制された、より安全な二次電池を製造することができる。
【0131】
二次電池の製造方法に特に制限はないが、例えば、袋状にした外装部材の内部に一対の電極とその間に配設されたセパレータを配置し、次いで外装部材の内部に、溶融状態にある本発明の高分子電解質ゲル組成物を流し込み、冷却・固化することにより製造する方法が挙げられる。
【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0133】
[製造例1]
カチオン変性ポリビニルブチラール(重合体A)の製造
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を付したフラスコ中に、酢酸ビニル2500g(29モル)、メタノール697gおよび(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド4.5g(0.020モル)を仕込んだ。次いで当該フラスコを恒温槽内に据えて撹拌しながら系内を窒素置換し、内温を60℃まで昇温した。その後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.5g(0.021モル)をメタノール50gと共に添加して重合を開始した。重合時間3時間の間に(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドの50重量%メタノール溶液340g((3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドを0.77モル含む)を一定速度で滴下した。重合停止時の系内の固形分濃度は49.8重量%であった。
上記のフラスコにガス導入管および減圧蒸留装置を取り付け、減圧下に重合反応液中にメタノール蒸気を吹きこみながら未反応の酢酸ビニルモノマーを追い出して、共重合体の44.3重量%メタノール溶液を得た。
【0134】
上記の共重合体のメタノール溶液812gを35℃で撹拌しながら、2モル/Lの水酸化ナトリウムメタノール溶液を42.1mL添加し、充分に混合した後、放置した。7分20秒後に系全体がゲル化した。さらに20分後に粉砕機にてこのゲルを粉砕し、メタノールで洗浄後、加熱乾燥してカチオン共重合変性ポリビニルアルコール(重合体P)を得た。
得られた重合体Pは、(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドに由来する構成単位を4モル%、酢酸ビニル単位を1モル%、ビニルアルコール単位を95モル%含有していた。また、4%水溶液の20℃におけるブルックフィールド粘度は、34.1センチポアズであった。
【0135】
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた2リットルガラス製容器に、イオン交換水1350g、重合体P110gを仕込み、120rpmで攪拌しながら、95℃で、60分かけて重合体Pを完全に溶解した(重合体Pの濃度7.5重量%)。この水溶液を120rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、n−ブチルアルデヒド75g(1.0モル)と20重量%の塩酸131mLを添加し、アセタール化反応を25分間行った。その後、150分かけて45℃まで昇温し、240分間保持後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和を行い、イオン交換水で再度洗浄し、乾燥して、カチオン変性ポリビニルブチラール(重合体A)を得た。
得られた重合体Aのブチラール化度は78モル%、酢酸ビニル単位の含有量は1モル%、ビニルアルコール単位の含有量は17モル%、カチオン変性単位の含有量は4モル%(カチオン性官能基含有量は4モル%)であった。
【0136】
[製造例2]
カチオン変性ポリビニルアセタール(重合体B)の製造
製造例1において、使用するn−ブチルアルデヒド75g(1.0モル)の代わりに、n−ブチルアルデヒド37g(0.51モル)およびアセトアルデヒド23g(0.52モル)の混合物を用いて、製造例1と同様の方法により、カチオン変性ポリビニルアセタール(重合体B)を得た。
得られた重合体Bのブチラール化度は39モル%、アセトアセタール化度は39モル%、酢酸ビニル単位の含有量は1モル%、ビニルアルコール単位の含有量は17モル%、カチオン変性単位の含有量は4モル%(カチオン性官能基含有量は4モル%)であった。
【0137】
[製造例3]
カチオン変性ポリビニルアセタール(重合体C)の製造
製造例1において、使用する重合体P110gの代わりに、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「ポバール」PVA−117)110gを用い、また、使用するn−ブチルアルデヒド75g(1.0モル)の代わりに、n−ブチルアルデヒド37g(0.51モル)および六フッ化リン酸3−(2,2−ジメトキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム163g(0.52モル)の混合物を用いて、製造例1と同様の方法により、カチオン変性ポリビニルアセタール(重合体C)を得た。
得られた重合体Cのブチラール化度は39モル%、酢酸ビニル単位の含有量は1モル%、ビニルアルコール単位の含有量は21モル%、カチオン変性単位の含有量は39モル%(カチオン性官能基含有量は19.5モル%)であった。
【0138】
[製造例4]
カチオン変性ポリビニルアセタール(重合体D)の製造
製造例3において、使用するn−ブチルアルデヒド37g(0.51モル)および六フッ化リン酸3−(2,2−ジメトキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム163g(0.52モル)の混合物の代わりに、n−ブチルアルデヒド25g(0.35モル)、アセトアルデヒド15g(0.34モル)および六フッ化リン酸3−(2,2−ジメトキシエチル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム109g(0.34モル)の混合物を用いて、製造例3と同様の方法により、カチオン変性ポリビニルアセタール(重合体D)を得た。
得られた重合体Dのブチラール化度は26モル%、アセトアセタール化度は26モル%、酢酸ビニル単位の含有量は1モル%、ビニルアルコール単位の含有量は21モル%、カチオン変性単位の含有量は26モル%(カチオン性官能基含有量は13モル%)であった。
【0139】
[製造例5]
無変性ポリビニルホルマール(重合体Y)の製造
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた2リットルガラス製容器に、イオン交換水1350g、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「ポバール」PVA−117)110gを仕込み、120rpmで攪拌しながら、95℃で、60分かけてポリビニルアルコールを完全に溶解した(ポリビニルアルコールの濃度7.5重量%)。この水溶液を120rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、ホルマリン(37重量%ホルムアルデヒド水溶液)84g(ホルムアルデヒドを1.0モル含む)と20重量%の塩酸131mLを添加し、アセタール化反応を25分間行った。その後、150分かけて45℃まで昇温し、240分間保持後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和を行い、イオン交換水で再度洗浄し、乾燥して、無変性ポリビニルホルマール(重合体Y)を得た。
得られた重合体Yのホルマール化度は78モル%、酢酸ビニル単位の含有量は1モル%、ビニルアルコール単位の含有量は21モル%であった。
【0140】
[製造例6]
無変性ポリビニルアセタール(重合体Z)の製造
製造例5において、使用するホルマリン(37重量%ホルムアルデヒド水溶液)84g(ホルムアルデヒドを1.0モル含む)の代わりに、n−ブチルアルデヒド37g(0.51モル)およびアセトアルデヒド23g(0.52モル)の混合物を用いて、製造例5と同様の方法により、無変性ポリビニルアセタール(重合体Z)を得た。
得られた重合体Zのブチラール化度は39モル%、アセトアセタール化度は39モル%、酢酸ビニル単位の含有量は1モル%、ビニルアルコール単位の含有量は21モル%であった。
【0141】
[実施例1]
重合体A 5重量部(但し、カウンターアニオンの重量を含まない)とエタノール95重量部とを混合し、1時間攪拌して重合体溶液を調製した。また、別途、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとを炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=3:7の重量比で混合した非水系溶媒に、電解質として六フッ化リン酸リチウムを1.0モル/Lの濃度で溶解した電解液を調製した。調製した電解液95重量部を上記の重合体溶液と混合し、均一になるまで充分攪拌して混合液とした。次に、あらかじめ準備した「テフロン」製のトレー状の容器中にこの混合液の全量を注ぎ込み、50℃で5時間加熱乾燥し、その後、真空乾燥機中で70℃で3時間減圧乾燥してエタノールを取り除き、「テフロン」製の容器に密着した状態の厚さ約200μmの薄膜状の高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0142】
[実施例2]
実施例1において、重合体Aの代わりに重合体Bを使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0143】
[実施例3]
実施例1において、重合体Aの代わりに重合体Cを使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0144】
[実施例4]
実施例1において、重合体Aの代わりに重合体Dを使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0145】
[比較例1]
実施例1において、重合体Aの代わりに重合体Yを使用し、エタノールの代わりにテトラヒドロフランを使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0146】
[比較例2]
実施例1において、重合体Aの代わりにポリビニルブチラール(クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング製「モビタール」B60H)(重合体W)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0147】
[比較例3]
実施例1において、重合体Aの代わりに重合体Zを使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0148】
[比較例4]
実施例3において、重合体Cの使用量を5重量部から10重量部に変更し、調製した電解液の使用量を95重量部から90重量部に変更したこと以外は実施例3と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0149】
[比較例5]
実施例3において、重合体Cの使用量を5重量部から0.4重量部に変更し、調製した電解液の使用量を95重量部から99.6重量部に変更したこと以外は実施例3と同様の方法により、高分子電解質ゲル組成物を作製した。
【0150】
上記方法により作製した実施例1〜4および比較例1〜5の高分子電解質ゲル組成物について、下記に示す方法で各評価を行った。結果を表1に示した。
【0151】
液漏れ
前述の真空乾燥機中における減圧乾燥の後、高分子電解質ゲル組成物の表面が湿潤していなかったものを液漏れ「なし」、湿潤していたものを液漏れ「あり」と評価した。
【0152】
機械的強度
高分子電解質ゲル組成物を「テフロン」製の容器から剥離するときに、破断しなかったものを機械的強度「充分」、破断したものを機械的強度「不充分」と評価した。
【0153】
イオン伝導度
高分子電解質ゲル組成物の入った「テフロン」製の容器をアルゴンガスで充満させたグローブボックス内に移し入れ、高分子電解質ゲル組成物を「テフロン」製の容器から剥離した後、直径1cmの円状に切断し、測定用試料片を得た。この測定用試料片をステンレス電極に挟みこみセルを作製した。このセルをリード線でインピーダンスアナライザーにつなぎ、交流インピーダンス法により20℃にて試料の抵抗値を測定した。測定は、アルゴン雰囲気中で行い、測定用試料片の抵抗値、厚み(約200μm)および、ステンレス電極の面積からイオン伝導度σを算出した。
【0154】
サイクル特性
正極集電体に厚み20μmのアルミニウム箔、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO
2)、セパレータに厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルム、負極活物質に黒鉛粉末、負極集電体に厚み15μmの銅箔を用い、外装部材にアルミラミネートフィルムを用い、さらに高分子電解質ゲルとして上記の各実施例または比較例における高分子電解質ゲル組成物と同様の組成を有する高分子電解質ゲル組成物を用いたリチウムイオン二次電池を作製した。
上記のリチウムイオン二次電池を用いて充放電を行い、サイクル特性を調べた。サイクル特性は、23℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで2時間行った後、500mAの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行うという充放電を100サイクル繰返し、1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量維持率、すなわち、〔500mA放電における100サイクル目の放電容量〕/〔500mA放電における1サイクル目の放電容量〕×100(%)により求められる値から評価した。
【0155】
【表1】
【0156】
表1の結果から明らかなように、ビニルアセタール系重合体がカチオン性官能基を含む場合(実施例1〜4)、高いイオン伝導度を示した。これは、ビニルアセタール系重合体が含むカチオン性官能基が電解液中の電解質の電離を促進するためと推測される。また、ビニルアセタール系重合体がカチオン性官能基を含む場合(実施例1〜4)、得られる二次電池は優れたサイクル特性を示した。これは、ビニルアセタール系重合体が含むカチオン性官能基に起因して、電解液に含まれるアニオンの効率的なトラッピングがおこるためと推測される。
【0157】
一方、高分子電解質ゲル組成物中のビニルアセタール系重合体と電解液との重量比は同じであるが、ビニルアセタール系重合体がカチオン性官能基を含まない場合(比較例1〜3)は、イオン伝導度は低く、二次電池におけるサイクル特性も劣っていた。また、無変性ポリビニルホルマールを用いた場合(比較例1)は、高分子電解質ゲル組成物は充分な強度が得られないことに加えて液漏れを生じる可能性があり、リチウムイオン二次電池の高分子電解質ゲルとして使用する場合、充分な安全性の確保が困難であることが分かった。また、ビニルアセタール系重合体がカチオン性官能基を含むものの、高分子電解質ゲル組成物中のビニルアセタール系重合体の電解液に対する重量比が高い場合(比較例4)は、電解液の重量比が低くなるためにイオン伝導度が低かった。逆に、高分子電解質ゲル組成物中のビニルアセタール系重合体の電解液に対する重量比が低い場合(比較例5)は、高分子電解質ゲル組成物は充分な強度を得られず、液漏れも懸念された。