(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1導電型半導体層上の導通部は、前記電極膜の外周部に設けられ、該第1導電型半導体層上の前記光反射構造は、前記外周部より内側にのみ設けられる請求項4に記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光素子は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに特定しない。特に、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。さらに、以下に記載されている各実施の形態についても同様に、特に排除する記載が無い限りは各構成等を適宜組み合わせて適用できる。なお、本明細書において、層上などでいう「上」とは、必ずしも上面に接触して形成される場合に限られず、離間して上方に形成される場合も含んでおり、層と層の間に介在層が存在する場合も包含する意味で使用する。
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光素子の概略図であり、
図1Aは概略上面図の
図1BのA−Aにおける概略断面図であり、また
図2はその発光素子の光反射構造の周辺を部分的に拡大した概略断面図である。尚、各図では、保護膜50、その開口部で、第1,2電極30,40の外部接続部34,44は、またその他の光反射構造、電極構造など一部省略、簡略化して表示しており、他の図についても同様である。
図1,2に示す例の発光素子は、主として、半導体素子構造20、光反射構造17,18、及び電極膜32,42から構成されている。半導体素子構造20は、基板10上に、発光素子構造を構成する半導体層21〜23を有し、半導体層は下層側から第1導電型半導体層21、活性層22、第2導電型半導体層23をこの順に含んでいる。なお以下、主として第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、その逆であってもよい。光反射構造17,18は、下層側から透光性で絶縁性の第1反射膜1、金属の第2反射膜2、絶縁膜3、をこの順に含んでいる。また光反射構造は、半導体素子構造上の一部、より詳細には各導電型の半導体層上、露出部の非発光構造部26と発光構造部25の一部に設けられている。そして、各導電型の半導体層上において、この光反射構造17,18を覆って電極膜32,42が設けられており、電極膜は、光反射構造上を被覆し、半導体素子構造とで光反射構造を挟む被覆部36,46と、光反射構造から露出される半導体素子構造(半導体層)上にあって半導体層と導通する導通部35,45と、を連続して有している。このような発光素子は、通電されると、電極膜の導通部35,45から半導体素子構造20に電流が注入されて、素子構造内のキャリアが注入されて活性層22で発光し、そのうち電極膜形成面側に発光された光の一部は、光反射構造17,18により反射されて基板10側から取り出される。
【0013】
本発明の発光素子における光反射構造17,18は、透光性で絶縁性の第1反射膜1上に設けられた金属の第2反射膜2を有しており、透光性の第1反射膜1で一部が反射され、一部が透過し、その透過した光は第2反射膜2により反射可能となっている。また、第2反射膜2は、その下に介在する第1反射膜1によって、透光性導電膜31,41と電気的に絶縁されており、また主に酸化物で構成される透光性導電膜との化学反応による酸化物の生成なども抑制される。さらに、第2反射膜2は、その上に介在する絶縁膜3によって、電極膜の被覆部36,46と電気的に絶縁される。このように、光反射構造17,18において主要な光反射膜として機能する被覆部側の第2反射膜2は、第1反射膜1と絶縁膜3とにより挟まれており、その外側で挟む電極膜32,42と半導体素子構造20、具体的には透光性導電膜を介して挟む半導体素子構造と電極膜、と絶縁され、従って該第2反射膜2に縦方向へ流れる電流が抑止されている。またさらに、被覆部36,46に覆われる光反射構造17,18の上面は絶縁膜3による電気的障壁のため高抵抗であり、電極膜32,42を流れる電流は、光反射構造上の被覆部において横方向へ流れる。他方導通部35,45においては、光反射構造17,18から露出され比較的低抵抗な半導体層20側つまり縦方向への流れが促進されるので、第2反射膜2に横方向に流れる電流を低減することができる。このように、光反射構造の第1反射膜1と絶縁膜3とは、第2反射膜2に対する電流の流れを制御する機能を果たしている。
【0014】
そして、第2反射膜2は、第1反射膜1及び絶縁膜3の少なくとも一方から導通部35,45に延出して電極膜に接する延出部17a,18aを有している。上述のように、光反射構造の第1反射膜1及び絶縁膜3によって、電極膜32,42と半導体層20との電気的な接続領域は導通部35,45に制限されるため、この導通部において電流が集中し電流密度が比較的高くなる。そして、この電流密度の比較的高い領域において電極膜に接触する第2反射膜2の延出部17a,18aは、被覆部側より、含有する金属原子のエレクトロマイグレーションが発生しやすくなっている。これにより、第2反射膜2に横方向へ電流が流れたとしても、延出部17a,18aにおける第2反射膜2の金属原子を優先的にエレクトロマイグレーションさせることができる。このように、第2反射膜2の延出部17a,18aをエレクトロマイグレーションによる犠牲領域として機能させることで、被覆部側の第2反射膜の金属原子のエレクトロマイグレーションを抑制し、光反射構造17,18の反射率の低下を抑制することができる。ひいては、第2反射膜2の延出部17a,18aの金属原子がマイグレーションすることにより、該延出部に空隙(ボイド)が形成される場合があるが、この空隙が電気的障壁として作用し、被覆部側の第2反射膜に横方向へ流れる電流をさらに抑止して、被覆部側の第2反射膜の金属原子のエレクトロマイグレーションをさらに抑制することができる。また延出部17a,18aにおいて、第2反射膜2の金属原子がマイグレーションして、第2反射膜2と電極膜32,42との間に空隙が形成されることにより、延出部の第2反射膜の断面積、体積が小さくなって、第2反射膜2への電流経路がより制限され、空隙周辺の第2反射膜2の電流密度がさらに高まり、エレクトロマイグレーションがより促進されて空隙の成長が促される。
【0015】
また、本実施の形態の発光素子においては、
図2に示すように、第1反射膜1が、被覆部側の該第1反射膜1より連続し、前記延出部17a,18aにおいて該延出方向で前記半導体素子構造側に近づいて傾斜する傾斜部を有する形態、すなわち第2反射膜2の延出部17a,18aは、第1反射膜1の傾斜部に設けられる形態が好ましい。これにより、被覆部36,46から導通部35,45へ、また導通部の上面側から下面側への電流密度変化を滑らかにでき、第2反射膜2の延出部17a,18aを、その断面積が縮小し電流密度が特に高くなる半導体層側の領域に配置できるため、上述した効果を奏しやすくできる。また第2反射膜2の延出部17a,18aが、導通部35,45を流れる電流の経路に沿うように延出して形成されていることにより、被覆部側の第2反射膜2に流れる電流を抑制しながら、第2反射膜2に電流が流れたとしても、第2反射膜2の延出部17a,18aの金属原子のエレクトロマイグレーションを優先的に発生させることができる。尚、
図2では簡単のために、電極膜32,42から半導体への流れを示す矢印としているが、正負電極の負電極は矢印の方向に、正電極では逆方向に電子が流れることはいうまでもなく、
図3,5も同様である。
【0016】
具体的には、本実施の形態1の光反射構造17,18では、第1反射膜1は、透光性導電膜31,41の略平坦な表面に形成され、延出方向に、すなわち導通部35,45における半導体層との接触側に近づくほど、その膜厚が小さくなっており、光反射構造の中央部、すなわち被覆部36,46側における略平坦な表面から連続して、該表面から半導体素子構造20側に傾斜する傾斜面の表面を有している。第2反射膜2は、この第1反射膜1の略平坦な表面と、傾斜面の表面の一部と、を被覆するように形成されている。ここで、本発明では、光反射構造17,18の被覆部側の各膜は略平坦でなくとも、緩やかに湾曲した表面、凹凸を帯びた表面など、種々の形態でも良く、その被覆部側に比して大きく傾斜した延出部17a,18aが設けられれば良い。また第2反射膜2は、延出するに従って膜厚が小さくなって、その中央部の表面から連続して半導体素子構造側に傾斜する傾斜面の表面を有している。さらに絶縁膜3は、この第2反射膜2の被覆部の表面と、傾斜面の表面の一部と、を被覆するように形成され、同様に延出方向に膜厚が小さくなり、被覆部の表面から連続して半導体素子構造側に傾斜する傾斜面の表面を有している。よって、この光反射構造17,18の端部の表面は、各膜の表面の一部がその上に積層される膜に被覆され且つ一部が露出されてなり、その中央部の略平坦な表面から半導体素子構造側に傾斜する傾斜面となっている。このように、本実施の形態1における第2反射膜2の延出部17a,18aは、第1反射膜1の傾斜面の表面上に設けられており、絶縁膜3から導通部側に延出している。したがって、第2反射膜2の傾斜面の表面の一部を被覆する絶縁膜3が、被覆部側の第2反射膜2を側方からも覆っているため、電極膜の導通部35,45から第2反射膜2の中央部に直接的に横方向へ流れる電流を抑制することができると共に、第2反射膜2の延出部17a,18aと電極膜32,42との接触面積をより小さくし、第2反射膜2に電流が流れた場合に、第2反射膜の延出部の電流密度を高め、延出部の金属原子のエレクトロマイグレーションを優先的に発生させることができる。
【0017】
また、このような光反射構造17,18において、第1反射膜1は、後述するような誘電体多層膜を有することが好ましい。第1反射膜1が誘電体多層膜を有することで、光反射構造の全体としての反射率を高めることができるが、誘電体多層膜は、その反射率が光の波長や入射角度に依存し、特に高角度の入射光に対しては意図する波長の光の反射率が低下しやすい。このため、被覆部側に比して、膜厚が変化して、表面が傾斜して、反射機能が低下する延出部17a,18aでは、金属の第2反射膜2が第1反射膜1の傾斜部の少なくとも一部を被覆することによって、外側に漏れる光、高角度の入射光を第2反射膜2により反射させ、光反射構造17,18の端部近傍における反射率の低下を抑制することができる。金属の第2反射膜2が、第1反射膜1の傾斜部の誘電体多層膜の表面の少なくとも一部を被覆することがより好ましく、傾斜部の誘電体多層膜の表面を完全に被覆することがより好ましい。
【0018】
第2反射膜2の膜厚は、被覆部側より延出部17a,18aのほうが小さくなっていることが好ましい。これにより、第2反射膜2に横方向へ電流が流れた場合、第2反射膜2の延出部17a,18aにおける電流密度が、被覆部側に比べて高くなるため、延出部の金属原子のエレクトロマイグレーションを優先的に発生させることができる。また、発光素子内で発生する金属原子のマイグレーションは、電極間の短絡や断線、発光効率の低下などの問題を引き起こす虞があるが、第2反射膜2の延出部17a,18aの膜厚が小さいことで、第2反射膜2の金属原子のマイグレーションによるこのような素子への影響を抑えられる。なお、ここでいう「膜厚」はその部位の平均膜厚で考えるものとする。さらには、延出部17a,18aの膜厚は、図示するように延出するにつれて小さくなっていることが好ましい。これにより、延出部17a,18aにおいて、被覆部側より導通部側の電流密度を延出方向で段階的に高め、導通部側の金属原子をより優先的にエレクトロマイグレーションさせることができる。したがって、被覆部側の第2反射膜2の金属原子のエレクトロマイグレーションの発生をさらに抑制し、光反射構造の反射率の低下をさらに抑えることができると共に、素子への影響をさらに軽減できる。
【0019】
また、
図1及び
図2に示す発光素子の例では、両導電型の電極膜32,42は半導体素子構造20の同一面側に各々設けられており、第1導電型の電極膜32の形成領域26として、第1導電型半導体層21の一部が露出されている。そして、第1導電型半導体層の露出面26上に、外部接続部33とそこから延伸する延伸部34を有する構造の第1電極40が設けられており、一方で各電極40の光反射構造17は単一の島状に設けられており、この光反射構造17の周囲に電極膜の導通部35が形成されている。他方、第2導電型半導体層23上の光反射構造18は格子状に設けられており、この光反射構造18の開口部に電極膜42の導通部45が形成されている。
【0020】
このように、本実施の形態の発光素子は、半導体素子構造20の表面の面内において、導通部35,45を複数有し、少なくとも一つの導通部が被覆部36,46に囲まれていることが好ましい。導通部35,45が被覆部36,46に囲まれていることにより、該導通部周囲の被覆部から電流を該導通部に集中させ、電流密度の高い領域を局所的に形成することができる。これにより、光反射構造17,18において、電流による第2反射膜2の金属原子のエレクトロマイグレーションが発生しやすい領域を限定的にし、その端部長さ、面積を小さくして、被覆部側の第2反射膜2の金属原子のエレクトロマイグレーションを抑制でき、その量を低減できる。全ての導通部35,45が被覆部36,46に囲まれる光反射構造としてもよく、この場合には半導体素子構造20の表面を光反射構造17,18により広範に被覆することができ、特に光反射性に優れた光反射構造を形成することができる。また、第2導電型層23上の第2電極40のように、大面積の電極膜の形成において、後述する延伸併設部を設けずに、開口部の導通部45だけで構成されることで、延伸方向のエレクトロマイグレーションの発生を防止できる。従って、第1,2導電型半導体層21,23の同一面側にそれぞれ電極膜32,42と光反射構造17,18を有する構造では、第2導電型半導体層23上に、上記被覆部46に囲まれた導通部45を複数有することが好ましい。このように、開口部の導通部45を第2導電型半導体層23上に分散させて複数配置することにより、電極膜42面内の電流拡散性を高めて、光反射構造18による反射機能を高めることができる。開口部45の形状は特に限定されないが、図示するように四角形状の他、多角形状、円形状などの島状、更にはストライプ状、格子状などがあり、その配置は、図示するように格子配置の他、規則的な配置、不規則的な配置とできる。好ましくは、図示するように、格子配置された島状である。
【0021】
なお、実施の形態2、
図2に観るように、光反射構造18は、半導体素子構造20の表面において、外周部と、該光反射構造の内側に複数の開口部45と、を有し、導通部は、第2導電型半導体層23の表面において、開口部に設けられる被覆部46に囲まれた第1の導通部と、外周部、またはその一辺、その一部に設けられる第2の導通部を有していてもよい。これにより、外周部の第2の導通部は比較的広範に連続して設けられ、端部長さが長くなるため、第1の導通部に比べて電流密度が低く延出部18aの金属原子のエレクトロマイグレーションが発生しにくい領域として形成することができ、またこの第2の導通部の存在により、各第1の導通部の電流密度を低減させ、第1の導通部においても延出部の金属原子のエレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。また、第2の導通部により素子外縁部においても発光が促進され、その光を素子側面から直接的に取り出すと共に、素子内部側で発光した光は、被覆部46に囲まれる(第1の)導通部45を有することで第2導電型半導体層23の表面の面内に広範に形成された光反射構造18により、効率良く反射させて取り出すことができる。一方で、その外周部では、電極部と光反射構造が互いに併設されて、延伸された延伸併設部となり、外周長の長い、すなわち延伸長の長い領域でその延伸併設部が形成されることから、延伸方向に流れる電流が発生し、それによるエレクトロマイグレーションの発生があるが、本発明の構造により、それを改善できるため、好ましい。以上の各形態は、第2導電型半導体層上の第2電極40について説明したが、第1電極に適用しても良い。
【0022】
一方で、第1導電型半導体層21上の導通部35は、本実施の形態に観るように、第2導電型半導体層23に対して広くに電流を拡散させ、またその電極形成領域を小さくする形態が好ましい。本実施の形態では導通部35が、断面において光反射構造17の端部にのみ導通部が設けられ、更に、導通部が断面において両端部に形成され、また光反射構造17の周囲を囲んで設けられ、加えて該導通部が第2導電型半導体層23の端面に対向するように設けられる。このことで、電極部30を小さく、細く形成でき、光反射構造17の機能を高め、電極30の各部位における電位をより均一にして、その導通部35に隣接する発光構造部25に対して効率良く電流を拡散できるので好ましい。一方で、細く長く形成され、
図1Aの矢印示するように延伸されて形成される電極部30に、その端部の導通部35が設けられることで、上記併設延伸部が長くなり、その延伸方向へのエレクトロマイグレーションの発生が問題となるが、本発明の構造により、その発生を抑制し、その問題を低減できる。
【0023】
また各半導体層の電極膜形成面上の略全域には透光性導電膜31,41が設けられており、光反射構造17,18はこの透光性導電膜に接して設けられている。このように、半導体素子構造20と、導通部35,45の電極膜及び光反射構造と、の間に透光性導電膜31,41を有することにより、被覆部36,46から導通部35,45を経て半導体層20へ流れる縦方向の電流を促進し、第2反射膜2に流れる電流を抑制することができる。また、導通部35,45の電流密度を高めて延出部17a,18aの金属原子のエレクトロマイグレーションを優先的に発生させることができる。透光性導電膜31,41が光反射構造17,18と半導体素子構造20との間に設けられて、導通部35,45から半導体層の光反射構造下へ電流を拡散させて光反射構造下で発光させ、その発光の一部は、透光性導電膜を透過させ、光反射構造により反射させて効率良く取り出すことができる。
【0024】
本実施の形態とは異なる本発明の別の実施の形態として、
図3に示すように、第2の光反射構造18Aを、上記光反射構造18の下側、透光性導電膜41と半導体素子構造20との間に介在させ、更に、上記導通部45に対応して、すなわち導通部45に対向して透光性導電膜を介して、設ける構造とできる。これにより、光反射構造18の開口部を通過する光を第2の光反射構造18Aにより、反射して、素子の光取り出し効率を高めることができる。第1の窒化物半導体層21の露出部26側、発光構造部25側のいずれに設けても良く、特に大面積の発光構造部25側に設けることが好ましい。この第2の光反射構造18Aは、光反射構造18と同様に、各反射膜を有しても良く、少なくとも第1反射膜1を有することが好ましい。このように、光反射構造18より薄膜で形成されることで、適度な反射機能と、段差による上層側の光反射構造18への形状変化、反射機能への影響を低く抑えることができる。ここで、第2の反射構造18Aは、図示するように、断面で導通部45より幅広でそれを内包するように配置されることが好ましく、また透光性導電膜41の面内において、導通部45より大面積で、導通部45が内部に配置されるように、設けることがより好ましい。一方で、導通部45より小さく形成すること、更に光反射構造18と第2の光反射構造18Aを互いに離間することで、相互の影響を低くして各光反射構造を積層した構造とできる。また、図示するように、相互に重ね合わされることで、光反射構造18、その被覆部46の内側に段差が設けられると、上面側18cと段差部18dと底面側18eが設けられ、段差部により光反射構造18内の第2反射膜2の経路が狭められ、上述した内部を流れる電流を低減でき、延出部18aから上面側18cにまでエレクトロマイグレーションの影響が及んでも、それを抑制する方向に働き、その影響を低減し、また主要な光反射部となる底面側18eの反射機能を保持できる。また、第2の光反射構造18Aにおいても光反射構造18と同様に、それに隣接して導通部49を設けることができ、そこから半導体素子構造内へ電流を注入できる。一方で図示するように、第2の光反射構造18Aの形成領域は、非注入経路となって、発光構造部25上では非発光領域となるが、導通部45直下の発光を抑えて、光反射構造18より反射率の低い第2の光反射構造でもって、そこを抜ける光を反射させる構造とできる。その際、光反射構造間の領域、透光性導電膜41の領域を斜めに抜ける光があるが、透光性導電膜41は光反射構造より薄膜であり、図示するように、積層方向に互いに重なり合うようにすることで、その通過光を低減できる。また、非発光構造に合わせて、光反射構造18と異なる反射機能、例えば第1反射膜1の設定波長を高角度の入射光に対応するように、光反射構造18より長波長とすることができる。また、光反射構造18と同様に、第2の光反射構造18Aにおいてもその下に介在する透光性導電膜を設けて電流注入領域としても良い。
【0025】
図4に示す電極膜32及び光反射構造17の構造は、本実施の形態とは異なる本発明の別の実施の形態に係り、上述した本実施の形態の第1電極30の場合とは逆に、電極の端部側に光反射構造17を、内側に導通部35を有する構造となっている。更に、外周部が光反射構造17で構成され、その内側に光反射構造の開口部、導通部35を備え、加えて透光性導電膜31の外側に光反射構造が延在し、さらに半導体層20に直接設けられている。このような構造とすることで、光反射構造の機能を高め、さらに本実施の形態のように導通部35が光反射構造17に囲まれた構造であることで、上述の効果を奏する。
【0026】
なお、光反射構造17,18を構成する各膜の膜厚、表面の傾斜などの形態は、スパッタ法、CVD法、蒸着法などにより1つの膜を成膜した後、エッチング、リフトオフなどによりその膜を部分的に除去して整形することにより実現することができる。但し、
図2に示すような構造の光反射構造17,18においては、光反射構造のパターンを形成するための保護膜(レジスト、マスク)として、その上面から内側に向かって傾斜する傾斜面の側面を有するものを用いて、光反射構造を構成する各膜を順次成膜することで、比較的容易に形成することが可能である。具体的には、透光性導電膜上に上記形状の保護膜をパターン形成した後、第1反射膜を成膜すると、保護膜の開口部内に、断面が略台形状の第1反射膜が形成される。続いて、その上に第2反射膜を成膜すれば、第1反射膜の中央部の略平坦面上に加え、第1反射膜の端部の傾斜面上にも第2反射膜が成膜される。このとき、端部の傾斜面上の第2反射膜は、第1反射膜の傾斜面と保護膜の側面との隙間に回り込むように成膜されるため、その膜厚は中央部に比べ小さいものとなる。また、第1反射膜と保護膜との隙間は端部にいくほど小さくなるため、第2反射膜の膜厚もそれにつれて小さくなり、また部分的に第2反射膜が成膜されず第1反射膜の表面が露出される。さらに、この上に成膜される絶縁膜、またその間に介する介在層についても、その下層の中央部の略平坦面上と端部の傾斜面上とに同様に成膜される。この方法であれば、エッチング等による各膜のパターニング工程を伴わず、上記のような保護膜を用いて各膜を順次成膜するだけで、
図2に示す例の光反射構造を形成することができ、生産性が良い。
【0027】
次に、本発明の発光素子の各構成について、以下に詳述する。
【0028】
(発光素子)
発光素子は公知の半導体発光素子を利用でき、特に窒化物半導体であれば、蛍光物質を効率良く励起できる短波長の可視光や紫外光が発光可能であるため、好ましい。具体的な発光ピーク波長は240nm以上560nm以下、好ましくは380nm以上470nm以下である。なお、このほか、ZnSe系、InGaAs系、AlInGaP系半導体の発光素子でもよい。
【0029】
(半導体素子構造)
半導体層による半導体素子構造20は、少なくとも第1導電型(n型)層21と第2導電型(p型)層23とにより構成され、更にその間に活性層22を有する構造が出力、効率上好ましい。また、電極構造は、一方の主面側に第1導電型、第2導電型の両電極が設けられる同一面側電極構造が好ましいが、それに限定されず半導体層の各主面に対向して電極が各々設けられる対向電極構造、例えば成長基板除去構造において基板除去側に電極を設ける構造でも良い。発光素子の実装形態も、例えば上記同一面側電極構造では、電極膜形成面を実装面として、それに対向する基板側を主な光取り出し面とするフリップチップ実装が、半導体層と電極膜との間に光反射構造を有する構造上好ましい。この他、電極膜形成面側を主な光取り出し面とするフェイスアップ実装でもよい。
【0030】
(窒化物半導体発光素子)
発光素子の一例として、例えば
図1に示す窒化物半導体の発光素子では、成長基板10であるサファイア基板の上に、第1の窒化物半導体層であるn型半導体層21、活性層である発光層22、第2の窒化物半導体層であるp型半導体層23を順にエピタキシャル成長されている。結晶成長方法としては、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、などの方法が利用できる。そして、発光層22およびp型半導体層23の一部が選択的にエッチングにより除去されて、n型半導体層21の一部が露出されて、その露出領域に第1電極30としてn型パッド電極32が形成される。また第1電極30と同一面側であって、p型半導体層のほぼ全面に第2電極40として、透光性導電膜41が形成され、その上にp型パッド電極42が形成される。さらに、保護膜50がn型、p型パッド電極32,42の表面を露出させ、各半導体層を被覆して設けられる。なお、第1電極30は、n型半導体層の露出領域に、透光性導電膜31を介して形成されてもよい。
【0031】
(窒化物半導体層)
窒化物半導体としては、一般式がIn
xAl
yGa
1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)であって、BやP、Asを混晶してもよい。また、n型半導体層21、p型半導体層23は、単層、多層を特に限定しない。活性層22は単一量子井戸構造(SQW)又は多重量子井戸構造(MQW)が好ましい。青色発光の素子構造の例としては、サファイア基板のC面上に、バッファ層などの窒化物半導体の下地層、例えばGaNの低温成長薄膜層とGaNの高温成長層を介して、n型窒化物半導体層として、例えばSiドープGaNのn型コンタクト層とGaN/InGaNのn型多層膜層が積層され、続いてInGaN/GaNのMQWの活性層、さらにp型窒化物半導体層として、例えばMgドープのInGaN/AlGaNのp型多層膜層とMgドープGaNのp型コンタクト層が積層された構造がある。
【0032】
(成長基板)
成長基板10は、半導体層をエピタキシャル成長させることができる基板で、基板の大きさや厚さ等は特に限定されない。窒化物半導体における基板としては、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイアやスピネル(MgAl
2O
4)のような絶縁性基板、また炭化珪素(6H、4H、3C)、シリコン、ZnS、ZnO、Si、GaAs、ダイヤモンド、及び窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等の酸化物基板、GaNやAlN等の窒化物半導体基板があり、そのオフアングルした基板(例えば、サファイアC面で0.01°〜3.0°)も用いることができる。成長基板10が一方の導電型の半導体層の一部を担っても良い。なお、成長基板10は、半導体素子構造を構成しない場合には除去してもよく、成長基板10が除去された半導体層に、支持基板、例えば導電性基板または別の透光性の部材・基板を接着した構造とすることもできる。その他、ガラス、樹脂などの透光性部材(蛍光物質を含有する波長変換部材でもよい)により半導体層が接着・被覆されて、支持された構造の素子でも良い。成長用基板10の除去は、例えば装置又はサブマウントのチップ載置部に保持して、研磨、LLO(Laser Lift Off)で実施できる。また、透光性の異種基板であっても、基板除去することで、光取り出し効率、出力を向上させることができる。
【0033】
(透光性導電膜)
半導体層のほぼ全面に導電膜31,41が形成されることにより、電流をその半導体層全体に均一に広げることができ、また該導電膜が透光性を備えることで、その上に光反射構造17,18を設けることができる。透光性導電膜31,41は、透明電極など数々の種類があるが、好ましくはZn、In、Snよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物とする。具体的には、ITO、ZnO、In
2O
3、SnO
2等、Zn、In、Snの酸化物を含むものが好ましく、より好ましくはITOを使用する。あるいはNi等の金属を30Å等の薄膜の金属膜、その他の金属の酸化物、窒化物、それらの化合物、窓部の開口部を有する金属膜のような光透過構造、以上の複合物でもよい。また、透光性導電膜31,41の厚さは、その層の光吸収性と電気抵抗・シート抵抗、また光反射構造17,18と電流の広がりを考慮した厚さとし、例えば1μm以下、具体的には10nmから500nmとする。また、活性層22から放出される光の波長λに対してλ/4のおよそ整数倍とすることで、光取り出し効率を高めることができる。なお、この透光性導電膜31,41は省略することもでき、その場合には光反射構造17,18が各導電型の半導体層に接して設けられてもよい。
【0034】
(光反射構造)
本発明の発光素子において、半導体素子構造20の互いに対向する2つの主面の一方を光取り出し側、他方を光反射側とすると、この光反射側に光反射構造17,18が設けられ、特に活性層22などの発光構造を有する領域25に設けられる。光反射構造17,18は、電極構造の一部、電極構造との重畳構造、電極構造との面内分離構造、などとして設けられ、好ましくは発光構造に対応して発光面積が大きくなるように、また電荷注入効率が高くなるように重畳構造とする。具体的には、半導体層又はその上の透光性導電膜と、素子外部と接続されるパッド電極との間に、光反射構造が設けられる。これにより、電気的な導通経路と光反射領域とが面内に分離して配置された構造となる。この面内分離の光反射構造は、分離領域に導通構造を有しているため、絶縁性で構成することができる。
【0035】
以下、本発明の光反射構造17,18を構成する第1反射膜1、第2反射膜2、絶縁膜3の各膜について説明する。
【0036】
(第1反射膜)
第1反射膜1は、絶縁体により構成される。絶縁性膜の単層でもよいが、誘電体多層膜との組み合わせにより構成されることで、光反射構造の光反射性を更に高めることができる。具体的には、高い入射角の光は絶縁性膜で好適に反射され、低い入射角の光は誘電体多層膜のDBRで好適に反射され、そのため、どちらか一方よりも両者を組み合わせた複合的な反射構造とすることが好ましい。絶縁性膜と誘電体多層膜の配置は、特に限定されないが、好適には半導体層側から順に絶縁性膜、誘電体多層膜を設けると、絶縁性膜による屈折率差の反射と、誘電体多層膜による波長、方向依存の反射と、を機能分離して各機能を高めることでき好ましい。なお第1反射膜1は、絶縁性膜を含まず、誘電体多層膜だけで構成されてもよい。
【0037】
(絶縁性膜)
絶縁性膜は、発光素子からの光を効率よく反射させ、またその一部の光を誘電体多層膜に透過させるように透光性を有する。そのため絶縁性膜は、好ましくは酸化物とし、さらに好ましくはSi、Alよりなる群から選択された少なくとも一種の元素の酸化物とする。具体的には、SiO
2、Al
2O
3等とし、好ましくはSiO
2を使用する。絶縁性膜の厚さは、10nm〜2μm程度の厚さで形成可能であり、200nm以上500nm以下とすることが好ましい。
【0038】
(誘電体多層膜)
誘電体多層膜は、屈折率の異なる2種以上の誘電体膜が周期的に積層された多層構造である。より詳細には、誘電体多層膜は、屈折率の異なる膜が1/4波長の厚みで交互に積層された分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)を構成し、所定の波長を高効率に反射することができる。誘電体多層膜の例としては、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の酸化物または窒化物から選択された少なくとも2つを繰り返し積層したものが好ましい。さらに好ましくは非金属元素からなる材質、あるいは酸化物の積層構造とし、例えば(Nb
2O
5/SiO
2)n(ただしnは自然数)の積層構造等で構成される。
【0039】
(第2反射膜)
第2反射膜2は、少なくともAl、Ag、W、Pt、Zn、Ni、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Co、Fe、Mn、Mo、Cr、La、Cu、Yよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む金属または合金またはそれらの酸化物を含む層を有する単層、又は多層構造で設けられる。半導体層と電極膜との間に設けられる第2反射膜2は、活性層から出射される光の波長に対して、電極膜を構成する金属に比べ反射率が高く吸収係数が小さい金属より成ることが好ましく、特にAlもしくはAgを使用することが好ましい。これにより、該第2反射膜2で活性層から発光される光を反射させ、電極膜の光吸収による光損失を低減して光の取り出し効率を高めることができる。
【0040】
なかでも、Alは電流によりエレクトロマイグレーションが発生しやすいが、Agに次ぐ高い反射率を有している。このため、本発明において、第2反射膜2は特にAl又はその合金であることが好ましく、主要な光反射領域となるAl含有膜の中央部に電極膜から電流が流れることを抑制できる構造の光反射構造とすることで、Al原子のエレクトロマイグレーションの発生を抑制し、光反射構造の反射率の低下を抑止して、信頼性が高い発光素子とすることができる。さらに、第2反射膜2は、Tiを介して絶縁膜と接合されていることで、両膜の密着性を高めることができ、これにより上述した本発明の作用効果を高めることができる。このTi膜は、フォトリソグラフィの現像工程において第2反射膜2を保護するバリア層としても機能させることができる。この密着層、バリア層として、Tiの他に、Ti−W合金、W、Ta、Hf、またこれらの窒化物などを用いることができる。Al合金としては、AlにCu(Al−Cu)、又はSi及びCuを含有する(Al−Si−Cu)合金などを用いることができ、そのCu含有率は例えば2wt%以上、更には3wt%以上であることが好ましくCu,Siの含有率の上限としては、例えば10wt%以下程度、更には5wt%以下とする。Ag合金としては、Pt、Co、Au、Pd、Ti、Mn、V、Cr、Zr、Rh、Cu、Al、Mg、Bi、Sn、Ir、Ga、Nd及びReからなる群から選択される1種又は2種以上の合金が挙げられる。この場合、銀の割合としては、90質量%程度以上、好ましくは94質量%程度以上、95質量%程度以上、さらに好ましくは96質量%程度以上含有されていることが好ましい。
【0041】
(絶縁膜)
絶縁膜3は、電極膜と第2反射膜2とを電気的に絶縁させる機能を有する。このような絶縁膜3は、第1反射膜1の絶縁性膜と同様に、好ましくは酸化物とし、さらに好ましくはSi、Alよりなる群から選択された少なくとも一種の元素の酸化物とする。具体的には、SiO
2、Al
2O
3等とし、好ましくはSiO
2を使用する。絶縁膜3の厚さは特に限定するものではなく、10nm〜2μm程度の厚さで形成可能であり、100nm以上500nm以下とすることが好ましい。
【0042】
(光反射構造の形成パターン)
光反射構造17,18のパターン(平面視形状)は、任意のパターンを使用できる。好ましい開口部の形状としては、線状、縞状、格子状、島状とする。
図1の例では、光反射構造18の開口部45が島状にパターニングされている。光反射構造が開口部を備えることで、半導体素子構造20(又は透光性導電膜)の露出領域が形成される。このように部分的に半導体素子構造20が露出され電極膜と電気的に接続されるような構造とすることで、この領域が導通経路となり、接触抵抗を実質的に低減して順方向電圧を低下させることができる。なお、光反射構造17,18の形成パターンは上記の例に限られず、例えば開口部の形状を円形、楕円形、矩形状、多角形状などとしたり、また光反射構造17,18を島状、例えば矩形状のパターンに形成し、その矩形状のパターンの縦横幅を適宜変更したり、その島状の形状を三角形状や円形、半円形、多角形状としたり、これらの配置を千鳥状としたり、種々の形成部・開口部の形状、配置としても良い。また全体に均一に配置する例に限られず、領域ごとに大きさや密度を適宜変更したり、上記のパターンを組み合わせたりすることもできる。
【0043】
さらに、光反射構造は、p型半導体層上のみに設けられるなど、いずれか一方の導電型の半導体層上に設けられてもよいし、両方の導電型の半導体層上に設けられてもよい。例えば窒化物半導体発光素子では、基板上にn型半導体層、p型半導体層の順に積層されることが多く、加えて同一面側に各導電型の電極が形成される場合には、発光領域の面積を大きくするために、n側電極、及びn型半導体層の露出部は小さく又は細く形成され、p側電極に比べn側電極において電流密度が高くなるため、本発明の光反射構造は特にそのようなn型半導体層上に設けられることで、より効果が発揮される。
【0044】
また、光反射構造17,18が、第1電極30及び第2電極40の両方に形成されれば、両領域に進行した光を選択的に反射して、光の損失を効率的に低減できる。また、実施の形態1の発光素子では、両電極30,40が同一面側に配置されているため、両方の電極に光反射構造を形成すれば、発光素子の主面のほぼ全体に光反射領域を備えることとなり、光取り出し効率を高めることができる。また、
図1の発光素子において、両方の電極30,40に各々形成される光反射構造17,18の光学的特性は略同じとする。両電極に設けられる光反射構造が略同じであると、該発光素子の発光色のムラを低減できる他、両方の光反射構造を同時に形成することにより製造工程の簡略化が図れる。一方、各電極30,40に設けられる各々の光反射構造17,18は、その光学的特性に差を設けても良い。例えば、電極の部位による光の入射角度や、該発光素子上に設けられる波長変換部材との離間距離などを考慮して、第1及び第2反射膜1,2を構成する各層の膜厚を決定することができる。
【0045】
(電極膜)
半導体素子構造20上に光反射構造17,18が形成された後、半導体素子構造20に電気的に接続される電極膜32,42が形成される。電極膜32,42は、n型半導体層及びp型半導体層、適宜設けられた透光性導電膜、並びに光反射構造17,18に接して、第1電極30及び第2電極40としてそれぞれ形成される。電極膜32,42は、発光素子と外部電極とを電気的に接続させ、パッド電極として機能する。例えば、電極膜表面にAuバンプのような導電部材を配置し、導電部材を介して、発光素子の電極と、これに対向して配置された外部電極との電気的接続させる。電極膜32,42には既存の構成が適宜採用でき、例えばAu、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Tiのいずれかの金属またはこれらの合金やそれらの組み合わせから成る。電極膜32,42の一例として、下層側からTi/Pt/Au、もしくはTi/Rh/Auの積層構造が採用できる。本実施の形態において、電極膜32,42は透光性導電膜31,41の少なくとも一部に接して形成されているが、電極膜の一部が、透光性導電膜に設けた貫通孔内に延在させて、あるいは透光性導電膜より外側にて、半導体層に直接接触する接触部として設けられてもよい。電極膜の一部にこのような接触部が設けられることによって、電極膜と半導体素子構造との密着性を高めることができる。また、各導電型の半導体層に形成される電極膜は、用いる金属の種類や膜厚を同じ構成とし、同時に形成することで、別々に形成する場合と比較して、電極膜の形成の工程を簡略化することができる。別々に設ける場合のn側電極は、例えば、半導体層側から順に積層させたW/Pt/Au電極(その膜厚として、例えばそれぞれ20nm/200nm/500nm)や、さらにNiを積層させたW/Pt/Au/Ni、あるいはTi/Rh/Pt/Au電極等が利用できる。
【0046】
(保護膜)
電極膜を形成した後、外部の電極や端子等との接続領域を除いて半導体発光素子のほぼ全面に絶縁性の保護膜50を形成できる。したがって、n側電極部分及びp側電極部分を被覆する保護膜50に、開口部33,43が各々形成される。保護膜50にはSiO
2、TiO
2、Al
2O
3、ポリイミド等が利用できる。なお、絶縁膜3と保護膜50とを同一部材で併用させてもよく、すなわち保護膜と絶縁膜とを同一工程、同一膜として形成することで工程簡略化でき好ましい。
【0047】
なお、以上の例ではp側電極およびn側電極が同一面側に存在する発光素子をフリップチップ実装する例を説明したが、本発明は対向電極構造の発光素子にも採用できる。対向電極構造の発光素子では、少なくとも、発光素子を載置する配線基板側の電極に、光反射構造を設けることで、該光反射構造へと進行した光を、対向する光取り出し表面側へ反射することができる。また、光取り出し表面側に形成された電極に光反射構造を形成して、電極への光吸収を抑制し、これにより外部量子効率を高めてもよく、両主面に光反射構造を設けることもできる。またフェイスアップ実装の発光素子において、光取り出し側の電極に本発明の光反射構造を設けてもよい。さらに、半導体層の側面若しくは発光構造の側面、又は素子表面の領域に、光反射構造を設けること、例えば保護膜に対応して重畳的に設けることができる。
【0048】
<実施の形態2>
図5は、実施の形態2に係る発光素子の光反射構造の周辺を部分的に拡大した概略断面図である。
図5に示す例の発光素子において、上述の実施の形態1と実質上同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0049】
本実施の形態2の光反射構造17,18では、第1反射膜1は、透光性導電膜31,41の略平坦な表面に形成され、その上面である被覆部36,46下の略平坦な表面から連続して、その表面から内側に傾斜する傾斜面の側面を有しており、すなわち、半導体層20側に対面する傾斜面であり、導通部35,45側に近づくほど膜厚が小さくなっている。また第2反射膜2は、第1反射膜上に形成され、さらに絶縁膜3は、第2反射膜上に形成され、同様に各膜の被覆部側の上面から連続して内側に傾斜する側面を有しており、導通部側に近づくほど膜厚が小さくなっている。このように、この光反射構造17,18の側面は、その上面である略平坦な表面から中央部側に傾斜する傾斜面となっている。したがって、本実施の形態2における光反射構造17,18は、その端部に実施の形態1の光反射構造とは逆方向に傾斜する傾斜部を有しており、第2反射膜2の延出部17a,18aは、第1反射膜1から導通部35,45に延出している。このように、第1反射膜1が導通部35,45に面する側面を有し、延出部17a,18aは第1反射膜1の側面上に設けられてもよい。
【0050】
このような形態の光反射構造17,18では、導通部35,45において、縦方向に流れる電子は横方向に拡散しながら半導体層へ流れていくが、第2反射膜の延出部17a,18aが絶縁膜3より中央部側に設けられていることにより、絶縁膜3が第2反射膜2より導通部側に突出した突出部が導通部内の電子の流れを狭窄する作用を奏し、第2反射膜2に対する電極膜32,42からの電子の衝突確率が減少すると考えられ、第2反射膜の金属原子のエレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0051】
なお、このような形態の光反射構造17,18は、その上面から外側に向かって傾斜した傾斜面の側面を有する保護膜を用いて、光反射構造を構成する各膜を順次成膜することで、実施の形態1と同様に生産性良く形成することができる。具体的には、透光性導電膜上に上記形状の保護膜をパターン形成した後、第1反射膜を成膜すると、保護膜の開口部内に、断面が略逆台形状の第1反射膜が形成される。続いて、その上に第2反射膜を成膜すれば、第1反射膜の上面の略平坦面上に、第1反射膜の上面よりも幅広な上面を有する、断面が略逆台形状の第2反射膜が形成される。さらに、この上に成膜される絶縁膜、またその間に介する介在層についても、順次成膜すれば、その下層の上面より幅広な上面を有する、断面が略逆台形状の膜が形成される。このとき、実施の形態1のように、第2反射膜やその上に形成される層は、その下層の傾斜する傾斜面の側面と保護膜の側面との隙間に回り込んで成膜され、その下層の側面の一部を被覆するように該下層の側面上に形成され、ここに第2反射膜の延出部が形成されてもよい。
【0052】
さらに、このような実施の形態2の光反射構造17,18においては、電極膜の成膜工程において、光反射構造17,18と電極膜32,42との間、特に光反射構造の側面の下部(第1反射膜1の側面近傍)に空隙19が設けられる可能性がある。しかしながら、この空隙19により部分的に光反射構造と電極膜とが空間的に分離され、空隙19が電気的障壁として好適に作用し、電極膜から第2反射膜2に横方向へ電流が流れることを抑制することができる。
【0053】
(発光装置)
本発明の発光素子は、配線基板、パッケージ基体、リードフレーム等の実装基体上に実装して発光装置としてもよく、それに発光素子を封止する樹脂やレンズ等の透光性部材を付加してもよい。また発光素子には、該発光素子の光により励起される蛍光体を含有する波長変換部材を、接合又は接着する、若しくは上記透光性部材中に混在させる、などして付加することができる。本発明の発光素子は、金属の第2反射膜を含む光反射構造としているため、広範囲の波長の光に対して高い反射率を有しており、発光素子の周囲に配置される蛍光体から出射される波長変換光についても効率良く反射することができる。また、信頼性の高い光反射構造であるため、長時間・高電流駆動においても、輝度・色ムラの発生を抑制し、安定した発光が得られる発光素子、発光装置とすることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0055】
<実施例1>
実施例1の発光素子として、
図1に示す構成のLEDチップを作製する。まず、MOVPE反応装置を用い、2インチφのサファイア基板1の上にGaNよりなるバッファ層を20nm、Siドープn型GaNよりなるn型コンタクト層21を4μm、ノンドープIn
0.2Ga
0.8Nよりなる単一量子井戸構造の活性層22を3nm、Mgドープp型Al
0.1Ga
0.9Nよりなるp型クラッド層(23)を0.2μm、Mgドープp型GaNよりなるp型コンタクト層(23)を0.5μmの膜厚で順に成長させる。
【0056】
さらにウエハを反応容器内において、窒素雰囲気とし温度600℃でアニーリングして、p型窒化物半導体層23をさらに低抵抗化する。アニーリング後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp型GaNの表面に所定の形状のマスクを形成し、エッチング装置でマスクの上からエッチングを行い、
図1に示すようにn型コンタクト層21の一部を露出させる。
【0057】
次に、p型窒化物半導体層の上のマスクを除去し、最上層のp型GaN(23)のほぼ全面並びに露出されたn型コンタクト層21上に透光性導電層41,31としてITOを800nmの膜厚でスパッタする。
【0058】
次に、上面から内側に向かって傾斜した傾斜面の側面を有するマスクを、p型及びn型コンタクト層上に各々成膜されたITO上に各々形成する。このとき、p型コンタクト層上には、一辺10μmの正方形のマスクが格子状の格子点(間隔は30μm)に配列されるようにパターン形成する。他方、n型コンタクト層上には、直径100μmの半円形状の1つの開口部を有するマスクを形成する。
【0059】
そして、この上にスパッタにより、第1反射膜1の透光性絶縁膜としてSiO
2を500nmの膜厚で成膜し、さらに第1反射膜1の誘電体多層膜としてNb
2O
5/SiO
2(膜厚55nm/90nm)を3ペア積層する。さらに続けて第2反射膜2としてAl(Cu含有)を200nmの膜厚で成膜し、続いて、密着層としてTiを100nmの膜厚で成膜する。さらに、その上に絶縁膜3として膜厚200nmのSiO
2を成膜した後、マスクを除去して、光反射構造17,18を得る。
【0060】
このような光反射構造17,18を介して、p型コンタクト層の上のほぼ全面並びに露出されたn型コンタクト層上に、スパッタによりTi/Pt/Au(膜厚1.5nm/200nm/500nm)の積層構造のパッド電極42,32を各々成膜する。これにより、電極膜は光反射構造の表面と半導体層の露出面とを被覆して被覆部36,46と導通部35,45とを有し、光反射構造の第2反射膜には、第1反射膜の傾斜部上に絶縁膜から延出して電極膜に接する延出部17a,18aが形成される。
【0061】
以上のようにして、n型コンタクト層とp型コンタクト層とに電極膜を形成したウエハを、1mm角のチップ状に切断してLEDチップを得る。
【0062】
<比較例1,2>
比較例1の発光素子として、実施例1における絶縁膜3のみを除いて光反射構造17,18を形成する以外は、実施例1と同様に作製する。また比較例2の発光素子として、実施例1における第2反射膜2と絶縁膜3を除いて光反射構造17,18を形成する以外は、実施例1と同様に作製する。
【0063】
実施例1及び比較例1の発光素子を、温度85℃、電流値1600mAで1000時間駆動させると、比較例1の発光素子では、Alのエレクトロマイグレーションの発生によってn側パッド電極の一部に変色が観測されるが、実施例1の発光素子では外観に異常は見られない。また実施例1及び比較例2の発光素子を、室温、電流値350mAで駆動させると、比較例2の発光素子は順電圧3.14V、光出力568mWで発光するが、実施例1の発光素子は順電圧3.14V、光出力598mWで発光し、光出力が比較例2の発光素子より5%以上高い。