特許第5719496号(P5719496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5719496半導体発光素子及び発光装置、及び半導体発光素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719496
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】半導体発光素子及び発光装置、及び半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20150430BHJP
   H01L 33/38 20100101ALI20150430BHJP
   H01L 33/42 20100101ALI20150430BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01L33/00 186
   H01L33/00 210
   H01L33/00 222
   H01L33/00 410
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2007-163203(P2007-163203)
(22)【出願日】2007年6月20日
(65)【公開番号】特開2008-34821(P2008-34821A)
(43)【公開日】2008年2月14日
【審査請求日】2010年6月3日
【審判番号】不服2013-23801(P2013-23801/J1)
【審判請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2006-178652(P2006-178652)
(32)【優先日】2006年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳樹
【合議体】
【審判長】 吉野 公夫
【審判官】 鈴木 肇
【審判官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−217456(JP,A)
【文献】 特開2004−128321(JP,A)
【文献】 特開2001−313420(JP,A)
【文献】 特開2006−128296(JP,A)
【文献】 特開2005−019530(JP,A)
【文献】 特開2005−317931(JP,A)
【文献】 特開2005−101566(JP,A)
【文献】 特開2001−250984(JP,A)
【文献】 特開2001−291899(JP,A)
【文献】 特開2002−134510(JP,A)
【文献】 特開2003−224297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層,活性層,第2導電型の半導体層を順に有する発光構造と、該発光構造から露出された第1導電型の半導体層と、該第1導電型の半導体層,第2導電型の半導体層に各々設けられた第1電極,第2電極と、を有し、
前記第1導電型半導体層の露出表面に設けられた第1電極が、第1層と、該第1層上に第1層より幅の狭い若しくは面積の小さい第2層と、を有し、
前記発光構造の光に対して、前記第1電極の第1層が透光性を、前記第1電極の第2層が反射性を有し、該第2層は、前記第1層側を幅広とする台形状とし、
前記第1電極の第1層は、突出部を有しており、該突出部は、前記第1電極の第2層の外周の略全域に設けられており、
前記第1電極の第1層が、少なくとも隣接する発光構造の方向に、前記第1電極の第2層から突出した突出部を有しており、
前記発光構造と前記第1電極との間に、該発光構造の発光部より高い突起部を有しており、
前記突起部が前記発光構造と分離され、前記第1電極の第1層が、前記突起部の第1電極側の側面に延在し、前記第1電極の第2層が該突起部から離間しており、
前記第2導電型半導体層の露出表面に設けられた第2電極が、透光性を有する第1層と、反射性を有する第2層と、を備えた半導体発光素子。
【請求項2】
第1導電型の半導体層,活性層,第2導電型の半導体層を順に有する発光構造と、該発光構造から露出された第1導電型の半導体層と、該第1導電型の半導体層,第2導電型の半導体層に各々設けられた第1電極,第2電極と、を有し、
前記第1導電型半導体層の露出表面に設けられた第1電極が、第1層と、該第1層上に第1層より幅の狭い若しくは面積の小さい第2層と、を少なくとも有し、前記第1電極の第1層が透光性を、前記第1電極の第2層が反射性を有すると共に、
前記電極形成面内において、前記発光構造間に前記第1電極が設けられ、該第1電極が、隣接する発光構造側面と前記第1電極の第1,2層端部との距離が、第1層より第2層が長くなるように設けられており、
前記第1電極の第2層は、前記第1電極の第1層側を幅広とする台形状とし、
前記第1電極の第1層は、突出部を有しており、該突出部は、前記第1電極の第2層の外周の略全域に設けられており、
前記発光構造と前記第1電極との間に、該発光構造の発光部より高い突起部を有しており、
前記突起部が前記発光構造と分離され、前記第1電極の第1層が、前記突起部の第1電極側の側面に延在し、前記第1電極の第2層が該突起部から離間しており、
前記第2導電型半導体層の露出表面に設けられた第2電極が、透光性を有する第1層と、反射性を有する第2層と、を備えた半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1電極の少なくとも一部が、前記第1導電型半導体層露出領域で前記発光構造内部へ凹んだ凹欠部に配置され、前記凹欠部が該第1電極の外周長の半分以上を囲む請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1電極が外部接続部と、該外部接続部から延伸する延伸部と、を有し、該外部接続部及び延伸部は、前記第1導電型の半導体層と接続して設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1電極の第1層と、前記第2電極の第1層と、が同一の導電性金属酸化膜とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1電極の第2層と、前記第2電極の第2層と、が同一の金属層を有する積層構造をしており、該積層構造は、反射層、バリア層、パッド部用の金属層を順に積層したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体発光素子が、載置部に設けられた発光装置。
【請求項8】
前記発光装置が、前記半導体発光素子を封止する封止部材を有し、該封止部材が、半導体発光素子の光の少なくとも一部を波長変換する光変換部材を有する請求項7記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法であって、前記第1電極の第1層と、前記第2電極の第1層と、を同時に形成する半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法であって、前記第1電極の第2層と、前記第2電極の第2層と、を同時に形成する半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の発光素子及びそれを用いた発光装置に関し、特に発光素子の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を用いた発光素子は、そのワイドバンドギャップ特性から、近紫外から赤色域で発光が得られるため、種々の研究が成されている。窒化物半導体発光素子の一般的な基本構造は、基板上に、n型窒化物半導体、活性層、p型窒化物半導体を積層した構造で、p型層、一部露出されたn型層に各電極が設けられた構造となり、電極構造を含む発光素子構造について研究されている。特に、その高出力化を目指して、様々な発光素子構造、並びに電極構造が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−060236号公報
【特許文献2】特開2005−229085号公報
【特許文献3】特開2003−133590号公報
【特許文献4】特開2004−179347号公報
【特許文献5】特開2005−317931号公報
【特許文献6】特開2001−102631号公報
【特許文献7】特開2004−128321号公報
【特許文献8】特開2002−016282号公報
【特許文献9】特開2002−221529号公報
【特許文献10】特開平9−232632号公報 段落51〜63 図7〜9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の提案として、n型層に設けられるn電極について、ITOなどの透明電極を用いること(特許文献1,2)、2層構造として、上層に金属層・反射層を一部(特許文献3,10)、全部(特許文献4,5)、重ねて設ける構造がある。
別の提案として、活性層からの発光に対して、n電極の高さを低くして遮光効果を抑えること(特許文献6)、n電極の側面を傾斜させて反射効果を高めること(特許文献7)などがある。また、発光構造内に凹凸構造を設けて、光取り出し効率を高めることも提案されている(特許文献8,9)。
【0005】
しかしながら、前者の提案では、n電極に透明導電膜を用いる際に、電流広がり・均一性、ひいては素子の高抵抗化・電圧値(Vf)上昇が問題なり、後者の提案では、電極材料による光の吸収・損失、形状のバラツキ・量産性が問題となる。また、電力効率(lm/W)の向上は、発光素子、特に窒化物半導体の発光素子において、照明分野など、高出力用途において重要な要求事項となるが、これらの問題は電力効率を低下させ、このような分野、用途への応用の妨げとなる。
【0006】
本発明の課題は、発光構造に隣接して設けられる電極に透光性電極を用いて、素子の低抵抗化、高出力化、高電力効率化(lm/W)、高い量産性・低コスト化、の少なくともいずれか、好ましくはその多くを実現する発光素子、及び発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る発光素子は、第1導電型の半導体層,活性層,第2導電型の半導体層を順に有する発光構造と、該発光構造から露出された第1導電型の半導体層と、該第1,2導電型層に各々設けられた第1,2電極と、を有し、前記第1導電型半導体層の露出表面に設けられた第1電極が、第1層と、該第1層上に第1層より幅の狭い若しくは面積の小さい第2層と、を有し、前記発光構造の光に対して、前記第1電極の第1層が透光性を、前記第1電極の第2層が反射性を有し、該第2層は、前記第1層側を幅広とする台形状とし、前記第2導電型半導体層の露出表面に設けられた第2電極が、透光性を有する第1層と、反射性を有する第2層と、を備えている。幅広・大面積の第1層において、第1導電型層との接触面積を大きくして素子抵抗、Vfを低下させ、幅狭,小面積の第2層において、電極内、ひいては素子構造の電流広がりを改善し、電極抵抗、ひいては素子抵抗を下げて、発光構造からの発光を反射性の第2層で吸収・損失する問題を低減させる。
【0008】
上記第1の態様における他の形態としては、第1層が、少なくとも隣接する発光構造の方向に、第2層から突出した突出部を有する、ことで、並設された発光構造への電流注入が好適になされ、第1層が透光性で第2層が発光構造から十分に離間されることで、好適な光取り出しが実現される。
【0009】
本発明の第2の態様に係る発光素子は、第1導電型の半導体層,活性層,第2導電型の半導体層を順に有する発光構造と、該発光構造から露出された第1導電型の半導体層と、該第1,2導電型層に各々設けられた第1,2電極と、を有し、前記第1導電型半導体層の露出表面に設けられた第1電極が、第1層と、該第1層上に第1層より幅の狭い若しくは面積の小さい第2層と、を少なくとも有し、前記第1電極の第1層が透光性を、前記第1電極の第2層が反射性を有すると共に、前記電極形成面内において、前記発光構造間に前記第1電極が設けられ、該第1電極が、隣接する発光構造側面と前記第1電極の第1,2層端部との距離が、第1層より第2層が長くなるように設けられており、前記第1電極の第2層は、前記第1電極の第1層側を幅広とする台形状とし、前記第2導電型半導体層の露出表面に設けられた第2電極が、透光性を有する第1層と、反射性を有する第2層と、を備えている。幅広,大面積の下層側(第1層)が第1電極を挟む発光構造に近接して配置され、幅狭,小面積の上層側(第2層)が該電極を挟む発光構造から離間されて配置されることで、第1電極の抵抗値を低減させ、第1導電型層との接触面積増、隣接する発光構造への電流注入を良好として、光取り出し向上・光吸収・損失低減、させることができる。
【0010】
上記第1,2の態様に係る他の形態としては、(1)第2層の突出部が、第1層の外周の略全域に設けられている、(2)発光構造と第1電極との間に、該発光構造の発光部より高い突起部を有する、(3)突起部が、発光構造から分離された半導体構造を有する、(4)突起部が発光構造と分離され、第1層が、突起部の第1電極側の側面に延在し、第2層が突起部から離間している、(5)第1電極の少なくとも一部が、第1導電型露出領域で発光構造内部へ凹んだ凹欠部に配置され、凹欠部が第1電極の外周長の半分以上を囲む、(6)第1電極が外部接続部と、外部接続部から延伸する延伸部と、を有し、外部接続部及び延伸部に、第1,2層がそれぞれ設けられている、などがある。
【0011】
上記1では発光構造から上層側(第2層)への光の到達量を減らし、開口部を大きくして、電極による光吸収・損失を低減し、上記2ではこの光に対する遮蔽効果が好適に得られ、上記3では該遮蔽構造物を量産性に優れた突起構造とでき、上記4では、突起部に延在する第1層により、広範囲に第1電極形成が可能となり、素子抵抗・Vf低減が図れる。 上記6では、発光構造・素子の長尺化、大面積化などで、第1導電型層上に互いに並設して延伸する電極構造と発光構造を有する素子構造において、上記第1電極構造を好適に適用できる。
【0012】
前記第1電極の第1層と、前記第2電極の第1層と、が同一の導電性金属酸化膜とすることが好ましい。
前記第1電極の第2層と、前記第2電極の第2層と、が同一の金属層を有する積層構造をしており、該積層構造は、反射層、バリア層、パッド部用の金属層を順に積層したものであることが好ましい。
上述した半導体発光素子の製造方法であって、前記第1電極の第1層と、前記第2電極の第1層と、を同時に形成する半導体発光素子の製造方法。
上述した半導体発光素子の製造方法であって、前記第1電極の第2層と、前記第2電極の第2層と、を同時に形成する半導体発光素子の製造方法。
以上の各態様・形態を発光装置に適用する形態としては、(1)半導体発光素子が、載置部に設けられた発光装置、(2)発光装置が、半導体発光素子を封止する封止部材を有し、該封止部材が、発光素子の光の少なくとも一部を波長変換する光変換部材を有する、ものがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発光素子では、第1電極の上層側と下層側が、それぞれの光学的特性、光透過性と反射性、を有し、隣接する発光構造と好適な配置、構造となっていることで、光出力、電力効率の向上、素子抵抗、Vfの低減、量産性、など、の効果が得られる。
また、このような発光素子を用いた発光装置では、電気・光特性に優れたものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光素子・装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに特定しない。特に、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0015】
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態1に係るLED100の具体例の構成について説明する。ここで、図1Aは、実施の形態1に係るLEDを電極配置面側からみた平面を、図1Bは、図1AのA−A線における断面を説明する概略図である。
図1の発光素子の構造は、基板10上に、バッファ層などの下地層21を介して、第1導電型層のn型窒化物半導体層22、発光部となる活性層23、第2導電型層のp型窒化物半導体層24が積層された積層構造からなる半導体構造20を有し、n型層22の一部が露出されてn電極(第1電極)30が設けられ、第1,2導電型層(とその間の活性層)が設けられた発光構造25の表面25tであるp型層24s上にp電極(第2電極)40が設けられた素子構造を有している。
【0016】
更に図1に係る具体例では、第1電極30は、矩形状の素子構造26、発光構造25において、その角部付近に発光構造を内側に凹ませるように第1導電型露出領域22sが設けられた凹欠部22aの電極形成領域22eに設けられ、円形状の電極の外周長さの半分以上を囲むような内壁面25sを備える発光構造25が並設されている。更に、発光構造と第1電極30との間に複数の突起部60が、発光構造よりも長く電極の外周長を囲むように設けられている。すなわち、n電極が、円弧状に発光構造に湾入した凹欠部22aに設けられ、その外縁を突起部60がその電極の外周長の半分以上、ここでは約257°の円弧状、で、更にその外側の外縁を、突起部領域より開口する外周長さの長い、開口幅・角度の大きな発光構造25(側面25s)が電極30の外周長の半分以上、ここでは約235°の円弧状、でそれぞれ囲むように並設されている。
【0017】
また、第1電極30は、下層側に設けられた透光性の透明導電膜の第1層31と、その上の上層側に、反射性の金属膜の第2層32が積層された構造で、第2電極40は、発光構造の上25tのほぼ全面に設けられた透光性の透明導電膜の電極41と、その上に設けられたパッド電極42を有する構造となっている。図1に係る具体例では、n側電極30及びp側電極40の下層側・オーミック電極と、上層側・外部接続電極と、しては、同一構造として、それぞれ、ITOと、Rh/Pt/Auをこの順に積層した膜と、で構成する。上層側は、多層膜で構成されるこの例では、最下層、すなわち透光性の下層との界面側、に、反射性の層として、Rhを設け、その上に、バリア層としてのPt層、外部接続層としてのAu層が順に積層された構造となっている。この時、第1電極30の下層側の第1層31が上層側より断面で幅広、平面で大面積に設けられ、上層側の第2層32が断面で幅が狭く、平面で小面積に設けられ、加えて、上層は下層の一部のみに設けられ、上層の外周全周を下層の突出部31pが設けられている。
【0018】
このように、下層側、特に第1導電型層22のオーミック電極、が幅広、大面積であることで、第1導電型層22との接触面積・幅を大きくでき、接触抵抗、ひいては素子抵抗、素子100の駆動電圧Vfを低減させることができる。他方、そのような幅広、大面積の下層が、透光性を有することで、第1電極下の半導体層を伝播し、その伝播層と電極との界面における電極による、若しくは隣接する発光構造側面25sから出射して電極に到達する、光の吸収・損失を低減でき、光出力、ひいては素子の電力効率を向上させることができる。
【0019】
また、上層及び下層の発光構造側の端部と第1電極30に隣接する発光構造側面25sとの距離が、下層側より上層側が長いことで、発光構造からの出射光が第2層に到達する量を低減でき、特に図1に示すように、第2層は第1層に比して厚膜、第1層高さが発光構造の発光部(活性層)より低い場合に好ましい。これは、図3Aに示すように電極30と発光構造25間が光学的に広く開口した開口部28が設けられた構造となり、第1導電型層内伝播する光を好適に取り出し可能となる。また、第2層32に到達する光が多くなるような厚膜の第2層若しくは発光部下方となる高さの第1層である場合に、側面25sからの出射光への遮光作用が大きくなり、上記第1電極構造で、その量を低減する効果が顕著となるため、このような電極構造とすることが好ましい。更に、第1電極に並設される発光構造部が、第1電極の外周を囲む領域が大きくなると、電極形成領域、すなわち上記凹欠部内で発光構造側面25sからの出射光が領域内に閉じ込められる傾向にあるため、上述したような電極構造であることで、それを回避でき好ましい。
【0020】
また、このような光閉じ込め効果の高い発光構造形状を備えた発光素子では、発光構造と第1電極との間に、光学的機能を備えた構造物の突起部があると、上述した出射光が第2層に到達する量を低減でき、すなわち、突起部による光学的な機能、例えば反射・散乱機能、により閉じ込め効果を低減でき、好ましい。
以下、本実施形態及び本発明における各構成に詳述するが、本実施形態に限らず、他の実施形態への適用、並びに、各構成を適宜組み合わせる応用も可能である。
【0021】
〔半導体構造・素子構造・発光構造〕
発光素子構造は、図1などに示すように、基板上に半導体構造20、特に各層が積層された積層構造が設けられてなるが、基板を除去するなど、基板の無い、加えて下記下地層など素子能動領域外の層の無い構造、基板中に導電型領域を設けるなどして基板を含む素子領域・構造とすることもできる。発光構造25は、図1の例では、第1,2導電型層22, 24とその間の活性層23が設けられた構造として示すように、半導体構造20による発光領域が設けられた構造となり、更に同一面側に第1,2電極30, 40を設ける電極構造である。この電極構造では、基板面内の素子領域内に第1電極30若しくは第1導電型層露出領域22sと、発光構造25の領域とが少なくとも配置された構造となる。発光構造25としては、このような活性層若しくは発光層を第1,2導電型層の間に設ける構造が好ましいが、その他にp−n接合部を発光部とする構造、p−i−n構造、mis構造、などの発光構造とすることもできる。また、素子構造中、若しくは各導電型層中に、一部半絶縁・絶縁性、i型層、逆導電型の層・領域が設けられていても良く、例えば電流注入域を制御する半絶縁・絶縁性,i型層などで形成される電流阻止層・領域、電極との接合用の逆導電型で形成される逆トンネル層などが設けられた構造でも良い。
【0022】
発光構造25となる半導体、例えば図1具体例の窒化物半導体は、基板の上に、MOVPE等の成長方法により形成される。窒化物半導体の成長基板としては、サファイア(C面、A面、R面)、スピネル(MgAl)、SiC、NGO(NdGaO)基板、LiAlO基板、LiGaO基板、若しくはSi基板、GaN等の半導体基板、等が挙げられ、成長方法としては本実施形態で用いるMOVPE(有機金属気相成長法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)の他に、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)等が挙げられる。好ましくは、基板としては、窒化物半導体と異なる材料の異種基板、更に好ましくは透光性基板、であることで、上記第1,2電極が同一面に形成された素子構造で、光取り出しに優れたものとできるためであり、具体例としては、サファイア基板、スピネル基板がある。光透過性の乏しい基板、例えば半導体基板、金属基板などは、基板と半導体との間に光反射層を設ける構造とすることもできる。また、窒化ガリウム系化合物半導体材料としては、一般式InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)のものを、特に後述のようにその二元・三元混晶を好適に用いることができ、また、これに加えてIII族元素としてB、V族元素としてNの一部をP、Asで置換されたものを用いてもよい。また各導電型の窒化物半導体としては、n型窒化物半導体はn型不純物として、Si,Ge,Sn,S、O,Ti,Zr,CdなどのIV族元素又はVI族元素等のいずれか1つ以上、好ましくはSi,Geを添加し、p型窒化物半導体層はp型不純物としてMg,Zn,Be,Mn,Ca,Sr等を含有している。また、窒化物半導体以外に、GaAs、GaP系化合物半導体、AlGaAs、InAlGaP、系化合物半導体などの他の半導体材料にも適用することができる。
【0023】
〔発光素子の具体例・製造例〕
本実施形態の図1の発光素子の具体的な半導体構造、積層構造20としては、基板10上に、下地層21として、膜厚20nmのGaNのバッファ層と、膜厚1μmのアンドープGaN層、を
その上の第1導電型層22(n型層)として、膜厚5μmのSi(4.5×1018/cm)ドープGaNのn側コンタクト層と、コンタクト層と活性層との間の領域に、0.3μmのアンドープGaN層と、0.03μmのSi(4.5×1018/cm)ドープGaN層と、5nmのアンドープGaN層と、4nmのアンドープGaN層と2nmのアンドープIn0.1Ga0.9N層とを繰り返し交互に10層ずつ積層された多層膜、を
n型層の上の活性層23として、膜厚25nmのアンドープGaNの障壁層と、膜厚3nmのIn0.3Ga0.7Nの井戸層とを繰り返し交互に6層ずつ積層し、最後に障壁層を
積層した多重量子井戸構造、を、
活性層の上の第2導電型層(p型層)として、4nmのMg(5×1019/cm)ドープのAl0.15Ga0.85N層と2.5nmのMg(5×1019/cm)ドープIn0.03Ga0.97N層とを繰り返し5層ずつ交互に積層し、最後に上記AlGaN層を積層したp側多層膜層と、膜厚0.12μmのMg(1×1020/cm)ドープGaNのp側コンタクト層、を、
積層した構造(発光波長465nm,青色LED)を用いることができる。これらの層は、例えば、C面サファイア基板上にMOVPEでc軸成長した窒化物半導体結晶で形成することができる。
【0024】
第1導電型層露出(領域)22s、発光構造領域25、これらの領域の画定は、積層構造20の一部を所望形状にエッチングなどで、加工・除去することでなされる。具体例としては、上記構造例でp型層側から、フォトリソグラフィーにより所望形状のSiOなどのマスクを設けて、n型コンタクト層の深さ方向一部までを、RIEなどのエッチングで除去して、第1電極形成領域22e(図1の例では凹欠部22a)及び突起部60・その領域、その他露出領域22sを形成する。露出された第1導電型層(n型層中のn側コンタクト層)21sに第1電極30(n電極)の第1層31、第2電極40(p型層側)の透光性のオーミック電極41、として、ITO(約170nm)を形成する。形成方法は、例えば半導体構造上にITO成膜後に、フォトリソグラフィーによりレジストのマスクを形成し、一部をエッチング除去して、各導電型層上に所望形状に形成する、該第1層31、透光性電極41の一部に第2層32・パッド電極42として、Rh(約100nm)/Pt(約200nm)/Au(約500nm)をこの順に積層した構造の膜を設ける。例えばフォトリソグラフィーによりマスク形成後に、上記積層膜を形成して、リフトオフして所望形状に形成する。このように、第1,2電極30, 40を同時に形成、具体的には同一の工程で各電極の各層を形成、することが製造工数低減でき好ましいが、別々の工程、別々の材料、積層構造で形成しても良い。また、この例では、第2電極と同様に、第1電極の第1層31はオーミック部、第2層32は外部接続部33を各々供する電極となる。
【0025】
図1の例では点線で示すように、各電極の外部接続部33, 43を露出させて、その他の領域を被覆する保護膜50、例えばSiO、を設ける。また、図1の例では、更に、素子領域26の外縁を、基板が露出までエッチングで除去した基板露出領域10sを設けている。この露出領域10sは基板(ウエハ)分割の割溝として機能させることができ、好ましいが、特に設けなくても良い。最後に、この例では□320μm(320μm角)に基板10を分割して、LEDチップを得る。尚、この例では、LEDチップの基板露出幅約5μm、周縁部のn型層露出幅約15μmで、分割前のウエハではその2倍幅あるほぼ中央部を分割
位置としてLEDチップを得る。
【0026】
以上の例で示す各構造の寸法としては、基板10の厚さとしては50〜200μm程度(上記例では約90μm)、積層構造20では下地層21の厚さは1〜2μm程度、n型半導体層22の厚さは1〜2μm程度、活性層・発光層23の厚さは50〜150nm程度、p型半導体層24の厚さは、100〜300nm程度、n型露出層22s表面から発光構造の高さは1〜3μm(上記例では約1.5μm)程度、第1層(第1電極)・第2電極(下層)の厚さは0.01〜0.5μm程度、第2層・パッド電極の厚さは0.3〜1.5μm程度、外部接続部・パッド電極の幅・径は50〜150μm程度である。また、上記例では、第1層31は、第2層32の外周全域で突出部31pが約5μmで設けられ、突起部60は幅・径が約2μm、間隔約1μmで設けられている。
【0027】
〔電極・電極構造〕
発光素子100の電極は、上記例で示すように、発光構造上25tに設けられる第2電極40と、発光構造25から離間した第1導電型層22s上に設けられる第1電極30を有する。このように、基板10の同一面側、すなわち、半導体構造上に、各導電型の電極が設けられることが好ましいが、半導体構造、それに加えて基板を挟んで対向する面上に各々電極が設けられる構造でも良い。また、基板10は、上記例の半導体層の成長基板に限らず、成長基板を研磨、LLO(Laser Lift Off)などで除去する形態、その成長基板が除去された半導体構造が別の担体となる部材、基板に設けられる形態でもよく、その際に担体部材と半導体構造間に他の層、例えば、導電性膜、光反射性膜、などが設けられる構造をとることもできる。上記発光素子の例では、半導体構造上の同一面側に第1,2電極が設けられ、該面側を主発光側とする構造となっている。
【0028】
従って、発光構造25上の第2電極40の下層側は、オーミック接触用として、また、上記図1の例のように上層側よりも幅広、大面積で形成される場合は、電流拡散導体として機能し、発光構造から光取り出しを良好とするため、透光性材料、光透過性の構造、例えば遮光性部材で多孔質状、格子状の構造など、を用いることができ、好ましくは透光性材料でほぼ全面を覆う導電膜で形成する。他方、第1電極30の下層側の第1層31は、主にオーミック接触用として機能する。これは、第1導電型半導体上に、露出領域22sと発光構造25が平面内に配置された構造では、上記拡散体としての下層側電極41と異なり、面内への電流拡散導体は、発光構造下方の第1導電型半導体領域が主にそれを担う構造となり、後述の実施形態で示す、第1電極30の配線部は、これを補完する機能をなす。従って、上記担持基板を用いる場合、その基板導電性若しくは基板と発光構造間の導電膜、特に透光性導電膜により、第1導電型側の拡散導体とすることもできる。
【0029】
発光素子100内の発光構造25は、図1,2に示すように1つの発光構造の一部、例えば図1のように角部若しくは隅部、図2のように長手方向の一方の端部、図8のように該一方端部と側面一部に、第1電極形成領域22eとして、発光構造内へ湾入するような凹欠部22aとして設けられても良く、図3C、4〜6に示すように、大面積の発光構造25、若しくは一部が第1電極形成領域22e・第1導電型層露出領域21sで一部分離されるような構造部25A〜Cを複数有する発光構造25、大面積化した素子構造である場合、若しくは図8のように長尺化した発光構造である場合には、各発光構造部に隣接して第1電極30が設けられる構造であっても良い。このような場合、各電極には、上述したようにその電流拡散を補うものとして、図示するように、第1導電型半導体、発光構造・第2電極下層側、の上に、配線となる延伸部34, 44が設けられる電極構造、互いに分離した複数の電極で構成される電極構造などにより、好ましい電流拡散がなされる。
【0030】
第1電極30の第1層31、第2電極の接触層41は、基板上に第1,2電極が設けられ電極形成側を主発光側とする発光素子構造においては、透光性の膜が形成される。透光性の導電膜、窒化物半導体のp側電極としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム (Ir)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、鉄 (Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ランタン(La)、銅(Cu)、銀(Ag)、イットリウム(Y) よりなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金、その積層構造、さらには、それらとIn、Sn、Ga、Zn、Cd、Be、Mgなどによる導電性金属化合物、例えば、導電性の酸化物、窒化物などがある。導電性の金属酸化物(酸化物半導体)として、錫をドーピングした厚さ5nm〜10μmの酸化インジウム(Indium Tin Oxide; ITO)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム)、またはSnO(酸化スズ)、これらの複合物、例えばIZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられ、透光性に有利なことから好適に用いられ、光の波長などにより適宜材料が選択される。また、上記導電性材料のドーピング材料として、半導体の構成元素、半導体のドーパントなどを用いることもできる。
【0031】
上記具体例で示すように、第1,2電極30, 40の透光性膜(第1層31、下層側)を同一材料・構造とすることが好ましく、更に同一工程で設けることが好ましく、量産性に富む電極構造とできる。同様に、第1,2電極30, 40の上層側に配される金属膜・反射性膜(第2層32、パッド電極、上層)も同一材料・構造、更には同一工程で設けることが好ましい。金属膜、反射性膜としては、上記群から選択される材料(群の一種を含む金属、合金、積層構造)を用いることができる。この第1,2電極の上層側の第2層・パッド電極は、多層膜構造とすることが好ましく、その構造としては、下層側から順に、反射層/パッド部・電流拡散用の金属層の少なくとも2層、好ましくは図3Aに示すように反射層32-1(42-1)/バリア層32-2(42-2)/パッド部用の金属層32-3(42-3)の少なくとも3層を有する構造であることが各層の機能を好適に高めることができ好ましい。反射膜としては、素子の発光に対し光反射率の材料であれば良く、具体的にはAg、Al、Rh等が挙げられ、Rhは安定して好適に用いられ、また透光性膜(第1層、下層側)との接触側に配置される。バリア層はその下層(反射層)・上層(表面層・パッド部)の拡散を防止、保護するようなものであれば良く、具体的な材料としては、W,Moなどの高融点材料や、白金族元素、Ni,Au等、好ましくはPt,W,Mo,Niが好ましい。パッド電極用の材料としてはAu,Alがある。各層の膜厚は、特に限定されないが、0.05〜5μmで形成され、反射層は他の層(それより上層)に比して、薄膜に形成されることが好ましく、その上層のバリア層、パッド層は、反射層より比較的厚膜に形成される。また、上記各層は、単一膜である必要は無く、多層膜で構成されても良く、図3Bに示すように、上記各層間及び第1層との間に保護層、密着層、例えばTi,Niなど、を介在させ、4層(32-1〜32-4,42-1〜42-4)以上で構成しても良い。具体例としては、Rh(反射)/Pt(バリア)/Au(表層)、Al(反射)/Pt(バリア)/Au(表層)、Ti(密着層)/Rh(反射)/Pt(バリア)/Au(表層)、Al(反射)/W(バリア)/Pt(バリア)/Au(表層)、Ni(密着層)/Ag(反射)/Ni(密着・バリア)/Ti(密着層)/Au(表層)をこの順に積層した構造などがある。
【0032】
ここで、第2層・上層は、図1,2,3Aに示すように、製造上、断面が第1層側を幅広とする台形状となる場合があり、このように隣接する発光構造側面25sに対して上方にその発光構造側の側面が傾斜した構造であると、光の反射作用により指向性・軸上光度を高め、発光構造上面25tでの開口幅が広がることができ、好ましい。一方で、断面矩形状(基板に略垂直な側面、逆台形状(上面側が幅広な形状、下方に傾斜した側面)であっても良く、従来知られた製造方法、例えばマスク材料・形状、成膜条件により所望形状とできる。また、第2層・上層が多層膜構造である場合には、図3Bに示すように、単純な多層構造となる場合の他、図3Aに示すように、各層の成膜条件・特性の違いにより、上層側が下層側、特にその側面を覆うように設けられる構造となる形態もある。何れの構造であっても良く、上層側が側面を覆う形態では、第1層(下層)側の反射層が、他の層(バリア層、パッド層)より反射率が高いため、上層の下端面に比して、側面・上面などの反射率が低くなり、本発明の電極構造とすることで、効果的に機能する。このように、上層の下方の反射層は、それより上層の膜より反射率が高く、第2層の上面、側面のほとんどが反射率の低い構造となる。
【0033】
第1層は、第2層に比して断面幅広、大面積で形成されることで、第1導電型層との接触面積を大きくして接触抵抗を低減し、素子の駆動電圧Vfも低減させることができる。他方、透光性であることで、第1導電型層の被覆幅・面積が大きくなっても遮光せず、光の吸収・損失を低く抑えて、光取り出し効率向上、高出力化、ひいては発光素子の電力効率を向上させることができる。一方で、第2層から突出した突出部において、電極形成位置より下方の半導体領域で伝播する光を好適に素子外部へ、特に電極形成面側へ取り出すことができ、大面積、幅広の電極による光損失を低減できる。すなわち、図3Aに示すように、隣接する発光構造側面と第2層側面との間が、図中矢印のようにその光伝播領域の出射口(図中白抜き矢印)となる開口部28となるため、第2層と発光構造との距離より長くなる構造が好ましい。特に、第2層が第1層に比して厚膜で設けられる場合、発光構造の発光位置より低い位置まで第1層が設けられ、第2層が発光位置より高い位置まで設けられる場合には、離間距離を長くして、第2層の遮光作用を低減し、開口部28の幅・面積を増大させることが好ましい。
【0034】
〔発光構造・電極構造〕
発光構造は、上述したように、発光素子領域中に、図1,2,8に示すように1つである形態、図3C,4〜6に示すように、一部が第1導電型層露出領域22s・第1電極形成領域22eで分離された発光構造部25A〜Cで構成されるものの何れでも良く、素子の面積、特性に応じて適宜選択される。発光構造25と第1電極10は図示するように1対1である必要はなく、第1電極30に挟まれた発光構造のように、2対1など他の関係でもよく、少なくとも発光構造部とそれに並設された第1電極30との組を有する構造であれば良い。
【0035】
基本的な発光素子構造は、各断面図にて観られるように、発光構造25に並設されて第1電極30が設けられた構造部を有するものとなる。このため、このような並設領域では、本発明の電極構造とすることが好ましい。
そのため、第1電極30面積・幅を増加させると、電極端と発光構造部側面との距離が短くなるため、下層側の透光性の第1層が発光構造の近くに配置され、その上の上層側の第2層が遠くに配置された構造とすることが好ましい。特に、各図で示すように、第1電極の外縁として発光構造が設けられる領域では、本発明の電極構造の効果が高まる。
【0036】
第1電極30に対する隣接する発光構造25の領域としては、第1電極30の片側、例えば発光構造に隣接する側若しくは電極外周長の半分、及びそれ以上である場合には、本発明は効果的に機能するため好ましい。特に、一方が素子外部方向若しくは第1電極30の外部接続部・延伸方向に開口し、他方が発光構造25に対向して、閉塞された領域、図1,2の凹欠部、図3C,4〜6の電極延伸部、であるような構造の場合に特に好ましく、更には図4,6に示すように発光構造に内部で囲まれた閉塞領域である場合に更に好ましい。
具体的には、このような領域では、発光構造25の電極側の側面25sの少なくとも一部領域が、互いに対向する内壁を形成するような構造となり、該側面及び第1導電型層露出部から出射する光が閉じ込められ易い構造となっているため、本発明電極構造であることで、光閉じ込め、電極による光吸収・損失が低減できる構造できる。
【0037】
第1層31と第2層32とは、図示するように、第1層31上の一部に設けられる構造であること、更に第2層32の全外周に第1層31の突出部31pが設けられる構造であることが好ましい。例えば、第1層と第2層が一部で重なり合い、第2層が第1層の外側へ延在して形成される形態とすることもできる。しかし、上記第1層による開口領域が減少すること、第2層の接着界面が第1層と第1導電型層の複合界面となり密着性が悪くなる場合があること、があり、第1層内に設けられることが好ましい。一方、第2層端部の一部領域が第1層端部とほぼ同一に重なるような形態であっても良い。これは図3Cの点線32Bで示すように、延伸部の幅方向では第1層31に突出部31pが設けられ、延伸方向の端部で重なって形成されるような形態がある。この形態では、外周長の多くを占める延伸方向側面が突出部31pを有するため、全周域が突出部31pを有する場合に比して、僅かに電力効率が低下する程度に抑えることができるため、このような形態でも好適に利用できる。
【0038】
他方、図3Cの破線32Cで示すように、延伸方向に対して短く設けられる場合、すなわち、延伸方向の幅方向の突出部長さより、延伸方向端部における突出部の長さが大きくなるような場合には、抵抗、特にシート抵抗の大きな第1層により電流拡散を担う領域が多くなり、電流広がりが不十分となる傾向にある。このため、この形態では、幅方向における突出長さを基準として、その2倍幅以下に端部の突出長さとすることで、電流拡散・均一性が好適なものとでき、好ましい。また、図6の例のように、外部接続部33における突出部の突出幅と、延伸部34におけるそれとが異なる形態、すなわち、電極の形状により、特に断面幅・平面の面積、が異なる各電極部で、互いに異なる突出部の幅・長さ、若しくは発光構造と第2層との距離、とする形態でも良い。この場合、大面積・幅広な部分(外部接続部)の方が、突出幅を大きくする方が、電極幅による電流狭窄などが少なく、電極の被覆面積の大きな領域で第1層突出部が幅広に形成されると、好適な開口効果が得られる。他方このように、突出部の幅は、第2層の幅など電極の各部に応じて、変化させることもできる。例えば、図5(電極一部34B-1[32B-1, 31B-1]),図8(延伸部34)の例のように、電極30(延伸部34)の片側、一方側面に発光構造が隣接し、他方に発光構造が設けられず、例えば素子外縁となるような場合には、その幅中心から変位させるなど、図の例では発光構造から遠ざかる方向に第2層を変位、して、発光構造部隣接側の突出部31pの幅・長さ、若しくは第2層と発光構造との距離を、その対向側より、長く・大きくするような形態、とする方が、上述した通り好ましい特性が得られる。特に図5の例では、各電極部(1次延伸部、2次延伸部、外部接続部)で互いに異なる突出部の幅・長さとして、各部に好適な第1,2層を重ね合わせる形態とすることができる。
【0039】
次に、図3Dの断面概略図を用いて、下層及びその両側の突出部の各作用について詳述する。図中の矢印に示すように、発光構造部25からその外側に延在した露出部の電極形成領域22eを有する第1導電型層22に、光が基板10などに反射されて伝搬する。この時に、上層32領域32cに到達する光が、下層31が介在することで、屈折、反射されるなどの光制御作用により、上層32に到達する光が低減され、すなわち、上層による光吸収が防がれ、上層領域32c外側に方向転換された光が取り出されることにより上層の光反射、半導体層への再入光を防止することができる。これにより、光損失低減、光取り出し効率向上ができ、他方下層による幅広、大面積の電極により電流拡散、均一化に寄与して、素子の電力効率が向上する。
【0040】
このような効果は、発光構造部上の第2電極よりも、そこから外側に延在する第1導電型半導体層の第1電極で高くできる。また、上層32(その領域32c)から発光構造部25側に突出した突出部31aよりも、その対向側32e、好適には電極に隣接する発光構造部25から開口している側、更には素子外周側で高くできる。後者の具体的な構造は、第1電極と発光構造部を切断する断面において、上層から両側に突出した突出部において、一方が発光構造部側で、他方がその対向側に配置される構造を有する。前者の効果向上は、発光構造部25上の第2電極では、下層の面積、その占有率が大きく、上層がそれに比して小さいため、上層42における遮光、光損失効果が低く、また、発光層23から種々の方向の光が上層に到達するため、その光を制御することが困難になるためである。他方、第1電極では、図に示すように、発光層23からの光の内、その電極形成領域の第1導電型半導体層に伝搬する光は、電極形成の露出面22eに対して高角度な成分が多くを占めるため、図中矢印に示すような下層による光制御作用を好適に発揮することができる。
また、後者における突出部の発光構造部側32aとその対向側32eの対比では、発光構造部側突出部32aから取り出された光は、上述したように、上層32が隣接する発光構造部から離間されて、光取り出し窓が大きくなる効果がある一方で、隣接する発光構造部への再入光、上層による光反射・吸収があるため、その突出部から取り出された光が、最終的に素子外部に取り出される割合が小さくなる。他方、その対向側では、そのような問題が低減されるため、下層による光制御、突出部による光取り出しが効果的に機能する。特に、その対向側32eが、電極30が隣接する発光構造部から開口された領域であると、その機能が高まり好ましく、更には、それが素子外周側であると、直接的に素子外部に取り出されるため最も好ましい。
【0041】
〔突起部・光学的構造部〕
上記電極30と発光構造25との間に、図1,2,3Bに示すように、突起部60などの光学的な機能、例えば反射,散乱,回折,出射口の機能、を有する構造部を設けることが好ましい。これは、上述したように、発光構造側面25sからの出射光が第2層表面に到達する光量を低減でき、すなわち光損失の原因となる第2層による遮光作用があるためである。このような光学的な構造部としては、第1導電型半導体層露出表面22s上に、透光性の絶縁膜、例えば保護膜50などによる凹凸構造など、光吸収・損失の低い、透光性の材料で形成されることが好ましく、また反射・散乱の機能に限れば金属性の突起部・凹凸部を設けることができる。好ましくは、該電極・発光構造間領域が狭い領域であるため、付加的な構造物を設けるよりも、半導体の積層構造から分離、具体的には発光構造から分離された半導体構造物により、設けられると精度良く、また高密度に形成でき、光学的機能を高められ、更に発光素子と同様な透光性の材料であるため、好ましい。
【0042】
具体的には、図示するように、発光構造25から分離溝25pが設けられて、分離される突起部60として設けることができる。図1,2,8の例(平面視)では発光構造から第1導電型層22上で分離された形状であるが、第1電極側の側面、凹欠部の近傍領域における発光構造に、孔(凹部)を設けて、その孔とそれを囲む発光構造による複合的な構造物とすることもできる。すなわち、図示の例において、突起部と第1導電型層露出部の各領域を反転した形状として形成することもできる。このような突起部若しくは凹部の平面形状としては、図示するような円形状が、高密度な配置、量産性に富み最も好ましいが、楕円形状、四角・矩形状、多角形状、それらの複合的な形状であっても良い。また、その配置は、これら形状に応じて、四角・矩形状,平行四辺形状,三角形状,六角形状(蜂の巣状)、などが適宜選択され、高密度な配置がなされる。これら構造物(突起・凹・溝の各部)の平面の大きさとしては、幅0.5〜5μm、好ましくは1〜3μmであると、好適に製造できる。また、断面形状は、上記第2層と同様に、台形・逆台形状、矩形状などの形状とでき、透光性部材で構成されると、光学的機能が反射だけに限らないため、側面の傾斜による反射への依存性が第2層よりも低くできるが、好ましくは第2層同様に、底面側が幅広な、上面側が電極方向に傾斜した、形状である。このように、突起部とは、光学的な機能を有する構造物であり、その表面・上面62・側面63, 64、若しくは他の材料との界面などにより、光学的な機能を供することができるものであれば良い。ここで、図3は、本発明の発光素子の一部構造について説明する断面図(図3A図3B)、平面図(図3C)である。
【0043】
また、図3に示すように、このような光学的機能の構造物は、第1導電型層露出領域と同様に、発光構造と異なる非発光領域を構成し、上記透光性材料であると、図3A,Bに示すように、その形成領域は開口部28として機能できる。この時、構造部・突起部60が、発光構造から電気的に分離されている(図1,2,8の例)と、図3Bに示すように、第1電極が突起部形成領域にまで、延在して形成する(延在部31p-1)こともできる。好ましくは、図示するように、透光性の第1層が延在して形成し、第2層を離間させることで、発光構造側面からの出射光に対して、図中白抜き矢印で示すように、好適な光散乱作用が働き、第2層の光吸収・損失を低減できる。また、第1層の接触面積増加によるVf低減も可能となる。突起部に延在する第1層は、図に示すように、電極側の側面63、更には上面62に到達する形状とすることができる。
【0044】
〔保護膜50〕
図1,2,3Aなどに示すように、各電極の外部接続部33, 43を開口させた開口部51w, 52wを設けて、他の素子領域のほぼ全面を覆う保護膜が形成されていても良い。保護膜は、素子構造側を主光取り出し側とする際には、透光性材料で形成される。また、開口部の形状は、図1,2に示すように、電極上面の一部が開口される形状であっても良く、図3Aに示すように電極の下層側(透光性膜)を覆い、開口部内に、保護膜端部から離間して電極の上層側が設けられる形態でも良く、比較的薄膜で形成される下層側の透光性を覆う形態であることが好ましい。保護膜材料としては、従来知られたもの、例えば、珪素の酸化物・窒化物、アルミニウムの酸化物など、発光素子の光・波長に応じて、適宜透光性の良い材料を用いると良い。膜厚としては、0.1〜3μm程度、好ましくは、0.2〜0.6μm程度で形成される。
【0045】
また、素子領域外周域の保護膜端部は、図1に示すように、基板露出部10s(溝)と略同一に形成されても良く、図2示すように、該露出部10sから離間して、素子領域26の第1導電型層露出部22s上から素子内部を被覆するような形態でも良い。前者は、基板露出10sの半導体除去と同じ工程で、保護膜も除去することで、半導体構造領域と略同一形状の保護膜が形成される。他方、図2の例では、素子領域外周を画定するようにその近傍域の保護膜50を除去して、第1導電型層22sを露出させ、その保護膜露出部内で、半導体層を除去して、基板露出部10sを設ける。基板分割、LEDチップ形成は、該基板露出部がある例では、その溝部を割り溝としても用いる。素子領域外縁部は、このように基板露出部とすること、すなわち素子領域を半導体構造領域として設けても良く、他の図4〜6の例で示すように、発光構造外縁の第1導電型層露出領域でも良く、その他に、発光構造端部を外縁部とするもの、これらの複合的な外縁を形成するものでも良い。
【0046】
(比較例)
上記実施形態1の具体例(図1)において、その第2層と同一幅・面積で第1層を設ける例、その第2層より小さい、例えば第2層外周から1μmほど内側が外周となる、第1層を設ける例、と比較すると、上記実施形態1の具体例の方が、順方向電圧が低く、光出力が同程度若しくは僅かに向上する傾向が観られる。このことから、上記具体例の第1層と同等な大きさの第2層を設けると、順方向電圧はほぼ同等であるが、光出力が急激に低下するものとなると考えられる。このため、大電流注入の高出力域、大面積の発光素子では顕著に差が現れると考えられ、特に電力効率を低下させる要因になると考えられる。
また、上記具体例では、100lm/W超の発光素子及び発光装置(図7Bに示す樹脂封止型のもの)が実現できるが、この比較例ではそれより低下し、100未満となるものがある。
【0047】
(実施形態2)
実施形態2としては、上記実施形態1の具体例(図1)のLED形状が略正方形であるのに比して、図2に示すように、LEDの大きさを420μm×240μmとして、長方形状にする形態である。実施形態1と同様に、半導体構造を形成し、発光素子構造・突起部・電極形成領域を形成し、各電極を設け、基板露出、基板分割により形成できる。ここで、図2Aは、この発光素子の平面図の概略を、図2Bは2AのAA切断面における断面図の概略を示すものである。
【0048】
第1電極30の形成領域22eである発光構造25の凹欠部22aは、発光構造の隅部として、長手形状の発光素子の領域・発光構造に対して、長手方向の一方の端部側に設けられ、該長手方向を開口して、その他を囲むような外縁が発光構造で形成され、具体的には矩形状の電極形成領域の1辺が開口した外縁形状となっている。そのため、図1の例よりも発光構造、突起部と共に、より大きな割合で電極外周を囲み、具体的には第1電極周囲の約8割の外周長を発光構造が囲み、突起部は外周全域を囲む形態となっている。このように、第1電極30の外縁が、発光構造25と突起部60とで異なる形状、外周長とすることもでき、突起部・光学的構造部の方が配置の自由度が高いため、外周長を発光構造に比して長くすること、更には、発光構造部の開口部に突起部を設けることができる。また、発光構造25が一部開口した電極形成領域22eであることで、光の閉じ込めが弱まり、光出力に寄与するため好ましく、他方、光学的構造部が開口部を塞ぎ、外周全域に設けられても、非発光部であるため、光出力・取り出し効率低減作用は小さく抑えられる。従って、この例では、光特性に優れた発光素子が得られる。
【0049】
〔変形例〕
上記図2の変形例としては、図8に示すような、より細長い発光素子とすることもできる。外形寸法は550μm×150μmで、長手形状の発光構造に対して、長手方向端部に外部接続部33を含む電極形成領域22eが設けられている。図1,2の例とは異なり、この電極形成領域22eは、電極を囲むような凹欠部とならずに一部発光構造が、長手方向で電極の側面一部に延在して設けられた形状となっている。さらに第1電極、第2電極は、それぞれ基点となる長手方向両端付近の外部接続部33,43から長手方向に延伸する延伸部34,44を有しており、互いの延伸部は発光構造を挟むように幅方向に対向して、並進するように設けられる。第1電極の延伸部は発光構造に隣接して設けられ、長手方向で第2電極の基点から離間する位置まで設けられ、第2電極延伸部も同様に第1電極の基点から離間する位置まで設けられている。尚、第1電極延伸部34が設けられている領域は、発光構造の幅が、他の領域、例えば外部接続部44との間の領域など延伸部34端部から長手方向外側の領域、の幅よりも狭く形成され、内側に凹んだ構造となっている。このように延伸部により、発光構造の長手方向への電流広がりを良好なものとできる。
【0050】
この例では、図示するように、電極領域における第1層31の突出幅、すなわち、第2層32端部と第1層31端部との距離、が略同一で形成されている。このように、延伸部に応じて第2層も設けられると、発光構造、特にこの変形例のように幅が狭い長手形状の発光構造25、に対して、好適な電流広がりを実現できる。他方、発光構造の外部側面の一部を覆うように第1電極が設けられ、特に長手方向の側面に並設される延伸部34, 44が設けられると、発光構造25からの光を遮る作用が働くが、図示するように、幅の狭い・小面積で第2層が設けられることで、この作用を抑えることができる。更に、発光構造側の突出部をその反対側より幅広として発光構造から第2層をより離間させることで、効果を高めることができる。上述したように、延伸部34を有するような電極構造である場合に、外部接続部33に第2層32を設け、延伸部34に第2層を設けない形態、すなわち第1層より第2層の延伸長さを短くする形態、であると、電流広がりが低下、電圧上昇傾向にあるが、低電流域での使用では第1層31の延伸部が設けられているため、光取り出しに優れたものとできる。すなわち、第1,2層を有する外部接続部と、そこから延伸する第1層の延伸部で構成されることで、低電流域に優れた発光素子が得られる。
【0051】
また、図2の例とは異なり、突起部60が、第1電極30と発光構造部25との間の領域に加えて、発光構造及び第1電極の外周部、すなわち、素子領域の外縁部の外周ほぼ全域に、突起部が設けられており、このような形態では、発光構造側面からの出射光を、基板面の法線方向に好適な指向性を持たせることができる。
【0052】
この変形例について、本発明を検討するため、図8の例1と、その比較例として、下層31が無い例2、上層31の延伸部34が無く(下層31の延伸部が有り)、図中点線部33rで示す外部接続部だけの第2層とする例3について検討する。各例の発光素子は、φ5mmの砲弾型の発光装置(青色)に搭載して評価すると、下表1の特性のものが得られる。ここで、半導体層、電極構造、各部の寸法は、上記実施形態1の具体例(□320μm)と同様である。
【0053】
【表1】
上表1から分かるように、例3のように下層だけで延伸部を構成する構造では、Vfが高くなり、また例2のように上層だけで延伸部・第1電極を構成する構造では、延伸部により電極面積、ひいては被覆面積の占有率が大きくなり、すなわち反射性の第2層による遮光効果が高くなることで出力が低下する。
【0054】
一方、本発明に係る例1では、上層より断面幅広な下層により、上層の電極による遮光、光損失を低減して、上層から突出した下層突出部から光取り出しでき、延伸部によるVf低減、電流拡散・均一化の機能を備えて、その構造による弊害である遮光、光損失を低減して出力を向上させることができ、結果として、電力効率の高い発光素子が得られる。特に、延伸部のように、外部接続部などに比して幅狭な構造であると、図3Dに示すような光の屈折などの制御作用が好適に機能して、延伸部が設けられることによる光損失の増加を抑えることができる。特に図3Dに示すように、発光構造部側の突出部3aよりも、その対向側3e、特に素子外周側における光取り出し効果がより顕著となり、好適に素子外周側、すなわち素子外部へ光を取り出すことができる。
【0055】
また、この例で示すように、発光構造の側面構成辺、特に素子外形構成辺の1辺において、その発光構造、素子の半分超の長さで延伸部を設ける構造では、その辺における遮光効果、例えば隣接する発光構造の側面発光、電極形成領域22eの露出面からの発光、に対する遮光効果が、大きくなる。これに対し、本発明では、その遮光効果を低減させることができるため、このような延伸部構造に、下層構造が好適に用いられる。特に、この例のように、長手形状の発光素子におけるその長手方向の構成辺でその長さの半分超である場合には、遮光効果がさらに大きくなるため、本発明の遮光効果低減作用が好適に機能する。この時、少なくとも、発光構造側33aに対向する側に突出部を有し、好ましくはその対向側が発光構造部から開口されたような素子外周側であること、さらに好ましくは、両側、すなわち発光構造部側とその対向側(素子外周側)に突出部を有することが好ましい。
【0056】
(実施形態3)
図4に示す例では、発光構造25の内部に、電極形成領域22e及び第1電極30が2つ設けられた構造を有し、発光構造部25p間に第1電極が配置された発光構造を有している。従って、長手形状の発光構造部25A〜Bが、その幅方向に第1電極30(形成領域22e)と交互に配置された構造となっており、第1電極30は、幅広な外部接続部33, 43と、そこから長手方向に延伸する幅の狭い延伸部34, 44を有する構造となっている。これにより、長手形状の各発光構造部25A〜Bに対して、並設された第1電極30、主にその延伸部34を有する構造とでき、好適な電流広がり、発光を実現できる構造となっている。ここで、図4Aは、発光素子の平面図の概略であり、図4B図4AのAA断面図の概略である。ここでは、発光素子の外形寸法は、□1mm(1mm角)で、各電極の外部接続部など他の構造物の寸法は、素子の大きさに関わる発光構造及びそれに伴う延伸部を除いて、上記例と同様な寸法で形成できる。
【0057】
この例では、上述の例(図1,2,8)とは異なり、電極形成領域22eが、外周全域を発光構造に囲まれた構造となっており、また、電極構造も外部接続部33を基点として2方向、この例では発光構造部25A-Bの長手方向両側の2方向、に延伸する延伸部34を有する構造となっている。また、第2電極40(その上層42)も同様に、各発光構造部の長手方向に延伸する延伸部44を、第1電極・その延伸部に、上記交互に配置される発光構造部25A-Bを挟んで対向して配置される。さらに、各発光構造部25A-Bは、その間に、長手方向両端で、幅方向に互いに連結する発光構造部を有し、その環状の発光構造に応じて、第2電40(第2層42)極延伸部も幅方向に延伸して(延伸部43C)、第1電極30を囲むように、四角形の環状の延伸部44が設けられている。ここで、第1,2電極の外部接続部34, 44は、長手方向に、両端の近傍に配置され、互いに対向して各電極の接続部が設けられ、第1電極の接続部は、3つの延伸部34A, 34Bの長手方向端部付近にそれぞれ設けられている。
この構造のように、各電極及びその延伸部若しくは外部接続部、発光構造部が複数設けられる発光素子構造でも本発明は好適に適用される。
【0058】
(実施形態4)
実施形態4としては、図6に示すように、実施形態3の図4の例に比して、電極形成領域22e及び発光構造、構造部は、同様な形態である一方で、第2電極40の上層42延伸部44が、第1電極30の外部接続部34側の端部で開口した形状となっている。第1電極30で挟まれた内側構造部25Aでは、外側構造部25Bの外部接続部44から幅方向に延伸する1次延伸部42A-1と、そこから長手方向に延伸する2次延伸部42A-2が設けられている。また、第1電極30の構造、形成領域22eも異なる形態となっており、発光構造部25A, Bの長手方向の端部に外部接続部34が配置され、それを基点として、第2電極40の外部接続部44側へ一方向に延伸する延伸部44Bを備えた構造となっている。また、第2電極40の外部接続部44は、第1電極30と交互に配置された長手形状の発光構造部25A, Bに対して、1対1の関係でなく、外側の発光構造部25Bにそれぞれ設けられている。ここで、図6Aは、発光素子の平面図の概略である。また、この例の発光素子の寸法は、素子外形が□800μm(800μm角)であり、その他の構造物の寸法は、素子の大きさに関わる発光構造及びそれに伴う延伸部を除いて、上記例とほぼ同様である。
【0059】
この例においても、本発明の電極構造は好適に機能し、上記実施形態3と同様に、閉塞した電極形成領域22eにおいても、露出部22sからの光取り出しを好適になし得る。尚、実施形態3及び4の例では、突起部について図示していないが、上記実施形態1〜2(図1,2,8)と同様に、露出部22s内で、電極と発光構造との間に突起部を設けても良い。
【0060】
(実施形態5)
図5の例では、実施形態3,4(図4,6)と同様に、延伸部及び発光構造部を複数有する構造であり、異なる点としては、実施形態4(図6)の構造部25Aに設けられた第2電極延伸部42Aと同様に、1つの延伸部34, 44が屈曲する様な形状、枝分かれる形状の構造を有し、更に、複数の発光構造部25A, Bに対して、各電極に1つの外部接続部34, 44が設けられた素子構造を有している。各電極30, 40の延伸部は、発光構造部25A, Bに並設される(2次)延伸部34B-2, 42B-2(42A-2)と、その2次延伸部まで配線し、各延伸部(発光構造部25A, B)間を配線する(1次)延伸部34B-1, 42-1と、を有する構造であり、外部接続部34, 44を基点として、それぞれ1次、2次延伸部を備えて、1つの外部接続部に接続されている。また、第1電極30の内側発光構造部25Aに挟まれた延伸部34Aは、1次延伸部だけで構成されている。
【0061】
このため、実施形態3,4(第1電極)とは異なり、実施形態4の第2電極上層42と同様に、第1,2電極の延伸部34, 44、第1電極30及び第2電極上層42は互いに分離されず、互いに接続され、また、そのような配線を可能とするために、各電極が設けられる発光構造、第1導電型層露出領域も、互いに接続された構造となっている。 また、実施形態2,3の例とは異なり、各発光構造部の長さが異なる構造となっているが、このような互いに接続された電極構造によりそれを補うことができ、好ましい。ここで、図5Aは、発光素子の平面図の概略であり、図5Bは5AのAA断面を示す概略断面図である。また、発光素子の外形寸法は、□600μm(600μm角)であり、その他の寸法は、素子の大きさに関わる発光構造及びそれに伴う延伸部を除いて、他の実施形態とほぼ同様である。
【0062】
この発光素子の例でも他の実施形態同様に、本発明の電極構造を好適に適用できる。特に、各延伸部は発光構造の内部深くにまで延伸しており、第1電極30の一部の延伸部(34B-2, 34A)における電極形成部22eは、一部が開口された凹欠部であっても、発光構造深部にまで設けられ、光閉じ込め作用が大きな形態となっているが、上記電極構造により、それを抑えて、好適な発光特性、電力効率をなし得る。図の例では、該凹欠部の一部延伸部は、突出部の長さ・幅は、ほぼ同一となって、上記他の形態と同様に第1,2層の幅中心をほぼ同一としている。また、上述したように電極各部において、第1,2層の幅中心を互いに変位させたり、突出部長さ・幅を相違させたり、また各部の間でこれらを互いに変位、異なるようにすることもできる。
【0063】
(実施形態6)
以上の発光素子100を搭載する発光装置200について説明すると、図7A,Bに示すように、実装用の基体・領域201の発光素子実装部173に発光素子100が載置された構造となる。実装基体として例えば、発光素子用、受光素子用のステム(図7Bの210)、平面実装用セラミック基板、プラスチック基板等が挙げられる。具体的にはAlNからなる実装基体、金属性の実装基体を用いると放熱性の高い発光装置を得ることができ好ましい。半導体発光素子が実装される実装面173は金属材料からなることで、発光素子外に取り出された光を反射し、好適な光指向性の発光装置とすることができる。実装面などの発光素子が載置され、光が到達する装置内部の表面、反射面203では、金属材料が例えばリード電極210などに用いられ、その金属材料は本発光装置の発光波長の光を高反射率で反射することのできる金属材料が好ましい。具体的には、Ag、Al、Rh等が挙げられ、鍍金被膜など形成される。発光装置の例は、図4に示すように、装置の基体・筐体220に設けられた素子実装部173に接着層160を介して、第2の主面に反射層などのメタライズ層170、共晶ハンダ、接着層180を設けた半導体発光素子100を熱圧着などで実装して、各電極にワイヤ250などで、発光装置200のリード電極210(a,b)とそれぞれ接続して、発光素子を封止部材230で封止した構造を有している。尚、図中の符号122〜124、110は、上記発光素子の各層22〜23及び基板10に相当する。図7Aでは発光装置200の基体220に各電極リード210が貫入されて、発光素子が載置される領域に露出されて、その電極接続部にワイヤ250で電気的に接続された構造となっており、更に、その露出領域を発光素子と共に封止する透光性の封止部材230、若しくは気密封止などにより封止された構造を有する。図7Bの例では、封止部材230が装置の基材を兼ねた構造となっている。封止部材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが用いられ、接着部材180にはこれらの樹脂材料の他、共晶ハンダなどの半田,共晶材料、Agペーストなどが用いられる。
また、図4,5の例では断面図に示すように、基板の半導体構造に対向する面側にメタライズ層として、反射層70が設けられている。図7の例では、更にその上に、接着層180が設けられている。反射層は設けることで、光の反射性が向上する傾向にあり、好ましく、基板の第2の主面が露出した発光素子でも良い。尚、接着部材は、基板のメタライズ層に、基板側接着層として設ける形態でも良い。
また、封止部材230中など、発光装置200の発光素子から装置の出射口、例えば図7のレンズ部、との間の光路上に、発光素子の光を少なくとも一部変換する光変換部材を有して、種々の発光色を得ることもできる。光変換部材としては、青色LEDの白色発光に好適に用いられるYAG系蛍光体、珪酸塩蛍光体、近紫外〜可視光を黄色〜赤色域に変換する窒化物蛍光体などが挙げられる。特に、高輝度且つ長時間の使用時においてはYAG・TAGなどのガーネット構造の蛍光体、例えば(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,La,Tbなど、が好適に用いられる。窒化物系蛍光体、オキシナイトライド蛍光体としては、Sr−Ca−Si−N:Eu、Ca−Si−N:Eu、Sr−Si−N:Eu、Sr−Ca−Si−O−N:Eu、Ca−Si−O−N:Eu、Sr−Si−O−N:Euなどがあり、一般式LSi(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLSi(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。また、これらの蛍光体、他の蛍光体などを適宜用いることにより、所望の発光色の発光装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1A】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
図1B図1AのAA断面における断面概略図。
図2A】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
図2B図2AのAA断面における断面概略図。
図3A】本発明の一実施形態に係る発光素子の断面概略図。
図3B】本発明の一実施形態に係る発光素子の断面概略図。
図3C】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
図3D】本発明の一実施形態に係る発光素子の断面概略図。
図4A】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
図4B図4AのAA断面における断面概略図。
図5A】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
図5B図5AのAA断面における断面概略図。
図6】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
図7A】本発明の一実施形態に係る発光装置の断面概略図。
図7B】本発明の一実施形態に係る発光装置の断面概略図。
図8】本発明の一実施形態に係る発光素子の平面概略図。
【符号の説明】
【0065】
10:基板,10s:基板露出表面、20:半導体構造・積層構造,21:下地層,22:第1導電型層(n型層)(22s:第1導電型層,22a:凹欠部,22e:電極形成領域),23:活性層(発光層),24:第2導電型層(p型層)、25:発光構造(25p:構造部,25s:発光構造側面(電極側))、26:素子構造・領域、30:第1電極,31:第1層(31p:突出部、31a:発光構造側、31e:その反対側),32:第2層,33:外部接続部,34:延伸部、40:第2電極,41:下層側(オーミック電極(透光性)),42:パッド電極(上層),43:外部接続部,44:延伸部、50:保護膜(51w, 52w:開口部)、60:突起部,61:電極側の側面,62:上面,63:発光構造側の側面
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8