【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は次の結合塩素剤、その製造方法および塩素処理方法である。
(1) アルカリ金属水酸化物
を含むアルカリと、スルファミン酸
またはその塩と、塩素系酸化剤とを含有する水溶液製剤
を含む結合塩素剤であって、
水溶液製剤中のスルファミン酸
またはその塩と塩素系酸化剤との含有割合が、Cl/N(モル比)で0.45〜0.6であり、
アルカリと塩素系酸化剤との含有割合が、Cl/アルカリ金属(モル比)で0.3〜0.4であり、
アルカリとスルファミン酸またはその塩との含有割合が、N/アルカリ金属(モル比)で0.5〜0.7であり、
前記Cl/N(モル比)は、JIS K 0400−33−10:1999により測定される塩素系酸化剤のCl2のモル数と、Nにより構成されるスルファミン酸またはその塩のモル数との比に相当し、
前記N/アルカリ金属(モル比)は、上記スルファミン酸またはその塩のモル数と、アルカリ金属水酸化物により構成されるアルカリのモル数との比に相当し、
ここでスルファミン酸塩に含まれるアルカリ金属の量はアルカリとして加算され、
水溶液製剤のpHが13以上であり、
水溶液製剤中の遊離塩素濃度が
1000mg/L以下で、全塩素濃度の2重量%以下であることを特徴とする結合塩素剤。
(2) 逆浸透膜のスライムコントロール剤用として用いる上記(1)記載の結合塩素剤。
(3) アルカリ金属水酸化物
を含むアルカリ水溶液にスルファミン酸
またはその塩を添加して溶解し、得られたスルファミン酸−アルカリ混合水溶液に、塩素系酸化剤を添加して混合し、水溶液製剤として調製する
方法であって、
水溶液製剤中のスルファミン酸またはその塩と塩素系酸化剤との含有割合が、Cl/N(モル比)で0.45〜0.6であり、
アルカリと塩素系酸化剤との含有割合が、Cl/アルカリ金属(モル比)で0.3〜0.4であり、
アルカリとスルファミン酸またはその塩との含有割合が、N/アルカリ金属(モル比)で0.5〜0.7であり、
前記Cl/N(モル比)は、JIS K 0400−33−10:1999により測定される塩素系酸化剤のCl2のモル数と、Nにより構成されるスルファミン酸またはその塩のモル数との比に相当し、
前記N/アルカリ金属(モル比)は、上記スルファミン酸またはその塩のモル数と、アルカリ金属水酸化物により構成されるアルカリのモル数との比に相当し、
ここでスルファミン酸塩に含まれるアルカリ金属の量はアルカリとして加算され、
水溶液製剤のpHが13以上であり、
水溶液製剤中の遊離塩素濃度が1000mg/L以下で、全塩素濃度の2重量%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の結合塩素剤の製造方法。
(4) アルカリ水溶液は、水の量が50〜65重量%である上記(3)記載の製造方法。
(5) 上記(1)記載の結合塩素剤を、遊離塩素濃度が0.1mg/L以下
、全塩素濃度が1〜50mg/Lとなるように水系に添加して塩素処理を行うことを特徴とする塩素処理方法。
(6) 上記(1)記載の結合塩素剤を、遊離塩素濃度が0.1mg/L以下
、全塩素濃度が1〜50mg/Lとなるように、逆浸透膜の給水系に添加して塩素処理を行うことを特徴とする塩素処理方法。
【0012】
本発明における遊離塩素、結合塩素および全塩素は、JIS K 0400−33−10:1999に示されており、N,N−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンを用いるDPD法によりCl
2の濃度として測定される。遊離塩素は次亜塩素酸、次亜塩素酸イオンまたは溶存塩素の形で存在する塩素とされている。結合塩素はクロロアミンおよび有機クロロアミンの形で存在する塩素とされており、上記遊離塩素に含まれないが、DPD法により測定される塩素とされている。全塩素は遊離塩素、結合塩素または両者の形で存在する塩素とされている。
【0013】
結合塩素剤は上記結合塩素を生成する薬剤である。本発明の結合塩素剤は、アルカリ金属水酸化物
を含むアルカリと、スルファミン酸
またはその塩と、塩素系酸化剤とを含有する水溶液製剤
を含む結合塩素剤である。本発明の結合塩素剤では、水溶液製剤中のスルファミン酸と塩素系酸化剤との含有割合がCl/N(モル比)で0.45〜0.6、好ましくは0.45〜0.55であり、アルカリと塩素系酸化剤との含有割合が、Cl/アルカリ金属(モル比)で0.3〜0.4、好ましくは0.30〜0.36であり、水溶液製剤中の遊離塩素濃度が全塩素濃度の2重量%以下である。水溶液製剤は、pHが13以上、水溶液製剤中のアルカリとスルファミン酸
またはその塩との含有割合が、N/アルカリ金属(モル比)で0.5〜0.7とす
る。上記のCl/N(モル比)は、前記JIS K 0400−33−10:1999により測定される塩素系酸化剤のCl
2のモル数と、Nにより構成されるスルファミン酸
またはその塩のモル数との比に相当する。またN/アルカリ金属(モル比)は、上記スルファミン酸
またはその塩のモル数と、アルカリ金属水酸化物により構成されるアルカリのモル数との比に相当する。
【0014】
本発明において、結合塩素剤を構成するスルファミン酸は、R
1R
2NSO
3H・・・〔1〕で表されるアミド硫酸で、R
1、R
2はそれぞれ独立にH、炭素数1〜6の炭化水素基である。このようなスルファミン酸としては、R
1、R
2がそれぞれHである狭義のスルファミン酸が好ましいが、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸なども使用できる。これらのスルファミン酸は、遊離(粉末状)の酸の状態で用いても良く、またナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などの塩であっても良い。
【0015】
本発明において、結合塩素剤を構成するアルカリは、アルカリ金属水酸化物
を含むアルカリであり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム塩等があげられる。塩素系酸化剤は次亜塩素酸、亜塩素酸、またはそのアルカリ金属塩等の可溶性塩があげられる。いずれも食塩を含まないものが好ましく、水溶液製剤中の塩化ナトリウムは、50,000mg/L以下に管理することにより、塩の沈澱を防止でき、ハロゲン化酸化剤の安定性の向上が達成できる。
【0016】
上記結合塩素剤は、アルカリ金属水酸化物
を含むアルカリ水溶液にスルファミン酸
またはその塩を添加して溶解し、得られたスルファミン酸
またはその塩−アルカリ混合水溶液に、塩素系酸化剤を添加して混合し、水溶液製剤として調製することにより製造することができる。アルカリ水溶液は、水の量が50〜65重量%とするのが好ましい。アルカリはアルカリ金属水酸化物
を含むものであり、このようなアルカリとして、上記結合塩素剤水溶液としたときに可溶性を維持するものがあげられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等があげられる。
【0017】
スルファミン酸は、塩で添加してもよく、この場合の使用可能な塩としては、上記結合塩素剤水溶液としたときに可溶性のものがあげられ、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸アンモニウム等を用いることができる。スルファミン酸は、水溶液製剤中のスルファミン酸濃度が上記濃度となるように添加される。スルファミン酸の添加量は、アルカリとスルファミン酸
またはその塩との含有割合が、N/アルカリ金属(モル比)で0.5〜0.7とす
る。スルファミン酸は、スルファミン酸またはその塩を、粉末状態で、あるいは水溶液の状態で添加することができる。スルファミン酸塩を用いる場合、スルファミン酸塩に含まれるアルカリ金属の量は、アルカリとして加算される。水溶液を用いる場合は、水溶液に含まれる水の量は、前記アルカリ水溶液の水の量として加算される。
【0018】
塩素系酸化剤は次亜塩素酸またはその塩が好ましく、有効塩素(Cl
2)濃度として5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%水溶液として添加するのが好ましい。塩素系酸化剤の添加量は、水溶液製剤中の塩素系酸化剤濃度が有効塩素(Cl
2)濃度として上記濃度となるように、またスルファミン酸と塩素系酸化剤との含有割合が、Cl/N(モル比)で上記モル比となるように添加される。これにより発泡や塩素臭の発生はなく、反応性、安定性、取扱性、無塩素臭等に優れた水溶液製剤
を含む結合塩素剤を効率よく製造することができる。この場合でも、塩素系酸化剤を徐々に添加して混合するのが好ましい。
【0019】
以上により製造される本発明の結合塩素剤は、塩素処理を行うために水系に添加して使用されるが、上記のように、製剤の遊離塩素濃度が低く、かつ結合塩素濃度が高いので、このような製剤を遊離塩素濃度が低くなるように水系に添加しても、結合塩素濃度を高くすることができる。結合塩素剤中の塩素は、遊離塩素と結合塩素(全塩素)間に平衡関係があって、遊離塩素濃度が低い状態でも、結合塩素として潜在的に蓄えられた塩素が徐々に遊離して、殺菌作用等の塩素剤としての作用を行なうと考えられる。このため結合塩素剤を添加した水系は、殺菌活性の状態に置かれ、スライムの発生が防止される。結合塩素剤は、遊離塩素濃度が0.1mg/L以下となるように水系に添加して塩素処理を行うことができる。この場合、全塩素濃度は、1〜50mg/Lとすることができる。
【0020】
本発明の結合塩素剤は、RO膜のスライムコントロール剤として用いるのに適している。RO膜は逆浸透により被処理水から塩類、有機物等の溶質を分離、除去する透過膜であり、一般に逆浸透膜処理に用いられているものが対象となる。RO膜の材質としては、ポリアミド系、特に耐塩素性の小さい芳香族ポリアミド、ポリ尿素、ポリピペラジンアミドなどの窒素含有基を有する高分子膜に対して特に有効であるが、酢酸セルローズ系、その他のRO膜であってもよい。またRO膜は、スパイラル型、中空糸型、管型、平膜型など任意の構造のモジュールを構成するものでもよい。
【0021】
本発明において、RO膜処理の対象とする被処理水は、汚染性物質を含む被処理水であってもよい。このような被処理水は、前処理工程において、遊離塩素の存在下に汚染性物質を除去することにより、RO膜に対する汚染性を解消させ、かつ遊離塩素濃度を0.1mg/L以下としておくことにより、RO膜の汚染、劣化を防止して、効率よくRO膜処理することができる。前処理水を上記の遊離塩素濃度とするためには、前処理水に還元剤を添加することができる。本発明では、このようなRO膜被処理水に、遊離塩素濃度が0.1mg/L以下となるように、結合塩素剤を添加して塩素処理を行うことにより、RO膜のスライムコントロールを行うことができる。この場合、全塩素濃度は、1〜50mg/Lとすることができる。