特許第5718302号(P5718302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718302
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】給電コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20150423BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20150423BHJP
   H01R 13/639 20060101ALN20150423BHJP
【FI】
   H01R13/64ZHV
   H01R13/631
   !H01R13/639 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-253320(P2012-253320)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-102940(P2014-102940A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2014年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(74)【復代理人】
【識別番号】100156410
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 輝和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直美
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−144392(JP,A)
【文献】 特開平07−192806(JP,A)
【文献】 特開2012−174643(JP,A)
【文献】 特開平07−263086(JP,A)
【文献】 特開平07−037644(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101952(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/061801(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/145947(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/629
H01R 13/639
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の給電コネクタであって、
コネクタ本体と、
前記コネクタ本体を収容するケースと、
前記ケースに取り付けられる把持部材と、
前記ケースが受電コネクタに挿入されたことを検知する挿入検知手段と、
前記把持部材に対して前記ケースの移動を制限するケースロック機構と、を具備し、
前記挿入検知手段は、前記ケースの受電コネクタへの挿入部に形成され、前記ケースの挿抜方向に摺動可能なスライダを具備し、
前記ケースロック機構は、係止部材と、樹脂製のガイドを有し、前記係止部材は前記ガイドに沿って移動可能であり、
前記係止部材は、金属部と樹脂部とが一体で構成され、
前記スライダが前記ケースから突出している状態では、前記金属部が前記把持部材に設けられた金属製のブラケットの先端と接触し、かつ、前記樹脂部が前記ガイドと接触することよって前記把持部材に対する前記ケースの移動が係止され、
前記スライダが受電コネクタと接触して前記ケース内に押しこまれると、前記係止部材が移動することによって前記ケースロック機構が解除され、前記ケースに対して前記コネクタ本体および前記把持部材が、略同一軸方向に摺動可能となることを特徴とする給電コネクタ。
【請求項2】
前記係止部材は、溝部を有し、
前記スライダが受電コネクタと接触して前記ケース内に押しこまれると、前記係止部材が移動し、前記ブラケットの先端が前記溝部に沿って移動可能となり、前記ケースロック機構が解除されることを特徴とする請求項1記載の給電コネクタ。
【請求項3】
前記係止部材は、前記ガイドに沿って移動可能であり、
前記金属部は、前記ブラケットの先端を構成する材質の硬さよりも高い硬さを有し、
前記樹脂部は、前記ガイドを構成する樹脂の硬さよりも低い硬さを有する材質からなることを特徴とする請求項2記載の給電コネクタ。
【請求項4】
前記金属部はステンレス製であり、前記樹脂部はポリカーボネイト製であり、
前記ブラケットはアルミニウム製であり、
前記ガイドは、ポリブチレンテレフタレート製であることを特徴とする請求項3記載の給電コネクタ。
【請求項5】
前記把持部材には、減速機構が設けられ、前記ケースに対する前記把持部材および前記コネクタ本体の移動は、前記減速機構を介して行われ、
前記ケースに対して前記把持部材を移動させた際に、前記ケースに対する前記把持部材の移動距離よりも、前記ケースに対する前記コネクタ本体の移動距離が小さくなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の給電コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に用いられ、急速充電用の給電コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題の観点から、化石燃料を用いない電気自動車が注目されている。電気自動車は、駆動用のバッテリーを搭載し、バッテリーに充電された電気によって走行することができる。
【0003】
電気自動車に対して充電を行うためには、通常の家庭用電源から行う方法と、特殊な充電装置を用いて急速充電する方法とがある。家庭用電源から行う方法では、充電電流が比較的小さいため、電流容量の大きなコネクタは不要であるが、充電に長時間を要するため、夜間等自動車を使用しない時間を用いて充電が行われる。一方、長距離の連続運転を行うためには、従来のガソリンスタンドでの給油と同様に、各所に設けられた給電場で急速充電を行う必要がある。この場合、充電電流は100A以上となるため、電流容量の大きなコネクタが必要となる。
【0004】
このような電気自動車用の給電コネクタとしては、たとえば、コネクタ本体と、コネクタ本体を収容するケースと、ケースに取り付けられる把持部材とを具備し、ケースに対して、コネクタ本体および把持部材は、略同一軸方向に摺動可能であり、把持部材に減速機構が設けられ、ケースに対する把持部材およびコネクタ本体の移動は、減速機構を介して行われ、ケースに対して把持部材を移動させた際に、ケースに対する把持部材の移動距離よりも、ケースに対するコネクタ本体の移動距離が小さくなる給電コネクタがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−174643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の給電コネクタは、より小さな力で給電コネクタを受電コネクタに差し込むことが可能である。一方、このようなコネクタにおいては、給電コネクタのケースが確実に受電コネクタに差し込まれた状態を検知し、コネクタ本体同士が接続させるまでは減速機構を機能させないことが望まれる。これは、給電コネクタのケースが受電コネクタに対して嵌っていない状態で減速機構が働くと、実際にコネクタ本体同士が接続される際には、減速機構が働かず、コネクタ同士の接続が困難となるためである。
【0007】
これに対し、給電コネクタのケースが受電コネクタに挿入されるまでは、ケースロック機構によって減速機構を働かせず、ケースが受電コネクタに挿入されたと検知すると、ケースロック機構を解除して、減速機構によってコネクタ本体同士を接続する方法がある。
【0008】
しかし、このような方法において、誤って給電コネクタを落下させたような場合に、当該ロック機構が破損する恐れがある。例えば、給電コネクタのケース側から落下した場合には、ケースは把持部材に対してロックされているため、移動することができない。したがって、この際にケースにかかる衝撃は、ロック機構に対して付与されることとなる。したがって、ケースロック機構には、給電コネクタの落下時にも耐え得る耐衝撃性が必要である。
【0009】
しかし、ケースロック機構を大型化することは、給電コネクタが大型化し、重量増を招くため、取り扱い性が悪化する。したがって、給電コネクタを大型化することなく、落下等に対する耐衝撃性を確保することが望まれる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、ケースに衝撃が加わった場合にも、ケースロック機構の破損を抑制することが可能な電気自動車用の給電コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため本発明は、自動車用の給電コネクタであって、コネクタ本体と、前記コネクタ本体を収容するケースと、前記ケースに取り付けられる把持部材と、前記ケースが受電コネクタに挿入されたことを検知する挿入検知手段と、前記把持部材に対して前記ケースの移動を制限するケースロック機構と、を具備し、前記挿入検知手段は、前記ケースの受電コネクタへの挿入部に形成され、前記ケースの挿抜方向に摺動可能なスライダを具備し、前記ケースロック機構は、係止部材と、樹脂製のガイドを有し、前記係止部材は前記ガイドに沿って移動可能であり、前記係止部材は、金属部と樹脂部とが一体で構成され、前記スライダが前記ケースから突出している状態では、前記金属部が前記把持部材に設けられた金属製のブラケットの先端と接触し、かつ、前記樹脂部が前記ガイドと接触することよって前記把持部材に対する前記ケースの移動が係止され、前記スライダが受電コネクタと接触して前記ケース内に押しこまれると、前記係止部材が移動することによって前記ケースロック機構が解除され、前記ケースに対して前記コネクタ本体および前記把持部材が、略同一軸方向に摺動可能となることを特徴とする給電コネクタである。
【0012】
前記係止部材は、溝部を有し、前記スライダが受電コネクタと接触して前記ケース内に押しこまれると、前記係止部材が移動し、前記ブラケットの先端が前記溝部に沿って移動可能となり、前記ケースロック機構が解除されることが望ましい。
【0013】
前記係止部材は、前記ガイドに沿って移動可能であり、前記金属部は、前記ブラケットの先端を構成する材質の硬さよりも高い硬さを有し、前記樹脂部は、前記ガイドを構成する樹脂の硬さよりも低い硬さを有する材質からなることが望ましい。
【0014】
前記金属部は、ステンレス製であり、前記樹脂部は、ポリカーボネイト製であり、前記ブラケットはアルミニウム製であり、前記ガイドは、ポリブチレンテレフタレート製であってもよい。
【0015】
前記把持部材には、減速機構が設けられ、前記ケースに対する前記把持部材および前記コネクタ本体の移動は、前記減速機構を介して行われ、前記ケースに対して前記把持部材を移動させた際に、前記ケースに対する前記把持部材の移動距離よりも、前記ケースに対する前記コネクタ本体の移動距離が小さくなることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、ケースが受電コネクタに挿入されたことを検知する挿入検知手段が設けられる。挿入検知手段は、ケースが受電コネクタに挿入されたと検知されると、ケースロック機構を解除する。したがって、ケースが完全に受電コネクタに挿入されていない場合に、コネクタ本体が移動することを防止することができる。例えば、ケースの一部が受電コネクタの周縁に当たっているような場合に、コネクタ本体が移動してしまうことがない。したがって、ケースが受電コネクタに完全に挿入される前に、減速機構が働いてしまうことで、その効果が得られなくなることがない。
【0017】
また、係止部材には溝部が設けられ、ケースの挿抜方向に摺動可能なスライダがケース内に押しこまれることで、ケースと把持部材とを係止する係止部材が移動し、ケースロック機構が解除される。したがって、簡易な構造で、確実にケースの充電コネクタへの挿入を検知することができる。
【0018】
また、係止部材の一部には、金属部が形成される。金属部は、通常状態における把持部材のブラケットの先端との接触面となる。このため、ブラケットからの衝撃によって、係止部材が破損することを抑制することができる。
【0019】
また、係止部材は、前述したブラケットとの接触面のみを金属とし、他の部位を樹脂とし、さらに、この樹脂の衝撃強度が、係止部材の移動をガイドするガイド部を構成する樹脂の衝撃強度よりも低い衝撃強度とすることで、ガイドが破損して、係止部材が摺動不能となることを防止することができる。このようにするためには、係止部材が、ステンレスとポリカーボネイトとからなり、ブラケットをアルミニウム製とし、ガイドをポリブチルテレフタレート製とすればよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケースに衝撃が加わった場合にも、ケースロック機構の破損を抑制することが可能な電気自動車用の給電コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】給電コネクタ1を示す図であり、(a)は側面図、(b)は側面断面図。
図2】給電コネクタ1を動作させた状態示す図であり、(a)は側面図、(b)は側面断面図。
図3】給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する状態を示す側面断面図。
図4】(a)は図3における係止部材27近傍の拡大図、(b)は、(a)のJ−J線断面図。
図5】給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する状態を示す側面断面図。
図6】(a)は図5における係止部材27近傍の拡大図、(b)は、(a)のJ−J線断面図。
図7】給電コネクタ1が受電コネクタ33と接続された状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は係止部材27近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、給電コネクタ1を示す概略図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は側面断面図である。なお、本発明では、図1に示す状態を通常状態と称する。また、以下の図においては、ケーブル等の図示を省略する。給電コネクタ1は、主に把持部材3、ケース9、コネクタ本体11を備える。
【0023】
図1(a)、図1(b)に示すように、把持部材3は、一方の端部(後方)に取手5を有する。取手5は、作業者が給電コネクタ1を扱う際に手に持つ部分である。ここで、取手5は、コネクタ本体11の中心軸の延長線(コネクタ本体の移動方向の中心軸)上に少なくとも取手5の一部が配置されるように形成される。このため、把持部材3を押し込んだ際に、コネクタ本体11を接続対象に対してまっすぐに力をかけることができる。このため、給電コネクタ1は取り扱い性に優れる。
【0024】
把持部材3の内部は各種構造が収容可能である。把持部材3の他方の端部(前方)にはケース9が設けられる。把持部材3の前端部近傍は筒状であり、ケース9の一部(後部)は、把持部材3の内部に収容される。把持部材3は、ケース9に対して前後に摺動可能である。
【0025】
ケース9は筒状部材であり、ケース9の前端部には、コネクタ本体11が収容される。コネクタ本体11は、ケース9に対して前後に摺動可能である。なお、ケース9に対する、把持部材3、コネクタ本体11のそれぞれの摺動部には、図示を省略したガイド機構や、摺動範囲を規制するストッパを設けてもよい。
【0026】
ケース9の内部には、アーム13が設けられる。アーム13は、一方の端部近傍がピン23aによってケース9に回動可能に取り付けられる。アーム13の他方の端部近傍は、把持部材3と接合されたブラケット16と連結部15aで連結される。連結部15aでは、アーム13に形成された長穴とブラケット16に形成されたピン等によって、回動可能に両者を連結する。
【0027】
アーム13の略中央部(ピン23aと連結部15aとの間)は、コネクタ本体11と連結部15bで連結される。連結部15bは連結部15aと同様の構成である。すなわち、アーム13が回転することで、アーム13の回動に伴い、コネクタ本体11および把持部材3がケース9に対して直線上に移動可能である。
【0028】
ケース9の内部には、ロック部材17が設けられる。ロック部材17はピン23bによってケース9に回動可能に取り付けられる。ロック部材17の前方側の端部には、ロックピン17aが上方に向けて形成される。ロックピン17aは、ケース9に形成された孔の位置に配置される。
【0029】
ロック部材17の後方側の端部には、下方に向けて嵌合部17bが設けられる。嵌合部17bは嵌合部21と嵌合可能な凸形状である。嵌合部21は、把持部材3側に固定される。通常状態では、嵌合部17b、21は、互いに嵌合せず、嵌合部17bの突起が嵌合部21の突起上に乗った状態となる。また、この状態では、嵌合部17bが嵌合部21によって上方に押し上げられているため、ピン23bを介して、ロックピン17aがケース9(ケース9に設けられた孔)から突出せず、ケース9内に保持される。
【0030】
把持部材3内部には、操作部であるロックレバー7が設けられる。ロックレバー7はピン23cによって把持部材3に回動可能に取り付けられる。ロックレバー7の後方側の端部は把持部材3より外部に突出し、外部から作業者がロックレバー7を操作することができる。ロックレバー7の前方には、ロックピン7aが下方に向けて設けられる。ロックピン7aは、ケース9の一部と接触して、通常は押し上げられた状態となる。ケース9は、通常状態でロックピン7aと接触する部位の前方側に、ロックピン7aが嵌ることが可能な凹部19が設けられる。
【0031】
ケース9の内部には、スライダ25が設けられる。スライダ25の一方の端部は、ケース9の前方に突出する。すなわち、ケース9の前方には、段差が形成され、当該段差からスライダ25が露出する。スライダ25は、軸方向(ケース9の移動方向であって、コネクタの挿抜方向)に摺動可能である。
【0032】
スライダ25の後方であって、ブラケット16の先端部近傍には、係止部材27が設けられる。係止部材27は、ケース9に固定されたガイドレール28内に配置される。係止部材27は、スライダ25と接触し、スライダ25の動作に応じてガイドレール28に設けられた溝状のガイド24に沿って移動可能である。
【0033】
係止部材27は、ケース9と把持部材3とを係止する。すなわち、係止部材27は、ケース9が把持部材3に対して移動することを係止するケースロック機構として機能する。なお、挿入検知手段であるスライダ25およびケースロック機構である係止部材27の機構および動作の詳細については後述する。
【0034】
次に、給電コネクタ1を動作させた状態を説明する。図2は把持部材を移動させた状態の給電コネクタ1を示す図で、図2(a)は側面図、図2(b)は側面断面図である。
【0035】
前述の通り、通常状態では、把持部材3はケース9と係止部材27によって係止されている。この状態から、スライダ25が押し込まれると(図中矢印A方向)、スライダ25によって係止部材27が押されて、係止部材27がガイド24に沿って上方に移動する(図中矢印I方向)。この際、係止部材27の移動によって、把持部材3とケース9とのロックが解除される。
【0036】
ケース9と把持部材3との係止が解除された状態で、把持部材3をケース9に対して前方に移動させると(図中矢印C方向)、把持部材3(ブラケット16)と接合された連結部15aが前方に押し込まれる。アーム13は、連結部15aが前方に移動するため、ピン23aを回転軸として回動する(図中矢印D方向)。アーム13が回動することで、アーム13に連結部15bで連結されたコネクタ本体11は把持部材3と同一方向に移動する(図中矢印E方向)。
【0037】
なお、アーム13に対する連結位置が把持部材3とコネクタ本体11とで異なるため、ケース9に対する把持部材3の移動距離とコネクタ本体11の移動距離とは異なる。具体的には、ピン23aからの連結部15a、15bそれぞれの距離の比が2:1であれば、把持部材3のケース9に対する移動距離を2とすると、コネクタ本体11が1の距離だけ移動する。すなわち、アーム13等の機構が減速機構として機能する。
【0038】
また、把持部材3がケース9に対して前方に移動することで、嵌合部17bと嵌合部21とが互いに噛み合い嵌合する。このため、ロック部材17がピン23bを回転軸として回転する。すなわち、嵌合部17b側が下方に押し下げられることで、ロック部材17が回動し、他方の端部のロックピン17aが上方に押し上げられる。このため、ロックピン17aが孔によってケース9の外方に突出する(図中矢印G方向)。なお、ロック部材17は、常に図2に示す状態(嵌合部17bが押し下げられる状態)に戻ろうとするようにばね等を形成してもよい。
【0039】
また、把持部材3がケース9に対して前方に移動することで、ロックレバー7のロックピン7aが凹部19方向に移動して、ロックピン7aが凹部19に嵌り込む。このため、ロックレバー7がピン23cを回転軸として回動する。すなわち、ロックピン7aが下方に押し下げられることで、ロックレバー7が回動し、他方の端部が上方に押し上げられる(図中矢印F方向)。なお、ロックレバー7は、常に図2に示す状態(ロックピン7aが押し下げられる状態)に戻ろうとするようにばね等を形成してもよい。
【0040】
ロックピン7aが凹部19に嵌り込むことで、把持部材3は、ケース9に対する移動がロックされる。すなわち、ロックレバー7は把持部材3(およびコネクタ本体11)がケース9に対して移動することをロックするロック手段としての機能を奏し、また、ロックレバー7を操作する(ロックレバー7の外部の端部を押し下げる)ことで、当該ロックを解除する解除機構として機能するものである。したがって、コネクタの接続状態を確実に保持し、また、容易に解除することができる。
【0041】
なお、把持部材3(またはコネクタ本体11)とケース9との摺動部には、平行リンクを用いてもよい。平行リンクを用いることで、把持部材3(またはコネクタ本体11)とケース9との摺動時にガタつきが生じにくく、移動範囲も規制可能である。
【0042】
次に、給電コネクタ1の使用方法について説明する。図3図7は、給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する工程を示す図である。まず、図3に示すように、通常状態の給電コネクタ1を対象となる受電コネクタ33に対向させる。具体的には、ケース9の先端を受電コネクタ側の凹部に挿入する。なお、受電コネクタ33内部にはコネクタ本体37が収容されている。この状態では、コネクタ本体11、37の互いの雄雌端子がまだ接続状態とはならないようにわずかにギャップを有した配置となる。
【0043】
なお、ケース9を受電コネクタ33側に配置した状態で、ロックピン17aに対応する位置には受電コネクタ33側の内面には凹部35が形成される。ロックピン17aと凹部35の位置や、前述した雄雌端子の位置を合わせるために、ケース9の外面に、受電コネクタ側との位置決めを行うガイド等を形成してもよい。
【0044】
図4(a)は、スライダ25近傍の拡大図、図4(b)は、図4(a)のJ−J線断面図である。図3の状態では、図4(a)に示すように、スライダ25の先端は受電コネクタ33と接触せず、ケース9の前方へ突出する。なお、スライダ25は、ケース9の内部に設けられた弾性部材(図示省略)によって常に前方に付勢されている。すなわち、スライダ25は、通常時には常にケース9の前方に突出する。
【0045】
ケース9の内部であって、スライダ25の後端部には、係止部材27が設けられる。係止部材27は、溝状のガイド24内に配置される。係止部材27は、弾性部材(図示省略)によって、スライダ25の摺動方向と垂直な方向に押し付けられる(図中下方)。
【0046】
係止部材27の表面には、コネクタの挿抜方向に溝部26が形成される。溝部26は、通常状態において、ブラケット16の先端とはずれた位置に形成される。すなわち、ブラケット16の先端は係止部材27の溝部26以外の部位と接触する。したがって、ブラケット16は、係止部材27によって、それ以上前方に移動することができない。このため、ブラケット16が固定される把持部材3がケース9に対して移動することが規制されて係止される。なお、通常状態における係止部材27のブラケット16との接触面は、金属で構成される金属部27aであり、他の部位が樹脂で構成される樹脂部27bとなる。すなわち、係止部材27は、金属と樹脂とが一体で構成される。
【0047】
スライダ25および係止部材27によって、例えば、ケース9が受電コネクタ33に斜めに挿入された場合や、ケース9が受電コネクタ33の周縁部に接触した場合に、ケース9に対して把持部材3が前方に移動してしまうことがない。すなわち、ケースロック機構である係止部材27がロック状態においては、把持部材3を前方に押し込んだ際に、ケース9が把持部材3の内方に押し込まれることがない。
【0048】
次に、図5に示すように、給電コネクタ1の把持部材を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)と、ケース9の段差が受電コネクタ33の周縁部に当たる。ケース9の段差部には、スライダ25が突出しているため、スライダ25は受電コネクタ33の周縁部に接触する。
【0049】
したがって、図6(a)に示すように、スライダ25は、弾性部材(図示省略)による前方への押し付け力に対抗して後方(ケース9内部)に押し込まれる(図中矢印A方向)。スライダ25の後端は、係止部材27に設けられたテーパ部と接触する。
【0050】
スライダ25が後方に移動すると(図中矢印A方向)、スライダ25の後端と係止部材27のテーパ部とが摺動し、係止部材27の移動方向が変換される。すなわち、係止部材27は、スライダ25の摺動方向と略垂直な方向に、弾性部材(図示省略)による押し付け力に対抗して移動する(図中矢印I方向)。係止部材27が移動すると、図6(b)に示すように、ブラケット16の先端位置と、溝部26の位置が一致する。したがって、係止部材27とブラケット16との係止状態が解除される。
【0051】
ここで、通常状態において、例えばケース9側から給電コネクタ1を落下させた場合には、ケースロック機構が働いているため、ケース9は把持部材3に対して移動することがない。すなわち、ブラケット16の先端と係止部材27とが干渉することで、ケース9は把持部材3に対して固定される。したがって、ケース9に生じた衝撃は、ケースに固定されたガイドレール28から、係止部材27を介してブラケット16に伝わる。そのため、係止部材27には、ガイドレール28側(前方側)からとブラケット16側(後方側)から圧縮力が作用する。係止部材27及び係止部材27に接するガイド24及びブラケット16は、このような力が作用した場合にも、各々が破損しないとともに、係止部材27の摺動性を確保する必要がある。
【0052】
これらの部材は、軽量化を目的として、樹脂材料で形成されることが好ましく、ガイド24が形成されるガイドレール28も樹脂材料で形成されることが好ましい。しかしながら、ブラケット16には力の作用する部品が多く搭載されるため強度が要求され、金属材料で構成されることが好ましい。
【0053】
このような材料構成の中で、係止部材27を金属材料のみで形成した場合に、落下試験を行うと、ブラケット16が大きく変形(破損)し、係止部材27の摺動性が確保されないこことがわかった。また、係止部材27を樹脂材料のみで形成した場合には、係止部材27自体が破損することがわかった。
【0054】
落下時に、ブラケット16の変形を防止し、かつ係止部材27の破損を防止するためには、係止部材27のブラケット16先端との接触面には、金属部27aが設け、ガイド24側は樹脂で構成することが有効であることがわかった
【0055】
なお、金属部27aを構成する金属は、ブラケット16の先端を構成する材質の硬さよりも高い硬さを有することが望ましい。金属部27aが凹むと、ブラケット16の先端が接触した状態で、係止部材27の凹みにブラケット16の先端が嵌り込み、係止部材27が移動できなくなるためである。なお、ブラケット16の先端が多少凹んだとしても、係止部材27は移動可能であるため、ケースロック機構として機能させることができる。
【0056】
また、ブラケット16との接触面で受けた衝撃は、ガイド24にも伝達される。この際、係止部材27のガイド24との摺動面を構成する樹脂(樹脂部27bの樹脂)は、ガイド24を構成する樹脂の硬さよりも低い硬さを有する材質からなることが望ましい。ガイド24の側面が凹むと、係止部材27が凹みに嵌り込み、係止部材27が移動できなくなるためである。なお、係止部材27の側面が多少凹んだとしても、係止部材27はガイド24に対して摺動可能であるため、ケースロック機構として機能させることができる。
【0057】
このような関係となるような材質の組み合わせとしては、例えば、係止部材27の金属部27aをステンレス製とし、樹脂部27bをポリカーボネイト製とし、ブラケット16をアルミニウム製とし、ガイド24を、ポリブチレンテレフタレート製とすればよい。
【0058】
なお、ケース9が受電コネクタ33に挿入されたかどうかを検知する挿入検知手段としては、図示したようなスライダ25に限られず、ケース9が挿入された際に動作する機構であればいずれの方法でも良い。また、挿入検知手段により検知された際に、ケースロック機構を解除する機構としては、図示したような係止部材27である必要はなく、挿入検知手段に応じて、係止状態を解除可能であれば、いずれの方法でも良い。
【0059】
このように、ケース9が完全に受電コネクタ33に挿入されることで、ケース9と把持部材3との係止状態が解除され、互いに移動することが可能となる。
【0060】
次に、図7(a)に示すように、さらに、給電コネクタ1の把持部材3を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)。前述の通り、ケース9は受電コネクタ33と接触するため、それ以上押し込むことができない。一方、ケース9に対して、把持部材3の係止状態は解除されている。すなわち、図7(b)に示すように、ブラケット16の先端は溝部26に沿って前方に移動する(図中矢印C方向)。
【0061】
このため、把持部材3をケース9に対して前方に移動させることができる。この際、把持部材3の移動に伴い、コネクタ本体11がケース9に対して前方に移動する(図中矢印E方向)。したがって、コネクタ本体11がケース9前方より突出し、受電コネクタ側のコネクタ本体37と接続される。
【0062】
ここで、ケース9に対する把持部材3とコネクタ本体11の移動距離の比が2:1の場合、コネクタ本体11とコネクタ本体37とが接続される接続代に対して2倍の移動距離で把持部材を押し込むことで、コネクタ本体11をコネクタ同士が接続可能な距離だけ移動させることができる。すなわち、コネクタ同士の接続に要する力(すなわち接続抵抗)の半分の力で把持部材3を押し込めば、コネクタ同士を接続させることができる。なお、減速機構の減速比は、接続抵抗や作業性を考慮して適宜設定される。
【0063】
また、図7(a)に示す状態では、前述の通り、ロックピン17aが凹部35に嵌り込む。このため、受電コネクタ33と給電コネクタ1とが接続された状態でロックされる。また、ロックレバー7の端部のロックピン7aが凹部19に嵌り込む。このため、把持部材3がケース9に対して移動することがロックされる。したがって、図示を省略したケーブル等が引っ張られたとしても、給電コネクタ1が容易に受電コネクタ33から外れることがない。
【0064】
なお、給電コネクタ1を外す場合には、ロックレバー7の端部を押し下げることでロックピン7aを押し上げ、この状態で把持部材3を引き戻すことで、嵌合部17bが嵌合部21上に移動し、これによりロックピン17aによるロックが解除される。このため、容易に給電コネクタ1を取り外すことができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の給電コネクタ1によれば、大きな力を要せず、容易に受電コネクタと接続することができる。特に、給電コネクタ1は、作業者が行う把持部材の押し込み動作が、コネクタ本体11の接続方向と一致するため、感覚的に作業者が接続作業を容易に把握することができる。
【0066】
また、ケース9と把持部材3とを係止するケースロック機構を設けることで、通常状態においては、ケース9に対して把持部材3が移動することがない。したがって、ケース9が完全に受電コネクタ33に挿入されない状態で、把持部材3がケース9に移動してしまうことがない。
【0067】
また、ケースロック機構を構成する係止部材27の一部に金属部27aを設けることで、ブラケット16の先端との衝撃によって、係止部材27の破損や凹みの発生を抑制することができる。特に、金属部27aを構成する金属が、ブラケット16の先端を構成する材質の衝撃強度よりも高い衝撃強度であれば、より確実に、係止部材27の破損や凹みの発生を抑制することができる。したがって、係止部材27が移動しなくなることを抑制することができる。
【0068】
また、係止部材27全体を金属製とせず、樹脂部27bを設けることで、軽量化およびコストダウンを達成できる。この際、樹脂部27bを構成する樹脂よりも、ガイド24を構成する樹脂の硬さを大きくすることで、ガイド24の破損や凹みの発生を抑制することができる。
【0069】
また、ケース9に対する把持部材3およびコネクタ本体11の移動に対して、減速機構を設けることで、コネクタ同士の接続に要する力を低減することができる。さらに、前述のケースロック機構と併用することで、ケース9が受電コネクタ33に挿入される前に減速機構が働くことがなく、ケース9が完全に受電コネクタに挿入された後に、当該減速機構を利用して、コネクタ本体同士を接続することができる。
【0070】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
たとえば、把持部3の形状、ケース9内部の部材の各構成の配置や形状は図示した例に限られない。
【符号の説明】
【0072】
1………給電コネクタ
3………把持部材
5………取手
7………ロックレバー
7a………ロックピン
9………ケース
11………コネクタ本体
13………アーム
15a、15b………連結部
16………ブラケット
17………ロック部材
17a………ロックピン
17b………嵌合部
19………凹部
21………嵌合部
23a、23b、23c………ピン
24………ガイド
25………スライダ
26………溝部
27………係止部材
27a………金属部
27b………樹脂部
33………受電コネクタ
35………凹部
37………コネクタ本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7