【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりがない限り、「%」は「質量%」を表わす。
なお、実施例4及び10は参考例である。
【0041】
[走査電子顕微鏡(SEM)によるα−アルミナ微粒子の形状分析]
試料を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
【0042】
[STEM−EDSによるα−アルミナの組成分析]
断面として作製された試料を炭素蒸着された銅グリッドに乗せ、それを株式会社トプコン、ノーランインスツルメント社製EM−002B、VOYAGER M3055高分解能電子顕微鏡にて組成分析を行った。
【0043】
[X線回折(XRD)法による分析]
作製した試料を測定試料用ホルダーにのせ、それを理学社製広角X線回折装置[Rint−Ultma]にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲5〜80°の条件で測定を行った。
【0044】
[BETによるα−アルミナの比表面積測定]
比表面積はマイクロメリティクス社製Tris star 3000型装置にて、窒素ガス吸着/脱着法で測定した。また、ポアサイズ分布はポア体積分率対ポアサイズのプロットから見積もった。
【0045】
[
27Al−NMR測定によるα−アルミナ構造体の化学結合評価]
日本電子JNM-ECA600を用いて固体
27Al single pulse non−decoupling CNMR測定を行った。ケミカルシフトは装置の自動リファレンス設定で決定した。
【0046】
[蛍光X線によるα−アルミナ微粒子の組成分析]
試料約100mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて蛍光X線測定(ZSX100e/理学電機工業株式会社)を行った。
【0047】
[焼成]
焼成は、株式会社アサヒ理化製作所製、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型焼成炉装置にて行った。
【0048】
実施例1<γ−アルミナから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
γ−アルミナ(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナ、平均粒径45μm、BET比表面積137m
2/g)の8gと酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2gとを乳鉢で混合し、前
駆体γ−アルミナと酸化モリブデンとの混合物10gを得た。得られた混合物を電気炉にて1000℃で1時間焼成した。酸化モリブデンの殆どが昇華し、7.6gの粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ、粒径が2〜3μmの多面体であることを確認した(
図1)。
【0049】
前記で得られた粉末を用いてXRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外の結晶系ピークは観察されなかった(
図2)。また、固体
27Al NMR測定により、15ppmから19ppmまでの範囲内にα結晶の6配位アルミニウム由来のピークしか観察されなかった。これらは、α結晶化率100%のα−アルミナが形成している事を示唆している。
【0050】
また、BET測定により、前駆体γ−アルミナの比表面積が137m
2/gであるのに対して、前記で得られた焼成後の粉末のBET比表面積は約0.37m
2/gであることが分かった。これは粉末が緻密な結晶構造であることを示している。
【0051】
また、得られた粉末中に残存している酸化モリブデンの分析を行った。STEM−EDS分析により、酸化モリブデンがα−アルミナ結晶体の内部と表面に同時に存在していることが分かった。さらに、蛍光X線定量評価データから、粉末の中の酸化モリブデンの量は1.6質量%であることを確認した。
【0052】
実施例2<γ−アルミナから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
実施例1で作製した前駆体γ−アルミナと酸化モリブデンとの混合物の1gを1000℃で5分間焼成し、収量が0.80gの粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末における表面には、発達した平坦な結晶面は非常に少なく、曲面に近い結晶面を持ち、粒径が2〜5μmの多面体である事を確認した(
図3)。さらに、XRD測定により、α結晶化率が100%である事を確認した。
【0053】
実施例3<γ−アルミナから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm,BET比表面積206m
2/g)の0.5gと酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の0.5gとを乳鉢で混合した。得られた混合物を1000℃で1時間焼成し、粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ粒径が20〜23μmの多面体である事を確認した(
図4)。さらに、XRD測定により、α結晶化率が100%である事を確認した。
【0054】
実施例4<α−アルミナ表面の酸化モリブデンの除去>
実施例1で得られた粉末の0.2gを10%アンモニア水の5mLに分散し、分散溶液を室温(25〜30℃)で3時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行う事で、0.19gの粉末を得た。得られた粉末のXPS測定を行った結果、試料表面に酸化モリブデンが検出されなかった。これはアンモニア洗浄により、α−アルミナ微粒子表面に存在していた酸化モリブデンが完全に除去されたことを示している。
【0055】
実施例5<α−アルミナから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
α−アルミナ(和光純薬工業株式会社製、一次粒径200−500nm、α結晶化率100%)の0.24gと酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の0.06gとを乳鉢で混合した。得られた混合物を1000℃で1時間焼成し、粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末の一次粒子は球に近い多面体形状、粒径が0.5〜1μmの微粒子であり(
図5)、XRD測定によりα結晶化率の100%からなるα−アルミナであることを確認した。
【0056】
実施例6<水酸化アルミニウムから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
水酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製、平均粒径0.2〜1.0μm)の0.24gと酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の0.06gとを乳鉢で混合した。得られた混合物を1000℃で1時間焼成し、粉末0.16gを得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ粒径が2〜3μmの多面体である事を確認した(
図6)。さらに、XRD測定でα結晶化率が100%であるα−アルミナであることを確認した。
【0057】
実施例7<塩化アルミニウムから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
塩化アルミニウム(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)の0.8gと酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の0.2gとを乳鉢で混合した。得られた混合物を1000℃で1時間焼成し、粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ粒径が2〜10μmの多面体である事を確認した(
図7)。さらに、XRD測定により、α結晶化率が100%であるα−アルミナであることを確認した。
【0058】
実施例8<γ−アルミナから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の0.1gを坩堝のふたの中心に置き、次に、γ−アルミナ(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナ、平均粒径45μm、BET比表面積137m2/g)の0.4gを酸化モリブデンに触れない様に、その周りに配置した。そこに坩堝をかぶせ、通常とは逆の逆さに向けた状態で、1000℃で1時間焼成した。酸化モリブデンが殆ど昇華し、0.37gの粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ粒径が2〜6μmの多面体であることを確認した(
図8)。
【0059】
比較例1<γ−アルミナのみの焼成>
γ−アルミナ(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナ、平均粒径45μm、BET比表面積137m
2/g)の0.2gを用いて、実施例1と同様の条件で焼成を行った。SEM観察により、焼成後に得られた粉末の形状(
図9(a))は、焼成前のアルミナの形状(
図9(b))から変化は見られなかった。また、XRD測定により、焼成後に得られた粉末が、焼成前と同じくγ結晶であることを確認した。触媒として機能をする酸化モリブデンが存在しないために、[001]面以外の結晶面を主結晶面とした、球に近い多面体α−アルミナは形成されないことが確認できた。
【0060】
実施例9<γ−アルミナからの多面体α−アルミナ微粒子の製造>
モリブデン酸アンモニウムの4水和物(和光純薬工業株式会社製)の0.1gとγ−アルミナ(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナ、平均粒径45μm、BET比表面積137m
2/g)の0.4gを乳鉢で混合した。得られた混合物を1000℃で1時間焼成し、粉末を得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ粒径が2〜5μmである多面体であることを確認した。さらに、XRD測定により、α結晶化率が100%であるα−アルミナであることを確認した。
【0061】
実施例10<γ−アルミナから多面体α−アルミナ微粒子の製造>
γ−アルミナ(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナ、平均粒径45μm、BET比表面積137m
2/g)0.4gとメタバナジウム酸アンモニウムの0.1gとを乳鉢で混合した。得られた混合物を1000℃で3時間焼成することで、粉末0.42gを得た。SEM観察により、得られた粉末は[001]面以外の結晶面を主結晶面とし、[001]面よりも大きな面積である結晶面を持つ粒径が1〜3μmである球に近い多面体であることを確認した。さらに、XRD測定により、α結晶化率が100%であるα−アルミナであることを確認した。