【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、以下の実施例において、pH測定は(株)堀場製作所製ツインpHメーターを使用した。
【0032】
[実施例1]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.0g、水 22.7g)とを混合してpH 8.8に調整した溶液を、6質量%塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛 6.8g、水 100.0g、pH 5.6)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは8.8であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をメタノール 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてメタノールを留去し、120℃で6時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM(走査型顕微鏡)像を
図1に示す。
【0033】
[実施例2]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.2g、水 40.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 3.7g、水 20.7g)とを混合してpH 8.8に調整した溶液を、8質量%酢酸亜鉛水溶液(酢酸亜鉛二水和物 10.0g、水 90.0g、pH 6.1)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは6.2であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、120℃で6時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図2に示す。
【0034】
[実施例3]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.0g、水 22.7g)とを混合してpH 8.8に調整した溶液を、6質量%塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛 6.8g、水 100.0g、pH 5.6)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは8.8であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をエタノール 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてエタノールを留去し、120℃で6時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図3に示す。
【0035】
[実施例4]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.2g、水 40.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 3.7g、水 20.7g)とを混合してpH 8.8に調整した溶液を、7質量%塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛 6.3g、水 90.0g、pH 5.6)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは8.8であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、120℃で6時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図4に示す。
【0036】
[実施例5]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.2g、水 40.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 3.7g、水 20.7g)とを混合してpH 8.8に調整した溶液を、6質量%塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛 6.3g、水 100.0g、pH 5.6)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは8.8であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、40℃、12時間の減圧乾燥により水を留去してから、120℃で6時間乾燥をおこなった。なお、減圧乾燥の終点は、乾品の熱重量分析((株)リガク製 Thermo Plus、昇温速度:10℃/分)を行い、水分の蒸発による重量減少が結晶水相当になっていることで確認した。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図5に示す。
【0037】
[実施例6]
減圧乾燥の温度を50℃に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行った。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図6に示す。
【0038】
[実施例7]
減圧乾燥の温度を60℃に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行った。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図7に示す。
【0039】
[比較例1]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.2g、水 40.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 3.7g、水 20.7g)とを混合してpH 8.8に調整した溶液を、8質量%酢酸亜鉛水溶液(酢酸亜鉛二水和物 10.0g、水 90.0g、pH 6.1)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは6.3であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、120℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図8に示す。
【0040】
[比較例2]
8質量%酢酸亜鉛水溶液(酢酸亜鉛二水和物 10.0g、水 90.0g、pH 6.3)に15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.2g、水 40.8g、pH 0.5)を撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは3.1であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、120℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図9に示す。
【0041】
[比較例3]
8質量%酢酸亜鉛水溶液(酢酸亜鉛二水和物 10.0g、水 90.0g、pH 6.3)に15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.2g、水 40.8g、pH 0.5)を撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸亜鉛を析出させた。このときの懸濁液のpHは2.8であった。その後15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 3.7g、水 20.7g)を撹拌下で滴下し、pH 6.8に調整した。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水300mLに再分散させ再度濾過し、れを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン300mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、120℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図10に示す。
【0042】
なお、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例3において、フェニルホスホン酸亜鉛が析出した(比較例3は水酸化ナトリウム水溶液にて中和後の)30分後の反応液を回収し、反応液中におけるフェニルホスホン酸亜鉛の平均粒径を測定した。平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定機(マルバーン社製「MasterSizer 2000」)に投入後、装置内で1,500rpm、超音波レベル:100の条件下で1分毎に粒度を測定し、最小となった値を採用した。ここでいう平均粒径とはMieの理論によって導き出される分散媒中粒子のd50値(メディアン径)のことを指す。
また、乾燥後のフェニルホスホン酸亜鉛の粉末粒子の平均粒径については、乾品のSEM(走査型顕微鏡)像より50個の粒子を無作為抽出し、粒子長軸方向の長さの平均を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、実施例1乃至実施例7の手順にて作製したフェニルホスホン酸亜鉛は、乾燥後も平均粒径が0.14〜0.24μmの微粒子の形態を得ることができた。
一方、洗浄溶媒を水のみとし、有機溶媒置換を行わなかった比較例1は、フェニルホスホン酸亜鉛析出時には微粒子の形態であったが、乾燥後には0.54μmと粒子が成長する結果となった。
さらに、塩基未使用の比較例2及び塩析出後に塩基を使用した比較例3は、反応液中で粒径が大きく成長し、乾燥後も0.5μmを超える粒径となった。
【0045】
[実施例8及び比較例4:結晶化温度及び結晶化時間の評価]
ポリ乳酸樹脂(三井化学(株)製、商品名:LACEA−H100)100質量部に対して、上記実施例4で得られたフェニルホスホン酸亜鉛(乾品)、又は日産化学工業(株)製フェニルホスホン酸亜鉛(商品名:エコプロモート、平均粒径:2〜3μm)を1質量部加え、(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、185℃にて5分間溶融混練した。
その後、夫々の試料について、パーキンエルマー社製 示差走査熱量測定(DSC)装置「Diamond DSC」を用い、以下の手順にて結晶化温度及び結晶化時間を評価した。得られた結果を表2に示す。
1)結晶化温度:試料約5mgを10℃/分で200℃まで昇温後、5分間保持し溶融させた後、5℃/分で30℃まで冷却した。冷却中に生じたポリ乳酸樹脂の結晶化による発熱がピークに達した温度を結晶化温度とした。
2)結晶化時間:試料約5mgを10℃/分で200℃まで昇温後、5分間保持し溶融させた後、100℃/分で110℃まで急速冷却し、保持した。その後生ずるポリ乳酸樹脂の結晶化による発熱がピークに達した時間を結晶化時間とした。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示す通り、フェニルホスホン酸亜鉛製品(エコプロモート)と比べて実施例4で得られたフェニルホスホン酸亜鉛は結晶化温度が高く、また等温結晶化時の誘導時間も短く、本ホスホン酸金属塩微粒子が結晶核剤として優れた性能を示すことが確認された。
【0048】
[実施例9]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.8g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.0g、水 22.7g)とを混合してpH 8.7に調整した溶液を、8質量%塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム二水和物 7.4g、水 66.2g)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは7.1であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、200℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図11に示す。
【0049】
[実施例10]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.9g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.0g、水 22.7g)とを混合してpH 9.4に調整した溶液を、9質量%酢酸カルシウム水溶液(酢酸カルシウム一水和物 8.8g、水 79.3g)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは8.6であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、200℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図12に示す。
【0050】
[実施例11]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.9g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.2g、水 23.8g)とを混合してpH 12.4に調整した溶液を、8質量%塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム二水和物 7.4g、水 66.2g)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは11.5であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、40℃、12時間の減圧乾燥により水を留去してから、200℃で12時間乾燥をおこなった。なお、減圧乾燥の終点は、乾品の熱重量分析((株)リガク製 Thermo Plus、昇温速度:10℃/分)を行い、水分の蒸発による重量減少が結晶水相当になっていることで確認した。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図13に示す。
【0051】
[比較例5]
15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.9g)と15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.0g、水 22.7g)とを混合してpH9.4に調整した溶液を、9質量%酢酸カルシウム水溶液(酢酸カルシウム一水和物 8.8g、水 79.3g)に撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは8.6であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、200℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図14に示す。
【0052】
[比較例6]
8質量%塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム二水和物 7.4g、水 66.2g、pH 7.0)に、15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.8g、pH 0.5)を撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは1.0であった。その後、この縣濁液に15質量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 4.0g、水 22.7g)を撹拌下で滴下し、pH12.0に調整した。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、200℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図15に示す。
【0053】
[比較例7]
9質量%酢酸カルシウム水溶液(酢酸カルシウム一水和物 8.8g、水 79.3g、pH 7.9)に、15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.9g、pH 0.5)を撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは4.4であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、200℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図16に示す。
【0054】
[比較例8]
8質量%塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム二水和物 7.4g、水 66.2g、pH 7.0)に、15質量%フェニルホスホン酸水溶液(フェニルホスホン酸 7.9g、水 44.9g、pH 0.5)を撹拌下で滴下し、フェニルホスホン酸カルシウムを析出させた。このときの懸濁液のpHは0.7であった。
得られた縣濁液を濾過した後、得られたろ物(湿品)を水 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。その後、ろ物(湿品)をアセトン 100mLに再分散させ再度濾過し、これを2回繰り返した。最後に20℃での減圧乾燥にてアセトンを留去し、200℃で12時間乾燥をおこなった。
得られた乾品(粉末)のSEM像を
図17に示す。
【0055】
実施例9乃至実施例11及び比較例5乃至比較例8において、得られたフェニルホスホン酸カルシウム(乾品)の粉末粒子の平均粒径をそれぞれ測定した。ここでいう平均粒径とは粒子の短軸方向の長さの平均を指し、乾品のSEM像より無作為に抽出した50個の粒子のおよそ最大の短軸方向の長さの平均を求めた。得られた結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示すように、実施例9乃至実施例11の手順にて作製したフェニルホスホン酸カルシウムは、平均粒径が0.28〜0.32μmであった。
一方、実施例10と同じ反応条件で析出させたフェニルホスホン酸カルシウムを、洗浄溶媒を水のみとし有機溶媒置換を行わなかった比較例5は、平均粒径が0.59μmとなり乾燥時に粒子が成長する結果となった。
さらに、塩析出後に塩基を使用した比較例6並びに、塩基未使用の比較例7及び比較例8は、洗浄溶媒の水を有機溶媒置換していても0.5μmを超える粒径となった。