特許第5721144号(P5721144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721144
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】超電導多層構造薄膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 39/02 20060101AFI20150430BHJP
   H01B 12/06 20060101ALI20150430BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150430BHJP
   H01L 39/00 20060101ALI20150430BHJP
   H01L 39/24 20060101ALI20150430BHJP
   C01G 1/00 20060101ALI20150430BHJP
   C01G 3/00 20060101ALI20150430BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01L39/02 DZAA
   H01B12/06
   H01B13/00 565D
   H01L39/00 A
   H01L39/24 B
   C01G1/00 S
   C01G3/00
   B32B9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-24541(P2012-24541)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-162049(P2013-162049A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112173
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 修身
(74)【代理人】
【識別番号】100169683
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 等
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 勝廣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】北田 典敬
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲成
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貢
(72)【発明者】
【氏名】土屋 哲男
(72)【発明者】
【氏名】山口 巖
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−267791(JP,A)
【文献】 米国特許第05885939(US,A)
【文献】 特開平04−300274(JP,A)
【文献】 米国特許第05534491(US,A)
【文献】 特開2003−034527(JP,A)
【文献】 特開2000−212000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/00
C01G 1/00
C01G 3/00
H01B 12/06
H01B 13/00
H01L 39/00
H01L 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたc軸エピタキシャル成長超電導薄膜上に、バッファー層を介することなく、当該c軸エピタキシャル成長超電導物質と同じ化学素材のc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を積層した超電導多層膜。
【請求項2】
基板上に形成されたc軸エピタキシャル成長超電導薄膜が臨界膜厚以下であり、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜とc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を加えた厚さが300nm以上である請求項1に記載した超電導多層膜。
【請求項3】
基板が、セリアバッファー層を成膜したサファイアの単結晶基板であり、セリアバッファー層上に、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜が形成された請求項1又は請求項2に記載した超電導多層膜。
【請求項4】
請求項1ないし請求項2に記載された超電導多層膜のいずれか一つを用いた高周波フィルタ。
【請求項5】
酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液を基板上に塗布し、乾燥させる工程(イ)、金属の有機化合物中の有機成分を、レーザ光を照射した後、熱分解させることによりc軸エピタキシャル成長超電導薄膜を得るための仮焼成工程(ロ)、所望の厚さが得られるまで工程(イ)及び工程(ロ)を繰り返す工程(ハ)、さらに、上記工程(イ)で用いた酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液と同じ酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液を基板上に塗布し、乾燥させる工程(ニ)、所望の厚さが得られるまで工程(ニ)を繰り返すか、又は、酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液の濃度を高めて塗布する工程(ヘ)、次いで、金属の有機化合物中の有機成分を、レーザ光を照射せずに、徐々に昇温し、熱分解させることによりc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を得るための、本焼成(ト)を行うことを特徴とする超電導多層膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導薄膜の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタ用途の超電導多層膜としては、特許文献1及び特許文献2により提案されているものがあった。
第1図に示すものは、特許文献1により提案されているものであり、図において(1)はサファイアR面の基板、(2a)はサファイアR面の基板(1)の上に設けられた第1層のYSZバッファー層、(3a)は第1層のYSZバッファー層(2a)上に成膜された超電導層。(2b)は前述の超電導層(3a)の上に成膜された第2層のYSZバッファー層、(3b)は第2層のYSZバッファー層(2b)上に成膜された超電導層である。
【0003】
第2図に示すものは、特許文献2により提案されているものであり、図において、11は誘電体基板10の裏面に形成された接地導体(11)である。超電導薄膜1,2,3,4,5と誘電体薄膜30−1,30−2,30−3,30−4とを所定の膜厚配列の下に交互に積層して、超電導多層電極や超電導多層線路を構成した超電導多層電極である。従来のフィルタ用多層薄膜は以上のように構成されているので、誘電体基板上のバッファー層に形成されたエピタキシャル成長した超電導薄膜の上にバッファー層としてエピタキシャル成長させた誘電体を形成させなければならず、高度な成膜装置や技術が必要で、また、膜厚を稼ぐために複数回の繰り返し成膜してきたため再現性の面で課題を有していた。特許文献3には、金属含有化合物を含む溶液を誘電体基板に塗布し、焼成してc軸配向のYBCu7-X高温超電導薄膜を形成した後、所定のパターニングを施して高周波フィルタを製造する方法が記載されている。この方法で成膜した超電導薄膜を共振周波数約10GHzで表面抵抗を測定しており、その値は30Kにおいて0.4から1mΩが得られたとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】:特開平6−334228号公報
【特許文献2】:特開平8−265008号公報(特許第3125618号)
【特許文献3】:特開2001−53513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に薄膜が形成される基板と薄膜材料は物質が異なるため、格子ミスフィットや熱膨張係数の差を原因とした応力が発生する。単結晶基板上に単結晶材料と異なる材料である酸化物系超電導材料をc軸エピタキシャル成長させていくとある膜厚で薄膜に割れが発生することが知られている。この時の膜厚は臨界膜厚と呼ばれている。 臨界膜厚以上の膜厚を成膜することで超電導薄膜に割れ(亀裂)が発生してしまうため、フィルタ用途に適した誘電体基板であるにもかかわらず、フィルタに適した膜厚の超電導薄膜を誘電体基板上に成膜することができなかった。通常の銅箔のマイクロストリップ構造のフィルタのQ値は高々300〜1000程度である。一方、超電導薄膜を用いた同構造のフィルタのQ値は10万を越す事が可能であり、前述の超電導薄膜の膜厚増加に伴う薄膜の割れ(亀裂)を抑制できれば、極めて性能の高いフィルタ用超電導薄膜基板とする事ができる。
この発明は上記の課題を解決するためになされたもので、基板上に設けたc軸エピタキシャル成長超電導薄膜上に更にバッファー層を設けることなく、c軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を成膜することにより、高度な成膜装置や技術が必要とならないフィルタ用途に適した超電導薄膜構造を提供することを目的としている。
【0006】
この発明は、上記目的を達成するために、高密度で電流を流す臨界膜厚以下のc軸エピタキシャル成長した超電導薄膜と電流は流し難いものの77Kにおいて表面抵抗値が0.6mΩ以下(10GHz)のc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を基板上に設けたものである。
臨界膜厚以下のc軸エピタキシャル成長超電導薄膜は高い電流密度で電流を流すように作用して、その上に形成したc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜はフィルタとして必要とされる表面抵抗を確保すると共に、超電導薄膜内に侵入する磁場を防止するための超電導障壁のように動作する。それによって、二層超電導薄膜は、機能を分担した一体の超電導薄膜のようになるので、高周波フィルタ用の超電導薄膜とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、基板上に形成されたc軸エピタキシャル成長超電導薄膜上に、バッファー層を介することなく、当該c軸エピタキシャル成長超電導物質と同じ化学素材のc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を積層した超電導多層膜である。
また、本発明の超電導多層膜は、基板上に形成されたc軸エピタキシャル成長超電導薄膜が臨界膜厚以下であり、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜とc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を加えた厚さが300nm以上であり、場合により、800nm以上とすることができ、さらに場合により、1000〜3000nmとすることができる。
さらに、本発明の超電導多層膜は、基板がサファイアの単結晶基板であり、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜がYBCOであり、またc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜がYBCOとすることができる。
【0008】
また、本発明の超電導多層膜は、誘電体基板が、セリアバッファー層を成膜したサファイアの単結晶基板であり、セリアバッファー層上に、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜を形成することができる。
さらに、本発明は、これらの超電導多層膜のいずれか一つを用いた高周波フィルタに適合する薄膜である。
【0009】
さらに本発明は、酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液を基板上に塗布し、乾燥させる工程(イ)、金属の有機化合物中の有機成分を、レーザ光を照射した後、熱分解させることによりc軸エピタキシャル成長超電導薄膜を得るための仮焼成工程(ロ)、所望の厚さが得られるまで工程(イ)及び工程(ロ)を繰り返す工程(ハ)、さらに、上記工程(イ)で用いた酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液と同じ酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液を基板上に塗布し、乾燥させる工程(ニ)、所望の厚さが得られるまで工程(ニ)を繰り返すか、又は、酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液の濃度を高めて塗布する工程(ヘ)、次いで、金属の有機化合物中の有機成分を、レーザ光を照射せずに、徐々に昇温し、熱分解させることによりc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を得るための、本焼成(ト)を行うことを特徴とする超電導多層膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明の超電導多層膜は、厚さが1000nm以上になっても、割れ(亀裂)が発生しない。また、この発明の超電導多層膜は、高周波フィルタ用の基板の単結晶上に、臨界膜厚以下のc軸エピタキシャル成長超電導薄膜を設け、更にc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を設けた二層薄膜としたので、高い電流、低い表面抵抗、臨界膜厚以上の膜厚かつ磁場侵入長以上の膜厚が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の超電導多層膜の一例
図2】従来の超電導多層膜の一例
図3】従来の超電導多層膜(YBCO)の一例
図4】本発明の超電導多層膜(YBCO)の一例
図5】本発明の超電導多層膜(YBCO)のc軸成長とa軸成長が混在した成長の表面写真
図6】本発明の超電導多層膜(YBCO)のTEM像
図7】本発明の超電導多層膜(YBCO)のX線回折像
図8】本発明の超電導多層膜(YBCO)の臨界電流密度分布
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例で使用できる誘電体基板は、市販のランタンアルミネート(LaAlO3)(100)基板、市販のチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)(100)基板、市販の酸化ランタンストロンチウムタンタルアルミニウム(LaxSr1-x)(AlTa1-y)O3)(100)基板、市販のネオジムガレート(NdGaO3)(110) 基板、市販のイットリウムアルミネート(YAlO3)(110) 基板、市販の酸化アルミニウム(Al2O3)単結晶(サファイア)R面基板に酸化セリウム(CeO2) バッファーを形成した基板、市販のイットリア安定化ジルコニア((Zr,Y)O2, YSZ)(100)にCeO2バッファーを形成した基板、市販の酸化マグネシウム(MgO)(100) 基板にCeO2バッファー層を形成した基板、市販のLaAlO3(100)基板にCeO2バッファー層を形成した基板、市販のSrTiO3(100)基板にCeO2バッファー層を形成した基板、市販の((LaxSr1-x)(AlyTa1-y)O3(100)基板にCeO2バッファーを形成した基板、市販のNdGaO3(110) 基板にCeO2中間層を形成した基板、市販のYAlO3(110) 基板にCeO2バッファー層を形成した基板等を挙げることができる。なお、バッファー層は、周知の層形成手段例えば蒸着、スパッタ、パルスレーザ蒸着、塗布熱分解法、塗布光分解法、ゾルゲル法等を利用して形成させることができる。
また、本発明の超電導多層膜は、基板上に形成されたc軸エピタキシャル成長超電導薄膜が臨界膜厚以下であればよく、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜とc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を加えた厚さが300nm以上あれば、いちおう目的は達成できるが、好ましくは、c軸エピタキシャル成長超電導薄膜とc軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜を加えた厚さが800nm以上とすることができ、同じ基板であっても、基板の種類を変えることによっても、1000〜3000nmとすることができる。
なお、c軸成長とa軸成長が混在した超電導薄膜の厚さは、酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液に含まれる金属成分の濃度を高くすることで、塗布、乾燥の繰り返し工程を少なくすることもできる。
【0013】
本発明において、酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液は、種々知られており、本発明において代表的に用いられる酸化物が超電導物質を形成する金属の有機化合物溶液としては、(Y1)モル比1:2:3のY,Ba,Cuのアセチルアセトナトをピリジンとプロピオン酸の混合液に溶解し、真空エバポレータを用いて約80℃で溶媒の大部分を除去した後メタノールに再溶解した溶液(YC1)Y1でモル比1:2:3のY,Ba,Cuのアセチルアセトナトの代わりにモル比0.95:0.05:2:3のY,Ca,Ba,Cuのアセチルアセトナトとして調製した溶液(Y2)Y,Ba,Cuのナフテン酸塩のトルエン溶液をモル比1:2:3で混合した溶液(Y3)Y,Ba,Cuの2−エチルヘキサン酸塩のトルエン溶液をモル比1:2:3で混合した溶液(Y4)Y1でプロピオン酸の代わりにトリフルオロ酢酸として調製した溶液(Y5)Y,Ba,Cuのトリフルオロ酢酸塩のメタノール溶液をモル比1:2:3で混合した溶液(D1)Y1でY−アセチルアセトナトの代わりにDy−アセチルアセトナトとして調製した溶液(E1)Y1でY−アセチルアセトナトの代わりにEr−アセチルアセトナトとして調製した溶液等を挙げることができる。さらに、本発明で用いることができるレーザ光としては、(H1)KrFエキシマレーザ(H2)XeClエキシマレーザ(H3)ArFエキシマレーザを挙げることができる。 本発明の具体例を示し、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
基板がサファイアの単結晶基板であり、c軸エピタキシャル成長した酸化物超電導膜が300nmであり、その上にc軸成長とa軸成長が混在した二層酸化物超電導膜の製造例
(原料用液)
モル比1:2:3のY,Ba,Cuのアセチルアセトナトをピリジンとプロピオン酸の混合液に溶解し、真空エバポレータを用いて約80℃で溶媒の大部分を除去した後メタノールに再溶解した溶液を用いた。
(基板)
セリアバッファー層を成膜したサファイアのR面単結晶基板 25mm×25mm×0.5mmを用いた。
(塗布乾燥)
上記原料溶液をサファイアの単結晶基板に4000rpm、10秒間でスピンコートし、恒温槽中130℃で乾燥させた。
(レーザ照射)
KrFエキシマレーザを基板面に、1平方センチあたり500Jのエネルギーを照射した。
(仮焼成)
次に、このレーザ照射した試料を、あらかじめ500℃に保った電気炉中に挿入し、30分間この温度に保って取り出した。
(塗布乾燥)
電気炉から取り出した基板に焼き付けられたYBCO前駆体上に前記原料溶液に所望の粘性になるようブタノールを加えた溶液を所望の厚さとなるよう塗布し、乾燥させた。
(本焼成)
ついで石英製管状炉中で以下の条件で本焼成を行った。まず、酸素分圧を100ppmに調整したアルゴンと酸素の混合ガス流中で昇温速度毎分約16℃で770℃まで昇温し、770℃で45分間保ち、ガスを純酸素に切り替えてさらに30分間保った後、除冷する。
(酸化物超電導膜の検査)
本焼成後に出来た膜厚500nmYBCO膜、800nmYBCO膜および1200nmYBCO膜について検査を行った結果、臨界電流密度はそれぞれ0.80MA/cm、0.73MA/cm、0.61MA/cmであった。加えて800nmYBCOの表面抵抗は77Kにおいて0.6mΩ(10GHz)であった。なお、30Kにおいては0.25mΩの表面抵抗値であった。
図8は、実施例1で得た膜厚800nm超電導多層膜(YBCO)の臨界電流密度分布を示す。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の超電導多層膜は、厚く作ることができるうえ、亀裂が発生せず、高い電流、低い表面抵抗、臨界膜厚以上の厚膜かつ磁場侵入長以上の厚膜が得られるので高周波用フィルタとして用いることができ、産業上の利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0016】
1b サファイヤーR面の基板
2a 第1層のYSZバッファー層
2b 第2層のYSZバッファー層
3a 第1層のYBCO超電導薄膜
3b 第2層のYBCO超電導薄膜

1 超電導薄膜
2 超電導薄膜
3 超電導薄膜
4 超電導薄膜
5 超電導薄膜
10 誘電体基板
11 接地導体
30−1 薄膜誘電体
30−2 薄膜誘電体
30−3 薄膜誘電体
30−4 薄膜誘電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8