(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような測定用デバイスを管理装置に管理させるタイミング、すなわち管理開始時点と管理終了時点を、管理装置側で自在かつ簡便に定めることについては全く考慮がなされていない。
【0005】
したがって、測定用デバイスの管理をほぼ一斉に始めたいとか、一部の測定用デバイスの管理を所望の時点で途中停止して、別の測定用デバイスを動作させその管理にスムーズに移行したいとかいった要求に応えることができない。
このような問題点は、測定用デバイスを含む試験用デバイスに共通する。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、1以上の測定用デバイスの接続状態を当該管理装置側での操作のみで自在にコントロールできるようにして、試験をより柔軟にかつより容易に行えるようにすることをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る試験システムは、車両、船舶、飛行機等の移動体又は該移動体に用いられる機器を対象物として、該対象物の試験をするためのものであって、前記試験に用いられる1又は複数の試験用デバイスと、前記試験用デバイスと通信可能に接続されて該試験用デバイスを管理するデバイス管理装置と、例えば前記試験に係るスケジュールを設定し、そのスケジュールに基づいて前記デバイス管理装置に指令を出す等の動作を営む試験自動管理装置とを具備し、
前記デバイス管理装置が、前記試験用デバイスを接続又は切断するための断接操作がされたことを検知する断接操作検知部と、前記断接操作検知部が接続操作を検出した場合には、接続状態にするための所定の接続プロトコルを開始して該当する試験用デバイスの管理を始めるとともに、前記断接操作検知部が切断操作を検出した場合には、前記接続を解除して試験用デバイスの管理を終了する管理本体部とを具備したものであることを特徴とする。
【0008】
なお、「接続操作」とは、コンソールでのマウスやキーボードによる接続操作のみならず、例えば通信ケーブルをコネクタに接続する操作も含まれる。
【0009】
このようなものであれば、管理装置側でのオペレータによる断接操作によって1以上の測定用デバイスの接続状態を自在にコントロールできる。したがって、試験がより柔軟にかつより容易に行えるようになる。
【0010】
オペレータに対し、断接操作を直感的にわかりやすくして使い勝手を良くするには、前記デバイス管理装置が、予め登録された試験用デバイスを示すデバイス標識と、前記デバイス標識に対応するように設けられた断接操作ボタンとを画面に表示する表示部をさらに具備し、前記断接操作検知部が、前記断接ボタンに対する操作を検出するようにしておくことが好ましい。
【0011】
具体的な実施態様としては、前記試験用デバイスが、前記対象物の状態量を測定する測定用デバイスであることが望ましく、より具体的には、前記測定用デバイスが、内燃機関の排ガスを測定するために用いられるものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、管理装置側でのオペレータによる断接操作によって1以上の測定用デバイスの接続状態を自在にコントロールできる。したがって、試験がより柔軟にかつより容易に行えるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る車両性能試験システム1の全体を模式的に示したものである。この車両性能試験システム1は、同図に示すように、シャシダイナモメータ2、自動運転装置3、試験自動管理装置6、複数の試験用デバイス(排ガス測定用デバイス)4、デバイス管理装置7等を備えているもので、前記シャシダイナモメータ2上で車両VHを擬似走行状態にし、その車両VHの燃費、排ガス成分等を測定して車両性能を試験することができる。なお、エンジン単体での試験も可能である。
各部を説明する。
【0016】
シャシダイナモメータ2は、回転ドラム21と、この回転ドラム21に負荷を与えるモータやフライホイール(図示しない)と、それらを制御するダイナモ制御装置22を備えたものである。前記回転ドラム21やモータ、或いはフライホイールは、前記テスト室10に設置してあり、車両VHを、その駆動輪が回転ドラム21の頂上部直上に位置するテスト位置に設定することにより、実走行と同様な状態で走行できるように構成してある。ダイナモ制御装置22は、例えばテスト室10に隣接して設けた計測室に収容してある。なお、このテスト室10及び計測室(或いはさらにこれらに加えて前記ピット)がいわゆるセルやラボと称されるものである。
【0017】
自動運転装置3は、車両VHの運転室に搭載されてアクセル、ブレーキ、クラッチ等を駆動する運転ロボット(図示しない)と、その運転ロボットに接続されてこれを制御するロボット制御装置31とを備えたもので、このロボット制御装置31に種々の指令信号を与えることで、前記運転ロボットを制御させ、例えば規格化されている種々のレギュレーション(例えばCFR、TRIASなど)にしたがった、車両VHあるいはエンジンの性能試験ができるようにしてある。このロボット制御装置31は、例えば前記計測室に収容してある。
【0018】
試験自動管理装置6は、詳細な説明は省くが、走行試験のスケジュールを設定するという基本機能を有したものである。走行試験のスケジュールを設定するとは、例えば、レギュレーションの設定や試験日の設定なども含まれるが、より細かく車速やエンジン回転数などの車両VHの挙動を設定したり、測定対象、測定タイミングなどを設定したりすることも含んでよい。この試験自動管理装置6には、通信ポートが設けられていて、前記測定用デバイス4やシャシダイナモメータ2、自動運転装置3等が、有線又は無線によってこの試験自動管理装置6に相互通信可能に接続される。
【0019】
しかして、かかるスケジュール設定がオペレータにより行われると、試験自動管理装置6は、そのスケジュールにしたがったコマンドをシャシダイナモメータ2、自動運転装置3、デバイス管理装置7等に送信し、スケジュール通りの試験が自動的に行われるようにそれらを制御する。
【0020】
なお、
図1では、1つの試験自動管理装置6に1つのデバイス管理装置7が接続されているが、複数のデバイス管理装置7が接続されていても良い。試験自動管理装置6はデバイス管理装置7ごとに独立してスケジューリングできる。
【0021】
排ガス測定用デバイス4(以下、単に測定用デバイス4とも言う。)としては、ここでは、例えば内燃機関の排気経路を流れる排ガス中のHC、NO
X、CO、CO
2等を測定するものや、CVSのように排ガス成分を測定するための前処理を行うようなものが用意されている。この測定用デバイス4は、単位機器であるガス分析ユニット9や、その他の動作ユニットを1以上集合させて構成したものであるが、物理的に一体であるとは限らない。例えば、複数の分離した構成全体を指して、1つの測定用デバイスと呼んだり、1つの筐体の中に複数の測定用デバイスが設けられている場合もある。なお、前記ガス分析ユニット9とは、例えば、THCを測定するためのFIDであるとか、NOxを測定するためのCLDであるとか、CO、CO
2を測定するためのNDIR等のことである。
測定用デバイス4は、後述するデバイス管理装置5の記憶部75内あるいはそれらが共有するデータベース内において、管理上の単位としても設定されている。その記憶部75内のデータ構造を詳述しておけば、前記測定デバイス4が属するデバイス階層の下層にグループが属するグループ階層、さらにその下に分析ユニット等が属するユニット階層が形成されたツリー構造の階層構造データがこの記憶部75に格納されている。
グループとは、例えば共通の目的のために動作する1以上の分析ユニット7の集合として規定されたものである。共通の目的とは、例えば、吸排気経路LGの所定サンプリングポイントでの排ガスの成分分析とか、内燃機関EGの所定性能(例えばEGR率、排ガス流量等)の測定とかである。
なお、この実施形態では、グループを測定デバイスに昇格させたり、グループに属する分析ユニットを変更したりするといった、記憶部75に対する変更操作を可能に構成しており、グループやデバイスは、それを単位として独立して動作可能な物理構成となっていること(例えばポンプを具備して、独立してガスをサンプリングできるなど)を条件としている。
この実施形態での複数種類の測定用デバイス4を例示しておくと、例えば、測定原理の異なる複数のガス分析ユニット9で構成される測定用グループG1〜G3及びEGR率測定装置G4を具備する第1測定用デバイス401、定容量サンプリング装置により構成される第2測定用デバイス402、EGR率測定装置を含む測定用グループGnで構成される第3測定用デバイス403等である。
【0022】
測定用デバイス4は、ローカルコンピュータを有し、当該測定用デバイス4の動作モード(測定モード、校正モード、パージモード等)や状態モード(スリープモード、スタンバイモード等)を制御するデバイス本体部4a、デバイス管理装置5からの指令信号を受信するとともに、動作状況情報をデバイス管理装置5に送信する通信部4b等を具備している。
【0023】
測定用デバイス4は、例えばサンプリングしたガスに係るHC、NO
X、CO、CO
2等の各成分量を測定するが、その測定値からエンジンや触媒など、車両VHを構成する機器の性能値、例えば燃費、EGR率などを算出することもできる。
そのために、測定用デバイス4は、
図3に示すように、ローカルコンピュータを有している。
【0024】
このローカルコンピュータは、物理的には、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、通信インタフェースなどを備えたものであり、排ガスの所定成分を検出するセンサ4aからの出力値に補正や校正を施して前記各成分量を示す測定値を算出するとともに、その測定値から前記機器性能値を算出する演算部41と、該演算部41によって算出された測定値や機器性能値等を所定のプロトコルでデバイス管理装置7に送信する通信部42としての機能を発揮する。
【0025】
また、このローカルコンピュータは、デバイス管理装置7からの指令信号を受信してバルブVや温調機構4b、ポンプ4cなどをコントロールし、当該排ガス測定用デバイス4の動作モード(測定モード、校正モード、パージモード等)や状態モード(スリープモード、スタンバイモード等)を制御する制御部43や、センサ4aの校正を行う校正部44、あるいは、該測定用デバイス4の過去から現在に亘るデバイス状態情報等を逐次取得して蓄積する、メモリの所定領域に設けたローカル蓄積部45等をさらに具備している。
【0026】
デバイス状態情報とは、例えば、内蔵するポンプ4cによる吸引圧力を示すポンプ圧情報、センサ4aの感度に係る情報である感度情報、各部の蓄積稼働時間を示す蓄積稼働時間情報、当該測定用デバイス4の予め定められた検査時期を特定するための情報である検査時期特定情報等のことである。このデバイス状態情報には、当該測定用デバイス4に施された校正(0点補正、スパン補正、変換式補正)や、クォリティチェック(分析ユニットの各部の機能検査、配管漏れ検査、ポンプ性能チェック等)などの結果から取得されるものもある。
【0027】
デバイス管理装置7は、例えば汎用のコンピュータに所定のプログラムをインストールして構成されたもので、物理的には、CPU、メモリ、ディスプレイ、入力手段(キーボードやマウス等)、通信インタフェース等を備えている。そして、前記メモリに記憶させたプログラムに従ってCPU及びその周辺機器が協働することにより、このデバイス管理装置7は、
図3に示すように、断接操作検知部71、表示部72、管理本体部73、通信部74等としての機能を発揮する。このデバイス管理装置7には、通信ポートが設けられていて、前記測定用デバイス4は、有線又は無線によって、デバイス管理装置7に相互通信可能に接続される。
次に、デバイス管理装置7の各部の説明を兼ねて、その動作を説明する。
【0028】
まず、オペレータは、測定用デバイス4に係る種々の作業(配管など)をしたうえで、デバイス管理装置7に測定用デバイス4をコネクタケーブルで物理的に接続する。
【0029】
デバイス管理装置7のディスプレイ7aには、前記表示部72の機能により、初期画面として、
図4に示すような、画面(以下、プラグイン画面とも言う。)8Aが表示される。このプラグイン画面8Aには、予め登録された測定用デバイス4を示すデバイス標識81が重ならないように複数配置されている。各デバイス標識81は矩形状をなすもので、該当する測定用デバイス4を表す模式図の他に、この測定用デバイス4に接続するための接続ボタン82と、この測定用デバイス4の接続を切断するための切断ボタン83と、接続状態を示す接続状態表示領域84とが設けてある。
【0030】
このプラグイン画面8A上で、オペレータが、例えば接続ボタン82をクリックすると、前記断接操作検知部71が、その操作を接続操作として検出する。そして、前記通信部74が、該当する測定用デバイス4の通信部42との交信を始め、所定の接続プロトコルが正常に終了し、相互通信可能な接続状態(以下、単に接続状態とも言う)が確立されると、通信可能に接続されている状態を示すConnectedなる表示を、該デバイス標識中の接続状態表示領域84に表示する。なお、相互通信が確立されるまでは、接続のための準備中である状態を示すInitializationなる表示が接続状態表示領域84に表示される。
【0031】
一方、この接続状態から切断ボタン83をクリックすると、前記断接操作検知部71がその操作を切断操作として検出する。そして、前記通信部74が、該当する測定用デバイス4の通信部42との交信を遮断し、接続が解除されている状態を示すStoppedなる表示を接続状態表示領域84に表示する。
【0032】
なお、コネクタケーブルが抜けている状態で接続ボタン82をクリックしたり、接続状態中にコネクタケーブルが抜けたりすると、前記断接操作検知部71がこれを検知して、接続に失敗した状態を示すConfiguration Mismatchなる表示を接続状態表示領域84が表示される。
【0033】
また、接続状態では、新たに再接続ボタン(リスタートボタン)85が表示され、この再接続ボタン85がクリックされると、通信部74は前記接続プロトコルを再度開始して、再接続する。
【0034】
ところで、この実施形態では、前記接続プロトコルにおいて、各測定用デバイス4のデバイス状態情報をデバイス管理装置7に吸い上げる工程が自動的に行われる。
【0035】
詳述すれば、接続ボタン82又は再接続ボタン85がクリックされると、その操作を前記断接操作検知部71が検出し、それをもって前記管理本体部73が、対応する測定用デバイス4のローカル蓄積部45に通信部42,74を介してアクセスし、該ローカル蓄積部45に蓄積されている当該測定用デバイス4の過去から現在に至る前記デバイス状態情報を自動的に取得する。
【0036】
そして、接続後も管理本体部73は、測定用デバイス4のローカル蓄積部45に逐次アクセスして、デバイス情報を追加取得していく。なお、管理本体部73は、測定用デバイス4に動作モード等の指令を出したり、測定用デバイス4から測定値や機能性能値を取得するといった他の管理動作も営む。
前記デバイス情報は、画面に時系列で表示させることができる。
【0037】
図5に、その表示画面(以下、デバイス状態履歴画面とも言う)の一例を示す。この画面では、オペレータが選択したガス分析ユニットの感度変化とドリフト変化とが横軸を時間にしてグラフ86、87で表示される。分析ユニットの感度とは、所定の濃度のスパンガスをセンシングさせたときのセンサ4aの一次出力値のことであり、この値が小さくなるということは、センサ感度が低下していることを示す。ドリフトとは、ゼロガス(濃度ゼロのガス)をセンシングしたときのセンサ4aの一次出力値のことであり、この値が大きくなると言うことは、センサ4aのオフセットが大きくなっていることを示す。これら感度とドリフト量については、測定用デバイス4を校正するときに測定することから、そのときに該測定用デバイス4のローカル蓄積部45に都度追加記録される。
【0038】
しかして、このデバイス管理装置7の管理本体部73は、前記デバイス情報が所定の閾値を超えた(あるいは下回った)場合に、メンテナンスや交換が必要である旨の警告を発する。この閾値は、ドリフト量及び感度に関しては、最終アラームを発するための第1閾値と、その前段階であることを警告するための第2閾値とが設けられている。このアラームにしたがって、オペレータは分析ユニットの再調整を行うことができる。
【0039】
以上のように構成した本実施形態によれば、デバイス管理装置7側でのオペレータによる断接操作によって複数の測定用デバイス4の接続状態を自在にコントロールできる。したがって、試験がより柔軟にかつより容易に行えるようになる。
【0040】
また、接続可能な各測定用デバイス4が標準化された形式、つまりデバイス標識81として予め複数のデバイス管理装置7に共通に登録することができるので、ある測定用デバイス4を、別のセルの別のデバイス管理装置7に物理的に接続して同様に接続操作をするだけで、簡単に認識させることができる。
【0041】
しかもそのときに、測定用デバイス4が自身のデバイス状態情報を蓄積しており、接続時にデバイス管理装置7にそのデバイス状態情報が自動的に吸い上げられるので、デバイス管理装置7が替わっても、デバイス状態情報が漏れることなく継承されて、レギュレーションの遵守や測定用デバイス4のメンテナンスを確実に行うことができる。
【0042】
特にこの実施形態では、デバイス状態情報のうち、例えば分析ユニットの感度変化とドリフト変化を画面に時系列表示しながら、その値が閾値を超えたときに警告を発する、つまり、オペレータに対し分析ユニットの感度変化やドリフト変化の傾向を判断可能に警告を発するので、傾向を表示することなく単に警告を発するのと比べ、オペレータは、その警告の原因をより的確に判断できる。例えば、その傾向から外れて突発的に値が上下した場合に出力される警告の場合、オペレータは、測定ミスや校正ミスなどによるものと判断することができ、無駄なメンテナンス等を減らすことができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、エンジン単体での試験にも適用できるし、飛行機や船舶、あるいはその機器などの試験にも用いることができる。
試験用デバイスには、排ガスの測定用デバイスに限られることなく、船舶や飛行機などの移動体又はその構成機器の試験に用いられる装置、例えば、ダイナモメータやロボットなどの自動運転装置も含まれる。デバイス管理装置には、直接的に試験用デバイスを管理するものの他、間接的に管理するもの、例えば前記実施形態での試験自動管理装置なども含むものである。