(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719628
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】スピンドルユニット
(51)【国際特許分類】
B24B 41/047 20060101AFI20150430BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
B24B41/047
H01L21/304 631
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-35585(P2011-35585)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-171050(P2012-171050A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
(72)【発明者】
【氏名】小澤 成俊
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−188433(JP,A)
【文献】
特開2010−023187(JP,A)
【文献】
特開平10−156715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/047
H01L 21/304
B24B 45/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルと、該スピンドルを支持するベアリングが配設されたハウジングと、該スピンドルの一方の端部に装着された駆動部と、該スピンドルの他方の端部に工具を装着する工具マウントと、から少なくとも構成されたスピンドルユニットであって、
該スピンドルの一方の端部は該駆動部から突出した突出ロッドを備え、該突出ロッドには軸心方向に移動可能でかつ固定可能な単一の錘が配設されており、
該突出ロッドの軸心方向における該錘の位置を調整して該スピンドルの回転数に起因する共振を解除する
スピンドルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するスピンドルを有するスピンドルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画されて表面に形成されたウェーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、切削装置、レーザー加工装置等によって個々のデバイスに分割され、各種電子機器等に利用されている。
【0003】
ウェーハの裏面研削に使用される研削装置は、ウェーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウェーハを研削する研削手段とを備えている。この研削手段は、スピンドルと、スピンドルを回転可能に支持するベアリングを備えたハウジングと、スピンドルを回転駆動する駆動部と、研削工具を装着するための工具マウントとを有するスピンドルユニットを備えており、チャックテーブルに保持されたウェーハの裏面に回転する研削工具を接触させて研削を行うことにより、ウェーハを所望の厚みに加工することができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−303051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スピンドルの回転数がスピンドルユニットの共振点と一致すると、スピンドルが振動して高精度な加工ができないため、スピンドルの回転数は、スピンドルユニットの共振点を避けるように設定されている。したがって、スピンドルの回転数を所望の値に設定できないことがあるという問題がある。このような問題は、研削装置に限らず、スピンドルユニットを備えた他の加工装置においても生じる。
【0006】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、スピンドルの回転数を所望の回転数に設定しても共振が起こらないスピンドルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スピンドルと、スピンドルを支持するベアリングが配設されたハウジングと、スピンドルの一方の端部に装着された駆動部と、スピンドルの他方の端部に工具を装着する工具マウントとから少なくとも構成されたスピンドルユニットに関するもので、スピンドルの一方の端部は駆動部から所定長さ突出した突出ロッドを備え、突出ロッドには軸心方向に移動可能でかつ固定可能な
単一の錘が配設されており、突出ロッドの軸心方向における錘の位置を調整してスピンドルの回転数に起因する共振を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスピンドルユニットは、駆動部から突出した突出ロッドを備え、突出ロッドには軸心方向に移動可能でかつ固定可能な錘が配設され、錘の位置を調整することによりスピンドルの回転数に起因する共振を解除することができる。したがって、所望の回転数でスピンドルを回転させた際に振動が生じる場合は、突出ロッドの軸心方向に錘を適宜移動させることにより共振が起こらないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】スピンドルユニットの一例を示す斜視図である。
【
図2】スピンドルユニットの一例を示す断面図である。
【
図3】スピンドルユニットを備えた研削装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すスピンドルユニット1は、スピンドル2がハウジング3によって回転可能に支持されて構成されている。スピンドル2の下端はハウジング3から突出しており、突出した部分には工具を装着するための工具マウント7が装着されている。工具マウント7には、各種工具を取り付けてネジ70によって固定することができる。
図1の例では、基台100aと基台100aに固着された複数の砥石100bとからなる研削ホイール100が工具マウント7に固定されている。
【0011】
図2に示すように、ハウジング3には、スピンドル2をスラスト方向に支持するスラストベアリング4と、スピンドル2をラジアル方向に支持するラジアルベアリング5とが配設されている。
【0012】
スピンドル2の一方の端部(図における上端部)には、スピンドル2を回転駆動する駆動部6が装着されている。駆動部6は、スピンドル2に連結されたロータ60とロータ60を回転させるステータ61とを備えたモータであり、ロータ60にはハウジング3から軸心方向に突出する突出ロッド8が延設されており、駆動部6から突出ロッド8が突出した構成となっている。一方、スピンドル2の他方の端部(図における下端部)には、工具を装着するための工具マウント7が装着されている。
【0013】
スピンドル2には、軸心方向に対して直交する平面を有する円板状のスラストプレート2aが形成されている。ハウジング3はほぼ円筒状に形成されており、スラストプレート2aが収容される位置におけるハウジング3の内径は、スラストプレート2aの外径に対応させて拡径されている。ハウジング3において、スラストプレート2aの両平面に対面する位置には、スラストプレート2aのそれぞれの平面に向けてエアを噴出する噴出口40、41が環状に複数形成されており、噴出口40と噴出口41とで、スピンドル2をスラスト方向に支持するスラストベアリング4が構成されている。
【0014】
ハウジング3の内周面、すなわちスピンドル2の側面に対面する面には、スピンドル2の軸心に向けてエアを噴出する噴出口50が複数形成されており、これらの噴出口50は、噴出されるエアによってスピンドル2をラジアル方向に支持するラジアルベアリング5を構成している。
【0015】
スラストベアリング4を構成する噴出口40、41及びラジアルベアリング5を構成する噴出口50は、ハウジング3の内部に形成されたエア流路30を介してエア供給口31に連通しており、エア供給口31から導入されたエアがエア流路30を通って噴出口40、41、50から噴出されることにより、スピンドル2を非接触状態で回転可能に支持している。また、噴出口40、41、50から噴出されたエアは、ハウジング3の両端に設けられた排出口320、321から排出される。
【0016】
突出ロッド8には、軸心方向に移動可能な錘9が配設されている。錘9は、リング状に形成されており、その内周側には突出ロッド8が挿通され、突出ロッド8に対して錘9が摺動可能となっている。錘9の側面からは、先端が突出ロッド8の軸心に向いた複数のネジ90が挿通されており、ネジ90を緩めた状態では、突出ロッド8に沿って
図1、2における矢印A,Bの方向に錘9を移動可能であり、ネジ90を締めるとその位置で錘9を突出ロッド8に固定することができる。突出ロッド8のハウジング3からの突出量は、錘9の可動範囲を考慮して決定される。
【0017】
図2に示すように、スピンドルユニット1においては、駆動部6によって駆動されてスピンドル2が回転することにより、工具マウント7に装着された工具が回転する構成となっている。
【0018】
スピンドル2を所望の回転数で回転させた場合に、その回転数がスピンドルユニット1の共振点と一致すると、スピンドル2が振動する。このようにして共振が生じると、例えば工具マウント7に装着された工具が研削ホイール100である場合は、研削ホイールが振動して高精度な研削ができなくなる。そこで、そのような場合は、錘9を突出ロッド8に沿って摺動させて移動させ、ネジ90を締めて錘9を固定する。そうすると、スピンドル2を当該所望の回転数で回転させても共振が起こらなくなり、共振を解除することができる。
【0019】
図1及び
図2に示したスピンドルユニット1は、例えば
図3に示す研削装置10に搭載される。この研削装置10は、ウェーハを保持して回転可能な複数のチャックテーブル11と、各チャックテーブル11に保持されたウェーハに対して粗研削を施す第一の研削手段12と、第一の研削手段12によって粗研削されたウェーハの被研削面を仕上げ研削する第二の研削手段13と、第一の研削手段12を垂直方向に研削送りする第一の研削送り手段14と、第二の研削手段13を垂直方向に研削送りする第二の研削送り手段15とを備えている。
【0020】
研削装置10には、研削前のウェーハを収容する第一のカセット16aと研削済みのウェーハを収容する第二のカセット16bとを備えている。第一のカセット16a及び第二のカセット16bの近傍には、第一のカセット16aから研削前のウェーハを搬出すると共に、研削済みのウェーハを第二のカセット16bに搬入する機能を有する搬出入手段17が配設されている。
【0021】
搬出入手段17は、屈曲自在なアーム部170の先端にウェーハを保持する保持部171が設けられた構成となっており、保持部171の可動域には、加工前のウェーハの位置合わせをする位置合わせ手段18及び研削済みのウェーハを洗浄する洗浄手段19が配設されている。
【0022】
位置合わせ手段18の近傍には第一の搬送手段20aが配設され、洗浄手段19の近傍には第二の搬送手段20bが配設されている。第一の搬送手段20aは、位置合わせ手段18に載置された研削前のウェーハをいずれかのチャックテーブル11に搬送する機能を有し、第二の搬送手段20bは、いずれかのチャックテーブル11に保持された研削済みのウェーハを洗浄手段19に搬送する機能を有する。複数のチャックテーブル11は、ターンテーブル21によって自転及び公転可能に支持されており、ターンテーブル21の回転によって、いずれかのチャックテーブル11が第一の搬送手段20a及び第二の搬送手段20bの近傍に位置付けされる構成となっている。
【0023】
第一の研削手段12及び第二の研削手段13は、
図1及び
図2に示したスピンドルユニット1を備えている。第一の研削手段12を構成するスピンドル2には、工具マウント7を介して粗研削用の研削ホイール101が装着されている。一方、第二の研削手段13を構成するスピンドルユニット2には、工具マウント7を介して仕上げ研削用の研削ホイール102が装着されている。
【0024】
研削ホイール101は、基台101aに粗研削用の砥石101bが複数固着されて構成されており、駆動部6によって駆動されてスピンドル2が回転することにより研削ホイール101も回転する構成となっている。また、研削ホイール102は、基台102aに仕上げ研削用の砥石102bが複数固着されて構成されており、駆動部6によって駆動されてスピンドル2が回転することにより研削ホイール102も回転する構成となっている。
【0025】
第一の研削送り手段14は、垂直方向の軸心を有するボールネジ140と、ボールネジ140と平行に配設された一対のガイドレール141と、ボールネジ140に連結されボールネジ140を回動させるパルスモータ142と、内部のナットがボールネジ140に螺合すると共に側部がガイドレール141に摺接する昇降部143とから構成され、パルスモータ142に駆動されてボールネジ140が回動するのに伴い昇降部143がガイドレール141にガイドされて昇降する構成となっている。昇降部143は第一の研削手段12を支持しており、昇降部143の昇降によって第一の研削手段12も昇降する。
【0026】
第二の研削送り手段15は、垂直方向の軸心を有するボールネジ150と、ボールネジ150と平行に配設された一対のガイドレール151と、ボールネジ150に連結されボールネジ150を回動させるパルスモータ152と、内部のナットがボールネジ150に螺合すると共に側部がガイドレール151に摺接する昇降部153とから構成され、パルスモータ152に駆動されてボールネジ150が回動するのに伴い昇降部153がガイドレール151にガイドされて昇降する構成となっている。昇降部153は第二の研削手段13を支持しており、昇降部153の昇降によって第二の研削手段13も昇降する。
【0027】
次に、
図3に示した研削装置10を用いて、第一のカセット16aに収容されたウェーハWの面を研削する場合について説明する。まず、第一のカセット16aに収容されたウェーハWは、搬出入手段17によって取り出されて位置合わせ手段18に搬送される。そして、位置合わせ手段18においてウェーハWが一定の位置に位置合わせされた後に、ウェーハWがチャックテーブル11に保持され、被研削面が露出した状態となる。
【0028】
次に、ターンテーブル21が反時計回りに所定角度(図示の例では120度)回転することによってウェーハWが第一の研削手段12の下方に移動する。そして、チャックテーブル11の回転に伴ってウェーハWが回転するとともに、スピンドル2の回転に伴って研削ホイール101が回転し、第一の研削送り手段14によって第一の研削手段12が下方に研削送りされて下降する。そうすると、回転する研削砥石101bがウェーハWの被研削面に接触して当該被研削面が粗研削される。
【0029】
粗研削終了後は、ターンテーブル21が所定角度回転することにより、粗研削されたウェーハWが第二の研削手段13の下方に移動する。そして、チャックテーブル11の回転に伴ってウェーハWが回転するとともに、スピンドル2の回転に伴って研削ホイール102が回転し、第二の研削送り手段15によって第二の研削手段13が下方に研削送りされて下降する。そうすると、回転する研削砥石102bがウェーハWの被研削面に接触して当該被研削面が仕上げ研削される。
【0030】
仕上げ研削の終了後は、ターンテーブル21が所定角度回転することにより、研削されたウェーハWを保持するチャックテーブル11が第二の搬送手段20bの近傍に移動する。そして、ウェーハWが第二の搬送手段20bによって保持されて洗浄手段19に搬送され、ウェーハWが洗浄されて、被研削面に付着した研削屑が除去される。
【0031】
洗浄後のウェーハWは、搬出入手段17によって保持されて第二のカセット16bに収容される。以上のような一連の工程を、第一のカセット16aに収容されたすべてのウェーハに対して行う。
【0032】
第一の研削手段12による粗研削及び第二の研削手段13による仕上げ研削では、スピンドル2の回転数が各スピンドルユニット1の共振点と一致すると、スピンドル2が振動するため、研削精度が低下することになる。そこで、各研削手段において、錘9を鉛直方向に移動させて固定することによりスピンドル2の回転数に起因する共振を解除し、スピンドル2に振動が生ずるのを防止する。
【0033】
スピンドルユニットには個性があり、同じ構造のスピンドルユニットであっても個々に共振点は異なるため、個々のスピンドルユニットごとに錘9の位置を調整して振動が発生するのを防ぐ。このようにして共振が生じるのを防ぐことにより、高精度な研削が可能となり、ウェーハの厚さ精度、面粗度等を向上させることができる。
【0034】
なお、上記実施形態ではスピンドルユニット1を搭載した装置として研削装置を例に挙げて説明したが、スピンドルユニット1を搭載した装置には、例えば切削装置など、他の装置もあり、本発明は、他の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:スピンドルユニット
2:スピンドル 2a:スラストプレート
3:ハウジング
30:エア流路 31:エア供給口
320,321:排出口
4:スラストベアリング 40,41:噴出口
5:ラジアルベアリング
50:噴出口
6:駆動部 60:ロータ 61:ステータ
7:工具マウント 70:ネジ
8:突出ロッド
9:錘 90:ネジ
10:研削装置
11:チャックテーブル
12:第一の研削手段 13:第二の研削手段
14:第一の研削送り手段
140:ボールネジ 141:ガイドレール 142:パルスモータ 143:昇降部
15:第二の研削送り手段
150:ボールネジ 151:ガイドレール 152:パルスモータ 153:昇降部
16a:第一のカセット16a
16b:第二のカセット16b
17:搬出入手段 170:アーム部 171:保持部
18:位置合わせ手段 19:洗浄手段
20a:第一の搬送手段 20b:第二の搬送手段
21:ターンテーブル
100:研削ホイール 100a:基台 100b:砥石
101:研削ホイール 101a:基台 101b:砥石
102:研削ホイール 102a:基台 102b:砥石