(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一列に配列した複数本の光ファイバ心線を走行させ、それら光ファイバ心線全体を被覆するように紫外線硬化樹脂を塗布した後、光ファイバ心線間に充填された未硬化状態にある紫外線硬化樹脂の一部を取り除いて光ファイバ心線同士を紫外線硬化樹脂で連結させない心線間分離部と紫外線硬化樹脂で連結させた心線間連結部とをテープ心線長手方向に間欠的に形成する間欠部形成工程と、
前記心線間分離部のみに紫外線を照射して心線間分離部の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂だけを硬化させる間欠硬化工程と、
前記間欠硬化工程の後に、前記各光ファイバ心線を所定値の間隔に集線する集線工程と、
前記集線工程により集線されて各光ファイバ心線の間隔が前記所定値となった時点で、心線間連結部の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させる本硬化工程と、を備えた
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
「光ファイバテープ心線を製造する製造装置の構造説明」
先ず、光ファイバテープ心線を製造するための製造装置について説明する。
図1は製造装置の概略構成図、
図2は
図1の製造装置のうち間欠部形成装置の斜視図、
図3(A)は
図2のA−A線断面図、(B)は
図2のB−B線断面図、(C)は
図2のC−C線断面図、
図4は心線間分離部のみに紫外線を照射して心線間分離部の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂だけを硬化させる間欠硬化工程を示し、紫外線を照射する部位を一点鎖線で囲んで示した図である。
【0018】
光ファイバテープ心線の製造装置1は、
図1に示すように、複数本の光ファイバ心線2(2A〜2D)を送り出す送出手段である送出ドラム3と、これら光ファイバ心線2全体を被覆するように紫外線硬化樹脂を塗布すると共に心線間連結部と心線間分離部とをテープ心線長手に間欠的に形成する間欠部形成手段である間欠部形成装置4と、心線間分離部のみに紫外線を照射して心線間分離部の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂だけを硬化させる間欠硬化手段である間欠硬化装置5と、各光ファイバ心線2の間隔を狭めて集線する集線手段である集線ローラ6と、集線されて各光ファイバ心線2の間隔が所定値となった時点で心線間連結部の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させる本硬化手段である本硬化装置7と、硬化して形成された光ファイバテープ心線8を巻き取る巻取り手段である巻取ドラム9とを備えている。
【0019】
本実施形態の製造装置では、
図1に向かって最も右側に配置される送出ドラム3を光ファイバ心線2のファイバ送出し側とし、最も左側に配置される巻取ドラム9をファイバ巻取り側としたときに、光ファイバ心線2がファイバ送出し側からファイバ巻取り側へ向かって矢印Yで示す向きに走行する。この矢印Yの向きをファイバ走行方向とし、ファイバ送出し側に配置される装置構成部品(例えば送出ドラム3)に対してファイバ巻取り側に配置される装置構成部品(巻取ドラム9)を前方にある装置構成部品と定義する。
【0020】
前記光ファイバ心線2の走行経路には、送出ドラム3から巻取ドラム9までの間にファイバ送出し側からファイバ巻取り側へ向かって順次、ガイドローラ10、間欠部形成装置4、間欠硬化装置5、本硬化装置7、集線ローラ6、ダンサー11が配置されている。
【0021】
送出ドラム3は、
図1に示すように、光ファイバ心線2(2A〜2D)をドラム周面に巻回させている。また、送出ドラム3は、光ファイバ心線2の数に応じて配置されている。本実施形態では、4本の光ファイバ心線2を一列に配列した光ファイバテープ心線8を製造することから、4つの送出ドラム3を配置している。
【0022】
送出ドラム3の前方には、
図1に示すように、光ファイバ心線2の走行を案内するガイドローラ10が複数配置されている。ガイドローラ10の前方には、
図1に示すように、間欠部形成装置4が配置されている。間欠部形成装置4は、
図2及び
図3を参照して後述するが、整線部12と樹脂供給部13と樹脂被覆部14と樹脂間欠形成部15により構成され、これらが一体化して一つの装置となっている。
図2は、その間欠部形成装置4の全体構成を示している。
【0023】
間欠部形成装置4は、
図2に向かって右側のファイバ送出し側から左側のファイバ巻取り側に順次、整線部12、樹脂供給部13、樹脂被覆部14の順で一つの筐体16内に配列させて構成されている。整線部12は、
図2に向かって筐体16の右側部位(A−A線で示す部位)に設けられている。樹脂供給部13は、筐体16の中央部位(B−B線で示す部位)に設けられている。樹脂被覆部14は、
図2に向かって筐体16の左側部位(C−C線で示す部位)に設けられている。樹脂間欠形成部14は、
図2に向かって筐体16の左側端部から外方に飛び出すようにして設けられている。
【0024】
整線部12は、
図3(A)に示すように、4本の光ファイバ心線2(2A〜2D)を所定ピッチで各光ファイバ心線2間に隙間を形成して一列に配列させる機能をする。かかる整線部12は、前記筐体16の厚み方向中央部にその長手方向に沿って各光ファイバ心線2A〜2Dを走行させるための貫通孔17を4つ形成している。これら貫通孔17は、4つの光ファイバ心線2A〜2Dを挿入させた時に、互いの光ファイバ心線2A〜2D間にテープ化するための紫外線硬化樹脂を回り込ませるための隙間が形成されるように所定ピッチで設けられている。
【0025】
樹脂供給部13は、
図3(B)に示すように、前記整線部12の前方位置に設けられている。樹脂供給部13は、先に示した
図1におけるように、紫外線硬化樹脂を満たした樹脂タンク18と、該樹脂タンク18から光ファイバ心線2間の隙間に紫外線硬化樹脂を塗布供給する樹脂供給ノズル19と、前記隙間に供給する樹脂圧を調整する樹脂圧調整手段20とからなる。
【0026】
樹脂タンク18には、テープ化するための紫外線硬化樹脂が充填されている。樹脂供給ノズル19は、
図3(B)に示すように、前記筐体16の天面16aから該筐体16の内部に樹脂充填用空間として形成されたキャビティー21に向かって垂直に形成された樹脂供給孔21Aに接続されている。樹脂圧調整手段20は、樹脂タンク18内の樹脂を樹脂供給ノズル19から前記キャビティー21に向けて供給する樹脂圧を調整する。前記キャビティー21は、各光ファイバ心線2A〜2Bの全周囲が紫外線硬化樹脂で被覆されるように矩形断面形状とされている。
【0027】
樹脂被覆部14では、隣合う光ファイバ心線2A〜2D間にも紫外線硬化樹脂23が充填されるように当該光ファイバ心線全体を被覆するようにテープ化する。また、この樹脂被覆部14では、光ファイバ心線2A〜2Dの全周囲に塗布された紫外線硬化樹脂23の厚みを所望の厚みとなるように開口部22の断面形状が決められている。
【0028】
樹脂間欠形成部15は、
図2に示すように、筐体16の端縁側に設けられた樹脂被覆部14の出口近傍に設けられている。この樹脂間欠形成部15では、隣接する光ファイバ心線2A〜2D間のそれぞれに樹脂取り除き部材24を設け、その光ファイバ心線2A〜2D間に充填された未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23の一部を取り除いて紫外線硬化樹脂23で連結されない隙間とされる心線間分離部と紫外線硬化樹脂23で光ファイバ心線2同士を連結させる心線間連結部とをテープ心線長手方向に間欠的に形成する。
【0029】
樹脂取り除き部材24は、
図2に示すように、各光ファイバ心線2A〜2D間にそれぞれ配置されている。具体的には、樹脂取り除き部材24は、
図2中一方の外側の光ファイバ心線2Aとその隣の光ファイバ心線2Bとの間、この光ファイバ心線2Bとその隣の光ファイバ心線2Cとの間、及びこの光ファイバ心線2Cとその隣の他方の外側の光ファイバ心線2Dとの間にそれぞれ設けられている。本実施形態では、4心の光ファイバテープ心線8を製造するため、樹脂取り除き部材24を3つとしている。
【0030】
前記樹脂取り除き部材24は、外周部の一部に切欠部25が形成された円盤として形成され、図示を省略する駆動機構部によって
図2中矢印Mで示す方向に回転するようになっている。切欠部25の数は、製造する光ファイバテープ心線8に応じて決められる。また、両側に設けられた2つの樹脂取り除き部材24と中央に設けられた1つの樹脂取り除き部材24は、それ自身に形成された前記切欠部25の位置をずらした位置として駆動機構部の回転軸(図示は省略する)に取り付けられている。これら3つの樹脂取り除き部材24は、前記駆動機構部によって同一の回転軸により同期して回転するようになっている。また、樹脂取り除き部材24の一部は、前記筐体16の端縁に高さ方向に沿って切りかかれたスリット26内に挿入されている。
【0031】
前記樹脂取り除き部材24が回転すると、前記切欠部25が形成された部位によって光ファイバ心線2A〜2D間に充填された未硬化状態の紫外線硬化樹脂23が掻き取られる。このように、樹脂取り除き部材24が回転することで、光ファイバ心線2間には未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23で光ファイバ心線2同士を連結させる心線間連結部27と、紫外線硬化樹脂23が掻き取られて隙間とされる心線間分離部28とがテープ心線長手方向に間欠的に形成される。これら心線間連結部27及び心線間分離部28を、後述する
図4に示す。
【0032】
本実施形態では、切欠部25を形成した円盤を樹脂取り除き部材24としたが、隣合う光ファイバ心線2A〜2D間に板形状をなす遮光用マスクを前記スリット26内に挿入させて上下動させることで、光ファイバ心線2間に充填された未硬化状態の紫外線硬化樹脂23を取り除くようにしてもよい。この遮光用マスクを上下動させることで、心線間連結部27と心線間分離部28とをテープ心線長手方向に間欠的に形成することができる。
【0033】
間欠硬化装置5は、
図1に示すように、紫外線を照射する紫外線ランプ29と、心線間分離部28の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23にのみ紫外線を照射する開口部を有した遮光用マスク30とからなる。紫外線ランプ29は、
図1に示すように、前記間欠部形成装置4の前方であって走行する光ファイバ心線2の真上に配置されている。紫外線ランプ29から照射される紫外線は、遮光用マスク30によって
図4で示す一点鎖線で囲んだ平面視H形状をなす心線間分離部領域Sのみに照射され、心線間連結部27には照射されない。遮光用マスク30は、心線間連結部27に紫外線が照射されないように当該心線間連結部27を覆うようになっている。
図4の心線間分離部領域Sは、本発明を理解し易いように誇張して表示してあり、実寸領域として表示していないものである。
【0034】
図4の例では、心線間分離部領域Sは、4本の光ファイバ心線2A〜2Dと各光ファイバ心線2A〜2D間に形成される隙間の部位を含めた領域である第1心線間分離部領域S1と、中央の2本の光ファイバ心線2B、2Cとそれら光ファイバ心線2B、2C間に形成される隙間を含めた領域である第2心線間分離部S2としている。
【0035】
遮光用マスク30は、
図5に示すように、前記した第1心線間分離部領域S1と第2心線間分離部領域S2の両方に対して紫外線を照射することのできる開口部31、31を有した平板状の金属板として形成されている。前記開口部31は、紫外線硬化樹脂23で外周囲が被覆された光ファイバ心線2の2本分とそれらの間に形成された隙間を露出させる大きさとした矩形穴とされている。本実施形態では、光ファイバ心線2を4本使用した4心の光ファイバテープ心線8を製造するため、2つの開口部31、31を遮光用マスク30に形成している。
【0036】
前記第1心線間分離部領域S1では、
図5(A)に示すように、2つの開口部31、31がそれぞれ外側の光ファイバ心線2A、2Dとその隣の光ファイバ心線2B、2C及びそれらの間に形成された隙間とを露出させるように前記遮光用マスク30が配置される。また、第2心線間分離部領域S2では、
図5(B)に示すように、一方の開口部31のみが中央の2本の光ファイバ心線2B、2Cとそれらの間に形成された隙間とを露出させるように前記遮光用マスク30が配置される。遮光用マスク30は、光ファイバ心線2の走行位置に応じて、
図5(A)と
図5(B)のそれぞれの位置に移動可能なように移動機構部(図示は省略する)によって駆動制御されている。
【0037】
図6は心線間分離部28及び心線間連結部27の両方を含む全域に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂23を硬化させる比較例を示し、紫外線を照射する紫外線照射領域S3を一点鎖線で囲んで示した図である。この比較例では、本実施形態の
図4とは異なり、遮光用マスク30を使用することなく紫外線ランプ29から直接心線間連結部27も含めて紫外線を照射する。この比較例で得られる光ファイバテープ心線と本実施形態で得られる光ファイバテープ心線の構造上の違いについては後述する。
【0038】
集線ローラ6は、
図1に示すように、後述する本硬化装置7の前方に設けられている。かかる集線ローラ6は、前記した樹脂取り除き部材24が光ファイバ心線2間に入り込むことによって広がった光ファイバ心線2間のピッチを狭める機能をする。この集線ローラ6は、光ファイバ心線2を挟んで上側と下側にそれぞれ設けられ、そのローラに形成されたガイド溝に光ファイバ心線2をガイドして寄せ集めるようになっている。
【0039】
本硬化装置7は、間欠硬化装置5と集線ローラ6との間に設けられている。かかる本硬化装置7は、紫外線ランプを直列に2つ連続して配置しており、光ファイバ心線2の走行スピードに応じて塗布された紫外線硬化樹脂23を硬化させるべく照度強さが調整可能とされている。また、本硬化装置7は、前記集線ローラ6によって集線されて各光ファイバ心線2の間隔が所定値となった時点で、心線間連結部27の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23に紫外線を照射して硬化させる。ここでは、心線間連結部27だけでなく心線間分離部28も含めた光ファイバ心線2A〜2Dの全領域に紫外線を照射する。
【0040】
ダンサー11は、
図1に示すように、集線ローラ6と巻取ドラム9との間に設けられており、光ファイバ心線2の巻き取り張力を調整する機能をする。ダンサー11は、複数個のローラ32から構成されており、走行する光ファイバ心線2に張力を付与する。
【0041】
巻取ドラム9は、本硬化装置7で硬化して製造された光ファイバテープ心線8を最終的に巻き取るようになっている。
【0042】
[光ファイバテープ心線の製造方法説明]
次に、本発明を適用した光ファイバテープ心線の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、一列に配列した複数本の光ファイバ心線2(2A〜2D)を走行させ、それら光ファイバ心線2全体を被覆するように紫外線硬化樹脂23を塗布した後、光ファイバ心線2間に充填された未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23の一部を取り除いて光ファイバ心線2同士を紫外線硬化樹脂23で連結させない心線間分離部28と紫外線硬化樹脂23で連結させた心線間連結部27とをテープ心線長手方向に間欠的に形成する間欠部形成工程と、心線間分離部28のみに紫外線を照射して心線間分離部28の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23だけを硬化させる間欠硬化工程と、各光ファイバ心線2の間隔を狭めて集線する集線工程と、集線されて各光ファイバ心線2の間隔が所定値となった時点で、心線間連結部27の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23に紫外線を照射して硬化させる本硬化工程と、を備えている。
【0043】
以下に、光ファイバテープ心線8を製造する工程順に、各工程を具体的に説明する。先ず、間欠部形成工程では、送出ドラム3から各光ファイバ心線2(2A〜2D)を送り出す。送り出された光ファイバ心線2は、ガイドローラ10で案内されて、送出ドラム3の前方に設けられた間欠部形成装置4へ送られる。この間欠部形成装置4に送られた光ファイバ心線2A〜2Dは、先ず整線部12で一列に所定隙間を空けて配列される。各光ファイバ心線2A〜2Dは、整線部12に形成された各貫通孔17にそれぞれ挿入されることで、隣り合う光ファイバ心線2A〜2D同士の間に所定隙間を持って配列されることになる。
【0044】
そして、一列に配列された光ファイバ心線2A〜2Dは、整線部12の前方に設けられた樹脂供給部13に送られ、ここで樹脂塗布工程が行われる。樹脂塗布工程では、樹脂タンク18から予め決められた粘度としたテープ化するための紫外線硬化樹脂23が樹脂供給ノズル19から樹脂供給孔21Aを通してキャビティー21内に充填される。紫外線硬化樹脂23を供給する樹脂圧は、樹脂タンク18に接続される樹脂圧調整手段20で適宜調整する。
【0045】
紫外線硬化樹脂23がキャビティー21内に充填されると、隣合う光ファイバ心線2A〜2D間の隙間に紫外線硬化樹脂23が入り込むことはもちろんのこと、光ファイバ心線2A〜2Dの全周囲を被覆するようにキャビティー21内が紫外線硬化樹脂23で満たされる。そして、光ファイバ心線2A〜2Bの全周囲を被覆するように塗布された紫外線硬化樹脂23は、前記キャビティー21の前方に設けられた樹脂被覆部14の開口部22の断面形状で余分な樹脂が削られる。
【0046】
次に、樹脂被覆部14の出口では、切欠部25を有した樹脂取り除き部材24が回転することで、隣接する光ファイバ心線2間に充填された未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23の一部が取り除かれる。その結果、
図4に示すように、紫外線硬化樹脂23の一部を取り除いて紫外線硬化樹脂23で連結されない隙間とされる心線間分離部28と紫外線硬化樹脂23で光ファイバ心線2同士を連結させる心線間連結部27とがテープ心線長手方向に間欠的に形成される。
【0047】
樹脂取り除き部材24で紫外線硬化樹脂23の一部が取り除かれた直後では、当該樹脂取り除き部材24が光ファイバ心線2間に入り込むことから光ファイバ心線2間の間隔が広くなっている。各光ファイバ心線2間の間隔は、集線ローラ6によって
図4に示すように次第に狭められて行く。本実施形態では、各光ファイバ心線2間の間隔が広い状態の時に間欠硬化工程を行う。
【0048】
間欠硬化工程では、光ファイバ心線2の走行位置に応じて
図5(A)で示す位置と
図5(B)で示す位置に遮光用マスク30を移動して心線間分離部28のみに紫外線を照射する。紫外線は、光ファイバ心線2の真上に配置された紫外線ランプ29からの片面照射となるが、照射面から裏面側へと回り込む。そのため、隣り合う光ファイバ心線2の相対向する部分の紫外線硬化樹脂は紫外線により硬化可能となる。もちろん、紫外線ランプ29を下にも配置して、光ファイバ心線2に対して両面から紫外線を照射するようにしてもよい。また、間欠的に硬化する部位の表面性を改善するために、窒素パージを実施してもよい。紫外線による樹脂の硬化し易さは、樹脂の種類により異なるので、紫外線を照射する照度や照射時間を適宜調整する。
【0049】
遮光用マスク30に形成された開口部31には、樹脂取り除き部材24によって紫外線硬化樹脂23の一部が取り除かれて形成された隙間とその両側の光ファイバ心線2のみが露出することから、各光ファイバ心線2の外周囲を被覆した紫外線硬化樹脂23だけが硬化する。この光ファイバ心線2の外周囲を被覆した紫外線硬化樹脂23は、少なくと表面部分だけが硬化していればよく、内部まで硬化していなくてもよい。表面部分だけ硬化させた場合は、後工程の本硬化工程で内部まで硬化させるようにする。この一方、光ファイバ心線2同士を連結する心線間連結部27は、遮光用マスク30で覆われるため、紫外線が照射されずに未硬化状態のままとされる。
【0050】
その後、各光ファイバ心線2は、集線ローラ6によって集線されて互いに接近して行く。つまり、各光ファイバ心線2は、前記心線間連結部27が遮光用マスク30により紫外線が遮断されて未硬化状態にあることからこの心線間連結部27の部位で接近することになる。
【0051】
そして、集線されて各光ファイバ心線2の間隔が所定値となった時点で、心線間連結部27の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23に紫外線を照射して硬化させる硬化工程が行われる。硬化工程では、光ファイバ心線2の全体に対して紫外線ランプにより紫外線が照射される。紫外線が照射されると、紫外線を受けた心線間連結部27の紫外線硬化樹脂23は硬化する。本硬化工程では、既に心線間連結部27を除く部位の紫外線硬化樹脂23が硬化した状態にあるので、集線ローラ6で光ファイバ心線2間の間隔が狭くなっても樹脂の表面張力でくっついてしまうことはない。
【0052】
本硬化工程が終わると、光ファイバテープ心線8は、ダンサー11にて巻き取り張力が調整されて巻取ドラム9に巻き取られる。巻取ドラム9に巻き取られることで、光ファイバテープ心線8の製造工程が終了する。
【0053】
このようにして製造された光ファイバテープ心線8の心線間連結部27における断面を
図7(A)に示す。製造された光ファイバテープ心線8は、心線間連結部27において光ファイバ心線2A、2B同士又は2C、2D同士が接近して接触した状態とされる。これに対して、遮光用マスク30を使用せずに
図6の一点鎖線で示す紫外線照射領域S3に紫外線を照射して得られた光ファイバテープ心線8の心線間連結部27における断面を
図7(B)に示す。この光ファイバテープ心線8では、心線間分離部28及び心線間連結部27の両方を含む全領域に紫外線が照射されるため、心線間連結部27において光ファイバ心線2A、2B同士又は2C、2D同士が離れた状態となる。
【0054】
本発明の製造方法により光ファイバテープ心線8を製造すれば、心線間連結部27での光ファイバ心線2間の隙間を小さくすることができ、結果としてテープ幅を小さくすることができる。これにより、ケーブル内に光ファイバテープ心線8を収納する上でテープ幅を小さくすることができることから当該光ファイバテープ心線8を高密度に実装することが可能となる。また、本発明の製造方法により製造される光ファイバテープ心線8では、各光ファイバ心線2(2A〜2D)の外周囲に塗布された紫外線硬化樹脂23が前もって硬化されるので、集線ローラ6で集線しても光ファイバ心線2同士が心線間分離部28において確実に分離された状態となる。そのため、光ファイバテープ心線8から特定の光ファイバ心線2のみを他の光ファイバ心線2から容易に分離することができる。
【0055】
「実施例」
実際に以下の条件で、本発明の製造方法と比較例の製造方法で光ファイバテープ心線をそれぞれ製造した。本発明の製造方法では、前記したように間欠部形成工程、間欠硬化工程、集線工程及び本硬化工程を行うことで光ファイバテープ心線を製造した。比較例の製造方法では、本発明の製造工程のうち間欠硬化工程を行わずに光ファイバ心線2間に充填された心線間分離部23の一部を樹脂取り除き部材24で取り除いて心線間連結部27と心線間分離部28を間欠的に形成した後、
図6に示す紫外線照射領域S3に紫外線を照射して光ファイバテープ心線を製造した。
【0056】
製造条件は、樹脂取り除き部材24から間欠硬化装置5を構成する紫外線ランプ29までの距離を50mm、樹脂取り除き部材24から本硬化装置7までの距離を200mm、テープ製造線速度を200m/分、樹脂取り除き部材24の回転数を1000rpm/分とした。また、樹脂取り除き部材24が1回転した時に、心線間連結部27と心線間分離部28が1セット形成されるようにした。また、紫外線硬化樹脂23の粘度を5.8〜8.0Pa・sとした。さらには、間欠硬化装置5を構成する紫外線ランプ29の照度を130mW/cm
2とし、本硬化装置7で使用した紫外線ランプの照度を180mW/cm
2とした。
【0057】
また、光ファイバ心線2には、
図7に示すように、中心に設けられた石英ガラスファイバ39と、この石英ガラスファイバ39の周囲に紫外線硬化型樹脂を被覆して形成された外被層40と、各光ファイバ心線2A〜2Dを区別するための着色層41とからなる構造のものを使用した。光ファイバ心線2は、規格上、石英ガラスファイバ39の直径が125μm、全体直径が250μmである。なお、前記着色層41は、光ファイバ心線2の最も外側に設けられる最外被層として機能する。
【0058】
各製造方法で製造された光ファイバテープ心線の心線間連結部における断面寸法と、製造された光ファイバテープ心線を融着機に載せて融着する時の融着し易さを調べた。断面寸法は、4本の光ファイバ心線をテープ化した光ファイバテープ心線8の心線間連結部27における部位を切断し、断面方向から最も端の光ファイバ心線2Aの中心位置からもう片方の最も端の光ファイバ心線2Dの中心位置までの距離W1(中心間距離W1)を測定した。
【0059】
前記中心間距離W1は、本発明の製造方法で製造された光ファイバテープ心線8では
図7(A)に示す通りであり、比較例方法で製造された光ファイバテープ心線8では
図7(B)に示す通りである。前記中心間距離W1をそれぞれの光ファイバテープ心線8で20箇所測定し、1箇所でも1000μmを越えた箇所があった場合を×として評価し、それ以外を○として評価した。なお、光ファイバテープ心線8に使用した光ファイバ心線2の直径は、何れも250μmとした。
【0060】
また、製造した光ファイバテープ心線8を融着機に載せて融着接続した時に、融着機のV溝に全ての光ファイバ心線2(2A〜2D)を設置するまでに要した時間を20回分測定し、その20回の平均時間を求めた。そして、これら2つの製造方法で製造された光ファイバテープ心線8を通常の4心光ファイバテープ心線と比較して倍以上時間が必要であった場合を×として評価した。
【0061】
図8には融着機33のV溝34に4本の光ファイバ心線2(2A〜2D)を載せた状態を示している。融着機33には、外被層40及び着色層41が剥かれて裸の石英ガラスファイバ39のみがV溝34の載せられる。融着機33のV溝34のピッチPは、250μmとなっている。4心光ファイバテープ心線の場合、前記中心間距離W1が750μm(250μm×3)であればV溝34に対してずれを生じることなく各光ファイバ心線2A〜2Dを載せることができる。前記中心間距離W1が1000μm(250μm×3+125μm+125μm)を超えた場合は、少なくとも何れか1本の光ファイバ心線2をV溝34に載せることができなくなる。
【0062】
表1には、心線間連結部27でのファイバピッチ評価と融着性の結果を示す。
【表1】
【0063】
比較例の製造方法で製造された光ファイバテープ心線8では、前記中心間距離W1が1000μmを超える箇所が数箇所あり、融着機33のV溝34に4本の光ファイバ心線2A〜2Dを載せる作業時間が通常の光ファイバテープ心線の倍以上かかった。これに対して、本発明の製造方法で製造された光ファイバテープ心線8では、前記中心間距離W1が1000μmを超える箇所が無く、また融着機33のV溝34に載せる時間も通常の光ファイバテープ心線の場合とほぼ同じであった。
【0064】
前記実験結果からすると、一列に配列された光ファイバ心線2のうち両端の光ファイバ心線2A、2Dの中心間距離W1を、250×(N−1)≦W1≦(N−1)×250+125×2(但し、Nは光ファイバ心線の本数とする)とすれば、全ての光ファイバ心線2を融着機33のV溝34に載せることができる。従って、本発明の製造方法で製造する光ファイバテープ心線8を、前記関係式を満足するように製造するようにする。
【0065】
「その他の実施形態」
前記した本発明の製造方法において、光ファイバテープ心線8の製造速度をアップして製造する場合、光ファイバ心線2の送り速度をアップすると間欠硬化装置5で紫外線を心線間分離部28に照射できる時間が短くなってしまう。この問題を解決するためには、走行する光ファイバ心線2の心線間分離部28を追いかけるように紫外線ランプ29を追従させ、遮光用マスク30を使用することなく紫外線ランプ29のみで紫外線を集光させてスポット的に心線間分離部28に照射するようにする。
【0066】
この他、前記した遮光用マスク30をファイバ走行方向Yと平行に移動させて心線間分離部28に開口部31が対応するように、当該遮光用マスク30を光ファイバ心線2に追従させるようにしてもよい。この方法を用いると、紫外線照射時間が増えるので、全体の積算照度を稼ぐことができる。
【0067】
製造スピードアップに際しては、
図9に示すように、樹脂取り除き部材24を回転させる駆動機構部を構成するモータ35の回転数と、遮光用マスク30を移動させる移動機構部36の移動速度と、ダンサー11を構成するローラ32を駆動するモータ37の回転数を、一括して制御する制御部38によって駆動制御する。なお、必要に応じて製造された光ファイバテープ心線8の光ファイバ心線間ピッチを測定する測定器を製造ライン上に設置するようにしてもよい。ピッチ測定器で計測したデータを前記制御部38にフィードバックして目標の光ファイバ心線間ピッチとなるように製造することで、生産歩留まりを向上させることが可能となる。
【0068】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、間欠部形成工程後に得られた心線間分離部28のみに紫外線を照射して心線間分離部28の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23だけを硬化させた後、各光ファイバ心線2を集線して間隔を狭めて該間隔が所定値となった時点で心線間連結部27の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23に紫外線を照射して硬化させると、心線間分離部28では光ファイバ心線2同士が接着することが無く、また、心線間連結部27では光ファイバ心線2同士が未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23の表面張力で互いに接近してから硬化するので、光ファイバ心線間ピッチが広がり、極度に広がり過ぎるのを防止することができる。その結果、テープ幅の狭い光ファイバテープ心線とすることができ、ケーブル内に光ファイバテープ心線8を収納した時に高密度で実装することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、遮光用マスク30を使用して紫外線を心線間分離部28の未硬化状態にある紫外線硬化樹脂23に照射するので、紫外線を照射したくない心線間連結部27への紫外線の照射を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態で製造された光ファイバテープ心線において、一列に配列された光ファイバ心線2のうち両端の光ファイバ心線2A、2Dの中心間距離W1を、250×(N−1)≦W1≦(N−1)×250+125×2としたので、融着機33のV溝34に各光ファイバ心線2(2A〜2D)を確実に載せることができる。これにより、光ファイバテープ心線の一括融着接続やコネクタ付けなどを容易に実現することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態によれば、走行する光ファイバ心線2の心線間分離部28を追いかけて遮光用マスク30を移動させるので、紫外線照射時間が増え、積算照度を稼ぐことができる。