(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.リチウム電池用電解液
本発明のリチウム電池用電解液は、下記一般式(1)で表されるメソイオン化合物を含有することを特徴とする。
【0023】
【化2】
(上記一般式(1)中、R
1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、下記一般式(2)、(3)、又は(4)のいずれかにより表される基である。)
−C
lH
2l−(OCH
2)
m−C
nH
2n+1 一般式(2)
(上記一般式(2)中、l及びnは0以上の実数、mは1以上の実数であり、且つ、l、m、及びnの和は8以下である。)
−C
xH
2x−(CH
2OCH
2)
y−C
zH
2z+1 一般式(3)
(上記一般式(3)中、x及びzは0以上の実数、yは1以上の実数であり、且つ、x、2y、及びzの和は8以下である。)
−C
pH
2p−(C
2H
4OCH
2)
q−C
rH
2r+1 一般式(4)
(上記一般式(4)中、p及びrは0以上の実数、qは1以上の実数であり、且つ、p、3q、及びrの和は8以下である。)
【0024】
メソイオン化合物とは、単一の共有結合構造やイオン構造では十分に表現することができない複素五員環(あるいは六員環)化合物で、環内に6π電子を有するものをいう。テトラゾリウムメソイオン構造を有する本発明に用いられるメソイオン化合物は、窒素4原子と炭素1原子からなる5員環を有し、負電荷を環外酸素に押しだすことで、芳香族性を獲得し安定化していると考えられる。本発明に用いられるテトラゾリウムメソイオン化合物は、分極によって分子内塩、すなわちイオン性となり、アルキル基の選択により室温で液体となる。また分子内塩のため、分子間塩と比べ沸点が低く、蒸留が容易である。
【0025】
上述したように、従来のイオン液体を用いた電解質はリチウム金属に対して極めて不安定である。本発明者らが検討した結果、従来の電解質がリチウム金属に対して不安定である理由は、従来のイオン液体の化学構造に因るものであることが明らかとなった。
本発明者らは、鋭意努力の結果、上記一般式(1)で表されるメソイオン化合物を用いた電解液が、リチウム金属に対し極めて優れた安定性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0026】
従来のメソイオン化合物、例えば、後述する比較例1に示す1−エチル−3−メチルテトラゾリウム−5−オレート(以下、EMTOと称する場合がある。)は、カチオン部分の1位にエチル基を有する。エチル基のように剛直且つ短い炭化水素基を有するメソイオン化合物においては、負電荷を帯びたアニオン部分(−O
−部分)がリチウム金属表面に接触しやすく、そのため、メソイオン化合物とリチウム金属とが反応しやすい。
一方、本発明に使用されるメソイオン化合物は、カチオン部分の1位の側鎖にエーテル基を有することが主な特徴の1つである。エーテル基を有する側鎖は、炭化水素基のみからなる側鎖よりも、化学構造の観点から柔軟性が高いため、当該側鎖のエーテル酸素原子が当該アニオン部分(−O
−部分)の酸素原子よりもリチウム金属表面により近づく。その結果、メソイオン化合物のアニオン部分とリチウム金属が接触及び反応しにくくなり、当該反応によるメソイオン化合物の分解が生じにくくなる。
【0027】
上記一般式(1)中、R
2は、上記一般式(2)、(3)、又は(4)に示すような、脂肪族炭化水素基がエーテル基で直列に連結された構造であれば、特に限定されない。ただし、ここでいう脂肪族炭化水素基の総炭素原子数は1〜8である。総炭素原子数が9以上である場合には、置換基が長すぎるため、粘性が高くなり、イオン伝導性が低下するおそれがある。なお、一般式(2)において総炭素原子数とはl、m、及びnの和と等しく、一般式(3)において総炭素原子数とはx、2y、及びzの和と等しく、一般式(4)において総炭素原子数とはp、3q、及びrの和と等しい。また、R
2における酸素原子の数は1以上であるが、その上限は上記一般式(2)、(3)、又は(4)の化学構造に従うものであり、R
2における総炭素原子数が決まれば自ずと決定されるものである。
R
2の総炭素原子数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。R
2の総炭素原子数は、7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
上記一般式(2)、(3)、又は(4)に示すような直鎖の置換基R
2を有することにより、メソイオン化合物のアニオン部分をリチウム金属表面から遠ざける効果がより発揮される。
【0028】
上記一般式(1)中、R
2は、メトキシメチル基(−CH
2OCH
3)、2−メトキシエチル基(−C
2H
4OCH
3)、3−メトキシプロピル基(−C
3H
6OCH
3)、4−メトキシブチル基(−C
4H
8OCH
3)、メトキシメトキシメチル基(−CH
2OCH
2OCH
3)、(2−メトキシエトキシ)メチル基(−CH
2OC
2H
4OCH
3)、2−(メトキシメトキシ)エチル基(−C
2H
4OCH
2OCH
3)、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基(−C
2H
4OC
2H
4OCH
3)、及び2−(メトキシメトキシメトキシ)エチル基(−C
2H
4OCH
2OCH
2OCH
3)からなる群より選ばれる1つの基であることが好ましい。これらの中でも、R
2は2−メトキシエチル基(−C
2H
4OCH
3)がより好ましい。
【0029】
本発明に係るリチウム電池用電解液は、上記メソイオン化合物の他に、さらに支持塩としてリチウム塩を含有することが好ましい。リチウム塩としては、例えばLiOH、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4及びLiAsF
6等の無機リチウム塩;LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2(Li−TFSA)、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiC(SO
2CF
3)
3等の有機リチウム塩が挙げられる。このようなリチウム塩は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
リチウム電池用電解液中のリチウム塩の濃度は、0.10〜2.4mol/kgであることが好ましい。リチウム塩濃度が0.10mol/kg未満であるとすると、リチウム塩濃度が低すぎ、リチウムイオンの量が少なすぎるため、リチウム輸送に劣るおそれがある。一方、リチウム塩濃度が2.4mol/kgを超えるとすると、リチウム塩濃度が高すぎるため、電解液の粘度が高くなりすぎる結果、リチウム輸送に劣るおそれがある。
リチウム電池用電解液中のリチウム塩の濃度は、0.32mol/kg以上であることがより好ましく、0.5以上mol/kgであることがさらに好ましい。また、リチウム電池用電解液中のリチウム塩の濃度は、1.4mol/kg以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明に係るリチウム電池用電解液は、上記メソイオン化合物及びリチウム塩の他に、非水系電解質を含んでいてもよい。
非水系電解質としては、非水系電解液及び非水ゲル電解質を用いることができる。
非水系電解液は、通常、上述したリチウム塩及び非水溶媒を含有する。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びこれらの混合物等を挙げることができる。また、溶存した酸素を効率良く反応に用いることができるという観点から、上記非水溶媒は、酸素溶解性が高い溶媒であることが好ましい。非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5〜3mol/kgの範囲内である。
【0032】
また、本発明に用いられる非水ゲル電解質は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものである。例えば、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加し、ゲル化することにより、得ることができる。本発明においては、例えば、LiTFSA(LiN(CF
3SO
2)
2)−PEO系の非水ゲル電解質を用いることができる。
【0033】
本発明に係るリチウム電池用電解液の用途は、リチウム電池材料としての用途であれば特に限定されない。本発明に係るリチウム電池用電解液は、例えば、電極間においてイオンを交換する電解質としても使用できるし、電極内のイオン伝導性を高めるための電極用電解質としても使用できる。
本発明に係るリチウム電池用電解液が用いられる電池の種類は、特に限定されない。本発明に係るリチウム電池用電解液は、例えば、リチウム空気電池にも使用できるし、リチウム二次電池にも使用できる。
【0034】
2.リチウム電池
本発明のリチウム電池は、少なくとも正極、負極、並びに、当該正極及び当該負極の間に介在する電解質を備えるリチウム電池であって、前記正極、前記負極、及び前記電解質の少なくともいずれか1つが、上記リチウム電池用電解液を含むことを特徴とする。
【0035】
図1は、本発明に係るリチウム電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。なお、本発明に係るリチウム電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
リチウム電池100は、正極活物質層2及び正極集電体4を備える正極6と、負極活物質層3及び負極集電体5を備える負極7と、正極6及び負極7に挟持される電解質1を有する。
本発明においては、正極、負極、及び電解質の少なくともいずれか1つが、上述した本発明に係るリチウム電池用電解液を含む。以下、本発明に係るリチウム電池を構成する正極、負極、及び電解質、並びに本発明に係るリチウム電池に好適に用いられるセパレータ及び電池ケースについて、詳細に説明する。
【0036】
本発明に用いられる正極は、好ましくは正極活物質を有する正極活物質層を備え、通常、これに加えて、正極集電体、及び当該正極集電体に接続された正極リードを備える。なお、本発明に係るリチウム電池がリチウム空気電池である場合には、上記正極の替わりに、空気極層を含む空気極を有する。
【0037】
以下、正極として、正極活物質層を備える正極を採用した場合について説明する。
本発明に用いられる正極活物質としては、具体的には、LiCoO
2、LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2、LiNiPO
4、LiMnPO
4、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiCoMnO
4、Li
2NiMn
3O
8、Li
3Fe
2(PO
4)
3及びLi
3V
2(PO
4)
3等を挙げることができる。これらの中でも、本発明においては、LiCoO
2を正極活物質として用いることが好ましい。
【0038】
本発明に用いられる正極活物質層の厚さは、目的とするリチウム電池の用途等により異なるものであるが、10〜250μmであるのが好ましく、20〜200μmであるのがより好ましく、30〜150μmであるのがさらに好ましい。
【0039】
正極活物質の平均粒径としては、1〜50μmであるのが好ましく、1〜20μmであるのがより好ましく、3〜5μmであるのがさらに好ましい。正極活物質の平均粒径が小さすぎると、取り扱い性が悪くなる可能性があり、正極活物質の平均粒径が大きすぎると、平坦な正極活物質層を得るのが困難になる場合があるからである。なお、正極活物質の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される活物質担体の粒径を測定して、平均することにより求めることができる。
【0040】
正極活物質層は、必要に応じて導電性材料及び結着剤等を含有していても良い。
本発明に用いられる導電性材料としては、正極活物質層の導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等を挙げることができる。また、正極活物質層における導電性材料の含有量は、導電性材料の種類によって異なるものであるが、通常1〜10質量%である。
【0041】
本発明に用いられる結着剤としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。また、正極活物質層における結着剤の含有量は、正極活物質等を固定化できる程度の量であれば良く、より少ないことが好ましい。結着剤の含有量は、通常1〜10質量%である。
【0042】
本発明に用いられる正極集電体は、上記の正極活物質層の集電を行う機能を有するものである。上記正極集電体の材料としては、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄及びチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウム及びSUSが好ましい。また、正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、中でも箔状が好ましい。
【0043】
正極活物質層が、さらに正極用電解質を含有していてもよい。この場合、正極用電解質としては、本発明に係るリチウム電池用電解液が使用できる他、後述する電解液、ゲル電解質、固体電解質等も使用できる。
【0044】
本発明に用いられる正極を製造する方法は、上記の正極を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。なお、正極活物質層を形成した後、電極密度を向上させるために、正極活物質層をプレスしても良い。
【0045】
以下、正極として、空気極層を備える空気極を採用した場合について説明する。本発明に用いられる空気極層は、少なくとも導電性材料を含有するものである。当該空気極層は、必要に応じて、触媒及び結着剤の少なくとも一方をさらに含有していても良い。
【0046】
本発明に用いられる導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料等を挙げることができる。さらに、炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良いが、本発明においては、多孔質構造を有するものであることが好ましい。比表面積が大きく、多くの反応場を提供することができるからである。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー等を挙げることができる。空気極層における導電性材料の含有量は、65〜99質量%であるのが好ましく、75〜95質量%であるのがより好ましい。導電性材料の含有量が少なすぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があり、導電性材料の含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減り、充分な触媒機能を発揮できない可能性があるからである。
【0047】
本発明に用いられる空気極用の触媒としては、例えばコバルトフタロシアニン及び二酸化マンガン等を挙げることができる。空気極層における触媒の含有量としては、1〜30質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましい。触媒の含有量が少なすぎると、充分な触媒機能を発揮できない可能性があり、触媒の含有量が多すぎると、相対的に導電性材料の含有量が減り、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があるからである。
電極反応がよりスムーズに行われるという観点から、上述した導電性材料は触媒を担持していることが好ましい。
【0048】
上記空気極層は、少なくとも導電性材料を含有していれば良いが、さらに、導電性材料を固定化する結着剤を含有することが好ましい。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。空気極層における結着剤の含有量は、特に限定されるものではないが、30質量%以下であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。
【0049】
上記空気極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、2〜500μmであるのが好ましく、5〜300μmであるのがより好ましい。
【0050】
空気極層が、さらに空気極用電解質を含有していてもよい。この場合、空気極用電解質としては、本発明に係るリチウム電池用電解液が使用できる他、後述する電解液、ゲル電解質、固体電解質等も使用できる。
【0051】
本発明に用いられる空気極は、空気極層に加えて、空気極集電体、及び当該空気極集電体に接続された空気極リードを備えていてもよい。
本発明に用いられる空気極集電体は、空気極層の集電を行うものである。空気極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。空気極集電体の形状としては、例えば箔状、板状及びメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。中でも、本発明においては、空気極集電体の形状がメッシュ状であることが好ましい。集電効率に優れているからである。この場合、通常、空気極層の内部にメッシュ状の空気極集電体が配置される。さらに、本発明の電池は、メッシュ状の空気極集電体により集電された電荷を集電する別の空気極集電体(例えば箔状の集電体)を備えていても良い。また、本発明においては、後述する電池ケースが空気極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
空気極集電体の厚さは、10〜1000μmであるのが好ましく、20〜400μmであるのがより好ましい。
【0052】
本発明に用いられる負極は、好ましくは負極活物質を含有する負極活物質層を備えるものであり、通常、これに加えて負極集電体、及び当該負極集電体に接続された負極リードを備えるものである。
【0053】
本発明に用いられる負極活物質層は、金属、合金材料、及び炭素材料の内の少なくともいずれか1つを含む負極活物質を含有する。負極活物質層に用いられる負極活物質は、金属イオンを吸蔵及び放出の内の少なくともいずれか1つが可能なものであれば特に限定されない。負極活物質には、例えば、金属リチウム、リチウム合金、リチウム元素を含有する金属酸化物、リチウム元素を含有する金属硫化物、リチウム元素を含有する金属窒化物、及びグラファイト等の炭素材料等を用いることができる。また、負極活物質は、粉末状であっても良く、薄膜状であっても良い。
リチウム合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。また、負極活物質層には、固体電解質をコートしたリチウムを用いることもできる。
【0054】
上記負極活物質層は、負極活物質のみを含有するものであっても良く、負極活物質の他に、導電性材料及び結着剤の内の少なくともいずれか1つをさらに含有するものであっても良い。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極活物質層とすることができる。一方、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質及び結着剤を有する負極活物質層とすることができる。なお、導電性材料及び結着剤は、上記正極活物質層又は空気極層に使用できる導電性材料又は結着剤と同様のものである。
負極活物質層の層厚としては、特に限定されるものではないが、10〜100μmであるのが好ましく、10〜50μmであるのがより好ましい。
【0055】
負極活物質層が、さらに負極用電解質を含有していてもよい。この場合、負極用電解質としては、本発明に係るリチウム電池用電解液が使用できる他、後述する電解液、ゲル電解質、固体電解質等も使用できる。
【0056】
負極集電体の材料及び形状としては、上述した正極集電体の材料及び形状と同様のものを採用することができる。
【0057】
本発明に用いられる電解質は、正極及び負極の間に保持され、正極及び負極の間で金属イオンを交換する働きを有する。
電解質には、電解液、ゲル電解質、及び固体電解質等を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
電解液としては、水系電解液及び非水系電解液を用いることができる。
本発明に用いられる水系電解液としては、通常、金属塩及び水を含有したものを用いる。本発明に係る金属電池がリチウム電池である場合には、金属塩としてリチウム塩が使用できる。上記リチウム塩としては、例えばLiOH、LiCl、LiNO
3、CH
3CO
2Li等のリチウム塩等を挙げることができる。
本発明に用いられる非水系電解液は、上記電池用電解液に使用できる非水系電解液と同様のものである。
【0059】
本発明に用いられる電解液は、本発明に係るリチウム電池用電解液を含んでいてもよい。本発明に用いられる電解液には、当該電池用電解液そのものを用いてもよい。
【0060】
本発明に用いられるゲル電解質は、上記電池用電解液に使用できる非水ゲル電解質と同様のものである。
【0061】
固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、及びポリマー電解質等を用いることができる。
硫化物系固体電解質としては、具体的には、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−P
2S
3、Li
2S−P
2S
3−P
2S
5、Li
2S−SiS
2、Li
2S−Si
2S、Li
2S−B
2S
3、Li
2S−GeS
2、LiI−Li
2S−P
2S
5、LiI−Li
2S−SiS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−Li
4SiO
4、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
3PS
4−Li
4GeS
4、Li
3.4P
0.6Si
0.4S
4、Li
3.25P
0.25Ge
0.76S
4、Li
4−xGe
1−xP
xS
4等を例示することができる。
酸化物系固体電解質としては、具体的には、LiPON(リン酸リチウムオキシナイトライド)、Li
1.3Al
0.3Ti
0.7(PO
4)
3、La
0.51Li
0.34TiO
0.74、Li
3PO
4、Li
2SiO
2、Li
2SiO
4等を例示することができる。
本発明に用いられるポリマー電解質は、通常、金属塩及びポリマーを含有する。本発明に係る金属電池がリチウム電池である場合には、金属塩としてリチウム塩が使用できる。
リチウム塩としては、上述した無機リチウム塩及び有機リチウム塩の内の少なくともいずれか1つを使用できる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
本発明に用いられる固体電解質としては、上記の他にも、例えば、Li
2Ti(PO
4)
3−AlPO
4(オハラガラス)等が挙げられる。
【0062】
本発明に係るリチウム電池は、正極及び負極の間に、上述した電解液を含浸させたセパレータを備えていてもよい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系多孔膜;及び樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
【0063】
本発明に係るリチウム電池は、通常、正極、電解液及び負極等を収納する電池ケースを備える。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。
本発明に係るリチウム電池がリチウム空気電池である場合には、電池ケースは、大気開放型の電池ケースであっても良く、密閉型の電池ケースであっても良い。大気開放型の電池ケースは、少なくとも空気極層が十分に大気と接触可能な構造を有する電池ケースである。一方、電池ケースが密閉型電池ケースである場合は、密閉型電池ケースに、気体(空気)の導入管及び排気管を設けることが好ましい。この場合、導入され且つ排気される気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
【0064】
3.リチウム電池用電解液の製造方法
本発明のリチウム電池用電解液の製造方法は、上記一般式(1)で表されるメソイオン化合物、及び、リチウム塩をそれぞれ準備する工程、並びに、少なくとも前記メソイオン化合物及びリチウム塩を混合して、水分濃度200ppm以下のリチウム電池用電解液を調製する工程、を有することを特徴とする。
本発明に使用されるメソイオン化合物は、一般式(1)におけるR
2として、上記一般式(2)、(3)、又は(4)により表される基を有する。また、R
2は、メトキシメチル基(−CH
2OCH
3)、2−メトキシエチル基(−C
2H
4OCH
3)、3−メトキシプロピル基(−C
3H
6OCH
3)、4−メトキシブチル基(−C
4H
8OCH
3)、メトキシメトキシメチル基(−CH
2OCH
2OCH
3)、(2−メトキシエトキシ)メチル基(−CH
2OC
2H
4OCH
3)、2−(メトキシメトキシ)エチル基(−C
2H
4OCH
2OCH
3)、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基(−C
2H
4OC
2H
4OCH
3)、及び2−(メトキシメトキシメトキシ)エチル基(−C
2H
4OCH
2OCH
2OCH
3)からなる群より選ばれる1つの基であることが好ましい。
【0065】
以下、本発明に用いられるメソイオン化合物の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明に用いられるメソイオン化合物の製造方法は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
本製造例は、以下の工程(1)及び(2)を有する。
(1)上記一般式(2)、(3)、又は(4)により表される基を1位に有するテトラゾール−5−チオン誘導体を製造する工程
(2)上記一般式(2)、(3)、又は(4)により表される基を1位に有し、且つ、炭素数1〜3のアルキル基を3位に有するテトラゾリウム−5−オレート誘導体を製造する工程
【0066】
以下、上記工程(1)及び(2)について、詳しく説明する。
まず工程(1)において、下記反応式(a)に示すように、アルカリアジド(MN
3;Mはアルカリ金属)とイソチオシアナート(R
2NCS)とを反応させ、上記一般式(2)、(3)、又は(4)により表される基R
2を1位に有するテトラゾール−5−チオン誘導体を合成する。
イソチオシアナートとしては、例えば、R
2としてメトキシメチル基(−CH
2OCH
3)を導入したい場合にはメトキシメチルイソチオシアナート(CH
3OCH
2NCS)が、R
2として2−メトキシエチル基(−C
2H
4OCH
3)を導入したい場合には2−メトキシエチルイソチオシアナート(CH
3OC
2H
4NCS)が、R
2として3−メトキシプロピル基(−C
3H
6OCH
3)を導入したい場合には3−メトキシプロピルイソチオシアナート(CH
3OC
3H
6NCS)が、R
2として4−メトキシブチル基(−C
4H
8OCH
3)を導入したい場合には4−メトキシブチルイソチオシアナート(CH
3OC
4H
8NCS)が、R
2としてメトキシメトキシメチル基(−CH
2OCH
2OCH
3)を導入したい場合にはメトキシメトキシメチルイソチオシアナート(CH
3OCH
2OCH
2NCS)が、R
2として(2−メトキシエトキシ)メチル基(−CH
2OC
2H
4OCH
3)を導入したい場合には(2−メトキシエトキシ)メチルイソチオシアナート(CH
3OC
2H
4OCH
2NCS)が、R
2として2−(メトキシメトキシ)エチル基(−C
2H
4OCH
2OCH
3)を導入したい場合には2−(メトキシメトキシ)エチルイソチオシアナート(CH
3OCH
2OC
2H
4NCS)が、R
2として2−(2−メトキシエトキシ)エチル基(−C
2H
4OC
2H
4OCH
3)を導入したい場合には2−(2−メトキシエトキシ)エチルイソチオシアナート(CH
3OC
2H
4OC
2H
4NCS)が、R
2として2−(メトキシメトキシメトキシ)エチル基(−C
2H
4OCH
2OCH
2OCH
3)を導入したい場合には2−(メトキシメトキシメトキシ)エチルイソチオシアナート(CH
3OCH
2OCH
2OC
2H
4NCS)が、それぞれ使用できる。
【0068】
次に工程(2)において、下記反応式(b)に示すように、上記工程(1)で合成したテトラゾール−5−チオン誘導体をアルキル化剤でアルキル化し、さらに塩基で加水分解することにより、上述したテトラゾリウム−5−オレート誘導体を合成する。
アルキル化剤は、炭素数1〜3のアルキル基をテトラゾール環の3位に導入できるものであれば特に限定されず、例えば、ジアルキル硫酸、アルカリ金属のアルコキシド、アルキルトリフラート等を用いることができる。塩基は、余剰のアルキル化剤を失活させ、且つ、アルキル化されたチオテトラゾール誘導体を加水分解できるものであれば、特に限定されない。
アルキル化剤としては、例えば、アルキル基R
1の炭素数が1の場合には、ナトリウムメトキシド(NaOCH
3)及び硫酸ジメチル((CH
3O)
2SO
2)の内の少なくともいずれか1つが、アルキル基R
1の炭素数が2の場合には、ナトリウムエトキシド(NaOC
2H
5)及び硫酸ジエチル((C
2H
5O)
2SO
2)の内の少なくともいずれか1つが、アルキル基R
1の炭素数が3の場合には、ナトリウムプロポキシド(NaOC
3H
7)及び硫酸ジプロピル((C
3H
7O)
2SO
2)の内の少なくともいずれか1つが、それぞれ使用できる。
塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基、及びこれらの水溶液等を用いることができる。
【0070】
上記反応式(a)及び(b)に示すように、本発明に用いられるメソイオン化合物は、塩基性条件下で合成されたものであってもよい。中性条件下又は酸性条件下では、特に反応式(b)に示す反応が進行しないおそれがある。なお、反応終了(クエンチ)においては、反応溶液を中性又は酸性としても差し支えない。
また、上記一般式(1)に示すメソイオン化合物は、中性条件下又は塩基性条件下で用いられることが好ましい。例えば、酸性条件下で加熱した場合、当該メソイオン化合物が壊れるおそれがある。
【0071】
調製工程においては、少なくともメソイオン化合物及びリチウム塩を混合して、水分濃度200ppm以下のリチウム電池用電解液を調製する。リチウム電池用電解液に用いられるリチウム塩については上述した通りである。
特に、水分濃度を100ppm以下とすることにより、水分と反応して変質する電池材料を、当該リチウム電池用電解液と共に電池に用いることができ、電池材料の選択の幅を広げることができる。水分と反応して変質する電池材料の例としては、例えば、リチウム金属、硫化物系固体電解質等が挙げられる。
水分濃度を100ppm以下とするリチウム電池用電解液の調製方法としては、例えば、メソイオン化合物の液体を蒸留して十分水分を除いた後、不活性雰囲気下のグローブボックス内でリチウム塩と混合する方法等が挙げられる。また、リチウム塩については、水和物よりも無水和物を用いることが好ましい。水分濃度の測定方法としては、例えば、JIS K 2275で規定された蒸留法、カールフィッシャー式容量滴定法、カールフィッシャー式電量滴定法、及び水素化物反応法等が使用できる。カールフィッシャー式容量滴定法及びカールフィッシャー式電量滴定法には、市販のカールフィッシャー式水分計を使用できる。
リチウム電池用電解液中の水分濃度は、低ければ低いほど好ましい。リチウム電池用電解液中の水分濃度の下限は、例えば、0.1ppmとしてもよく、1ppmとしてもよい。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
1.イオン液体の合成
[実施例1]
1−(2−メトキシエチル)−3−メチルテトラゾリウム−5−オレートを合成した。
まず、工程(1)として、下記反応式(a
1)に従って、1,2−ジヒドロ−1−(2−メトキシエチル)−5H−テトラゾール−5−チオンの合成を行った。
【0074】
【化5】
【0075】
すなわち、反応容器にアジ化ナトリウム0.98g(15mmol、関東化学株式会社製)、1−(2−メトキシエチル)イソチオシアネート1.1mL(10mmoL、和光純薬工業株式会社製)、水15mLを加え24時間還流条件下で攪拌し反応させた。室温(15〜30℃)まで放冷後、反応溶液を塩化メチレン抽出した。続いて水相に濃塩酸を加えて酸性(pH<1)とした後、エーテル抽出を行った。塩化メチレン相、エーテル相をそれぞれ乾燥、溶媒留去して、塩化メチレン相から黄色液体(116mg)、エーテル相から1,2−ジヒドロ−1−(2−メトキシエチル)−5H−テトラゾール−5−チオン(無色液体、1.3g、収率81%)をそれぞれ得た。
1,2−Dihydro−1−(2−methoxyethyl)−5H−tetrazole−5−thione
IR(neat cm
−1):3096,2939,2829,1502,1352,1113.
1HNMR(300MHz,CDCl
3):δ3.39(s,3H),3.88(t,J=5.4Hz,2H),4.50(t,J=5.4Hz,2H).
13CNMR(75MHz,CDCl
3):δ46.9,58.9,68.4,164.2.
【0076】
次に工程(2)として、下記反応式(b
1)に従って、1−(2−メトキシエチル)−3−メチルテトラゾリウム−5−オレート(MOEMTO)を合成した。
【0077】
【化6】
【0078】
すなわち、反応容器に、1,2−ジヒドロ−1−(2−メトキシエチル)−5H−テトラゾール−5−チオン160mg(1.0mmol)、ジメチル硫酸0.38mL(4.0mmol、ナカライテスク株式会社製)を加え、90℃で3時間攪拌した。放冷後氷冷し、氷浴中の反応溶液に水酸化カリウム水溶液(KOH 280mg(5mmol)を水5.0mLに溶かしたもの)を加え、室温に戻してから1時間攪拌した。この反応溶液に、濃塩酸を加えて酸性(pH<1)とした後、エーテル洗浄を行った。さらに、水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)0.8gを加えて水相を塩基性(pH>13)とし、塩化メチレン抽出を行った。塩化メチレン相、及びエーテル相をいずれも乾燥させ、溶媒を留去した。このうち、塩化メチレン相から、1−(2−メトキシエチル)−3−メチルテトラゾリウム−5−オレート(無色液体、97mg、収率61%)が得られた(実施例1のイオン液体。以下、MOEMTOと称する場合がある)。当該無色液体は、後述する試験等の前に、所定量をまとめてクーゲルロール蒸留(170−190℃、4−5mmHg)により精製した。また、エーテル相から、1,2−ジヒドロ−1−(2−メトキシエチル)−4−メチル−5H−テトラゾール−5−チオン(黄色液体、28mg、収率18%)が得られた。
1−(2−Methoxyethyl)−3−methyltetrazolium−5−olate
IR(neat cm
−1):2936,1692,1334,1134.
1HNMR(300MHz,CDCl
3):δ3.37(s,3H),3,76(t,J=5.1Hz,2H),4.12(s,3H),4.23(t,J=5.3Hz,2H).
13CNMR(75MHz,CDCl
3):δ41.9,43.6,58.1,68.2,161.1.
HRMS(ESI)Calcd for C
5H
10N
4O
2Na(M
+Na
+):181.0701;Found:181.0709.
【0079】
[比較例1]
1−エチル−3−メチルテトラゾリウム−5−オレートを合成した。
上記工程(1)において、1−(2−メトキシエチル)イソチオシアネート(和光純薬工業株式会社製)の替わりに、エチルイソチオシアナート(東京化成株式会社製)を用いたこと以外は、1−(2−メトキシエチル)−3−メチルテトラゾリウム−5−オレートの合成法と同様に、2段階の反応工程で1−エチル−3−メチルテトラゾリウム−5−オレートが得られた(比較例1のイオン液体。以下、EMTOと称する場合がある)。
【0080】
2.リチウム金属浸漬試験
実施例1及び比較例1のイオン液体について、それぞれリチウム金属(本城化学製)を浸漬させ、アルゴン雰囲気下1週間放置した。
図4は、比較例1のイオン液体(EMTO)について、リチウム金属を浸漬させてから1週間後の様子を示した写真である。
図4から分かるように、浸漬直後は無色透明であったイオン液体も、1週間後には赤褐色に変色しており、且つ、イオン液体の分解に由来すると考えられる発泡が見られる。
図2は、実施例1のイオン液体(MOEMTO)について、リチウム金属を浸漬させてから1週間後の様子を示した写真である。
図2から分かるように、リチウム金属粉(
図2に挿入した矢印の先に示す)は、浸漬直後と同様の状態で観察されており、MOEMTOにおいては、リチウム金属を1週間浸漬させても分解変色が見られない。
以上より、本発明の電池用電解液に使用されるメソイオン化合物は、リチウム金属に対し極めて優れた安定性を有することが実証された。
【0081】
3.リチウム電池用電解液の調製
[実施例2]
実施例1のイオン液体(MOEMTO)に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(株式会社高純度化学研究所製。以下、LiTFSAと称する場合がある)を、濃度が1.0mol/kgとなるように秤量混合し、均一に溶解させた後、3時間攪拌して、実施例2のリチウム電池用電解液を調製した。
【0082】
[比較例2]
比較例1のイオン液体(EMTO)に、LiTFSAを濃度が1.0mol/kgとなるように秤量混合し、均一に溶解させた後、3時間攪拌して、比較例2のリチウム電池用電解液を調製した。
【0083】
4.CV試験
実施例2及び比較例2のリチウム電池用電解液について、CV試験を実施した。試験の詳細は以下の通りである。
測定セル
・作用電極:ニッケル電極(径1.5mm)
・参照電極:銀/塩化銀電極(Ag/Ag
+)
・対極:白金電極
測定装置 ポテンショスタット/ガルバノスタット(Solatron)
測定方法 サイクリックボルタンメトリー(CV):−1.7〜1.3V(vs Ag/Ag
+)
測定温度 60℃(試験開始前に恒温槽にて3時間静置した)
測定雰囲気 純酸素(試験開始前に測定セルを30分間酸素置換した)
【0084】
図3は、実施例2及び比較例2のサイクリックボルタモグラムを重ねて示した図である。
図3においては、実施例2のサイクリックボルタモグラムを太線で、比較例2のサイクリックボルタモグラムを細線で、それぞれ示す。
図3から分かるように、比較例2のサイクリックボルタモグラムにおいては、リチウム金属の析出又は溶解に起因する電流のピークがいずれも観測されなかった。
一方、
図3中に矢印で示すように、実施例2のサイクリックボルタモグラムにおいては、還元波の−3.5V(vs Ag/Ag
+)においてリチウム金属の析出に起因する電流のピークが、酸化波の−3.3V(vs Ag/Ag
+)においてリチウム金属の溶解に起因する電流のピークが、それぞれ観測された。これらのピークが観測されたことは、実施例2のリチウム電池用電解液中において、リチウム金属が電極活性を有しながら存在することを意味する。また、サイクルを重ねてもCV波形が大きくずれないことから、サイクル特性の観点からも、リチウム金属の溶解析出が安定して起きていることが分かる。これらの結果から、実施例2のリチウム電池用電解液は、リチウム金属に対して優れた安定性を有すると考えられる。
以上より、実施例2のリチウム電池用電解液は、従来の比較例2のリチウム電池用電解液と比較して、リチウム金属に対する安定性が飛躍的に向上したことが分かる。