【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0063】
[参考例1]
式(10)に示すフェニルテトラアニリン(以下PTAと略す)は、ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752に従って、p−ヒドロキシジフェニルアミンとp−フェニレンジアミンとから合成した(収率85%)。
【0064】
【化14】
【0065】
[参考例2]
構造物付きITO基板は、ポジ型感光性ポリイミドワニスを用いて、以下のように作製した。
国際公開第2003/029899号の実施例1に記載の方法により、ポジ型感光性ポリイミドワニスを合成した。
得られたポリイミドの数平均分子量は46400(繰り返し単位換算でn=70)分子量分布1.66であった。尚、数平均分子量は(株)センシュー科学社製GPCシステムSSC−7200により測定した。
50×50mm、厚みが0.7mmのITOベタ基板に、得られたポジ型感光性ポリイミドワニスを滴下し、スピンコート法によって成膜した。スピンコーターは、ミカサ株式会社製スピンコーター 1H−DX2を使用した。成膜後80℃で5minプリベークした。次いで、凸版印刷株式会社製のフォトマスクを使用して、紫外線照射装置(キャノン社製PLA−501)を28秒間(150mJ/cm
2)照射した。その後、アルカリ現像液(東京応化社製NMD−3)を用いて30sec現像後、純水で2min流水洗浄した。さらに、大気下、ホットプレート上で200℃10min焼成した。得られたパターンは膜厚が700±10nm、Line(ポリイミドの幅)が30μm、スペース(構造物間)が50μmであり、純水の接触角が85.5°のポリイミド構造物を得た。なお、感光性ポリイミド構造物の作製はクラス1000のクリーンルーム内で全工程を行った。
感光性ポリイミド構造物(構造物付きITO基板)の形状及び現像で抜いた部分のITOの平坦化性を、株式会社小坂研究所製 高精度微細形状測定器 SUREFCORDER ET4000Aを使用して測定した。測定条件は、測定範囲を0.4mm、送り速さを0.01mm/sec、測定力である触針圧を10μNとした。
図1に構造物付きITO基板の形状を測定した結果を示す。
図2に構造物付き基材のITO部分を測定した結果を示す。現像で抜いた部分のITOの平坦化性は、最大ラフネスが10nmであった。
【0066】
[実施例1]
参考例1で合成したPTA 0.0637g(0.1439mmol)と、式(11)に示す5−スルホサリチル酸(5−SSA)(和光純薬社品)0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)1.2410gに完全に溶解させた。
【0067】
【化15】
【0068】
得られた溶液にシクロヘキサノール(CHA)6.2050g、次いでイソブタノール(IBA)4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
得られたワニスは、株式会社藤森技術研究所製スプレー塗布装置 NVD−200を用いて、参考例2で作製した構造物付きのITO基板にスプレー塗布した。スプレー塗布装置の塗布条件は、膜厚が30nm狙い、X及びYスキャン方向が240mm、X及びYオフセットが0mm、スキャンピッチが10mm、ギャップが150mm、ノズル速度が500mm/sec、窒素量が10L/min、薬液量が1mL/min、塗布待機時間が15sec、タクトタイムが60secとした。塗布後、空気中、ホットプレート上で180℃2h焼成を行い、電荷輸送性薄膜を作製した。
図3に実施例1の電荷輸送性薄膜の膜厚分布を測定した結果を示す。
【0069】
[比較例1]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。
得られた溶液にIBA 9.9280gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
図4に比較例1の電荷輸送性薄膜の膜厚分布を測定した結果を示す。
【0070】
[比較例2]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。
得られた溶液にCHA 9.9280gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0071】
[比較例3]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 12.4100gに完全に溶解させ、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0072】
[実施例2]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にシクロヘキサノール(CHA)1.2410g、次いでイソブタノール(IBA)9.9280gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0073】
[実施例3]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 2.4820g、次いでIBA 8.6870gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0074】
[実施例4]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 3.7230g、次いでIBA 7.4460gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0075】
[実施例5]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 4.9640g、次いでIBA 6.2050gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0076】
[実施例6]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 7.4460g、次いでIBA 3.7230gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0077】
[実施例7]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 8.6870g、次いでIBA 2.4820gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0078】
[実施例8]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 9.9280g、次いでIBA 1.2410gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0079】
[実施例9]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.8720gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 9.3600g、次いでIBA 7.4880gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.0%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0080】
[実施例10]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 0.9255gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 4.6275g、次いでIBA 3.7020gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0081】
[実施例11]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 0.7362gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 3.6810g、次いでIBA 2.9448gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0082】
[実施例12]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 0.6100gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 3.0500g、次いでIBA 2.4400gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分3.0%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0083】
[実施例13]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、NMP 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでIBA 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0084】
[実施例14]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 2.4820gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 3.7230g、次いでエタノール(EtOH) 6.2050gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0085】
[参考例3]
アクセプターである5−SSAを式(12)記載のナフタレンジスルホン酸オリゴマー(NSO−2)に変更して、以下のようにワニスを調製した。
PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、式(12)に示すNSO−2 0.5601g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 8.1926gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 12.2889g、次いでエタノール(EtOH) 20.4814gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0086】
【化16】
【0087】
[実施例16]
アクセプターである5−SSAを式(13)記載のベンゾジオキサンスルホン酸オリゴマー(BDSO−3)に変更して、以下のようにワニスを調製した。
PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、式(13)に示すBDSO−3 0.5647g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 8.2530gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 12.3795g、次いでエタノール(EtOH) 20.6324gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0088】
【化17】
【0089】
[比較例4]
ホストであるPTAをポリアニリン(Pani)に変更して、以下のようにワニスを調製した。
Pani 0.0637gと5−SSA 0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 2.4820gに溶解させたが完全に溶解せず、有機溶媒分散液となった。得られた分散溶液にCHA 3.7230g、次いでエタノール(EtOH) 6.2050gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(理想固形分1.5%)。なお、ポリアニリンは、Aldrich社製 エメラルディンベース Mw ca.50000を使用した。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0090】
[比較例5]
ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT;PSS)(Bayer社製)を、実施例1に記載の方法でスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0091】
[実施例17]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にプロピレングリコール 6.2050g、次いでIBA 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0092】
[実施例18]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液に2,3−ブタンジオール 6.2050g、次いでIBA 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0093】
[比較例6]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 2.0683gに完全に溶解させた。得られた溶液にプロピレングリコール 10.3417gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0094】
[比較例7]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMAc 2.0683gに完全に溶解させた。得られた溶液に2,3−ブタンジオール 10.3417gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0095】
[実施例19]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでアセトン 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0096】
[実施例20]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでエタノール 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0097】
[実施例21]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでメチルエチルケトン 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0098】
[実施例22]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでイソプロピルアルコール 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0099】
[実施例23]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでブタノール 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0100】
[実施例24]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いで2−メチル−1−プロパノール 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0101】
[実施例25]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでシクロヘキサノン 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0102】
[実施例26]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ) 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
得られたワニスは、株式会社藤森技術研究所製 スプレー塗布装置 NVD−200を用いて、参考例2で作製した構造物付きのITO基板にスプレー塗布した。スプレー塗布装置の塗布条件は、膜厚が30nm狙い、X及びYスキャン方向が240mm、X及びYオフセットが0mm、スキャンピッチが10mm、ギャップが150mm、ノズル速度が500mm/sec、窒素量が10L/min、薬液量が0.8mL/min、塗布待機時間が15sec、タクトタイムが60secとした。塗布後、空気中、ホットプレート上で180℃2h焼成を行い、電荷輸送性薄膜を作製した。
【0103】
[比較例8]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでγ−ブチルラクトン 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0104】
[比較例9]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでフタル酸ジメチル 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例26に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0105】
[比較例10]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、DMI 1.2410gに完全に溶解させた。得られた溶液にCHA 6.2050g、次いでプロピレングリコール 4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
実施例1に記載の方法で、該ワニスをスプレー塗布し電荷輸送性薄膜を作製した。
【0106】
[比較例11]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)1.2410gに完全に溶解させた。
得られた溶液にシクロヘキサノール(CHA)6.2050g、次いでイソブタノール(IBA)4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
得られたワニスはスピンコート法によって膜厚30nm狙いで塗布した。
塗布後、空気中、ホットプレート上で180℃2h焼成を行い、電荷輸送性薄膜を作製した。
【0107】
[比較例12]
実施例1と同様に、PTA 0.0637g(0.1439mmol)と、5−SSA0.1256g(0.5757mmol)とを窒素雰囲気下、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)1.2410gに完全に溶解させた。
得られた溶液にシクロヘキサノール(CHA)6.2050g、次いでイソブタノール(IBA)4.9640gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分1.5%)。
得られたワニスはオフセット印刷法によって膜厚30nm狙いで塗布した。
印刷機はナカン株式会社製 簡易印刷機 S−15型を使用し、APR版(400メッシュ)を用いて印刷した。押し込み圧は0.25mmとし、空印刷を2回、捨てITO基板へ3回塗布後に構造物付き基板へ印刷した。
印刷後、空気中、ホットプレート上で180℃2h焼成を行い、電荷輸送性薄膜を作製した。
【0108】
表1に実施例1及び比較例1〜3で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。なお、粘度、表面張力及び固形分に示した矢印(→)前後の数値は、前がスプレー前のワニス、後がスプレー後の着液時のワニスの物性値を示している。
目視観察は、フナテック株式会社製 干渉稿検査ランプ FNA−35型を使用した。干渉稿検査ランプは目視で観察する際に、微細な塗布ムラを目視でも確実に確認できる。評価の基準として、○、△及び×として評価を行ったが、○は均一な成膜面が得られた場合、△は塗布ムラ等が生じて○よりも若干劣る成膜面が得られた場合、×は均一な成膜面が得られていない場合を指す。
表面張力は、協和界面科学社製 自動表面張力計 CBVP−Z型を使用して測定した。
固形分は、次のように測定した。測定する対象のワニスを容量が23mL、φ上部51mm、φ下部45mm、深さ12mmのAl規格パンに約2gを秤量し、予め160℃に保持しておいた減圧乾燥機に入れ、23mmHgまで10分かけて減圧後、60分間乾燥させた。乾燥機から湿度が50RH%に保持したデシケータ中に移し変え5分間静置後、固形分を秤量した。
粘度は、東機産業社製 E型粘度計を使用して測定した。スプレー塗布において、着液時のワニスの粘度は実際に成膜する条件でスプレー塗布を行い、ステージにシャーレを置いて、ワニスを収集し、粘度を測定した。
【0109】
実施例1は、良溶媒としてDMI、高レベリング性貧溶媒としてCHA、揮発性貧溶媒としてIBAで構成されている3種の有機溶媒混合系ワニスであり、スプレー塗布時と基材着液時の液物性が変化する電荷輸送性ワニスである。CHAがスプレー塗布中に残留し、IBAがスプレー塗布中に蒸発する溶媒である。
表1のように、実施例1はスプレー塗布前の粘度が8.8mPa・sであったがIBAがスプレー中に蒸発したため、基板着液時の粘度は17.6mPa・sにまで増加し、2倍も粘度が増加するワニスである。表面張力はIBAが蒸発したことで、若干増加するものの、スプレー時(29.6mN/m)と基板着液時(33.8mN/m)の表面張力をコントロールできることが分かった。また、IBAが蒸発したことで基板に着液した時のワニス固形分は増加し、1.5wt%から2.4wt%まで増加することが分かった。
電荷輸送性薄膜の成膜面を評価する方法は、2種類の評価法で行った。一つは膜厚ムラであり、50μmの構造物間の膜厚分布から確認するミクロな成膜面の評価である。他方は塗布ムラであり、電荷輸送性薄膜の成膜面を目視で観察したマクロな成膜面の評価である。
【0110】
実施例1の電荷輸送性薄膜は、
図3から30±5nmの膜厚分布でITOを被膜し、成膜できていることが分かった。この膜厚分布は目的の膜厚±5nm以下であることが望ましく、±10nm以上になると、該電荷輸送性薄膜をEL素子に組み入れて発光させたときに、膜厚ムラが発光ムラとして目視できてしまう。
成膜面の観察においても、干渉稿検査ランプで目視確認できてしまうような、塗布ムラ(成膜面観察の△あるいは×)は、該電荷輸送性薄膜をEL素子に組み入れて発光させたときに、塗布ムラが発光ムラとして目視できてしまう。
比較例1は、良溶媒としてDMI、揮発性貧溶媒としてIBAで構成されている2種の有機溶媒混合系ワニスであり、高レベリング性貧溶媒を除いた系である。スプレー塗布時と基材着液時の液物性が変化する電荷輸送性ワニスであるが、スプレー中に残存するレベリング性を向上させる高レベリング性貧溶媒を除いたために、塗布ムラが生じた。
【0111】
比較例1の電荷輸送性薄膜は、
図4から30±11nmの膜厚分布でITOを被膜し、成膜できていることが分かった。実施例1のワニスを用いたときとは異なり、構造物間の膜厚ムラが大きいことが分かった。これは、基板着液時の粘度が7.2mPa・sであり、粘度が低いことから、構造物間で流動し易く、膜厚ムラが生じたと考えられる。
比較例2は、良溶媒としてDMI、高レベリング性貧溶媒としてCHAで構成されている2種の有機溶媒混合系ワニスであり、揮発性貧溶媒を除いた系である。スプレー塗布時と基材着液時の液物性は変化せず、スプレー塗布時の粘度が25.4mPa・sと高いため、窒素でワニスを粉砕し難く、霧が均一に出来づらい状態となり、成膜面に塗布ムラが生じたと考えられる。
比較例3は、良溶媒のDMIのみで構成されているワニスであり、揮発性貧溶媒及び高レベリング性貧溶媒を除いた系である。スプレー塗布時と基材着液時の液物性は変化せず、着液時の粘度が7.2mPa・sと低く、レベリング性を向上させる高レベリング性貧溶媒も含まれていないことから、塗布ムラが発生したと考えられる。
【0112】
【表1】
【0113】
表2に実施例2〜8で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。
実施例2〜8のワニスは、固形分を1.5wt%に固定し、良溶媒にDMI、高レベリング性貧溶媒にCHA、揮発性貧溶媒にIBAを固定し、溶媒組成比率のみを変更させたワニスである。
【0114】
実施例2〜8のワニスは固形分が1.5wt%と一定でIBA比率を変更していることから粘度及び表面張力にコントラストをつけ、コントロールできることが分かった。
スプレー塗布時と基材着液時の粘度は、実施例2が4.8mPa・sから11.2mPa・s(2.3倍)、実施例3が5.0mPa・sから12.5mPa・s(2.5倍)、実施例4が5.4mPa・sから14.5mPa・s(2.7倍)、実施例5が6.7mPa・sから16.6mPa・s(2.5倍)、実施例1が8.8mPa・sから17.6mPa・s(2.0倍)、実施例6が11.7mPa・sから22.5mPa・s(1.9倍)、実施例7が15.2mPa・sから26.0mPa・s(1.7倍)、実施例8が19.5mPa・sから31.8mPa・s(1.6倍)と1.6〜2.7倍まで粘度を増加させることが可能であることが分かった。
【0115】
スプレー塗布時と基材着液時の表面張力は、実施例2が28.8mN/mから34.6mN/m、実施例3が29.1mN/mから34.4mN/m、実施例4が29.3mN/mから34.2mN/m、実施例5が29.4mN/mから34.0mN/m、実施例1が29.6mN/mから33.8mN/m、実施例6が30.3mN/mから33.7mN/m、実施例7が31.1mN/mから33.4mN/m、実施例8が32.0mN/mから33.3mN/mと表面張力をコントロールできることが分かった。表面張力のコントロールが可能であることは、基材の表面エネルギーに合わせて最適な液物性を選択することができる点が非常に有用である。
【0116】
スプレー塗布時と基材着液時の固形分は、実施例1〜8までで1.5wt%〜7.0wt%まで濃縮することが可能であることが分かった。スプレー塗布時と基材着液時のワニスの固形分が濃縮できることは膜厚をコントロールするときに有用であり、スプレー塗布のパラメーターを選択するときの指標になる。
また、実施例1〜8の電荷輸送性薄膜の膜厚分布は30±6nm以下であり、膜厚ムラが発光ムラに影響しない程度の膜厚ムラに抑制できていることが分かった。
さらに、成膜面観察の結果、実施例1〜実施例8の電荷輸送性薄膜は一様に塗布ムラが確認できなかった。
【0117】
【表2】
【0118】
表3に実施例1及び実施例9〜12で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。
実施例1及び実施例9〜12のワニスは、良溶媒にDMI、高レベリング性貧溶媒にCHA、揮発性貧溶媒にIBAを固定し、溶媒組成比率を10:50:40に固定し、固形分を変更させたワニスである。
【0119】
各実施例のワニスの固形分は、実施例9が1.0wt%、実施例1が1.5wt%、実施例10が2.0wt%、実施例11が2.5wt%、実施例12が3.0wt%である。
スプレー塗布時と基材着液時の粘度は、実施例9が8.4mPa・sから16.7mPa・s(2.0倍)、実施例1が8.8mPa・sから17.6mPa・s(2.0倍)、実施例10が9.2mPa・sから18.4mPa・s(2.0倍)、実施例11が9.7mPa・sから19.3mPa・s(2.0倍)、実施例12が10.0mPa・sから20.0mPa・s(2.0倍)と約2.0倍まで粘度を増加させることが可能であることが分かった。
【0120】
スプレー塗布時と基材着液時の表面張力は、実施例9が29.4mN/mから33.7mN/m、実施例1が29.6mN/mから33.8mN/m、実施例10が29.6mN/mから33.9mN/m、実施例11が29.7mN/mから34.1mN/m、実施例12が29.8mN/mから34.2mN/mと表面張力をコントロールできることが分かった。表面張力のコントロールが可能であることは、基材の表面エネルギーに合わせて最適な液物性を選択することができる点が非常に有用である。
また、実施例9〜12の電荷輸送性薄膜の膜厚分布は30±5nm程度であり、膜厚ムラが発光ムラに影響しない程度に抑制されていることが分かった。
さらに、成膜面観察の結果、実施例9〜12の電荷輸送性薄膜は一様に塗布ムラが確認されず、均一な成膜面であることが分かった。
ワニスの固形分の変更は膜厚をコントロールする際の指標となる。
【0121】
【表3】
【0122】
表4に実施例1及び実施例13で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。
実施例1及び実施例13のワニスは、高レベリング性貧溶媒にCHA、揮発性貧溶媒にIBAを固定し、溶媒組成比率を良溶媒:CHA:IBA=10:50:40に固定し、固形分を1.5wt%に固定し、良溶媒を変更させたワニスである。
良溶媒にNMPを使用した実施例13の電荷輸送性ワニスに関しても、構造物間に非常に良好な電荷輸送性薄膜を形成することができた。
【0123】
【表4】
【0124】
表5に実施例14、実施例16、参考例3、比較例4及び比較例5で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。
実施例14のワニスは、実施例1と同様の溶質を含み溶媒組成比率を良溶媒:CHA:EtOH=20:30:50に変更したワニスである。
参考例3及び実施例16のワニスは、溶媒組成比率を良溶媒:CHA:EtOH=20:30:50に固定し、固形分を1.5wt%に固定し、ドーパントの種類を変更したワニスである。
比較例4及び比較例5のワニスは、ホストとしてポリマーを使用したワニスである。比較例4のワニスは有機溶媒系分散のワニスであり、比較例5のワニスは水系分散のワニスである。
【0125】
スプレー塗布時と基材着液時の粘度は、実施例14が7.2mPa・sから14.2mPa・s(2.0倍)、参考例3が4.4mPa・sから8.6mPa・s(2.0倍)、実施例16が4.1mPa・sから7.8mPa・s(1.9倍)と約2.0倍まで粘度を増加させることが可能であることが分かった。
スプレー塗布時と基材着液時の表面張力は、実施例14が30.1mN/mから35.1mN/m、参考例3が29.8mN/mから34.9mN/m、実施例16が29.2mN/mから34.5mN/mと変化し、表面張力をコントロールできることが分かった。表面張力のコントロールが可能であることは、基材の表面エネルギーに合わせて最適な液物性を選択することができる点が非常に有用である。
【0126】
スプレー塗布時と基材着液時の固形分は、実施例14が1.5wt%から3.0wt%(2.0倍)、参考例3が1.5wt%から3.0wt%(2.0倍)、実施例16が1.5wt%から3.0wt%(2.0倍)に増加し、濃縮できることが分かった。
また、実施例14、実施例16及び参考例3の膜厚分布は30±6nm以下であり、膜厚ムラが発光ムラに影響しない程度に抑制されていることが分かった。
一方、比較例4及び比較例5はスプレー塗布時と基材着液時の表面張力の粘度、表面張力が変化するものの(但し比較例5のスプレー塗布時と基材着液時の表面張力は誤差範囲)、膜厚分布において、比較例4が15±30nm、比較例5が10±30nmとなり、膜厚ムラが非常に大きいことが分かった。さらに、比較例4及び比較例5は成膜面のラフネスが非常に大きく、塗布ムラの他に異物に起因するゆず肌ムラ、基板中央付近の海島構造、基板エッジ部分のシュリンク等が確認された。
【0127】
【表5】
【0128】
表6に実施例1,17及び18並びに比較例2,6及び7で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。
各ワニスに含まれる高レベリング性貧溶媒は、実施例1及び比較例2がCHA、実施例17及び比較例6がプロピレングリコール(PG)、実施例18及び比較例7が2,3−ブタンジオール(2,3−BD)である。
ここで、比較例2,6及び7のワニスは、揮発性貧溶媒を含まないワニスである。
【0129】
スプレー塗布時と基材着液時の粘度は、実施例1が8.8mPa・sから17.6mPa・s(2.0倍)、実施例17が11.1mPa・sから30.6mPa・s(2.8倍)、実施例18が12.2mPa・sから44.0mPa・s(3.6倍)と変化し、2.0〜3.6倍まで粘度を増加させることが可能であることが分かった。高レベリング性貧溶媒の種類を変化させることで粘度にコントラストをつけることが可能であることが分かった。
一方、比較例2,6及び7のスプレー塗布時と基材着液時の粘度は、スプレー塗布時の粘度と変わらず、17.6mPa・s、30.6mPa・s、44.0mPa・sであった。
【0130】
スプレー塗布時と基材着液時の表面張力は、実施例1が29.6mN/mから33.8mN/m、実施例17が28.1mN/mから33.2mN/m、実施例18が28.6mN/mから33.5mN/mと変化し、表面張力をコントロールできることが分かった。表面張力のコントロールが可能であることは、基材の表面エネルギーに合わせて最適な液物性を選択することができる点が非常に有用である。高レベリング性貧溶媒の種類を変化させることで、基板着液時の表面張力にコントラストをつけることが可能であることが分かった。
一方、比較例2,6及び7のスプレー塗布時と基材着液時の表面張力は、スプレー塗布時の表面張力と変わらず、33.8mN/m、33.2mN/m、33.5mN/mであった。
【0131】
スプレー塗布時と基材着液時の固形分は、実施例1が1.5wt%から2.4wt%(1.6倍)、実施例17が1.5wt%から2.4wt%(1.6倍)、実施例18が1.5wt%から2.4wt%(1.6倍)と固形分が増加し、濃縮できることが分かった。
一方、比較例2,6及び7のスプレー塗布時と基材着液時の固形分は、スプレー塗布時の固形分と変わらず、2.4wt%、2.4wt%、2.4wt%であった。
また、実施例1,17及び18の膜厚分布は30±6nm程度であり、膜厚ムラが発光ムラに影響しない程度に抑制されていることが分かった。
さらに、成膜面観察の結果、実施例1,17及び18は一様に塗布ムラが確認されず、均一な成膜面であることが確認された。
一方、比較例6及び比較例7の膜厚分布は25±12nm、25±11nmとなり、膜厚ムラが非常に大きいことが分かった。
さらに、成膜面観察の結果、比較例2,6及び7は成膜面で塗布ムラが確認できた。
【0132】
【表6】
【0133】
表7に実施例1,19〜26及び比較例8〜10で調製した電荷輸送性ワニスのスプレー塗布時と着液時の粘度、表面張力、及び固形分測定の結果、並びにスプレー法によって成膜した電荷輸送性薄膜のITOベタ部分を目視観察した結果及び膜厚分布の結果を示す。
実施例1,19〜26の各ワニスに含まれる揮発性貧溶媒は、実施例1がイソブタノール(IBA)、実施例19がアセトン(ACE)、実施例20がエタノール(EtOH)、実施例21がメチルエチルケトン(MEK)、実施例22がイソプロピルアルコール(IPA)、実施例23がブタノール(BuOH)、実施例24が2−メチル−1−ペンタノール(2Me1PeOH)、実施例25がシクロヘキサノン(CHN)、実施例26がエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)である。
比較例8〜10の各ワニスでは、揮発性貧溶媒の代わりに、γ−ブチルラクトン(γ−BL)(比較例8)、フタル酸ジメチル(比較例9)、プロピレングリコール(比較例10)を使用した。
【0134】
スプレー塗布時と基材着液時の固形分は、実施例1,19〜26は濃縮が確認できたワニスであり、比較例8〜10は確認できなかったワニスである。
実施例1,19〜26の膜厚分布は30±6nm程度であり、膜厚ムラが発光ムラに影響しない程度に抑制されていることが分かった。
一方、比較例8〜10はそれぞれ30±18nm、30±19nm、30±15nmとなり、膜厚ムラが非常に大きいことが分かった。
さらに、成膜面観察の結果、実施例1,19〜26は一様に塗布ムラが確認されず、均一な成膜面を確認した。
一方、比較例8〜10は成膜面で塗布ムラが確認できた。
【0135】
【表7】
【0136】
表8に塗布プロセスを変更した時の膜厚分布及び成膜面観察の結果を示す。
実施例1はスプレー法、比較例11はスピンコート法、比較例12はオフセット印刷法によって実施例1のワニスを使用し、評価を行った。
比較例11のスピンコート法は膜厚分布が30±10nmとなり、成膜性は良好であるものの、膜厚ムラが大きい結果となった。この膜厚ムラは粘度が8.8mPa・s程度のワニスをスピンコート法で成膜すると構造物間での流動が生じることに起因すると考えられる。
また、比較例12のオフセット印刷法は膜厚分布が28±12nmとなり、膜厚ムラが大きく、成膜性も塗布ムラが観察された。粘度が8.8mPa・s程度であると、印刷法における最適粘度としては低く、APR版になじまず上手く転写されないことが考えられる。さらに、印刷法はAPR版が構造物に直接接触するため、印刷面のエッジ部分などの摩擦が発生し易い部分で微細な構造物が破壊されてしまうことも確認できた。
【0137】
【表8】
【0138】
[実施例27]
実施例1で作製した電荷輸送性薄膜を、真空蒸着装置内に導入し、α−NPD、Alq
3、LiF、及びAlを順次蒸着した。膜厚は、それぞれ40nm、60nm、0.5nm、100nmとして、それぞれ8×10
-4Pa以下の圧力となってから蒸着操作を行った。その際の蒸着レートはLiF以外の材料については0.3〜0.4nm/s、またLiFについては0.02〜0.04nm/sとした。一連の蒸着操作は全ての層を蒸着するまで真空下で行った。
【0139】
[比較例13]
比較例2の電荷輸送性ワニスを使用した以外は、実施例27と同様にして、OLED素子を作製し、特性を評価した。
表9に実施例27及び比較例13のOLED素子の特性、Ipを示す。OLED素子の特性は、発光開始電圧あるいは10mA/cm
2及び50mA/cm
2を閾値とした時の電圧、輝度、発光効率を示した。
なお、OLED素子の特性は、有機EL発光効率測定装置(EL1003、プレサイスゲージ社製)を使用して測定した。Ipは理研計器社製 光電子分光装置 AC−2を使用して測定した。
【0140】
【表9】
【0141】
表9のOLED素子特性において、実施例27のOLED素子と比較例13のOLED素子とを比較すると10mA/cm
2通電時の電圧は8.23Vと8.32V、輝度は714cd/m
2と689cd/m
2、発光効率は7.11cd/Aと3.32cd/Aとなり、50mA/cm
2通電時の電圧は10.27Vと10.71V、輝度は4005cd/m
2と3155cd/m
2、発光効率は8.00cd/Aと4.44cd/Aとなり、全ての特性で実施例27のOLED素子が比較例13のOLED素子を上回る結果となった。
また、実施例27のOLED素子の発光面は面発光が均一であったが、比較例13のOLED素子は面発光のエッジ部分が明るく、中央部が暗いコントラストがついて不均一発光であった。
【0142】
表9の結果は構造物間の膜厚ムラに起因していると考えられ、膜厚分布が30±5nmの実施例27のOLED素子と30±10nmの比較例13のOLED素子との差である。特に、比較例13のOLED素子は膜厚が薄い部分の発光が明るくなる代わりに、膜厚が厚い部分の発光が暗くなっていたことから、発光の局在化が生じ、面発光としての効率が低下したものと推測される。また、不均一発光であった比較例13のOLED素子は電荷の偏りが生じていることが容易に判断できることから、短寿命となり、短絡特性が低下することは自明である。
したがって、本発明の電荷輸送性ワニスを用いることにより、EL素子の発光開始電圧の低下、電流効率の向上、素子の長寿命化が達成され、安価で生産効率の高いEL素子を歩留まり良く、作製することが可能である。