特許第5721824号(P5721824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721824有機半導体用組成物及びそれを用いた光電変換素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721824
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】有機半導体用組成物及びそれを用いた光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20150430BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20150430BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20150430BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20150430BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20150430BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250G
   H01L31/04 152J
   C08L65/00
   C08K5/00
   C08G61/12
【請求項の数】15
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2013-518098(P2013-518098)
(86)(22)【出願日】2012年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2012063733
(87)【国際公開番号】WO2012165420
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-125731(P2011-125731)
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森原 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明士
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−008956(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0017956(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/118728(WO,A2)
【文献】 Joji Ohshita et al.,"Synthesis of Dithienogermole-Containing π-Conjugated Polymers and Applications to Photovoltaic Cell",Organometallics,米国,American Chemical Society,2011年 5月27日,Vol. 30,pp. 3233-3236
【文献】 Jae Kwan Lee et al.,"Processing Additives for Improved Efficiency from Bulk Heterojunction Solar Cells",Journal of the American Chemical Society,米国,American Chemical Society,2008年 2月21日,Vol. 130,pp. 3619-3623
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/00−51/56
C08G 61/12
C08K 5/00
C08L 65/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/または芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、nは最小でも2の正数である)で示される繰り返し単位を有する重合体(A)と、電子受容性有機半導体(B)と、前記重合体(A)及び前記電子受容性有機半導体(B)の可溶解溶媒(C)と、沸点が前記可溶解溶媒(C)より高く前記重合体(A)に対する溶解性よりも前記電子受容性有機半導体(B)に対する溶解性が高い溶解性添加物(D)とを含有することを特徴とする有機半導体用組成物。
【請求項2】
前記重合体(A):前記電子受容性有機半導体(B)が1〜99:99〜1の重量分率であり、前記可溶解溶媒(C)及び前記溶解性添加物(D)の総量100重量部に対して前記重合体(A)及び前記電子受容性有機半導体(B)の総量を0.1〜10重量部とすることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体用組成物。
【請求項3】
前記化学式(1)で示される繰り返し単位のArが電子吸引性基であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体組成物。
【請求項4】
前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体(A)の数平均重合度nが、15〜2,000であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項5】
前記重合体(A)が、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を含む重合体ブロックを少なくとも1つ有するブロック共重合体であること特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項6】
前記重合体(A)が、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有するランダム共重合体であること特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項7】
前記溶解性添加物(D)が、ジヨードオクタン、オクタンジチオール、及びジブロモオクタン、クロロナフタレンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項8】
前記重合体(A)が、下記化学式(2)
【化2】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子で中断されてもよい)で示される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項9】
前記重合体(A)が、下記化学式(3)
【化3】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R6a〜R6dはそれぞれ独立して水素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子で中断されてもよい)で示される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項10】
前記重合体(A)が、下記化学式(4)
【化4】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R6a〜R6dはそれぞれ独立して水素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子で中断されてもよい)で示される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【請求項11】
前記重合体(A)が、下記化学式(5)
【化5】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R及びR9’はそれぞれ独立して水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。mは最小でも2の正数である)で示されるブロック共重合体であることを特徴とする請求項5に記載の有機半導体用組成物。
【請求項12】
前記重合体(A)が、下記化学式(6)
【化6】
(式中、R、Rは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R及びR9’はそれぞれ独立して水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。x:y=1:99〜99:1である)で示されるランダム共重合体であることを特徴とする請求項6に記載の有機半導体用組成物。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載の有機半導体用組成物を乾燥硬化してなる有機薄膜。
【請求項14】
請求項1〜12の何れかに記載の有機半導体用組成物が乾燥硬化している有機薄膜が、少なくとも一方が光透過性を有する第一電極及び第二電極の間に挟まれていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項15】
請求項14に記載の光電変換素子を含有することを特徴とするタンデム型光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の活性層となる有機薄膜を形成することができる有機半導体用組成物及びそれを用いて作製した光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、再生可能エネルギーの中でも特に潜在的な利用可能量が多いことから、石油代替エネルギーの筆頭として近年特に着目されている。太陽光発電を担う素子として単結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系太陽電池、GaAs、CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン含有化合物)、CdTeなどの無機化合物系薄膜太陽電池などがある。これらの太陽電池は比較的高い光電変換効率を有するが、他の電源コストと比較して高価格であることが問題である。コスト高の要因は、高真空且つ高温下で半導体薄膜を製造しなくてはならないプロセスにある。そこで製造プロセスの簡略化が期待される有機半導体材料を用いた有機薄膜太陽電池が検討されている。
【0003】
有機半導体材料は塗布法や印刷法により製膜できるため、製造プロセスを簡便化し、発電コストを低減することが期待される。また、軽量且つフレキシブルな素子及びモジュールを作製できることから可搬性に優れ、電気的インフラの整備されていない地域においても簡便に電気エネルギーを利用できる可能性を秘めている。さらに、有機半導体は分子設計により吸収帯域を制御できることから、様々な色調で意匠性に優れる太陽電池を提供できる。
【0004】
有機薄膜太陽電池の素子構成としては、電子供与性有機材料(p型有機半導体)と仕事関数の小さな金属を接合させるショットキー型、電子供与性有機材料(p型有機半導体)と電子受容性有機材料(n型有機半導体)とを接合させるヘテロ接合型などがある。しかし、これらの光電変換素子は電荷分離を起こすpn接合界面の面積が小さいため光電変換効率が低い問題を有する。
【0005】
そこで有機薄膜太陽電池の光電変換効率を向上させる一つの方法として、例えば非特許文献1に記載されているように、電子供与性有機材料(p型有機半導体)と電子受容性有機材料(n型有機半導体)とを混合し、電荷分離を起こすpn接合界面の面積を増大させたバルクヘテロ接合型の光電変換素子が提案され、現在の主流となっている。また、非特許文献2に記載されているように、バルクヘテロ接合型の光電変換素子において高い光電変換効率を達成するためには、電子供与性有機材料(p型有機半導体)と電子受容性有機材料(n型有機半導体)との相分離構造制御が重要である。
【0006】
このような技術開発が進んでも尚、有機薄膜太陽電池はシリコン系や無機化合物系薄膜太陽電池と比較して光電変換効率が低いことが現状の課題の一つである。
【0007】
有機薄膜太陽電池の光電変換効率を抜本的に向上させる手段の一つとして、光吸収特性に優れる活性層材料の適用が考えられる。これらの特徴を有する化合物としてローバンドギャップポリマー(LBGP)が挙げられる。例えば、特許文献1に、主鎖にチオフェンとケイ素原子とを含む繰り返し単位からなるポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料及びこれを用いた電子デバイスが開示されている。また、非特許文献3及び非特許文献4に、シクロペンタジチオフェン骨格やジチエノシロール骨格を含むLBGPを半導体材料として用いた有機薄膜太陽電池において高効率な光電変換特性を示すことが報告されている。しかしながら有機物は無機物と比較して一般的に安定性が低く、素子の耐久性が低いため、化合物の安定性向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−114701号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】サイエンス(Science),1995年,第270巻,pp.1789−1791
【非特許文献2】アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials),2009年,第21巻,pp.1434−1449
【非特許文献3】アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials),2006年,第18巻,pp.2884−2889
【非特許文献4】ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー(Journal of the American Chemical Society),2008年,第130巻,pp16144−16145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、耐久性及び半導体特性の安定性と、可視〜近赤外領域の光電変換が可能な光電変換特性とに優れた光電変換素子の作製に好適な有機半導体用組成物、及びそれを用いた光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討し、ジチエノゲルモール骨格を有する有機半導体高分子である重合体(A)、電子受容性有機半導体(B)、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)に対して良溶媒である可溶解溶媒(C)、及び溶解性添加物(D)を含む有機半導体用組成物を用いて光電変換素子を作製することで前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された有機半導体用組成物は、下記化学式(1)
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/または芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、nは最小で2の正数である)で示される繰り返し単位を有する重合体(A)と、電子受容性有機半導体(B)と、前記重合体(A)及び前記電子受容性有機半導体(B)の可溶解溶媒(C)と、沸点が前記可溶解溶媒(C)より高く前記重合体(A)に対する溶解性よりも前記電子受容性有機半導体(B)に対する溶解性が高い溶解性添加物(D)とを含有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の有機半導体用組成物は、請求項1に記載されたものであって、前記重合体(A):前記電子受容性有機半導体(B)が1〜99:99〜1の重量分率であり、前記可溶解溶媒(C)及び前記溶解性添加物(D)の総量100重量部に対して前記重合体(A)及び前記電子受容性有機半導体(B)の総量を0.1〜10重量部とすることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の有機半導体用組成物は、請求項1または2に記載されたものであって、前記化学式(1)で示される繰り返し単位のArが電子吸引性基であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜3の何れかに記載されたものであって、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体(A)の数平均重合度nが、15〜2,000であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜4の何れかに記載されたものであって、前記重合体(A)が、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を含む重合体ブロックを少なくとも1つ有するブロック共重合体であることを特徴とする
【0017】
請求項6に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜5の何れかに記載されたものであって、前記重合体(A)が、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有するランダム共重合体であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜6の何れかに記載されたものであって、前記溶解性添加物(D)が、ジヨードオクタン、オクタンジチオール、及びジブロモオクタン、クロロナフタレンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜7の何れかに記載されたものであって、前記重合体(A)が、下記化学式(2)
【化2】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子で中断されてもよい)で示される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の有機半導体用組成物。
【0020】
請求項9に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜7の何れかに記載されたものであって、前記重合体(A)が、下記化学式(3)
【化3】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R6a〜R6dはそれぞれ独立して水素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子で中断されてもよい)で示される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の有機半導体用組成物は、請求項1〜7の何れかに記載されたものであって、前記重合体(A)が、下記化学式(4)
【化4】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R6a〜R6dはそれぞれ独立して水素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子で中断されてもよい)で示される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の有機半導体用組成物は、請求項5に記載されたものであって、前記重合体(A)が、下記化学式(5)
【化5】
(式中、R、R及びnは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R及びR9’はそれぞれ独立して水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。mは最小でも2の正数である)で示されるブロック共重合体であることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の有機半導体用組成物は、請求項6に記載されたものであって、前記重合体(A)が、下記化学式(6)
【化6】
(式中、R、Rは前記と同義であり、R及びR5’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R及びR9’はそれぞれ独立して水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。x:y=1:99〜99:1である)で示されるランダム共重合体であることを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の有機薄膜は、請求項1〜12の何れかに記載の有機半導体用組成物を乾燥硬化してなる。
【0025】
請求項14に記載の光電変換素子は、請求項1〜12の何れかに記載の有機半導体用組成物が乾燥硬化している有機薄膜が、少なくとも一方が光透過性を有する第一電極及び第二電極の間に挟まれていることを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載のタンデム型光電変換素子は、請求項14に記載の光電変換素子を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有機半導体用組成物は、ジチエノゲルモール骨格を有する有機半導体高分子である重合体、電子受容性有機半導体、可溶解溶媒、及び溶解性添加物を含有する均一溶液であり、均質な有機薄膜を形成することができる。この有機半導体用組成物は、重合体がジチエノゲルモール骨格を含有しており、高い熱安定性を有するため、耐久性及び半導体特性の安定性に優れた光電変換素子を提供することができる。
【0028】
本発明の光電変換素子は、光電変換特性に優れており可視〜近赤外領域に渡って光電変換可能で、高い光電変換効率を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0030】
本発明の有機半導体用組成物は、電子供与性成分として重合体(A)と、電子受容性成分となる電子受容性有機半導体(B)と、それらに対し良溶媒の成分として可溶解溶媒(C)と、沸点がその可溶解溶媒より高く重合体に対し貧溶媒且つ電子受容性有機半導体に対し良溶媒の成分として溶解性添加物(D)とを含有する均一溶液である。
【0031】
<重合体(A)>
この有機半導体用組成物における重合体(A)は、ジチエノゲルモール骨格を有する有機半導体高分子であって、下記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0032】
【化7】
【0033】
前記化学式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して同一または異なり、置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状、または環状の炭素数1〜20の炭化水素基である。炭化水素基として、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基などが挙げられる。
【0034】
置換基を有してもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などが挙げられる。
【0035】
これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基などのスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基などのスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基などのアルキル基またはアリール基などで置換されていてもよいアミノ基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。
【0036】
前記化学式(1)におけるArは、置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/または芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる1つである。
【0037】
置換基を有してもよい2価の芳香環とは、単環芳香環または単環ヘテロ芳香環の2価の基を意味し、これらは置換基を有していてもよい。置換または未置換の2価の芳香環の具体例を下記化学式(a)〜(g)に示す。
【化8】
これらの置換または未置換の2価の芳香環の中でも、特に化合物(b)の構造が望ましい。
【0038】
芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環とは、2〜7個の芳香環が縮環した縮環型芳香環または縮環型へテロ芳香環の2価の基を意味し、これらは置換基を有していてもよい。置換または未置換の芳香環数2〜7で2価の多核芳香環の具体例を化学式(h)〜(u)に示す。
【化9】
これらの置換または未置換の芳香環数2〜7で2価の多核芳香環の中でも、(k),(l),(m),(t),(u)に示される構造のような含ヘテロ原子芳香環が好ましい。
【0039】
置換基を有してもよい2価の芳香環及び/または芳香環数2〜7で置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とは、前記の単環及び/または縮環型(ヘテロ)芳香環を複数連結させた多環性芳香環または多環性へテロ芳香環の2価の基を意味し、これらは置換基を有していてもよい。これらの具体例を化学式(v1)〜(v9)に示す。
【化10】
【0040】
前記式中におけるpは置換基Rの個数であり、0、1、2または3である。qはArに含まれるチオフェン環の個数を表し、1、2または3である。R及びR’はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。また、R及びR’は環を形成してもよい。 R、R’及びR6a〜R6dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。また、R、R’及びR6a〜R6hは環を形成してもよい。R及びR’はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。R及びR’はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素原子または硫黄原子などで中断されてもよい。また、R及びR’は環を形成してもよい。R及びR’はそれぞれ独立して水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。 R10及びR10’はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。R11は水素原子またはハロゲン原子である。
【0041】
前記化学式(1)におけるArは、電子供与性基であるジチエノゲルモールに対して電子吸引性基であることがより好ましい。Arがジチエノゲルモールに対して電子吸引性であることで、重合体のバンドギャップが小さくなり、より長波長側の光を吸収し電気エネルギーに変換できるため、光電変換特性が向上する。そのような電子吸引性基としては、例えば、置換基を有してもよい芳香環数2〜7でヘテロ原子を2個以上有する2価の縮環型へテロ芳香環基、または置換基を有してもよい単環及び/または縮環型(ヘテロ)芳香環を複数連結させた、ヘテロ原子を2個以上有する2価の多環性へテロ芳香環基が挙げられる。その中でも特に、前記化学式(k),(l),(m),(t),(u),(v1),(v5),(v6),(v9)で表される構造であることが好ましい。
【0042】
ここで、電子吸引性の強さは、Arを構成する構造に電子リッチなヘテロ原子を有する割合から推測することができる。すなわち、フッ素、酸素、窒素、硫黄、りんなどの原子を相対的に多く有するArは電子吸引性が強いと判断することができる。
【0043】
本発明の重合体(A)について、前記化学式(1)で示される繰り返し単位の好ましい構造を以下に示す。下記化学式(w1)〜(w6)に示される構造は、比較的弱い電子供与性基であるジチエノゲルモールと強い電子吸引性基であるArとの組み合わせであることから、深いHOMO準位を有しながらローバンドギャップ化するため、光電変換素子の活性層として用いた場合に、高い電流と電圧を発現することができる。
【化11】
(式中、R,R,R〜R11は前記と同義である)
【0044】
,R,R〜R10が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基などのスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基などのスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基などのアルキル基またはアリール基などで置換されていてもよいアミノ基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。
【0045】
前記化学式(1)において、nは数平均重合度を表し、2以上の正数である。有機半導体用組成物における重合体(A)の重合度は、本発明の要件を満たす限りにおいて特に限定されないが、有機溶媒である成分Cの可溶解溶媒(C)に溶解し均一溶液を得るという観点から2,000以下であり、均一溶液を塗布することで均質な有機薄膜を得るという観点から5以上であることが好ましい。さらにこの有機半導体用組成物から作製した光電変換素子における高い光電変換効率を得るためには15以上であることがより好ましい。
【0046】
本発明の有機半導体組成物を構成する重合体(A)は、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する限りにおいて、単独重合体、ランダム共重合体またはブロック共重合体の何れでもよい。その分子鎖は、直鎖状、分岐状、物理的または化学的架橋状の何れでもよい。
【0047】
本発明の有機半導体組成物を構成する重合体(A)がブロック共重合体である場合には、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体ブロックを少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体であることによって、各重合体ブロックの電子受容性材料との親和性の違いに基づく自己組織化により、ブロック共重合体相及び電子受容性材料相が連続した三次元ナノ相分離構造を形成する。このため電荷の発生効率や電極への到達効率が向上し、光電変換素子の性能を大幅に向上させることができる。
【0048】
前記重合体ブロックの連結構造は特に限定されないが、例えば、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体ブロックを重合体ブロックA、他の重合体ブロックを重合体ブロックBとした場合、A−B型ジブロック共重合体またはB−A型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体またはB−A−B型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体またはB−A−B−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−AまたはB−A−B−A−B型ペンタブロック共重合体などが挙げられる。また、各重合体ブロックは複数種類の単量体単位のランダム共重合体から構成されていてもよい。ブロック共重合体である重合体(A)中における、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体ブロックAの繰り返し数(重合度)はn、他の共重合成分からなる重合体ブロックBの繰り返し数はmで表され、n及びmはそれぞれ2以上の正数である。mは5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、重合体(A)の可溶解溶媒(C)に対する溶解性の観点から、mは2000以下であることが好ましい。
【0049】
重合体(A)がブロック共重合体である場合において、共重合成分としては、例えば、前記Arで示される芳香環単独成分、芳香環数2〜7の多核芳香環単独成分、芳香環及び/若しくは多核芳香環を複数連結させたアリーレン基単独成分、またはそれ以外の単環若しくは縮環(ヘテロ)アリーレン基を含む成分などが挙げられる。ブロック共重合体である重合体(A)の好ましい具体例としては下記化学式(5)で示される重合体などが挙げられる。
【化12】
(式中、R、R、R、R5’、R及びR9’は前記と同義である。n及びmは各繰り返し単位の繰り返し数であり、最小でも2の正数である。)
【0050】
本発明の有機半導体組成物を構成する重合体(A)がランダム共重合体である場合には、本発明におけるジチエノゲルモール骨格を有する単量体と溶解性に優れる骨格(例えばシクロペンタジチオフェン骨格)を有する単量体とを共重合させることによって、より高分子量の重合体を得ることができるため、高い光電変換効率と良質な薄膜を得るという観点において好ましい。このとき、重合体(A)中における前記化学式(1)で示される繰り返し単位の含有量をx、他の共重合成分の含有量をyとすると、ランダム共重合体中の各成分の組成比は、x:y=1:99〜99:1の範囲内であることが好ましく、x:y=30:70〜70:30の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
重合体(A)がランダム共重合体である場合において、共重合成分としては、例えば、前記Arで示される芳香環単独成分、芳香環数2〜7の多核芳香環単独成分、芳香環及び/若しくは多核芳香環を複数連結させたアリーレン基単独成分、またはそれ以外の単環若しくは縮環(ヘテロ)アリーレン基を含む成分などが挙げられる。ランダム共重合体である重合体(A)の好ましい具体例としては下記化学式(6)で示される重合体などが挙げられる。
【化13】
(式中、R、R、R、R5’、R及びR9’は前記と同義である。x及びyは各成分の組成比である。)
【0052】
このような前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体であるジチエノゲルモール重合体は、下記化学式(1)で示されるジチエノゲルモール化合物から合成することができる。
【0053】
【化14】
【0054】
前記化学式(1)において、Y及びY’はそれぞれ独立して同一または異なり、ハロゲン原子、−Si(R、−Sn(R、ボロン酸及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである。R及びRは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖アルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基などのアリール基が挙げられる。
【0055】
ジチエノゲルモール重合体の一合成例として、その製造工程を下記反応式(i)に示す。
【化15】
【0056】
前記反応式(i)中、R〜Rは前記と同じであり、X,X’,X〜Xはハロゲン原子であり、Z及びZ’はそれぞれ独立して同一または異なり、−Sn(R、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである。また、−Sn(RにおけるRも前記と同じである。
【0057】
ジチエノゲルモール重合体は、5段階の反応工程1〜5により得られる。テトラハロゲノゲルマニウム(10)から合成されたジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4)と、5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)とを塩基である有機リチウム化合物存在下で反応させることで、前記化学式(2)で示されるジチエノゲルモール化合物のY及びY’が−Si(Rである第一中間体(5)を得る。5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)及び以降の中間体または反応生成物では、2つのチオフェン環の4−位及び4’−位の炭素原子に結合する水素原子が所望によりメチル基、エチル基などの低級アルキル基で置換された構造の化合物を用いてもよい。
【0058】
この第一中間体(5)にハロゲン化剤を反応させることで、前記化学式(2)で示されるジチエノゲルモール化合物のY及びY’がハロゲン原子である第二中間体(6)を得る。
【0059】
この第二中間体(6)を塩基と共にハロゲン化トリアルキルスズ誘導体、ボロン酸化剤、またはボロン酸エステル化剤と反応させることで、前記化学式(2)で示されるジチエノゲルモール化合物のY及びY’が−Sn(R、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである第三中間体(7)を得る。この第三中間体(7)とジハロアリール誘導体(8)とをクロスカップリング反応させることで、ジチエノゲルモール重合体(1)であるポリ(1,1’−ジアルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−アルト−アリール−4,7−ジイルを得る。
【0060】
このジチエノゲルモール重合体の一合成例における各反応工程について詳細に説明する。反応工程1は、ヤロシュ オー.ジィ(Yarosh O. G),コルトワ アイ.エム.(Korotaeva I. M.)ら、ロシアン ジャーナル オブ ゼネラル ケミストリー(Russian Journal of General Chemistry)、2005年、第75巻、pp.714−718に記載された合成方法を用いることができる。反応工程1の具体例を下記反応式(I)に示す。
【0061】
【化16】
【0062】
反応工程1は、溶媒存在下で、四塩化ゲルマニウム(10−1)と有機マグネシウムハロゲン化物とを反応させることでジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4―1)を合成する方法が挙げられる。
【0063】
反応工程2であり、5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)とジアルキルジハロゲルマニウム(4)とを反応させ、第一中間体(5−1)を合成する具体例を下記反応式(II)に示す。
【0064】
【化17】
【0065】
反応工程2は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒に、5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3−1)を加え、次いで塩基と共にジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4−1)を加えて反応させることで、第一中間体である1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(5)を合成する方法が挙げられる。
【0066】
反応工程2は、溶媒の存在下で行われると好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテルなどが挙げられる。
【0067】
これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。かかる溶媒の使用量は、5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)1重量部に対して、1〜100重量部であると好ましく、1〜50重量部であるとより好ましい。
【0068】
反応工程2で用いられる塩基としては、有機リチウム化合物が好適に用いられる。有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物;フェニルリチウムなどのアリールリチウム化合物;ビニルリチウムなどのアルケニルリチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミドのようなリチウムアミド化合物などが使用される。これらの中でもアルキルリチウム化合物を用いることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量については特に限定されず、ジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4)1molに対して、0.5〜5molであることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量が5molを超える場合、副反応や生成物の分解を促進する恐れがあり、4mol以下であることが好ましい。また、有機リチウム化合物の使用量は、1mol以上であるとより好ましい。
【0069】
反応工程2において、ジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4)と5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)とを反応させる際の反応温度については、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなる恐れがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進する恐れがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であると好ましく、0.5〜5時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【0070】
反応工程3である、第一中間体(5−1)とハロゲン化剤とを反応させ、第二中間体(6−1)を合成する具体例を下記反応式(III)に示す。
【0071】
【化18】
【0072】
反応工程3は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒に、1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5−1)を加え、次いでハロゲン化剤を加えて反応させることで、第二中間体である1,1’−ジアルキル−3,6’−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(6−1)を合成する方法が挙げられる。
【0073】
反応工程3の反応は、溶媒の存在下で行われると好ましい。かかる溶媒としては反応工程2で例示したものと同じものが挙げられ、2種以上を併用して用いてもよい。溶媒の使用量は、1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)1重量部に対して、1〜100重量部の範囲であると好ましい。
【0074】
反応工程3で用いられるハロゲン化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド、N−クロロフタル酸イミド、塩素、五塩化リン、塩化チオニル、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどの塩素化剤;N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモフタル酸イミド、N−ブロモジトリフルオロメチルアミン、臭素、三臭化ホウ素、臭化銅、臭化銀、臭化−t−ブチル、酸化臭素、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどの臭素化剤;ヨウ素、ヨウドトリクロライド、N−ヨードフタル酸イミド、N−ヨードスクシンイミドのようなヨウ素化剤などが挙げられる。これらの中でも、臭素化剤またはヨウ素化剤を用いることが好ましく、臭素化剤を用いることがより好ましい。
【0075】
反応工程3において、ハロゲン化剤の使用量については特に限定されず、1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)1molに対して、2〜8molであることが好ましい。ハロゲン化剤の使用量が2mol未満の場合、臭素の置換反応が不十分となったり、原料である第一中間体(5)との分離精製作業が煩雑になったりするなどの恐れがある。一方、ハロゲン化剤の使用量が8molを超える場合、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール骨格の3位、6位以外への置換反応が起こったり、未反応のハロゲン化剤の除去作業が煩雑になったりするなどの恐れがあり、4mol以下であることがより好ましい。
【0076】
1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)とハロゲン化剤とを反応させる際の反応温度については特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなる恐れがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進する恐れがあり、50℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であると好ましく、0.5〜10時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【0077】
反応工程4であり、第二中間体(6−1)を、塩基と共にハロゲン化トリアルキルスズ誘導体、ボロン酸化剤、またはボロン酸エステル化剤と反応させ、第三中間体(7−1)を合成する具体例を下記化学式(IV)に示す。
【0078】
【化19】
【0079】
反応工程4は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒の存在下に1,1’−ジアルキル−3,6’−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(6−1)を加え、次いでハロゲン化トリアルキルスズ誘導体を反応させることで、第三中間体である1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルスズ)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(7−1)を合成する方法が挙げられる。
【0080】
第二中間体(6)と反応させる化合物は、ハロゲン化トリアルキルスズ誘導体に限られず、ボロン酸化剤またはボロン酸エステル化剤であってもよい。反応させる化合物により、それぞれ前記化学式(7)に示される1,1’−ジアルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール−3,6’−ボロン酸または1,1’−ジアルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール−3,6’−ボロン酸エステルが得られる。
【0081】
反応工程4は、溶媒の存在下で行われると好ましい。かかる溶媒としては反応工程2で例示したものと同じものが挙げられ、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、第二中間体(6)1重量部に対して、1〜100重量部であると好ましく、1〜50重量部であるとより好ましい。
【0082】
反応工程4で用いられる塩基としては、有機リチウム化合物が好適に用いられる。有機リチウム化合物としては、反応工程2で例示したものと同じものが挙げられる。有機リチウム化合物の使用量については特に限定されず、第二中間体(6)1molに対して、0.5〜5molであることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量が5molを超える場合、副反応や生成物の分解を促進する恐れがあり、4mol以下であることが好ましい。また、有機リチウム化合物の使用量は、1mol以上であることがより好ましい。
【0083】
反応工程4で用いられるハロゲン化トリアルキルスズとしては、例えば、塩化トリメチルスズ、塩化トリエチルスズ、塩化トリ−n−プロピルスズ、塩化トリ−n−ブチルスズなどが挙げられる。中でも塩化トリメチルスズを用いることが望ましい。また、前記反応工程4で用いられるボロン酸化剤としては、例えば、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−n−プロピル、ほう酸トリ−n−ブチル、ほう酸トリイソプロピルなどが挙げられる。中でも反応効率の観点からほう酸トリメチルを用いることが望ましい。また、前記反応工程4で用いられるボロン酸エステル化剤は、例えば、4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロラン、2−メトキシ−4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロラン、2−イソプロポキシ−4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロランなどが挙げられる。中でも2−イソプロポキシ−4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロランを用いることが望ましい。
【0084】
反応工程4において、1,1’−ジアルキル−3,6’−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体とハロゲン化トリアルキルスズ、ボロン酸化剤またはボロン酸エステル化剤とを反応させる際の反応温度については、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなる恐れがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進する恐れがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であると好ましく、0.5〜5時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【0085】
反応工程5であり、第三中間体(7)とジハロアリール誘導体(8)とを反応させ、前記化学式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体であるジチエノゲルモール重合体を合成する具体例を下記反応式(V)に示す。
【0086】
【化20】
【0087】
反応工程5は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒及び貴金属錯体の存在下で、1,1’−ジアルキル−3,6’−ビス(トリアルキルスズ)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(7−1)とジハロアリール誘導体(8−1)とをクロスカップリング反応させることで、ジチエノゲルモール重合体(1)を合成する方法が挙げられる。
【0088】
反応工程5では、通常、有機溶媒または水などの溶媒が用いられ、好適には有機溶媒が用いられる。用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素などが挙げられる。中でも非プロトン性溶媒またはエーテルが好ましく用いられる。かかる溶媒はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。また、かかる有機溶媒の使用量は、第三中間体(7)1重量部に対して、1〜200重量部であると好ましく、5〜100重量部であるとより好ましい。
【0089】
反応工程5に用いられる貴金属錯体としては、例えば、パラジウムなどの貴金属錯体が挙げられ、特にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)や塩化〔1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン〕パラジウム(PdCl(dppf))などのようにホスフィン類が配位している貴金属錯体を用いることが好ましい。
【0090】
反応工程5におけるクロスカップリング反応としては、例えば、Stilleカップリング反応、Suzukiカップリング反応が好適に採用される。なお、Stilleカップリング反応は、第三中間体(7)中のZ及びZ’が−Sn(Rで示される基である有機スズ化合物を用いた反応であり、Suzukiカップリング反応は、第三中間体(7)中のZ及びZ’がボロン酸基またはボロン酸エステル基である有機ホウ素化合物を用いた反応である。
【0091】
このようにして得られるジチエノゲルモール重合体は、その末端基がハロゲン原子、トリアルキルスズ基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、またはそれらの原子若しくは基が脱離した水素原子であるものであってもよく、これらの末端基が臭化ベンゼンなどの芳香族ハロゲン化物や、芳香族ボロン酸化合物などからなる末端封止剤で置換された末端構造であるものであってもよい。また、反応工程5では、ジチエノゲルモール重合体の効果を損なわない範囲の少量であれは、ジハロアリール誘導体(8)と反応させる第三中間体(7)に、第三中間体(7)に示される以外のジチエノゲルモール縮環構造を有さない化合物を共存させてもよい。
【0092】
反応工程5のクロスカップリング反応における反応温度については特に限定されず、−50〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−50℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなる恐れがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物または触媒である金属錯体の分解を促進する恐れがあり、170℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜100時間であると好ましく、0.5〜80時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【0093】
このようにして得られたジチエノゲルモール重合体(1)は、有機重合体の一般的な精製方法であるソックスレー抽出法により、残留触媒の除去及び低分子量成分の除去、それに伴う分子量分布の狭化を達成することができる。ソックスレー抽出に用いる溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0094】
これらの反応工程で重合及び精製を行った場合、ジチエノゲルモール重合体(1)は、その数平均分子量(Mn)が、通常、1,000〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)が、通常、1,000〜1,000,000である。
【0095】
次に、ジチエノゲルモール重合体(1)の別の合成例について説明する。ジチエノゲルモール重合体(1)の製造方法は、その重合前駆体の置換基の組み合わせにより反応工程が異なるものである。前記反応工程3まで同様の方法を行って得られた第二中間体(6)と、下記化学式(9)
Z−Ar−Z’ ・・・(9)
で示される化合物とをクロスカップリング反応させることで、ジチエノゲルモール重合体(1)を得ることができる。前記化学式(9)における、Ar、Z及びZ’は前記と同じである。この反応を反応工程4−aとする。
【0096】
第二中間体(6)と前記化学式(9)に示される化合物とのクロスカップリング反応における具体例を下記反応式(VI)に示す。
【0097】
【化21】
【0098】
反応工程4−aは、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒及び貴金属錯体の存在下で、1,1’−ジアルキル−3,6’−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(6−1)と前記化学式(9)に示される化合物とをクロスカップリング反応させる方法が挙げられる。
【0099】
反応工程4−aでは、通常、有機溶媒または水などの溶媒が用いられ、好適には反応工程5で例示したものと同じものが使用でき、2種以上を併用して用いてもよい。溶媒の使用量は、第二中間体(6)1重量部に対して、1〜200重量部であると好ましく、5〜100重量部であるとより好ましい。また、反応工程4−aで用いられる貴金属錯体としては、例えば、パラジウムなどの貴金属錯体が挙げられ、特にPd(PPhやPdCl(dppf)などのようにホスフィン類が配位している貴金属錯体を用いることが好ましい。
【0100】
反応工程4−aにおけるクロスカップリング反応としては、例えば、Stilleカップリング反応、Suzukiカップリング反応が好適に採用される。なお、Stilleカップリング反応は、前記化学式(9)で示される化合物中のZ及びZ’が−Sn(Rで示される基である有機スズ化合物を用いた反応であり、Suzukiカップリング反応は、前記化学式(9)で示される化合物中のZ及びZ’がボロン酸基及びボロン酸エステル基である有機ホウ素化合物を用いた反応である。
【0101】
反応工程4−aのクロスカップリング反応における反応温度については、特に限定されず、−50〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−50℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなる恐れがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物または触媒である金属錯体の分解を促進する恐れがあり、170℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜100時間であると好ましく、0.5〜80時間であるとより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であると好ましい。
【0102】
このようにして得られたジチエノゲルモール重合体(1)は、前記反応工程5で例示した精製方法と同様の方法で精製することができる。反応工程4−aの方法で重合及び精製を行った場合、ジチエノゲルモール重合体(1)の数平均分子量(Mn)は、通常、1,000〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000〜1,000,000である。
【0103】
また、前記化学式(9)に示される化合物を得る方法としては、下記反応式(VII)で示されるように、前記反応式(IV)で示される反応工程4と同様の方法により、ジハロアリール誘導体(8)から合成することが好ましい。
【0104】
【化22】
【0105】
これらの各反応工程における反応式(I)〜(VII)に示される、R〜R,X,X’,X〜X,Z,Z’,Arはそれぞれ前記と同じである。
【0106】
これらの反応工程により製造されたジチエノゲルモール重合体(1)は、非特許文献2に記載されている既報のLBGPであるジチエノシロールと類似の構造を有するが、そのC−Si結合と比較してより強固な結合であるC−Ge結合を構造中に含むため、より高い熱安定性を有するという特徴を有する。
【0107】
それらの結合解離エネルギーD298(kJ mol−1)は、デビット アール.リーデ(David R.Lide)ら、シーアールシー ハンドブック オブ ケミストリー アンド フィジックス.第90版 2009−2010年(CRC Handbook of Chemistry and Physics.90TH EDITTION 2009-2010.)、2009年、pp.9−64〜9−69の記載によると、C−Si結合で447kJ mol−1であり、C−Ge結合で470kJ
mol−1である。この高い熱安定性を示すジチエノゲルモール重合体は、新しい有機半導体材料として使用することができ、光電変換素子、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ素子などの有機半導体デバイスを製造することができる。
【0108】
<電子受容性半導体(B)>
本発明の有機半導体用組成物における電子受容性有機半導体(B)は、n型半導体特性を示す有機材料であれば特に限定されない。電子受容性有機半導体(B)として、例えば、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、N,N'−ジオクチル−3,4,9,10−ナフチルテトラカルボキシジイミド、オキサゾール誘導体(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾールなど)、トリアゾール誘導体(3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾールなど)、フェナントロリン誘導体、C60またはC70フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体にシアノ基を導入した誘導体(CN−PPV)などが挙げられる。これらはそれぞれ単体で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、安定且つキャリア移動度に優れるn型半導体という観点からフラーレン誘導体が好ましく用いられる。
【0109】
電子受容性有機半導体(B)として好適に用いられるフラーレン誘導体は、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94を始めとする無置換のものと、[6,6]−フェニル
61 ブチリックアシッドメチルエステル(PC61BM)、[5,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル、[6,6]−フェニル
61 ブチリックアシッドn−ブチルエステル、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドi−ブチルエステル、[6,6]−フェニル
61 ブチリックアシッドヘキシルエステル、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドドデシルエステル、[6,6]−ジフェニル
62ビス(ブチリックアシッドメチルエステル)(bis−PC62BM)、[6,6]−フェニル C71
ブチリックアシッドメチルエステル(PC71BM)、[6,6]−ジフェニル C72ビス(ブチリックアシッドメチルエステル)(bis−PC72BM)、インデンC60−モノ付加体、インデンC60−ビス付加体をはじめとする置換誘導体などが挙げられる。
【0110】
本発明の有機半導体用組成物では、前記フラーレン誘導体を単独またはそれらの混合物として用いることができるが、有機溶媒に対する溶解性の観点から、PC61BM、bis−PC62BM、PC71BM、bis−PC72BMが好適に用いられる。さらに光吸収の観点からPC71BMがより好適に用いられる。
【0111】
<可溶解溶媒(C)>
本発明の有機半導体用組成物における可溶解溶媒(C)は、重合体(A)、電子受容性有機半導体(B)、溶解性添加物(D)を溶解し、本発明の有機半導体用組成物として均一溶液を与えるものであれば特に限定されない。均一溶液を与える可溶解溶媒(C)として、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)のそれぞれについて、20℃における溶解度が1mg/mL以上であるものを用いることが有機薄膜製膜上の観点より好ましい。1mg/mL以下の溶解度である場合には、均質な有機薄膜を作製することが困難であるため、本発明の有機半導体用組成物を得ることができない。さらに、有機薄膜の膜厚を任意に制御する観点からは、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)のそれぞれについて、20℃における溶解度が3mg/mL以上であるものを用いることがより好ましい。また、これら可溶解溶媒(C)の沸点は、室温から200℃の範囲にあるものが製膜性及び後述する製造プロセスの観点より好ましい。
【0112】
可溶解溶媒(C)としては、テトラヒドロフラン、1,2−ジクロロエタン、シクロヘキサン、クロロホルム、ブロモホルム、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o−ジクロロベンゼン、アニソール、メトキシベンゼン、トリクロロベンゼン、ピリジンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良く、2種類以上混合して用いてもよいが、特に重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)のそれぞれについて溶解度が高いo−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、クロロホルム及びこれらの混合物が好ましい。より好ましくは、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)のそれぞれについて溶解度が最も高いo−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン及びこれらの混合物が用いられる。
【0113】
<溶解性添加物(D)>
本発明の有機半導体用組成物における溶解性添加物(D)は、可溶解溶媒(C)より高い沸点であって、重合体(A)に対する溶解性よりも前記電子受容性有機半導体(B)に対する溶解性が高く、重合体(A)について貧溶媒且つ電子受容性有機半導体(B)について良溶媒であり、本発明の有機半導体用組成物を与えるものであれば特に限定されない。このような溶解性添加物(D)としては、電子受容性有機半導体(B)に対する溶解度が1mg/mL以上、好ましくは3mg/mL以上であり、重合体(A)に対する溶解度が1mg/mL未満であるものが好ましく用いられる。
【0114】
前記の条件を満たす溶解性添加物(D)を用いることで、本発明の有機半導体用組成物を塗布し、乾燥して有機薄膜を製膜する過程において、重合体(A)に対する溶解度が高く、沸点が低い可溶解性溶媒(C)が先に蒸発して、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)の微細且つ連続した相分離構造が形成されるため、光電変換効率に優れる活性層を得ることが可能となる。
【0115】
かかる溶解性添加物(D)としては、オクタンジチオール(沸点:270℃)、ジブロモオクタン(沸点:272℃)、ジヨードオクタン(沸点:327℃)、ジヨードヘキサン(沸点:142℃[10mmHg])、ジヨードブタン(沸点:125℃[12mmHg])、1−または2−クロロナフタレン(沸点:256℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点:229℃)などが例示される。これらの溶解性添加物(D)は、前記化学式(1)で示されるジチエノゲルモール骨格を有する重合体(A)に対する溶解度が低い貧溶媒であり、フラーレン誘導体等の電子受容性有機半導体(B)に対して溶解度が高い良溶媒である。なお、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)に対する溶解度は用いる物質によって多少異なるが、本発明で規定する重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)の範囲内であれば、前記の溶解性添加物(D)のいずれも好適に使用できる。ここに例示していないものであっても、重合体(A)に対する溶解性よりも電子受容性有機半導体(B)に対する溶解性が高いものであれば本発明の溶解性添加物(D)として用いることができる。このとき、可溶解溶媒(C)としてo−ジクロロベンゼン(沸点:180℃)等を用いることができる。o−ジクロロベンゼンは、前記化学式(1)で示されるジチエノゲルモール骨格を有する重合体(A)及びフラーレン誘導体等の電子受容性有機半導体(B)の両方に対して良溶媒である。
【0116】
本発明の有機半導体用組成物における溶解性添加物(D)の添加量は、本発明の均一な有機半導体用組成物を与えるものであれば特に限定されないが、可溶解溶媒(C)に対して体積分率で0.1%〜20%であることが好ましい。溶解性添加物(D)の添加量が0.1%よりも少ない場合は、重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)の微細且つ連続した相分離構造が形成されるに十分な効果を得ることができず、20%よりも多い場合は、可溶解溶媒(C)及び溶解性添加物(D)の乾燥速度が遅くなり、均質な有機薄膜を得ることが困難となる。より好ましくは0.5%〜10%の範囲である。
【0117】
<有機半導体用組成物>
本発明の有機半導体用組成物は、はじめに電子供与性成分である重合体(A)及び電子受容性成分である電子受容性有機半導体(B)を所定量秤量し、あらかじめ調製しておいた所定体積分率の溶解性添加物(D)を含有する可溶解溶媒(C)を加えて、加熱・攪拌し溶解した後、所定の細孔径を有するフィルターでろ過して得ることができる。
【0118】
重合体であるジチエノゲルモール骨格を有する有機半導体高分子及び電子受容性有機半導体の含有量は、本発明にかかる有機半導体用組成物中においてそれらが共に溶解していれば特に限定されない。重合体(A)と電子受容性有機半導体(B)との重量分率として、重合体(A):電子受容性有機半導体(B)=1〜99:99〜1の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜80:80〜20の範囲である。ただし、いずれの重量分率であっても重合体(A)と電子受容性有機半導体(B)との重量の和は、後述する前記可溶解溶媒(C)及び前記溶解性添加物(D)の重量の和100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。
【0119】
本発明の有機半導体用組成物は電子供与性成分である成分A、電子受容性成分である成分B、成分C、及び成分Dのほか、本発明の目的を阻害しない範囲において、界面活性剤やバインダー樹脂、フィラーなどの他の成分を含んでいてもよい。
【0120】
本発明の有機半導体用組成物を作製する際の加熱・攪拌条件は、本発明の有機半導体用組成物を得る範囲であれば特に限定されないが、生産性及び安全性の観点から加熱温度は10℃〜200℃であることが好ましく、30℃〜100℃であることがより好ましい。攪拌速度は50rpm〜1500rpmであることが好ましく、100rpm〜700rpmであることがより好ましい。
【0121】
本発明の有機半導体用組成物を作製する際のろ過工程で使用するろ材には、市販されている種々のものを用いることができる。ろ材の選定は使用する有機溶媒に応じ、溶解しない素材を選択することができるが、耐溶剤性の観点から、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン製のものが好ましく用いられる。
【0122】
また、使用するろ材の細孔径は、有機半導体用組成物の溶解性に応じて任意のものを選択できるが、0.1μm〜5μmの細孔径であることが好ましく、0.2μmまたは0.45μmの細孔径であることがより好ましい。
【0123】
本発明の有機半導体用組成物の溶液は、基板に塗工することで有機薄膜を形成することができる。均質な有機薄膜を得るためには、上記ろ過工程等により有機半導体組成物溶液を均一な溶液としておくことが望ましい。有機半導体組成物溶液の基板または支持体への塗工方法は特に制限されず、液状の塗工材料を用いる従来から知られている塗工方法の何れもが採用できる。例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、インクジェット法、エアロゾルジェット法、スピンコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法などの塗工方法を採用することができ、塗膜厚さ制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択すればよい。このとき、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で製膜することにより、材料の変性を抑制することができる。形成した塗膜から溶媒を除去するために、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)で乾燥硬化することで、本発明の有機半導体組成物からなる有機薄膜を得ることができる。該有機薄膜は、光電変換素子などの有機半導体デバイスに有用である。
【0124】
<光電変換素子>
本発明の有機半導体用組成物から製膜される有機薄膜を用いた光電変換素子について例を挙げて説明する。
【0125】
本発明の光電変換素子は、少なくとも一方が光透過性を有する第1の電極及び第2の電極、つまり正極と負極との間に本発明の有機半導体用組成物を用いて製膜した有機薄膜からなる光電変換活性層(以下、活性層と称する)を有するものである。
【0126】
光電変換素子の動作機構は、透明または半透明の電極から入射した光エネルギーが本発明の有機半導体用組成物により製膜された活性層中の電子受容性成分である電子受容性有機半導体(B)つまり電子受容性化合物及び/または電子供与性成分である重合体(A)つまり電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0127】
本発明の光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、無アルカリガラス、石英ガラス、シリコンなどの無機材料、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、エポキシ樹脂やフッ素系樹脂などの有機材料から任意の方法によって作製されたフィルムや板が使用可能である。不透明な基板の場合には、反対の電極即ち、基板から遠い方の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0128】
前記の透明または半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜などが挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、フッ素・スズ・オキサイド(FTO)、アンチモン・スズ・オキサイド、インジウム・亜鉛・オキサイド(IZO)、ガリウム・亜鉛・オキサイド、アルミニウム・亜鉛・オキサイド、アンチモン・亜鉛・オキサイドからなる導電性材料を用いて作製された膜や、金、白金、銀、銅の極薄膜が用いられ、ITO、FTO、IZO、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などが挙げられる。
【0129】
また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子などを用いることができ、好ましくは一対の電極のうち、一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、またはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、スズのうち1つ以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。
【0130】
本発明の光電変換素子に用いる電極は、一方に仕事関数の大きな導電性素材、もう一方に仕事関数の小さな導電性素材を使用することが好ましく、このとき、仕事関数の大きな導電性素材を用いた電極は正極となり、仕事関数の小さな導電性素材を用いた電極は負極となる。
【0131】
本発明の光電変換素子は、必要に応じて正極と活性層の間に正孔輸送層を設けてもよい。正孔輸送層を形成する材料としては、p型半導体特性を有するものであれば特に限定されないが、ポリチオフェン系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体などの導電性高分子や、フタロシアニン誘導体(HPc、CuPc、ZnPcなど)、ポルフィリン誘導体などのp型半導体特性を示す低分子有機化合物、酸化モリブデン、酸化亜鉛、酸化バナジウムなどの金属酸化物が好ましく用いられる。特に、ポリチオフェン系重合体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたものが好ましく用いられる。正孔輸送層は1nmから600nmの厚さが好ましく、より好ましくは20nmから300nmである。
【0132】
本発明の光電変換素子は、必要に応じて負極と活性層の間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を形成する材料としては、n型半導体特性を有するものであれば特に限定されないが、前記の電子受容性有機材料(NTCDA、PTCDA、PTCDI−CH、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、フラーレン誘導体、CNT、CN−PPVなど)などが好ましく用いられる。電子輸送層は1nmから600nmの厚さが好ましく、より好ましくは5nmから100nmである。
【0133】
本発明の光電変換素子は必要に応じ、電極と活性層との間や、正孔または電子輸送材料と活性層との間に電荷移動を円滑にするバッファー層として金属フッ化物を設けてもよい。金属フッ化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化セシウムなどが挙げられるが、特にフッ化リチウムが好ましく用いられる。バッファー層は0.05nmから50nmの厚さが好ましく、より好ましくは0.5nmから20nmである。
【0134】
次に、本発明の光電変換素子の製造工程について例を挙げて示す。ガラス上にITOなどの透明電極が形成された基板上に、前記の方法で調製した本発明の有機半導体用組成物を製膜した後、乾燥して有機薄膜とし活性層を形成する。
【0135】
活性層の形成には、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、インクジェット法、エアロゾルジェット法、スピンコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法など何れの方法を用いることができ、塗膜厚さ制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択すればよい。例えば、厚さ10〜200nmの均質な塗膜を得るためには、本発明の有機半導体用組成物における重合体(A)及び電子受容性有機半導体(B)の重量の和が成分C及び成分D100重量部に対して0.5〜3重量部のコーティング液をスピンコーティング法により作製すればよい。このとき、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で製膜することにより、材料の変性を抑制し、素子特性に優れる光電変換素子を作製することができる。次いで、形成した塗膜から溶媒を除去するために、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)で乾燥する。
【0136】
本発明の光電変換素子は、さらに必要に応じて熱または溶媒アニールを行ってもよい。アニール処理を施すことで、活性層材料の結晶性と、重合体(A)の電子供与性成分と電子受容性半導体(B)の電子受容性成分との相分離構造を変化させ、光電変換特性に優れる素子を得ることができる。尚、このアニール処理は、負極の形成後に行ってもよい。
【0137】
前記の熱アニールは、本発明の有機半導体用組成物から得られる有機薄膜を製膜した基板を所望の温度で保持して行う。熱アニールは減圧下または不活性ガス雰囲気下で行っても良く、好ましい温度は40℃〜300℃、より好ましくは70℃〜200℃である。温度が低いと十分な効果が得られず、温度が高すぎると有機薄膜が酸化及び/または分解し、十分な光電変換特性を得ることができない。
【0138】
前記の溶媒アニールは、本発明の有機半導体用組成物から得られる有機薄膜を製膜した基板を該有機薄膜に対する良溶媒雰囲気下で所望の時間保持することで行う。このときのアニール溶媒は、該有機薄膜に対する良溶媒であれば特に限定されない。
【0139】
次に、活性層上にAlなどの金属電極(この場合負極に相当)を真空蒸着法やスパッタ法により形成する。
【0140】
正極と活性層の間に正孔輸送層を設ける場合には、所望のp型有機半導体材料(PEDOTなど)を正極上にスピンコート法、バーコーティング法、ブレードによるキャスト法などで塗布した後、真空乾燥機、ホットプレートなどを用いて溶媒を除去し、正孔輸送層を形成する。フタロシアニン誘導体やポルフィリン誘導体などの低分子有機材料を使用する場合には、真空蒸着機を用いた蒸着法を適用することも可能である。電子輸送層についても同様にして設けることができる。
【0141】
このように形成された光電変換素子は、タンデム型光電変換素子として用いることができる。本発明におけるタンデム型光電変換素子は、文献公知の方法、例えば、サイエンス(Science),2007年,第317巻,pp222に記載の方法を用いて作製することができる。具体的には、電荷再結合層を本発明の有機半導体用組成物を用いて作製された長波長側(〜1100nm)まで光電変換可能な活性層(1)と紫外〜可視光領域(190〜700nm)の光電変換が可能な活性層(2)とで挟み込んだ構造を有し、活性層(1)と活性層(2)の接続順は逆であってもよい。紫外〜可視光領域(190〜700nm)の光電変換が可能な活性層(2)には、公知の活性層を用いることが可能で、例えばポリ(3−ヘキシルチオフェン)とPC61BMとのフレンド体などが例示される。
【0142】
電荷再結合層とは、正極側の活性層で生じた電子と、負極側の活性層で生じた正孔を再結合させる働きをする。各活性層で電荷分離して生じた正孔と電子は、活性層中の内部電場によってそれぞれ正極と負極方向へと移動する。このとき、正極側の活性層で生じた正孔及び負極側の活性層で生じた電子はそれぞれ正極及び負極へ取り出され、正極側の活性層で生じた電子及び負極側の活性層で生じた正孔が再結合することによって、各活性層が電気的に直列に接続された電池として機能し開放電圧が増大する。
【0143】
電荷再結合層は、複数の活性層が光吸収できるようにするため、光透過性を有することが好ましい。また、電荷再結合層は、十分に正孔と電子が再結合するように設計されていればよいので、必ずしも膜である必要はなく、例えば活性層上に一様に形成された金属クラスターであってもかまわない。従って、該電荷再結合層には、金、白金、クロム、ニッケル、リチウム、マグネシウム、カルシウム、スズ、銀、アルミニウムなどからなる数nm以下程度の光透過性を有する非常に薄い金属膜や金属クラスター(合金を含む)、ITO、IZO、AZO、GZO、FTO、酸化チタンや酸化モリブデンなどの光透過性の高い金属酸化物膜及びクラスター、PSSが添加されたPEDOTなどの導電性有機材料膜、またはこれらの複合体などが用いられる。例えば、銀を、真空蒸着法を用いて水晶振動子膜厚モニター上で数nm以下となるように蒸着すれば、一様な銀クラスターが形成できる。その他にも、酸化チタン膜を形成するならば、例えば、アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials),2006年,第18巻,pp572に記載のゾルゲル法を用いればよい。ITO、IZOなどの複合金属酸化物であるならば、スパッタリング法を用いて製膜すればよい。これら電荷再結合層形成法や種類は、電荷再結合層形成時の活性層への非破壊性や、次に積層される活性層の形成法などを考慮して適当に選択すればよい。
【0144】
本発明の光電変換素子は、光電変換機能、光整流機能などを利用した種々の光電変換デバイスへの応用が可能である。例えば、太陽電池などの光電池、光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタなどの電子素子、光メモリなどの光記録材に有用である。
【実施例】
【0145】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0146】
本発明の有機半導体用組成物における電子供与性成分として含有される重合体(A)であるジチエノゲルモール重合体の製造工程を合成例1〜5に示す。また別のジチエノゲルモール重合体及びその製造工程について、それぞれ合成例6〜17に示す。
【0147】
(合成例1)
反応工程1で得られるジアルキルジハロゲノゲルマニウムを下記化学式(20)に示す。
【化23】
窒素雰囲気下、250mL三口フラスコに四塩化ゲルマニウム(14.4g、67mmol)とジエチルエーテル(80mL)とを加え、氷塩浴で0℃まで冷却した。そこへ、2−エチルヘキシルブロマイド(25.8g、134mmol)及びマグネシウム(3.28g、134mmol)から調製した2.68Mの2−エチルヘキシルマグネシウムブロマイドをゆっくりと滴下した。滴下終了後、その混合液を24時間室温下で攪拌した後に、真空下で溶媒を留去することで粘性のある固体を得た。得られた固体をヘキサン(300mL×3)で抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムにて乾燥した後に、減圧下で溶媒を留去することで油状の物質を得た。得られた油状物質を減圧蒸留することにより無色透明な油状物質としてジクロロビス(2−エチルヘキシル)ゲルマニウム(化合物20)を得た。その収量及び収率は、11.4g,71%であった。
【0148】
得られた化合物(単量体)の分子構造について、H−NMR(核磁気共鳴)測定を行い、構造を同定した。測定条件の詳細を以下に示す。
<測定条件>
装置:超伝導核磁気共鳴装置 GSX−270(日本電子社製)
溶媒:重クロロホルム
温度:25℃
また、得られた化合物の分子量について、ガスクロマトグラフを備えた質量分析計(GC−MS)にて測定を行った。測定条件の詳細を以下に示す。
<測定条件>
装置:GCMS−QP2010Plus(島津製作所社製)
測定モード:EI
インターフェイス温度:250℃
カラム流量:1.50mL/min
カラム:Rtx−5MS(RESTEK社製)
【0149】
得られた化合物の質量分析及び核磁気共鳴(NMR)の測定結果を以下に示す。この分析結果は、前記化学式(20)の化学構造を支持する。
質量分析 GC−MS:m/z=370(M
H−NMRスペクトル:(CDCl)δ=1.43(quint、2H)、1.39−1.25(m、8H)、0.92(d、4H)、0.90(t、6H)、0.88(t、6H)
13C−NMRスペクトル:(CDCl)δ=36.17、34.80、34.50、28.48、27.72、22.87、14.08、10.48
【0150】
(合成例2)
反応工程2で得られる第一中間体を下記化学式(21)に示す。
【化24】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに5,5’−ビス(トリメチルシリル)−3,3’−ブロモ−2,2’−ビチオフェン(5.25g、11.2mmol)とテトラヒドロフラン(40mL)とを加え、−78℃に冷却した。そこへ、1.66Mブチルリチウムヘキサン溶液(14.8mL、24.6mmol)を5分以上かけて−78℃でゆっくりと滴下し、混合液を−78℃で1時間攪拌した。その後、混合液にジクロロビス(2−エチルヘキシル)ゲルマニウム(20)(4.44g、11.2mmol)を加え、室温下で5時間攪拌した。攪拌終了後、反応溶液を水(200mL)に注ぎ、エーテル(100mL×3)で抽出した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物を、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、黄色の油状物質として1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6’−ビス(トリメチルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物21)を得た。その収量及び収率は、4.77g、70%であった。
【0151】
得られた化合物を合成例1と同様の方法及び条件により、質量分析及びNMRの測定を行った。その測定結果を以下に示す。
質量分析 GC−MS:m/z=608(M
H−NMRスペクトル:(CDCl)δ=7.12(s、2H)、1.47(quint、2H)、1.31−1.04(m、16H)、0.91(t、6H)、0.84(t、6H)、0.79(m、4H)、0.32(s、18H)
13C−NMRスペクトル:(CDCl)δ=154.70、145.86、140.57、136.77、36.94、35.44、28.90、28.76、23.02、20.54、14.16、10.89、0.1
Anal. Calcd for C3054GeSSi:C、59.29;H、8.96.Found:C、59.0;H、9.03
この分析結果は、前記化学式(21)の化学構造を支持する。
【0152】
(合成例3)
反応工程3で得られる第二中間体を下記化学式(22)に示す。
【化25】
窒素雰囲気下、50mL三口フラスコに1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6’−ビス(トリメチルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物21)(3.8g、6.25mmol)とテトラヒドロフラン(20mL)とを加えた後に、室温でN−ブロモスクシンイミド(2.45g、13.75mmol)を加えた。室温下で4時間攪拌した後に、反応溶液を水(50mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出した。減圧下で溶媒を留去することで、得られた粗生成物を用いてヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより黄色の油状物質として3,6’−ジブロモ−1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物22)を得た。その収量及び収率は、3.73g、96%であった。
【0153】
得られた化合物を合成例1と同様の方法及び条件により、質量分析及びNMRの測定を行った。その測定結果を以下に示す。
質量分析 GC−MS:m/z=622(M
H−NMRスペクトル:(CDCl)δ=6.97(s、2H)、1.45(quint、2H)、1.31−1.04(m、16H)、0.91(t、6H)、0.84(t、6H)、0.79(m、4H)
13C−NMRスペクトル:(CDCl)δ=146.16、143.10、132.26、111.01、36.89、35.41、28.87、28.71、22.97、20.77、14.10、10.84
この分析結果は、前記化学式(22)の化学構造を支持する。
【0154】
(合成例4)
反応工程4で得られる第三中間体を下記化学式(23)に示す。
【化26】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに3,6’−ジブロモ−1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物22)(0.3g、0.48mmol)とテトラヒドロフラン(40mL)とを加え、−78℃に冷却し、1.66Mのn−ブチルリチウム(0.64mL、1.06mmol)を5分以上かけてゆっくりと滴下した。反応溶液を−78℃で15分攪拌した後に、塩化トリメチルスズ(0.197mL、1.06mmol)を加え、室温まで昇温して2時間攪拌した。攪拌終了後、反応溶液を水(100mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより透明緑色油状化合物として1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6’−ビス(トリメチルスタニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物23)を得た。その収量及び収率は、0.36g、96%であって。これ以上の精製作業は行わずに続く反応を行った。
【0155】
得られた化合物を合成例1と同様の方法及び条件により、NMRの測定を行った。その測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl)δ=7.07(s、2H)、1.45(quint、2H)、1.31−1.04(m、16H)、0.91(t、6H)、0.84(t、6H)、0.79(m、4H)、0.37(s、18H)
13C−NMRスペクトル(CDCl)δ=157.61、145.11、137.75、137.13、36.95、35.43、28.90、28.75、23.02、20.65、14.17、10.87、8.18
この分析結果は、前記化学式(23)の化学構造を支持する。
【0156】
(合成例5)
反応工程5で得られるジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−1)に示す。
【化27】
25mL三口フラスコに、4,7−ジブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(87.1mg,0.296mmol)、1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6’−ビス(トリメチルスタニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物23)(0.234g、0.296mmol)、クロロベンゼン(7mL)を加え、10分間かけてアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(6.1mg、0.00592mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(14.4mg、0.0474mol)、酸化銅(I)(25mg、0.296mmol)を加え、150℃で72時間還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、メタノール(100mL)を加え、析出した固体を濾取した。その後、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(100mL)、ヘキサン(100mL)の順に洗浄を行い、不溶成分をクロロホルム(100mL)により抽出した。得られた溶液から減圧下で溶媒を留去することで得られた固体を24時間真空下で乾燥することにより黒色固体としてポリ{(1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−アルト−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイル}(化合物1−1)を得た。その収量及び収率は、80mg、40%であった。
【0157】
得られた化合物であるジチエノゲルモール重合体(1−1)の分子量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定を行い、ポリスチレン換算分子量として算出した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:高速液体クロマトグラフィー SSC−7000(センシュー科学社製)
カラム:HT−G及びGPC HT−806M(昭和電工社製)を2本連結(カラム温度:135℃)
移動相:o−ジクロロベンゼン
オートサンプラー温度:135℃
流速:1.0mL/min(ポンプ温度:40℃)
検出器:RI(検出器温度:135℃)
標品:ポリスチレンスタンダードキット(VARIAN社製)
【0158】
SECで測定したジチエノゲルモール重合体(1−1)の数平均分子量(Mn)は8,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で求められる分子量分布(PDI)は、1.38であった。
【0159】
得られたジチエノゲルモール重合体(1−1)を合成例1と同様の方法及び条件により、NMRの測定を行った。その測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl)δ=8.19(br、s、2H)、7.80(br、s、2H)、2.10(br、s、2H)、1.25−1.08(m、20H)、0.89−0.75(m、12H)
この分析結果は、前記化学式(1−1)の化学構造を支持する。
【0160】
また、ジチエノゲルモール重合体(1−1)の分解温度について、熱重量測定を用いて、以下の測定条件により測定した。分解温度は、昇温過程において重量が5%減少した際の温度とした。分解温度は、430℃であった。
<測定条件>
装置:Thermo Plus TG8120(TAインスツルメンツ社製)
測定温度範囲:20〜500℃
昇温速度:10℃/min
測定雰囲気:N(流速:10mL/min)
【0161】
(合成例6)
合成例5で得られた重合体(化合物1−1)をSECにて分取し、数平均分子量(Mn)は21,000、分子量分布(PDI)は1.57であるジチエノゲルモール重合体(化合物1−1の高分子量体)を得た。
【0162】
(合成例7)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−2)に示す。
【化28】
25mL三口フラスコに、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン(0.154g、0.476mmol)、1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6’−ビス(トリメチルスタニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物23)(0.376g、0.476mmol)、クロロベンゼン(10mL)を加え、10分間かけてアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(9.8mg、0.00952mol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(23.2mg、0.0762mol)、酸化銅(I)(37.8mg、0.476mmol)を加え、150℃で72時間還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、メタノール(100mL)を加え、析出した固体を濾取した。その後、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(100mL)、ヘキサン(100mL)の順に洗浄を行い、不溶成分をクロロホルム(100mL)により抽出した。得られた溶液から減圧下で溶媒を留去することで得られた固体を24時間真空下で乾燥することにより黒色固体としてポリ{(1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−アルト−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイレン}(化合物1−2)を得た。その収量及び収率は、200mg、70%であった。
【0163】
得られた化合物であるジチエノゲルモール重合体(1−2)の分子量を、SECを用いて測定した。測定したMnは22,000であり、PDIは2.90であった。
【0164】
(合成例8)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−3)に示す。
【化29】
【0165】
25mL三口フラスコに、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(160mg、0.353mmol)と、4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(279mg、0.353mmol)と、脱水クロロベンゼン(7mL)とを加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(8.0mg、2mol%)、トリ(o−トリル)ホスフィン(18.7mg、16mol%)、酸化銅(29.6mg、0.353mmol)を加え、150℃で72時間攪拌を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、メタノール、ヘキサン不溶分をクロロホルム(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、黒色の固体としてポリ{(4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−2,6−ジイル−アルト−(4,7−ビス(チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−5,5’−ジイル}(化合物1−3)を得た。その収量及び収率は、100mg、50%であった。また、Mnは28,000であり、PDIは3.28であった。
【0166】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ=8.30−6.32(br,8H)、1.53−1.43(br,4H)、1.41−1.05(m,20H)、0.93−0.72(m、10H)
この分析結果は、前記化学式(1−3)の化学構造を支持する。
【0167】
(合成例9)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−4)に示す。
【化30】
【0168】
100mL三口フラスコに、4,7−ジブロモベンゾ[c][1,2,5]セレナジアゾール(81.5mg、0.239mmol)と、1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(188.6mg、0.239mmol)と、脱水トルエン(15mL)とを加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(24.7mg、10mol%)とトリ(o−トリル)ホスフィン(29.1mg、40mol%)とを加え、72時間還流を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、暗紫色の固体としてポリ{(1,1’‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−アルト−(2,1,3−ベンゾセレナジアゾール)−4,7−ジイル}(化合物1−4)を得た。その収量及び収率は、130mg、70%であった。また、Mnは27,000であり、PDIは5.60であった。
【0169】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ=8.10(br,s,2H)、7.81(br,s,2H),2.03(br,s,2H),1.39−1.16(m,20H),0.89−0.78(m,12H)
この分析結果は、前記化学式(1−4)の化学構造を支持する。
(合成例10)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−5)に示す。
【化31】
【0170】
25mL三口フラスコに、2,5−ビス(5−ブロモ−4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(200mg、0.316mmol)と、4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(250mg、0.316mmol)と、脱水クロロベンゼン(10mL)とを加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(7.0mg、2mol%)、トリ(o−トリル)ホスフィン(16.5mg、16mol%)、酸化銅(27mg、0.316mmol)を加え、150℃で72時間攪拌を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、メタノール、ヘキサン不溶分をクロロホルム(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、暗緑色の固体としてポリ{(4,4’‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−2,6−ジイル‐アルト−(2,5−ビス(4−ヘキシルチオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)−5,5‘−ジイル}(化合物1−5)を得た。その収量及び収率は、230mg、75%であった。また、Mnは21,000であり、PDIは2.12であった。
【0171】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ=7.41(br,2H)、7.20(br,2H)、2.80(br,4H)、1.72(br,6H)、1.50−1.06(m,30H)、1.05−0.66(m、20H)
この分析結果は、前記化学式(1−5)の化学構造を支持する。
【0172】
(合成例11)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−6)に示す。
【化32】
【0173】
100mL三口フラスコに、3,6−ビス(5−ブロモ−4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−1,2,4,5−テトラジン(162mg、0.284mmol)と、1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(227mg、0.284mmol)と、脱水トルエン(17mL)とを加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(28.0mg、10mol%)とトリ(o−トリル)ホスフィン(33.0mg、40mol%)とを加え、72時間還流を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出し、不溶物をo−ジクロロベンゼン(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、暗紫色の固体としてポリ{(4,4’‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−2,6−ジイル‐アルト−(2,5−ビス(4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−1,2,4,5−テトラジン)−5,5‘−ジイル}(化合物1−6)を得た。その収量及び収率は、180mg、60%であった。また、Mnは27,000であり、PDIは23.5であった。
【0174】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ=8.10(s,2H)、7.32(s,2H)、2.90(t,4H)、2.04(br,s,4H)、1.78(m、4H)、1.46(m、4H)、1.42−1.21(m,24H),0.92(t,6H)、0.84(t、6H)
この分析結果は、前記化学式(1−6)の化学構造を支持する。
【0175】
(合成例12)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−7)に示す。
【化33】
【0176】
合成例9と同様の方法により、4,7−ジブロモベンゾ[c][1,2,5]セレナジアゾールの代わりに1,3−ジブロモ−5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6(5H)ジオン(373mg、0.881mmol)を用い、1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(695mg、0.881mmol)を用いて、重合反応を行った。得られた粗ポリマーを合成例9と同様の方法により精製することで、暗紫色の固体としてポリ5,5’{4,4’‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール}アルト−1,3{5−オクチル‐4H−チエノ[3,4−c]ピロール−(4,6−(5H)−ジオン(化合物1−7)を得た。その収量及び収率は、382mg、60%であった。また、Mnは27,000であり、PDIは2.55であった。
【0177】
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ=8.46(br,1H)、7.40(br,1H)、3.72(br,2H)、2.04(br,2H),1.8−0.7(br、47H)
この分析結果は、前記化学式(1−7)の化学構造を支持する。
【0178】
(合成例13)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−8)に示す。
【化34】
【0179】
二口フラスコに1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−ビス(トリメチルスタンニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(0.296g、0.398mmol)を入れ、アルゴンガスで満たした。その後、4,7−ジブロモ[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−c]ピリジン(0.1187g、0.402mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(7.4mg、8.08μmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(12.4mg、40.7μmol)、クロロベンゼン(10mL)を加えた。脱気した後、反応溶液を還流させた。反応終了後、室温まで戻し、析出した固体を濾別した。ろ液にN,N−ジエチルカルバミン酸ナトリウム3水和物3.1g水溶液30mLを加え、2時間、80℃で撹拌・加熱した。室温まで戻し、有機層を抽出・洗浄した後、1回目の再沈殿を行い、沈殿物をろ取した。その後、沈殿物をメタノール、ヘキサン、アセトン、酢酸エチルの順でソックスレー洗浄を行なった後、残った沈殿物をクロロホルムでソックスレー抽出して回収した。酢酸エチルで2回目の再沈殿を行い、精製することで、ポリ{(1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−アルト−(5−アザ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイル}(化合物1−8)を得た。その収量及び収率は、95.3mg、40%であった。また、Mnは22,000であり、PDIは2.10であった。
【0180】
H−NMR(CDCl,500MHz):δ=8.8−8.6(m,2H),8.2(s,1H),2−1.1(m,22H),1.1−0.7(m,12H)
この分析結果は、前記化学式(1−8)の化学構造を支持する。
【0181】
(合成例14)
ブロック共重合体となる重合体ブロックを下記化学式(24)に示す。化学式中、HexEtはエチルヘキシル、mは繰り返し数を示す。
【化35】
【0182】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(1.50g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh);61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルブロマイド(210mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として重合体ブロック(24)を得た。その収量及び収率は、1.06g,42%であった。また、Mnは20,000であり、PDIは2.20であった。
【0183】
H−NMR(270MHz):δ=8.10−7.96(m、2H)、7.81−7.61(m、2H)、2.35−2.13(m、4H)、1.59−1.32(m、18H)、1.18−0.81(m、12H)
この分析結果は、前記化学式(24)の化学構造を支持する。
【0184】
(合成例15)
重合体ブロックであるジチエノゲルモール重合体を下記化学式(25)に示す。
【化36】
【0185】
2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの代わりに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(1.66g,2.68mmol)を用いた以外は合成例14と同様にして、重合反応を行った。その後、フェニルブロマイドの代わりにフェニルボロン酸ピナコールエステル(273mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、合成例14と同様の方法により精製を行い、黒紫色の固体として重合体ブロック(25)を得た。その収量及び収率は、1.03g,38%であった。また、Mnは17,000であり、PDIは2.42であった。
【0186】
H−NMR(270MHz):δ=8.20−7.95(m、2H)、7.90−7.12(m、2H)、2.34−2.10(m、4H)、1.59−1.33(m、18H)、1.19−0.81(m、12H)
この分析結果は、前記化学式(25)の化学構造を支持する。
【0187】
(合成例16)
前記重合体ブロック(24)と前記重合体ブロック(25)とのブロック共重合体であるジチエノゲルモール重合体を下記化学式(1−9)に示す。
【化37】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに合成例14で得た重合体ブロック(24)0.80gと合成例15で得た重合体ブロック(25)0.80gを加え、トルエン(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(10mL,20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.5mg,17.7μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体としてブロック共重合体(1−9)を得た。その収量及び収率は、0.51g,収率33%であった。また、Mnは40,000であり、PDIは2.05であった。
【0188】
H−NMR(270MHz):δ=8.12−7.94(m、4H)、7.81−7.61(m、4H)、2.35−2.10(m、8H)、1.62−1.29(m、36H)、1.21−0.84(m、24H)
この分析結果は、前記化学式(1−9)の化学構造を支持する。
【0189】
(合成例17)
【化38】
【0190】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに、2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(0.83g,1.34mmol)、2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(0.75g,1.34mmol)及び4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.08g,2.68mmol)を加え、さらにトルエン(50mL)と、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(62.0mg,54.0μmol)と、aliquat336(2mg,4.95μmol)とを加えた後に80℃で1時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水とメタノールとで洗浄し、粗生成物を得た。粗生成物をソックスレー抽出機を用いてアセトンとヘキサンとで洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出し、メタノールで再沈殿することにより精製し、黒紫色の固体としてランダム共重合体(1−10)を得た。その収量及び収率は、1.20g,45%であった。得られた重合体のMnは66,000であり、PDIは、15.9であった。
【0191】
H−NMRスペクトル(CDCl)δ=8.19(br、s、2H)、7.80(br、s、2H)、2.10(br、s、2H)、1.25−1.08(m、20H)、0.89−0.75(m、12H) この分析結果は、前記化学式(1−10)の化学構造を支持する。
【0192】
得られた重合体に含まれるゲルマニウム原子の含有量を、ジャーレルアッシュ社製のICP発光分析装置「IRIS−AP」を用いて測定し、ポリマー重量に占めるゲルマニウム重量からxとyで示される組成比を算出したところ、x:y=55.5:45.5であった。
【0193】
(比較合成例1)
合成例1で得られたジチエノゲルモール重合体(1−1)のゲルマニウム原子がケイ素原子で置換した構造を有するポリ{(1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール)−3,6−ジイル−アルト−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイル}を下記化学式(26)に示す。
【化39】
化学式(26)で示されるジチエノシロール重合体は非特許文献4を参考にして合成した。この化合物(26)の分解温度を合成例5と同じ方法及び条件で測定したところ、400℃であった。
【0194】
ジチエノゲルモール重合体である化合物(1−1)と比較例である化合物(26)との分解温度の測定結果を表1に示す。
【表1】
表1に示されるように、ジチエノゲルモール重合体であるGe体は、比較化合物であるSi体に比べてその分解温度が高く、優れた熱安定性を有するものである。
【0195】
(実施例1)
合成例5で得られたジチエノゲルモール重合体(Mn=8,000、本発明における成分Aに相当)と[6,6]−フェニル C71 ブチリックアシッドメチルエステル(PC71BM)(E−110:フロンティアカーボン社製、本発明における成分Bに相当)を重量比1:3.6で秤量し、体積分率で2.5%のジヨードオクタン(DIO)(東京化成工業社製、本発明における成分D)を含むo−ジクロロベンゼン(DCBz)(関東化学社製、本発明における成分C)を添加して固形分濃度2.5重量%の溶液を調製し、80℃で5時間加熱攪拌して均一に溶解させた。溶解後の溶液を0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターでろ過して本発明の有機半導体用組成物を得た。
【0196】
150nmのインジウム・スズ・オキサイド(ITO)が0.7mmのガラス上に製膜された基板(ジオマテック社製)を、セミコクリーン(フルウチ化学社製)、超純水、アセトン、イソプロパノールの順で10分間超音波洗浄し、乾燥した後、UV−Oクリーナー(フィルジェン社製)を用いて20分間オゾンクリーニングした。大気下にて、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート添加物(PEDOT:PSS)(CLEVIOS PH 500:H.C.スタルク社製)を洗浄済みのITO基板に滴下し、4000rpmで60秒間スピンコートした。製膜後の基板を140℃で10分間ベーキングした。このときのPEDOT:PSSの膜厚は40nmであった。PEDOT:PSSを製膜したITO基板を窒素雰囲気で満たされたグローブボックス内に導入し、前記により調整した本発明の有機半導体用組成物を、窒素雰囲気下にて1200rpmで120秒間スピンコートした。製膜後、1時間減圧乾燥して有機薄膜からなる活性層を得た。
【0197】
得られた有機薄膜である活性層の膜厚について、接触式段差計を用いて、下記測定条件により測定した。
<測定条件>
装置:接触式段差計 DEKTAK8(Veeco社製)
走査距離:500μm
触針圧:3mg
測定レンジ:50kÅ
また、この活性層の吸収スペクトルについて、分光光度計を用いて、下記測定条件により紫外−可視−近赤外領域の吸光度の測定をした。
<測定条件>
装置:紫外−可視−近赤外分光光度計 Solid Spec 3700(島津製作所社製)
測定波長域:300〜1000nm
スリット幅:5nm
【0198】
これらの測定により、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は107nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0199】
次に、活性層を製膜した基板を大気に触れさせることなく抵抗加熱式真空蒸着装置(EO−5:エイコーエンジニアリング社製)に導入し、5.0×10−5Paの減圧条件下にて0.5nmのフッ化リチウム(LiF)を真空蒸着した。次いで、80nmのアルミニウム(Al)を真空蒸着し、光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。
【0200】
(光電変換特性評価)
作製した光電変換素子の分光感度について、分光感度測定装置を用いて、下記測定条件により測定した。測定時の特定波長における照射強度は、フォトダイオード(S1337−66BQ、浜松フォトニクス社製)を用いて校正した。測定時には、光電変換素子の受光面積と同じ面積の照射光マスクを着用し、余剰な光の入射を排除した。
<測定条件>
装置:分光感度測定装置 SM−250型(分光計器社製)
受光面積:0.25cm
ソースメーター:ケースレー2400(KEITHLEY社製)
また、作製した光電変換素子の光電変換効率について、ソーラーシミュレーター及びソースメーターを用いて、下記測定条件により測定した。測定時の照射強度は、フォトダイオード(BS−520、分光計器社製)を用い、太陽電池評価基準となるように調節した。測定時には、光電変換素子の受光面積と同じ面積の照射光マスクを着用し、余剰な光の入射を排除した。
<測定条件>
ソーラーシミュレーター:PEC−L11(ペクセルテクノロジー社製)
ソースメーター:KEITHLEY2400(KEITHLEY社製)
照射スペクトル:AM1.5
照射強度:100mW/cm
受光面積:0.25cm
【0201】
作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。また、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=4.68mA/cm、開放電圧=0.61V、曲線因子=0.43、光電変換効率=1.21%(平均1.0%)であった。
【0202】
(実施例2)
本発明における成分Aを合成例6のジチエノゲルモール重合体(Mn=21,000)に、固形分濃度を2.0重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は92nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0203】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=13.59mA/cm、開放電圧=0.52V、曲線因子=0.54、光電変換効率=3.78%(平均3.7%)であった。
【0204】
(実施例3)
本発明における成分Aを合成例7のジチエノゲルモール重合体(Mn=22,000)に、固形分濃度を2.4重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1200rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は100nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は700nmであった。
【0205】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、700nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=5.21mA/cm、開放電圧=0.54V、曲線因子=0.62、光電変換効率=1.74%(平均1.6%)であった。
【0206】
(実施例4)
本発明における可溶解溶媒を体積分率で5.0%のDIO(本発明における成分D)を含むDCBzに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に800rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は89nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0207】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=13.09mA/cm、開放電圧=0.52V、曲線因子=0.52、光電変換効率=3.55%(平均3.5%)であった。
【0208】
(実施例5)
本発明における電子受容性有機半導体である成分Bを[6,6]−フェニル
61 ブチリックアシッドメチルエステル(PC61BM)(E−100H:フロンティアカーボン社製)に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は76nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0209】
製膜した活性層に実施例2と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=8.21mA/cm、開放電圧=0.52V、曲線因子=0.55、光電変換効率=2.35%(平均2.2%)であった。
【0210】
(実施例6)
本発明における溶解性添加物(成分D)をオクタンジチオール(ODT)に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法にて本発明の有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は83nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0211】
製膜した活性層に実施例2と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=10.93mA/cm、開放電圧=0.55V、曲線因子=0.52、光電変換効率=3.13%(平均3.0%)であった。
【0212】
(実施例7)
ジチエノゲルモール重合体とPC71BMとの重量比を1:3、固形分濃度を2.8重量%に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法にて本発明の有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は85nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0213】
製膜した活性層に実施例2と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=12.10mA/cm、開放電圧=0.53V、曲線因子=0.52、光電変換効率=3.33%(平均3.1%)であった。
【0214】
(実施例8)
本発明における成分Aを合成例8のジチエノゲルモール重合体(Mn=28,000)に、固形分濃度を3.0重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1200rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は86nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は800nmであった。
【0215】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、800nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=13.46mA/cm、開放電圧=0.52V、曲線因子=0.55、光電変換効率=3.83%(平均3.6%)であった。
【0216】
(実施例9)
本発明における成分Aを合成例9のジチエノゲルモール重合体(Mn=27,000)に、固形分濃度を2.4重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1000rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は82nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は860nmであった。
【0217】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、860nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=7.25mA/cm、開放電圧=0.55V、曲線因子=0.46、光電変換効率=1.83%(平均1.6%)であった。
【0218】
(実施例10)
本発明における成分Aを合成例10のジチエノゲルモール重合体(Mn=21,000)に、固形分濃度を2.0重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1000rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は98nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は700nmであった。
【0219】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、700nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=8.41mA/cm、開放電圧=0.58V、曲線因子=0.65、光電変換効率=3.17%(平均3.0%)であった。
【0220】
(実施例11)
本発明における成分Aを合成例11のジチエノゲルモール重合体(Mn=27,000)に、固形分濃度を1.8重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1000rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は88nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は720nmであった。
【0221】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、720nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=3.01mA/cm、開放電圧=0.52V、曲線因子=0.58、光電変換効率=0.91%(平均0.8%)であった。
【0222】
(実施例12)
本発明における成分Aを合成例12のジチエノゲルモール重合体(Mn=27,000)に、成分(A)と成分(B)との比を1:1.5に、成分(C)をCBzに、固形分濃度を3.6重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に2000rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は105nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は750nmであった。
【0223】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、750nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=8.03mA/cm、開放電圧=0.74V、曲線因子=0.57、光電変換効率=3.38%(平均3.2%)であった。
【0224】
(実施例13)
本発明における成分Aを合成例13のジチエノゲルモール重合体(Mn=22,000)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1200rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は85nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は920nmであった。
【0225】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、920nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=7.45mA/cm、開放電圧=0.54V、曲線因子=0.52、光電変換効率=2.11%(平均2.0%)であった。
【0226】
(実施例14)
本発明における成分Aを合成例16で得られたジチエノゲルモールブロック共重合体(Mn=40,000)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1300rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は93nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は860nmであった。
【0227】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、860nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=13.79mA/cm、開放電圧=0.60V、曲線因子=0.55、光電変換効率=4.55%(平均4.4%)であった。
【0228】
(実施例15)
本発明における成分Aを合成例17で得られたジチエノゲルモールランダム共重合体(Mn=66,000)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1000rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は86nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0229】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=13.11mA/cm、開放電圧=0.57V、曲線因子=0.55、光電変換効率=4.11%(平均3.9%)であった。
【0230】
(実施例16)
本発明における溶解性添加物(成分D)として1−クロロナフタレン(CN)を用い、成分Dの濃度を3.0%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて有機半導体用組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、有機半導体用組成物により形成された活性層の膜厚は79nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は850nmであった。
【0231】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、850nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=11.86mA/cm、開放電圧=0.56V、曲線因子=0.55、光電変換効率=3.65%(平均3.5%)であった。
【0232】
(比較例1)
本発明における溶解性添加物(成分D)を含有しないこと以外は、実施例1と同様の方法にて比較組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1200rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、比較組成物により形成された活性層の膜厚は110nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は820nmであった。
【0233】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、820nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=2.60mA/cm、開放電圧=0.48V、曲線因子=0.33、光電変換効率=0.41%(平均0.4%)であった。
【0234】
(比較例2)
本発明における溶解性添加物(成分D)を含有しないこと以外は、実施例2と同様の方法にて比較組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、比較組成物により形成された活性層の膜厚は98nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は825nmであった。
【0235】
製膜した活性層に実施例2と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、825nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=3.60mA/cm、開放電圧=0.52V、曲線因子=0.35、光電変換効率=0.66%(平均0.6%)であった。
【0236】
(比較例3)
本発明における溶解性添加物(成分D)をメタノール(試薬特級、和光純薬工業社製)以外は、実施例2と同様の方法にて比較組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に900rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、比較組成物により形成された活性層の膜厚は84nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は800nmであった。
【0237】
製膜した活性層に実施例2と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、800nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=2.15mA/cm、開放電圧=0.50V、曲線因子=0.34、光電変換効率=0.37%(平均0.3%)であった。
【0238】
(比較例4)
本発明における成分Aを市販のポリ(3−ヘキシルチオフェン)(Mn=20,000、Rieke社製)とし、成分Aと成分Bとの混合比を1:0.8に、固形分濃度を4.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較組成物を調製し、PEDOT:PSSを40nm製膜したITO基板に1500rpmで120秒間スピンコートした。実施例1と同様の測定条件により得られた有機薄膜である活性層の膜厚及び吸収スペクトルを測定した結果、比較組成物により形成された活性層の膜厚は90nmで、吸収スペクトル測定より得られた吸収端は660nmであった。
【0239】
製膜した活性層に実施例1と同様の方法でLiF及びAlを蒸着して光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子の受光面積は0.25cmであった。実施例1と同様の測定条件により、作製した光電変換素子の分光感度を測定したところ、660nm以下の波長域において光電変換していることが明らかとなった。同じく、作製した光電変換素子の光電変換効率を測定したところ、短絡電流密度=6.26mA/cm、開放電圧=0.40V、曲線因子=0.24、光電変換効率=0.60%(平均0.5%)であった。
【0240】
実施例1〜16及び比較例1〜4の作製条件を表1に結果を表2に纏めて示す。
【表2】
【0241】
【表3】
【0242】
表3から明らかなように、ジチエノゲルモール骨格を有する有機半導体高分子である重合体(A)、電子受容性有機半導体(B)、可溶解溶媒(C)、沸点が可溶解溶媒(C)より高く、重合体(A)に対して貧溶媒且つ電子受容性有機半導体(B)に対して良溶媒である溶解性添加物(D)を含む本発明の有機半導体組成物からなる活性層を有する実施例の光電変換素子は、光電変換波長帯が長く可視〜近赤外領域の光電変換が可能であり、優れた光電変換効率を示すことがわかった。一方、溶解性添加物(D)を含まない有機半導体用組成物を用いた比較例1及び2は、光電変換波長帯は本発明と同程度であるものの、光電変換効率に劣ることがわかった。また、溶解性添加物(D)として、沸点が可溶解溶媒(C)より低いものを用いた比較例3では、本発明の効果が得られないことがわかった。さらに、重合体(A)が本発明の範囲外であるポリ(3−ヘキシルチオフェン)を用いた比較例4は、光電変換波長帯が短く、光電変換効率に劣ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明の有機半導体用組成物は、耐久性及び半導体特性の安定性に優れ、従来の有機薄膜光電変換素子が利用できなかった可視〜近赤外領域の光電変換が可能な有機薄膜太陽電池として好適に用いることができる。また、前記の光電変換素子は、可視光領域の光電変換特性に優れる光電変換素子と組み合わせてタンデム型太陽電池とすることで、より光電変換効率に優れる有機薄膜太陽電池として好適に用いることができる。