(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の画線群は、前記第1の切欠き部が形成された一方の斜面とは反対側の他方の斜面に、前記凸形状の一部が欠落した第2の切欠き部を備えた複数の前記第1の画線を有し、
前記第2の画線群は、前記第2の切欠き部と同じ位置に前記印刷インキが施されていない第2の潜像部を備えた複数の前記第2の画線を有し、
複数配置された前記第2の切欠き部及び前記第2の潜像部により第二の潜像画像が形成され、
前記第2の切欠き部及び前記第2の潜像部が配置された前記他方の斜面側を、前記基材に対して斜め方向の第3の観察方向から観察すると前記第二の潜像画像が更に確認できることを特徴とする請求項1記載の偽造防止担持体。
前記第1の画線群は、前記第1の切欠き部及び前記第2の切欠き部が同じ又は異なる画線に形成されている前記第1の画線を有していることを特徴とする請求項2記載の偽造防止担持体。
前記第1の切欠き部と前記第2の切欠き部が同じ前記第1の画線に形成されている場合、前記第1の切欠き部と前記第2の切欠き部は、少なくとも一部が重複した位置に形成されていることを特徴とする請求項3記載の偽造防止担持体。
【背景技術】
【0002】
銀行券、旅券、有価証券、商品券、各種証明書等の貴重印刷物には、偽造、変造及び複写防止のために、様々な偽造防止技術が付与されている。その中でも、潜像画像を形成する技術は多種多様に提案されている。例えば、凹版印刷、グラビア印刷又はスクリーン印刷等、基材に対して凸状の画線が形成可能な印刷方式を用いて凸状の画線を形成するか、又はエンボス、レーザ加工、すき入れ等、基材自体に加工を施して凸状の画線を形成し、その凸状の画線に少なくとも一部が重畳するように有色インキを印刷することで、基材を傾けることにより潜像模様を出現させる技術がある。
【0003】
例えば、本出願人は、部分的に角度を異にすることにより図柄を表した万線模様及び/又はレリーフ模様のエンボスにより形成された凹凸形状の基材に、基材の色又は無色透明以外の異なった色のインキによって、一定な間隔を持つ万線を凹凸形状の図柄以外の構成する部分に対して、平行又は傾斜を持たせて印刷することにより、正面から見ると万線模様しか視認できないが、斜め方向から見ると、凹凸形状による画線と有色インキによる画線との間に生じる一定でない位置関係で、凹凸形状によって形成されている潜像模様が容易に視認できる偽造防止用潜像模様形成体を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1記載の偽造防止用潜像模様形成体は、基材への凹凸加工及び微細な万線との融合による潜像模様の形成が可能であり、偽造及び複製の防止として優れた効果を奏するものであったが、形成可能な潜像模様は一種類であり、デザイン面への制限及び更なる偽造防止技術の高度化が望まれていた。
【0005】
そこで、本出願人は、二つ以上の潜像模様を出現可能な技術を出願している(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この特許文献2記載の偽造防止用潜像模様形成体は、基材面上に、基材と同色の断面が隆起したレリーフ万線から成るレリーフ模様が形成され、このレリーフ万線のそれぞれは、長手方向に伸びる基線部から長手方向に対して一側方に突出し、長手方向に沿って1以上形成された凸部を有しており、その凸部は、長手方向に対して側方に伸びる両側部と、基線部と平行な頂辺部とを有する段部が複数連成してピラミッド状に構成されており、レリーフ万線の凸部に重なるように、レリーフ万線に沿って平行に伸びるように印刷万線が印刷されることで、段部の数に相当する複数の異なる観察角度をもち斜めから観察すると、観察角度に応じて異なる潜像模様が観察可能である。
【0007】
また、その他の二つ以上の潜像画像を出現可能な技術として、所定のピッチと線幅を有し、所定の方向に延びる微細な万線状凸部でなる潜像パターンと、該潜像パターンの領域外で潜像パターンと略同一ピッチと線幅を有し、潜像パターンに対して垂直方向に延びる微細な万線状凸部でなる背景部とで構成される凹版印刷物を一画像とし、略同一ピッチと線幅を有する複数の画像が各々を構成する潜像パターンの万線状凸部及び背景部の万線状凸部同士の角度をずらして合成され、その合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されている凹版印刷物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
この特許文献3に記載の凹版印刷物は、各画像を形成している各万線状凸部の配置方向に対応した観察方向から見ると、それぞれ異なる潜像パターンが視認できるものであり、合成する画像、所謂出現させることのできる潜像模様を二つ以上とすることができる。
【0009】
また、基材自体に凹凸形状を施して二つの潜像画像を出現することができる技術として、規則的に配置された万線状の凹凸形状を有する表示面と、その表示面上にあって、凹凸形状の延長方向に略平行な第1の直線が所定のピッチで並べられた第1の直線群と、その第1の直線に平行な直線であって、第1の直線に垂直な方向に位置が略半ピッチずれた第2の直線が第1の直線群と同一ピッチで並べられた第2の直線群とを備え、第1の直線群で表示する文字及び/又は図柄と第2の直線群で表示する文字及び/又は図柄が異なる像表示媒体が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
この特許文献4に記載の像表示媒体は、基材を一方の斜め方向から観察すると第1の直線群で表示した文字及び/又は図柄が視認でき、基材を反対側の他方の斜め方向から観察すると第2の直線群で表示した文字及び/又は図柄が視認できるものであり、二つの潜像模様を出現させることができる。
【0011】
さらに、本出願人は、光透過性の基材に、所定の傾斜角を有する内面を含むように、凹部が一方向に連続的に配列された複数の基本画像形成部と、その基本画像形成部の内面又は表面に、所定の傾斜角とは異なる傾斜角の切欠き部又は凸部が形成された複数の潜像画像形成部が形成され、基本画像形成部が背景画像を形成し、潜像画像形成部が潜像画像を形成することを特徴とする画像形成体を出願している(例えば、特許文献5参照)。
【0012】
この特許文献5に記載の画像形成体は、基材面に対して真上となる垂直方向から観察すると、透明基材に凹凸形状の万線が形成されていることが確認できるが、凹部内面に潜像画像形成部が形成されている側が観察可能な斜め方向から見ると、基本画像形成部と潜像画像形成部との反射光の屈折角度の差により、潜像画像が確認できる。なお、傾斜角を異ならせた潜像画像形成部を凹部の内面に形成することで、二つ以上の潜像画像も形成することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0026】
図1は、本発明における偽造防止担持体(1)(以下、「担持体」という。)の一例を示す図である。この担持体(1)は、
図1に示すように、基材(2)上の少なくとも一部に本発明における潜像画像が形成されている潜像画像形成領域(3)を有している。なお、
図1に示すように、潜像画像形成領域(3)以外の領域には、料額、文字、他の模様等の必要な情報が公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷、凹版印刷等)により施されていても良い。
【0027】
本発明における基材(2)は、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類、フィルム、プラスチック等を用いることができる。ただし、本発明の特徴点である潜像画像を形成するため、基材に凸部を形成する必要があることから、所定の厚みを有する基材を用いることが好ましい。この凸部の高さ等については、潜像画像形成領域(3)に形成される第1の画線を説明するところで詳細に示すこととする。
【0028】
図2及び
図3は、担持体(1)における潜像画像形成領域(3)を、所定の条件により観察したときの状態を示す図である。本発明における担持体(1)は、詳細については後述するが、基材(2)上の少なくとも一部に、基材(2)に形成された凹凸形状の凸部から成る第1の画線(4)が万線状に配置された第1の画線群(5)と、その第1の画線(4)上に、有色インキにより第2の画線(6)が万線状に印刷された第2の画線群(7)が形成されている。
図2(a)は、基材(2)を真上から観察したとき(以下、「第1の観察方向(V
1)」という。)の図であり、
図2(b)は、そのときに確認できる潜像画像形成領域(3)を示す図である。第1の観察方向(V
1)から基材(2)を観察すると、
図2(b)に示すように、第2の画線群(7)が確認できる。
【0029】
図3(a)は、第1の画線(4)及び第2の画線(6)が配列されている方向に対して垂直方向、かつ、基材(2)に対して斜め方向から観察したとき(以下、「第2の観察方向(V
2)」という。)の図であり、
図3(b)は、そのときに確認できる潜像画像形成領域(3)を示す図である。第2の観察方向(V
2)から基材(2)を観察すると、
図3(b)に示すように、第一の潜像画像(8a)が第2の画線(6)の白抜け画像として確認できる。なお、
図3(b)では、「A」という第一の潜像画像(8a)が確認できる状態を示している。
【0030】
また、
図3(c)は、第1の画線(4)及び第2の画線(6)が配列されている方向に対して第2の観察方向(V
2)とは反対の斜め方向から観察したとき(以下、「第3の観察方向(V
3)」という。)の図であり、
図3(d)は、そのときに確認できる潜像画像形成領域(3)を示す図である。第3の観察方向(V
3)から基材(2)を観察すると、
図3(d)に示すように、第二の潜像画像(8b)が第2の画線(6)の白抜け画像として確認できる。なお、
図3(d)では、「B」という第二の潜像画像(8b)が確認できる状態を示している。
【0031】
以上のとおり、本発明における担持体(1)は、基材(2)に対して第1の観察方向(V
1)から観察すると、有色インキにより印刷された第2の画線群(7)が確認でき、第2の観察方向(V
2)から観察すると第一の潜像画像(8a)が確認でき、さらに、第3の観察方向(V
3)から観察すると第二の潜像画像(8b)が確認できるものである。
【0032】
なお、
図3では、第一の潜像画像(8a)と第二の潜像画像(8b)の二つの潜像画像が確認できる態様で説明したが、本発明の担持体(1)は、どちらか一方の潜像画像(8)のみを形成しても良い。
【0033】
以下、潜像画像(8)を形成している潜像画像形成領域(3)の構成について説明する。
【0034】
図4(a)は、基材(2)を第1の観察方向(V
1)から観察したときの潜像画像形成領域(3)を示している。前述のとおり、第1の観察方向(V
1)から観察すると、有色インキにより印刷された第2の画線群(7)が確認できる状態であるが、この潜像画像形成領域(3)は、
図4(b)に示すように、第1の画線(4)が万線状に配列された第1の画線群(5)と、
図4(c)に示すように、第2の画線(6)が万線状に配列された第2の画線群(7)の二つの画線群から構成されている。なお、本発明において、「万線状」とは、複数の画線が規則的に所定のピッチで配列されている状態を言う。
【0035】
また、それぞれの画線には、潜像画像(8)を形成するための各要素が形成されており、第1の画線(4)には切欠き部(9)が形成され、第2の画線(6)には潜像部(10)が形成されている。
【0036】
以下、それぞれの画線について詳細に説明することとするが、まず、第1の画線(4)について説明する。
【0037】
(第1の画線)
第1の画線(4)は、基材(2)自体に凹凸形状を施し、その凸部を画線とするものである。したがって、凸部が画線となるように凹凸形状を施す必要があるとともに、その凸部から成る第1の画線(4)が万線状に配列されるように施すことが必要である。なお、第1の画線(4)は、基材(2)自体を加工して形成されることから、基材(2)の色と同じ色の画線となる。
【0038】
この第1の画線(4)を形成する方法としては、基材(2)が紙であれば、例えば、用紙製造段階においてすき入れにより施すことでも良いし、公知のレーザ加工又はエンボス加工により施しても良い。また、基材(2)がフィルム又はプラスチックの場合には、レーザ加工又はエンボス加工により形成することができる。
【0039】
図5は、第1の画線(4)を説明するための図である。
図5(a)は、潜像画像形成領域(3)に形成されている第1の画線群(5)のみを第1の観察方向(V
1)から見た図である。
図5(a)に示すように、第1の画線群(5)は、第1の画線(4)が万線状に配列されており、複数配列されている第1の画線(4)の一部の画線において、画線幅が異なる箇所を有する第1の画線(4)が存在している。この画線幅が異なる箇所を切欠き部(9)といい、複数の切欠き部(9)が潜像画像(8)を形成するための一つの要素となる。なお、
図5(a)では、切欠き部(9)により形成されている潜像画像(8)(図面上「A」及び「B」)が確認できるが、これは説明上理解しやすいように図示しただけであり、実際の切欠き部(9)は、前述したように、基材(2)と同じ色となっているので、第1の観察方向(V
1)から確認することはできない。
【0040】
図5(a)におけるX−X'断面図を
図5(b)及び(c)に示す。
図5(b)及び(c)に示すように、第1の画線(4)は、基材(2)に凹凸形状を施すことにより形成された凸部を画線として用いている。この凸部の高さ(H)は、基材(2)の種類によって異なるところであり、基材(2)が紙の場合には20〜60μmの範囲である。20μm以下では、この後に説明する第1の画線(4)の上に印刷される有色インキによる第2の画線(6)が切欠き部(9)にも印刷されてしまうこととなり、潜像画像(8)を形成することができなくなるからである。また、紙葉類に用いられる上質紙やコート紙等の厚みは、100μm程度であることから、60μm以上の凸部を形成することが困難となるからである。
【0041】
基材(2)がプラスチックやフィルムの場合には、凸部の高さ(H)の下限は、紙基材の場合と同様20μmとなるが、紙基材よりも厚くすることが十分可能であることから、上限に制約はないが、あまり凹凸差が大きいと近くで視認し難くなるため、300μm以下が好ましい。したがって、本発明における第1の画線(4)の画線高さ(H)は、20〜300μmの範囲であり、基材の種類により、適宜その範囲の中で設計することができる。
【0042】
第1の画線(4)の凸形状については、特に限定されるものではなく、
図6に示すように色々な形状があげられる。例えば、
図6(a)は台形、
図6(b)は、半円形又は半楕円形、
図6(c)は、三角形である。
図6(a)から(c)の例では、頂点(Q)を境に左右均等の形状をしているが、本発明の第1の画線(4)はこのように左右均等の凸形状に限定されるものではなく、
図6(d)のように、左右不均等の形状であっても良い。なお、
図6(a)の台形のような形状の画線の場合は、上部の辺の中心を頂点(Q)とする。
【0043】
本発明の第1の画線(4)の形状としては、凸形状を成し、かつ、頂点(Q)を境に両側に斜面を有していれば良い。これは、第1の画線(4)上の頂点(Q)をまたぎ、両側の斜面にかかるように第2の画線(6)を重ねて印刷することとなるため、
図6(e)に示すように、頂点(Q)を境とした一方の辺が斜面とならずに、基材(2)に対して垂直となるような形状では、第2の画線(6)が印刷されないため、第1の画線(4)として不適合である。
【0044】
なお、
図6(c)及び(d)に示すような三角形の凸形状の場合も、あまり頂点(Q)に対する頂角が小さくなりすぎると、やはり、第2の画線(6)を両側の斜面に印刷することができなくなるため好ましくはない。したがって、
図6(a)のような台形や、
図6(b)のように、なだらかな斜面を持つような半円形又は半楕円形が好ましい。本発明では、半円形や半楕円形のような形状でも、頂点(Q)を境に斜面を有していることとする。
【0045】
次に第1の画線(4)の画線幅(W
1)及びピッチ(P
1)について、
図7を用いて説明する。第1の画線(4)の画線幅(W
1)は、50〜800μmの範囲で形成する。50μmより狭い画線幅は、後述する切欠き部(9)を形成することが困難となるためであり、800μmより太い画線幅は、第1の画線(4)自体が目視により確認できるため好ましくない。この第1の画線(4)が万線状に配列されるときのピッチ(P
1)については、100〜1000μmの範囲で形成する。100μmより狭いピッチでは、第1の画線(4)を形成するための凹凸形状を加工することが困難となり、実質上、第1の画線(4)を形成することができなくなる。また、1000μmより広いピッチでは、形成される潜像画像(8)が違和感のある画像となってしまうため、好ましくない。
【0046】
第1の画線群(5)を構成している複数の第1の画線(4)においては、
図5(b)及び(c)に示すように、潜像画像(8)を形成するための一つの要素となる切欠き部(9)を有している画線が存在している。この切欠き部(9)について、以下、説明する。
【0047】
切欠き部(9)は、第1の画線(4)に形成されており、
図8に示すように、凸形状となっている第1の画線(4)の一方の斜面側が欠けている状態となっている。この切欠き部(9)は、第1の画線(4)の凸形状において、両側の斜面に形成することが可能であり、
図8に示すように、一方の斜面側に形成されている切欠き部(9)を第1の切欠き部(9a)といい、反対側の他方の斜面側に形成されている切欠き部(9)を第2の切欠き部(9b)という。なお、
図8において切欠き部(9)を説明し易くするために点線にて仮想線を図示しているが実際には存在しない。以下、切欠き部(9)の説明するところに随時仮想線が図示されているが同様である。
【0048】
第1の画線(4)の画線幅(W
1)について
図7において説明したが、
図6で示した形状のように、第1の画線(4)の凸形状の上部と下部とでは幅が異なることとなるため、第1の画線(4)の画線幅(W
1)とは、
図8に示すように、凸形状の下部の部分の幅をいう。
【0049】
図3から
図5では、潜像画像(8)が二つ形成されている潜像画像形成領域(3)に対して、切欠き部(9)も、第1の切欠き部(9a)と第2の切欠き部(9b)の二つが第1の画線(4)の両斜面に形成されていることで説明してきたが、本発明は、必ずしも両斜面に切欠き部(9)を形成することに限定されるものではなく、
図9に示すように、潜像画像(8)を一つ形成する場合には、第1の画線(4)の一方の斜面のみに切欠き部(9)(
図9においては、第1の切欠き部(9a)のみを形成)を形成すれば良い。
【0050】
切欠き部(9)の大きさについて、
図10及び
図11を用いて説明する。まず、
図10における切欠き部(9)の幅(z
1)については、第1の画線(4)の頂点(Q)を結んだ線(
図10におけるQ
1−Q
1'線)を境に、第1の画線(4)の画線幅(W
1)の半分以下とする。したがって、第1の画線(4)の画線幅(W
1)が前述のとおり50〜800μmの範囲であることから、切欠き部(9)の幅(z
1)は25〜400μmの範囲となる。また切欠き部(9)の長さ(t
1)については、特に制限はなく、上限は第1の画線の長さと等しい。切欠き部(9)の長さ(t
1)については、形成する潜像画像(8)の形状により適宜決定されるものであり、50μmより短いと、切欠き部(9)を形成することが困難であることと、目視によって視認し難いためである。切欠き部(9)は、第1の画線(4)と同じ長さまで形成することが可能であり、第1の画線(4)の長さは、担持体(1)に形成する潜像画像形成領域(3)の大きさにより適宜決定されるため、その第1の画線(4)の長さにより、切欠き部(9)の長さ(t
1)も上限は適宜決定される。
【0051】
切欠き部(9)の高さ(h)については、基材(2)の厚みにより決定されるものであり、更には、基材(2)の種類によっても異なるところである。例えば、プラスチック等の比較的硬度の高い基材(2)の場合には、切欠き部(9)の高さ(h)を高く設けても問題はないが、紙のように、比較的硬度の低い基材(2)の場合には、あまり切欠き部(9)の高さ(h)を高く設けてしまうと、基材(2)自体の強度が落ちてしまったり、穴が開いてしまったりすることもある。したがって、基材(2)の厚みに依存するところではあるが、切欠き部(9)を設けたところの基材(2)を50μm程度は残すことが望ましい。
【0052】
切欠き部(9)は、
図11(a)に示すように、第1の画線(4)と同じ高さまで高さ(h)を有してもよく、
図11(b)に示すように、第1の画線(4)の途中の高さまでの高さ(h)又は
図11(d)に示すように、基材の途中の深さまで凹んでいても良い。また、
図11(a)及び(b)では、第1の画線(4)の断面において、頂点(Q)から斜めに切欠きされている形状であるが、
図11(c)に示すように、頂点(Q)から基材(2)に対して垂直に切欠きされていても良い。
【0053】
切欠き部(9)の形成方法は、第1の画線(4)が前述の方法により形成されてから、レーザ加工により切欠きを入れる、所謂、基材(2)を除去することで形成可能である。また、第1の画線(4)をエンボスで形成するとき、エンボスを施す部材(例えば、凹凸を有する版面)自体に第1の画線の一部に切欠き部(9)を形成し、紙基材(2)に同時にエンボスにより形成することが可能である。さらに、第1の画線(4)をすき入れにより形成する場合、すき入れを施すための部材の第1の画線の一部に切欠き部(9)を形成し、紙基材(2)に同時にすき入れにより形成することが可能である。
【0054】
(第2の画線)
次に、第1の画線(4)の上に有色インキにより印刷する第2の画線(6)について説明する。なお、切欠き部(9)については、第1の画線(4)に第1の切欠き部(9a)及び第2の切欠き部(9b)の二つが形成されていることで説明する。
【0055】
第2の画線(6)は、基材(2)及び第1の画線(4)と異なる色の有色インキにより第1の画線(4)上に印刷され、複数配列されることにより第2の画線群(7)を形成している。第2の画線群(7)は、
図12(a)に示すように、潜像画像(8)を形成する要素となる潜像部(10)を有している(
図12(a)では潜像画像(8)が「A」及び「B」である)。
【0056】
この潜像部(10)については、担持体(1)上では、既に形成されている状態であるが、実際の設計段階では、
図12(b)に示すように、潜像部(10)は形成されておらず、単純な直線の万線として視認される。
【0057】
この第2の画線(6)を第1の画線(4)上に形成する方法としては、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方式を用いることができる。
【0058】
次に第2の画線の画線幅(W
2)について
図13を用いて説明する。第2の画線(6)は、凸形状の第1の画線(4)上に印刷されるため、画線幅(W
2)は、第1の画線(4)の画線幅(W
1)以下とする必要がある。したがって、第1の画線(4)の画線幅(W
1)が50〜800μmの範囲であることから、第2の画線(6)の画線幅(W
2)の上限は800μmとなる。下限については、凸形状の第1の画線(4)の頂点(Q)をまたいで第2の画線(6)が形成可能な程度の幅を有する必要があるため、製造上可能な幅として50μm以上となる。また、第1の画線(4)のピッチ(P
2)は、第1の画線(4)上に第2の画線(6)を印刷することから、第1の画線のピッチ(P
1)と同じ100〜1000μmの範囲となる。
【0059】
この第2の画線(6)の画線幅(W
2)については、
図13(b)に示すように、凸形状の第1の画線(4)上に印刷されていることから、
図13(a)に示すように、第1の観察方向(V
1)から見える第2の画線(6)の幅の長さと、第2の観察方向(V
2)から見える第2の画線の幅の長さ(W
3)は異なるところであるが、本発明において第2の画線(6)の画線幅(W
2)とは、
図13(a)に示す第1の観察方向(V
1)から見える画線幅(W
2)のことをいう。
【0060】
ここで、第2の画線(6)に形成されている潜像部(10)について、第1の画線(4)に形成されている切欠き部(9)を用いて説明する。この潜像部(10)を含む第2の画線(6)については、第1の画線(4)の凸形状の高さ(H)及び第2の画線(6)の印刷方式により、二通りの態様がある。まず一つ目の態様として
図14に示す。
【0061】
図14(a)は、潜像画像形成領域(3)を第1の観察方向(V
1)から観察したときの図であるが、説明上、理解し易いように潜像画像(8)を示唆しているが、実際には第1の観察方向(V
1)からはほとんど確認できない。
【0062】
図14(a)の点線で囲んだ箇所の拡大図が
図14(b)である。
図14(b)では、基材(2)と第1の画線(4)が異なるパターンにて図示されているが、説明上、理解し易くするためであり、第1の画線(4)は基材(2)自体を加工して施されているため、実際は基材の色と同じであることから、色の区別はつかない。
【0063】
図14(b)に示すように、第1の画線(4)上に印刷された第2の画線(6)は、潜像画像(8)を形成するための要素となる潜像部(10)を有している。この潜像部(10)は、第2の画線(6)の他の箇所よりも部分的に画線幅が細くなって形成されているものである。この潜像部(10)をどのように形成するかについて、以下説明する。
【0064】
前述したように、設計段階では、第2の画線(6)は、
図12(b)に示したように、全ての画線が同じ画線幅の万線となっている。この状態の第2の画線(6)を、既に基材(2)に形成されている第1画線(4)上に印刷することとなるが、第1の画線(4)には、潜像画像(8)を形成するための要素となる切欠き部(9)が施されているため、第1の画線(4)の凸形状に対して頂点(Q)をまたぐように第2の画線(6)を印刷すると、第1の画線(4)が存在しない部分である切欠き部(9)には、第2の画線(6)を印刷するための有色インキが印刷されない。したがって、その部分のみ第2の画線(6)の画線幅が他の部分よりも細くなり、結果的に潜像部(10)を形成することとなる。
【0065】
図14(b)に示すように、第1の観察方向(V
1)から拡大して潜像部(10)を見ると、第2の画線(6)の一部が細くなり、その部分は第1の画線(4)が確認できることとなり、実際には基材(2)の色が確認できるものである。ただし、第2の画線(6)の潜像部(10)の大きさ(幅及び長さについては後述する。)が肉眼では視認することが困難な程の大きさとすることで、実際に第1の観察方向(V
1)から観察しても、単なる直線が複数配列された第2の画線群(7)として確認できる。
【0066】
第1の画線(4)上に印刷されている第2の画線(6)の状態を示したのが、
図14(b)のX−X'断面図である
図14(c)である。
図14(c)の右側に示すように、第2の画線(6)は、凸形状の第1の画線(4)上に、頂点(Q)(図示せず)をまたいで両側斜面に対して印刷されている。図示しているように、凸形状の第1の画線(4)の両側斜面に均等に印刷されていることが好ましいが、印刷時の若干のずれ等により、両側に必ずしも均等に印刷されていなくても、切欠き部(9)に対して第2の画線(6)が掛り、潜像部(10)が形成されれば問題はない。
図14(b)における潜像部(10)は、
図14(c)の断面図(左側及び中央)でみると、第2の画線(6)が印刷されていない切欠き部(9)となる。したがって、潜像部(10)と切欠き部(9)は同じ箇所に必ず形成されていることとなる。
【0067】
この
図14を用いて説明した潜像部(10)の一つ目の態様については、第1の画線(4)となる凸形状の高さ(H)が比較的高い場合に、オフセット印刷方式により第2の画線(6)を印刷すると、切欠き部(9)を形成するために除去されている部分には完全にインキが印刷されないこととなるため、第2の画線(6)を第1の観察方向(V
1)から観察すると、
図14(b)に示すように、第2の画線(6)の一部の画線幅が細くなり、潜像部(10)が形成されるものである。
【0068】
次に、二つ目の態様として
図15を用いて説明する。
図15(a)は、潜像画像形成領域(3)を第1の観察方向(V
1)から観察したときの図であり、この場合には、前述した
図14(a)と同じである。
図15(b)は、
図15(a)の点線で囲んだ箇所の拡大図を示しているが、ここで
図14(b)とは異なり、第1の観察方向(V
1)からみると、拡大図においても第2の画線(6)上に潜像部(10)は確認できない。これは、
図15(c)を見ると理解されることとなるが、第1の画線(4)の一部が除去されて切欠き部(9)が形成されてはいるものの、除去されていないところと同じ第1の画線(4)の画線幅(W
1)に該当する部分に第2の画線(6)が印刷されているためである。
【0069】
このことを更に詳細に説明するための図が
図16である。
図16は、
図15における潜像部(10)に該当する箇所のみを拡大した斜視図である。第1の画線(4)の一方の斜面側には、切欠き部(9)が存在しないため、第2の画線(6)がそのまま印刷されているが、頂点(Q)(図示せず)をまたいで反対側の斜面には切欠き部(9)が形成されているため、鋭角に除去されている部分には第2の画線(6)が印刷されていない(図中、点線による楕円形部分)。同じ切欠き部(9)であっても、基材面に比較的平行に除去されている部分には有色インキが載り、第2の画線(6)の一部が印刷されている。このような印刷状態については、基材(2)の種類が比較的弾力性のある紙であったり、第1の画線(4)となる凸形状の高さが低い場合や、インクジェット印刷による印刷方式を用いる場合に起こるものである。このような態様であっても、切欠き部(9)の鋭角な斜面については有色インキによる第2の画線(6)が印刷されないため、一つ目の態様と同様、潜像画像(8)を形成することが可能となる。
【0070】
この二つ目の態様による第2の画線(6)についても、実際に第2の画線(6)が印刷されていない鋭角な斜面の切欠き部(9)を挟んで有色インキによる第2の画線(6)が印刷されているため、第1の観察方向(V
1)から観察すると、単なる直線が複数配列されている第2の画線群(7)として確認される。したがって、一つ目の態様による第2の画線(6)の形態と、二つ目の態様による第2の画線(6)の形態のいずれも、第1の観察方向(V
1)から観察すると、同じように単なる直線として観察できるものである。
【0071】
潜像部(10)の幅(z
2)及び長さ(t
2)について
図17を用いて説明する。潜像部(10)は、前述したとおり、切欠き部(9)と同じ箇所に形成されるため、
図17(a)に示した長さ(t
2)については、切欠き部(9)の長さ(t
1)と必ず同じ長さとなる。幅(z
2)については、
図13を用いて第2の画線(6)の画線幅(W
2)を説明したものと同様、第1の画線(4)の斜面を用いて形成されているものであるため、第1の観察方向(V
1)、第2の観察方向(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察した場合とでは、見え方が異なるところである。そこで、本発明における潜像部(10)の幅(z
2)については、
図17(b)に示すように、潜像画像(8)が確認できる方向、所謂、第2の観察方向(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察した場合の幅(z
2’)とする。
【0072】
この潜像部(10)が、第1の観察方向(V
1)から観察したときには視認しにくく、第2の観察方向(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察したときに視認されるようにするためには、第1の観察方向(V
1)から観察した潜像部(10)の幅(z
2)より、第2の観察方向(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察した潜像部(10)の幅(z
2’)を大きくする必要がある。
【0073】
潜像部(10)が、第1の観察方向(V
1)から観察したときには視認しにくい潜像部(10)の幅(z
2)としては、第2の画線(6)の画線幅(W
2)の1/4以下が好ましい。また、第1の観察方向(V
1)から観察したときに、第2の画線(6)と第2の画線(6)の間の無地部(切り欠き部と同じ基材色)で切り欠き部(9)がカモフラージュされる効果もあるため、無地部の幅は、少なくとも潜像部(10)の幅(z
2)の半分程度はあった方がよい。
【0074】
第2の観察方法(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察したときの視認性を得るためには、潜像部(10)の幅(z
2)は、z
2’>z
2となっていればよく、
図17に示すように第2の観察方法(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察した潜像部(10)の幅(z
2’)と、第1の画線(4)の画線幅(W
3)が同じであってもよいし、
図18に示すように第2の観察方法(V
2)又は第3の観察方向(V
3)から観察した潜像部(10)の幅(z
2’)より、第1の画線(4)の画線幅(W
3’)が小さくてもよい。
【0075】
潜像部(10)については、切欠き部(9)同様、潜像画像(8)を二つ形成する場合、
図19に示すように、第1の切欠き部(9a)により形成される潜像部(10)を第1の潜像部(10a)とし、
図19(b)に示すように、第2の切欠き部(9b)により形成される潜像部(10)を第2の潜像部(10b)とする。したがって、第1の潜像部(10a)により第1の潜像画像(8a)が形成され、第2の潜像部(10b)により第2の潜像画像(8b)が形成されることとなる。
【0076】
(潜像部の配置)
潜像画像(8)を一つだけ形成する場合には、形成する潜像画像(8)の形状に合わせて第1の画線(4)のどちらか一方の斜面に形成すれば良いこととなるが、潜像画像(8)を二つ形成する場合には、潜像部(10)の配置がいくつか考えられる。次にこの潜像部(10)の配置について説明する。
【0077】
潜像部(10)については、形成する潜像画像(8)の形状に合わせて第1の画線(4)の斜面に形成されればよく、特に限定されるものではない。したがって、
図20(a)は、第1の潜像部(10a)と第2の潜像部(10b)が異なる第2の画線(6)に形成されており、二つの潜像画像は、例えば、
図20(b)のように形成される。
図20(c)は、同じ一本の第2の画線(6)上に形成されてはいるが、異なる箇所に形成されている場合であり、二つの潜像画像は、例えば、
図20(d)のように形成される。また、
図20(e)については、同じ一本の第2の画線(6)に形成され、かつ、少なくとも一部が重複した領域(k)を有している場合である。したがって、一部ではなく、第1の潜像部(10a)と第2の潜像部(10b)の長さ(t
2)が同じ場合に、全部が重複した領域(k)となってもよい。この場合の二つの潜像画像は、例えば、
図20(f)のように形成される。
【0078】
なお、重複した領域(k)の断面図を示したのが
図21であり、第1の画線(4)の両斜面に第1の切欠き部(9a)及び第2の切欠き部(9b)を有しているため、第1の画線(4)がかなり細い凸形状となるため、紙等の比較的硬度の低い基材(2)に形成することは困難となるため、切欠き部(9)の形成には注意を払う必要がある。
【0079】
重複領域(k)が細い凸形状とならずに第1の潜像部(10a)と第2の潜像部(10b)を重複させる方法として、
図22(a)のように、第2の画線(6)において、第1の潜像部(10a)と第2の潜像部(10b)を交互に形成する方法や、
図22(b)のように、長さ(t
3)の短い潜像部(10c)を複数配置する方法などが考えられる。
【0080】
(観察原理)
以上、説明したとおり、基材(2)に凹凸形状を形成することにより、凸形状の第1の画線(4)を万線状に配列した第1の画線群(5)に対して、凸形状の一方の斜面に第1の切欠き部(9a)及び第1の潜像部(10a)により第一の潜像画像(8a)と、他方の斜面に第2の切欠き部(9b)及び第2の潜像部(10b)により第二の潜像画像(8b)を形成することで、
図23(a)に示すような三つの観察方向から観察すると、第1の観察方向(V
1)では、
図23(c)のような第2の画線群(7)が観察でき、第2の観察方向(V
2)では、
図23(b)のような第一の潜像画像(8a)(図中の「A」)が観察でき、また、第3の観察方向(V
3)では、
図23(d)のような第二の潜像画像(8b)(図中の「B」)が観察できる。
【0081】
潜像画像(8)が確認できる原理について説明する。第2の画線(6)は、第1の画線(4)の凸形状の頂点(Q)をまたいで両斜面に印刷されている。この頂点(Q)をまたいで両斜面に印刷されている第2の画線(6)を第1の観察方向(V
1)から観察すると、立体感はなく、単純な直線として確認できる。なお、第2の画線(6)には、潜像画像(8)を形成するための要素となる潜像部(10)が形成されているが、前述したとおり、この潜像部(10)は、肉眼では確認が困難な程度の大きさを有しており、しかも、凸形状の第1の画線(4)の斜面に形成されていることから、基材(2)に対して真上となる第1の観察方向(V
1)は、潜像部(10)に対して大きな角度を有しているため、殆どその潜像部(10)自体を確認することはできない。
【0082】
しかし、潜像部(10)が形成されている斜面側を確認できる観察方向から観察すると、その観察方向(例えば、第2の観察方向(V
2))と潜像部(10)との角度はほぼ直角となり、潜像部(10)を捉えること(確認)ができるため、複数配置されている潜像部(10)が合成して形成された潜像画像(8)が確認できることとなる。