(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スパッタ装置による被処理体への処理に影響しない位置に、前記スパッタ源を透過する前記投光手段から照射された光を検出する受光手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のスパッタ源終端検出機構。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るスパッタ源終端検出機構について、
図1および
図2を参照して詳細に説明する。本発明の第1実施形態に係るターゲット終端検出器(スパッタ源終端検出機構)10は、既存のイオンビームスパッタ装置20に設けられて、ターゲット(スパッタ源)T1が使用継続困難な残量になったことを検出する。まず、イオンビームスパッタ装置(以下、適宜スパッタ装置)20の構成について説明する。
【0020】
(イオンビームスパッタ装置)
スパッタ装置20は、公知のイオンビームスパッタ装置であり、その一例として
図1に示すように、処理室(真空処理室、チャンバ)21と、処理室21を真空(減圧)状態に排気する排気系22と、処理室21にイオンビームを放出するイオン源23と、イオン源23にイオン種としてArガス等を供給するマスフローコントローラ(MFC)24と、ターゲットT1を載置するターゲットホルダ(スパッタ源ホルダ、スパッタ源載置部材)25と、被処理体Wを載置するワークステージ27と、処理室21と開閉可能なシャッタを隔てて接続された予備室(図示省略)と、予備室と処理室21のワークステージ27との間で被処理体Wを出し入れする搬送系(図示省略)とを備える。
【0021】
排気系22は、真空ポンプや自動圧力制御器(APC:Auto Pressure Controller)等を備えて処理室21を所望の圧力(真空状態)に制御する。イオン源23は、イオンビームをターゲットT1に向けて放出するイオン銃およびイオンを引き出す電源等を備える。ターゲットホルダ25は、ステンレス鋼等で形成され、表面にターゲットT1がネジ等で固定して取り付けられ、内部に水を循環させてターゲットT1を冷却する(
図2(c)参照)。スパッタ装置20においては、ターゲットホルダ25は、四角柱形状(
図1においては正方形)の基台の4面それぞれに設けられ、ターゲットT1を4枚まで取り付けることができ、基台を回転することで、処理室21を開放することなく所望のターゲットT1を被処理体W(ワークステージ27)およびイオン源23に対向させて膜材料とすることができる。ワークステージ27は、被処理体WをターゲットT1に対向させて載置する。予備室は、処理室21への被処理体Wの出し入れの際の、処理室21の真空状態や雰囲気の変化を抑制するために設けられて、処理室21の排気系22とは別の排気系等で圧力を制御される。
【0022】
スパッタ装置20によるスパッタリングおよび成膜について説明する。スパッタ装置20には、金属材料からなるターゲットT1とウェハ等の被処理体Wが、それぞれ
図1に示す所定の位置に載置されている。排気系22およびマスフローコントローラ24により10
-4Torr程度に減圧されたAr雰囲気の処理室21において、イオン源23によりイオンビームが照射される。イオンビームはそのイオンビーム束がターゲットT1の表面に対して45°傾斜して入射し、イオンがターゲットT1に衝突することで、表面からターゲットT1が粒子状となって飛散し(スパッタリング)、ターゲットT1に表面を対向させて載置された被処理体Wの表面に付着して、ターゲットT1と同じ金属材料からなる膜を形成する。なお、ターゲットT1の表面とは、スパッタリングされる側の面(スパッタリング面)を指し、この面を被処理体W等に対向させてターゲットホルダ25に載置され、裏面がターゲットホルダ25の表面に接触していることで冷却される。
【0023】
したがって、イオンビームスパッタ装置20においては、ターゲットT1は、イオンが衝突した領域に限定してスパッタリングされて、表面から消耗する。ターゲットT1の表面において、イオンのほとんどはイオンビームが入射される領域(イオンビーム入射領域T1a)に集中して衝突し、特にその中心すなわちイオンビーム束の中心(
図2(a)、(c)に一点鎖線で、
図2(b)に十字で示す)が到達する部位に最も多くかつ高速にイオンが衝突する。したがって、ターゲットT1は、この部位を中心としてすり鉢状に消耗するが、イオンビームスパッタ装置20のスパッタ速度は全体として遅いため、極めて浅いすり鉢状となる(
図2(c)参照)。なお、イオン源23のイオン銃から略真円のイオンビーム束が45°傾斜してターゲットT1に入射するため、
図2(b)に示すように、イオンビーム入射領域T1aは前記傾斜方向に長い楕円形となる。成膜面積(被処理体Wの大きさ)等のスパッタ装置20の能力にもよるが、例えば直径50mmのイオンビーム束のイオンビームを照射するイオン源23を備えるスパッタ装置20においては、φ6inch(直径150mm)、板厚5mmの円板形状のターゲットT1が使用される。また、スパッタ装置20においては、イオンビーム束の中心がターゲットT1の表面の中心に到達するものとする。したがって、ターゲットT1は、その面内中心に最も孔が開き易いといえる。なお、ターゲットT1の消耗に伴い、表面の高さ位置が推移するため、厳密にはターゲットT1のイオンビーム束中心が到達する位置はシフトするが、その距離は十分に小さいため、位置は固定されているとみなすことができる。
【0024】
(ターゲット終端検出器)
ターゲット終端検出器10は、
図2(a)〜(c)に示すように、スパッタ装置20のターゲットホルダ25表面に形成された溝(凹部)25cに収納されて、ターゲットホルダ25の表面を局所的に発光させる導光体11と、導光体11に接続されて導光体11を発光させる光源12とを備える。すなわち、ターゲット終端検出器10は投光手段であるといえる。
【0025】
導光体11はその外形を線状や棒状に形成され、ターゲットT1の裏面に沿うように、すなわちターゲットホルダ25の表面に沿って配置され、さらにターゲットホルダ25の外側へ延設されて、その一端に光源12が接続される。導光体11は、光源12からの光を長さ方向に伝搬させて、ターゲットホルダ25の表面から光を放出し、取り付けられているターゲットT1の裏面に向けて光を照射する(
図2(c)参照)。したがって、導光体11は、光を伝搬させ、かつ放出するように構成され、ガラス、樹脂、石英等の透光性を有して処理室21の環境において耐久性を有する材料で形成され、その形状は、丸棒状、角棒状、または管状が好ましく、中空でもよいがコア・クラッド構造の光ファイバが特に好ましい。
【0026】
導光体11が管状である(
図2(c)参照)場合は光が管の内部(コア)を長さ方向に進行するため、光源12から光が効率的に伝搬される。そして、ターゲットホルダ25の表面から光が漏れる(照射される)ように、この領域(発光部11a、
図2(b)参照)における導光体11の表面を粗面化して用いることができる。導光体11は、反対に、前記領域以外すなわち発光させる必要のない領域、例えば光源12から当該導光体11の発光部11aへの光の経路(導光部11b、
図2(b)参照)においては、処理室21に光が漏出しないように表面を被覆することが好ましい。
【0027】
また、本実施形態においては、
図2(b)に示すように、導光体11は直線状に形成されてターゲットT1の面内中心を通る直線に沿って設けられているが、これに限られず、ターゲットホルダ25の裏面を曲線状に沿うように形成されてもよいし、軟質の材料を適用したり細く(径を小さく)して、可撓性を有して自在に曲げられるように形成されてもよい。ただし、後記するように、導光体11は、少なくともターゲットT1の最も薄肉化の進行が速い部位すなわち面内中心の直下に配置されるようにする。また、導光体11は、例えば、発光部11aに石英棒、導光部11bに可撓性を有する光ファイバ等、異なる材料を接続して形成されてもよい。
【0028】
このようなターゲット終端検出器10を搭載されるために、スパッタ装置20において、ターゲットホルダ25は、その表面に導光体11の形状に合わせて溝25cが形成される。なお、ターゲット終端検出器10の構成の説明において、上下とはターゲットT1の板厚方向(
図2(c)における上下)を指し、平面とはターゲットT1の表面(スパッタリング面)に平行な面を指す。
【0029】
導光体11の大きさは特に規定されないが、ターゲットホルダ25の表面から十分な量の光を放出でき、一方、ターゲットホルダ25の水冷系によるターゲットT1の冷却を妨げないように、径(外径)は1〜数mm程度が好ましい。導光体11の長さは、スパッタ装置20における光源12の位置に応じて設定すればよく、また、本実施形態においては、平面視で導光体11の両端がターゲットホルダ25から突出して設けられているが、ターゲットホルダ25の溝25cに収納される領域の長さは規定されず、少なくともターゲットT1の最も薄肉化の進行が速い(光を透過する厚さに最初に到達する)と予測される部位の直下から光を放出できるように発光部11aを形成する。このような部位は、前記した通り、ターゲットT1の、イオンビームのイオンビーム束中心が到達する面内中心であるが、本実施形態に係るターゲット終端検出器10は、導光体11を、かかる一点だけでなく、
図2(a)、(b)に示すように、この点を含んでイオンビーム入射領域T1aを横切る直線、特に楕円形であるイオンビーム入射領域T1aの長軸の直下に設ける。
【0030】
光源12はLED電球等の公知の発光手段を適用でき、導光体11の大きさ(径)や、ターゲットホルダ25の表面で発光させる(ターゲットT1の裏面に照射する)光の量に応じて、出力や大きさ等の仕様が選択される。本実施形態においては、光源12はターゲットホルダ25の外に設ける構成としたが、ターゲットホルダ25の溝25cに収納されてもよく、導光体11は発光部11aのみとして直接に光源12に接続される。この場合の光源12は、ターゲットホルダ25と絶縁して溝25cに収納可能な大きさであることはもちろん、発熱が少なく駆動電流の小さい小出力の発光手段を適用することが好ましく、具体的にはチップLEDが挙げられる。あるいはさらに、複数のチップLEDで線状光源を形成して、導光体11(発光部11a)と光源12を一体としてもよく、並列または直列に接続した複数のチップLEDを溝25cに収納して、両端から電源(
図2(a)参照)の+,−に接続する。
【0031】
光源12を駆動するための電源は、スパッタ装置20の処理室21の外に設けられ、例えば処理室21の壁に設けた市販の電流導入端子を経由して電流を供給することができる。また、電源から光源12に電流を供給する配線は、スパッタ装置等の真空処理室用として一般的に適用される、絶縁のためにセラミックス製の穴あきガイシを連結するように取り付けた銅線を適用すればよい。
【0032】
図2(c)を参照して、本実施形態に係るターゲット終端検出器10による、ターゲットT1の使用限界(終端)検出方法を説明する。
ターゲットホルダ25上のターゲットT1が、導光体11が配置された領域(
図2(c)における導光体11の直上)において十分に厚い場合は、金属製のターゲットT1は厚さ方向に光を透過しないため、導光体11から発光する光は、ターゲットT1に遮られてターゲットT1の表面の側(
図2(c)における上)で検知することはできない。スパッタ装置20による処理回数が累積されて、前記したようにターゲットT1がイオンビームのイオンビーム束中心を最深部としたすり鉢状に減肉して(
図2(c)右の拡大図に破線で示す)、導光体11の直上において光を透過する厚さ、具体的には50nm程度以下になった部位が発生すると、ターゲットT1のこの部位を、導光体11が発光した光が透過して、ターゲットT1の表面の側で検知されるようになる。
【0033】
前記した通り、導光体11は、ターゲットT1の最も薄肉化した部位(最薄部)となり易い面内中心の直下に設けられるが、この中心だけでなく直線状に設けられることで、ターゲットT1の最薄部が導光体11の長さ方向に沿ってずれた場合であれば、この最薄部が光を透過する厚さになり次第、検知可能となる。また、ターゲットT1の最薄部が導光体11の直上からずれた場合であっても、前記した通り、ターゲットT1は極めて浅いすり鉢状に減肉するため、面内位置のずれによる板厚の差は小さく、ずれが大きくなければ、最薄部に孔が開くよりも十分に早い時点で導光体11の直上で光を透過する厚さとなって、検知可能となる。なお、本実施形態においては導光体11を1本備える構成としたが、ターゲットT1の冷却を妨げない範囲で2本以上設けて、ターゲットT1の減肉形状の面内におけるずれに適応させてもよい(後記第2実施形態参照)。
【0034】
ターゲットT1を透過した光を検知するために、例えば
図1に示すように、スパッタ装置20の処理室21の壁にガラス板等を嵌めこんだ窓21aを設けて、処理室21(スパッタ装置20)の外から目視等で光を検知することができる。詳しくは、処理室21の壁の、ターゲットT1の表面を観察することができる位置に窓21aを設ける。また、処理室21には、ターゲット終端検出器10の導光体11が発光する光以外の光(外光等)ができるだけ存在しない状態として、ターゲットT1を透過した光が検知され易いようにする。窓21aから処理室21を覗いて、取り付けられているターゲットT1の表面の一部(イオンビーム入射領域T1aにおける1点)が光って見えるようになるとターゲットT1が使用限界に到達したと判定することができる。
【0035】
このような検査は、常時行い続ける(モニタリングする)必要はなく、例えば新たな被処理体Wをワークステージ27上に搬入して成膜を開始する前にその度に検査を行ってもよいし、さらには所定数の被処理体Wに成膜する度に検査を行ってもよい。特にイオンビームスパッタ装置20においては、形成する膜の厚さが200nm以下、特に薄い場合は1nm未満であり、1回の成膜によるターゲットT1の消費量が極めて少ないため、ターゲットT1が最薄部において光を透過する厚さ(50nm程度以下)になっても、厚さが0になる(孔が開く)までは、ある程度の回数(成膜条件等による)を処理することができる。したがって、導光体11も常時発光している必要はなく、検査時に手動または自動で光源12を点灯させればよい。また、
図1に示すように複数のターゲットホルダ25を備えたスパッタ装置20においては、それぞれのターゲットホルダ25に溝25cが形成されてターゲット終端検出器10を備え、使用する(被処理体Wに対向している)ターゲットT1が取り付けられたターゲットホルダ25におけるターゲット終端検出器10の光源12のみを点灯させるように構成することが好ましい。
【0036】
このように、第1実施形態に係るターゲット終端検出器は、スパッタ装置のターゲットホルダ表面に所定の形状の溝を形成するだけで搭載することができ、既存のイオンビームスパッタ装置に容易に適用することができる。特に、処理室には光源等の投光手段とその駆動電流を供給するための配線のみを設ければよいので、当該スパッタ装置における処理(スパッタリングおよび成膜)の妨げにならないように搭載することができる。また、ターゲット終端検出器の導光体を設ける位置すなわちターゲットホルダの溝を形成する位置は、イオンビーム入射領域に対応して設定されるため、当該スパッタ装置において原則的に固定されているといえ、簡素な構造で確実にターゲットの使用限界を検出することができる。さらに第1実施形態に係るターゲット終端検出器によれば、ターゲットが光を透過する厚さ50nm程度に薄肉化した段階で使用限界として検出されるため、孔の開く直前までターゲットの使用を継続でき、コスト低減および生産性向上の効果が得られる。
【0037】
(変形例)
第1実施形態の変形例に係るターゲット終端検出器について説明する。本変形例は、前記第1実施形態と同じイオンビームスパッタ装置20(
図1参照)に設けられ、熱伝導率の低い焼結材料や、絶縁性の材料からなるターゲットT2の使用限界を検出するターゲット終端検出器10である。このような低熱伝導性または絶縁性のターゲットT2は、一般的に、その裏面に銅等の金属製のバッキングプレート(スパッタ源載置部材)26が予め接着され、バッキングプレート26ごとターゲットホルダ25に取り付けられる。したがって、導光体11をターゲットホルダ25の表面で発光させてもターゲットT2の裏面に光を照射することができない。そこで、本変形例に係るターゲット終端検出器10は、以下の態様で使用される。なお、本変形例に係るターゲット終端検出器10は、その使用態様が異なるだけであり、第1実施形態と同様に導光体11およびこれに接続された光源12を備え、各要素の構成(材質、形状等)も第1実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0038】
本変形例に係るターゲット終端検出器10は、
図2(d)に示すように、バッキングプレート26の表面(ターゲットT2の裏面が接着される面)に導光体11が配置されて、ターゲットT2の裏面に光を照射する。すなわち、ターゲット終端検出器10を搭載するために、バッキングプレート26は、
図2(c)右の拡大図に示すように、ターゲットT2が接着される前に溝(凹部)26cが表面に形成されている。溝26cの形状や面内位置等は、
図2(b)に示す第1実施形態におけるターゲットホルダ25の溝25cと同様であるため、説明を省略する。そして、この溝26cにより、接着されたターゲットT2とバッキングプレート26との間に細い穴(隙間)が形成されるため、本変形例においては、ターゲットT2をターゲットホルダ25に取り付ける際に、前記の穴に導光体11を差し込んで通せばよく、これによりターゲット終端検出器10が搭載される。なお、バッキングプレート26とターゲットT2との間の細い穴に導光体11を通すため、バッキングプレート26表面における溝26cの形状は直線状等の通し易いものとしたり、曲線状の場合は導光体11を変形可能な構成とすることが好ましい。
【0039】
本変形例に係るターゲット終端検出器10は、第1実施形態と同様に導光体11がターゲットT2の裏面に光を照射するので、ターゲットT2の使用限界(終端)検出方法およびターゲットT2を透過した光を検知する方法は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0040】
なお、透光性を有する材料からなるターゲットは、板厚が使用限界に到達するよりも厚い状態で、さらにはスパッタ装置20への取り付け時(新品)でも光が透過するため、ターゲット終端検出器10による終端検出は困難である。ただし、光をある程度吸収する(透過率が100%に対して十分に低い)材料であれば、光の量を検出(測定)可能な受光手段を備えて(図示省略)、ターゲットを透過した光の量により、ターゲットの厚さを計測することができる。そこで、ターゲットの使用限界となる厚さに相当する光の量を閾値として設定することにより、使用限界を検出することができる。あるいはさらにターゲットの材料について透過率の低い波長の光源を適用してもよい。
【0041】
このように、変形例を含めて第1実施形態に係るターゲット終端検出器10は、金属材料、絶縁材料のいずれの材料からなるターゲットT1,T2について、その使用限界を検出することができる。さらに
図2(d)に示すように、溝25cが形成されたターゲットホルダ25に、同じく溝26cが形成されたバッキングプレート26に接着されたターゲットT2を取り付けても何ら問題はない。したがって、ターゲット終端検出器10は、ターゲットホルダ25の溝25cから導光体11を取り外し可能に構成すれば、ターゲットの種類(材料)に応じて、導光体11を取り付ける(差し込む)溝25c,26cを替えて適用することができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係るスパッタ源終端検出機構について、
図3および
図4を参照して詳細に説明する。本発明の第2実施形態に係るターゲット終端検出器(スパッタ源終端検出機構)10Aは、既存のマグネトロンスパッタ装置30に設けられて、ターゲット(スパッタ源)T3が使用継続困難な残量になったことを検出する。まず、マグネトロンスパッタ装置(以下、適宜スパッタ装置)30の構成について説明する。
【0043】
(マグネトロンスパッタ装置)
スパッタ装置30は、公知のプレーナ型マグネトロンスパッタ装置であり、その一例として
図3に示すように、処理室(真空処理室、チャンバ)31と、処理室31を真空(減圧)状態に排気する排気系32と、プラズマ種としてArガス等を供給するマスフローコントローラ(MFC)34と、ターゲットT3の裏側に設けられて近傍に磁場を発生させる磁石(磁場発生源)33と、ターゲットT3を載置するターゲットホルダ(スパッタ源ホルダ、スパッタ源載置部材)35と、被処理体Wを載置するワークステージ37と、スパッタ電源38と、を備える。
【0044】
排気系32、ワークステージ37は、それぞれ第1実施形態におけるスパッタ装置20の排気系22、ワークステージ27と同様の構成であり、また、スパッタ装置30は、スパッタ装置20と同様に予備室および搬送系(図示省略)を備え、これらについては説明を省略する。磁石33は、永久磁石であり、ターゲットT3の面内において(平面視にて)同心円状に、中心部に円柱形状のN極を、このN極を囲んで円環形状のS極を、それぞれ配置して構成される(
図4(a)参照)。ターゲットホルダ35は、磁石33を内包し、また第1実施形態におけるターゲットホルダ25と同様に、ターゲットT3がネジ等で固定して取り付けられ、内部に水を循環させてターゲットT3を冷却する(
図4(c)参照)。スパッタ電源38は、陽極をワークステージ37(被処理体W)に、陰極をターゲットホルダ35(ターゲットT3)に、それぞれ接続する。
【0045】
スパッタ装置30によるスパッタリングおよび成膜について説明する。スパッタ装置30には、金属材料からなるターゲットT3とウェハ等の被処理体Wが、それぞれ
図3に示す所定の位置に載置されている。排気系32およびマスフローコントローラ34により10
-3Torr程度に減圧されたAr雰囲気の処理室31において、スパッタ電源38により所定の電圧が印加される。磁石33により発生する磁場により、磁力線に沿って電子が螺旋状に運動し、この電子の近傍にプラズマが発生してターゲットT3が表面からスパッタリングされ、陽極に帯電した被処理体Wの表面に付着して、ターゲットT3と同じ金属材料からなる膜を形成する(
図4(a)、(c)参照)。
【0046】
したがって、マグネトロンスパッタ装置30においては、ターゲットT3は、プラズマが発生した領域に限定してスパッタリングされ、さらにプラズマの濃度が高いほどその進行が速く、より多く消耗する。プラズマは、磁場が強いほど多く発生するので、磁石33の上方におけるN極とS極との中間領域、すなわち平面視でN極とS極との中間線が形成する円(円周)に沿ったドーナツ形状(円環状)に集中して発生する。その結果、ターゲットT3は、スパッタリングにより平面視にて前記プラズマの発生した領域と同じ円環状の領域(プラズマ発生領域T3a、
図4(a)、(b)参照)が減肉して消耗し、プラズマ発生領域T3aの中でも特にプラズマの濃度が高い前記の中心線である円(
図4(b)に二点鎖線で示す)の円周上に最も孔が開き易いといえる。1つの円の円周上においては、減肉は略均等に進行すると予測され、したがって、ターゲットT3においては、第1実施形態におけるイオンビームスパッタ装置20によるスパッタリングと異なり、最薄部を点で予測することが困難である。
【0047】
さらに、マグネトロンスパッタ装置30はスパッタ速度が速いため、いっそう確実な使用限界(終端)の検出が要求される。一方、磁石33のスパッタ装置30における位置が固定され、すなわち磁石33のターゲットT3に対する相対位置が固定されていることから、第1実施形態と同様に、スパッタ装置毎にターゲットの予測される最薄部が固定されているといえる。これに基づき、第2実施形態に係るターゲット終端検出器は以下のように構成される。
【0048】
(ターゲット終端検出器)
ターゲット終端検出器10Aは、第1実施形態に係るターゲット終端検出器10と同様の導光体11および光源12からなる投光手段を備え、さらに
図4(a)、(c)に示すように、スパッタ装置30のターゲットホルダ35表面に溝(凹部)35cが形成されて、導光体11が収納されているので、導光体11周辺における断面構造(
図4(c)右の拡大図)はターゲット終端検出器10とほぼ同じである(
図2(c)参照)。すなわち、ターゲット終端検出器10Aは、導光体11がターゲットT3の裏面に向けて光を照射し、ターゲットT3が、導光体11の直上において光を透過する厚さ(50nm程度以下)に薄肉化すると、導光体11が発光した光が透過して、ターゲットT3の表面(スパッタリング面)の側で検知されるようになる。
【0049】
前記した通り、マグネトロンスパッタ装置30においては、ターゲットT3の最薄部は円周上に連続して存在する。したがって、第1実施形態に係るターゲット終端検出器10と同様に、ターゲットT3の面内中心を含む直線状に導光体11を設けた場合(
図2(b)参照)、円環形状のプラズマ発生領域T3aの2箇所に均等に、導光体11が当該プラズマ発生領域T3aを径方向に沿って横切るように設けられる。ターゲットT3が、かかる導光体11の直上におけるいずれかの部位で光を透過する厚さに薄肉化すると終端を検出でき、ターゲットT3のスパッタ速度が円周方向において偏っていなければ、ターゲットT3に孔が開く前に検出することができる。
【0050】
本実施形態に係るターゲット終端検出器10Aは、次のように構成されることで、終端検出精度をより高いものにする。
図4(b)に示すように、ターゲット終端検出器10Aは、2本の導光体11,11を略90°に湾曲させて、平面視において十字の交点部分を欠いた形状にターゲットホルダ35に配置する。また、導光体11,11のそれぞれに光源12,12が接続され、2本の導光体11,11を同時に発光させる。このような構成とすることで、円環形状のプラズマ発生領域T3aの4箇所に均等に、導光体11が当該プラズマ発生領域T3aを径方向に沿って横切るように設けられ、プラズマ発生領域T3aにおける観測点が多くなり、検出精度が向上する。導光体11の本数および平面視形状はこれに限られず、ターゲットホルダ35の水冷系によるターゲットT3の冷却を妨げない範囲で、導光体11を配置すればよい。また、本実施形態では、導光体11,11のそれぞれに光源12,12を接続したが、例えば光ファイバ(導光部11b(
図2(b)参照))を介して、1つの光源12で2本以上の導光体11を発光させてもよい。
【0051】
ターゲットT3を透過した光を検知するために、第1実施形態(
図1参照)と同様に、スパッタ装置30の処理室31に窓を設けて、処理室31の外から目視等で光を検知してもよいが、本実施形態では、ターゲット終端検出器10Aは、
図3に示すように、光検出器(受光手段)13を処理室31に配置してさらに備える。
【0052】
光検出器13は、ターゲットT3を透過した光を検知可能であって、高濃度のプラズマに曝されたり被処理体Wへの成膜の妨げにならない位置に配置されることが好ましい。光検出器13は、公知の受光素子を適用することができ、この受光素子に膜材料が付着しないようにスパッタ装置30の外部からの信号にて開閉可能なシャッタを備える(図示省略)。あるいは、光検出器13は移動手段を備えて(図示省略)、検査時にターゲットT3の表面に対向するように移動されてもよい。光検出器13の受光素子およびシャッタの駆動電流は、光源12と同様に、第1実施形態で説明した方法で処理室31の外から供給することができる。受光素子はターゲットT3を透過した光を検知すると、外部の表示手段(図示省略)へ信号を送信して、ターゲットT3が使用限界に到達したことを通知する。
【0053】
このような検査は、第1実施形態と同じく常時行い続ける(モニタリングする)必要はなく、また、光検出器13の受光素子に膜材料が付着しないように、スパッタ装置30の処理中はシャッタを閉じて受光素子を覆っているため、検査を行うことはできない。すなわち、第1実施形態と同様に、所定数(1以上)の被処理体Wに成膜する度に検査を行えばよく、検査に合わせて光源12を点灯させ、光検出器13の受光素子に駆動電流を供給し、シャッタを開ければよい。この一連の操作は、プログラム等により、被処理体Wの搬送時等に合わせて自動的に行われるようにしてもよい。さらに、光検出器13の受光素子が光を検知して信号を送信したら、新たな被処理体Wの処理を行わない(処理室31への搬入を止める)ように設定してもよい。なお、このような光検出器13および一連の操作等は、第1実施形態におけるイオンビームスパッタ装置20に搭載したターゲット終端検出器10(
図1参照)においても適用することができる。
【0054】
このように、第2実施形態に係るターゲット終端検出器は、ターゲットが複雑な形状に減肉して消耗するマグネトロンスパッタ装置に適用して、ターゲットの使用限界を検出することができ、第1実施形態に係るターゲット終端検出器と同様に、既存のスパッタ装置に容易に搭載して、コスト低減および生産性向上の効果が得られる。また、ターゲット終端検出器の導光体の数や位置を工夫することで、終端検出精度を高くすることができる。また、ターゲットを透過した光を検知する光検出器を処理室に備えることで、ターゲットからより近い位置で光を検知することができ、より微弱な光を検知して早期に使用限界を検出することができる。
【0055】
以上、本発明に係るターゲット終端検出器を実施するための実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。