(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス分野又はフラットパネルディスプレイ(FPD)分野において、各種の薄膜を形成する装置として、スパッタリング装置が用いられている。
一般的なスパッタリング装置では、チャンバ内にスパッタリング用のカソードが設けられ、減圧したチャンバ内において、カソードに取り付けられたターゲットと所定の間隔を空けて対向するように被処理体が配置される。
次に、チャンバ内に不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入し、ターゲットに負の電圧を印加して放電させ、放電によりイオン化した不活性ガスをターゲットに衝突させる。
そして、ターゲットから飛び出す粒子を被処理体に付着させることにより、成膜処理が行われる。
【0003】
図4Aは、スパッタリング法を用いた、従来の成膜装置600の一例を示している(特許文献1参照)。
図4Bは、
図4Aの複数のチャンバ601の各々において、ターゲットとその近傍に配置された部材Cとを示す拡大図である(特許文献2参照)。
図4Bに示すように、ターゲットは、バッキングプレート604と、バッキングプレート604の表面に配置された母材605で構成されている。ターゲットにスパッタリング電圧を印加するカソード本体610は、複数のボルト部材を用いてターゲットに取り付けられる。
そして、カソード本体610は、チャンバ601内に配置されたカソード取付けフランジ611に、絶縁板612を介して複数のボルト部材を用いて取り付けられている。
【0004】
バッキングプレート604の内部には、母材605の表面上に漏洩磁束を生成する磁場生成部Hが設けられている。
また、バッキングプレート604の内部には、ターゲットを冷却するために、冷却水が導入される流路608a及び冷却水が導出される流路608bで構成された循環流路が設けられている。
バッキングプレート604及びカソード本体610は、グラウンドシールド601aによって覆われている。グラウンドシールド601aには、ターゲットをチャンバ内の空間(成膜空間)に露出させる開口が形成されている。
グラウンドシールド601aは、成膜空間に面している部材のうち、ターゲット以外の部材において生じる放電を抑え、通常は、チャンバ(壁部)601に複数のボルト部材を用いて取り付けられている。
【0005】
ところで、スパッタリングに用いられる母材は、スパッタリングの処理量(例えば、処理される基板の枚数)に応じて消耗するため、消耗した母材と使用前の母材とを定期的に交換する必要がある。
母材を交換する作業は、バッキングプレートと共に行われ、ターゲット毎に取り外し及び取り付け作業が行われる。
そのため、母材を交換する際には、チャンバ内を大気圧とする必要がある。
これにより、ターゲットを交換した後に、チャンバ内の気体を排気して、チャンバ内の圧力を再び成膜処理することができる圧力(真空)に戻す作業が発生する。その作業が終了するまで成膜処理を行うことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、スパッタリング処理に伴って消耗した母材と使用前の母材とを交換する回数を減らし、ターゲットの使用期間を延ばすことが可能なターゲットを提供することを第一の目的とする。
【0008】
また、本発明は、接着部材を用いて、バッキングプレートの二つの主面の各々に、個別に、母材の表面が平坦な形状となるように、母材をバッキングプレートに接合することが可能なターゲットの製造方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様のターゲットは、第1主
面、前記第1主面とは反対側に位置する第2主面
、第1側面、及び前記第1側面とは反対側に位置する第2側面を有するバッキングプレートと、前記第1主面に配置された第一母材と、前記第2主面に配置された第二母材と、を含
むターゲットであって、前記バッキングプレートは、前記第一母材または前記第二母材の表面上に漏洩磁束を生成する磁気生成部を内在せず、前記第1側面から前記第2側面に向けて該バッキングプレートを貫通する回転軸を有する。
【0010】
本発明の第1態様のターゲットにおいては、前記バッキングプレートの内部に設けられ、前記第1主面あるいは前記第2主面に近い位置に形成され、冷却水が流動する循環流路を含み、前記バッキングプレートは、単板で形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の第1態様のターゲットにおいては、前記バッキングプレートの内部に設けられ、前記バッキングプレートの最外面である第1主面に近い位置に形成されて冷却水が流動する循環流路と、前記バッキングプレートの内部に設けられ、前記バッキングプレートの最外面である第2主面に近い位置に形成されて冷却水が流動する循環流路とを含み、前記バッキングプレートは、複数の板体が貼り合わされた合板で形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第1態様のターゲットにおいては
、前記回転軸の内部には、スパッタリングに用いられる電力を供給する電力供給ラインが設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明の第1態様のターゲットにおいては、前記バッキングプレートは、前記第1側面及び前記第2側面とは異なる第3側面を有し、前記第3側面には絶縁部材を介して防着板が配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明の第1態様のターゲットにおいては、前記バッキングプレートの前記第1主面と前記第一母材とが接着部材を介して接合されていることが好ましい。前記バッキングプレートの前記第2主面と前記第二母材とが接着部材を介して接合されていることが好ましい。前記バッキングプレートの前記第1主面と前記第一母材とが接着部材を介して接合されており、かつ、前記バッキングプレートの前記第2主面と前記第二母材とが接着部材を介して接合されていることが好ましい。
【0015】
本発明の第1態様のターゲットにおいては、前記バッキングプレートの前記第1主面と前記第一母材とがクランプにより固定されていることが好ましい。前記バッキングプレートの前記第2主面と前記第二母材とがクランプにより固定されていることが好ましい。前記バッキングプレートの前記第1主面と前記第一母材とがクランプにより固定されており、かつ、前記バッキングプレートの前記第2主面と前記第二母材とがクランプにより固定されていることが好ましい。
【0016】
本発明の第2態様のターゲットの製造方法は、第一母材をバッキングプレートの第1主面に、第一接着部材を介して接合し、前記第一母材と前記第1主面とが接合された際に反った前記バッキングプレートの面が平坦な形状となるように整形し、第二母材をバッキングプレートの第2主面に、第二接着部材を介して接合し、前記第二母材と前記第2主面とが接合された際に反った前記バッキングプレートの面が平坦な形状となるように整形
し、前記第一母材または前記第二母材の表面上に漏洩磁束を生成する磁気生成部を、前記バッキングプレートに内在させることなく、前記バッキングプレートの長手方向と直交する第1側面から前記第1側面とは反対側に位置する第2側面に向けて該バッキングプレートを貫通する回転軸を形成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るターゲットにおいては、バッキングプレートの二つの主面の各々に、スパッタリングに用いられる母材が配置されている。
そのため、チャンバ内において、第1主面に配置された第一母材を用いてスパッタリング処理を行った後に、ターゲットを反転させて、第2主面に配置された第二母材を用いてスパッタリング処理を行うことができる。
したがって、第二母材が第一母材と同一材料で構成される場合、従来のようにバッキングプレートの一つの主面にのみ配置された母材を用いる場合に比べて、ターゲット一つ当たりの使用期間を延ばすことができる。
これにより、母材の交換回数を減らすことができ、交換にともなって発生する作業又はコストを減らすことができる。
【0018】
また、第一母材及び第二母材の各々が、被処理基板上に形成される積層膜の下層及び上層を形成する材料で構成される場合、一つのターゲットのみを用いて、二つの成膜処理を連続して行うことができる。
そして、連続する二つの成膜処理を同一チャンバ内で行うことにより、第一母材を用いる成膜工程(第一成膜工程)と第二母材を用いる成膜工程(第二成膜工程)との間に行うチャンバ内の気体を排気する工程及び被処理基板の搬送等の作業(工程)が不要となり、このような作業(工程)に要する時間を短縮することができる。
【0019】
また、本発明に係るターゲットの製造方法においては、バッキングプレートの第1主面あるいは第2主面に母材を接合させた後に、接合により反りが生じたバッキングプレートを、平坦な形状になるように整形する。
したがって、バッキングプレートの二つの主面の各々に、個別に、表面が平坦な形状の母材が接合されたターゲットを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0022】
<第一実施形態>
図1Aは、本発明の第一実施形態のターゲットを備えた、スパッタリングに用いる成膜
装置100と、それに付設される、制御部E、接地部G、磁場生成部H、排気部Pの構成
について説明する図である。
成膜装置100は、チャンバ101と、チャンバ101の内部に配置されたターゲット
Cと、ターゲットCと対向する位置に配置された支持台103と、を有する。支持台10
3は、被処理基板102を支持する。
すなわち、図1Aに示すように、磁場生成部HはターゲットCの外部に配置されている。
【0023】
図1Bは、本発明の第一実施形態のターゲットの斜視図である。
図1Cは、
図1Bに示す本発明の第一実施形態のターゲットを示す図であって、長手方向Lに垂直な面に対応する断面図である。
ターゲットCは、バッキングプレート104と、第一母材105と、第二母材106と、防着板109と、で構成される。バッキングプレート104は、平坦な形状で形成され、第1主面104a(一方の主面)及び第2主面104b(他方の主面)を有する。第一母材105は、第1主面104aに配置されている。第二母材106は、第2主面104bに配置されている。防着板109は、バッキングプレートの長手方向Lに平行な側面113(第3側面)に配置されている。
【0024】
バッキングプレート104は、バッキングプレート104の第1側面111(一方の側面)から第2側面112(他方の側面)に向けてバッキングプレート104を貫通する回転軸107を有する。
つまり、バッキングプレート104は、第一母材105または第二母材106の表面上に漏洩磁束を生成する磁気生成部Hを内在せず、第1側面111から第2側面112に向けて、バッキングプレート104を貫通する回転軸107を備えている。
バッキングプレート104内には、バッキングプレート104の第1主面104aあるいは第2主面104bに近い位置(近傍)に形成され、冷却水(冷媒)が流動する循環流路108a及び108b(第1循環流路及び第2循環流路)が設けられている。
【0025】
バッキングプレート104を構成する材料としては、高い導電性、熱伝導性、低ガス放出性を有する材料ものが望ましく、主に銅又はステンレスが用いられる。
【0026】
第一母材105及び第二母材106としては、金属又は絶縁体等の、被処理基板に形成される膜の材料が用いられる。なお、第一母材105と第二母材106とは、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0027】
循環流路108a及び108bを流れる冷却水(冷媒)は、スパッタリング処理中の第一母材105及び第二母材106を冷却する。
冷却水は、循環流路108a及び108bのうち、一方から導入され、他方から導出される。
【0028】
回転軸107は、ターゲットCの外部に設けられた制御部Eに接続され、制御部Eを用いて回転する。
そして、回転軸107の回転に連動して、ターゲットCを回転させる。
安定した回転を実現するために、回転軸はバッキングプレート104の重心に一致するように貫通していることが望ましい。
【0029】
また回転軸107の内部には、バッキングプレート104にスパッタリング電圧を印加する電力供給ラインと、循環流路108a及び108bを流れる冷却水の供給及び排出用ラインとが設けられている。
【0030】
バッキングプレート104の長手方向Lに平行な第3側面113に設けられた防着板109は、スパッタリング処理中に発生した粒子がバッキングプレートの側面に回り込むのを防ぐ。
また、防着板109とバッキングプレート104との間には絶縁部材109aが配置され、絶縁部材109aは、スパッタリング時に供給される電圧によって防着板109にダメージが発生することを防ぐ。
【0031】
本発明の第一実施形態のターゲットは、バッキングプレートの二つの主面の各々に、スパッタリングに用いられる母材が配置されている。
そのため、チャンバ内において、第1主面104aに配置された第一母材105を用いてスパッタリング処理を行った後に、ターゲットを反転させて、第2主面104bに配置された第二母材106を用いてスパッタリング処理を行うことができる。
【0032】
したがって、第二母材106が第一母材105と同一材料で構成される場合、従来のようにバッキングプレートの一つの主面にのみ配置された母材を用いる場合に比べて、ターゲット一つ当たりの使用期間を延ばすことができる。
これにより、母材の交換回数を減らすことができ、交換にともなって発生する作業又はコストを減らすことができる。
【0033】
また、第一母材105及び第二母材106の各々が、被処理基板102上に形成される積層膜の下層及び上層を形成する材料で構成される場合、一つのターゲットのみを用いて、二つの成膜処理を連続して行うことができる。
そして、連続する二つの成膜処理を同一チャンバ内で行うことにより、第一母材105による成膜工程と第二母材106による成膜工程との間に行う、チャンバ内の気体を排気する工程及び被処理基板の搬送等の作業(工程)が不要となり、このような作業(工程)に要する時間を短縮することができる。
さらに、二種類の成膜工程を同一チャンバ内で行うことにより、一種類の成膜工程ごとに別々のチャンバを用いる従来技術に比べて、成膜工程に必要なチャンバが設置されるスペースを減らすことができる。
【0034】
<ターゲットの製造方法の第一実施形態>
上記第一実施形態の構成を備えたターゲットの製造方法について、
図2A〜
図2Fに示す工程図を用いて説明する。
まず、
図2Aに示す第一工程において、第一母材105をバッキングプレート104の第1主面104aに対向するように配置し、第二母材106をバッキングプレート104の第2主面104bに対向するように配置する。
【0035】
次に、
図2Bに示す第二工程において、第一接着部材(不図示)を用いて、第一母材105をバッキングプレート104の第1主面104aに接合する。
より具体的には、接合面を形成するバッキングプレート104の第1主面104aに第一接着部材を塗布し、バッキングプレート104及び第一接着部材を融点以上の温度で加熱して融解させる。
そして、融解した第一接着部材上に第一母材105を配置し、第一母材105とバッキングプレート104との間に融解した第一接着部材が挟まれた状態で室温まで冷却する。
この工程で用いる第一接着部材としては、低融点金属であることが望ましく、例えば、インジウムが用いられる。
【0036】
第二工程では、バッキングプレート104と第一母材105とが、高温状態において接合され、接合した状態のまま室温まで冷却される。
そして、冷却にともなって、バッキングプレート104は圧縮される。
このとき、第1主面104aにのみ第一母材105が接合されているため、第1主面104aにおけるバッキングプレート104の圧縮率と、第2主面104bにおけるバッキングプレート104の圧縮率とは異なる。
したがって、バッキングプレート104は、第1主面104aあるいは第2主面104bにおいて、凸状に反りが生じた形状を有する。
【0037】
図2Bでは、バッキングプレート104が第1主面104aに凸状の反りが生じている例が示されているが、バッキングプレート104と第一母材105とを構成する材料の組合せによっては、第2主面104bに凸状の反りが生じる場合もある。
【0038】
次に、
図2Cに示す第三工程において、第一母材105とバッキングプレート104との接合により反ったバッキングプレート104を、平坦な形状となるように整形する。
バッキングプレート104を整形する方法は、特定の方法に限定されないが、本実施形態では、バッキングプレート104の第2主面104bに対し、反りが生じている方向とは逆の方向に圧力を加えて機械的に矯正する方法を用いる。
【0039】
次に、
図2Dに示す第四工程において、第二接着部材(不図示)を用いて、第二母材106をバッキングプレート104の第2主面104bに接合する。
より具体的には、接合面を形成するバッキングプレート104の第2主面104bに第二接着部材を塗布し、バッキングプレート104及び第二接着部材を融点以上の温度で加熱して融解させる。
そして、融解した第二接着部材上に第二母材106を配置し、第二母材106とバッキングプレート104との間に融解した第二接着部材が挟まれた状態で室温まで冷却する。
この工程で用いる第二接着部材としては、低融点金属であることが望ましく、例えば、インジウムが用いられる。
【0040】
第四工程では、バッキングプレート104と第二母材106とは、高温状態において接合され、接合した状態のまま室温まで冷却される。
そして、冷却にともなって、バッキングプレート104は圧縮される。
このとき、第1主面104aには第一母材105が接合され、第2主面104bには第二母材106が接合されているため、第1主面104aにおけるバッキングプレート104の圧縮率と、第2主面104bにおけるバッキングプレート104の圧縮率とは異なる。
したがって、バッキングプレート104は、第1主面104aあるいは第2主面104bにおいて、凸状に反りが生じた形状を有する。
【0041】
そこで、
図2Eに示す第五工程において、第二母材106とバッキングプレート104との接合により反ったバッキングプレート104を、平坦な形状となるように整形する。
バッキングプレート104を整形する方法は、特定の方法に限定されないが、本実施形態では、バッキングプレート104に対し、反りが生じている方向とは逆の方向に圧力を加えて機械的に矯正する方法を用いる。
【0042】
そして、
図2Fに示す第六工程において、バッキングプレート104の長手方向Lに平行な側面113に、絶縁性の接着部材(絶縁部材)109aを用いて、防着板109を接合することにより、第一実施形態のターゲットが形成されている。
【0043】
ここでは、バッキングプレート104に対して、第一母材105、第二母材106の順に接合する例を示したが、接合する順序を逆にしてもよいし、あるいはバッキングプレート104の両面に第一母材105及び第二母材106を同時に接着した後に、機械的に矯正する方法でもよい。
なお、
図2A〜
図2Fは、後述する第二実施形態に対しても適用することができる。
【0044】
上記本発明の第一実施形態のターゲットの製造方法によれば、ボルト又はクランプ等の固定部材を用いて母材をバッキングプレートに固定する場合のように、母材に固定領域を設ける必要がない。
したがって、バッキングプレート104の各々の主面に配置された第一母材105及び第二母材106の全域をスパッタリングに用いることができる。
【0045】
また、本発明の第一実施形態のターゲットの製造方法では、バッキングプレートの第1主面104aあるいは第2主面104bに母材を接合させた後に、接合により反ったバッキングプレートが、平坦な形状になるように整形する。
したがって、バッキングプレートの二つの主面の各々に、個別に、表面が平坦な形状を有する母材が接合されたターゲットを製造することができる。
これにより、母材と被処理基板が平行に配置されるため、母材から飛び出すスパッタ粒子を被処理基板の処理面内に均一に付着させ、成膜することができる。
【0046】
なお、
図2A〜
図2Fでは、接着部材を用いて、第一母材105及び第二母材106を、バッキングプレート104の各々の主面に接合する方法を例として示した。別の例として、ボルト又はクランプ等の固定用部材を用いて、第一母材105及び第二母材106を、バッキングプレート104の各々の主面に固定する方法もある。
【0047】
ボルト又はクランプ等の固定用部材を用いる場合には、第一母材105とバッキングプレートとの熱膨張率差あるいは第二母材106とバッキングプレートとの熱膨張率差に起因した反りが生じることはない。
したがって、上記第二工程及び第四工程に相当する工程は不要となり、より簡略化したプロセスでターゲットを製造することができる。
【0048】
<第二実施形態>
図3は、本発明の第二実施形態のターゲットを示す図であって、回転軸に垂直な面に対応する断面図である。
第一実施形態のバッキングプレート104は、単板で形成されていたのに対し、第二実施形態のバッキングプレート214は、二枚の板(バッキングプレート)204及び211が重ね合わされた合板で構成されている。
バッキングプレート214の内部には、バッキングプレートの最外面である第1主面214aに近い位置に形成され、冷却水が流動する循環流路208a、208bと、バッキングプレートの最外面である第2主面214bに近い位置に形成され、冷却水が流動する循環流路213a、213bとが設けられている。
第二実施形態において、ターゲットにおけるその他の構成は、第一実施形態の構成と同様である。
図3において、第一実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0049】
第一実施形態の構成では、冷却水の循環流路108a、108bは、バッキングプレート104内において、第1主面104a及び第2主面104bのいずれか一方に近い位置に形成されている。
これに対し、第二実施形態の構成では、冷却水の循環流路208a、208bは、バッキングプレート214内において、第1主面214a及び第2主面214bの両方に近い位置に形成されている。
したがって、第二実施形態の構成によれば、第一母材205及び第二母材212の両方を冷却する高い冷却機能を有するターゲットを得ることができる。
【0050】
本発明の第二実施形態のターゲットは、バッキングプレートの最外面である二つの主面の各々に、スパッタリングに用いられる母材が配置されている。
そのため、チャンバ内において、第1主面214aに配置された第一母材205を用いてスパッタリング処理を行った後に、ターゲットを反転させて、第2主面214bに配置された第二母材212を用いてスパッタリング処理を行うことができる。
【0051】
したがって、第二母材212が第一母材205と同一材料で構成される場合、従来のようにバッキングプレートの一つの主面にのみ配置された母材を用いる場合に比べて、ターゲット一つ当たりの使用期間を延ばすことができる。
これにより、母材の交換回数を減らすことができ、交換にともなって発生する作業又はコストを減らすことができる。
【0052】
また、第一母材205及び第二母材212の各々が、被処理基板上に形成される積層膜の下層及び上層を形成する材料で構成される場合、一つのターゲットのみを用いて、二つの成膜処理を連続して行うことができる。
そして、連続する二つの成膜処理を同一チャンバ内で行うことにより、第一母材205による成膜工程と第二母材212による成膜工程との間に行う、チャンバ内の排気する工程及び被処理基板の搬送等の作業(工程)が不要となり、このような作業(工程)に要する時間を短縮することができる。
さらに、二種類の成膜工程を同一チャンバ内で行うことにより、一種類の成膜工程ごとに別々のチャンバを用いる従来ギ技術に比べて、成膜工程に必要なチャンバが設置されるスペースを減らすことができる。
【0053】
<ターゲットの製造方法の第二実施形態>
上記第二実施形態の構成を備えたターゲットの製造方法について、説明する。
【0054】
初めに、製造方法について説明する。
まず、第一工程において、第一接着部材を用いて、第一母材205をバッキングプレート204の第1主面204aに接合する。
より具体的には、接合面を形成するバッキングプレート204の第1主面204aに第一接着部材を塗布し、バッキングプレート204及び第一接着部材を融点以上の温度で加熱して融解させる。
そして、融解した第一接着部材上に第一母材205を配置し、第一母材205とバッキングプレート204との間に融解した第一接着部材が挟まれた状態で室温まで冷却する。
この工程で用いる第一接着部材としては、低融点金属であることが望ましく、例えば、インジウムが用いられる。
【0055】
第一工程では、バッキングプレート204と第一母材205とは、高温状態において接合され、接合した状態のまま室温まで冷却される。
そして、冷却にともなって、バッキングプレート204は圧縮される。
このとき、第1主面204aにのみ第一母材205が接合されているため、第1主面204aにおけるバッキングプレート204の圧縮率と、第2主面204bにおけるバッキングプレート204の圧縮率とは異なる。
したがって、バッキングプレート204は、第1主面204aあるいは第2主面204bにおいて、凸状に反りが生じた形状を有する。
【0056】
次に、第二工程において、第一母材205とバッキングプレート204との接合により反ったバッキングプレート204を、平坦な形状となるように整形する。
バッキングプレート204を整形する方法は、特定の方法に限定されないが、本実施形態では、バッキングプレート204に対し、反りが生じている方向とは逆の方向に圧力を加えて機械的に矯正する方法を用いる。
【0057】
次に、第三工程において、第二接着部材を用いて、第二母材212をバッキングプレート211の第1主面211aに接合する。
より具体的には、接合面を形成するバッキングプレート211の第1主面211aに第二接着部材を塗布し、バッキングプレート211及び第二接着部材を融点以上の温度で加熱して融解させる。
そして、融解した第二接着部材上に第二母材212を配置し、第二母材212とバッキングプレート211との間に融解した第二接着部材が挟まれた状態で室温まで冷却する。
この工程で用いる第二接着部材としては、低融点金属であることが望ましく、例えば、インジウムが用いられる。
【0058】
次に、第四工程において、バッキングプレート211と第二母材212との接合により反ったバッキングプレート211を、平坦な形状となるように整形する。
バッキングプレート211を整形する方法は、特定の方法に限定されないが、本実施形態では、バッキングプレート211に対し、反りが生じている方向とは逆の方向に圧力を加えて機械的に矯正する方法を用いる。
【0059】
次に、第五工程において、バッキングプレート204の第2主面204bとバッキングプレート211の第2主面211bとが、向かい合うように、バッキングプレート204とバッキングプレート211とを一体化させる。
2つのバッキングプレートを一体化させる方法としては、例えば、主面204bと主面211bとの間に接着部材を配置し、両プレートを接合する方法が挙げられる。或いは、主面204bと主面211bとを重ね合わせた状態で、両プレートをボルト又はクランプ等により固定する方法がある。
【0060】
次に、第六工程において、バッキングプレート214の長手方向に平行な側面113(第3側面)に、絶縁性の接着部材(絶縁部材)209aを用いて、防着板209を接合することにより、第二実施形態のターゲットが形成される。
【0061】
なお、第一工程〜第二工程と、第三工程〜第四工程とは、順序を入れ替えて行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0062】
また、第二実施形態のターゲットは、二枚の板204及び211を重ね合わせることによってバッキングプレート214を予め形成し、その後、第一実施形態におけるバッキングプレート104と同様に、上述したターゲットの製造方法の第一実施形態を用いることによっても形成される。
【0063】
上記本発明の第二実施形態のターゲットの製造方法によれば、ボルト又はクランプ等の固定部材を用いて母材をバッキングプレートに固定する場合のように、母材に固定領域を設ける必要がない。
したがって、バッキングプレート214の各々の主面に配置された第一母材205及び第二母材212の全域をスパッタリングに用いることができる。
【0064】
また、本発明の第二実施形態のターゲットの製造方法では、バッキングプレートの第1主面214aあるいは第2主面214bに母材を接合させた後に、接合により反ったバッキングプレートを、平坦な形状になるように整形する。
したがって、バッキングプレートの二つの主面の各々に、個別に、表面が平坦な形状を有する母材が接合されたターゲットを製造することができる。
これにより、母材と被処理基板が平行に配置されるため、母材から飛び出すスパッタ粒子を被処理基板の処理面内に均一に付着させ、成膜することができる。