(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材上に、少なくとも第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置されて、可視画像と少なくとも1つの潜像画像とが形成された網点印刷物であって、
前記第1のハーフトーン領域は、第1の色材により前記可視画像を形成する第1の画像要素を有し、
前記第2のハーフトーン領域は、前記潜像画像の画像部を形成する第2の画像要素と、前記潜像画像の背景部を形成する第3の画像要素と、前記第2の画像要素と前記第3の画像要素との濃度差、又は色差、あるいは濃度差及び色差を緩和する第4の画像要素とを有し、
各々の前記第2のハーフトーン領域が有する前記第2の画像要素の面積が異なることで階調を有する前記潜像画像が形成され、
前記第2の画像要素は、所定の観察条件下において視認可能な第1の機能性を有する第2の色材により形成され、
前記第3の画像要素は、前記第1の機能性を有しないか、又は前記第1の機能性とは異なる第2の機能性を有する第3の色材により形成され、
前記第4の画像要素は、複数の前記第2のハーフトーン領域における前記第2の画像要素と前記第3の画像要素とを合わせたそれぞれの色が等色として視認されるように、前記第2の画像要素の面積の増加又は減少に伴い、色、濃度及び/又は面積を変化させた第4の色材により形成されるか、又は前記第2の画像要素の面積の増加又は減少に伴い、前記基材の表面の色を露出させる空白領域の面積を変化させて形成することで、前記第2の色材と前記第3の色材との濃度差、又は色差、あるいは濃度差及び色差を緩和することを特徴とする網点印刷物。
前記第4の画像要素の面積は、前記第2の画像要素の面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、前記第2の画像要素の面積の増加に伴い増加することを特徴とする請求項1又は2記載の網点印刷物。
前記第2のハーフトーン領域において、前記第2の画像要素は、前記第2のハーフトーン領域の中心部分に配置され、前記第3の画像要素は、前記第2の画像要素を囲むように配置され、前記第4の画像要素は、前記第2の画像要素と前記第3の画像要素との間か、又は前記第2の画像要素の内側、あるいは前記第3の画像要素の外側に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の網点印刷物。
前記第1の機能性を有する前記第2の色材が、赤外線吸収特性を有するインキ、メタメリックペアインキ、サーモクロミックインキ、金属インキのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の網点印刷物。
前記第1の機能性を有する前記第2の色材が、赤外吸収特性を有するインキである場合、前記第2の画像要素は赤外線吸収特性を有する黒色インキによって形成され、前記第3の画像要素は、赤外線吸収特性を有しないシアン、マゼンタ、イエローの混色による黒色インキによって形成され、前記第4の画像要素は、前記赤外線吸収特性を有しない白色インキ又は前記基材の表面の色を露出させた空白領域として形成されたことを特徴とする請求項5記載の網点印刷物。
前記網点印刷物は、さらに複数の第Nのハーフトーン領域(Nは3以上の自然数)を有し、前記第Nのハーフトーン領域により第Nの潜像画像が形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の網点印刷物。
データを入力する入力部、入力されたデータに処理を行う処理部、入力されたデータあるいは処理されたデータを与えられて格納する記憶部、データを出力する印刷機を備えた出力部を用いて、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の網点印刷物を作製する方法であって、
前記可視画像に対応する第1の画像データを前記入力部から入力し、あるいは前記処理部において作成するステップと、
複数の前記第1のハーフトーン領域のそれぞれの位置、形状及び寸法、またそれぞれの前記第1のハーフトーン領域に含まれる前記第1の画像要素の位置、形状及び寸法に関する第1のマスクデータを前記入力部から入力し、あるいは前記処理部において作成するステップと、
前記第1の画像データに対し前記第1のマスクデータを用いてマスク処理を行い、前記第1の画像要素が前記可視画像を表現するように前記第1のハーフトーン領域のデータを前記処理部において作成し、前記記憶部に格納するステップと、
前記潜像画像に対応する階調を有する第2の画像データを前記入力部より入力し、あるいは前記処理部において作成するステップと、
複数の前記第2のハーフトーン領域のそれぞれの位置、形状及び寸法、またそれぞれの前記第2のハーフトーン領域に含まれる前記第2の画像要素及び前記第3の画像要素の位置、形状及び寸法に関する第2のマスクデータを前記入力部から入力し、あるいは前記処理部において作成するステップと、
前記第2の画像データに対し前記第2のマスクデータを用いてマスク処理を行い、前記第2の画像要素が前記潜像画像を表現するように第2のハーフトーン領域のデータを前記処理部において作成し、前記記憶部に格納するステップと、
複数形成された各々の前記第2のハーフトーン領域において、前記第2の画像要素の面積の増加又は減少に伴い、色、濃度及び/又は面積を変化させた第4の色材で配置する前記第4の画像要素のデータを前記処理部によって作成するか、あるいは前記第2の画線要素の面積の増加又は減少に伴い、前記基材の表面の色を露出させる空白領域の面積を変化させて配置する前記第4の画像要素のデータを前記処理部によって作成し、前記記憶部に格納するステップと、
前記第2のハーフトーン領域のデータと前記第4の画像要素のデータとを用いて、前記第4の画像要素を含む前記第2のハーフトーン領域のデータを前記処理部において作成し、前記記憶部に格納するステップと、
前記第1のハーフトーン領域のデータと前記第4の画像要素を含む第2のハーフトーン領域のデータとを用いて、前記網点印刷物のデータを前記処理部において作成し、前記出力部から出力するステップと、を備えることを特徴とする網点印刷物の作製方法。
前記可視画像は階調を有し、前記第1のハーフトーン領域のデータを作成するステップにおいて、前記処理部は、各々の前記第1のハーフトーン領域が有する前記第1の画像要素の面積を変えることで前記可視画像の階調を表現することを特徴とする請求項8記載の網点印刷物の作製方法。
前記第4の画像要素のデータを作成するステップにおいて、前記処理部は、前記第4の画像要素の面積が、前記第2の画像要素の面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下範囲内で、前記第2の画像要素の面積の増加に伴い増加するように変化させることを特徴とする請求項8又は9記載の網点印刷物の作製方法。
第4の画像要素のデータを作成するステップにおいて、前記処理部は、前記第4の画像要素が、前記第2の画像要素と前記第3の画像要素の間、又は前記第2の画像要素の内側、あるいは前記第3の画像要素の外側に配置されるように前記第4の画像要素のデータを作成することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の網点印刷物の作製方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1から特許文献4に係わる印刷物に共通し、潜像画像を表現する網点と背景部とをそれぞれ形成するインキが異なる色として観察されることがある。特許文献2に係わる印刷物では、潜像画像を表現する網点を、ブラック(Bk)インキで形成し、網点を除く背景部を混色ブラックで形成する。この場合、ブラック(Bk)インキと等色の混色ブラックインキを作製することが困難であるため、通常光下でも潜像模様が若干視認されることがあった。
【0012】
また、特許文献2に係わる網点印刷物を一般的なプリンタ等の出力機を用いて作製する場合、第2のハーフトーン領域の網点と背景部の色を等色とするために、赤外線領域で強い吸収特性を示すことが求められる網点は、ブラック(Bk)インキのみが用いられる。しかし、一般的なプリンタでは、出力画像を赤緑青(RGB)の情報で受け取り、暗い色は、自動的にブラック(Bk)インキを用いて出力し、明るい色は、自動的にブラック(Bk)インキを用いずに出力する機構になっていることから、ブラック(Bk)インキのみが用いられた網点と、混色ブラックインキのみが用いられた背景部とを等色として再現することができない。そのため、各々の色を等色として再現するため、プリンタにおいて背景部にもブラック(Bk)インキを混入させてしまい、その結果、潜像の視認性の低下を招くこととなる。反対に、背景部を形成する混色ブラックインキを基準に網点を形成すると、ブラック(Bk)インキにシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を混色するため、ブラック(Bk)インキのカーボン含有量が低下することとなり、潜像の視認性が低下する。このように、潜像画像を明確に視認させるためには、網点と背景部とを等色に形成することが困難であった。
【0013】
また、特許文献3に係わる網点印刷物で用いるメタメリックペアインキでは、通常光下であっても、印刷物を照射する光源が異なることでペアインキの色が大きく異なる色として可視化される。このため、等色のメタメリックペアインキを作製するには、作製者の熟練度及び高度な能力を有することが必要である。さらに、印刷物を観察する観察者のおかれる環境に影響され、メタメリックペアインキで形成した潜像画像を表現する網点と背景部の色が異なる色として観察されることがあり、潜像模様が若干視認されるという課題があった。
【0014】
さらに、特許文献4に係わる網点印刷物では、サーモクロミックインキの色変化前と色変化後の色にあわせて、可視画像又は潜像画像を表現する各網点を形成する。しかし、サーモクロミックインキの色変化が不完全であった場合、等色として観察されるべき双方の背景部と、可視画像又は潜像画像を表現する各網点の色が等色とならず、潜像画像の視認性が低下する。また、双方の網点を形成するインキを作製する際に、サーモクロミックインキの低温状態のときの色と高温状態のときの色に合わせたインキ設計を行うため、作製者の熟練度及び高度な能力を有することが必要であるという課題が残されていた。
【0015】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、網点を形成するインキと背景部を形成するインキに相違があっても、通常光下において潜像画像が顕像化せず視認が困難である網点印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の課題を解決するために、本発明の網点印刷物は、基材上に、少なくとも第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置されて、可視画像と少なくとも1つの潜像画像とが形成された網点印刷物であって、第1のハーフトーン領域は、第1の色材により形成され、可視画像を形成する第1の画像要素を有し、第2のハーフトーン領域は、潜像画像の画像部を形成する第2の画像要素と、潜像画像の背景部を形成する第3の画像要素と、第2の画像要素と第3の画像要素との間の濃度差、又は色差、あるいは濃度差及び色差を緩和する第4の画像要素とを有し、第2の画像要素は、所定の観察条件下において視認可能な第1の機能性を有する第2の色材により形成され、第3の画像要素は、第1の機能性を有しないか、又は第1の機能性とは異なる第2の機能性を有する第3の色材により形成され、第4の画像要素は、複数の第2のハーフトーン領域における第2の画像要素と第3の画像要素とを合わせたそれぞれの色が等色として視認されるように、第2の色材と第3の色材との濃度差、又は色差、あるいは濃度差及び色差を緩和する第4の色材によって形成され、又は基材の表面の色を露出させた空白領域として形成されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の網点印刷物における可視画像は、各々の第1のハーフトーン領域が有する第1の画像要素の面積が異なることで階調を有し、第1の色材は、第1の機能性を有しないか、又は第1の機能性及び第2の機能性の双方を有しないことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の網点印刷物における潜像画像は、各々の第2のハーフトーン領域が有する第2の画像要素の面積が異なることで階調を有し、第4の画像要素の面積は、第2の画像要素の面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、第2の画像要素の面積の増加に伴い増加することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の網点印刷物における潜像画像は、各々の第2のハーフトーン領域が有する第2の画像要素の面積が異なることで階調を有し、第4の画像要素の面積は、第3の画像要素の面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、第3の画像要素の面積の増加に伴い減少することを特徴とする。
【0020】
本発明の網点印刷物は、第2のハーフトーン領域において、第2の画像要素は、第2のハーフトーン領域の中心部分に配置され、第3の画像要素は、第2の画像要素を囲むように配置され、第4の画像要素は、第2の画像要素と第3の画像要素との間、又は第2の画像要素の内側、あるいは第3の画像要素の外側に配置されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の網点印刷物は、第1の機能性を有する第2の色材が、赤外線吸収特性を有するインキ、メタメリックペアインキ、サーモクロミックインキ、金属インキのいずれかであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の網点印刷物は、第1の機能性を有する第2の色材が、赤外吸収特性を有するインキである場合、第2の画像要素は、赤外線吸収特性を有する黒色インキによって形成され、第3の画像要素は、赤外線吸収特性を有しないシアン、マゼンタ、イエローの混色による黒色インキによって形成され、第4の画像要素は、赤外線吸収特性を有しない白色又は基材を一部露出させた空白領域として形成されたことを特徴とする。
【0023】
本発明の網点印刷物は、さらに複数の第Nのハーフトーン領域(Nは3以上の自然数)を有し、第Nのハーフトーン領域により第Nの潜像画像が形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明の網点印刷物の作製方法は、データを入力する入力部、入力されたデータに処理を行う処理部、入力されたデータあるいは処理されたデータを与えられて格納する記憶部、データを出力する印刷機を備えた出力部を用いて、網点印刷物を作製する方法であって、可視画像に対応する第1の画像データを入力部から入力し、あるいは処理部において作成するステップと、複数の第1のハーフトーン領域のそれぞれの位置、形状及び寸法、又はそれぞれの第1のハーフトーン領域に含まれる第1の画像要素の位置、形状及び寸法に関する第1のマスクデータを入力部から入力し、あるいは処理部において作成するステップと、第1の画像データに対し第1のマスクデータを用いてマスク処理を行い、第1の画像要素が可視画像を表現するように第1のハーフトーン領域のデータを処理部において作成し、記憶部に格納するステップと、潜像画像に対応する第2の画像データを入力部より入力し、あるいは処理部において作成するステップと、複数の第2のハーフトーン領域のそれぞれの位置、形状及び寸法、又はそれぞれの第2のハーフトーン領域に含まれる第2の画像要素及び第3の画像要素の位置、形状及び寸法に関する第2のマスクデータを入力部から入力し、あるいは処理部において作成するステップと、第2の画像データに対し第2のマスクデータを用いてマスク処理を行い、第2の画像要素が潜像画像を表現するように第2のハーフトーン領域のデータを処理部において作成し、記憶部に格納するステップと、複数形成された各々の第2のハーフトーン領域において、第2の画像要素の面積にかかわらず、第2の画像要素、第3の画像要素及び第4の画像要素を合わせた濃度、又は色差、あるいは濃度及び色差が他の第2のハーフトーン領域と等色となるように、第4の画像要素の位置、形状及び面積と第4の色材とを設定し、あるいは基材の表面の色を露出させる空白領域としての第4の画像要素のデータを処理部において作成し、記憶部に格納するステップと、第2のハーフトーン領域のデータと第4の画像要素のデータとを用いて、第4の画像要素を含む第2のハーフトーン領域のデータを処理部において作成し、記憶部に格納するステップと、第1のハーフトーン領域のデータと第4の画像要素を含む第2のハーフトーン領域のデータとを用いて、網点印刷物のデータを処理部において作成し、出力部から出力するステップとを備えることを特徴とする網点印刷物の作製方法。
【0025】
本発明の網点印刷物の作製方法は、階調を有する可視画像を形成する第1のハーフトーン領域のデータを作成するステップにおいて、処理部は、各々の第1のハーフトーン領域が有する第1の画像要素の面積を変えることで可視画像の階調を表現することを特徴とする。
【0026】
本発明の網点印刷物の作製方法は、階調を有する可視画像を形成する第2のハーフトーン領域のデータを作成するステップにおいて、処理部は、各々の第2のハーフトーン領域が有する第2の画像要素の面積を変えることで潜像画像の階調を表現し、第4の画像要素のデータを作成するステップにおいて、処理部は、第4の画像要素の面積が、第2の画像要素の面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、第2の画像要素の面積の増加に伴い増加するように変化させることを特徴とする。
【0027】
本発明の網点印刷物の作製方法は、階調を有する可視画像を形成する第2のハーフトーン領域のデータを作成するステップにおいて、処理部は、各々の第2のハーフトーン領域が有する第2の画像要素の面積を変えることで潜像画像の階調を表現し、第4の画像要素のデータを作成するステップにおいて、処理部は、第4の画像要素の面積が、第3の画像要素の面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、第3の画像要素の面積の増加に伴い減少するように変化させることを特徴とする。
【0028】
本発明の網点印刷物の作製方法は、第4の画像要素のデータを作成するステップにおいて、処理部は、第4の画像要素が、第2の画像要素と第3との画像要素の間、又は第2の画像要素の内側、あるいは第3の画像要素の外側に配置されるように第4の画像要素のデータを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の網点印刷物は、潜像画像を形成する第2のハーフトーン領域内に濃度緩和部を形成したことで、通常光下において肉眼で観察すると複数形成された第2のハーフトーン領域が等色として視認されるため、潜像画像の隠蔽性が向上するとともに、インキ作製時の色が若干異なっていても画像を潜像化することができることから、インキ作製時の調色の幅が広がり、インキ作製時に高度な熟練度及び能力を必要としないという格別の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態による網点印刷物について、図面を参照して説明する。本実施の形態による網点印刷物は、
図1に示された構成を備えている。この網点印刷物は、複数の第1のハーフトーン領域3と複数の第2のハーフトーン領域4とを備えている。複数の第1のハーフトーン領域3と複数の第2のハーフトーン領域4は、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な領域であり、相互に隣接するように隙間なく規則的に配置されている。
【0032】
第1のハーフトーン領域3は、通常光下で観察される可視画像を表現する第1の画像要素としての網点3aを備え、第2のハーフトーン領域4は、所定の条件下で観察した場合に潜像画像を形成する第2の画像要素としての網点4a、背景を形成する第3の画像要素としての背景部4b、さらに第4の画像要素としての濃度緩和部4cを備えている。
【0033】
ここで、網点4aは、所定の条件下で観察した場合に異なる色の機能性インキを用いて形成する。背景部4bは、当該機能性を有しておらず、通常光下では、網点4aと略等色に視認されるが、所定の条件下では、網点4aと異なる色として視認されるインキにより形成する。
【0034】
本実施の形態による網点印刷物1によれば、通常光下で観察すると、
図2(a)に示されたように、基材2上に形成された第1のハーフトーン領域3を構成する網点3aにより、可視画像が形成されて、
図2(b)に示されたような可視画像5が視認される。この場合、第2のハーフトーン領域4における網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cが通常光下では、
図2(a)に示されたように略等色に見えることで濃度が均一な平網状態となり、網点3aによる可視画像5のみが視認される。
【0035】
本発明における等色とは、色差ΔEが6未満のことを指し、色差とは、CIE1976L
*a
*b
*表色系のΔEで定義するものとする。CIE1976L
*a
*b
*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間のことであり、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。色差は、ある二色の色空間中における距離のことであり、CIE1976L
*a
*b
*表色系での色差は、二色のL
*の差、a
*の差、及びb
*の差をそれぞれ二乗して加え、その平方根をとることで求めることができる。
【0036】
一般的に、色差ΔEが6前後の場合においては、異なった色として視認される可能性がある。ただし、前述のとおり、本発明においては、第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4は、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な網点により構成している。そのことから、前述のとおり、色差ΔEが6未満であれば、通常光下において、肉眼で網点4aを視認することができず、かつ、網点部4a、背景部4b及び濃度緩和部4cは、等色として視認される。
【0037】
一方、機能性インキの特性に応じた所定の条件下として、例えば、赤外線吸収性という特性に応じた赤外光下においては、
図2(c)に示されたように、第2のハーフトーン領域4における網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cとが異なる色として視認される。これにより、
図2(d)に示されたように、網点4aが構成する潜像画像6が視認される。なお、本発明における異なる色とは、色差ΔEが6以上のことを指し、色差ΔEが6未満の場合においては、前述のとおり、等色として視認される。
【0038】
ここで、濃度緩和部4cについて詳述する。上述したように、潜像画像6が構成する網点4aを形成するインキと背景部4bを形成するインキとが相違する。具体的には、例えば、網点4aを赤外線吸収性という機能性を有するブラック(Bk)インキで形成し、背景部4bを、混色ブラックインキで形成している。この場合、ブラック(Bk)の濃度を混色ブラックで再現することが困難であるため、ブラック(Bk)インキと等色の混色ブラックインキを形成することができない。このため、第2のハーフトーン領域4を網点4aと背景部4bのみで構成すると、網点4aと背景部4bとが通常光下において等色に視認されないことから潜像画像6が可視画像と混ざり合って視認されることがある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、網点4aの濃度と背景部4bの濃度、又は色、あるいは濃度及び色とが通常光下において等色に見えるように、両者の濃度差、又は色差、あるいは濃度差及び色差を緩和させるための濃度緩和部4cを設けている。
【0040】
第2のハーフトーン領域4の一領域を、
図3(a)に示されたようにブラック(Bk)インキで形成された領域11aと、例えば、ホワイトインキで形成された領域11bとで構成された場合を考える。領域11a及び11bの1辺が、例えば、0.1mmから1mmという程度の大きさであると、通常光下において肉眼で観察すると、
図3(b)に示されたように領域11a及び11bが等色のグレーインキで形成されているように視認される。このように、異なる色の領域11a及び11bを並置すると、両者を混色した色として全体が等色に視認される効果が得られる。
【0041】
図4(a)に示されたように、ブラック(Bk)インキで形成された網点4aと、混色ブラックインキで形成された背景部4bの他に、濃度緩和部4cを設ける。この濃度緩和部4cを設けたことにより、
図4(b)に示されたように、網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cが等色に視認される。
【0042】
ここで、濃度緩和部4cの色及び面積について説明する。
図5(a)に拡大して示されたように、第2のハーフトーン領域4には、網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cの三つの要素が存在する。
【0043】
そして、
図5(b)に示されたように、網点4aの面積を変化させることにより、潜像画像を形成することができる。例えば、第2のハーフトーン領域4が領域301のように、網点4aが存在せず背景部4bのみで構成される場合は、この領域301にブラック(Bk)インキは存在せず、混色ブラックインキのみで形成されることとなる。このときの、領域301の濃度を基準値として設定する。なお、以降の説明では、複数の第2のハーフトーン領域4において、濃度が最も低い領域301の濃度を基準値とするが、これに限定されるものではない。例えば、領域306で示されたような、網点4aの面積が最大であり、複数の第2のハーフトーン領域4において、濃度が最も高い値を基準値として設定してもよい。
【0044】
第2のハーフトーン領域4が領域302のように小さい網点4aが存在する場合は、ブラック(Bk)インキで形成された網点4aが存在するため、領域301の基準値よりは濃度がやや高くなる。そこで、領域302におけるすべての領域である網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cを加算した全体の濃度が通常光下において基準となる領域301の濃度と一致するように、濃度緩和部4cの色及び面積を設定する。
【0045】
ただし、前述の加算した全体の濃度とは、網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cが並置加法混色した結果の色を指す。以下においても、複数領域の並置加法混色を指す言葉として、加算という用語を使用する。また、並置加法混色とは、複数の微小領域に異なる色を配置した後、観察者又は観察用機器がもつ分解能を超えた状態で観察することにより、その複数の微小領域の区別がつかなくなり、各微小領域の平均的な色が観察される現象である。
【0046】
第2のハーフトーン領域4が領域303、304、305というように、網点4aの面積が大きくなるに従い、ブラック(Bk)インキで形成された網点4aの面積が増加していく。このため、領域302の濃度基準値より濃度が高くなっていく。いずれの領域303、304、305においても、それぞれの全体の濃度が領域301の濃度基準値と一致するように、それぞれの濃度緩和部4cの色及び面積を設定する。
【0047】
網点4aの面積がさらに増加した例として、領域306においては、ブラック(Bk)インキで形成された網点4aの面積が最大となる。この場合も、他の領域302〜305と同様に、領域306の全体の濃度が、領域301の濃度基準値と一致するように濃度緩和部4cの色及び面積を設定する。領域306において示されたように、第2のハーフトーン領域4が網点4a及び濃度緩和部4cのみで構成され、背景部4bが存在しない場合もある。
【0048】
このように、網点4aの面積が所定の場合(ここでは、領域301のように面積が零の場合)における第2のハーフトーン領域4の全体の面積を基準とし、網点4aの面積にかかわらず、常に第2のハーフトーン領域4全体の濃度が、この基準値と一致するように濃度緩和部4cの色及び面積を設定する。
【0049】
ここで、第2のハーフトーン領域4の網点4aの面積が異なることで、潜像画像が階調を有する。濃度緩和部4cの面積は、網点4aの面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、網点4aの面積の増加に伴い増加するように変化してもよい。また、第2のハーフトーン領域4の背景部4bの面積が異なることで、潜像画像が階調を有するという捉え方も可能である。この場合、濃度緩和部4cの面積は、背景部4bの面積に対して0.05倍以上で、かつ、3倍以下の範囲内で、背景部4bの面積の増加に伴い減少するように変化する。
【0050】
濃度緩和部4cは、
図1〜
図5では、網点4aと背景部4bとの間において、円環状に形成されている。しかし、濃度緩和部は、第2のハーフトーン領域4内に存在していればよく、この配置に限定されるものではない。
【0051】
例えば、
図6(a)に示されたように、網点4aとその周囲を囲むように外側に背景部4bが配置されており、背景部4bの外側の領域に濃度緩和部4cが設けられてもよい。なお、図中濃度緩和部4cは、第2のハーフトーン領域4の四隅に設けられているが、これに限らず、二つの隅か、又は隅以外の領域であってもよい。また、
図6(b)に示されたように、第2のハーフトーン領域4の中央部に濃度緩和部4cが配置され、その外側に網点4a及び背景部4bが形成されていても
よく、中央部に形成された濃度緩和部4cが第2のハーフトーン領域4の中心からずれた位置に形成されてもよい。
さらに、一つの網点印刷物1における複数の第2のハーフトーン領域4内において、互いに異なる位置に濃度緩和部4cを設けた第2のハーフトーン領域4が混在していても良い。なお、網点4aは、円形に限らず三角形、四角形、多角形、星形又は文字等の任意の形状で形成されてもよく、これに伴い濃度緩和部4cは、任意の形状を有し、網点4aの内部又はその周囲の領域、あるいは網点4aの周囲に配置された背景部4bの周囲に形成されてもよい。
また、第2のハーフトーン領域4内に網点4aと背景部4bが形成された状態で、双方が形成された領域内に微細な点群の集合として濃度緩和部4aが形成されてもよく、更には、前述した濃度緩和部4cの複数の配置方法が混在する構成としても同一の効果を得る。
【0052】
さらに、上述の例における濃度緩和部4cは、ホワイトインキで形成されているが、これに限らず、
図7に示されたように、ホワイト以外の色を有するインキで形成してもよい。また、濃度緩和部4cは、基材2の表面の色を露出させた空白領域として形成されていてもよい。いずれの場合であっても、濃度緩和部4cの色、面積及び配置は、網点4aの大きさが変化しても第2のハーフトーン領域4全体の濃度又は色、あるいは濃度及び色が常に一定となるように設定されていればよい。
【0053】
次に、本実施の形態による網点印刷物の作製に用いられる装置について、その構成を示した
図8を用いて説明する。この作製装置は、入力部401、処理部402、記憶部403及び出力部404を備えている。入力部401は、本実施の形態の網点印刷物の作製に必要なデータを入力し、処理部402に与える。処理部402は、与えられたデータを記憶部403に格納するとともに、網点印刷物の作製に必要な演算処理及び画像処理等を行い、得られた結果を出力部404に与える。出力部404は、処理部402から与えられたデータを、外部の、例えば、図示されてない印刷機等に出力する。
【0054】
このような作製装置を用いて、本実施の形態による網点印刷物を作製する方法について、その手順を示した
図9、
図10及び
図11を用いて説明する。
図9におけるステップS11として、第1のハーフトーン領域3が形成する可視画像に対応する原画として第1の画像データを処理部402が作成するか、又は外部から第1の画像データとして入力部401より入力し、処理部402を介して記憶部403に格納する。
【0055】
図10のステップS31として、第2のハーフトーン領域4が形成する潜像画像の原画に相当する第2の画像データを処理部402が作成するか、又は外部から第2の画像データとして入力部401より入力し、処理部402を介して記憶部403に格納する。第一の画像データ及び第2の画像データにおいては、共通する位置の少なくとも任意の三つの点を、各画像データにおけるそれぞれの基準点に設定する。なお、基準点の設定方法についての詳細は、
特願2010−267221号において記載されていることから、省略する。
【0056】
ステップS32として、複数の第2のハーフトーン領域4の位置、形状、寸法等、並びに各々の第2のハーフトーン領域4を構成する網点4a及び背景部4bの位置、形状及び寸法等を示す第2のマスクデータを処理部402が作成し、あるいは外部から第2のマスクデータとして入力部401より入力し、処理部402を介して記憶部403に格納する。
【0057】
ステップS33として、得られた第2の画像データが複数の第2のハーフトーン領域4の網点4a及び背景部4bにより表現されるように、マスクデータを用いて処理部402がマスク処理を行い記憶部403に格納する。
【0058】
図12は、マスクデータを示す模式図である。マスクデータは、複数の第2のハーフトーン領域4へ、潜像画像を配置する際に用いる画像である。マスクデータは、あらかじめ作製しておいた、フォーマットデータを用いて生成される。フォーマットデータとは、本発明における網点印刷物を生成する、複数の第1のハーフトーン領域3及び複数の第2のハーフトーン領域4を、どのように配置するかを設計することで、フォーマットデータが生成される。フォーマットデータは、複数の画素によって構成される。フォーマットデータにおける、複数の第1のハーフトーン領域3の配置箇所の画素を白画素とし、複数の第2のハーフトーン領域4の配置箇所の画素のみを黒画素とすることで、マスクデータが生成される。マスクデータは、各原画像データの基準点と対応する基準点(P1、P2、P3)を有する。
【0059】
マスク処理とは、第2の画像データに対して、マスクデータの白画素に対応する部分をすべて白画素に置き換える処理を施すことで、第2の画像データのうち、複数の第1のハーフトーン領域3に相当する部分をすべて白色に置き換えるものである。それにより、第2の画像データは、複数の第2のハーフトーン領域4内に配置された網点4aのみから成る画像へと変換され、第1の画像データ及び第2の画像データを形成する複数の各網点を、混じり合うことなく印刷領域内へ割り当てることが可能となる。
【0060】
図13は、一例として潜像画像を生成する、マスク処理を示す模式図である。マスク処理においては、処理部402へ入力した、
図13(a)に示す、マスクデータの基準点(P1、P2、P3)と、
図13(b)に示す、マスクデータと対応する第2の画像データの基準点(P1’、P2’、P3’)とを合わせる。二つの画像を合わせた際に、同じ位置となる二つの画素のうち、マスクデータを構成する画素が黒画素ならば、第2の画像データを構成する画素を残す。また、マスクデータを構成する画素が白画素ならば、第2の画像データを白画素とする。マスク処理を行うことで、第2の画像データのうち、第2のハーフトーン領域4に相当しない部分、つまり、第1のハーフトーン領域3を形成する画素は白画素となる。よって、
図13(c)に示す、複数の第2のハーフトーン領域4から成る第2の画像データが生成される。
【0061】
ステップS34として、処理部402が濃度緩和部4cのデータの作成を行う。濃度緩和部4cの色及び面積は、上述したように、網点4aの大きさが変化しても第2のハーフトーン領域4全体の濃度が常に一定となるように設定する。また、濃度緩和部4cの形状は、網点4aの形状に応じて設定し、配置は、網点4aの形状を考慮し第2のハーフトーン領域4内のいずれかの位置に行う。作成した濃度緩和部4cのデータは、記憶部403に格納する。
【0062】
ステップS41において、得られた第2のハーフトーン領域4のデータに、濃度緩和部4cのデータとを組み合わせて、処理部402が濃度緩和部4cを含む第2のハーフトーン領域4のデータの作成を行う。作成したデータは、記憶部403に格納する。
【0063】
ステップ51において、各データを合成する。
図14は、各データを合成する模式図である。
図11のステップS21において得られた第1のハーフトーン領域3のデータと、ステップS41において得られた第2のハーフトーン領域4のデータとを、ステップS51において処理部402が合体させて、網点印刷物のデータを作成する。
【0064】
最後に、ステップS61として、外部の印刷機等の出力部404から出力して網点印刷物が完成する。
【0065】
以上のように、本実施の形態によれば、第2のハーフトーン領域4内に、潜像画像を形成する網点4aと背景部4bの濃度の不均衡を緩和させるために、濃度緩和部4cを形成することで、通常光下の観察において、第2のハーフトーン領域4に含まれる網点4a及び背景部4bが等色として視認され、潜像画像の隠蔽性を向上させることができる。
【0066】
また、第2のハーフトーン領域4の網点4aと背景部4bとをそれぞれ形成するインキの色が若干異なっているような場合であっても、濃度緩和部4cを設けたことにより通常光下において、肉眼で潜像画像が顕像化されて視認されないため、これらのインキ作製時の調色の幅が広がることから、インキの選択の幅を拡げることができる。
【0067】
上記実施の形態に基づいて作成した実施例としての網点印刷物について、以下に説明する。
【実施例1】
【0068】
図15(a)に、実施例1において用いた可視画像の原画、
図15(b)に潜像画像の原画をそれぞれ示す。このような原画に相当する画像データを取得し、上記実施の形態の作製方法の手順に従い、網点印刷物のデータを生成した。具体的には、解像度2540dpiのRGB画像データとして印刷版面データを作成し、tiff形式で記憶部に格納した。
【0069】
第1のハーフトーン領域3を40×40ピクセル、第2のハーフトーン領域4を15×15ピクセルの寸法とした。第1のハーフトーン領域3の網点3aは、RGB値を180、100、80(茶)とした。第1のハーフトーン領域3内における網点3aを除く領域は、RGB値を255、255、255(白)とした。第2のハーフトーン領域4の網点4aは、RGB値を0、0、0(黒)とした。第2のハーフトーン領域4の背景部4bは、RGB値を128、128、128(灰)とした。第2のハーフトーン領域4の濃度緩和部4cは、RGB値を255、255、255(白)とした。さらに、すべての第2のハーフトーン領域4が通常光下の観察において、網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cを合わせた濃度が他の領域と等しくなるように、各々の領域内における網点4a、背景部4b及び濃度緩和部4cの面積を設定した。
【0070】
得られた印刷版面データに対し、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の印刷機能を用いて印刷を行った。印刷機として、RICOH(登録商標)社製カラーレーザプリンタIPSiO SP C411(登録商標)を用いて、Canon(登録商標)社製カラーレーザコピア用紙(品番TKCLA3)に印刷を行った。
【0071】
図15(c)に、実施例1の網点印刷物により通常光下で視認される可視画像を示し、
図15(d)に可視画像を形成する網点を拡大して示す。通常光下において肉眼で観察したところ、
図15(c)に示されたような第1のハーフトーン領域3により形成された茶色の階調画像が視認された。第2のハーフトーン領域4における網点4aによる潜像画像は、
図15(c)に示されるようにほとんど視認されなかった。
【0072】
この印刷物を、赤外線カメラを用いて肉眼で観察したところ、第2のハーフトーン領域4における網点4aが形成する潜像画像が視認され、第1のハーフトーン領域3による可視画像は視認されなかった。
【0073】
図16に、濃度緩和部を備えていない網点印刷物において、通常光下で観察した場合の潜像画像を示す。通常光下において肉眼で観察すると潜像画像がある程度視認される。これに対し、実施例1による網点印刷物では、
図15(c)に示されたように潜像画像はほとんど視認されることがなく、濃度緩和部4cがもたらす偽造防止効果を確認することができた。また、前述の実施例1は、本発明の一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の技術的範囲内において様々に変形することが可能である。
【実施例2】
【0074】
実施例2における網点印刷物11について、その構成を示した
図17を用いて説明する。実施例2の網点印刷物11は、可視画像を形成する第1のハーフトーン領域3と潜像画像を形成する第2のハーフトーン領域4とを備えている。しかし、ハーフトーン領域は、2つに限らず、3つ以上備えていてもよい。
図17(a)に示されたように、実施例2の網点印刷物11は、基材12の表面上に形成されており、
図17(b)に拡大して示されたように可視画像を形成する第1のハーフトーン領域13、第1の潜像画像を形成する第2のハーフトーン領域14に加えて、第2の潜像画像を形成する第3のハーフトーン領域15を備えている。
【0075】
複数の第1のハーフトーン領域13と複数の第2のハーフトーン領域14とは、相互に隣接するように配置し、隙間なく規則的に配置した。第3のハーフトーン領域15は、第1のハーフトーン領域13内における網点13aが存在しない領域に配置した。実施例2では、第3のハーフトーン領域15を、第1のハーフトーン領域13内に設けた例として説明するが、第3のハーフトーン領域15は、第2のハーフトーン領域14内や第1のハーフトーン領域13と第2のハーフトーン領域14に跨って形成されてもよく、単独の領域として、第1のハーフトーン領域13及び第2のハーフトーン領域14と隣接して隙間なく形成してもよい。
【0076】
第1のハーフトーン領域13は、前述の実施の形態及び実施例1における第1のハーフトーン領域3と同様に、連続階調の可視画像を構成する網点13aを有している。第2のハーフトーン領域14は、連続階調の第1の潜像画像を構成する網点14a、背景部14b及び濃度緩和部14cを有している。第3のハーフトーン領域15は、連続階調の第2の潜像画像を構成する網点15a及び背景部15bを有している。
【0077】
図17(c)に示されたように、第1のハーフトーン領域13により可視画像21が形成され、
図17(d)に示されたように、第2のハーフトーン領域14により第1の潜像画像22が形成される。さらに、
図17(e)に示されたように、第3のハーフトーン領域15により第2の潜像画像23が形成される。
【0078】
実施例2によれば、第1の潜像画像22に加えて第2の潜像画像23を形成したことにより、偽造防止効果を高めることができる。また、前述の実施の形態と同様に、第1の潜像画像22を形成する第2のハーフトーン領域14に濃度緩和部14cを設けたことにより、通常光下において肉眼で観察した場合に、第1の潜像画像22がほとんど視認されないため、偽造防止を困難なものとすることができる。なお、第3のハーフトーン領域15において、第2のハーフトーン領域14と同様に、濃度緩和部を有することもできる。この場合も、第2のハーフトーン領域14と同様に、網点15aの面積にかかわらず、複数の第3のハーフトーン領域15において、網点15aと背景部15bと濃度緩和部とを加算した濃度が一定となるように、第3のハーフトーン領域15内のいずれかの領域に濃度緩和部を設ければよい。
【実施例3】
【0079】
実施例3における網点印刷物について、その構成を示した
図18を用いて説明する。実施例3では、実施例2の印刷物が備える可視画像を形成する第1のハーフトーン領域13、第1の潜像画像を形成する第2のハーフトーン領域14、第2の潜像画像を形成する第3のハーフトーン領域15に加えて、さらに第3の潜像画像を形成する第4のハーフトーン領域16を備えている。
【0080】
図18(a)に示されたように、実施例3の網点印刷物31は、基材12の表面上に形成されており、
図18(b)に拡大して示されたように可視画像を形成する第1のハーフトーン領域13、第1の潜像画像を形成する第2のハーフトーン領域14、第2の潜像画像を形成する第3のハーフトーン領域15、さらに第3の潜像画像を形成する第4のハーフトーン領域16を備えている。
【0081】
複数の第1のハーフトーン領域13と複数の第2のハーフトーン領域14とを相互に隣接するように配置し、隙間なく規則的に配置した。第3のハーフトーン領域15は、実施例2と同様に、第1のハーフトーン領域13内における網点13aが存在しない領域に配置し、さらに、第4のハーフトーン領域16は、第1のハーフトーン領域13内における網点13a及び第3のハーフトーン領域15が存在しない領域に配置した。実施例3では、第3のハーフトーン領域15及び第4のハーフトーン領域16を、第1のハーフトーン領域13内に設けた例として説明するが、それに限定されるものではなく、特願2010−208705号において開示された、様々な網点構成とすることも可能である。例えば、第3のハーフトーン領域15及び第4のハーフトーン領域16は、第2のハーフトーン領域14内や第1のハーフトーン領域13と第2のハーフトーン領域14に跨って形成されてもよく、単独の領域として、第1のハーフトーン領域13及び第2のハーフトーン領域14と隣接して隙間なく形成してもよい。
【0082】
第1のハーフトーン領域13は、前述の実施の形態、実施例1及び実施例2における第1のハーフトーン領域3、13と同様に、連続階調の可視画像を構成する網点13aを有している。第2のハーフトーン領域14は、連続階調の第1の潜像画像を構成する網点14a、背景部14b及び濃度緩和部14cを有している。また、第3のハーフトーン領域15は、連続階調の第2の潜像画像を構成する網点15a及び背景部15bを有している。さらに、第4のハーフトーン領域16は、連続階調の第3の潜像画像を構成する網点16a及び背景部16bを有している。
【0083】
図18(c)に示されたように、第1のハーフトーン領域13により可視画像21が形成され、
図18(d)に示されたように、第2のハーフトーン領域14により、第1の潜像画像22が形成され、
図18(e)に示されたように、第3のハーフトーン領域15により第2の潜像画像23が形成され、さらに
図18(f)に示されたように、第4のハーフトーン領域16により第4の潜像画像24が形成される。
【0084】
実施例3によれば、前述した実施例2の第1の潜像画像22及び第2の潜像画像23に加えて、第3の潜像画像24を形成したことにより、偽造防止効果をさらに高めることができた。また、上記実施の形態と同様に、第1の潜像画像22を形成する第2のハーフトーン領域14に濃度緩和部14cを設けたことにより、通常光下において肉眼で観察した場合に第1の潜像画像22がほとんど視認されず、偽造防止を困難なものとすることができた。
【0085】
第3のハーフトーン領域15又は第4のハーフトーン領域16、あるいは第3のハーフトーン領域15及び第4のハーフトーン領域16において、第2のハーフトーン領域14と同様に濃度緩和部を有することもできる。この場合においても第2のハーフトーン領域14と同様に、網点15a及び網点16aの面積にかかわらず、網点15aと背景部15bと濃度緩和部との濃度を加算した値、網点16aと背景部16bと濃度緩和部との濃度を加算した値が一定となるように、第3のハーフトーン領域15内、第4のハーフトーン領域16内に濃度緩和部を設ければよい。
【0086】
また、ハーフトーン領域の数に制限はなく、第4の潜像画像を形成する第5のハーフトーン領域、第5の潜像画像を形成する第6のハーフトーン領域というように、4つ以上の潜像画像をそれぞれ形成するため、全体で5つ以上のハーフトーン領域を備えてもよい。また、潜像画像をそれぞれ形成する複数のハーフトーン領域においては、少なくとも1つのハーフトーン領域において、濃度緩和部が形成されていればよく、必要に応じて他のハーフトーン領域においても濃度緩和部を形成することで偽造防止効果を高めることができる。
【実施例4】
【0087】
実施例4の網点印刷物について説明する。前述までの実施の形態等で説明した網点印刷物は、潜像画像22を形成するための第2のハーフトーン領域4の網点4aを、機能性材料として赤外線を吸収するブラック(Bk)インキで形成している。
【0088】
しかし、機能性材料は赤外線吸収インキに限定されず、様々なものを用いることができる。例えば、メタメリックペアインキ、サーモクロミックインキ、金属インキ等を用いてもよい。
【0089】
実施例4として、メタメリックペアインキを用いて網点印刷物を形成した実施例について説明する。例えば、上述した特許文献3において記載されているように、第2のハーフトーン領域4の網点4a及び背景部4bを形成するのは、第1のインキ及び第2のインキであり、これらのインキは、400〜700nmの可視全波長に相当する波長領域Aでは、両者が等色として視認され、所定のフィルタ等が透過する所定の波長領域Bでは、異なる色として視認される。このようなメタメリックペアインキを用いて、上記実施の形態及び各実施例の第2のハーフトーン領域4を形成してもよい。
【0090】
すなわち、第2のハーフトーン領域4、14における網点4a、14aを第1のインキで形成し、背景部4b、14bを第2のインキで形成することで、通常光下における肉眼では、両者が等色として視認され、所定のフィルタを用いて観察すると、両者が異なった色として視認されることで潜像画像を形成することができる。この場合の濃度緩和部4c、14cにおいても、上記実施の形態及び各実施例と同様に、網点4a、14aの面積にかかわらず網点4a、14aと背景部4b、14bと濃度緩和部4c、14cとをそれぞれ加算した濃度が一定となるように第2のハーフトーン領域4、14内のいずれかの領域に濃度緩和部4c、14cを設ければよい。
【0091】
また、実施例2における第3のハーフトーン領域15、実施例3における第3のハーフトーン領域15又は第4のハーフトーン領域16に対しても同様にメタメリックペアインキを用いて形成してもよい。
【実施例5】
【0092】
次に、他の機能性材料を用いる例として、サーモクロミックインキを用いた実施例5について
図20を用いて説明する。サーモクロミックインキは、温度変化に応じて色が変化するインキであり、第1の温度では、第1の色を示し、第2の温度では、第2の色を示す。このようなサーモクロミックインキと、当該機能性を有していない通常のインキとを用いて、第1のハーフトーン領域13における網点13aを、前述の第1の色と等色の通常のインキで形成し、第2のハーフトーン領域14の網点14aを、前述の第2の色と等色の通常のインキで形成し、第1のハーフトーン領域3における背景部13bと、第2のハーフトーン領域14における背景部14bをサーモクロミックインキで形成する。それにより、第2の温度では、
図20(a)に示すように、第1のハーフトーン領域13における背景部13b、第2のハーフトーン領域14における網点14a及び背景部14bが等色として視認されることから、第1のハーフトーン領域13における網点13aのみが、異なる色として観察されることで、複数の網点13aから成る一つ目の画像が観察される。また、第1の温度では、
図20(b)に示すように、第1のハーフトーン領域13における網点13a、背景部13b及び第2のハーフトーン領域14における背景部14bとが等色として視認されることから、第2のハーフトーン領域14における網点14aのみが、異なる色として観察されることで、複数の網点14aから成る二つ目の画像が観察される。
【0093】
しかし、第1のハーフトーン領域13における網点13aを形成するインキが第1の色と異なる場合及び/又は第2のハーフトーン領域14における網点14aを形成するインキが第2の色と異なる場合は、第1のハーフトーン領域13内の網点13aと背景部13b、第2のハーフトーン領域14内の網点14aと背景部14bの色がそれぞれ異なって観察され、2つの画像が混在して観察されることがある。これらを避けるため、第1のハーフトーン領域13及び第2のハーフトーン領域14のいずれか一方か、又は双方に、濃度緩和部13c及び14cを形成する。
【0094】
この場合の濃度緩和部13c及び14cにおいても、前述までの実施の形態と同様に、網点13a及び14aの面積にかかわらず、第1の温度において第1のハーフトーン領域13における網点13aと背景部13bと濃度緩和部13cとを加算した濃度と、第2の温度において第2のハーフトーン領域14における網点14aと背景部14bと濃度緩和部14cとを加算した濃度とが各一定となるように、第1のハーフトーン領域13及び/又は第2のハーフトーン領域14内に濃度緩和部13c及び/又は14cを設ければよい。
【0095】
前述のように、第1のハーフトーン領域13及び第2のハーフトーン領域14に濃度緩和部13c及び14cを設けたことで、第1の温度では、
図20(d)に示すように、サーモクロミックインキが示す第1の色と前記第1のハーフトーン領域13における網点13aを形成するインキの色とが一致しない場合であっても、すべての第1のハーフトーン領域13において、網点13a、背景部13b及び濃度緩和部13cを加算した濃度が略一致することから、すべての第1のハーフトーン領域13が等色として観察され、第2のハーフトーン領域14の網点14aによる2つ目の画像のみが観察された。
【0096】
また、第2の温度では、
図20(c)に示すように、サーモクロミックインキが示す第2の色と前記第2のハーフトーン領域14における網点14aを形成するインキの色とが一致しない場合であっても、すべての第2のハーフトーン領域14において、網点14a、背景部14b及び濃度緩和部14cを加算した濃度が略一致することから、すべての第2のハーフトーン領域14が等色として観察され、第1のハーフトーン領域13の網点13aによる1つ目の画像のみが観察された。
【0097】
以上の構成とすることで、サーモクロミックインキの第1の色及び第2の色のそれぞれと等色のインキについては、第1のハーフトーン領域13及び第2のハーフトーン領域14のいずれか一方又は双方に濃度緩和部を形成することで、インキの色が若干異なっていても、2つの画像をスイッチさせることが可能となった。
【実施例6】
【0098】
次に、機能性材料として、金属インキを用いた実施例として、例えば、本願と同一出願人による特許第4478778号において記載されているように金属粉を含むインキであり、通常光下では高明度(低濃度)で、赤外線照射下では低明度(高濃度)を有するものである。
【0099】
このような金属インキを、上記実施の形態における赤外吸収性を有するブラック(Bk)インキの替わりに用いて網点4aを形成し、背景部4bは、混色ブラックインキを用いて形成し、第2のハーフトーン領域4を形成してもよい。
【0100】
前述のように、第2のハーフトーン領域4における網点4aを金属インキで形成し、背景部4bを混色ブラックインキで形成した。これにより、通常光下において肉眼で視認した際に、混色ブラックで形成した背景部4bの方が若干ではあるが、濃度が高い状態として観察されたが、両者が略等色として視認された。一方、赤外線照射下では、両者が異なった色として視認されることで潜像画像を形成することができた。この場合の濃度緩和部4cは、通常光下において、濃度が高い状態として観察される背景部4bの濃度を緩和するために設けられるが、前述までの実施の形態等と同様に、背景部4bの面積にかかわらず、網点4aと背景部4bとを加算した濃度が一定となるように第2のハーフトーン領域4内のいずれかの領域に設ければよい。
【0101】
また、実施例2における第3のハーフトーン領域15、実施例3における第3のハーフトーン領域15、第4のハーフトーン領域16に対しても、同様に、金属インキと混色ブラックインキとを用いて形成してもよい。