(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前駆体の層を形成する工程は、前記ガラス粉末と前記アルミナ系フィラーとを含むガラスセラミックスペーストを印刷する工程を有する、請求項7記載の発光素子搭載用基板の製造方法。
前記前駆体の層を形成する工程は、前記ガラス粉末と前記アルミナ系フィラーとを含むガラスセラミックス組成物により作製された第2のグリーンシートを積層する工程を有する、請求項7記載の発光素子搭載用基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)のような発光素子の高輝度化、白色化に伴い、照明、各種ディスプレイ、大型液晶TVのバックライト等として、発光素子を用いた発光装置が使用されている。一般に発光素子を搭載する発光素子搭載用基板には、素子から発せられる光を効率よく反射する高反射性が求められる。
【0003】
そのため、発光素子から発光する光を可能な限り前方に反射させることを目的として、基板表面に反射層(光反射層)を施す試みがなされている。そして、反射層として、高い反射率を有する銀を主体とする反射層(以下、銀反射層と記す。)が用いられている。
【0004】
しかし、銀は腐食されやすいため、露出状態で放置すると、銀反射層の表面で酸化や硫化が発生して反射率(光反射率)が低下しやすい。そこで、銀反射層の表面を、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等で被覆して、反射率の低下を防止することが提案されている。しかし、この方法では、水分や腐食性の気体が、樹脂中を通過したりあるいは樹脂と銀反射層との界面から侵入したりするおそれがあり、銀反射層の腐食(酸化または硫化)による反射率の低下を十分に防止することができなかった。
【0005】
そこで近年、銀反射層の腐食を防止するため、銀反射層の表面をガラスからなる保護層で被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ガラスの保護層は、樹脂の保護層と比較して封止性に優れるうえ、光の透過率が高く銀反射層に到達する光量が増加するため、高反射率を得ることができる。また、ガラスは熱伝導性に優れるため、銀反射層の保護層としてガラス層を設けた場合、樹脂層を設けた場合よりも高い放熱性を得ることができる。
【0006】
しかしながら、保護層をガラス層とした場合、一般にガラスは未焼成状態での流動性が高く、焼成時にうねり等による変形が生じやすいため、ガラス層表面の平坦度が低下する。そのため、ガラス層の上に発光素子を搭載した場合、発光素子とガラス層との接触面積が小さくなり、熱抵抗が増加する。また、搭載部に凹凸があると、発光素子が傾いて固定されるおそれがあり、その後のワイヤボンディングにより損傷し、また光軸ずれが発生するおそれもある。
【0007】
このような問題解決のために、近年、銀反射層の保護層として、セラミックスフィラーを含有させたガラス層を設けることが検討されている。保護層をガラス粉末とセラミックスフィラーとの混合物の焼結体とすることで、未焼成状態での流動性が低くなり、平坦度が高められる。また、ガラス層にセラミックスフィラーを含有させた場合、発光素子からガラス層に入射した光の反射方向を分散させることができ、配光特性のばらつきも低減することができる。
【0008】
しかしながら、
図5(a)に示すように、銀反射層51の上に、例えばAl
2O
3を主成分とするアルミナ系フィラー52を含むガラス層53を設けた場合、焼成過程で、銀反射層51からガラス層53に銀イオンが移行(マイグレーション)する。そして、移行した銀イオンが、
図5(b)に示すように、アルミナ系フィラー52の表面およびその周辺に局在化して、高濃度の銀イオン層54を形成する。また、アルミナ系フィラー52の表面等に局在する銀イオン層54の一部が、ガラス層53の表面から露出する現象が生じる。そして、
図5(c)に示すように、このようなガラス層53の上に発光素子を搭載し、シリコーン樹脂等の封止層55により封止した場合、ガラス層53表面に露出した銀イオン層54に含まれる高濃度の銀イオン(Ag
+)が、封止層55に含有される白金触媒等と接触することにより還元されてAg
0となり、
図5(d)に示すように、凝集してコロイド粒子化する。そして、このように凝集した銀粒子(コロイド粒子)56が、ガラス層53とシリコーン樹脂等の封止層55との界面で発色する、いわゆる銀発色と呼ばれる現象が発生する。その結果、反射率が低下して発光装置としての光度(輝度)が低下するおそれがあった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の発光素子搭載用基板の一例を示す断面図である。発光素子搭載用基板1は、略平板状の基板本体2を有している。基板本体2は、一方の主面が、LED素子のような発光素子の搭載される搭載面2aとなっている。搭載面2aには、発光素子と電気的に接続される接続端子3が設けられている。また、基板本体2の他方の主面は、発光素子の搭載されない非搭載面2bとされており、この非搭載面2bには、外部回路と電気的に接続される外部電極端子4が設けられている。そして、基板本体2の内部には、接続端子3と外部電極端子4とを電気的に接続する貫通導体5が設けられている。
【0022】
基板本体2の搭載面2aの略中央部には、発光素子から放射される光を反射させるための銀反射層(中央部反射層)6が設けられており、この銀反射層6の上に、その全表面(上面および側面)を覆うように保護層7が設けられている。そして、保護層7の一部が、発光素子が搭載される搭載部10となっている。この保護層7は、ガラスおよびアルミナ系フィラーを含有する材料により構成されており、かつ保護層7を構成するガラス中には銀イオンが拡散された状態で含有されている。
【0023】
基板本体2の搭載面2aの周辺部にも、発光素子からの光を反射させるための銀反射層(周辺部反射層)6が設けられており、この銀反射層6の上にもその全表面を覆うように保護層7が設けられている。この周辺部反射層6上に設けられた保護層7も、前記中央部反射層6上に設けられた保護層7と同様に、ガラスおよびアルミナ系フィラーを含有する材料により構成され、かつガラス中には銀イオンが拡散された状態で含有されていることが好ましい。
【0024】
このような保護層7を銀反射層6の全面を覆うように設けることで、銀反射層6への気体または液体の侵入を抑制して銀反射層6の酸化や硫化を防止することができるうえに、保護層7表面での銀イオンの凝集およびコロイド粒子化を防止して、銀発色を防止することができ、反射率の低下を防ぐことができる。
【0025】
銀反射層6は、例えば、銀、銀パラジウム合金または銀白金合金等の銀合金からなる層である。銀合金を用いる場合には、反射率の観点から、銀の含有量を90質量%以上とすることが好ましい。具体的に、銀パラジウム合金の場合、パラジウムは10質量%まで含有でき、銀白金合金の場合、白金は3質量%まで含有できる。銀反射層6は高反射率を有することが好ましく、特に銀層とすることが好ましい。銀反射層6は、銀または前記銀合金の粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを、スクリーン印刷等の方法により基板本体2の搭載面2aに印刷し、焼成することにより形成することができる。
【0026】
保護層7は、下層の銀反射層6を酸化や硫化等の腐食から保護するための層であり、ガラスおよびアルミナ系フィラーを含有する焼結体(以下、ガラスセラミックス焼結体という。)により構成されている。なお、本明細書において「アルミナ系フィラー」とは、化学成分としてアルミナ(Al
2O
3)を50質量%以上含有するセラミックスフィラーをいう。アルミナ(Al
2O
3)以外の成分としては、シリカ(SiO
2)やジルコニア(ZrO
2)、セリア(CeO
2)、チタニア(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等を挙げることができる。そして、本発明の発光素子搭載用基板1においては、保護層7を構成するガラス中に、銀イオン(Ag
+)が局在化することなく拡散された状態で含有されている。ガラス中に含有される銀イオン濃度(含有割合)は、Ag
2Oの濃度に換算して、0.5〜5.0質量%であることが好ましい。なお、以下の記載では、Ag
2Oの濃度に換算した濃度として銀イオン濃度を示すものとする。より好ましい銀イオン濃度は1.0〜5.0質量%であり、特に好ましい銀イオン濃度は2.0〜5.0質量%である。
【0027】
このような保護層7は、焼成により前記ガラスセラミックス焼結体を形成するガラスペーストまたはグリーンシートを前駆体として形成される。保護層7の前駆体の形成方法等については後述する。
【0028】
保護層7の前駆体にガラスペーストを用いる場合、焼成後の保護層7の厚さは5〜30μmであることが好ましい。5μm未満であると、被覆性が不十分になるおそれがあるため5μm以上であることが好ましい。より好ましくは10μm以上である。30μmを超えると、発光素子の放熱性を阻害し、発光効率が低下してしまうおそれがある。好ましくは25μm以下である。
【0029】
ただし、保護層7自体の熱伝導率が高い場合、放熱性は阻害されない。熱伝導率を向上させる手段としては、ガラスより熱伝導率の高いセラミックスフィラーを、保護層中に多く含有させるとよい。そこで、ガラスとセラミックスフィラーを高分散化が可能なグリーンシートを前駆体として用いることで、前駆体にガラスペーストを使用した場合より多くのセラミックスフィラーを保護層7に含有させることが可能である。
【0030】
保護層7の前駆体にグリーンシートを用いる場合、焼成後の保護層7の厚さは10〜300μmであることが好ましい。10μm未満では、保護層の積層時にグリーンシートにヒビ割れ等が発生し、被覆性が不十分になるおそれがある。より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは80μm以上である。300μmを超えると、発光素子の放熱性を阻害し、発光効率が低下してしまうおそれがある。好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。
【0031】
保護層7に含有されるアルミナ系フィラーの50%粒径(D
50)は、0.5μm以上4μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、D
50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定したものをいう。
【0032】
アルミナ系フィラーの含有量は、質量%表示で、保護層7を構成する材料全体の5質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。アルミナ系フィラーの含有量が5質量%未満の場合には、保護層7の前駆体を加熱する際の未焼成状態での流動性が高すぎて、焼成時にうねり等が発生し、保護層7の表面の平坦性が低下するおそれがある。また、銀イオンが安定化せずに銀発色が生じるおそれがある。すなわち、銀イオンをイオンとして安定化させるにはカウンターアニオンが必要であり、アルミナ系フィラーからガラス中へ溶出した4配位アルミニウムイオンが前記カウンターアニオンの役割を果たす。そのため、アルミナ系フィラーの含有量が5質量%未満の場合には、銀イオンがガラス中で十分に安定化せずに、銀発色が生じるおそれがある。アルミナ系フィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。
【0033】
一方、アルミナ系フィラーの含有量が70質量%を超えると、均一な組成の焼結体を得ることが難しくなる。好ましくは、65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。なお、保護層7は、アルミナ粉末のようなアルミナ系フィラーとともに、シリカ粉末やチタニア粉末、ジルコニア粉末のようなアルミナ系フィラー以外のセラミックスフィラーを含有していてもよい。その場合、アルミナ系フィラー以外のセラミックスフィラーの含有量は、保護層7を構成する材料全体の25質量%以下とすることが好ましい。ただし、アルミナ系フィラーとそれ以外のセラミックスフィラーの含有量の合計は、保護層7を構成する材料全体の70質量%以下とする。
【0034】
また、アルミナ系フィラーの含有量は、体積%表示で、保護層7を構成する材料全体の3体積%以上60体積%以下とすることが好ましい。アルミナ系フィラーの含有量が3体積%未満の場合には、保護層7の未焼成状態での流動性が高すぎて、焼成時にうねり等が発生し、保護層7の表面の平坦性が低下するおそれがある。好ましくは7体積%以上であり、より好ましくは12体積%以上である。一方、アルミナ系フィラーの含有量が60体積%を超えると、均一な組成の焼結体を得ることが難しくなる。好ましくは、55体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下である。上記したアルミナ系フィラー以外のセラミックスフィラーを含有する場合には、15体積%以下とすることが好ましい。アルミナ系フィラーとそれ以外のセラミックスフィラーの含有量の合計は、保護層7を構成する材料全体の60体積%以下とする。
【0035】
保護層7を構成するガラスは、酸化物基準のモル%表示で、SiO
2を40〜70%、Al
2O
3を1〜20%、B
2O
3を5〜25%、CaOを5〜40%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種を0〜8%含有するガラス粉末を焼成してなる焼結体であることが好ましい。
【0036】
本発明者は、銀発色が生じる原因を検討した結果、保護層7を構成するガラスの焼成時に銀反射層6からガラス中に移行した銀イオンが、アルミナ系フィラーの表面およびその周辺に局在する場合には、銀イオンが還元されやすく、凝集してコロイド粒子化しやすくなるため、銀発色が生じやすいことを突き止めた。そして、銀イオンをアルミナ系フィラーの周辺に局在化させることなく拡散された状態で含有することができ、銀発色を生じさせないガラス組成を見出した。保護層7を構成するガラスを、前記組成のガラス粉末を焼成してなる焼結体とすることで、焼成時に銀反射層6から移行した前記濃度(0.5〜5.0質量%)の銀イオンを、ガラス中に拡散した状態で含有することができる。
【0037】
すなわち、保護層7を構成するガラスが、酸化物基準のモル%表示で、SiO
2を40〜70%、Al
2O
3を1〜20%、B
2O
3を5〜25%、CaOを5〜40%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種を0〜8%含有するガラス粉末を焼成してなるものである場合、
図2(a)〜(b)に示すように、焼成過程で銀反射層6からガラス層21に移行した銀イオンは、アルミナ系フィラー22の表面およびその周辺に局在化することなく、ガラス層22全体に均一に拡散して含有される。そのため、このように銀イオンが拡散・含有されたガラス層23の上に発光素子(図示を省略する。)を搭載し、
図2(c)に示すように、シリコーン樹脂等の封止層24により封止した場合も、銀イオンの凝集によるコロイド粒子化が生じることがなく、銀発色が防止される。
【0038】
次に、保護層7を構成するガラスを得るための原料(ガラス粉末)の成分について説明する。なお、以下では、特に断らない限り組成はモル%表示のものとし、単に%と表記する。
【0039】
SiO
2はガラスのネットワークフォーマーであり、化学的耐久性、特に耐酸性を高くする成分であり必須成分である。SiO
2の含有量(割合)が40%未満では、耐酸性が不十分となるおそれがある。70%を超えると、ガラス溶融温度が高くなる、あるいはガラス軟化点(Ts)が高くなりすぎるおそれがある。
【0040】
Al
2O
3は、ガラスの安定性、化学的耐久性を高める成分であり、保護層とシリコーン樹脂封止層との界面での発色を抑制する必須成分である。Al
2O
3の含有量が1%未満の場合、保護層とシリコーン樹脂封止層との界面で発色抑制が不十分になる。一方、Al
2O
3の含有量が20%を超える場合、軟化点が過度に高くなるおそれがある。好適なガラス組成におけるAl
2O
3の含有量は、1%以上20%以下が好ましく、4%以上15%以下がより好ましい。
【0041】
B
2O
3は、ガラスのネットワークフォーマーでありまた軟化点を下げる成分でもあることから、必須成分である。B
2O
3の含有量(割合)が5%未満では、ガラス溶融温度が高くなりやすい、あるいはガラスが不安定になるおそれがある。25%を超えると、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。
【0042】
CaOは、ガラスの安定性を高めるとともに、軟化点を低下させる成分である。CaOの含有量が5%未満の場合、ガラスの安定性を十分に高めることができず、また軟化点も十分に低下させることができないおそれがある。一方、CaOの含有量が40%を超えると、かえってガラスの安定性が低下するおそれがある。好適なガラス組成におけるCaOの含有量は、5%以上40%以下が好ましく、7%以上35%以下がより好ましい。
【0043】
また、CaOと略同様にガラスの安定性を高めるとともに、軟化点を低下させる成分として、MgO、BaO、およびSrOからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。この場合、MgO、BaO、およびSrOの含有量は、CaOの含有量と合わせて40%以下とする。CaO、MgO、BaO、およびSrOの合計した含有量が40%を超えると、ガラスの安定性が低下するおそれがある。好適なガラス組成におけるCaO、MgO、BaO、およびSrOの合計した含有量は5%以上40%以下が好ましい。また、好適なガラス組成におけるMgO、BaO、およびSrO(CaOを除く。)の合計した含有量は、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
【0044】
アルカリ金属酸化物であるLi
2O、Na
2O、およびK
2Oは、必須成分ではないが、軟化点を低下させる成分であることから、含有させることが好ましい。Li
2O、Na
2O、およびK
2Oは、1種または2種が含有されていてもよい。これらの合計した含有量が6%を超えると、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがある。また、保護層とシリコーン樹脂封止層との界面での発色を促進するおそれがある。好適なガラス組成におけるLi
2O、Na
2O、およびK
2Oの合計した含有量は、0%以上8%以下が好ましく、2%以上7%以下がより好ましい。
【0045】
なお、保護層7を構成するガラスの原料は、上記成分からなるものが好ましいが、本発明の目的を損なわない限度においてその他の成分を含有することができる。但し、その他の成分を含有する場合であっても、その合計した含有量は10%以下であり、5%以下が好ましい。
【0046】
上記したガラス組成の中でも、特にSiO
2を60.4%、B
2O
3を15.6%、Na
2Oおよび/またはK
2Oを合計で3.0%、CaOを15.0%、Al
2O
3を6.0%とするガラス組成を基本とするものが、所定量のアルミナ系フィラーを含有させた場合であっても有効に焼結させることができ、かつ銀イオンをアルミナ系フィラーの周辺に局在化させることなく拡散された状態で含有することができるので、保護層7用のガラス材料として好適している。
【0047】
本発明の発光素子搭載用基板1において、基板本体2は略平板状の部材であるが、発光素子の搭載部が一段下の位置となるように、凹部(キャビティ)が形成された部材とすることもできる。基板本体2を構成する材料は特に限定されないが、前記した保護層7の形成工程で、ガラスを主体とする組成物のペーストを塗布・焼成しても変形しないものが好ましく、無機材料が好ましく用いられる。無機材料の中でも、アルミナ、低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co−fired Ceramic。以下、LTCCと示す。)、窒化アルミニウム等は、熱伝導性、放熱性、強度、および製造コスト等の点で優れており、好ましく用いられる。特に、基板本体2としてLTCCを用いる場合には、基板本体2と、接続端子3や外部電極端子4等の外部配線、および貫通導体5のような内部配線を同時焼成により形成することができる。さらに、このようなLTCC基板と前記した銀反射層6および保護層7を、同時焼成により形成することができるため、発光素子搭載用基板1を低コストで効率的に製造することができる。
【0048】
LTCCからなる基板本体2、および基板本体2を有する発光素子搭載用基板1は、例えば、以下に示すようにして製造することができる。
【0049】
まず、基板本体用グリーンシートを形成する。基板本体用グリーンシートは、基板本体用ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、溶剤等を添加してスラリーを調整し、これをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させることで得ることができる。
【0050】
基板本体用ガラス粉末は、必ずしも限定されるものではないものの、ガラス転移点(Tg)が550℃以上700℃以下のものが好ましい。ガラス転移点(Tg)が550℃未満の場合、後述する脱脂が困難となるおそれがある。一方、ガラス転移点(Tg)が700℃を超える場合、収縮開始温度が高くなり、寸法精度が低下するおそれがある。
【0051】
このような基板本体用ガラス粉末としては、例えば、SiO
2を57モル%以上65モル%以下、B
2O
3を13モル%以上18モル%以下、CaOを9モル%以上23モル%以下、Al
2O
3を3モル%以上8モル%以下、K
2OとNa
2Oからなる群から選ばれる少なくとも一方を合計で0.5モル%以上6モル%以下含有するものが好ましい。
【0052】
基板本体用ガラス粉末は、上記したようなガラス組成を有するガラスを溶融法によって製造し、乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕することにより得ることができる。湿式粉砕法の場合には、溶媒として水またはエチルアルコールを用いることが好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行うことができる。なお、基板本体用ガラス粉末は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、ガラス転移点等の諸特性を満たす範囲で他の成分を含有することもできる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10モル%以下であることが好ましい。
【0053】
基板本体2用ガラス粉末の50%粒径(D
50)は0.5〜2μmであることが好ましい。基板本体2用ガラス粉末のD
50が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集しやすく、取り扱いが困難であるばかりでなく、均一に分散させることが困難となる。一方、ガラス粉末のD
50が2μmを超える場合、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。粒径の調整は、例えば粉砕後に必要に応じて分級することにより行うことができる。
【0054】
セラミックスフィラーとしては、従来からLTCC基板の製造に用いられるものを用いることができ、例えば、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、またはアルミナ粉末とジルコニア粉末との混合物を好適に用いることができる。セラミックスフィラーのD
50は、例えば0.5〜4μmであることが好ましい。
【0055】
このような基板本体用ガラス粉末とセラミックスフィラーとを、例えば、ガラス粉末が30質量%以上50質量%以下、セラミックスフィラーが50質量%以上70質量%以下となるように配合し、混合することによりガラスセラミックス組成物を得ることができる。
【0056】
また、このガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、溶剤等を添加することによりスラリーを得ることができる。バインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂等を好適に用いることができる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等を用いることができる。また、溶剤としては、トルエン、キシレン、ブタノール等の芳香族系またはアルコール系の有機溶剤を用いることができる。さらに、分散剤やレベリング剤を使用することも可能である。
【0057】
このスラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させることで、基板本体用グリーンシートを製造することができる。このようにして得られた基板本体用グリーンシートを、打ち抜き型あるいはパンチングマシーンを使用して所定の寸法角に切断し、同時に所定位置に層間接続用のビアホールを打ち抜き形成することができる。
【0058】
基板本体用グリーンシートの表面に、導電金属のペーストをスクリーン印刷等の方法で印刷することにより、未焼成の導体パターンを形成する。また、前記した層間接続用のビアホール内に導体金属のペーストを充填することによって、未焼成の層間接続部を形成する。これにより、未焼成接続端子、未焼成外部電極端子、未焼成貫通導体を形成する。なお、導電金属の金属ペーストとしては、例えば、銅、銀、金等を主成分とする導電金属の粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加し、ペースト状としたものを用いることができる。
【0059】
さらに、基板本体用グリーンシート表面の所定の部位に、銀または前記銀合金の粉末にエチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを、スクリーン印刷等の方法により印刷することにより、未焼成銀反射層を形成した後、さらにその上に、焼成により保護層7を形成する前駆体の層(未焼成保護層)を形成する。
【0060】
ここで、保護層7の前駆体にガラスペーストを用いる場合は、前記した保護層用の組成を有するガラス粉末(以下、保護層用ガラス粉末という。)とアルミナ系フィラーを含む混合物のガラスペーストを、スクリーン印刷等により印刷してガラスペースト層を形成し、未焼成保護層とする。なお、ガラスペースト層の形成方法は、焼成後の厚さが5〜30μmとなる層を平坦に形成できる方法であれば、印刷法に限定されるものではない。
【0061】
また、保護層7の前駆体にグリーンシートを用いる場合は、保護層用ガラス粉末とアルミナ系フィラーを含む混合物を使用し、前記基板本体用グリーンシートと同様に作製されたグリーンシート(保護層用グリーンシート)を、未焼成銀反射層の上に重ね、加熱および加圧して一体化することにより、未焼成保護層を形成する。
【0062】
次いで、こうして未焼成の導体パターン、未焼成銀反射層、未焼成保護層等が形成された基板本体用グリーンシートの複数枚を、位置合わせしつつ重ね合わせて加熱および加圧して一体化した後、例えば500℃以上600℃以下の温度で1時間以上10時間以下保持する。こうして、基板本体用グリーンシートに含まれる樹脂等のバインダーを分解・除去する脱脂を行う。その後、例えば、850〜900℃の温度で20分〜60分保持することにより、基板本体用グリーンシートを構成するガラスセラミックス組成物を焼成する。この焼成により、ガラスセラミックス基板内部および表面に形成された金属ペーストと未焼成保護層(ガラスペースト層または保護層用グリーンシート)も同時に焼成され、接続端子3、外部電極端子4、貫通導体5、銀反射層6および保護層7を有する基板本体2を得ることができる。
【0063】
脱脂温度が500℃未満もしくは脱脂時間が1時間未満の場合、バインダー等を十分に除去することが困難になる。一方、脱脂温度が600℃を超えると、ガラスの焼結が進む可能性があり、バインダー等の除去が不完全になるおそれがある。また、脱脂時間が10時間を超えると、生産性等が低下するおそれがある。
【0064】
焼成は、焼成温度が850℃未満、焼成時間が20分間未満の場合、緻密なものが得られにくくなる。一方、焼成温度が900℃を超えると、導体パターン等の形状の保持が難しくなる。また、焼成時間が60分間を超えると、生産性等が低下するおそれがある。焼成は、特に860℃〜880℃の温度で行うことが好ましい。銀反射層6の形成に、銀を主成分とする金属粉末を含有する金属ペーストを用いた場合には、焼成温度が880℃を超えると、金属ペーストが過度に軟化して所定の形状を維持できなくなるおそれがある。
【0065】
以上、本発明の発光素子搭載用基板1について説明したが、本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更することができる。
【0066】
次に、本発明の発光装置について説明する。本発明の発光装置は、例えば
図3に示すように、本発明の発光素子搭載用基板1の搭載面2aに設けられた保護層7の搭載部10に、LED素子等の発光素子11が搭載されたものである。発光素子11は、保護層7の上に接着剤を用いて固定され、その図示しない電極がボンディングワイヤ12によって接続端子3に電気的に接続されている。そして、発光素子11やボンディングワイヤ12を覆うように、モールド樹脂からなる封止層13が設けられて発光装置20が構成されている。
【0067】
封止層13を構成するモールド樹脂としては、耐光性、耐熱性の点で優れているため、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。このようなモールド樹脂に、白金、チタン等の触媒を添加することにより、モールド樹脂の速やかな硬化が可能となる。
【0068】
封止用のモールド樹脂に蛍光体等を混合または分散させることにより、発光装置20として得られる光を、所望の発光色に適宜調整することができる。すなわち、蛍光体を封止層に混合、分散させることにより、発光素子11から放射される光によって励起された蛍光体が可視光を発光し、この可視光と発光素子11から放射される光とが混色して、発光装置20として所望の発光色を得ることができる。蛍光体の種類は特に限定されるものではなく、発光素子から放射される光の種類や目的とする発光色に応じて適宜選択される。なお、蛍光体を配置するには、上記のようにして封止層13に混合・分散させる方法に限らず、例えば封止層13の上に蛍光体の層を設けるようにすることも可能である。
【0069】
本発明の発光装置20によれば、アルミナ系フィラーを含有し、かつ銀イオンがガラス中に拡散された状態で含有された保護層7が、銀反射層6の全面を覆うように設けられている。この構成により、銀反射層6の酸化や硫化が防止されるうえに、保護層7表面での銀イオンの凝集およびコロイド粒子化が防止され、銀発色が防止される。したがって、発光素子11から供給される光の損失が少なく、高い発光輝度を得られる発光装置20とすることができる。
【0070】
また、本発明の発光装置20によれば、搭載部10の平坦度に優れ、熱抵抗の小さい発光素子搭載用基板1を用いることで、発光素子11の過度な温度上昇を抑制し、高輝度に発光させることができる。
【0071】
このような本発明の発光装置20は、例えば携帯電話や大型液晶ディスプレイ等のバックライト、自動車用あるいは装飾用の照明、その他の光源として好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明について実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【0073】
実施例1〜12、比較例
まず、保護層用のガラスセラミックス組成物を調製した。すなわち、SiO
2、B
2O
3、Al
2O
3、CaO、Na
2OおよびK
2Oの各成分が表1に示す組成(モル%)となるように、ガラス原料を調合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1500〜1600℃で60分間溶融させた後、溶融状態のガラスを流し出し冷却した。得られたガラスを、アルミナ製ボールミルにより20〜60時間粉砕してガラス粉末を得た。なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0074】
得られた保護層用ガラス粉末の平均粒径D
50(μm)を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所社製、商品名:SALD2100)を用いて測定した。いずれの組成のガラス粉末も、平均粒径(D
50)は1〜3μmの範囲内であった。
【0075】
次に、上記の保護層用ガラス粉末に、D
50が2μm、比表面積が4.5m
2/gであるアルミナ粉末(昭和電工社製、商品名:AL−45H)を、アルミナ粉末が表1に示す割合(質量%および体積%)となるように配合し、混合して、実施例1〜10および比較例で使用する保護層用ガラスセラミックス組成物を得た。また、前記アルミナ粉末とともに、D
50 0.5μm、比表面積8.0m
2/gのジルコニア(ZrO
2)粉末(第一稀元素化学社製、商品名:HST−3F)を表1に示す割合(質量%および体積%)となるようにさらに配合し、混合して、実施例11および12で使用する保護層用ガラスセラミックス組成物を得た。
【0076】
次いで、実施例1〜9においては、前記保護層用ガラスセラミックス組成物と樹脂成分とを60:40の質量比で配合し、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って、保護層用のガラスペーストを調製した。なお、樹脂成分は、エチルセルロースとαテレピネオールとを質量比85:15で調合し分散したものを使用した。
【0077】
また、実施例10〜12においては、前記保護層用ガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)0.5gを配合し、混合してスラリーを調製した後、このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し乾燥させ、焼成後の厚さが表1に示す厚さとなる保護層用グリーンシートを作製した。
【0078】
次に、基板本体用グリーンシートを製造した。まず、SiO
2を60.4mol%、B
2O
3を15.6mol%、Al
2O
3を6mol%、CaOを15mol%、K
2Oを1mol%、Na
2Oを2mol%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスを、アルミナ製ボールミルによりエチルアルコールを溶媒として40時間粉砕して、基板本体用のガラス粉末を製造した。
【0079】
この基板本体用ガラス粉末が35質量%、アルミナ粉末(昭和電工社製、商品名:AL−45H)が40質量%、ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名:HSY−3F−J)が25質量%となるように配合し、混合することにより基板本体用ガラスセラミックス組成物を得た。こうして得られたガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)0.5gを配合し、混合してスラリーを調製した。
【0080】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し乾燥させ、焼成後の厚さが0.15mmとなる基板本体用グリーンシートを製造した。
【0081】
また、銀粉末(大研化学工業社製、商品名:S550)とビヒクルとしてのエチルセルロースを、質量比85:15の割合で配合し、固形分が85質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って銀ペーストを調製した。
【0082】
基板本体用グリーンシートの未焼成貫通導体に相当する部分に孔空け機を用いて直径0.3mmの貫通孔を形成し、スクリーン印刷法により前記銀ペーストを充填して未焼成貫通導体層を形成するとともに、未焼成接続端子、未焼成外部電極端子をそれぞれ形成した。
【0083】
このグリーンシートを重ね合わせ、熱圧着により一体化した後、搭載面の中央部に反射層用の銀ペーストをスクリーン印刷法によって印刷・形成した。その上に、実施例1〜9および比較例においては、前記保護層用ガラスペーストをスクリーン印刷法によって塗布して、未焼成発光素子搭載用基板とした。また、実施例10〜12においては、反射層用の銀ペーストの上に、前記保護層用グリーンシートを重ねて圧着し、未焼成発光素子搭載用基板とした。なお、反射層用銀ペーストは、銀粉末(大研化学工業社製、商品名:S400−2)、ビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比85:15の割合で配合し、固形分が85質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行うことにより得た。
【0084】
次いで、上記で得られた未焼成発光素子搭載用基板を550℃で5時間保持して樹脂成分を分解・除去した後、870℃に30分間保持して焼成を行い、発光素子搭載用基板を製造した。基板本体上に形成された銀反射層の厚さは20μmであり、保護層の厚さは表1に示す通りであった。
【0085】
この状態で、保護層に含まれる銀イオン(Ag
+)の濃度(含有量)を測定した。すなわち、保護層全体に含まれるAg濃度を、蛍光X線を用いて測定した。また、Electron Probe Micro Analyzer(EPMA)を用いて、保護層を構成するガラス中のAg濃度を測定した。ここで、ガラス中とは、アルミナ粉末が含まれないガラスだけの領域を示すものとする。この領域が、EPMAによる検出領域となる。測定結果を、Ag
2Oに換算した値として表1に示す。実施例1〜12の発光素子搭載用基板では、保護層を構成するガラス中に銀が一定の割合で拡散されて含有されていることがわかった。
【0086】
次に、実施例1〜12および比較例で得られた各発光素子搭載用基板に、発光ダイオード(LED)素子を搭載して、
図3に示す発光装置を作成した。すなわち、保護層の搭載部上にLED素子(昭和電工社製、商品名:GQ2CR460Z)1個をダイボンド材(信越化学工業社製、商品名:KER−3000−M2)により固定し、その電極をボンディングワイヤによって接続端子に電気的に接続した。さらに封止剤を用いてモールド封止層を形成した。なお、封止剤としては、封止用シリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名:SCR−1016A)を用いた。
【0087】
次いで、実施例1〜12および比較例で作製された発光装置において、電圧/電流発生器(アドバンテスト社製、商品名:R6243)を用いて35mAを印加し、LED素子を発光させた。そして、発光初期(0時間後)、温度80%、湿度80%の環境で100時間放置後、および同じ環境で250時間放置後のそれぞれの時点で、発光装置から得られる光の全光束量(ルーメン)を測定した。全光束量の測定は、積分球(直径6インチ)内に発光装置を設置し、全光束測定装置(スペクトラコープ社製、商品名:SOLIDLAMBDA・CCD・LED・MONITOR・PLUS)を用いて行った。測定結果を表1および
図4に示す。
【0088】
なお、表1および
図4では、実施例1〜12および比較例のそれぞれの発光初期(0時間後)における光束量の測定値を100とし、100時間後および250時間後の各光束量の測定値を、前記各測定値を基準とした相対値(輝度の割合)として表記した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1から明らかなように、実施例1〜12の発光素子搭載用基板では、特定のガラス組成を有するガラス粉末とアルミナ粉末との混合物を焼成してなる焼結体により保護層が構成されている。また、保護層を構成するガラス中に銀イオンが拡散された状態で、かつ所定の濃度(0.5〜5.0質量%)で含有されている。このような発光素子搭載用基板を用いた発光装置では、保護層とシリコーン樹脂封止層との界面での銀発色がなく、経時的な輝度(全光束量)の低下がほとんど生じないことが認められた。それに対して、比較例の発光素子搭載用基板を用いた発光装置では、下層の銀反射層から保護層に移行した銀イオンは、保護層を構成するガラス中に拡散された状態で含有されておらず、アルミナ粉末の表面近傍のみに高い濃度で局在しているので、このような発光素子搭載用基板を用いた発光装置では、保護層とシリコーン樹脂封止層との界面での銀発色により、輝度が大きく低下していることがわかった。