(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照射領域変更工程は、前記電子ビーム照射工程で用いられる1次光学系の1次レンズ系で前記電子ビームの照射方向を調整することにより行われることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の試料観察方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0029】
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る電子線装置100の全体構成図である。
図1において、本実施の形態に係る電子線装置100は、1次光学系10と、ステージ30と、2次光学系20とを備える。
【0030】
1次光学系10は、1次電子ビーム(1次電子線)を生成し、試料Sに向けて照射するための光学系である。本実施の形態に係る1次光学系は、電子ビーム(電子線)を用いた光学系であるので、1次電子光学系と呼んでもよい。1次光学系10は、1次電子ビームを生成する電子銃11と、生成した1次電子ビームの成形等行うアパーチャ12と、1次電子ビームを集束する1次レンズ系13とを備えてよく、これらは、真空容器51の中に設けられてよい。なお、詳しくは後述するが、1次レンズ系13は、1次電子ビームの照射方向を調整することができるので、1次電子ビームの照射領域の位置を変更することができる。従って、1次レンズ系13は、1次電子ビームの照射領域変更手段としての役割も果たす。また、1次レンズ系13により、1次電子ビームの試料S上での照射領域の相対移動も可能であるので、1次レンズ系13は、1次電子ビームの移動機構としての役割も果たす。なお、1次電子ビームの照射領域を、照野と呼んでもよい。
【0031】
1次光学系10は、更にウィーンフィルタ14と、対物レンズ系18とを備えてもよい。E×B分離器14は、ウィーンフィルタと呼んでもよく、平面上に直交する電界と磁界により、1次電子ビームの方向を変え、斜めから入射した1次電子ビームを試料Sのある鉛直方向下向きに向かわせる。そして、試料Sの構造情報を得た電子が発生したときには、それらの電子を、電界と磁界のローレンツ力により、そのまま鉛直上方へと送る。また、対物レンズ系18は、1次電子ビームの最後の試料Sへの入射の微調整を行うためのレンズである。
【0032】
なお、E×B分離器14は、その電圧印加条件を調整することにより、1次電子ビームの照射領域を変更することができる。従って、照射領域変更手段としての役割を、1次光学系10の1次レンズ系13と同様に担ってよい。
【0033】
また、対物レンズ系15と試料Sとの間には、1次電子ビームの照射光軸に関して軸対象の形状の電極(図示せず)を配置し、電源電圧により電圧制御するようにしてもよい。これにより、電子ビームが試料Sに入射するランディングエネルギー等を調整するようにしてもよい。
【0034】
ステージ30は、試料Sを載置するための試料台である。ステージ30は、例えば、モータ等の移動機構又は駆動機構を備え、水平面上のX−Y方向に2次元的に移動可能なX−Yステージとして構成してもよい。また、ステージ30は、主ハウジング60の中に設けられてよく、更に主ハウジング60内の防振台32の上に設けられて支持されてよい。主ハウジング60は、試料Sの検査等を行う処理室としてのワークチャンバを画成する。また、防振台32は、振動遮断装置として床からの振動を遮断する役割を有し、主ハウジング60の底壁上の振動が、ステージ30に伝達するのを防止する。
【0035】
ステージ30は、例えば、複数のテーブルを用いて、固定テーブル(図示せず)上にY方向に移動するYテーブル(図示せず)を載置し、Yテーブル上にX方向に移動するXテーブル(図示せず)を設け、これらの動きの組合せでX−Y方向に移動できるようにしてもよい。更に、Xテーブル上に回転可能な回転テーブル(図示せず)を設け、回転テーブル上にホルダ31を配置し、ホルダ31の試料載置面上に試料Sを固定して保持してもよい。ホルダ31は、ウエハ等の試料Sを機械的又は静電チャック方式で固定保持し、検査等が終了したら開放できるように構成してよい。
【0036】
ステージ30は、サーボモータ等の移動機構又は駆動手段、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、例えば上述のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面上でホルダ31に支持された試料Sを、照射される電子ビームに対して高い精度で位置決めできるように構成されてよい。位置決め制御は、ステージ制御ユニット33により行うようにしてよい。位置決めは、例えば、X方向、Y方向、Z方向及び試料の支持面に鉛直な軸線周りの回転方向(θ方向)について行うようにしてもよい。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ31上の載置面の基準位置を微細径レーザーによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザー干渉測距装置)によって検知し、その位置をステージ制御ユニット33内のフィードバック回路(図示せず)によって制御するようにしてもよい。また、例えば、試料Sが半導体ウエハである場合には、半導体ウエハのノッチ又はオリエンテーションフラットの位置を測定して、ウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブル(図示せず)を微小角度制御可能なステッピングモータ等により回転させて制御してもよい。なお、電子ビームに対するウエハの回転位置や、X、Y位置を予め後述する信号検出系又は画像処理系に入力することで、得られる信号の基準化を図ることもできる。
【0037】
2次光学系20は、1次光学系10による電子ビームの試料Sへ向けた照射により発生した、試料Sの試料構造の情報を得た電子を検出して試料Sの構造に関する像を得るための手段である。ここで、試料Sの試料構造の情報を得た電子には、電子ビームの試料Sへの入射により試料Sから放出された電子と、試料Sに入射する直前に反射した電子の双方を含んでよい。試料Sから放出された電子には、例えば、電子ビームの試料Sへの入射により弾性散乱により反射した、入射エネルギーをほぼ同様の反射エネルギーを有する反射電子、入射した電子ビームよりエネルギーの小さい2次電子の他、後方散乱電子等が含まれてよい。また、試料Sに入射する直前に、試料Sに入射することなく反射した電子には、ミラー電子が含まれてよい。ミラー電子は、例えば、試料Sの表面電位が、電子銃11の加速電圧と同じ程度の大きさのときに発生させることができる。ミラー電子も、試料Sから放出された電子と同様に、試料Sの構造に関する情報を取得できるので、これに基づいて試料Sの試料構造の像を得ることができる。
【0038】
2次光学系20は、2次レンズ系21と、検出器22を備えている。2次レンズ系21は、E×B分離器14により、1次光学系10から分離された2次電子を通すためのレンズであり、例えば静電レンズで構成されてよい。また、このレンズ系は、二次光学系20を通過する電子から得られる像を拡大する拡大レンズとしても機能する。検出器22は、2次レンズ系21を通過した電子を検出し、試料Sの試料構造の像を取得するための手段であり、その検出面が2次レンズ系21の結像面に配置されていることが好ましい。
【0039】
検出器22は、検出面上に複数の画素を備えた二次元型検出器が用いられる。従って、検出器22は、試料Sの構造情報を得た電子を、検出面の各々の画素で検出し、検出面上に像を結像させる。本実施の形態に係る電子線装置100は、検出電子の信号強度のみを、1画素ずつ検出して後でそれらを合成して像を得る走査型電子顕微鏡と異なり、所定の検出領域について像を投影させるので、写像投影型とも呼ばれている。本実施の形態に係る電子線装置100の検出器22には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、TDI(Time Delay Integration)−CCD又はEB−CCD、EB−TDI等の二次元型の複数画素を備えた検出器が適用されてよい。CCD及びTDI−CCDは、光の信号を検出するので、これらを適用する場合には、検出器22は、電子量を増幅するMCP(Micro−channel Plate)及び電子を光に変換する蛍光板を備えてよい。また、EB−CCD及びEB−TDIは、電子を直接検出面で検出できるので、これらを利用する場合は、検出器22にそのまま適用してよい。
【0040】
なお、検出器22の検出領域は、視野とも呼ばれており、本特許請求の範囲、明細書又は図面では、以後、視野領域と呼ぶこととする。検出器22の視野領域は、2次光学系20の2次レンズ系21の配置や構成、検出器22の配置等により定まるので、これらを固定すれば、視野領域は固定されることになる。
【0041】
検出器22は、検出面を有する検出ユニットの他、画像処理部(図示せず)を備えてよく、検出ユニットの検出面で検出された電子は、画像処理部にて画像処理が行われ、試料Sの試料構造についての画像電子データが取得されてよい。
【0042】
記憶装置23は、検出器22の画像処理部で取得された画像電子データを記憶するための手段であり、通常用いられているメモリ等が適用されてよい。
【0043】
コンピュータ40は、ディスプレイ41を備え、記憶手段23で記憶された試料Sの試料構造画像を表示する。また、試料構造画像に基づいて、試料Sの状態解析を行い、それらの結果から、例えばステージ制御ユニット33を制御するようにしてもよい。
【0044】
次に、
図1における本実施の形態に係る電子線装置100に関連する構成要素について説明を行う。本実施の形態に係る電子線装置100に関連する構成要素としては、光学顕微鏡(図示せず)と、ゲート弁61と、予備環境室(ミニエンバイロメント室)70と、プリアライナー72と、フープ73と、ターボ分子ポンプ74と、ドライポンプ75とを備える。
【0045】
まず、図示されていないが、本実施の形態に係る電子線装置100は、ステージ30上での試料Sの位置決めを行うためのアライメント制御装置を構成する光学顕微鏡を更に備えてよい。今まで説明した、電子光学系である1次光学系及び2次光学系は、高倍率に設定されているので、試料Sの粗い位置合わせを行うには、倍率が高すぎる場合がある。そのような場合には、低倍率の光学顕微鏡を設け、まず光学顕微鏡を用いて粗いアライメントを行い、次に電子光学系を用いて精密なアライメントを行うようにしてもよい。
【0046】
ゲート弁61は、主ハウジング60と予備環境室70との間に配置されており、両室間の連通と密閉遮蔽を制御する弁である。ゲート弁61を開放することにより、主ハウジング60と予備環境室70との間の試料Sの搬送を行い、ゲート弁61を閉じることにより、主ハウジング60内と予備環境室70内の個別の圧力制御(真空制御)が可能となる。
【0047】
予備環境室70は、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間を画成するハウジング71と、ミニエンバイロメント空間内で例えば清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置(図示せず)と、ミニエンバイロメント空間内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置(図示せず)と、ミニエンバイロメント空間内に配設されていて検査対象としての基板、ウエハ等の試料Sを粗位置決めするプリアライナー72を備えている。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに予備環境室70をシャットダウンできるように構成してもよい。
【0048】
ミニエンバイロメント空間内に配置されたプリアライナー72は、例えば試料Sがウエハの場合には、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(オリフラ)や、ウエハの外周縁に形成された単数又は複数のV型の切り欠き(ノッチ)を光学的又は機械的に検出してウエハの軸線周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくように構成してよい。プリアライナー72は、検査対象の粗位置決めを担当する。
【0049】
フープ(Foup)73は、複数枚、例えば25枚程度のウエハ等の試料Sが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセット(図示せず)を複数個保持するカセットホルダである。対象となる試料Sが半導体ウエハの場合は、カセット内に収納されるウエハは、これから検査を受けるウエハであり、検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、例えば、成膜工程、CMP(Chemical Mechanical Polishing)工程、イオン注入工程等による処理を受けたウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ又は配線パターンが未だに形成されていないウエハがカセット内に収納される。
【0050】
ターボ分子ポンプ74及びドライポンプ75は、予備環境室70内を真空排気するための真空ポンプである。大気圧及び低真空領域ではドライポンプ75をまず動作させ、ある程度の真空度が得られた段階で、更に真空度を高めて高真空とするために、ターボ分子ポンプ74を更に動作させる。これにより、予備環境室70内を真空状態とすることができる。
【0051】
なお、本実施の形態に係る電子線装置100の1次光学系には、真空ポンプが示されていないが、別途真空ポンプを設けて、1次光学系10、主ハウジング60、2次光学系20内を真空に保つように構成してよい。また、ターボ分子ポンプ74及びドライポンプ75で、電子線装置100の真空排気を兼用してもよい。
【0052】
次に、
図2を用いて、本実施の形態に係る電子線装置100の、電子ビームの照射領域の位置を視野領域に対して変更させる態様について説明する。
図2は、1次電子ビームの照射領域15と、2次光学系20の視野領域25との位置関係の態様を示した図である。
【0053】
図2(A)は、照射領域が視野領域に対して先行する態様を示した図である。
図2(A)において、(A−1)の態様は、視野領域25に対して、電子ビームの照射領域15の位置を紙面下側の−Y方向に移動させた態様を示している。(A−1)の態様において、試料Sは紙面上側の+Y方向に移動し、相対的に、電子ビームの照射領域15及び視野領域25は、試料Sの下側(−Y側)の方に移動してゆくものとする。以下、
図2に示す総ての態様についても、試料Sの移動方向は+Y方向、電子ビームの試料S上の相対的移動方向は−Y方向であると仮定する。
【0054】
(A−1)の態様においては、試料Sの移動方向(+Y)に対して、照射領域15が視野領域25にプレチャージ領域16の分だけ先行し、照射領域15が視野領域25の上側の領域の一部を覆っていない、非照射領域26を有する状態を示している。これは、照射領域15の面積を標準的な面積とし、そのまま照射領域15の位置を−Y方向に移動させる変更を行ったので、照射領域15で照射できない部分が発生したためである。照射領域15と視野領域25は、この状態を保ったまま試料S上を相対移動する。
【0055】
このような照射領域15と視野領域25との位置関係にあれば、照射領域15は、試料Sの移動方向に対して、常に視野領域25よりもプレチャージ領域16の分だけ先行していることになる。従って、試料Sは、視野領域25を検査する前に、プレチャージ領域16の分だけプレチャージが行われたのと同様の効果を得ることができ、試料Sの表面電荷を均一にすることができる。また、非照射領域26については、(A−1)の状態では、非照射領域26からは試料Sの構造情報を得た電子は発生せず、試料Sの構造情報を得ることはできないが、試料Sが+Y方向に移動することにより、照射領域15の中に移動するので、一連の検査動作の中では、非照射領域26についてもすぐ構造情報を得ることができるので、何ら問題は生じない。
【0056】
なお、照射領域15の位置の変更は、1次光学系10の1次レンズ系13により、1次電子ビームの照射方向を調整することにより行われてよく、1次レンズ系13が照射領域変更手段の役割を果たしてよい。または、照射領域15の位置の変更は、E×B分離器14の電圧印加条件を変更することによって行われてもよく、E×B分離器14に照射領域変更手段の役割を担わせてもよい。更に、プレチャージ領域16の幅の大きさは、これらの照射領域変更手段により、制御が可能である。従って、1次電子ビームの電流密度、試料Sの移動速度等を総合的に勘案し、プレチャージ領域16を定めることにより、プレチャージ量の精密な制御が容易に可能となる。
【0057】
このように、(A−1)の態様によれば、照射領域15を視野領域25に対して先行するように移動させることにより、プレチャージユニットを設けることなく、1次電子ビームのみでプレチャージを行ったのと同様の効果を得ることができる。しかも、プレチャージ領域16を制御することにより、プレチャージに要するドーズ量も精密に制御できる。
【0058】
(A−2)の態様は、照射領域15と視野領域25の中心は一致するが、(A−1)の態様における照射領域15の面積を拡大し、視野領域25の全体を照射領域15で覆うようにしたものである。試料Sの移動方向(+Y)に対して先行するプレチャージ領域16は、(A−1)の態様と同様に、視野領域25に対するプレチャージの機能を果たす。
【0059】
(A−2)の態様によれば、視野領域25内に非照射領域26を作らず、視野領域25全体から均一に試料構造の情報を得た電子を発生させることができるので、像むらの少ない均一な像を取得することができる。
【0060】
(A−3)の態様は、(A−2)の態様よりも照射領域15の拡大率を低くし、更に照射領域15の中心を視野領域25よりも先行させるとともに、視野領域25の全体を照射領域15で覆った態様である。
【0061】
(A−3)の態様によれば、照射領域15が視野領域25全体を覆うことができる範囲でプレチャージ領域16を最大限大きく取っているので、二次光学系20の取得画像の画像むらを少なくするとともに、プレチャージ領域16も可能な限り大きくしているので、限られた1次電子ビームの照射領域15において、最大限のプレチャージ効果を得ることができる。
【0062】
次に、
図2(B)の態様について説明する。
図2(B)は、プレチャージが少なくて済む場合の照射領域15と視野領域25との関係を示した図である。
【0063】
(B−1)の態様においては、視野領域25と照射領域15の中心は一致し、プレチャージ領域16があまり多くない状態で照射領域15が視野領域25を覆っている状態を示している。プレチャージ量があまり多く必要でないときには、(B−1)に示した様な態様としてもよい。
【0064】
(B−1)の態様によれば、視野領域25と照射領域15を近い大きさとし、プレチャージ領域16を小さく設定することにより、無駄なエネルギーを消費することなく、必要なプレチャージ量だけを効率よく得ることができる。
【0065】
次に、
図2(C)の態様について説明する。
図2(C)は、試料Sの移動方向(+Y)に対して、視野領域25が照射領域15よりも先行している態様を示した図である。
【0066】
(C−1)の態様においては、照射領域15の面積を標準的な大きさとし、試料Sの移動方向(+Y)に対して、視野領域25が先行し、照射領域15が遅れるように照射領域15の位置を紙面上側(+Y)方向に移動させる変更を行ったものである。
【0067】
後に詳説するが、電子ビームを照射してから所定期間は、試料Sからは弾性散乱による反射電子が放出される。従って、この反射電子を有効に活用して、試料Sの構造を検査したい場合には、(C−1)の態様が好適である。なお、(C−1)の態様においても、視野領域25の中に、非照射領域26が発生するが、ステージ30による試料Sの移動により、順次非照射領域26にも電子ビームが照射されてゆくので、試料構造の画像取得には何ら問題は生じない。
【0068】
(C−2)の態様は、視野領域25と照射領域15の中心は一致するが、(C−1)の態様と比較して照射領域15を縮小し、試料Sの移動方向(±Y方向)については、視野領域25の方が照射領域15よりもその幅が大きくなるようにした態様である。
【0069】
(C−2)の態様によれば、無駄な1次電子ビームを試料Sに照射することなく、小さなエネルギーで反射電子を有効に活用した検査等を行うことができる。
【0070】
(C−3)の態様は、電子ビームの照射手段として、点状のスポットビームを、X方向にスキャンさせた態様である。このように、視野領域25をスポットビームで試料Sの移動方向に垂直にスキャンさせることによっても、試料Sから反射電子を発生させ、これを利用した検査等を行うことができる。
【0071】
(C−4)の態様は、Y方向には1画素分の細い線形ビームを用いて、視野領域25の一部を照射した態様を示している。(C−2)と(C−3)の中間的な態様であり、(C−3)のように、スポットビームでX方向をスキャンすると、X方向にタイムラグが生じてしまうことから、かかるタイムラグを除去しつつ、最小の照射領域15により反射電子を発生させることを可能とする態様である。
【0072】
次に、
図3を用いて、ウエハのプレチャージ量に伴って、2次光学系20の検出器22が受ける電子量や電子の種類が変化する現象について説明する。本願の発明者は、この現象を見出し、これを利用して本実施の形態に係る電子線装置100及びこれを用いた試料観察方法を提案している。
【0073】
図3は、検出器22に達した電子量と、その電子の種類を経時的に示した図である。
図3(a)は、試料Sの表面電位と、検出器22への単位時間当たりの到達電子数の関係を示した図であり、横軸が試料Sの表面電位、縦軸が単位時間(秒)に検出器22に到達した電子数を示している。
【0074】
図3(a)において、20eV程度までの低ランディングエネルギー領域においては、プレチャージ初期では、反射電子が検出されている。この反射電子の量は、照射された電子に比べて少ないため、電子ビームの照射領域15は、時間の経過とともに負に帯電する。
【0075】
負の帯電が進むとともに、照射領域の表面ポテンシャルが負に増大し、電子ビームによる入射電子の実効的なランディングエネルギーが、照射領域のポテンシャルに対して低下する。よって、入射電子が反射しにくくなる。この段階で、ウエハからは、2次電子が発生して放出されるようになる。これ以降も、電子ビームによる入射電子の実効的なランディングエネルギーが表面のポテンシャルエネルギーに比べて大きいときには、電子のランディングが継続し、ついにはウエハ表面のポテンシャルエネルギーが電子のランディングエネルギーと同じになる。すると、入射電子は照射領域15に入射せず、ウエハ表面の直前で、ウエハ表面と接触せずに反射するようになる。これを、ミラー電子と呼ぶ。
【0076】
図3(a)において、ミラー電子が発生したときには、ウエハの表面電位は、もはや電子が入射されないので一定となり、検出器22への単位時間当たりの到達電子数も一定となることが示されている。
【0077】
なお、
図3(a)において、ウエハ表面の電位が固定されている場合において、表面ポテンシャルエネルギーが入射電子のランディングエネルギーより小さい場合には、常に反射電子が発生することになる。従って、例えば、ウエハ表面に接地電極がある場合には、その部分からは、常に反射電子が放出されることになる。
【0078】
図3(b)は、試料Sへの電子線照射時間と、検出器22への単位時間当たりの到達電子数との関係を示した図であり、横軸が電子線照射時間、縦軸が検出器22に単位時間(秒)に到達した電子数を示している。
図3(b)において、
図3(a)の横軸が、表面電位から電子線照射時間に変更されている点で
図3(a)と異なっている。
【0079】
図3(b)において、プレチャージが進んで電子線照射時間が経過するとともに、ウエハ表面のドーズ量が増加し、ウエハからは、最初は反射電子が発生し、次いで2次電子が発生し、最後にミラー電子が発生することが示されている。また、ミラー電子が発生する領域においては、電子線照射時間が増加しても、検出器22に到達する単位時間当たりの電子数は、一定となることが示されている。
【0080】
図4は、ウエハのタングステン領域から発生し、検出器22に到達した電子数と、入射1次電子のランディングエネルギーとの関係を示した図である。
図4において、横軸は1次電子ランディングエネルギー(eV)、縦軸は検出器到達電子数を示している。
【0081】
図4において、反射電子と2次電子のグラフ曲線を比較すると分かるように、およそ20eV程度までの低ランディングエネルギー領域では、反射電子は、2次電子に比べると、検出器22まで到達する電子数が圧倒的に多い。これは、各々の電子の放出方向の分布の相違により、本実施の形態に係る写像投影型の電子線装置100における、ウエハから検出器22までの電子透過率に差異が生じたためと考えられる。ここで、電子透過率とは、ウエハから発生した電子のうち、2次光学系20を通過して検出器22まで到達できる電子の比率のことをいう。
【0082】
2次電子は、いわゆる「コサインの法則」と呼ばれる放出方向の分布を持っており、ウエハのなす平面から垂直方向ではなく、垂直軸と角度を持った斜め方向に放出される分布を持つ。よって、一般的に、本実施の形態に係る電子線装置100に採用されている写像投影型電子線装置においては、電子透過率はあまり大きくない。
【0083】
一方、反射電子は、相対的に1次電子の入射方向と180度反転した方向に揃ってウエハから放出される。よって、本実施の形態に係る写像投影型電子線装置を採用した電子線装置100の電子透過率も高まり、検出器22に到達する電子数が、2次電子と比較して桁違いに増加していると考えられる。
【0084】
つまり、反射電子を検査に用いると、従来の2次電子を用いた場合と比較すると、検出器22に到達する電子数が著しく増加するため、検出器22で同等の信号強度を得るために必要な1次電子数を大幅に削減することができるようになる。このため、ウエハの帯電を低減し、ダメージの少ない検査を実現することができる。
【0085】
この、
図4における、低ランディングエネルギー領域における電子の種類と検出器22に到達する電子数との関係は、
図3に示した図と符号する。
【0086】
図3に戻ると、
図3(a)、(b)ともに、ウエハに1次電子線を照射し、検出器22に到達する検出器到達電子数に着目すると、最初の状態では、一定の電子量を示している(第1の状態)。次いで、ウエハ表面が所定の電位V1になると、検出器22に到達する電子の量(数)が減少する(第2の状態)。更にウエハのチャージアップを続けると、所定の電位V2において、検出器22に到達する電子の量が急増する(第3の状態)。ここで、第1の状態においては、反射電子が検出器に到達し、第2の状態においては、2次電子が検出器22に到達する。更に第3の状態においては、ウエハの帯電量が増加することにより1次電子ビームはウエハ表面に到達することができなくなり、ウエハ表面の直前で反射するいわゆるミラー電子の状態となる。ここで、例えば第1の状態におけるドーズ量は、0〜1
(μC/cm
2)であり、第2の状態におけるドーズ量は0.5〜5(μC/cm
2)であり、第3の状態におけるドーズ量は、3〜10(μC/cm
2)であってよい。
【0087】
図3において説明した状態変化は、電子ビームが照射される部分がチャージアップされることが前提となっている。従って、上述のように、接地等により電位が固定されている部分については、チャージアップは生じない。つまり、配線のオープン欠陥等によりフローティング状態となっている部分については、表面ポテンシャルエネルギーが入射電子のランディングエネルギーより小さい場合には、常に反射電子が生じる。この現象を利用して、ウエハに形成された配線のオープン欠陥やショート欠陥を検出する、いわゆるボルテージコントラストによる欠陥検出が可能となる。
【0088】
次に、本実施の形態に係る電子線装置100を用いて、ウエハの欠陥を検出する種々の例について説明する。
【0089】
〔実施例1〕
実施例1として、接地プラグが形成されたウエハにおいて、オープン欠陥を検出する例を説明する。
【0090】
図5は、実施例1に係る欠陥検出の例を説明するための図面である。
図5(a)は、ウエハWに、接地プラグ91とオープンプラグ94が形成された断面図を示した図である。
【0091】
図5(a)において、ウエハWはp型シリコン基板80を支持基板とし、その上にp+高濃度不純物領域82が積層されている。その上にSiO
2酸化膜層84が形成され、酸化膜層84内の溝85に接地プラグ91が設けられており、導電型のp+高濃度不純物領域81に接続されている。接地プラグ91は、例えばタングステン等により形成されてよい。接地プラグ91は、導電型のp+高濃度不純物領域81に接続されているので、p型シリコン基板80と同電位である。一方、不良プラグであるオープンプラグ94は、導電型のp+高濃度不純物領域81に接続されておらず、フローティング状態となっている。
【0092】
図5(b)は、
図5(a)の構成のウエハWに対して、低ランディングエネルギーの1次電子ビームが照射された場合のウエハWの表面電位の変化を示した図である。
図5(b)において、電子照射時間が増加しても、接地プラグ91は電位が変化しないが、オープンプラグ94には電子が蓄積するため、時間の経過とともに電位が負に増加している。
【0093】
図6は、
図5(a)に示したウエハWにおいて、1次電子ビームの照射により、接地プラグ91とオープンプラグ94から放出された電子について、検出器22に到達する電子数の表面電位依存性を示した図である。
【0094】
図6において、接地プラグ91は電位が接地電位に固定されているため、常に反射電子が検出される。一方、オープンプラグ94は、時間の経過とともに負帯電が進行し、表面電位が負に増加するため、最初は反射電子が検出されるものの、次いで2次電子が、そして最後にはミラー電子が検出される。なお、実験によれば、1次電子ビームのランディングエネルギーに適切な値を選ぶと、
図6に示すように、ミラー電子の検出量の方が、反射電子の検出量よりも多くすることができる。本発明を適用する実施例においては、1次電子ビームのランディングエネルギーに、そのような適切なエネルギーを選んでいるものとする。
【0095】
図7は、
図6と同じデータを、横軸を電子線照射時間に変えて表示した図である。縦軸は、検出器22に到達した単位時間(秒)当たりの電子数を示している。
【0096】
図7において、接地プラグ91からは、常に反射電子が検出されているが、オープンプラグ94からは、時間の経過とともに検出される電子の種類が異なるとともに、検出器到達電子数も異なってくることが示されている。本実施例に係る検査の態様では、かかる検出器到達電子数の時間経過に伴う相違に着目して、ウエハWの検査を行う。
【0097】
次に、
図8を用いて、実施例1に係るオープンプラグの検出方法について説明する。
図8は、2次光学系20において最初に検出される反射電子から継続的に電子を検出する検出方法の態様を示した図である。
【0098】
図8(a)は、オープンプラグ94の反射電子放出領域において、オープンプラグ94と接地プラグ91から放出されて検出器22に到達する合計電子数を比較して示した図である。
図8(a)において、反射電子検出領域においては、オープンプラグ94からも接地プラグ91からも双方反射電子が放出されるため、両者の合計検出器到達電子数には差が出ない。従って、反射電子検出領域は、オープンプラグ94と接地プラグ91の取得像に差が出ず、検査には利用できない。
【0099】
図8(b)は、オープンプラグ94の2次電子検出領域までのオープンプラグ94と接地プラグ91から放出されて検出器22に到達する合計電子数を比較して示した図である。接地プラグ91からは反射電子が放出され続けるのに対し、オープンプラグ94の方は、反射電子を放出する領域を過ぎ、2次電子を放出する領域に入ると、
図7で説明したように、検出器到達電子数が大幅に減少する。従って、
図8(b)に示すように、オープンプラグ94の合計検出器到達電子数が接地プラグ91の合計検出器到達電子数よりも小さくなり、その差が明確になる。よって、2次光学系20が取得するウエハWの取得像には明暗の差ができ、電気的な差異を検出できるので、オープンプラグ94を検出することができる。よって、
図8(b)の態様は、オープンプラグ94の検査に利用することができる。
【0100】
なお、
図8(b)に示す態様を実行するためには、電子ビーム照射の最初の段階に発生する反射電子から検出するので、視野先行型の
図2(C)に示した態様を適用すればよい。ウエハWの移動方向に対して、電子ビームの照射領域15よりも視野領域25が先行するように、照射領域15の位置を後方(
図2においては、+Y方向)に変更する。これにより、電子ビームの照射領域15は総て最初から2次光学系20で検出されるので、オープンプラグ94が2次電子を放出する領域に入った段階で、オープンプラグ94を検出することができる。
【0101】
図8(c)は、オープンプラグ94がミラー電子を発生するミラー電子発生領域におけるオープンプラグ94と接地プラグ91から発生する合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図8(c)に示すように、ミラー電子領域に入ると、ミラー電子の発生量が反射電子の発生量よりも大きくなるため、オープンプラグ94からの発生電子が接地プラグ91の発生電子に追い付き始める。そうすると、オープンプラグ94と接地プラグ91の合計検出器到達電子数の差は、時間の経過とともに種々の場合が考えられる不確定な状態となり、両者の差は不明確になる。よって、
図8(c)の態様は、オープンプラグ94の検出に適していない。
【0102】
このように、
図8において説明したように、オープンプラグ94の検出には、
図8(b)の態様のみが適する。従って、反射電子を利用してオープンプラグ94の検出を行う態様においては、オープンプラグ94が2次電子放出領域にある段階でウエハの画像を取得し、接地プラグ91との区別を発見することにより、オープンプラグ94の検出を行う。この場合には、視野領域25が、照射領域15よりも先行するように照射領域15の位置を変更する。
【0103】
図9は、オープンプラグ94から反射電子を検出せずに、2次電子とミラー電子を検出し、これに基づいてオープンプラグ94の検出を行う態様を示した図である。
【0104】
図9(a)は、
図7におけるオープンプラグ94の2次電子放出領域における、オープンプラグ94と接地プラグ91からの合計検出器到達電子数を各々示した図である。
図9(a)において、オープンプラグ94からは2次電子のみが検出され、接地プラグ91からは、反射電子のみが検出されている。両者の合計検出器到達電子量の差は大きく、よって、その取得像からは、高コントラストで両者の違いを検出できる。
図9(a)の態様は、電気的な差異を検出するのに好ましい態様である。
【0105】
なお、このような、反射電子を検出せず、2次電子を検出する検査方法を実行するためには、
図2(A)、(B)に示した、ウエハWの移動に対して照射領域15が視野領域25よりも先行する配置関係において検査を行う。プレチャージ領域16において、オープンプラグ94から反射電子を放出させてしまい、視野領域25においては、2次電子のみを検出するように設定すれば、
図9(a)に係る検査方法の態様を実行することができる。
【0106】
図9(b)は、オープンプラグ94から2次電子とミラー電子が検出される領域において、オープンプラグ94と接地プラグ91からの合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
【0107】
図9(b)において、接地プラグ91からは反射電子のみが検出されているが、オープンプラグ94においては、2次電子とミラー電子の双方が検出されている。
図7において説明したように、反射電子と2次電子の発生量を比較する反射電子の発生量が大きく、反射電子とミラー電子の発生量を比較すると、ミラー電子の発生量が多いので、
図9(b)のオープンプラグ94と接地プラグ91の合計検出器到達電子数は、オープンプラグ94からの検出電子数が接地プラグ91からの検出電子数に時間の経過とともに追い付き、追い越してゆく関係にある。従って、両者の合計検出器到達電子数の差は、時間の経過とともに変化する不確定な大きさである。よって、
図9(b)に係る検査方法の態様は、オープンプラグ94の検出には適さない。
【0108】
しかしながら、
図9(b)の態様においても、オープンプラグ94からミラー電子が発生し始めた初期の段階であれば、オープンプラグ94から検出される電子数は接地プラグ91から検出される電子よりも明確に少ないので、取得像は暗くなり、両者を区別することは可能である。また、逆に、オープンプラグ94からミラー電子が多量に発生するまで時間をかけた場合には、逆にオープンプラグ94から検出される電子の方が、接地プラグ91から検出される電子よりも多くなり、取得像はオープンプラグ94の方が明るくなる。従って、電子ビーム照射時間(ドーズ量)を適切にコントロールできれば、
図9(b)に係る態様によっても、オープンプラグ94と接地プラグ91とを区別して取得像に明暗差を付け、電気的な差異を検出することが可能である。但し、この方法では、電子ビーム照射時間又はドーズ量の精密なコントロールが要求されるので、
図9(a)に係る態様の方が、よりオープンプラグ検出には適する。
【0109】
図10は、オープンプラグ94がミラー電子を発生する領域において、オープンプラグ94と接地プラグ91からの合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
【0110】
図10において、オープンプラグ94からはミラー電子のみが検出され、接地プラグ91からは反射電子のみが検出されている。
図7において説明したように、ミラー電子の発生量は反射電子の発生量よりも多いので、オープンプラグ94により発生するミラー電子の合計検出器到達電子数は接地プラグ91から放出される反射電子よりも明確に多い。よって、オープンプラグ94の取得像は接地プラグ91の取得像よりも明るくなり、明暗差により両者を区別できる。
【0111】
なお、
図10に係る検査方法を実行するためには、
図2(A)、(B)の照射領域15と視野領域25との関係を用い、ウエハWの移動方向に対して、照射領域15が視野領域25よりも先行するように照射領域変更を行う。
図2(A)、(B)におけるプレチャージ領域16において、オープンプラグ94の反射電子及び2次電子を放出させてしまい、視野領域25では、ミラー電子のみを検出できるように設定する。この場合、プレチャージ領域16で反射電子及び2次電子を放出させるので、プレチャージ領域は
図9(a)で採用する態様よりも大きいことが望ましく、特に
図2(A)の(A−1)又は(A−3)の態様を好適に適用してもよい。
【0112】
今まで説明したように、実施例1に係る検査方法の態様においては、オープンプラグ94の検出には、
図8(b)、
図9(a)及び
図10に係る検査方法態様が適する。これらの態様によれば、総てウエハ表面電位のボルテージコントラストを利用することにより、オープンプラグ94を接地プラグ91から検出することができる。そして、これらの検査態様は、1次電子ビームの照射領域15の視野領域25に対する位置を変更することにより、種々の態様に容易に適応可能である。例えば、
図8(b)の態様であれば、
図2(C)に係る視野先行型の(C−1)〜(C−4)の態様を適用してよい。
図9(a)の態様であれば、
図2(A)、(B)に係る照射領域先行型を適用してよい。また、
図10に係る態様には、やはり
図2(A)、(B)に係る照射領域先行型を適用してよく、特に、プレチャージ領域が大きい
図2(A)の(A−1)又は(A−3)の態様が好適である。
【0113】
一方、
図8(a)、(c)及び
図9(b)に係る態様は、欠陥部と正常部の像の明るさの差が小さいことから、パターン表面の欠陥を観察するのに適している。特有の欠陥を検出するのではなく、ウエハのパターン表面の像を取得し、これを観察してパターン異常を発見するようにすれば、全般的なパターン欠陥検査として利用することができる。これらの検査態様を実行するには、やはり電子ビームの照射領域15の視野領域25に対する位置を変更すればよく、例えば
図8(a)、(c)に係る態様には、視野領域先行型の
図2(C)に係る態様を適用するのが好ましく、
図9(b)に係る態様には、照射領域先行型の
図2(A)、(B)に係る態様を適用するのが好ましい。
【0114】
このように、
図1に示した本実施の形態に係る電子線装置100において、電子ビームの照射領域15の視野領域25に対する位置を種々変更することにより、実施例1に示した種々の検査態様を実行することができる。
【0115】
〔実施例2〕
次に、実施例2として、n
+-pプラグが形成されたウエハWについて、オープン欠陥を検出する実施例を説明する。
【0116】
図11は、n
+-pプラグが形成されたウエハWについて、オープン欠陥を検出する検査方法の態様を説明するための図である。
【0117】
図11(a)は、n
+-pプラグ92が形成されたウエハWの断面図である。
図11(a)において、p型シリコン基板80の表面に反対導電型のn
+高濃度不純物領域83が設けられている。そして、p型シリコン基板80の上には、SiO
2酸化膜層84が積層され、SiO
2酸化膜層84の溝85内に、n
+-pプラグ92が形成されている。n
+-pプラグ92は、n
+高濃度不純物領域83を介して、p型シリコン基板80と電気的に接続されている。n
+-pプラグ92は、例えば、タングステン等の金属で構成されてよい。また、酸化膜層84中には、フローティング状態のオープンプラグ94が存在する。本実施例においては、かかるオープンプラグ欠陥を検出する検査方法の態様を示す。
【0118】
図11(a)の断面構造を有するウエハWに、電子ビームを照射すると、n
+-pプラグ92が形成された部分については、その表面電位が−1〜−2V程度の数Vに達してからは、微小電流がp型シリコン基板80に流れる。これは、n
+高濃度不純物領域83とp型シリコン基板80が空乏層(図示せず)を介して接続され、電子ビームが打ち込まれると、n
+高濃度不純物領域83とp型シリコン基板80は順方向接続なため、所定の数Vに達するまでは電子が蓄積されるが、所定の数Vに達すると、p型シリコン基板80に電流となって電子が流れ込むからである。
【0119】
図11(b)は、
図11(a)に係る構成のウエハWに低ランディングエネルギーの電子ビームを照射した場合の、ウエハWの表面電位の時間変化を示した図である。
図11(b)において、n
+-pプラグ92は、上述のように所定の数V(例えば、−1〜−2V程度)に達するまでは表面電位が負に増加するが、所定の数Vに達したら、p型シリコン基板80に電流が流れ、一定値を示す。一方、オープンプラグ94は、電子照射時間が経過するとともに電子が蓄積してゆくので、電子照射時間に比例して表面電位が負に増大している。
【0120】
図12は、
図11(a)に示したn
+-pプラグ92とオープンプラグ94について、各々が発生する電子のうち、検出器に到達する電子数の表面電位依存性を示した図である。
図12において、オープンプラグ94は、実施例1における説明と同様に、表面電位の変化に応じて、発生する電子の種類も、反射電子、2次電子、ミラー電子と変化してゆく。一方、n
+-pプラグ92は、表面電位が低い段階では反射電子が検出されるが、反射電子発生領域を超えて2次電子発生領域に入ると、途中で表面電位が一定となり、検出器到達電子数も一定となってしまう。これは、
図11(b)において説明したように、n
+-pプラグ92の場合、表面電位は、例えば−1〜−2V程度で一定となり、それ以上負に増大しないので、その段階で電子の単位時間当たりの発生数も一定となってしまうからである。従って、1次電子ビームのランディングエネルギーを、例えば、ウエハWの表面電位ポテンシャル変動量(例えば、−1〜−2V程度)より大きな数eV以上に選ぶと、
図12に示すように、反射電子と2次電子が検出されるが、ミラー電子は検出されない状態を作ることができる。
【0121】
図13は、n
+-pプラグ92とオープンプラグ94に電子ビームを照射したときの、電子線照射時間と単位時間当たりの検出器到達電子数との関係を示した図である。
図13は、
図12の横軸を、表面電位から電子線照射時間に変更している。
【0122】
図13において、オープンプラグ94の反射電子検出領域及び2次電子検出領域においては、n
+-pプラグ92とオープンプラグ94の両方から同数の反射電子及び2次電子が検出されている。ところが、オープンプラグ94のミラー電子検出領域においては、オープンプラグ94からはミラー電子が検出されるが、n
+-pプラグ92からは、そのまま2次電子が継続的に検出されている。これは、
図13において説明したように、n
+-pプラグ92の表面電位は、2次電子放出領域の所定の数Vで一定となってしまうので、その後に電子ビームを照射され続けても、単位時間当たり一定の2次電子しか放出しないためである。
【0123】
図14は、
図11〜13において説明した関係を利用して、反射電子の発生時から電子を検出してオープンプラグ94を検出する検査方法を説明するための図であり、n
+-pプラグ92とオープンプラグ94の合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
【0124】
図14(a)は、オープンプラグ94の反射電子検出領域における、オープンプラグ94とn
+-pプラグ92から検出される合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図14(a)において、オープンプラグ94とn
+-pプラグ92の両方とも、同数の反射電子のみが検出されているので、両者の取得像に明度差は生じず、オープンプラグ94の検出には不適である。
【0125】
図14(b)は、オープンプラグ94の2次電子検出領域において、それまでのオープンプラグ94とn
+-pプラグ92とからの合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図14(b)において、オープンプラグ94とn
+-pプラグ92の双方とも、同数の反射電子と2次電子が検出され、両者の合計検出器到達電子数には差が生じない。よって、
図14(b)の態様は、オープンプラグ94の検出には適さない。
【0126】
図14(c)は、オープンプラグ94のミラー電子検出領域において、それまでのオープンプラグ94とn
+-pプラグ92とからの合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図14(c)において、オープンプラグ94は、反射電子、2次電子及びミラー電子の総ての種類の電子を検出しているが、n
+-pプラグ92は、反射電子と2次電子のみを検出している。そして、
図13に示したように、オープンプラグ94のミラー電子検出領域においては、オープンプラグ94からのミラー電子検出量は、n
+-pプラグ92からの2次電子検出量を大きく上回っている。よって、
図14(c)においても、オープンプラグ94のミラー電子検出量がn
+-pプラグ92よりも明らかに大きく、合計検出器到達電子数においても、オープンプラグ94がn
+-pプラグ92を大きく上回っている。従って、
図14(c)の態様では、オープンプラグ94の取得像の方がn
+-pプラグ92の取得像よりも明るくなり、その明度差によりオープンプラグ94を検出することができる。この態様は、ボルテージコントラストにより電気的差異を検出するのに好ましい態様であると言える。
【0127】
なお、
図14(c)に係る態様を実行するためには、1次電子ビームのウエハWへの照射により、初期の反射電子が発生した段階から発生電子を検出するので、照射領域変更手段13、14は、
図2(C)における視野領域先行型の態様となるような照射領域15の位置変更を行う。これにより、視野領域25において反射電子の発生段階からウエハWから発生した電子を総て検出することができ、本態様を実行することができる。このことは、オープンプラグ94の検出には不適切であった
図14(a)、(b)の態様についても同様であり、これらも反射電子の発生段階からウエハWから発生した電子を検出するので、
図2(C)に示した視野領域先行型の照射領域変更態様を適用する。
【0128】
図15は、オープンプラグ94の反射電子検出領域における電子を検出せず、2次電子発生以降の電子を検出する場合の検査方法に係る態様を説明するための図である。
【0129】
図15(a)は、オープンプラグ94が2次電子検出領域にあるときの、オープンプラグ94とn
+-pプラグ92とからの合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図15(a)において、オープンプラグ94及びn
+-pプラグ92の双方とも、2次電子が同数で検出されている。従って、両者の取得像には明暗の差は生ぜず、本態様はオープンプラグ94の検出には適さない。
【0130】
図15(b)は、オープンプラグ94がミラー電子検出領域にあるときの、オープンプラグ94とn
+-pプラグ92とからの合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図15(b)において、n
+-pプラグ92は2次電子のみを検出しているのに対し、オープンプラグ94は、2次電子を検出した後にミラー電子を検出している。そして、
図15(b)に示されているように、オープンプラグ94のミラー電子の検出量は、n
+-pプラグ92の2次電子の検出量よりも大幅に大きく、合計検出器到達電子数においても、オープンプラグ94の方が明らかに大きい。従って、オープンプラグ94の2次光学系20における取得像は、n
+-pプラグ92の取得像よりも明るくなり、両者の表面電位の差により、像に明暗の差をつけることが可能である。よって、
図15(b)の態様は、オープンプラグ94の検出等の電気的な差異を検出するのに好ましい検査態様である。
【0131】
なお、
図15に係る検査態様を実行するためには、照射領域変更手段13、14により、電子ビームの視野領域25に対する照射領域15の位置を
図2(A)、(B)に示す照射領域先行型の態様に変更する。
図2(A)、(B)において、プレチャージ領域16で反射電子が放出されるような設定とし、視野領域25では、オープンプラグ94の2次電子検出領域
以降に発生する電子を検出するようにすれば、
図15(a)、(b)の態様を実行できる。
【0132】
図16は、オープンプラグ94からミラー電子が検出される領域にあるときに、オープンプラグ94の検出を行う態様について説明するための図である。
図16は、オープンプラグ94がミラー電子検出領域にあるときにおけるオープンプラグ94とn
+-pプラグ92の合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図16において、オープンプラグ94からはミラー電子のみが検出され、n
+-pプラグ92では、2次電子のみが検出されている。これは、
図13において説明したように、オープンプラグ94のミラー電子検出領域では、n
+-pプラグ92からは2次電子しか検出されないからである。よって、合計検出器到達電子数において、オープンプラグ94の検出電子数は、n
+-pプラグ92の検出電子数を大きく上回り、オープンプラグ94の取得像の方が、n
+-pプラグ92の取得像よりも明るくなり、両者を区別できる。従って、
図16の態様は、ウエハWの主に電気的な差異を検出するのに好ましい。
【0133】
なお、
図16の態様を実行するためには、オープンプラグ94のミラー電子検出領域のみを用い、反射電子と2次電子を検出しないので、照射領域変更手段13、14は、
図2(A)、(B)の照射領域先行型を適用するように照射領域15の変更を行う。プレチャージ領域16で、反射電子及び2次電子の双方を発生させてしまい、視野領域25ではミラー電子のみを検出するように変更するので、プレチャージ領域16は十分に大きい変更設定が好ましく、特に、
図2(A)の(A−1)又は(A−3)の態様を適用するようにしてもよい。
【0134】
今まで説明したように、実施例2においては、ボルテージコントラストを用いたオープン欠陥検出には、
図14(c)、
図15(b)及び
図16に示した検査方法の態様が適する。実施例2においても、実施例1と同様に、各々の態様を実行するため、照射領域変更手段13、14により、視野領域25に対する照射領域15の位置を、適切に変更する。例えば、
図14(c)の態様であれば、反射電子から検出するので、視野先行型の
図2(C)の態様になるように照射領域15の位置変更を行い、
図15(b)の態様であれば、照射領域先行型の
図2(A)、(B)の態様になるように照射領域15の位置変更を行い、反射電子の放出が、プレチャージ領域16の電子ビーム照射により終了するような設定とする。また、
図16の態様であれば、照射領域先行型の
図2(A)、(B)の態様になるように照射領域15の位置変更を行うとともに、プレチャージ領域16で、反射電子及び2次電子の放出が終了するように設定する。このように、照射領域変更手段13、14により、各々の検査態様に適した電子ビームの照射領域15の位置変更を行うことにより、ウエハWの種類等に応じた検査を行うことができる。
【0135】
なお、オープン欠陥の検出に適さなかった
図14(a)、(b)及び
図15(a)の態様については、欠陥部と正常部の取得像の明暗差が小さいことから、ボルテージコントラストではなく、ウエハ表面の画像を取得し、これに基づいて配線パターンの欠陥を検査するのに利用することができる。この場合にも、照射位置変更手段13により、適切な照射位置の変更を行なうことが好ましい。
【0136】
〔実施例3〕
次に、実施例3として、p
+-nプラグが形成されたウエハWにおいて、オープンプラグ欠陥を検出する検査方法の態様について説明する。
【0137】
図17は、実施例3の検査対象となるウエハWの性質を説明するための図である。
図17(a)は、p
+-nプラグが形成されたウエハWの断面構造を示した図である。
【0138】
図17(a)において、検査対象となるウエハWは、n型シリコン基板81が支持基板として備えられ、その表面に反対導電型のp+高濃度不純物領域82が設けられている。n型シリコン基板の上には、SiO
2酸化膜層84が形成され、酸化膜層84の中の溝85にはp
+-nプラグ93が形成されている。p
+-nプラグ93は、p+高濃度不純物領域83を介してn型シリコン基板81と電気的に接続されている。また、酸化膜層84中には、フローティング状態のオープンプラグ94が存在する。本実施例においては、かかるオープンプラグ欠陥を検出する検査方法の態様を示す。
【0139】
図17(a)において、p
+-nプラグ93に電子ビームが照射されると、p+高濃度不純物領域83とn型シリコン基板81には、ダイオードに逆方向電圧が徐々に印加されてゆく状態と同様になる。従って、ある一定の負電位までは、p
+-nプラグ93に電子が蓄積してゆくが、当該一定の負電位を超えると、p
+-nプラグ93からn型シリコン基板に逆方向電流が流れ始め、それ以上p
+-nプラグ93の電位が負に増大しなくなる現象が起きる。
【0140】
次に、
図17(b)を用いて、
図17(a)に示した構造のウエハWにおいて、p
+-nプラグ93及びオープンプラグ94に電子ビームを照射した場合の状態変化について説明する。
図17(b)は、p
+-nプラグ93及びオープンプラグ94に電子ビームを照射した場合の、電子照射時間と表面電位との関係について示した図である。
【0141】
図17(b)において、オープンプラグ94の方は、フローティング状態であるので、電子ビームの照射に伴い表面に電子が蓄積し、時間の経過に比例して表面電位が負に増大している。一方、p
+-nプラグ93については、
図17(a)において説明したように、所定の負電位までは、電子ビームの照射に比例してその表面電位が負に増大するが、ある一定の値に達すると、表面電位が一定の値のままになってしまう。これは、上述のように、ダイオードに逆電圧をかけていき、所定の電圧に達したときに逆電流が流れ出すのと同様の現象であるので、当該一定の値は、例えば絶対値が5V以下程度、即ち−5V以上程度の値になる場合が多い。この値は、デバイス毎に異なるが、実施例2に係る
図11で示した所定値(例えば、−1〜−2V程度)よりも、明らかに大きい値である。
【0142】
このように、p
+-nプラグ93が形成されたウエハWについての実施例3に係る検査方法では、電子照射時間と表面電位との関係は、実施例2に係るn
+-pプラグ92が形成されたウエハWと同様の特性を示すものの、正常な配線用プラグが示す一定値の値は異なったものとなる。
【0143】
図18は、
図17(a)に示したウエハWに形成されたp
+-nプラグ93とオープンプラグ94について、各々が電子ビームの照射により発生した電子のうち、検出器に到達する電子数の表面電位依存度を示した図である。
【0144】
図18において、オープンプラグ94の方は、今までの説明と同様に、表面電位が負に増加するにつれて、反射電子、2次電子、ミラー電子と発生する電子の種類が変化する。一方、p
+-nプラグ93の方は、表面電位が低い段階ではオープンプラグ94と同様に反射電子を発生し、次いで表面電位が負に増大するにつれて2次電子を発生するようになるが、2次電子の発生の途中段階で表面電位は一定となり、ミラー電子の発生にまでは至らない。そして、表面電位が一定となった点の電位は、実施例2で説明した
図12に示した一定電位の値よりも、負側に値が大きくなっている。これは、p
+-nプラグ93の場合においても、
図17(b)に示したように、−5V以上程度の値で一定となるが、この値は、n
+-pプラグ92の場合の−1〜−2V程度よりも負側に大きい値であるので、
図12よりも負側に寄った点で一定となる。一方、ミラー電子が発生し始める値は、表面電子が−10V、−20Vというレベルの値であるから、ミラー電子検出領域までには至らない特性となる。
【0145】
図19は、p
+-nプラグ93とオープンプラグ94について、電子線照射時間と単位時間当たりの検出器到達電子数との関係を示した図である。
図18における横軸を、表面電位から電子線照射時間に変更している。
【0146】
図19から、オープンプラグ94は、電子線照射時間の経過とともにその発生電子が反射電子、2次電子、ミラー電子と変化してゆくが、p
+-nプラグ93は、反射電子検出領域を超えて2次電子検出領域に入ったら、ミラー電子検出領域には至らず、2次電子を発生し続けることが分かる。
【0147】
図20は、p
+-nプラグ93とオープンプラグ94について、反射電子から発生電子を検出してオープンプラグ94を検出する態様について説明するための図である。
【0148】
図20(a)は、オープンプラグ94の反射電子検出領域において、オープンプラグ94とp
+-nプラグ93とから検出された合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図20(a)において、オープンプラグ94及びp
+-nプラグ93の双方とも、反射電子が同数検出されているので、これらの取得像により明暗差は生じない。従って、この態様はオープンプラグ94の検出には適さない。
【0149】
図20(b)は、オープンプラグ94の2次電子検出領域において、それまでオープンプラグ94とp
+-nプラグ93とから検出された合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図20(b)において、オープンプラグ94及びp
+-nプラグ93の双方とも、反射電子と2次電子が同数検出され、合計検出器到達電子数も同じであるので、両者の取得画像に明暗差は生じない。従って、この態様は、オープンプラグ94の検出に適さない。
【0150】
図20(c)は、オープンプラグ94のミラー電子検出領域において、それまでオープンプラグ94とp
+-nプラグ93とから検出された合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図20(c)において、オープンプラグ94のミラー電子の検出数が大幅に増加しているが、p
+-nプラグ93の2次電子の増加分は小さく、従って両者の合計検出器到達電子数も、大幅にオープンプラグ94の方がp
+-nプラグ93を上回っている。従って、この態様では、オープンプラグ94とp
+-nプラグ93の取得像で明暗差が生じ、そのボルテージコントラストによりオープンプラグ94を検出することができる。よって、本態様は、オープンプラグ94等の電気的差異の検出に適する。
【0151】
なお、
図20(a)〜(c)に示した検出方法を実行するためには、反射電子を検出する必要があるので、
図2(C)に係る視野先行型の態様のいずれかを適用する。照射領域変更手段13、14を用い、照射領域15が視野領域25より後行するように照射領域15の位置を変更させることにより実行してよい。
【0152】
図21は、p
+-nプラグ93とオープンプラグ94について、反射電子を利用せず、オープンプラグ94を検出する態様について説明するための図である。
【0153】
図21(a)は、オープンプラグ94の2次電子検出領域において、オープンプラグ94とp
+-nプラグ93の合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図21(a)において、オープンプラグ94及びp
+-nプラグ93の双方から同数の2次電子のみが検出されているので、両者の取得像には明暗差は生じない。従って、本態様は、オープンプラグ94の検出には不適である。
【0154】
図21(b)は、オープンプラグ94のミラー電子検出領域において、オープンプラグ94とp
+-nプラグ93の合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図21(b)において、オープンプラグ94で2次電子及びミラー電子が検出され、p
+-nプラグ93では、2次電子のみが検出されている。そして、ミラー電子の検出電子数は、2次電子の検出電子数よりも大幅に多く、従って、オープンプラグ94の合計検出器到達電子数は、p
+-nプラグ93の合計検出器到達電子数を大幅に上回っている。よって、2次光学系20におけるオープンプラグ94の取得像は、p
+-nプラグ93よりも明るい画像となり、両者のボルテージコントラストからオープンプラグ94を検出することができる。従って、本態様は、電気的な差異を検出するのに好ましい態様である。
【0155】
なお、
図21に示した検査方法の態様は、照射領域変更手段13、14により、
図2(A)、(B)に示した照射領域先行型に照射領域15を変更することにより達成される。視野領域25で反射電子を検出しないように、プレチャージ領域16において、ウエハWから反射電子を放出してしまうように設定を行う。
【0156】
図22は、p
+-nプラグ93とオープンプラグ94について、オープンプラグ94のミラー電子検出領域を利用して、オープンプラグ94を検出する検出方法の態様を説明するための図である。
図22は、オープンプラグ94のミラー電子検出領域において、オープンプラグ94とp
+-nプラグ93の合計検出器到達電子数を比較して示した図である。
図22において、オープンプラグ94からはミラー電子のみが検出され、p
+-nプラグ93からは2次電子のみが検出されている。そして、ミラー電子の合計検出器到達電子数は、2次電子の合計検出器到達電子数よりも大幅に多いので、オープンプラグ94の取得像はp
+-nプラグ93の取得像よりも明るくなり、そのボルテージコントラストからオープンプラグ94を検出できる。よって、本態様は、電気的な差異を検出するのに適している。
【0157】
なお、
図22に係る態様を実行するためには、オープンプラグ94の反射電子検出領域及び2次電子検出領域を利用せずに、ミラー電子検出領域のみを利用するので、
図2(A)、(B)の照射領域先行型の態様を適用するのが好ましい。プレチャージ領域16でオープンプラグ94の反射電子及び2次電子を放出できるように、照射領域変更手段13、14により照射領域変更を行う。
【0158】
このように、実施例3に係るp
+-nプラグ93が形成されたウエハWのオープン欠陥を検出するためには、
図20(c)、
図21(b)及び
図22の検査方法の態様が適する。
【0159】
一方、
図20(a)、(b)及び
図21(a)の態様は、明暗差が少ないので、ボルテージコントラストにより電気的な差異を検出する用途には適さないが、ウエハWの表面画像を取得し、パターン欠陥を検査する用途には適する。
【0160】
これらの種々の態様を実行するため、照射領域変更手段13、14により、
図2(A)、(B)、(C)に示した照射領域15の視野領域25に対する位置変更の態様を選択して種々適用し、検査対象に応じた検査態様を適用することができる。
【0161】
図23は、オープンプラグ94の欠陥検査に当たり、
図9、10、15、16、21及び22に示したミラー電子を利用した検査方法について、検査像の例を示した図である。
【0162】
図23において、(a1)〜(a3)は、接地プラグ91が形成されたウエハW表面を示し、(b1)〜(b3)は、各々のウエハW表面に対応した、取得画像を示している。
図23(a1)において、照射領域15の方が視野領域25より大きく、照射領域15が視野領域25に対して先行する配置関係となっている。
図23中の−Y方向の矢印は、照射領域15及び視野領域25の相対的移動方向を示し、実際には、ステージ30が+Y方向に移動する。
【0163】
図23(b1)は、
図23(a1)に対応した検出器22の検出面上の検出画像である。
図23(a1)において、電子ビームが照射された瞬間には、反射電子が検出され、視野領域全体が検出される。
【0164】
次に、ステージ30が+Y方向又は電子ビームが−Y方向にスキャンし、照射領域15と視野領域25が、
図23(a1)の位置関係を保ちつつ検査領域を移動してゆくが、
図23(a2)に示すように、オープンプラグ94が含まれていた場合には、
図23(b2)に示すように、その部分だけが明るく光る。そして、正常なプラグからは、ミラー電子は検出されない。
【0165】
このように、
図23に示す態様では、欠陥部(オープンプラグ94)からの検出電子を増やすために、オープンプラグ94の部分だけでミラー電子を検出するような条件に設定している。そして、他の正常なプラグからは、ミラー電子が検出されないように設定している。これを暗像モードと呼ぶが、
図23の態様では、ミラー電子は反射電子や2次電子に比べて十分に表面電位が大きいので、暗い画像の中で、欠陥プラグ94だけが明るく光り、その検出が容易となる。
【0166】
なお、
図23(a3)に示すように、更にステージ30又は電子ビームのスキャンを行い、オープンプラグ94の存在しない視野領域25に入れば、
図23(b3)に示すように、暗像モードで暗い画像となる。
【0167】
このように、暗像モードを用いて、オープンプラグ94を容易に検出することができる。
【0168】
図24は、反射電子を選択的に利用して、ウエハWの表面欠陥を検出する例を示した図である。
【0169】
図24(a1)は、電子ビームの照射領域15と視野領域25とプラグ91との配置関係を示した図である。
図24(a1)において、視野領域25の方が、照射領域15よりも先行する配置関係となっている。
図23と同様に、ステージ30が+Y方向に移動するか、電子ビームが−Y方向に移動して、検査領域が移動してゆく。従って、
図24(a1)は、ステージ30の移動方向に対して、視野領域25が照射領域15に先行する位置に照射領域15が変更されている。従って、視野領域25では、総て最初にウエハWに電子ビームが照射されるタイミングの電子を検出し続けることができる。よって、電子ビーム照射の最初の段階で発生する反射電子を検出し続けることになる。よって、この場合、
図24(a1)対応する検出器22の検出面上の検出画像は、
図24(b1)のようになり、視野領域25の総てのプラグ91の反射電子が検出され、像を形成している。
【0170】
次に、ステージ30又は電子ビームが移動し、
図24(a2)の領域を照射するが、この領域でも反射電子を検出する。反射電子は、初期段階では、接地されていようとオープン(フローティング)状態であろうと、総て検出される。よって、
図24(a2)のパターンに、ミッシングプラグが存在しなければ、対応する検出画像は、
図24(b2)のように、総てのプラグ91の像が取得される。
【0171】
次いで、更にステージ30又は電子ビームが移動し、
図24(a3)の領域を検査する。
図24(a3)においては、ミッシングプラグ95が存在するとする。このとき、対応する検出画像は、
図24(b3)のようになり、ミッシングプラグ95の箇所は、プラグが検出されない画像となる。
【0172】
このように、反射電子を用いて、反射電子は、初期段階では金属があればその像が写されるという性質を利用することにより、ミッシングプラグを容易に検出することができる。
【0173】
以上、実施例1〜3において、接地プラグ91、n
+-pプラグ92及びp
+-nプラグ93がウエハW上に形成されている場合の、オープンプラグ94を検出する方法の態様について説明したが、実際のウエハW製造プロセスでは、上記3種類の接地プラグ91、n
+-pプラグ92及びp
+-nプラグ93が同一ウエハW内に形成されているのが通常である。よって、実施例1〜3において、共通にオープンプラグ94を検出できる態様を採用することが好ましい。そして、その態様は、実施例1において
図8(b)、
図9(b)及び
図10、実施例2において
図14(c)、
図15(b)及び
図16、実施例3において
図20(c)、
図21(b)及び
図22であり、反射電子を用いず、2次電子とミラー電子を利用する
図9(b)、
図15(b)及び
図21(b)の態様と、ミラー電子のみを利用する
図10、
図16及び
図22の態様において共通する。よって、これらの検出方法の態様を用いれば、ウエハWのオープンプラグ94を本実施の形態に係る電子線装置100を用いて検出できる。これにより、プレチャージユニットを用いることなく、最小限のエネルギーでオープンプラグ94を検出することができる。
【0174】
〔実施例4〕
次に、実施例4として、VC−TEGの電気的欠陥を検出する検査方法の態様について説明する。ここで、VC−TEGとは、ボルテージコントラスト検査におけるテスト・エレメント・グループのことであり、耐絡性の観点で構造上の寸法マージンを知るため、線幅や配線スペースを変えた複数のテスト・エレメント・グループのことを言う。
【0175】
VC−TEGで電気的欠陥を検出するには、
図10のミラー電子のみを利用する検査方法又は
図9(a)に示した、オープンプラグ94の反射電子を検出せず、2次電子検出領域での発生電子検出を行う検査方法が適している。VC−TEGは、基本的に構造は接地プラグ91を有するパターンのウエハWと同様であるので、実施例1において適用可能な検査方法の態様を好適に用いることができる。この点、
図10のミラー電子のみを利用する検査方法と、
図9(a)に示した、オープンプラグ94の2次電子検出領域における発生電子を検出する検査方法は、明確にボルテージコントラストを発生させることができた。また、
図8(b)の、反射電子及び2次電子を検出する検査方法も、適用可能である。
【0176】
一方、
図8(c)の、反射電子からミラー電子まで総て検出する検査方法と、
図9(b)の反射電子を検出せず2次電子とミラー電子を検出する検査方法も適用可能ではあるが、差別化するマージン量が少なく、条件設定が難しい。また、
図8(a)の反射電子のみを用いる検査方法は、明暗差が殆ど無く、電気的欠陥の検出は困難であり、適用は難しい。
【0177】
ここで、
図10、
図9(a)、(b)の検査方法を用いるときには、照射領域変更の態様は、
図2(A)、(B)に示した照射領域先行型を用いるのが好ましい。また、
図8(b)、(c)の態様の検査方法を用いるときには、
図2(C)の視野領域先行型を用いるのが好ましい。
【0178】
図25は、VC−TEGの配線の一例である。
図25(a)は、正常なVC−TEGの例を示した図であり、
図25(b)は、欠陥がある場合のVC−TEGの例を示した図である。
【0179】
図25(b)に、
図9(a)の検査方法を適用した場合を考える。
図9(a)の検査方法は、オープンプラグ94の2次電子検出領域において、発生電子を検出する方法である。この検査方法によれば、接地配線部分では、常に反射電子が検出され、フローティング配線部分94では、2次電子が検出される。プラグがタングステンである場合を例にとれば、反射電子と2次電子では、反射電子の検出数が圧倒的に多いため、接地配線91が明るく、フローティング配線部分94が暗くなる。
【0180】
図26は、
図25と同様のVC−TEGの配線を、
図10に係るミラー電子のみを用いた検査方法で検査した態様を示した図である。
図26(a)は、正常な場合の検出画像を示した図である。
図26(b)は、欠陥がある場合の検出画像を示した図である。
【0181】
図26において、ミラー電子検出領域の発生電子を用いた場合には、接地配線部91では反射電子が検出され、フローティング94の部分では、ミラー電子が検出される。反射電子に比べて、ミラー電子の発生量が多いように1次電子ビームのランディングエネルギーの設定を行えば、接地配線91が暗く、フローティング配線部分94が明るくなる。
【0182】
このように、実施例4の態様によれば、ウエハWのみならず、VC−TEGの配線を検査することもできる。
【0183】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。