(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
難生物分解性有機物の処理方法であるフェントン酸化処理の反応機構は、鉄薬剤と過酸化水素の反応により強力な酸化剤であるOHラジカルを生成させて有機物を酸化分解するものである。フェントン酸化処理は、添加した鉄薬剤を除去する必要があるため、酸化工程とその後の凝集工程の二つの工程からなる処理である。
【0003】
フェントン酸化処理は、触媒として用いる鉄薬剤の添加量が多大となり、薬品コストに響いてくるという第1の問題があった。また、鉄汚泥の発生量が非常に多く、その汚泥脱水に伴う脱水費用や汚泥運搬・処分費用が嵩むという第2の問題があった。
【0004】
従来、第1の問題を解決するために、鉄薬剤の添加量を少量とし、pH1.0〜2.0にて3〜8時間反応させるフェントン酸化処理を行い、第一鉄塩と有機物の錯塩を形成させることでスラッジを生成させずに生物処理するという提案(特許文献1)がなされている。しかし、本発明者らの検討によれば、pH1.0〜2.0ではCOD分解速度が非常に遅く、また、生物処理後には最終的にスラッジが生成することになる。
【0005】
また、第2の問題を解決するために、排水の凝集処理に当たり、凝集分離汚泥の一部にアルカリ剤を添加して得られたアルカリ混合汚泥を、排水に凝集剤として添加された金属塩の例えば2〜50倍量の金属量となるように凝集反応槽に返送することで、凝集剤の必要量を低減すると共に、発生汚泥量の低減、汚泥脱水性の向上を図る提案がなされている(特許文献2,3)。しかしながら、本発明者らの検討により、この方法をフェントン酸化処理に適用して鉄薬剤の添加量を低減した場合、汚泥脱水性は改善されないことが判明した。
さらに、酸化処理水に2価の鉄薬剤を添加し、2価と3価の鉄の混合汚泥(グリーンラストと鉄フェライト)とし、分離汚泥を返送するという提案がされている(特許文献4)。しかし、この方法では、2価鉄と全鉄の比が0.4〜0.8となる汚泥を生成させる必要があり、2価の鉄薬剤添加量が多く、薬品コストが過大である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明で処理する難生物分解性有機物含有水とは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フェノール類、有機塩素化合物、環境ホルモン、界面活性剤、生物代謝物等の難生物分解性有機物を含む水であり、通常その有機物含有量はCOD
Cr濃度で50〜1,000mg/L程度である。また、これらの難生物分解性有機物含有水のpHは1〜9程度である。
【0020】
本発明においては、このような難生物分解性有機物含有水を原水として、フェントン酸化処理するに当たり、所定量の過酸化水素と鉄薬剤を添加すると共に必要に応じて硫酸等の酸を添加してpH調整して所定のpH条件下にフェントン酸化反応により難生物分解性有機物を酸化分解し、酸化処理水を中和処理して不溶化物を生成させ、不溶化物を固液分離する処理において、固液分離で得られた分離汚泥の一部を、この汚泥にアルカリ剤を添加混合したアルカリ混合汚泥として中和処理における酸化処理水に添加する。
【0021】
前述の通り、フェントン酸化処理は、酸化工程と凝集工程とからなる。
酸化工程におけるフェントン反応は、過酸化水素と2価鉄との反応によりOHラジカルを生成させるものであるが、鉄は以下の反応式1に示すように、触媒的に2価と3価を繰り返して利用されるため、鉄は過酸化水素に対し当モル量を添加する必要はない。
<反応式1>
Fe(II)+H
2O
2→Fe(III)+OH
−+・OH
Fe(III)+H
2O
2→Fe(II)+H
++・OOH
Fe(III)+・OOH→Fe(II)+H
++O
2
【0022】
鉄は触媒として働くため、鉄量は反応時間に影響する。従来においては、一般に反応時間15〜60分ほどで処理できるように鉄量が決められてきた。しかし、本発明者らが検討を行ったところ、60分以内の反応時間で処理できるように鉄を添加すると、処理水のCOD濃度が悪化することが分かった。これは鉄濃度が高いために、過酸化水素との反応が急速に進むため、以下の反応式2に示すような過酸化水素の自己分解が進むためと考えられる。
<反応式2>
2Fe(II)+2H
2O
2→2Fe(III)+2OH
−+2・OH
・OH+・OH→H
2O
2
【0023】
このようなことから、本発明者らは鉄添加量を多く設定して反応時間を短くすることは好ましくないと判断した。
【0024】
本発明では、鉄薬剤の添加量を過酸化水素添加量の0.005〜0.2モル倍量と、従来よりも少なくすることで、過酸化水素の自己分解を抑制する。この結果、過酸化水素添加量も従来より低減することができる。また、鉄薬剤の添加量を少なくしたことで反応時間は1時間以上、好ましくは1〜3時間とする。鉄薬剤添加量は、特に過酸化水素添加量の0.02〜0.1モル倍量とすることが好ましい。
【0025】
原水に添加する鉄薬剤としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄等の第一鉄(Fe(II))化合物、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の第二鉄(Fe(III))化合物などの1種又は2種以上を用いることができる。即ち、前記反応式1のように、酸化工程において、鉄は2価と3価を連続的に繰り返すため、本発明において、添加する鉄薬剤はFe(II)化合物、Fe(III)化合物のどちらも可能である。ただし、酸化分解に使用されるOHラジカルは、2価の鉄との反応で生成するため、好ましくは2価の鉄化合物である。
【0026】
過酸化水素の添加量は、原水のCOD
Crに対して0.5〜3モル倍、特に0.7〜2モル倍とすることが好ましい。
また、酸化工程におけるpHは2〜4とする。pHが2未満では鉄の溶解量は大きいものの、過酸化水素との反応性が悪く、4を超えると鉄が析出する。好ましくは、酸化工程後の固液分離工程の入口にて、鉄はイオン状態であることが必要であるため、反応時間と鉄濃度、水温、原水組成により最適pHを決定する。
【0027】
上記の酸化工程で得られた酸化処理水に、アルカリ剤を添加して不溶化処理し、不溶化物を固液分離する。本発明ではこの固液分離で得られた分離汚泥の一部にアルカリ剤を添加してアルカリ混合汚泥とし、アルカリ混合汚泥を酸化処理水に添加して不溶化処理する。このように、酸化処理水にアルカリ混合汚泥を添加することにより、酸化処理水中の鉄イオンは、アルカリ混合汚泥の汚泥表面に吸着している水酸化物と反応して汚泥表面で析出するため、高密度で脱水性に優れた汚泥が得られるようになる。
【0028】
前述の通り、従来、分離汚泥の一部を返送する処理は、特許文献2,3に記載されるように公知の処理であるが、鉄濃度の低いフェントン酸化処理水については、汚泥返送法を適用しても汚泥の脱水性は改善されないことが判明した。
即ち、特許文献2,3における汚泥返送量は、返送される汚泥中の金属量が、凝集剤として添加される金属量の2〜50倍、好ましくは15〜40倍としているが、このような条件では、フェントン酸化処理においては汚泥は高密度化しないか或いは固液分離が不安定であった。
【0029】
本発明者らの検討により、酸化処理水に添加する汚泥の固形分量を、酸化処理水とアルカリ剤が反応して生成する不溶化物の量(酸化処理水にアルカリ剤のみを添加して不溶化物を生成させた場合に生成する不溶化物の量)の20〜500倍量、好ましくは50〜200倍量とすることで、凝集フロックの大きさが粗大で、脱水性に優れた汚泥となり、固液分離を安定化できることが判明した。この汚泥返送量が20倍量よりも少ないと、返送汚泥量が少ないために、汚泥表面での鉄イオンの析出が進まず、汚泥が高密度化しない傾向にあり、500倍量よりも多いと、汚泥濃度が高いために、汚泥が肥大化せず、分散状態になり、固液分離の沈殿槽からリークしやすくなる。
【0030】
本発明における不溶化工程は、予備中和と中和の2段階処理で行うことが好ましい。即ち、前段の中和処理槽と後段の中和槽とで行うことが好ましい。
酸化処理水には有機酸などの酸成分が含まれているため、一段の中和処理では、鉄が十分に析出せずに、一部溶解する場合がある。このため、中和を予備中和と中和の2段階で行うことが好ましい。なお、この2段階中和において、アルカリ混合汚泥は予備中和槽に添加してもよく、中和槽に添加してもよい。また、予備中和槽と中和槽の両方に添加してもよく、アルカリ剤を混合していない汚泥をそのまま添加することもできる。例えば、以下のような中和処理形態を採用することができる。
(1)予備中和槽に汚泥とアルカリ剤を添加し、中和槽にアルカリ混合汚泥を添加する。
(2)予備中和槽にアルカリ混合汚泥を添加し、中和槽に汚泥とアルカリ剤を添加する。
(3)予備中和槽にアルカリ混合汚泥を添加し、中和槽にアルカリ剤を添加する。
(4)予備中和槽と中和槽にそれぞれアルカリ混合汚泥を添加する。
【0031】
これらのうち、特に上記(4)のように、予備中和槽と中和槽とのそれぞれにアルカリ混合汚泥を添加することにより、より高密度で脱水性に優れた汚泥を得ることができる。
【0032】
このように分離汚泥の返送を行うにあたり、汚泥の返送量は、前述の通り、酸化処理水に添加する返送汚泥の固形分量として、酸化処理水とアルカリ剤との反応で生成する不溶化物量の20〜500倍量とすることが好ましい。
なお、以下において、酸化処理水とアルカリ剤との反応で生成する不溶化物量に対する返送汚泥の固形分量の割合を「汚泥返送比」と称す。この汚泥返送比が20倍以上とすることにより、固液分離で得られる汚泥を十分に高密度化して脱水性に優れた汚泥を得ることができる。ただし、汚泥返送比を過度に高くすると処理効率が低下し、また、予備中和槽ないしは中和槽として大容量の槽が必要となるため、汚泥返送比は500倍以下とすることが好ましい。処理効率と汚泥の高密度化の点から、汚泥返送比は特に50〜200倍とすることが好ましい。
【0033】
予備中和槽と中和槽とのそれぞれに返送汚泥又は返送汚泥にアルカリ剤を混合したアルカリ混合汚泥を添加する場合、予備中和槽及び中和槽に添加される汚泥の固形分量の割合については特に制限はないが、返送汚泥は少なくとも予備中和槽に添加されることが好ましく、予備中和槽と中和槽の両方に返送汚泥及び/又はアルカリ混合汚泥を添加する場合は、返送される汚泥(アルカリ混合汚泥の汚泥も含む)のうち、20〜80%を予備中和槽に、残部を中和槽に添加することが好ましい。
【0034】
上記のような好適な汚泥返送比で処理を行った場合、通常、分離汚泥、即ち返送される汚泥の濃度(固形分濃度)は10〜30%の高濃度となる。
なお、汚泥や予備中和槽、中和槽に添加するアルカリ剤としては、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、消石灰などを用いることができる。
【0035】
予備中和槽における処理は、pH3.5〜4.5、特に3.8〜4.2で行うことが好ましい。また、予備中和槽の滞留時間は5〜20分程度とすることが好ましい。
【0036】
予備中和槽では、酸化工程で残留した過酸化水素も分解される。過酸化水素は水酸化物と鉄により分解されるため(参考文献1:紙パ技協誌 第49巻第4号、下記反応式3)、本発明においては汚泥の返送比を20〜500倍と高くとることで、汚泥に含まれる鉄と汚泥の表面に吸着された高濃度のアルカリ剤により、過酸化水素が分解されると考えられる。なお、過酸化水素の分解を促進するために、補助的に重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を予備中和槽もしくは中和槽に添加することもできる。
【0038】
また、予備中和後の中和槽における処理は、pH5〜12で行うことが好ましい。前述の如く、予備中和槽では鉄が十分に析出せず、一部溶解する場合があるので、その場合は中和槽に分離汚泥もしくはアルカリ混合汚泥を添加して晶析化を促進させることができる。排水に鉄以外の金属が含まれる場合も、排水中の金属成分により最適なpHを選択して分離汚泥もしくはアルカリ混合汚泥を添加することができる。鉄が酸化処理水中の金属の主な構成成分の場合は、中和槽中における処理は好ましくはpH6.0〜8.5で行われる。
この中和槽の滞留時間は5〜20分程度とすることが好ましい。
【0039】
上記の中和処理水は次いで凝集剤を添加して凝集処理し、凝集フロックを形成させる。
凝集剤としては、高分子凝集剤が用いられ、原水の性状に応じて、アニオン系ポリマー、カチオン系ポリマー、両性ポリマー、及びノニオン系ポリマーの中から1種を単独であるいは複数種を組み合わせて用いることができるが、好ましくはアニオン系ポリマーである。これらの凝集剤の添加量は通常1〜5mg/Lである。
【0040】
凝集処理水は、次いで固液分離して処理水と汚泥とを分離する。固液分離手段としては固液分離を行えるものであればよく、沈殿槽、膜分離装置、濾過器などを適用することができる。分離した汚泥の一部は、予備中和槽、もしくは中和槽、もしくはアルカリ混合槽に送られ、残部は余剰汚泥として系外へ排出される。
【0041】
アルカリ混合槽では、汚泥をアルカリ剤と混合してアルカリ混合汚泥とする。アルカリ混合汚泥を予備中和槽もしくは中和槽へ移送するには、アルカリ混合槽から連続的に越流させればよい。アルカリ混合槽へのアルカリ剤の添加量は、予備中和槽もしくは中和槽のpH変動に基づいて制御される。
【0042】
図1〜4は、本発明の難生物分解性有機物含有水の処理装置の実施の形態の一例を示す系統図であり、
図1〜4において、1はフェントン酸化反応槽、2は予備中和槽、3は中和槽、4は凝集槽、5は沈殿槽、6,6A,6Bはアルカリ混合槽であり、いずれの装置においても、フェントン酸化反応槽1にて原水に過酸化水素と硫酸第一鉄(FeSO
4)等の鉄薬剤と必要に応じて硫酸(H
2O
2)等の酸が添加されて、pH2〜4の条件下に1時間以上フェントン酸化が行われ、フェントン酸化反応槽1の酸化処理水は次いで予備中和槽2、中和槽3で順次中和処理され、中和処理水は凝集槽4で高分子凝集剤(ポリマー)が添加されて凝集処理され、凝集処理水は沈殿槽5で固液分離される。分離汚泥の一部は予備中和槽2、中和槽3、アルカリ混合槽6,6A,6Bのいずれかに送給され、アルカリ混合汚泥又は分離汚泥が予備中和槽2及び/又は中和槽3に添加される。
【0043】
図1は、前記(1)の汚泥返送形態を示すものであり、分離汚泥の一部は予備中和槽2に、他の一部はアルカリ混合槽6に移送され、アルカリ混合槽6でNaOH等のアルカリ剤が添加混合されたアルカリ混合汚泥は中和槽3に添加される。
図2は前記(2)の汚泥返送形態を示すものであり、分離汚泥の一部は中和槽3に、他の一部はアルカリ混合槽6に移送され、アルカリ混合槽6でNaOH等のアルカリ剤が添加混合されたアルカリ混合汚泥は予備中和槽1に添加される。
図3は、前記(3)の汚泥返送形態を示すものであり、分離汚泥の一部はアルカリ混合槽6に移送され、アルカリ混合槽6でアルカリ剤が添加混合されたアルカリ混合汚泥は予備中和槽1に添加され、中和槽3にはNaOH等のアルカリ剤が添加される。
図4は前記(4)の汚泥返送形態を示すものであり、分離汚泥の一部はアルカリ混合槽6Aに、他の一部はアルカリ混合槽6Bに移送され、アルカリ混合槽6A,6BでそれぞれNaOH等のアルカリ剤が添加混合されたアルカリ混合汚泥は、予備中和槽2,中和槽3にそれぞれ添加される。
【0044】
このように、本発明では、フェントン酸化反応槽に添加する鉄薬剤量とpH条件、反応時間を制御すると共に、固液分離で得られた分離汚泥の一部をアルカリ混合汚泥としてフェントン酸化処理水に添加して中和処理を行うことにより、鉄薬剤の必要量を減らすと同時に汚泥生成量を低減し、濃縮された脱水性の高い汚泥を得、さらにアルカリ混合汚泥を添加することで、フェントン酸化処理で残存する過酸化水素の分解も可能となり、効率的な処理を行える。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下の実施例及び比較例において、原水の難生物分解性有機物含有水としては、以下のようにして調製した模擬原水を用いて処理を行った。
<模擬原水の調製>
イソプロピルアルコール(IPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)をそれぞれ100mg/L含む合成排水を生物処理した後、凝集処理、逆浸透膜分離処理して得られた濃縮水をさらに蒸発濃縮することで、COD
Cr600mg/Lの難生物分解性有機物含有水を調製した。
【0046】
また、以下の実施例、比較例及び参考例で得られた処理水のCOD
Crは、残留した過酸化水素を重亜硫酸ナトリウムにて分解した後測定した。また、処理水の過酸化水素濃度は、栗田工業(株)製過酸化水素試験紙「チェクルKS」(測定下限値3mg/L)にて測定した。
【0047】
[実施例1]
図1の装置で通水量1L/hrの連続通水処理を行った。
フェントン酸化反応槽1では、過酸化水素を1500mg/L、硫酸第一鉄を100mg/L as Feの添加量で添加し、pH3、滞留時間2時間、25℃の条件とした([Fe]/[H
2O
2]=0.04)。
次に、予備中和槽2で沈殿槽5の分離汚泥を返送して添加すると共に、pHが4.2±0.1となるようにNaOHを添加した。予備中和槽2の滞留時間は0.2時間とした。
次に、中和槽3で、pHが8.0±0.1となるようにアルカリ混合槽6からのアルカリ混合汚泥を添加した。この中和槽の滞留時間は0.4時間とした。
このときの返送汚泥濃度は12%であった。返送汚泥比は80とし、予備中和槽2とアルカリ混合槽6に返送した。即ち、酸化処理水から発生するSS濃度はFe(OH)
3換算で190mg/Lであるため、返送比80とし、汚泥返送量127mL/hr(汚泥濃度12%)で汚泥を返送した。なお、返送汚泥のうち、70%が予備中和槽2へ、30%が中和槽3に添加されるように調整した。
凝集槽4では、高分子凝集剤の栗田工業(株)製アニオン系ポリマー「PA331」を3mg/L添加して、100rpmで緩速撹拌を行い、滞留時間0.1時間で凝集処理を行った。
次の沈殿槽5では凝集処理で生成した粗大フロックを沈降分離して、水槽内のトラフを越流する上澄水を実施例1の処理水とした。
この操作を2週間行った後の処理水を分析した。結果を表1に示す。また、沈殿槽5から排出される汚泥を脱水処理した脱水汚泥の含水率を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
図2の装置で通水量1L/hrの連続通水とし、実施例1と同様の反応時間、薬注条件、汚泥返送条件で処理水を得た。処理水の分析結果と脱水汚泥の含水率を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
図3の装置で通水量1L/hrの連続通水とし、実施例1と同様の反応時間、薬注条件、汚泥返送条件で処理水を得た。ただし、返送汚泥はアルカリ混合汚泥としてその全量を予備中和槽2に添加した。処理水の分析結果と脱水汚泥の含水率を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
図4の装置で通水量1L/hrの連続通水とし、実施例1と同様の反応時間、薬注条件、汚泥返送条件で処理水を得た。処理水の分析結果と脱水汚泥の含水率を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
フェントン酸化と凝集沈殿処理による試験を実施した。
原水をpH3の条件下で、過酸化水素1500mg/Lと、硫酸第一鉄200mg/L as Feを添加して25℃にて0.5時間反応させた後、pH9に調整して10分撹拌し、次いで栗田工業(株)製アニオン系ポリマー「PA331」を3mg/L添加し、生成した粗大フロックを沈降分離して、上澄水を比較例1の処理水とした。
【0052】
[比較例2]
フェントン酸化における硫酸第一鉄添加量を100mg/L as Feとし、反応時間を2時間としたこと以外は、比較例1と同様にして試験を実施し、沈降分離で得られた上澄水を比較例2の処理水とした。処理水の分析結果と脱水汚泥の含水率を表1に示す。
【0053】
[参考例1]
汚泥返送比を20とした以外は実施例1と同条件で試験を実施し、沈殿槽5の上澄水を参考例1の処理水とした。このときの返送汚泥濃度は5.5%であった。即ち、酸化処理水から発生するSS濃度はFe(OH)
3換算で190mg/Lであるため、返送比20とし、汚泥返送量69mL/hr(汚泥濃度5.5%)で汚泥を返送した。処理水の分析結果と脱水汚泥の含水率を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1より、次のことが分かる。
比較例1では鉄薬剤添加量が200mg−Fe/Lと実施例1〜4に比べて2倍あるためにフェントン酸化反応で過酸化水素が自己分解を起こしており、処理水COD
Crが高く、汚泥の脱水性も悪い。また、比較例2は実施例1と同等の鉄薬剤添加量であるため、処理水COD
Cr濃度は同等であるが、汚泥が高密度化していないために、脱水汚泥の含水率が79%と高い。参考例1は、実施例1と同じく高密度化のための汚泥返送を行っており、処理水COD
Crは実施例1に比べて若干高い程度であるが、汚泥返送比が20と低いために、汚泥の高密度化が不十分であり、脱水汚泥の含水率が68%と高い。また汚泥返送比が低く、アルカリ混合汚泥と過酸化水素との反応が不足しているために、処理水中に過酸化水素が残留している。
これに対して、実施例1〜4では脱水汚泥の含水率が51〜56%と低く、特に予備中和槽と中和槽にそれぞれアルカリ混合汚泥を添加した実施例4では最も含水率が低く、高密度な汚泥が得られる。
以上の結果から、本発明に従って、フェントン酸化反応を少ない鉄薬剤の添加量で行い、固液分離して得られた汚泥にアルカリ剤を添加してアルカリ混合汚泥の返送を行うことで、良好な水質を得ると共に、鉄薬剤添加量の低減、汚泥発生量の低減と、汚泥脱水性の向上、更には残留過酸化水素の分解除去を達成することができることが分かる。