(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718859
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】モモシンクイガの性フェロモン物質及びこれを含む誘引剤
(51)【国際特許分類】
A01N 49/00 20060101AFI20150423BHJP
A01P 19/00 20060101ALI20150423BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
A01N49/00
A01P19/00
A01M1/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-135694(P2012-135694)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-177359(P2013-177359A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-135171(P2011-135171)
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-17007(P2012-17007)
(32)【優先日】2012年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
(72)【発明者】
【氏名】船崎 和則
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 美与志
【審査官】
太田 千香子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−077004(JP,A)
【文献】
NZ 521850 A
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 49/00
A01N 63/00
A01N 35/02
A01N 27/00
A01M 1/02
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Z)−7−トリコセンと(Z)−13−エイコセン−10−オンを少なくとも含んでなるモモシンクイガの性フェロモン物質。
【請求項2】
請求項1に記載の性フェロモン物質を少なくとも含んでなるモモシンクイガの性誘引剤。
【請求項3】
請求項1に記載の性フェロモン物質を少なくとも含んでなるモモシンクイガの交信撹乱剤。
【請求項4】
請求項1に記載の性フェロモン物質を圃場に放出するステップを含むモモシンクイガの防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹害虫モモシンクイガ(
Carposina sasakii)の性フェロモン物質及びこれを含む誘引剤、交信撹乱剤、防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モモシンクイガは、リンゴやモモ等のバラ科果樹の重要害虫である。幼虫が果実部位に食入するため被害許容水準が低く、食入した幼虫は殺虫剤による防除が不可能となる。本種は年1〜2化であるが、羽化時期のバラつきが大きく、6月から9月にかけて連続的に成虫が発生するため、絶え間ない薬剤散布を余儀なくされている。しかし、殺虫剤の散布は、食の安全性や環境への負荷の観点から、必要最小限にとどめることが望ましい。そのため、殺虫剤散布に代わる新たな防除技術の開発が重要である。
【0003】
殺虫剤散布に代わる防除技術として、フェロモンを利用した害虫防除が挙げられる。例えば、鱗翅目害虫の発生予察には、性フェロモントラップが広く利用されている。性フェロモンとは、雌成虫が分泌する化学物質であり、同種雄成虫に対して種特異的に誘引作用を示す。性フェロモン物質の化学構造を明らかにして、誘引剤として用いることにより、効率的な発生消長調査を行うことが可能となる。発生予察によって、適期防除が可能となるため、殺虫剤の過剰な散布を防ぐ効果が期待される。更に、この性フェロモンを用いて大量の雄を誘殺する大量誘殺法、雌雄の交尾行動を撹乱する交信撹乱法により、害虫の防除を行うことも可能である。
【0004】
モモシンクイガの性フェロモンは、(Z)−13−エイコセン−10−オン及び(Z)−12−ノナデセン−9−オンの20:1(質量比)の混合物と同定されている(非特許文献1〜2)。その後、第2成分(Z)−12−ノナデセン−9−オンの性フェロモン活性に再現性が見られないこと、一方で(Z)−13−エイコセン−10−オンも(Z)−12−ノナデセン−9−オンも含まない誘引剤には、本種が誘引されないことが確認された(非特許文献3〜4)。これらの知見に基づき、本種の誘引には(Z)−13−エイコセン−10−オン単一成分の使用が実用的と考えられ、今日における本種の性フェロモントラップや交信撹乱剤は、(Z)−13−エイコセン−10−オン単一成分が有効成分として利用されている。
【0005】
しかし、モモシンクイガの性フェロモントラップは、他の鱗翅目害虫のトラップと比べると誘引性が低く、成虫が発生しているにもかかわらずトラップされない場合がある。そのため、より誘引力の高い性フェロモントラップの開発が強く望まれていた。また、本種は輸出規制の対象害虫であり、その被害許容水準が極めて厳しいことから、より防除効果の優れた防除方法の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tamaki et al., Applied Entomology and Zoology. 12(1):60-68(1977)
【非特許文献2】本間ら、日本応用動物昆虫学会誌22(2):87-91(1978)
【非特許文献3】白崎ら、日本応用動物昆虫学会誌23(4) : 240-245(1979)
【非特許文献4】Han et al., Journal of Asia-Pacific Entomology. 3(2):83-88(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、発生予察、大量誘殺、交信撹乱に利用が期待され、尚且つ、従来の性フェロモン物質よりも誘引性の高い、モモシンクイガの新たな性フェロモン物質及びこれを有効成分とする性誘引剤、交信撹乱剤、防除方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来、モモシンクイガの性フェロモン物質として報告されてきた(Z)−13−エイコセン−10−オン単一成分に、本発明で同定された新たな性フェロモン物質を添加すると、誘引性が飛躍的に増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、具体的には、(Z)−7−トリコセンと(Z)−13−エイコセン−10−オンとを少なくとも含んでなるモモシンクイガの性フェロモン物質、これを有効成分とするモモシンクイガの性誘引剤及び交信撹乱剤、並びにこれを利用したモモシンクイガの防除方法、例えば、このモモシンクイガの性フェロモン物質を圃場に放出するステップを含むモモシンクイガの防除方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より多くのモモシンクイガの雄成虫を特異的に誘引し、より詳細な発生状況を知るのに有効な性誘引剤を得ることができる。また、大量誘殺や、交信撹乱等への応用により、直接的に本種を防除することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】モモシンクイガ抽出液のEAD(electroantennographic detection)チャートを
図1(A)、GC(gas chromatography)チャートを
図1(B)に示す。
【
図2】モモシンクイガ抽出液の成分(1)のマススペクトルを示す。
【
図3】モモシンクイガ抽出液の成分(2)のマススペクトルを示す。
【
図4】モモシンクイガ抽出液の成分(3)のマススペクトルを示す。
【
図5】モモシンクイガ抽出液の成分(4)のマススペクトルを示す。
【
図6】モモシンクイガ抽出液の成分(5)のマススペクトルを示す。
【
図7】モモシンクイガ抽出液の成分(6)のマススペクトルを示す。
【
図10】合成化合物(Z)−7−トリコセンのマススペクトルを示す。
【
図11】合成化合物(Z)−5−ペンタコセンのマススペクトルを示す。
【
図12】合成化合物(Z)−12−ノナデセン−9−オンのマススペクトルを示す。
【
図13】合成化合物(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンのマススペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
モモシンクイガ抽出液のEADチャートを
図1(A)、GCチャートを
図1(B)に示す。抽出液中には、羽化から3〜5日の雄成虫の触角が電位応答を示す7成分{成分(1)〜(6)及び(Z)−13−エイコセン−10−オン(「Z13−20−10:Kt」とも略す)}が見出された。なお、
図1(B)では、成分(5)と(6)のピークは、検出限界以下であり、検出されていない。この抽出液中の成分をGC−MSにて分析した結果、成分(1)〜(6)は、それぞれドコサン、トリコサン、(Z)−7−トリコセン、(Z)−5−ペンタコセン、(Z)−12−ノナデセン−9−オン及び(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンであり、その混合比率は(Z)−13−エイコセン−10−オンが100に対して、それぞれ6:341:432:36:2:8(質量比)であることが分かった。
【0012】
本発明のモモシンクイガの性フェロモン物質は、(Z)−7−トリコセン及び(Z)−13−エイコセン−10−オンを含んでなる。
(Z)−7−トリコセンは、アルケニルクロリドである(Z)−7−トリデセニルクロリドをテトラヒドロフラン中で金属マグネシウムと反応させたグリニヤール試薬と、1−ブロモデカンとのクロスカップリング反応により合成できる。
(Z)−13−エイコセン−10−オンは、例えば、特開昭55−59129号公報により合成できる。
【0013】
(Z)−7−トリコセンと(Z)−13−エイコセン−10−オンとの混合割合は、雄成虫が反応を示す範囲であれば特に限定されないが、質量比で、好ましくは10:100〜10000:100、より好ましくは100:100〜1000:100、更に好ましくは200:100〜800:100である。
【0014】
本発明のモモシンクイガの性フェロモン物質には、(Z)−7−トリコセン及び(Z)−13−エイコセン−10−オンに加えて、必要に応じて、上記抽出液中の他の成分であるドコサン、トリコサン、(Z)−12−ノナデセン−9−オン、(Z)−5−ペンタコセン、及び(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンからなる群から選ばれる1種類以上を含むことができる。
ドコサン及びトリコサンは、市販品の試薬をそのまま使用することができる。
(Z)−12−ノナデセン−9−オンは、アルケニルクロリドである(Z)−3−デセニルクロリドをテトラヒドロフラン中で、金属マグネシウムと反応させたグリニヤール試薬とノナン酸無水物との反応により合成できる。
(Z)−5−ペンタコセンは、アルケニルクロリドである(Z)−7−ドデセニルクロリドをテトラヒドロフラン中で、金属マグネシウムと反応させたグリニヤール試薬と公知の1-ブロモトリデカンとのクロスカップリング反応により合成できる。
(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンは、公知のアルケニルクロリドである(Z)−3−デセニルクロリドをテトラヒドロフラン中で金属マグネシウムと反応させたグリニヤール試薬と、公知のウンデカン酸からから調製したウンデカン酸無水物との反応により合成できる。
【0015】
ドコサン、トリコサン、(Z)−5−ペンタコセン、(Z)−12−ノナデセン−9−オン及び(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンからなる群から選ばれる1種類以上の含有量は、たとえば(Z)−13−エイコセン−10−オンを100としたときの質量比で、好ましくは各々0.1〜100、100〜1000、1〜100、0.1〜100及び0.1〜100であり、更に好ましくは各々1〜10、300〜400、30〜40、1〜10及び1〜10である。
【0016】
本発明のモモシンクイガの性フェロモン物質を含む性誘引剤及び交信撹乱剤には、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ハイドロキノン、ビタミンE等の酸化防止剤や、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tertブチル−5'-メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を加えても良く、(Z)−7−トリコセンと(Z)−13−エイコセン−10−オンの合計量に対して、例えば、酸化防止剤は1〜5質量%であり、紫外線吸収剤は1〜5質量%である。
【0017】
本発明の性誘引剤及び交信撹乱剤は、有効成分の一定量の放出を長期間にわたり持続させることができれば何でもよく、特に限定されないがゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等の放出量制御機能を有する物質からなるキャップ、チューブ、ラミネート製の袋、カプセル、アンプル等の容器に充填して用いられる。
容器内に担持される性フェロモン物質量は、性誘引剤に関しては誘引活性を示す範囲であれば特に限定されないが、例えば10μg〜100mgの範囲が好ましい。交信撹乱剤に関しては、野外で雄が雌のフェロモンを嗅ぎ分けられなくなる気中フェロモン濃度が確保できれば特に限定されないが、例えば製剤一つあたり10mg以上が好ましい。
【0018】
モモシンクイガの防除方法に性フェロモン物質を利用することができ、例えば、性誘引剤又は交信撹乱剤を圃場に配置することを少なくとも含む。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
<モモシンクイガ抽出液の準備>
温度条件を25℃にて一定とし、光周期を16時間明期、8時間暗期に調節した飼育条件下において、モモシンクイガの交尾時間帯を調査したところ、暗期開始から5〜6時間後にコーリング行動及び交尾時間帯のピークがあることが分かった。この時間帯に、未交尾雌成虫(2〜3日齢)よりフェロモン腺を顕微鏡下で摘出し、n−ヘキサンにて30分間浸漬した。その後、抽出液から虫体組織を濾過により除去したものをモモシンクイガ抽出液とした。
【0020】
<モモシンクイガ抽出液の分析>
上記モモシンクイガ抽出液のGC−EAD(gas chromatographiy−electroantennographic detection)チャートを
図1に示す。
抽出液中には、雄成虫の触角が電位応答を示す7成分(成分(1)〜(6)及び(Z)−13−エイコセン−10−オン)が見出された。この抽出液中の成分をGC−MSにて分析した結果、成分(1)〜(6)は、ノルマル炭化水素、モノエン炭化水素、モノエンケトンからなることが明らかとなり、更にモノエン成分の不飽和結合部位については、ジメチルジスルフィド(DMDS)付加物の構造解析を行った。最終的に、各種合成物とのリテンションタイム、マススペクトルとの比較により、成分(1)〜(6)はそれぞれドコサン、トリコサン、(Z)−7−トリコセン、(Z)−5−ペンタコセン、(Z)−12−ノナデセン−9−オン及び(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンであり、その混合比率は(Z)−13−エイコセン−10−オンが100に対して、それぞれ6:341:432:36:2:8(質量比)であることが分かった。
図2〜7にモモシンクイガ抽出液中の成分(1)〜(6)のマススペクトルを、
図8〜13に市販品及び合成化合物のマススペクトルそれぞれを示す。
【0021】
<実施例1〜2、比較例1>
(Z)−7−トリコセン及び(Z)−13−エイコセン−10−オンをモモシンクイガが保有する天然組成(質量比432:100)にて混合し、これら2成分をイソプレンよりなるゴムキャップに5.32mg担持させたものを実施例1の誘引剤とした。
また、(Z)−13−エイコセン−10−オン、ドコサン、トリコサン、(Z)−7−トリコセン、(Z)−5−ペンタコセン、(Z)−12−ノナデセン−9−オン及び(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンの合成化合物を同様に天然組成(質量比100:6:341:432:36:2:8)にて混合し、同様にゴムキャップに9.25mg担持させたものを実施例2の誘引剤とした。
さらに、(Z)−13−エイコセン−10−オンの1成分のみを担持させたゴムキャップを比較例1の誘引剤とした。
誘引剤は一晩放置後、白色粘着型トラップに取り付けた。白色粘着型トラップは、
図14に示すように、屋根と底板からなり、虫の侵入口が狭く作られている。そして、底板上面に粘着物質が貼付され、粘着面に誘引剤 Aを直に載せて使用する。すなわち、誘
引剤に近づいてきた虫のみを捕獲する構造となっており、対象外の虫の飛び込みをできるだけ排除する構造となっている。
各誘引剤がセットされたトラップを、モモシンクイガが生息する果樹園にそれぞれ取り付けた。各トラップに誘殺された雄成虫数は1〜2日おきに計測した。実施例1の誘引剤における総誘殺数を100、他の誘引剤における誘殺数はその相対値とし、その結果を表1に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例1の誘引剤には、比較例1の誘引剤の10倍以上のモモシンクイガ雄成虫の誘殺が認められ、その差は統計的にも有意であった。(Z)−7−トリコセンを(Z)−13−エイコセン−10−オンに加えたことにより、誘引性が著しく増強されたことから、これら2成分混合物が本種の性フェロモン物質であることが分かる。
実施例2の誘引剤には、比較例1の誘引剤と比べると有意に多くの雄成虫が誘殺された。また、実施例1の誘引剤と比較すると誘殺数はやや少なかったが、その差は統計的に有意ではなかった。このことから実施例2の誘引剤に関しても、(Z)−7−トリコセンにより誘引性が増大したこと、その他のドコサン、トリコサン、(Z)−5−ペンタコセン、(Z)−12−ノナデセン−9−オン及び(Z)−7−ヘネイコセン−11−オンは誘引性にあまり影響を与えないことが分かる。
【0024】
<実施例3、比較例2〜3>
(Z)−7−トリコセン及び(Z)−13−エイコセン−10−オンをモモシンクイガが保有する天然組成(質量比432:100)にて混合し、これら2成分をポリエチレンよりなる細管に65mg担持させたものを実施例3の交信撹乱剤とした。
また、(Z)−13−エイコセン−10−オンの1成分のみを65mg担持させたポリエチレン細管を比較例2の交信撹乱剤とした。
実施例3の交信撹乱剤を、モモシンクイガの生息するリンゴ園に、越冬世代成虫が発生する以前に150本/10aの密度で設置し、この圃場を実施例3のモモシンクイガ防除園とした。
また、比較例2の交信撹乱剤を、上記と同様に設置したリンゴ園を比較例2のモモシンクイガ防除園とした。
さらに、交信撹乱剤を全く設置しないリンゴ園を比較例3のモモシンクイガ防除園とした。リンゴの収穫時期に、各々のリンゴ園におけるモモシンクイガの被害果率を調査し、その結果を表2に示した。なお、被害果率は、{(被害果数)/(調査果数)}×100の式で算出できる。調査果数は、16,949個であった。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例3のモモシンクイガ防除園の被害果率は26.8%であり、比較例2の40.1%および比較例3の86.4%を大きく下回る数値であった。(Z)−7−トリコセンを(Z)−13−エイコセン−10−オンに加えたことにより、交信撹乱効果が著しく増強されたことから、これら2成分混合物が本種の防除において優れた性能を示すことが分かる。