特許第5720392号(P5720392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720392
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】発光ダイオード駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20150430BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01L33/00 J
   H05B37/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-90516(P2011-90516)
(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公開番号】特開2012-227181(P2012-227181A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 晴海
(72)【発明者】
【氏名】小椋 渉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 照雄
(72)【発明者】
【氏名】北原 稔
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−040701(JP,A)
【文献】 特開2006−040669(JP,A)
【文献】 特開2006−244848(JP,A)
【文献】 特開2008−084614(JP,A)
【文献】 特開2001−313423(JP,A)
【文献】 特開2010−225742(JP,A)
【文献】 特開2006−147933(JP,A)
【文献】 特開2007−123562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(AP)に接続可能で、該交流電源(AP)の交流電圧を整流した整流電圧を得るための整流回路(2)と、
前記整流回路(2)と接続される少なくとも一のLED素子を有する第一LED部(11)と、
前記第一LED部(11)と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第二LED部(12)と、
前記第二LED部(12)と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第三LED部(13)と、
前記第二LED部(12)と並列に接続され、前記第一LED部(11)への通電量を制御するための第一手段(21)と、
前記第三LED部(13)と並列に接続され、前記第一LED部(11)及び前記第二LED部(12)への通電量を制御するための第二手段(22)と、
前記第三LED部(13)と直列に接続され、前記第一LED部(11)、第二LED部(12)及び第三LED部(13)への通電量を制御するための第四手段(24)と、
前記第一手段(21)を制御するための第一電流制御手段(31)と、
前記第二手段(22)を制御するための第二電流制御手段(32)と、
前記第四手段(24)を制御するための第四電流制御手段(34)と、
前記第一LED部(11)から第三LED部(13)が直列接続される出力ライン(OL)上を流れる電流量に基づく電流検出信号を検出するための電流検出手段(4)と、
前記整流回路(2)から出力される整流電圧に基づいて、高調波抑制信号電圧を生成するための高調波抑制信号生成手段(6)と、
を備え、
前記第一電流制御手段(31)、第二電流制御手段(32)及び第四電流制御手段(34)が、前記電流検出手段(4)で検出された電流検出信号と、前記高調波抑制信号生成手段(6)で生成された高調波抑制信号電圧とを比較して、高調波成分を抑制するように前記第一手段(21)、第二手段(22)及び第四手段(24)をそれぞれ制御し、
前記高調波抑制信号生成手段(6)が、直列接続された複数の分圧抵抗で構成されてなることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光ダイオード駆動装置であって、さらに、
前記第三LED部(13)と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第四LED部(14)と、
前記第四LED部(14)と列に接続され、前記第一LED部(11)、第二LED部(12)、第三LED部(13)への通電量を制御するための第三手段(23)と、
前記第三手段(23)を制御するための第三電流制御手段(33)と、
を備え、
前記第四手段(24)が、前記第一LED部(11)、第二LED部(12)、第三LED部(13)及び第四LED部(14)への通電量を制御するよう構成されてなることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光ダイオード駆動装置であって、さらに、
前記第四手段(24)と並列に接続される、LED駆動手段(3)を備えることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれか一に記載の発光ダイオード駆動装置であって、さらに、
前記電流検出手段(4)で検出される電流検出信号を分配して、第一電流制御手段(31)、第二電流制御手段(32)、第三電流制御手段(33)及び第四電流制御手段(34)に送出するための電流検出信号付与手段(5)を備えることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項5】
交流電源(AP)に接続可能で、該交流電源(AP)の交流電圧を整流した整流電圧を得るための整流回路(2)と、
前記整流回路(2)と接続される少なくとも一のLED素子を有する第一LED部(11)と、
前記第一LED部(11)と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第二LED部(12)と、
前記第二LED部(12)と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第三LED部(13)と、
前記第二LED部(12)と並列に接続され、前記第一LED部(11)への通電量を制御するための第一手段(21)と、
前記第三LED部(13)と並列に接続され、前記第一LED部(11)及び前記第二LED部(12)への通電量を制御するための第二手段(22)と、
前記第三LED部(13)と直列に接続され、前記第一LED部(11)、第二LED部(12)及び第三LED部(13)への通電量を制御するための第四手段(24)と、
前記第一手段(21)を制御するための第一電流制御手段(31)と、
前記第二手段(22)を制御するための第二電流制御手段(32)と、
前記第四手段(24)を制御するための第四電流制御手段(34)と、
前記第一LED部(11)から第三LED部(13)が直列接続される出力ライン(OL)上を流れる電流量に基づく電流検出信号を検出するための電流検出手段(4)と、
前記整流回路(2)から出力される整流電圧に基づいて、高調波抑制信号電圧を生成するための高調波抑制信号生成手段(6)と、
前記第三LED部(13)と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第四LED部(14)と、
前記第四LED部(14)と並列に接続され、前記第一LED部(11)、第二LED部(12)、第三LED部(13)への通電量を制御するための第三手段(23)と、
前記第三手段(23)を制御するための第三電流制御手段(33)と、
前記電流検出手段(4)で検出される電流検出信号を分配して、第一電流制御手段(31)、第二電流制御手段(32)、第三電流制御手段(33)及び第四電流制御手段(34)に送出するための電流検出信号付与手段(5)と、
前記整流回路(2)の出力、前記第一LED部(11)、前記第二LED部(12)、前記第三LED部(13)、前記第四LED部(14)の各出力を混合して電圧変動抑制信号を生成し、該電圧変動抑制信号を前記電流検出信号付与手段(5)へ送出する電圧変動抑制信号送出手段(8)を備え
前記第一電流制御手段(31)、第二電流制御手段(32)及び第四電流制御手段(34)が、前記電流検出手段(4)で検出された電流検出信号と、前記高調波抑制信号生成手段(6)で生成された高調波抑制信号電圧とを比較して、高調波成分を抑制するように前記第一手段(21)、第二手段(22)及び第四手段(24)をそれぞれ制御し、
前記第四手段(24)が、前記第一LED部(11)、第二LED部(12)、第三LED部(13)及び第四LED部(14)への通電量を制御するよう構成されてなることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の発光ダイオード駆動装置であって、
前記電流検出信号付与手段(5)が、前記整流回路(2)の出力、前記第一LED部(11)、前記第二LED部(12)、前記第三LED部(13)、前記第四LED部(14)の出力を混合して電圧変動抑制信号を生成し、該電圧変動抑制信号に対し、前記電流検出手段(4)で電流値を検出した電流検出信号を加算して、前記第一電流制御手段(31)、第二電流制御手段(32)、第三電流制御手段(33)、第四電流制御手段(34)に送出してなることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の発光ダイオード駆動装置であって、
前記電流検出信号付与手段(5)が、前記整流回路(2)の出力、前記第一LED部(11)、前記第二LED部(12)、前記第三LED部(13)、前記第四LED部(14)の出力を混合して電圧変動抑制信号を生成し、該電圧変動抑制信号を積分して、前記第一電流制御手段(31)、第二電流制御手段(32)、第三電流制御手段(33)、第四電流制御手段(34)に送出してなることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の発光ダイオード駆動装置であって、さらに、
高調波抑制信号生成手段(6)に接続され、調光を行うための調光手段(61')を備えることを特徴とする発光ダイオード駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを点灯駆動させる駆動回路に関し、特に交流電源を用いて駆動させる発光ダイオード駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明用の光源として、白熱電球や蛍光灯に比べ低消費電力で駆動可能な発光ダイオード(以下「LED」ともいう。)が注目されている。LEDは小型で耐衝撃性にも強く、球切れの心配がないといった利点がある。
【0003】
このような照明機器用の電源としては、家庭用電源等交流を電源として用いることが望まれる。一方、LEDは直流駆動素子であり、順方向の電流でのみ発光する。また、照明用途として現在多用されているLEDの順方向電圧Vfは3.5V程度である。LEDはVfに達しなければ発光せず、逆にVfを超えると過度の電流が流れてしまう特性を有する。したがってLEDに対しては直流による駆動が適しているといえる。
【0004】
この相反する条件に応えるため、交流電源を用いたLEDの駆動回路が、種々提案されている。例えば、変化する電圧値に応じてVfの合計値を変化させるようにLEDを切り替える方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、図16の回路図に示すように、多段に直列接続されたLEDをブロック161、162、163、164、165、166に分け、整流波形の入力電圧の電圧値に応じてLEDブロック161〜166の接続を、マイクロコンピュータで構成されたスイッチ制御部167で切り替えることで、段階的にVfの合計値を変化させる。この結果、図17のタイミングチャートに示す電圧波形のように、整流波形に対して複数の方形波でLEDを点灯できるため、単一の方形波のみでのONデューティに比べ、LEDの利用効率を改善できる。
【0005】
一方で本出願人は、複数のLED素子を直列接続してブロック化したLEDブロックを複数段、直列に接続した多段回路を、交流の全波整流で駆動するAC多段回路を開発した(特許文献2)。このAC多段回路は、図18に示すように、交流電源APをブリッジ回路2で全波整流し、LEDブロックの多段回路に対して印加する。LEDブロックの多段回路は、第一LEDブロック11と、第二LEDブロック12と、第三LEDブロック13とを直列に接続している。第一LEDブロック11の通電量に基づいて、第二LEDブロック12をバイパスする第一バイパス経路BP1のON/OFFを第一LED電流制御トランジスタ21Aで切り替え、また第一LEDブロック11及び第二LEDブロック12の通電量に基づいて、第三LEDブロック13をバイパスする第二バイパス経路BP2のON/OFFを第二LED電流制御トランジスタ22Aで切り替える。このAC多段回路は、電源効率を維持しつつ、LED利用効率及び力率を改善することができる。
【0006】
このAC多段回路の、電流波形を図19に示す。この図に示すように電源周期に同期した階段状の電流波形を有する。しかしながら、この階段状電流波形は正弦波の電流に近い波形ではあるものの、階段状に変化するため高調波発生の原因となる。一方、負荷としてLEDに代えて白熱電球を使用した場合の電流波形は正弦波となるため、高調波の発生はない。なおIEC61000−3−2規格において照明機器はクラスCに分類されており、高調波の限度値が規定されている。特に25W以上の機器に適用される限度値は、25W以下の機器に比べて厳しく、図18のAC多段回路では適合させることが困難である。
【0007】
また図20に、特許文献1の発光ダイオード駆動方法による高調波電流の測定データの一例を示す。この図に示すように、高調波の次数が特に11,13,15次高調波において限度値を上回っており、不適合となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−147933号公報
【特許文献2】特開2011−40701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、高調波成分を抑制可能な発光ダイオード駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
以上の目的を達成するために、第1の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、交流電源APに接続可能で、該交流電源APの交流電圧を整流した整流電圧を得るための整流回路2と、前記整流回路2と接続される少なくとも一のLED素子を有する第一LED部11と、前記第一LED部11と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第二LED部12と、前記第二LED部12と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第三LED部13と、前記第二LED部12と並列に接続され、前記第一LED部11への通電量を制御するための第一手段21と、前記第三LED部13と並列に接続され、前記第一LED部11及び前記第二LED部12への通電量を制御するための第二手段22と、前記第三LED部13と直列に接続され、前記第一LED部11、第二LED部12及び第三LED部13への通電量を制御するための第四手段24と、前記第一手段21を制御するための第一電流制御手段31と、前記第二手段22を制御するための第二電流制御手段32と、前記第四手段24を制御するための第四電流制御手段34と、前記第一LED部11から第三LED部13が直列接続される出力ラインOL上を流れる電流量に基づく電流検出信号を検出するための電流検出手段4と、前記整流回路2から出力される整流電圧に基づいて、高調波抑制信号電圧を生成するための高調波抑制信号生成手段6と、を備え、前記第一電流制御手段31、第二電流制御手段32及び第四電流制御手段34が、前記電流検出手段4で検出された電流検出信号と、前記高調波抑制信号生成手段6で生成された高調波抑制信号電圧とを比較して、高調波成分を抑制するように前記第一手段21、第二手段22及び第四手段24をそれぞれ制御し、前記高調波抑制信号生成手段6が、直列接続された複数の分圧抵抗で構成することができる。これにより、入力側の高調波成分と、得られたLED駆動電流との対比によって、出力波形を調整する制御が可能となり、効果的な高調波成分の抑制が実現できる。また、整流回路で整流された脈流の正弦波に沿って電流制御動作を行うことができ、LED駆動電流を正弦波に近似された波形に近付けることが可能となる。
【0011】
また第2の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、さらに前記第三LED部13と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第四LED部14と、前記第四LED部14と列に接続され、前記第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13への通電量を制御するための第三手段23と、前記第三手段23を制御するための第三電流制御手段33と、を備え、前記第四手段24が、前記第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13及び第四LED部14への通電量を制御するよう構成できる。
【0012】
さらに第3の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、さらに前記第四手段24と並列に接続される、LED駆動手段3を備えることができる。
【0013】
さらにまた第4の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、さらに前記電流検出手段4で検出される電流検出信号を分配して、第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33及び第四電流制御手段34に送出するための電流検出信号付与手段5を備えることができる。これにより、電流検出信号付与手段と高調波抑制信号生成手段の働きにより、高調波を抑制した電流波形にて発光ダイオード駆動装置を動作させることができる。
【0014】
さらに第5の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、交流電源APに接続可能で、該交流電源APの交流電圧を整流した整流電圧を得るための整流回路2と、前記整流回路2と接続される少なくとも一のLED素子を有する第一LED部11と、前記第一LED部11と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第二LED部12と、前記第二LED部12と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第三LED部13と、前記第二LED部12と並列に接続され、前記第一LED部11への通電量を制御するための第一手段21と、前記第三LED部13と並列に接続され、前記第一LED部11及び前記第二LED部12への通電量を制御するための第二手段22と、前記第三LED部13と直列に接続され、前記第一LED部11、第二LED部12及び第三LED部13への通電量を制御するための第四手段24と、前記第一手段21を制御するための第一電流制御手段31と、前記第二手段22を制御するための第二電流制御手段32と、前記第四手段24を制御するための第四電流制御手段34と、前記第一LED部11から第三LED部13が直列接続される出力ラインOL上を流れる電流量に基づく電流検出信号を検出するための電流検出手段4と、前記整流回路2から出力される整流電圧に基づいて、高調波抑制信号電圧を生成するための高調波抑制信号生成手段6と、前記第三LED部13と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第四LED部14と、前記第四LED部14と並列に接続され、前記第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13への通電量を制御するための第三手段23と、前記第三手段23を制御するための第三電流制御手段33と、前記電流検出手段4で検出される電流検出信号を分配して、第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33及び第四電流制御手段34に送出するための電流検出信号付与手段5と、前記整流回路2の出力、前記第一LED部11、前記第二LED部12、前記第三LED部13、前記第四LED部14の各出力を混合して電圧変動抑制信号を生成し、該電圧変動抑制信号を前記電流検出信号付与手段5へ送出する電圧変動抑制信号送出手段8を備え、前記第一電流制御手段31、第二電流制御手段32及び第四電流制御手段34が、前記電流検出手段4で検出された電流検出信号と、前記高調波抑制信号生成手段6で生成された高調波抑制信号電圧とを比較して、高調波成分を抑制するように前記第一手段21、第二手段22及び第四手段24をそれぞれ制御し、前記第四手段24が、前記第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13及び第四LED部14への通電量を制御するよう構成できる。これにより、電流検出信号に加えて電圧変動抑制信号を電流検出手段に付与して、より正確に高調波を抑制する制御が可能となる。
【0015】
さらにまた第6の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、前記電流検出信号付与手段5が、前記整流回路2の出力、前記第一LED部11、前記第二LED部12、前記第三LED部13、前記第四LED部14の出力を混合して電圧変動抑制信号を生成し、該電圧変動抑制信号に対し、前記電流検出手段4で電流値を検出した電流検出信号を加算して、前記第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34に送出することができる。
【0016】
さらにまた第7の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、前記電流検出信号付与手段5が、前記整流回路2の出力、前記第一LED部11、前記第二LED部12、前記第三LED部13、前記第四LED部14の出力を混合して電圧変動抑制信号を生成し、該電圧変動抑制信号を積分して、前記第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34に送出することができる。
【0017】
さらにまた第8の側面に係る発光ダイオード駆動装置によれば、さらに高調波抑制信号生成手段6に接続され、調光を行うための調光手段61’を備えることができる。これにより、調光手段の働きにより、高調波抑制動作に加え調光も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る発光ダイオード駆動装置を示すブロック図である。
図2図1の発光ダイオード駆動装置の一回路例を示す回路図である。
図3】電源電圧と比較例1の電流波形を重ねて表示したグラフである。
図4】実施例1の回路例で実測した電流波形を示すグラフである。
図5図2の発光ダイオード駆動装置の高調波成分を示すグラフである。
図6】実施例2に係る発光ダイオード駆動装置を示すブロック図である。
図7図6の発光ダイオード駆動装置の一回路例を示す回路図である。
図8】実施例3に係る発光ダイオード駆動装置を示すブロック図である。
図9図8の発光ダイオード駆動装置の一回路例を示す回路図である。
図10】実施例4に係る発光ダイオード駆動装置を示すブロック図である。
図11図10の発光ダイオード駆動装置の一回路例を示す回路図である。
図12】実施例5に係る発光ダイオード駆動装置を示すブロック図である。
図13図12の発光ダイオード駆動装置の一回路例を示す回路図である。
図14】実施例4の電流波形を示すグラフである。
図15】実施例5の電流波形を示すグラフである。
図16】マイクロコンピュータを使用したLED点灯回路例を示す回路図である。
図17図16のLED点灯回路の動作を示すタイミングチャートである。
図18】本出願人が先に開発したAC多段回路を示す回路図である。
図19図18のAC多段回路の電流波形を示すグラフである。
図20図18のAC多段回路の電流波形の高調波成分を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光ダイオード駆動装置を例示するものであって、本発明は発光ダイオード駆動装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0021】
発光ダイオード駆動装置を高調波電流規格に適合させるためには、白熱電球と同様に正弦波の電流波形になるよう設計することが望まれる。そこで本実施の形態に係る発光ダイオード駆動装置では、LED電流制御手段の基準電圧に正弦波を重畳させることで、LED駆動電流波形を正弦波に近似した波形とし、25W以上の高調波電流規格に適合させた安価でコンパクトな発光ダイオード駆動装置を提供するものである。
【実施例1】
【0022】
図1に実施例1に係る発光ダイオード駆動装置100のブロック図を示す。この発光ダイオード駆動装置100は、整流回路2と、LED集合体10と、第一手段21〜第四手段24と、電流制御手段と、電流検出手段4とを備える。この発光ダイオード駆動装置100は、交流電源APに接続されて、交流電圧を整流した脈流電圧を得るための整流回路2と、複数のLED部で構成されたLED集合体10とを、出力ラインOL上で各々直列に接続している。ここではLED部を4つ使用しており、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14を直列に接続して、LED集合体10を構成している。さらに出力ラインOLには、LED集合体10と、LED駆動手段3と、電流検出手段4とを直列に接続している。
【0023】
また第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14には、各々両端に通電量を制御するための第一手段21、第二手段22、第三手段23が接続される。第一手段21、第二手段22、第三手段23は、それぞれLED部に対して並列に設けられているため、通電量を調整するバイパス経路を構成する。すなわち第一手段21、第二手段22、第三手段23によってバイパスされる電流量を調整できるので、結果的に各LED部の通電量を制御できる。図1の例では、第二LED部12と並列に第一手段21が接続され、第一バイパス経路BP1を形成する。また第三LED部13と並列に第二手段22が接続され、第二バイパス経路BP2を形成する。さらに第四LED部14と並列に第三手段23が接続され、第三バイパス経路BP3を形成する。なお本明細書においては、出力ライン上に接続されたLED部等をバイパスするバイパス経路にも、出力電流が流れることがあるため、この意味で出力ラインに含めて使用する。
(電流制御手段)
【0024】
また定電流駆動を行うため、定電流回路の制御用に電流制御手段が設けられる。この回路例では第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24と第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34とで、一種の定電流回路が構成される。
【0025】
各電流制御手段は第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24と接続されており、第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24のON/OFFや電流量連続可変といった動作を制御する。具体的には、第一手段21の動作を制御する第一電流制御手段31と、第二手段22の動作を制御する第二電流制御手段32と、第三手段23の動作を制御する第三電流制御手段33と、第四手段24の動作を制御する第四電流制御手段34が設けられる。第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34は、電流検出手段4に接続されてLEDの電流量をモニタし、その値に基づいて第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24の制御量を切り替える。
【0026】
各LED部は、一又は複数のLED素子を直列及び/又は並列に接続したブロックである。LED素子は、表面実装型(SMD)や砲弾型のLEDが適宜利用できる。またSMDタイプのLED素子のパッケージは、用途に応じて外形を選択でき、平面視が矩形状のタイプ等が利用できる。さらに、複数のLED素子をパッケージ内で直列及び/又は並列に接続したLEDをLED部として使用することも可能であることは言うまでもない。
【0027】
各LED部に含まれるLED素子の順方向電圧の加算値である小計順方向電圧は、直列接続されたLED素子の個数によって決まる。例えば順方向電圧3.6VのLED素子を6個使用する場合の小計順方向電圧は、3.6×6=21.6Vとなる。
【0028】
この発光ダイオード駆動装置100は、電流検出手段4で検出した電流値に基づいて各LED部に対する通電のON/定電流制御/OFFを切り替える。いいかえると、整流電圧の電圧値でなく、現実に通電される電流量に基づいた電流制御であるため、LED素子の順方向電圧のばらつきに左右されず、適切なタイミングで正確なLED部の切り替えが実現され、信頼性の高い安定した動作が見込まれる。なお電流値の検出には、電流検出手段4等が利用できる。
【0029】
図1の例では、第一電流制御手段31が第一LED部11の通電量に基づいて、第一手段21による第一LED部11への通電制限量を制御する。具体的には、第一手段21及び第二手段22、第三手段23がONの状態で、通電量が予め設定された第一基準電流値に達したとき、第一手段21は第一LED部11を定電流駆動する。その後入力電圧が上昇して、第一LED部11と第二LED部12を共に駆動できる電圧に達すると、第二LED部12に電流が流れ始め、さらにその電流値が第一基準電流値を超えると、第一手段21はOFFとなる。さらに第二電流制御手段32が第一LED部11及び第二LED部12の通電量に基づいて、第二手段22による第一LED部11及び第二LED部12への通電制限量を制御する。具体的には、通電量が予め設定された第二基準電流値に達すると、第二手段22は第一LED部11と第二LED部12を定電流駆動する。その後入力電圧が上昇して、第一LED部11と第二LED部12と第三LED部13とを共に駆動できる電圧に達すると、第三LED部13に電流が流れ始め、さらにその電流値が第二基準電流値を超えると、第二手段22はOFFとなる。
【0030】
さらに第三電流制御手段33が第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13の通電量に基づいて、第三手段23による第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13への通電制限量を制御する。具体的には、通電量が予め設定された第三基準電流値に達すると、第三手段23は第一LED部11と第二LED部12と第三LED部13とを定電流駆動する。その後入力電圧が上昇して、第一LED部11と第二LED部12と第三LED部13と第四LED部14を共に駆動できる電圧に達すると、第四LED部14に電流が流れ始め、さらにその電流値が第三基準電流値を超えると、第三手段23はOFFとなる。最後に第四手段24及び第四電流制御手段34は、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14を定電流駆動させる。
【0031】
ここで、第一基準電流値<第二基準電流値<第三基準電流値となるよう設定することで、第一LED部11から第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14への順で、ON/定電流制御/OFFを順次切り替えることができる。
【0032】
以上のように発光ダイオード駆動装置100は、家庭用電源等の交流電源APを用いて、その交流を全波整流した後に得られる周期的に変化する脈流電圧に合わせて、直列に配置されたLED素子を適切な個数だけ点灯させるように構成した複数の定電流回路を備えており、各定電流回路を各々適切に動作させるように複数のLED電流検出回路を動作させることができる。
【0033】
この発光ダイオード駆動装置100は、第1の電流値で第一LED部11を通電させ、第1の電流値よりも大きい第2の電流値で第一LED部11及び第二LED部12を通電させ、さらに第2の電流値よりも大きい第3の電流値で第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13を通電させ、さらにまた第3の電流値よりも大きい第4の電流値で第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14を通電させる。特に各LED部への通電量を定電流制御によって制限することで、電流量に応じてLED部のON/定電流制御/OFFを切り替えることができ、脈流電圧に対して効率よくLEDを点灯駆動できる。
【0034】
さらに図1の例では、第四手段24と並列にLED駆動手段3が接続されており、第四手段24に流れる電流の一部をLED駆動手段3で分岐させることによってLED駆動手段3が第四手段24の負荷を低減している。
(高調波抑制信号生成手段6)
【0035】
さらに第一電流制御手段31〜第四電流制御手段34は、高調波抑制信号生成手段6と接続される。高調波抑制信号生成手段6は、整流回路2から出力される整流電圧に基づいて、高調波抑制信号電圧を生成する。ここでは、高調波抑制信号生成手段6は、整流回路2で整流された脈流電圧を適当な大きさに圧縮し、第一電流制御手段31〜第四電流制御手段34に送出して参照信号とし、LED電流検出信号と比較する。各電流制御手段はこの比較結果を基に、それぞれの第一手段21〜第四手段24を介して適切なタイミングと電流で、それぞれのLED部を駆動する。
(実施例1の回路例)
【0036】
次に、図1の発光ダイオード駆動装置100を半導体素子を用いて実現した具体的な回路の構成例を、図2に示す。この発光ダイオード駆動装置100’は、交流電源APに接続された整流回路2としてダイオードブリッジを用いている。また交流電源APと整流回路2との間には、保護抵抗81が設けられる。さらに整流回路2の出力側には、バイパスコンデンサ82が接続される。なお交流電源APと整流回路2との間には、図示しないが過電流阻止のためのヒューズとサージ防護回路を設けてもよい。
(交流電源AP)
【0037】
交流電源APは、100Vや200Vの商用電源が好適に利用できる。この商用電源の100V又は200Vは実効値であり、全波整流された整流波形の最大電圧は約141V又は282Vとなる。
(LED集合体10)
【0038】
LED集合体10を構成する各LED部は、相互に直列に接続すると共に、複数のブロックに分け、ブロック同士の境界からは端子を引き出して、第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24と接続している。図2の例では、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14の4つのグループでLED集合体10を構成している。
【0039】
図2に示す各LED部11〜14は、一のLEDシンボルが複数のLEDチップを実装したLEDパッケージ1を表している。この例では、各LEDパッケージ1は、10個のLEDチップを実装している。各LED部の発光ダイオード接続数、あるいはLED部の接続数は、順方向電圧の加算値、すなわち直列接続されたLED素子の総数と、使用する電源電圧とで決定される。例えば商用電源を使用する場合は、各LED部のVfの合計である合計順方向電圧Vfallが、141V程度、又はそれ以下となるように設定される。
【0040】
なおLED部は、一以上の任意の数のLED素子を備えている。LED素子は、一個のLEDチップや、複数個のLEDチップを一パッケージに纏めたものを利用できる。この例では、図示する一のLED素子として、それぞれ10個のLEDチップを含むLEDパッケージ1を使用している。
【0041】
また図2の例では、4つのLED部のVfを同一となるように設計している。ただこの例に限られず、上述の通りLED部数を3以下、あるいは5以上としてもよい。LED部数を増やすことで、定電流制御の数を増やしてより細かなLED部間の点灯切り替え制御が可能となる。さらに各LED部のVfは同一としなくとも良い。
(第一手段21〜第四手段24)
【0042】
第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24は、各LED部に対応して、定電流駆動するための部材である。このような第一手段21〜第四手段24としては、トランジスタ等のスイッチング素子で構成される。特にFETは、ソース−ドレイン間飽和電圧がほぼゼロであるため、LED部への通電量を阻害することがなく好ましい。ただ、第一手段21〜第四手段24はFETに限定されるものでなく、バイポーラトランジスタ等でも構成できることはいうまでもない。
【0043】
図2の例では、第一手段21〜第四手段24としてLED電流制御トランジスタを利用している。具体的には、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14、LED駆動手段3には、それぞれ第一手段21〜第四手段24である第一LED電流制御トランジスタ21B、第二LED電流制御トランジスタ22B、第三LED電流制御トランジスタ23Bが接続される。各LED電流制御トランジスタは、その前段のLED部の電流量に応じて、ON状態や定電流制御が切り替わる。LED電流制御トランジスタがOFFになると、バイパス経路に電流が流れなくなって、LED部に通電される。すなわち、各第一手段21〜第四手段24によってバイパスされる電流量を調整できるので、結果的に各LED部の通電量を制御できることになる。図2の例では、第二LED部12と並列に第一手段21が接続され、第一バイパス経路BP1を形成する。また第三LED部13と並列に第二手段22が接続され、第二バイパス経路BP2を形成する。さらに第四LED部14と並列に第三手段23が接続され、第三バイパス経路BP3を形成する。さらにまた第四LED電流制御トランジスタ24Bが接続され、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13及び第四LED部14への通電量を制御する。
【0044】
ここで第一LED部11は、並列に接続されたバイパス経路や第一手段〜第四手段を設けていない。第二LED部12と並列に接続された第一手段21が、第一LED部11の電流量を制御するからである。また第四LED部14については、第四LED電流制御トランジスタ24Bが電流制御を行う。
【0045】
また図2の例では、抵抗3をLED駆動手段3としている。この例では、LED駆動手段3に並列に第四手段であるトランジスタを接続することで、電流量が大きくなる際に電流をバイパスして、第四手段への負荷を軽減するよう構成している。ただ、LED駆動手段3を省略してもよい。
【0046】
図2の例では、LED電流制御トランジスタとして、FETを使用している。なお、第一LED電流制御トランジスタ21Bや第二LED電流制御トランジスタ22B、第三LED電流制御トランジスタ23B、第四LED電流制御トランジスタ24Bを用いて、LED部単位でON/OFFの切り替えを制御する構成では、各段のLED電流制御トランジスタを構成するFET等の制御用半導体素子が各々LED部の両端に接続されているため、制御用半導体素子の耐圧はLED部の小計順方向電圧にて保護されることとなる。このため、耐圧の低い小型の半導体素子を使用できる利点が得られる。
(第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34)
【0047】
第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34は、各LED部と対応する第一手段21〜第四手段24が、適切なタイミングで定電流駆動を行うよう制御する部材である。第一〜第四電流制御手段も、トランジスタ等のスイッチング素子が利用できる。特にバイポーラトランジスタは、電流量の検出に好適に利用できる。この例では第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34は、オペアンプで構成される。なお電流制御手段も、オペアンプに限定されるものでなく、コンパレータ、バイポーラトランジスタ、MOSFET等でも構成可能であるのはいうまでもない。
【0048】
図2の例では、電流制御手段は、各々LED電流制御トランジスタの動作を制御する。すなわち、各電流検出オペアンプがON/定電流制御/OFFすることで、LED電流制御トランジスタをOFF/定電流制御/ONに切り替える。
(電流検出手段4)
【0049】
一方、電流検出手段4は、複数の電流検出分圧抵抗で構成される。図2の例では、4つのLED電流検出抵抗として、第一LED電流検出抵抗4A、第二LED電流検出抵抗4B、第三LED電流検出抵抗4C、第四LED電流検出抵抗4Dが直列に接続されている。これらは、LEDの保護抵抗としても機能する。このLED電流検出抵抗4A、4B、4C、4DでLED部を直列接続したLED集合体10に通電される電流を電圧降下等により検出することによって、LED部を構成するLED素子の定電流駆動を行う。また定電流駆動を行うため、定電流回路の制御用に電流制御手段が設けられる。この回路例では第一手段21、第二手段22、第三手段23、第四手段24と第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34で、一種の定電流回路が構成される。
【0050】
各LED電流検出抵抗の抵抗値は、各電流制御手段のON/OFFをどの電流のタイミングで行うかを規定する。ここでは、第一〜第四電流検出手段31〜34であるオペアンプの順でONされるよう、各LED電流検出抵抗の抵抗値が設定されている。
(基準電流値)
【0051】
ここでは、第一電流検出手段31が第一LED電流制御トランジスタ21をONからOFFに切り替える第一基準電流値を、第二電流検出手段32が第二LED電流制御トランジスタ22をONからOFFに切り替える第二基準電流値よりも低く設定する。また第三電流検出手段33が第三LED電流制御トランジスタ23をONからOFFに切り替える第三基準電流値を、第二基準電流値よりも高く設定する。さらに第四電流検出手段34が第四LED電流制御トランジスタ24をONからOFFに切り替える第四基準電流値を、第三基準電流値よりも高く設定する。このように第一基準電流値<第二基準電流値<第三基準電流値<第四基準電流値となるよう設定することで、整流回路2で整流された入力電圧の上昇に伴い、第一LED部11から第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14への順で、ON/定電流制御/OFFを順次切り替えることができる。また入力電圧の下降時には、逆の順序でLEDが消灯される。
(高調波抑制信号生成手段6の動作説明)
【0052】
以下、図2を参照しながら、発光ダイオード駆動装置100’における高調波抑制信号生成手段6の動作を説明する。図2の回路例では、電流制御手段は、オペアンプ31〜34で構成される。これらオペアンプ31〜34は、高調波抑制信号生成手段6により制御される。
【0053】
具体的にオペアンプ31〜34は、定電圧電源7により駆動される。定電圧電源7は、オペアンプ電源用トランジスタ70、ツェナーダイオード71、ツェナー電圧設定抵抗72で構成される。この定電圧電源7は、交流電源APを整流回路2で整流した後の脈流電圧が、ツェナーダイオード71のツェナー電圧を超えている期間だけ、オペアンプ31〜34に電源を供給する。この期間は、LEDの点灯期間を包含するよう設定される。すなわち、LED点灯中にオペアンプを動作させて、点灯を制御する。
【0054】
高調波抑制信号生成手段6は、高調波抑制信号生成抵抗60、61で構成される。高調波抑制信号生成抵抗60、61は、整流回路2で整流された脈流電圧を分圧する。いいかえると、脈流電圧を適当な大きさに圧縮する。各オペアンプの+側入力端子には、高調波抑制信号生成抵抗60、61から出力される、圧縮された正弦波である高調波抑制信号が入力される。
【0055】
一方、各オペアンプの負入力端子には、電流検出抵抗で検出された電圧が入力される。図2の例では、電流検出抵抗は上述の通り直列接続された電流検出分圧抵抗4A、4B、4C、4Dで構成される。電流検出分圧抵抗4A、4B、4C、4D間の電圧は、それぞれのオペアンプが制御を担当する期間に、すなわち各オペアンプの+側入力端子に印加される正弦波に沿って電流制御されるよう設定される。これにより、整流回路2で整流された脈流の正弦波をオペアンプの+側入力端子に入力することができる。このため、正弦波に沿って電流制御動作を行うため、LED駆動電流が正弦波に近似された波形となる。
【0056】
ここで、実施例1の回路による電流波形を、比較例1として図18の回路による電流波形と比較したグラフを、図3及び図4に示す。これらの図において、図3は電源電圧と比較例1の電流波形を重ねて表示したグラフであり、図4は実施例1の回路例で実測した電流波形のグラフを、それぞれ示している。また、それぞれの高調波成分のグラフを図5に示す。これらによれば、実施例1の電圧波形では、7次以外の高調波が減少し、また図20で示したように図18の回路例では測定値が限界値を超過していた11次、13次、15次高調波電流が、限度値内に抑えられたことが確認できた。
【0057】
なおLED部はそれぞれ、複数の発光ダイオード素子を相互に直列に接続して構成できる。これにより、脈流電圧を複数の発光ダイオード素子で効果的に分圧できる上、発光ダイオード素子毎の順方向電圧Vfや温度特性のばらつきをある程度吸収してブロック単位での制御を均一化できる。ただ、LED部の数や各LED部を構成する発光ダイオード素子数等は、要求される明るさや入力電圧等によって任意に設定でき、例えばLED部を一の発光ダイオード素子で構成したり、LED部の数を多くしてより細かな制御を行うこと、あるいは逆にLED部を2つのみとして制御をシンプルにすることも可能であることは言うまでもない。
【0058】
また、上記構成ではLED部の構成数を4としたが、LED部の数を2又は3としたり、又は5以上とすることもできることはいうまでもない。特に、LED部の数を増やすことで、階段状の電流波形をより細かくした制御が可能となり、一層の高調波成分の抑制が可能となる。また図1の例では、各LED部がON/OFFされる切り替え動作を、入力電流に対してほぼ均等に分割しているが、均等にする必要は必ずしも無く、異なる電流でLED部を切り替えてもよい。
【0059】
さらに上記の例では、LEDを4つのLED部に分け、各LED部がそれぞれ同一のVfとなるよう構成しているが、同一のVfでなくても良い。例えばLED部1のVfをできるだけ低く、すなわちLED一個分の3.6V程度に設定できれば、図4で示した波形において電流の立ち上がりタイミングを早く、立下りタイミングを遅くできる。このことは、高調波を減少させるのにさらに有利となる。またこの方法を使用すれば、LED部の数とVf設定を自由に選択でき、さらに電流波形を正弦波に近似できるため、より柔軟性を高めて高調波抑制を実現することが容易となる。
【0060】
さらにまた、隣り合うオペアンプの負入力端子同士の最小電圧差は、オペアンプのオフセット電圧以上であれば良く、例えば数mV程度の差で設定できる。このことは、回路設計上有利となる。例えば図18で示したAC多段回路のように、電流制御手段をトランジスタで構成する場合には、半導体部品を実装した回路基板上の、場所による温度変化に起因する設定電流の変動を考慮して、数十mV以上の差を必要としていた。これに対して、実施例1の回路例では、トランジスタで電流制御手段を構成する場合に比べ、十分の一程度の電位差で設定できることになる。このため、実施例1の構成によれば、LED部の電流設定を細かく設定でき、LED部の増加等にも自由に対応可能であることを意味し、部品費等のトレードオフがあるとしても正弦波への近似がさらに精密にできるメリットを享受できる。
【実施例2】
【0061】
次に実施例2として、電流制御手段をオペアンプに代えてトランジスタで構成した発光ダイオード駆動装置200のブロック図を図6に、具体的な発光ダイオード駆動装置200’の回路例を図7に、それぞれ示す。図7において、上述した実施例1に係る図2の発光ダイオード駆動装置100と共通の部材(LED部、第一〜第四手段等)については、同一の符号を付して、詳細説明を省略する。
【0062】
図6のブロック図における高調波抑制信号生成手段6は、図7の回路図では抵抗6で構成されており、トランジスタ731、732、733、734のコレクタ端子に脈流を混合することで、LED駆動電流波形は図4で示すような波形となる。この実施例2では、インピーダンス整合のため、抵抗774を設けている。これらの働きにより、実施例2においても実施例1と同等の効果が得られる。
【実施例3】
【0063】
さらに、実施例1の回路例に調光手段を付加した発光ダイオード駆動装置の例を実施例3として、発光ダイオード駆動装置300のブロック図を図8に、発光ダイオード駆動装置300’の回路図を図9に示す。この図においても上述した実施例1に係る図2の発光ダイオード駆動装置100等と共通の部材については、同一の符号を付して、詳細説明を省略する。
【0064】
図9の回路例では、図2の実施例1の回路図における抵抗61を、図9では可変抵抗61’に変更している。また、この可変抵抗61’の抵抗値が最大のとき、各オペアンプ31〜34の+側入力端子に可変領域の最大電圧が入力され、−端子に入力される電流検出抵抗4A〜4Dからの電圧も最大電圧になるようオペアンプ31〜34が動作し、最大照度に設定される。逆に可変抵抗が最小、すなわち各オペアンプの+側入力端子がGNDに接地されれば、消灯となる。このように、可変抵抗61’は調光手段として働く。
【0065】
この調光方法によれば、最大照度における電流波形と相似形で電流波形を減少させて、照度を減衰させることができる。このことは、従来の一般的な白熱電球の調光では、サイリスタあるいはトライアック等により交流電源を時間軸に沿ってON/OFF制御する構成のため、最大照度の電流波形すなわち正弦波とは相似とはならないことと比較すれば、歪率が増大することなく、高調波の発生を増大させることなく調光できることを意味する。また、力率の低下もないことも大きな利点となる。
【実施例4】
【0066】
上述した図2等の例では、電流検出抵抗が、電流検出信号を電流制御手段に付与する電流検出信号付与手段の機能を果たしている。一方で、電流検出抵抗と別に、この電流検出手段4で検出される電流検出信号を分配して電流制御手段側に付与する電流検出信号付与手段5を設けることもできる。このような発光ダイオード駆動装置を実施例4として、図10の発光ダイオード駆動装置400のブロック図及び図11の発光ダイオード駆動装置400’の回路図に示す。これらの図においても、実施例1等と同様の部材については同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(電流検出信号付与手段5)
【0067】
電流検出信号付与手段5は、電流検出手段4で検出される電流検出信号を、第一電流制御手段31、第二電流制御手段32、第三電流制御手段33、第四電流制御手段34に送出する。ここでは、図2等のように共通の信号線でもって各電流制御手段に電流検出信号を送出する構成の他、電流検出信号付与手段5と各電流制御手段との間に個別の信号線を設けて、各電流制御手段に対して個別に電流検出信号を分配するよう構成することもできる。図11の例において、電流検出信号付与手段5は電流検出信号付与抵抗5A〜5Dに相当する。また電力変動抑制抵抗90および91〜94は電圧変動抑制信号送出手段8を構成する。
(電圧変動抑制信号送出手段8)
【0068】
さらに発光ダイオード駆動装置は、整流回路2の出力、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14の各出力、すなわちカソード端子を混合して電圧変動抑制信号を生成し、電流検出信号付与手段5へ送出する電圧変動抑制信号送出手段8を付加することもできる。これにより、高調波抑制信号生成手段6が、電圧変動抑制信号送出手段8から送出される電圧変動抑制信号、及び電流検出信号付与手段5から送出される電流検出信号とが加算された混合信号に基づいて、より正確に高調波の抑制制御が可能となる。またこの構成によって、LED照度が電源電圧変動に影響され難いLED駆動回路とできる。
【実施例5】
【0069】
図10及び図11の例では、電圧変動抑制信号送出手段8は、各LED部の間に接続されて、各出力を個別検出しているが、この構成に限らず、LED集合体10の全体の出力を検出するように構成してもよい。このような変形例を実施例5として、図12の発光ダイオード駆動装置500のブロック図、及び図13の発光ダイオード駆動装置500’の回路図に示す。上述した実施例4では、図11の回路図に示すように、電流検出信号に対し、抵抗のみで電圧変動抑制信号を加算している。これに対し実施例5では、図13の回路図に示すように、加算前に電圧変動抑制信号を積分した上で、電流検出信号に加算している。このため図13に示す回路例では、電力変動抑制抵抗95に加え、ダイオード96及びコンデンサ97を備えている。
【0070】
ここで、実施例4及び実施例5の回路例で得られる電流波形を、それぞれ図14図15に示す。実施例4の回路例においては、電圧変動抑制信号送出手段8で生成された電圧変動抑制信号が、電流検出手段4で検出された電流検出信号に付加されることにより、電圧変動に対する電流変動が抑制される。すなわち実施例1〜3では高調波抑制信号生成手段6で検出した電源電圧に比例して電流が制御されるので、電源電圧が高いときは電流が大きく、電源電圧が低いときは電流が小さくなる問題がある。そこで、電圧変動抑制信号送出手段8で生成した電圧変動抑制信号により、電流変化を抑制し、平均電流が一定となるよう制御する。ここで、実施例4の動作を図14に基づいて説明する。図14において点線で示す電圧変動抑制前の電流波形が、実線で示す電圧変動抑制が実施された電流波形となるように制御される。なお図14の電流波形は、図11における第四電力変動抑制抵抗94のみを使用し、第一電力変動抑制抵抗91から第三電力変動抑制抵抗93を開放した例を示している。
【0071】
この構成では、図14に矢印で示すように、脈流電圧の最も高くなる前後の部分でのみ電流を減少させている。このため、この期間にのみ点灯する第四LED部14が、第一〜第三LED部13と比較して、暗くなるという現象が生じる。
【0072】
これに対して、実施例5の回路例では、図15に示すように積分され直流化された抑制信号が加算されるため、波形全体が減少する。このため、第四LED部14のみが極端に暗くなるという現象を回避できる。また、正弦波の電流波形を維持できるため、高調波電流抑制においても有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上の発光ダイオード駆動装置は、LED素子を備えているため、LED素子とその駆動回路を同一の配線基板に配置することで、家庭用交流電源を投入して点灯可能な照明装置や照明器具として利用できる。
【符号の説明】
【0074】
100、200、300、400、500、100’、200’、300’、400’、500’…発光ダイオード駆動装置
2…整流回路
3…LED駆動手段
4…電流検出手段;4A…第一LED電流検出抵抗;4B…第二LED電流検出抵抗
4C…第三LED電流検出抵抗;4D…第四LED電流検出抵抗
5…電流検出信号付与手段;5A、5B、5C、5D…電流検出信号付与抵抗
6…高調波抑制信号生成手段
7…定電圧電源
8…電圧変動抑制信号送出手段
10…LED集合体
11…第一LED部
12…第二LED部
13…第三LED部
14…第四LED部
21…第一手段;21A、21B…第一LED電流制御トランジスタ
22…第二手段;22A、22B…第二LED電流制御トランジスタ
23…第三手段;23B…第三LED電流制御トランジスタ
24…第四手段;24B…第四LED電流制御トランジスタ
31…第一電流制御手段
32…第二電流制御手段
33…第三電流制御手段
34…第四電流制御手段
60…高調波抑制信号生成抵抗
61…高調波抑制信号生成抵抗;61’…調光手段(可変抵抗)
70…オペアンプ電源用トランジスタ
71…ツェナーダイオード
72…ツェナー電圧設定抵抗
81…保護抵抗
82…バイパスコンデンサ
90〜95…電力変動抑制抵抗
96…ダイオード
97…コンデンサ
161、162、163、164、165、166…LEDブロック
167…スイッチ制御部
731、732、733、734…トランジスタ
774…抵抗
AP…交流電源
BP1…第一バイパス経路;BP2…第二バイパス経路;BP3…第三バイパス経路;BP4…第四バイパス経路
OL…出力ライン
図1
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