【発明の効果】
【0010】
本発明化合物は、Smo阻害作用が強いため、癌の臨床上有用な予防または治療剤、癌の増殖阻害剤、癌の転移抑制剤を提供することができる。
【0011】
(発明の詳細な説明)
以下に、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を示す。
本明細書中、「C
1−6アルキル基」とは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等を示す。
本明細書中、「C
2−6アルケニル基」とは、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル等を示す。
本明細書中、「C
2−6アルキニル基」とは、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1,1−ジメチルプロパ−2−イン−1−イル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等を示す。
本明細書中、「C
1−6アルコキシ基」とは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ等を示す。
【0012】
本明細書中、「C
1−6アルキル−カルボニル基」とは、例えば、アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、ペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニル等を示す。
【0013】
本明細書中、「C
1−6アルコキシ−カルボニル基」とは、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等を示す。
【0014】
本明細書中、「C
3−8シクロアルキル基」とは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等を示す。
本明細書中、「C
3−8シクロアルカン」とは、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等を示す。
本明細書中、「C
3−6シクロアルカン」とは、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等を示す。
本明細書中、「C
3−8シクロアルケニル基」とは、例えば、シクロプロペニル(例、2−シクロプロペン−1−イル)、シクロブテニル(例、2−シクロブテン−1−イル)、シクロペンテニル(例、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル)、シクロヘキセニル(例、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル)等を示す。
本明細書中、「C
6−10アリール基」とは、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等を示す。
本明細書中、「C
6−10アレーン」とは、例えば、ベンゼン、ナフタレン等を示す。
本明細書中、「C
7−13アラルキル基」とは、例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等を示す。
本明細書中、「C
6−10アリール−カルボニル基」とは、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等を示す。
【0015】
本明細書中、「複素環基」とは、芳香族複素環基(例、5ないし12員の芳香族複素環基)および非芳香族複素環基(例、4ないし12員の非芳香族複素環基)を示す。
本明細書中、「芳香族複素環基」とは、単環式芳香族複素環基および縮合芳香族複素環基を示す。
該単環式芳香族複素環基としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子(酸化されていてもよい)および窒素原子(酸化されていてもよい)から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する、5ないし7員(好ましくは、5または6員)の単環式芳香族複素環基、例えば、フリル(例、2−フリル、3−フリル)、チエニル(例、2−チエニル、3−チエニル)、ピリジル(例、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリミジニル(例、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、ピリダジニル(例、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピラジニル(例、2−ピラジニル)、ピロリル(例、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル)、ピラゾリル(例、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、チアゾリル(例、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、イソチアゾリル(例、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、オキサゾリル(例、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(例、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル)、オキサジアゾリル(例、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)、チアジアゾリル(例、1,3,4−チアジアゾール−2−イル)、トリアゾリル(例、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,3−トリアゾール−1−イル、1,2,3−トリアゾール−2−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例、テトラゾール−1−イル、テトラゾール−5−イル)、トリアジニル(例、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−6−イル)等が挙げられる。
該縮合芳香族複素環基としては、例えば、8ないし12員の縮合芳香族複素環基、具体的には、上記5ないし7員の単環式芳香族複素環基に対応する環とC
6−10アレーンとが縮合して形成する縮合環から誘導される基;上記5ないし7員の単環式芳香族複素環基に対応する環同士が縮合して形成する縮合環から誘導される基が挙げられ、具体的には、例えば、キノリル(例、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、6−キノリル)、イソキノリル(例、3−イソキノリル)、キナゾリル(例、2−キナゾリル、4−キナゾリル)、キノキサリル(例、2−キノキサリル、6−キノキサリル)、ベンゾフラニル(例、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル)、ベンゾチエニル(例、2−ベンゾチエニル、3−ベンゾチエニル)、ベンズオキサゾリル(例、2−ベンズオキサゾリル)、ベンズイソオキサゾリル(例、3−ベンズイソオキサゾリル)、ベンゾチアゾリル(例、2−ベンゾチアゾリル)、ベンゾイソチアゾリル(例、3−ベンゾイソチアゾリル)、ベンズイミダゾリル(例、ベンズイミダゾール−1−イル、ベンズイミダゾール−2−イル、ベンズイミダゾール−5−イル)、ベンゾトリアゾリル(例、1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−5−イル)、インドリル(例、インドール−1−イル、インドール−2−イル、インドール−3−イル、インドール−5−イル)、イソインドリル(例、イソインドール−1−イル、イソインドール−2−イル、イソインドール−3−イル、イソインドール−5−イル)、インダゾリル(例、1H−インダゾール−3−イル)、ピロロピラジニル(例、1H−ピロロ[2,3−b]ピラジン−2−イル、1H−ピロロ[2,3−b]ピラジン−6−イル)、イミダゾピリジニル(例、1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−2−イル、2H−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)、チエノピリジニル(例、チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)、イミダゾピラジニル(例、1H−イミダゾ[4,5−b]ピラジン−2−イル)、ピラゾロピリジニル(例、1H−ピラゾロ[4,3−c]ピリジン−3−イル)、ピラゾロチエニル(例、2H−ピラゾロ[3,4−b]チオフェン−2−イル)、ピラゾロトリアジニル(例、ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアジン−3−イル)等が挙げられる。
【0016】
本明細書中、「非芳香族複素環基」とは、単環式非芳香族複素環基および縮合非芳香族複素環基を示す。
該単環式非芳香族複素環基としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子(該硫黄原子は酸化されていてもよい)および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する、4ないし7員(好ましくは、5または6員)の単環式非芳香族複素環基、例えば、アゼチジニル(例、1−アゼチジニル、2−アゼチジニル)、ピロリジニル(例、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル)、ピペリジル(例、ピペリジノ、2−ピペリジル、3−ピペリジル)、モルホリニル(例、モルホリノ)、チオモルホリニル(例、チオモルホリノ)、ピペラジニル(例、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、3−ピペラジニル)、オキサゾリジニル(例、オキサゾリジン−2−イル)、チアゾリジニル(例、チアゾリジン−2−イル)、イミダゾリジニル(例、イミダゾリジン−2−イル、イミダゾリジン−3−イル)、オキサゾリニル(例、オキサゾリン−2−イル)、チアゾリニル(例、チアゾリン−2−イル)、イミダゾリニル(例、イミダゾリン−2−イル、イミダゾリン−3−イル)、ジオキソリル(例、1,3−ジオキソール−4−イル)、ジオキソラニル(例、1,3−ジオキソラン−4−イル)、ジヒドロオキサジアゾリル(例、4,5−ジヒドロ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)、ピラニル(例、2−ピラニル、4−ピラニル)、ジヒドロピラニル(例、2,3−ジヒドロピラン−2−イル、2,3−ジヒドロピラン−3−イル)、テトラヒドロピラニル(例、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル)、チオピラニル(例、4−チオピラニル)、ジヒドロチオピラニル(例、ジヒドロチオピラン−3−イル、ジヒドロチオピラン−4−イル)、テトラヒドロチオピラニル(例、2−テトラヒドロチオピラニル、3−テトラヒドロチオピラニル、4−テトラヒドロチオピラニル)、1−オキシドテトラヒドロチオピラニル(例、1−オキシドテトラヒドロチオピラン−4−イル)、1,1−ジオキシドテトラヒドロチオピラニル(例、1,1−ジオキシドテトラヒドロチオピラン−4−イル)、テトラヒドロフリル(例、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロフラン−2−イル)、ピラゾリジニル(例、ピラゾリジン−1−イル、ピラゾリジン−3−イル)、ピラゾリニル(例、ピラゾリン−1−イル)、テトラヒドロピリミジニル(例、テトラヒドロピリミジン−1−イル)、ジヒドロトリアゾリル(例、2,3−ジヒドロ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)、テトラヒドロトリアゾリル(例、2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)、アゼパニル(例、1−アゼパニル、2−アゼパニル、3−アゼパニル、4−アゼパニル)、ジヒドロピリジル(例、ジヒドロピリジン−1−イル、ジヒドロピリジン−2−イル、ジヒドロピリジン−3−イル、ジヒドロピリジン−4−イル)、テトラヒドロピリジル(例、テトラヒドロピリジン−1−イル、テトラヒドロピリジン−2−イル、テトラヒドロピリジン−3−イル、テトラヒドロピリジン−4−イル)等が挙げられる。
該縮合非芳香族複素環基としては、例えば、8ないし12員の縮合非芳香族複素環基、具体的には、上記4ないし7員の単環式非芳香族複素環基に対応する環とC
6−10アレーンとが縮合して形成する縮合環から誘導される基;上記4ないし7員の単環式非芳香族複素環基に対応する環同士が縮合して形成する縮合環から誘導される基;上記4ないし7員の単環式非芳香族複素環基に対応する環と上記5ないし7員の単環式芳香族複素環基に対応する環とが縮合して形成する縮合環から誘導される基;これらの基の部分飽和により得られる基が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロインドリル(例、2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)、ジヒドロイソインドリル(例、1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)、ジヒドロベンゾフラニル(例、2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)、テトラヒドロベンゾフラニル(例、4,5,6,7−テトラヒドロ−1−ベンゾフラン−3−イル)、ジヒドロベンゾジオキシニル(例、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシニル)、ジヒドロベンゾジオキセピニル(例、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピニル)、クロメニル(例、4H−クロメン−2−イル、2H−クロメン−3−イル)、ジヒドロクロメニル(例、3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)、ジヒドロキノリニル(例、1,2−ジヒドロキノリン−4−イル)、テトラヒドロキノリニル(例、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル)、ジヒドロイソキノリニル(例、1,2−ジヒドロイソキノリン−4−イル)、テトラヒドロイソキノリニル(例、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−4−イル)、ジヒドロフタラジニル(例、1,4−ジヒドロフタラジン−4−イル)、アザビシクロヘキシル(例、2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)等が挙げられる。
【0017】
本明細書中、「複素環」とは、芳香族複素環(例、5ないし12員の芳香族複素環)および非芳香族複素環(例、4ないし12員の非芳香族複素環)を示す。
本明細書中、「芳香族複素環」とは、単環式芳香族複素環および縮合芳香族複素環を示す。
該単環式芳香族複素環としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子(酸化されていてもよい)および窒素原子(酸化されていてもよい)から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する、5ないし7員(好ましくは、5または6員)の単環式芳香族複素環、例えば、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等が挙げられる。
該縮合芳香族複素環としては、例えば、8ないし12員の縮合芳香族複素環、具体的には、上記5ないし7員の単環式芳香族複素環とC
6−10アレーンとが縮合して形成する縮合環;上記5ないし7員の単環式芳香族複素環同士が縮合して形成する縮合環が挙げられ、具体的には、例えば、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、ピロロピラジン(例、1H−ピロロ[2,3−b]ピラジン)、イミダゾピリジン(例、2H−イミダゾ[1,2−a]ピリジン、1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン、1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン)、チエノピリジン(例、チエノ[2,3−b]ピリジン)、イミダゾピラジン(例、1H−イミダゾ[4,5−b]ピラジン)、ピラゾロピリジン(例、1H−ピラゾロ[4,3−c]ピリジン)、ピラゾロチオフェン(例、2H−ピラゾロ[3,4−b]チオフェン)、ピラゾロトリアジン(例、ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアジン)等が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「非芳香族複素環」とは、単環式非芳香族複素環および縮合非芳香族複素環を示す。
該単環式非芳香族複素環としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子(該硫黄原子は酸化されていてもよい)および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する、4ないし7員(好ましくは、5または6員)の単環式非芳香族複素環、例えば、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、オキサゾリジン、チアゾリジン、イミダゾリジン、オキサゾリン、チアゾリン、イミダゾリン、ジオキソール、ジオキソラン、ジヒドロオキサジアゾール、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、チオピラン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、1−オキシドテトラヒドロチオピラン、1,1−ジオキシドテトラヒドロチオピラン、テトラヒドロフラン、ピラゾリジン、ピラゾリン、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロトリアゾール、テトラヒドロトリアゾール、アゼパン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン等が挙げられる。
該縮合非芳香族複素環としては、例えば、8ないし12員の縮合非芳香族複素環、具体的には、上記4ないし7員の単環式非芳香族複素環とC
6−10アレーンとが縮合して形成する縮合環;上記4ないし7員の単環式非芳香族複素環同士が縮合して形成する縮合環;上記4ないし7員の単環式非芳香族複素環と上記5ないし7員の単環式芳香族複素環とが縮合して形成する縮合環;これらの環の部分飽和により得られる環が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロインドール(例、2,3−ジヒドロ−1H−インドール)、ジヒドロイソインドール(例、1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール)、ジヒドロベンゾフラン(例、2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン)、テトラヒドロベンゾフラン(例、4,5,6,7−テトラヒドロ−1−ベンゾフラン)、ジヒドロベンゾジオキシン(例、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン)、ジヒドロベンゾジオキセピン(例、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン)、クロメン、ジヒドロクロメン(例、3,4−ジヒドロ−2H−クロメン)、ジヒドロキノリン(例、1,2−ジヒドロキノリン)、テトラヒドロキノリン(例、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン)、ジヒドロイソキノリン(例、1,2−ジヒドロイソキノリン)、テトラヒドロイソキノリン(例、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン)、ジヒドロフタラジン(例、1,4−ジヒドロフタラジン)、アザビシクロヘキサン(例、2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン)等が挙げられる。
【0019】
本明細書中、「含窒素複素環」とは、例えば、環構成原子として炭素原子以外に少なくとも1個の窒素原子を含み、さらに酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい5〜7員の含窒素複素環を示す。該含窒素複素環の好適な例としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、チアゾリジン、オキサゾリジン等が挙げられる。
【0020】
本明細書中、「複素環−カルボニル基」とは、前述の「複素環基」で置換されたカルボニル基が挙げられる。複素環−カルボニル基の具体例としては、ピロリルカルボニル、ピラゾリルカルボニル、ピリジルカルボニル、ピロリジニルカルボニル、チエニルカルボニル、フリルカルボニル、チアゾリルカルボニル、オキサゾリルカルボニル、ピペリジノカルボニル、ピペラジニルカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、テトラヒドロベンゾ[c]アゼピニルカルボニル、テトラヒドロイソキノリニルカルボニル等が挙げられる。
【0021】
本明細書中、「C
3−8シクロアルキル−カルボニル基」とは、例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘプチルカルボニル、シクロオクチルカルボニル等を示す。
【0022】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基」のC
1−6アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、以下の置換基A群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0023】
置換基A群:
(1) ハロゲン原子;
(2) シアノ基;
(3) ニトロ基;
(4) ヒドロキシ基;
(5) カルボキシ基;
(6)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(d) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、および
(e) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基;
(7)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(d) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基;
(8)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(d) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基;
(9)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(d) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、
(e) 1ないし3個のヒドロキシを有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基、および
(f) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基;
(10)(a) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(b)(i) ハロゲン原子、
(ii) ヒドロキシ基、および
(iii) C
6−10アリール基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基、
(c)(i) ハロゲン原子、および
(ii) C
6−10アリール基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ−カルボニル基、
(d)(i) ハロゲン原子、および
(ii) C
6−10アリール基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル)、
(e) C
6−10アリールスルホニル基(例、フェニルスルホニル)、
(f) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいカルバモイル基、
(g)(i) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(ii) ヒドロキシ基、
(iii) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、および
(iv) ハロゲン原子
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基、および
(h)(i) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(ii) ヒドロキシ基、
(iii) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、
(iv) ハロゲン原子、および
(v) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基
から選ばれる置換基を1または2個有していてもよいアミノ基;
(11) イミノ基;
(12) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基;
(13)(a) ハロゲン原子、
(b) C
1−6アルコキシ基、
(c) C
6−10アリール基、
(d)(i) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(ii) ヒドロキシ基、
(iii) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、および
(iv) ハロゲン原子
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基、および
(e)(i) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(ii) ヒドロキシ基、
(iii) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、
(iv) ハロゲン原子、および
(v) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ−カルボニル基;
(14)(a) ハロゲン原子、および
(b) C
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル);
(15) C
6−10アリールスルホニル基(例、フェニルスルホニル);
(16)(a) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(b) C
6−10アリール基
から選ばれる1または2個の置換基を有していてもよいカルバモイル基;
(17) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいチオカルバモイル基;
(18) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいスルファモイル基;
(19)(a) ハロゲン原子、
(b) カルボキシ基、
(c) C
1−6アルコキシ基、
(d) 1ないし3個のC
6−10アリール基を有していてもよいC
1−6アルコキシ−カルボニル基、
(e) C
1−6アルキル基およびC
1−6アルコキシ−カルボニル基から選ばれる置換基を1または2個有していてもよいアミノ基、
(f) C
3−8シクロアルキル基、
(g)(i) ハロゲン原子、
(ii) ヒドロキシ基、
(iii) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(iv) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基、および
(h)(i) ハロゲン原子、
(ii) ヒドロキシ基、
(iii) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(iv) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、および
(v) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ基;
(20) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
2−6アルケニルオキシ基(例、エテニルオキシ);
(21)(a) ハロゲン原子、および
(b) C
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキルオキシ基(例、シクロプロポキシ、シクロペンチルオキシ);
(22) C
6−10アリールオキシ基(例、フェニルオキシ、ナフチルオキシ);
(23) C
7−13アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ);
(24) C
1−6アルキル−カルボニルオキシ基(例、アセチルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ);
(25)(a) ハロゲン原子、および
(b) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール−カルボニル基;
(26) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環−カルボニル基(例、チエニルカルボニル、ピラゾリルカルボニル、ピラジニルカルボニル、イソキサゾリルカルボニル、ピリジルカルボニル、チアゾリルカルボニル);
(27) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環−カルボニル基(例、ピロリジニルカルボニル、モルホリニルカルボニル);
(28) C
3−8シクロアルキル−カルボニル基;
(29) C
7−13アラルキルオキシ−カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル);
(30) メルカプト基;
(31)(a) ハロゲン原子、および
(b) C
1−6アルコキシ−カルボニル基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ);
(32) C
7−13アラルキルチオ基(例、ベンジルチオ);
(33) C
6−10アリールチオ基(例、フェニルチオ、ナフチルチオ);
(34) C
1−3アルキレンオキシ基(例、メチレンオキシ、エチレンオキシ);および
(35) C
1−3アルキレンジオキシ基(例、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ)。
【0024】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基」のC
2−6アルケニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基A群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0025】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基」のC
2−6アルキニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基A群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0026】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ基」のC
1−6アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基A群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0027】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基」のC
1−6アルキル−カルボニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基A群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0028】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
6−10アリール基」のC
6−10アリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、以下の置換基B群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0029】
置換基B群:
(1) 前記置換基A群から選択される置換基;
(2)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) カルボキシ基、
(d) C
1−6アルコキシ基、
(e) C
1−6アルコキシ−カルボニル基、
(f) C
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいアミノ基、および
(g) C
6−10アリール−カルボニル基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基;
(3)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) カルボキシ基、
(d) C
1−6アルコキシ基、
(e) C
1−6アルコキシ−カルボニル基、および
(f) C
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいアミノ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基;および
(4)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(d) C
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
7−13アラルキル基。
【0030】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基」のC
3−8シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、以下の置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0031】
置換基C群:
(1) 前記置換基A群から選択される置換基;
(2)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) カルボキシ基、
(d) C
1−6アルコキシ基、
(e) C
1−6アルコキシ−カルボニル基、
(f) C
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいアミノ基、および
(g) C
6−10アリール−カルボニル基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基;
(3)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) カルボキシ基、
(d) C
1−6アルコキシ基、
(e) C
1−6アルコキシ−カルボニル基、および
(f) C
1−6アルキル基を1または2個有していてもよいアミノ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基;
(4)(a) ハロゲン原子、
(b) ヒドロキシ基、
(c) 1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(d) C
1−6アルコキシ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
7−13アラルキル基;および
(5) オキソ基。
【0032】
本明細書中、「置換基を有していてもよいC
6−10アリール−カルボニル基」のC
6−10アリール−カルボニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基B群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0033】
本明細書中、「置換基を有していてもよい複素環基」の複素環基が「芳香族複素環基」である場合、該芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基B群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0034】
本明細書中、「置換基を有していてもよい複素環基」の複素環基が「非芳香族複素環基」である場合、該非芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
本明細書中、「置換基を有していてもよい複素環−カルボニル基」の複素環−カルボニル基が「芳香族複素環−カルボニル基」である場合、該芳香族複素環−カルボニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基B群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0036】
本明細書中、「置換基を有していてもよい複素環−カルボニル基」の複素環−カルボニルが「非芳香族複素環−カルボニル基」である場合、該非芳香族複素環−カルボニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0037】
本明細書中、「置換基を有していてもよいアミノ基」とは、例えば、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基;
(2) 置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基;
(3) 置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基;
(4) 置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ基;
(5) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基;
(6) 置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基;
(7) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール基;
(8) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール−カルボニル基;
(9) 置換基を有していてもよい複素環基;
(10) 置換基を有していてもよい複素環−カルボニル基;
等から選ばれる1または2個の置換基をそれぞれ有していてもよい「アミノ基」を示す。
また、「置換基を有していてもよいアミノ基」がそれぞれ2個の置換基を有するアミノ基である場合、これらの置換基は、隣接する窒素原子とともに、含窒素複素環を形成していてもよい。このような含窒素複素環の具体例としては、5ないし7員の含窒素複素環が挙げられる。該含窒素複素環は、さらに置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0038】
本明細書中、「置換基を有していてもよいカルバモイル基」とは、例えば、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基;
(2) 置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基;
(3) 置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基;
(4) 置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ基;
(5) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基;
(6) 置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基;
(7) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール基;
(8) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール−カルボニル基;
(9) 置換基を有していてもよい複素環基;
(10) 置換基を有していてもよい複素環−カルボニル基;
等から選ばれる1または2個の置換基をそれぞれ有していてもよい「カルバモイル基」を示す。
また、「置換基を有していてもよいカルバモイル基」がそれぞれ2個の置換基を有するカルバモイル基である場合、これらの置換基は、隣接する窒素原子とともに、含窒素複素環を形成していてもよい。このような含窒素複素環の具体例としては、5ないし7員の含窒素複素環が挙げられる。該含窒素複素環は、さらに置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0039】
本明細書中、「置換されていてもよいヒドロキシ基」としては、例えば、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基;
(2) 置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基;
(3) 置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基;
(4) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基;
(5) 置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基;
(6) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール基;
(7) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール−カルボニル基;
(8) 置換基を有していてもよい複素環基;
(9) 置換基を有していてもよい複素環−カルボニル基;
等から選ばれる置換基で置換されていてもよいヒドロキシ基が挙げられる。
【0040】
本明細書中、「置換されていてもよいメルカプト基」としては、例えば、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基;
(2) 置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基;
(3) 置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基;
(4) 置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ基;
(5) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基;
(6) 置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基;
(7) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール基;
(8) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール−カルボニル基;
(9) 置換基を有していてもよい複素環基;
(10) 置換基を有していてもよい複素環−カルボニル基;
等から選ばれる置換基で置換されていてもよいメルカプト基が挙げられる。
【0041】
本明細書中、「置換基を有していてもよい環状基」の「環状基」とは、例えば、C
3−8シクロアルキル基、C
3−8シクロアルカンとベンゼン環とが縮合して形成する縮合環から誘導される基(例、インダニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル)、C
6−10アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基等を示す。
【0042】
「置換基を有していてもよい環状基」が置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基の場合、該C
3−8シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0043】
「置換基を有していてもよい環状基」が置換基を有していてもよい、C
3−8シクロアルカンとベンゼン環とが縮合して形成する縮合環から誘導される基の場合、該縮合環基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の位置は、ベンゼン環部分でもC
3−8シクロアルカン部分でも置換可能な位置であれば特に限定されない。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0044】
「置換基を有していてもよい環状基」が置換基を有していてもよいC
6−10アリール基の場合、該C
6−10アリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基B群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0045】
「置換基を有していてもよい環状基」が置換基を有していてもよい芳香族複素環基の場合、該芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基B群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0046】
「置換基を有していてもよい環状基」が置換基を有していてもよい非芳香族複素環基の場合、該非芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基C群から選ばれる置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0047】
式(DI)において、X
Dは、NR
D1、硫黄原子または酸素原子を示す。ここで、R
D1は、水素原子またはC
1−6アルキル基を示す。
X
Dは、好ましくはNR
D1または硫黄原子であり、より好ましくはNR
D1である。ここで、R
D1は、好ましくはC
1−6アルキル基(例、メチル)であり、より好ましくはメチルである。
【0048】
式(DI)において、Y
Dは、CR
D7または窒素原子を示す。ここで、R
D7は、水素原子、ハロゲン原子またはC
1−6アルキル基を示す。
Y
Dは、好ましくはCR
D7である。ここで、R
D7は、好ましくは水素原子である。
【0049】
式(DI)において、R
D2は、置換基を有していてもよいカルバモイル基を示す。
R
D2は、好ましくは、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(2) 置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基、
(3) 置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基、および
(4) 置換基を有していてもよい複素環基
から選ばれる1または2個の置換基を有していてもよいカルバモイル基である。
【0050】
一つの実施形態では、R
D2は、より好ましくは、
(1)(a) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基(例、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−オキシドテトラヒドロチオピラニル、1,1−ジオキシドテトラヒドロチオピラニル);
(2) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基(例、シクロヘキシル);および
(3)(a) 1ないし3個のC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニル基(例、エチルスルホニル)、および
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)を1個有するアミノ基
から選ばれる置換基を1個有するC
1−6アルキル基(例、エチル、プロピル)
から選ばれる置換基を1個有するカルバモイル基である。
【0051】
別の実施形態では、R
D2は、より好ましくは、
(1)(a) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)、および
(c) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基(例、モルホリニル、ピペリジル、アゼパニル);
(2)(a) ヒドロキシ基、
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル)、
(c) カルバモイル基、
(d) C
2−6アルキニル基(例、エチニル)、および
(e) 5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基(例、チエニル)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基(例、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル);
(3)(a) 1ないし3個のC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニル基(例、エチルスルホニル)、
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)を1個有するアミノ基、
(c) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)を1または2個有するアミノ基、
(d) 1ないし3個のC
1−6アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル)を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル)、
(e) 1ないし3個のオキソ基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基(例、ピロリジニル、テトラヒドロフリル)、
(f) 5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基(例、フリル)、
(g) ヒドロキシ基、および
(h) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる置換基を1個有するC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル);
(4) 5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基(例、ピリジル);および
(5) C
2−6アルキニル基(例、2−プロピニル)
から選ばれる置換基を1または2個有するカルバモイル基である。
【0052】
式(DI)において、R
D3は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC
2−6アルケニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいメルカプト基、置換基を有していてもよい環状基またはシアノ基を示す。
R
D3は、好ましくは、C
1−6アルキル基(例、エチル)、C
2−6アルケニル基(例、ビニル)、C
1−6アルキル基(例、エチル)を1個または2個有していてもよいアミノ基またはシアノ基であり、より好ましくは、C
1−6アルキル基(例、エチル)、C
2−6アルケニル基(例、ビニル)またはシアノ基であり、さらに好ましくは、C
1−6アルキル基(例、エチル)またはC
2−6アルケニル基(例、ビニル)であり、さらにより好ましくはC
1−6アルキル基(例、エチル)である。
【0053】
式(DI)において、R
D5は、置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、または置換基を有していてもよい環状基を示す。
R
D5は、好ましくは
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(2) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール基、または
(3) 置換基を有していてもよい複素環基
である。
【0054】
一つの実施形態では、R
D5は、より好ましくは、
(1)(a) C
6−10アリール−カルボニル基(例、ベンゾイル)、
(b)(i) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、および
(ii) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル)、および
(c) 1ないし3個のC
6−10アリール基(例、フェニル)を有していてもよいC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、ペンチル);
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) 1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ、イソプロポキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル、ナフチル);または
(3)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子)、
(b) C
1−6アルキル基(例、メチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5または6員の単環式芳香族複素環基(例、ピリジル)
である。
【0055】
別の実施形態では、R
D5は、より好ましくは、
(1)(a) C
6−10アリール−カルボニル基(例、ベンゾイル)、
(b)(i) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、および
(ii) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル)、および
(c) 1ないし3個のC
6−10アリール基(例、フェニル)を有していてもよいC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、ペンチル);または
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) 1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ、イソプロポキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル、ナフチル);
であり、より好ましくは、ベンゾイルを1個有するC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、ペンチル)である。
【0056】
式(DI)において、R
D6は、水素原子、ハロゲン原子またはC
1−6アルキル基を示す。
R
D6は、好ましくは、C
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)である。
【0057】
一つの好ましい実施形態では、X
DがNR
D1(R
D1がメチルである)であり、かつY
DがCR
D7(R
D7が水素原子である)である。
【0058】
化合物(DI)の好適な具体例は以下である。
化合物(DI−1)
式(DI)において、
X
Dが、NR
D1、硫黄原子または酸素原子であり(好ましくは、X
Dが、NR
D1である);
R
D1が、水素原子またはC
1−6アルキル基であり;
Y
Dが、CR
D7または窒素原子であり(好ましくは、Y
Dが、CR
D7である);
R
D7が、水素原子、ハロゲン原子またはC
1−6アルキル基であり;
好ましくは、X
DがNR
D1であり、R
D1がC
1−6アルキル基(例、メチル)であり、Y
DがCR
D7であり、R
D7が、水素原子であり;
R
D2が、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(2) 置換基を有していてもよいC
2−6アルキニル基、
(3) 置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基、および
(4) 置換基を有していてもよい複素環基
から選ばれる1または2個の置換基を有していてもよいカルバモイル基であり;
R
D3が、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基またはシアノ基であり(好ましくは、R
D3が、C
1−6アルキル基またはC
2−6アルケニル基である);
R
D5が、
(1) 置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(2) 置換基を有していてもよいC
6−10アリール基、または
(3) 置換基を有していてもよい複素環基
であり;かつ
R
D6が、C
1−6アルキル基である、
化合物またはその塩。
【0059】
化合物(DI−2)
式(DI)において、
X
Dが、NR
D1、硫黄原子または酸素原子であり(好ましくは、NR
D1または硫黄原子であり);
R
D1が、水素原子またはC
1−6アルキル基(例、メチル)であり(好ましくは、C
1−6アルキル基(例、メチル)であり);
Y
Dが、CR
D7または窒素原子であり;
R
D7が、水素原子であり;
R
D2が、
(1)(a) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基、および
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基(例、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−オキシドテトラヒドロチオピラニル、1,1−ジオキシドテトラヒドロチオピラニル);
(2) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基(例、シクロヘキシル);および
(3)(a) 1ないし3個のC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニル基(例、エチルスルホニル)、および
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)を1個有するアミノ基
から選ばれる置換基を1個有するC
1−6アルキル基(例、エチル、プロピル)
から選ばれる置換基を1個有するカルバモイル基であり;
R
D3が、C
1−6アルキル基(例、エチル)またはC
2−6アルケニル基(例、ビニル)であり;
R
D5が、
(1)(a) C
6−10アリール−カルボニル基(例、ベンゾイル)、
(b)(i) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、および
(ii) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル)、および
(c) 1ないし3個のC
6−10アリール基(例、フェニル)を有していてもよいC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、ペンチル);
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) 1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ、イソプロポキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル、ナフチル);または
(3)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子)、
(b) C
1−6アルキル基(例、メチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5または6員の単環式芳香族複素環基(例、ピリジル)
であり;かつ
R
D6が、C
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)である、
化合物またはその塩。
【0060】
化合物(DI−3)
式(DI)において、
X
Dが、NR
D1(R
D1がメチルである)であり;
Y
Dが、CR
D7(R
D7が水素原子である)または窒素原子であり(好ましくは、CR
D7(R
D7が水素原子である)である);
R
D2が、
(1)(a) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基、
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)、および
(c) オキソ基
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基(例、モルホリニル、ピペリジル、アゼパニル);
(2)(a) ヒドロキシ基、
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル)、
(c) カルバモイル基、
(d) C
2−6アルキニル基(例、エチニル)、および
(e) 5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基(例、チエニル)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
3−8シクロアルキル基(例、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル);
(3)(a) 1ないし3個のC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニル基(例、エチルスルホニル)、
(b) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)を1個有するアミノ基、
(c) 1ないし3個のヒドロキシ基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)を1または2個有するアミノ基、
(d) 1ないし3個のC
1−6アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル)を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル)、
(e) 1ないし3個のオキソ基を有していてもよい4ないし12員(好ましくは4ないし7員)の非芳香族複素環基(例、ピロリジニル、テトラヒドロフリル)、
(f) 5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基(例、フリル)、
(g) ヒドロキシ基、および
(h) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる置換基を1個有するC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル);
(4) 5ないし12員(好ましくは5または6員)の芳香族複素環基(例、ピリジル);および
(5) C
2−6アルキニル基(例、2−プロピニル)
から選ばれる置換基を1または2個有するカルバモイル基であり;
R
D3が、C
1−6アルキル基(例、エチル)またはC
2−6アルケニル基(例、ビニル)であり(好ましくは、C
1−6アルキル基(例、エチル)である);
R
D5が、
(1)(a) C
6−10アリール−カルボニル基(例、ベンゾイル)、
(b)(i) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、および
(ii) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル)、および
(c) 1ないし3個のC
6−10アリール基(例、フェニル)を有していてもよいC
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、ペンチル);
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) 1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)を有していてもよいC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ、イソプロポキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいC
6−10アリール基(例、フェニル、ナフチル);または
(3)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子)、
(b) C
1−6アルキル基(例、メチル)、および
(c) C
1−6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい5または6員の単環式芳香族複素環基(例、ピリジル)
であり(好ましくは、ベンゾイルを1個有するC
1−6アルキル基(例、メチル、エチル、ペンチル));かつ
R
D6が、C
1−6アルキル基(例、メチル、エチル)である、
化合物またはその塩。
【0061】
化合物(DI−4)
3,6-ジエチル-N-[1-(ヒドロキシアセチル)ピペリジン-4-イル]-1-メチル-4-オキソ-5-(2-オキソ-2-フェニルエチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]ピリジン-2-カルボキサミド;
3-エテニル-6-エチル-N-[1-(ヒドロキシアセチル)ピペリジン-4-イル]-1-メチル-4-オキソ-5-(2-オキソ-2-フェニルエチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]ピリジン-2-カルボキサミド;もしくは
6-エチル-3-(エチルアミノ)-N-[1-(ヒドロキシアセチル)ピペリジン-4-イル]-1-メチル-4-オキソ-5-(2-オキソ-2-フェニルエチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]ピリジン-2-カルボキサミド;
またはその塩。
【0062】
化合物(DI)における塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合には、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩)等の無機塩、アンモニウム塩等、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0063】
本発明の化合物の製造法について以下に述べる。
以下の各製造法において、アルキル化反応、アミド化反応(縮合反応)、エステル化反応、還元反応、還元的アミノ化反応、アミノ化反応、ハロゲン化反応、酸化反応などを行う場合、これらの反応は、自体公知の方法に従って行われる。このような方法としては、例えば、Organic Functional Group Preparations 第2版,Academic Press, Inc. 1989年刊、Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers Inc.,1989年刊等に記載の方法などが挙げられる。
【0064】
以下の反応において、原料化合物や製造中間体は、塩であってもよい。このような塩としては、前述の化合物(DI)における塩と同様のものが挙げられる。
また、各工程で得られた化合物は、反応液のままあるいは粗製物として次の反応に用いることもできるが、常法(例えば、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどの分離手段)に従って反応混合物から単離してもよい。
【0065】
以下の各反応において、原料化合物が置換基としてアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基を有する場合、これらの基は、ペプチド化学などで一般的に用いられるような保護基で保護されていてもよい。この場合、反応後に、必要に応じて、保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。保護反応および脱保護反応は、自体公知の方法、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis 第3版,John Wiley and Sons, Inc. 1999年刊に記載の方法に従って行われる。
アミノ基の保護基としては、例えば、ホルミル基、C
1−6アルキル−カルボニル基、C
1−6アルコキシ−カルボニル基、ベンゾイル基、C
7−10アラルキル−カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、C
7−14アラルキルオキシ−カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル)、トリチル基、フタロイル基、N,N−ジメチルアミノメチレン基、置換シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル)、C
2−6アルケニル基(例、1−アリル)などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、C
1−6アルコキシ基およびニトロ基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい。
カルボキシ基の保護基としては、例えば、C
1−6アルキル基、C
7−11アラルキル基(例、ベンジル)、フェニル基、トリチル基、置換シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル)、C
2−6アルケニル基(例、1−アリル)等が挙げられる。
ヒドロキシ基の保護基としては、例えば、C
1−6アルキル基、フェニル基、トリチル基、C
7−10アラルキル基(例、ベンジル)、ホルミル基、C
1−6アルキル−カルボニル基、ベンゾイル基、C
7−10アラルキル−カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基、置換シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル)、C
2−6アルケニル基(例、1−アリル)などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、C
1−6アルキル基、C
1−6アルコキシ基およびニトロ基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい。
【0066】
以下の反応で用いられる、総称で示される溶媒の説明を以下に示す。
「アルコール類」としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコールなどが用いられる。
「エーテル類」としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどが用いられる。
「エステル類」としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸tert-ブチルなどが用いられる。
「炭化水素類」としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタンなどが用いられる。
「アミド類」としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルりん酸トリアミドなどが用いられる。
「ハロゲン化炭化水素類」としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどが用いられる。
「ニトリル類」としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが用いられる。
「ケトン類」としては、例えば、アセトン、2−ブタノンなどが用いられる。
「有機酸類」としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸などが用いられる。
「芳香族アミン類」としては、例えば、ピリジン、2,6-ルチジン、キノリンなどが用いられる。
「スルホキシド類」としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが用いられる。
【0067】
化合物(DI)は、例えば、以下に示す〔DA法〕またはこれらに準ずる方法により製造することができる。
〔DA法〕
【0068】
【化2】
【0069】
〔式中、Q
D3は脱離基を示し、R
D8は、C
1−6アルキル基またはC
7−13アラルキル基を示し、その他の記号は前記と同意義を示す。〕
Q
D3で示される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子を1ないし3個を有していてもよいC
1−6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ)、C
1−6アルキル基を1ないし3個を有していてもよいC
6−10アリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ、4−トルエンスルホニルオキシ)、C
1−6アルキルスルホニル基(例、メタンスルホニル)などが挙げられる。
Q
D3は、好ましくはC
1−6アルキルスルホニルオキシ基である。
R
D8は、好ましくはエチル、ベンジルである。
【0070】
化合物(DVI)から化合物(DV)への反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DVI)とスルホニル化試薬とを塩基性条件下で反応させることにより行うことができる。
スルホニル化試薬としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいメタンスルホニルハライド、1ないし3個のC
1−6アルキル基を有していてもよいベンゼンスルホニルハライドなどを用いることができる。
スルホニル化試薬の使用量は、化合物(DVI)1モルに対し、通常1ないし2モル、好ましくは1ないし1.5モルである。
この反応を塩基性条件下に行うために、必要に応じて塩基を用いてもよい。このような塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(DVI)1モルに対し、通常2ないし5モル、好ましくは2ないし3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常−10ないし100℃、好ましくは0ないし60℃である。
反応時間は、通常0.5ないし100時間、好ましくは1ないし48時間である。
【0071】
R
D3が置換基を有していてもよいC
1−6アルケニル基、または置換基を有していてもよいアミノ基である場合、化合物(DV)から化合物(DIV)への反応は、化合物(DV)と、R
D3に対応するすず化合物またはアミンとを、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で反応させることにより行うことができる。
具体的には、化合物(DV)と、R
D3に対応するすず化合物またはアミンと、銅化合物(例、銅粉末、ヨウ化銅(I)、塩化銅(I)、酸化銅、酢酸銅(II)など)と、塩基(例、炭酸カリウム、りん酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン)とを反応させる。
あるいは、化合物(DV)と、R
D3に対応するすず化合物と、パラジウム化合物(例、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II))と、配位子(例、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン)と、塩基(例、炭酸セシウム、ナトリウムt−ブトキシド)とを反応させる。
R
D3に対応するすず化合物またはアミンの使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
銅化合物の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モルである。
パラジウム化合物の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モルである。
配位子の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モルである。
塩基の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは20〜120℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0072】
R
D3が、置換基を有していてもよいメルカプト基、ハロゲン原子またはシアノ基である場合、化合物(DV)から化合物(DIV)への反応は、化合物(DV)と、R
D3に対応するチオール、金属ハロゲン化物あるいはシアン化物とを、必要に応じて触媒および塩基存在下、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で反応させることにより行うことができる。
R
D3に対応するチオールとしては、例えば、メタンチオール、エタンチオールが挙げられる。
R
D3に対応する金属ハロゲン化物としては、例えば、臭化ナトリウム、塩化リチウムなどが挙げられる。
R
D3に対応するシアン化物としては、例えば、シアン化亜鉛(II)、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅、トリメチルシリルシアニドなどが挙げられる。
R
D3に対応するチオール、金属ハロゲン化物またはシアン化物の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
必要に応じて用いられる触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などが用いられる。
触媒の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常0.001〜1モル、好ましくは0.05〜0.5モルである。
必要に応じて用いられる塩基としては、例えば、1,8−アザビジクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが用いられる。
塩基の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは20〜120℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
R
D3に対応するチオール、金属ハロゲン化物またはシアン化物は、市販のものを使用するか、または自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0073】
R
D3が置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基または置換基を有していてもよい環状基である場合、化合物(DV)から化合物(DIV)への反応は、化合物(DV)と、R
D3に対応するすず化合物、ボロン酸またはボロン酸エステルとを、必要に応じて塩基存在下、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で反応させることにより行うことができる。
具体的には、化合物(DV)と、R
D3に対応するすず化合物、ボロン酸またはボロン酸エステルとを、パラジウム化合物(例、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II))、配位子(例、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン)、および塩基(例、炭酸セシウム、ナトリウムt−ブトキシド)とともに反応させる。
R
D3に対応するすず化合物、ボロン酸またはボロン酸エステルの使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
パラジウム化合物の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モルである。
配位子の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モルである。
塩基の使用量は、化合物(DV)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは20〜120℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
R
D3に対応するすず化合物、ボロン酸またはボロン酸エステルは、市販のものを使用するか、または自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0074】
R
D3が置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基である場合、化合物(DV)から化合物(DIV)への反応は
、RD3が置換基を有していてもよいC
1−6アルケニル基である化合物(DIV)を反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で還元することにより行うことができる。
還元には、接触水素化反応を用いることができ、その触媒としては、例えば、ラネーニッケル;酸化白金;活性炭、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどに担持されたパラジウム、ルテニウム、ロジウムまたはイリジウム;などが用いられる。
触媒の使用量は、R
D3が置換基を有していてもよいC
1−6アルケニル基である化合物(DV)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.05〜0.5モルである。
水素源としては、例えば、水素、シクロヘキセン、ヒドラジン、ぎ酸アンモニウムなどが用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、アルコール類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類、水などが挙げられ、なかでも好ましくはアルコール類、エーテル類、水である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜60℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0075】
化合物(DIV)から化合物(DIII)への反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DIV)とR
D5に対応するハロゲン化物とを用いて塩基性条件下に行うことができる。
R
D5に対応するハロゲン化物の使用量は、化合物(DIV)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
この反応を塩基性条件下で行うために、必要に応じて塩基を用いてもよい。このような塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(DIV)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
また、必要に応じて、添加剤として、水酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなどを反応に加えてもよい。
このような添加剤の使用量は、化合物(DIV)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、アルコール類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類、などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、ニトリル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜130℃、好ましくは20〜100℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
R
D5に対応するハロゲン化物は、市販のものを使用するか、または自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0076】
化合物(DIII)から化合物(DII)への反応は、酸または塩基の存在下、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DIII)を加水分解反応に供することにより行うことができる。
特にR
D8がベンジルの場合は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、接触水素化反応を用いることができる。
酸としては、塩酸、硫酸などが用いられる。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが用いられる。
酸または塩基の使用量は、化合物(DIII)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
接触水素化反応の触媒としては、例えば、ラネーニッケル;酸化白金;活性炭、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどに担持されたパラジウム、ルテニウム、ロジウムまたはイリジウム;などが挙げられる。
触媒の使用量は、化合物(DIII)1モルに対し、通常0.01〜1モル、好ましくは0.05〜0.5モルである。
水素源としては、例えば、水素、シクロヘキセン、ヒドラジン、ぎ酸アンモニウムなどが用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えばエーテル類、アルコール類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類、水などが挙げられ、なかでも好ましくはアルコール類、エーテル類、水である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜60℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0077】
化合物(DII)から化合物(DI)への反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DII)とR
D2に対応するアミンとを、縮合剤を用いて縮合させることにより行うことができる。この時、必要に応じて3級アミンなどの塩基を添加することができる。
縮合剤としては、例えば、カルボジイミド(例、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)、水溶性カルボジイミド(WSCD))、リン酸エステル(例、シアノホスホン酸ジエチル、クロロホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスホロアジド)、BOP試薬(例、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP))、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、カルボニルジイミダゾールなどが挙げられ、なかでも好ましくは、WSCD、HATUである。
R
D2に対応するアミンの使用量は、化合物(DII)1モルに対し、通常1〜10モル、好ましくは1〜2モルである。
縮合剤の使用量は、化合物(DII)1モルに対し、通常1〜10モル、好ましくは1〜2モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えばエーテル類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜60℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
R
D2に対応するアミンは、市販のものを使用するか、または自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0078】
化合物(DVI)は、例えば、以下に示す〔DB法〕またはこれに準ずる方法により製造することができる。
〔DB法〕
【0079】
【化3】
【0080】
〔式中、Q
D1およびQ
D2は、独立して、脱離基を示し、その他の記号は前記と同意義を示す。〕
Q
D1およびQ
D2で示される脱離基としては、例えば、上記Q
D3で例示したものおよびハロゲン原子が挙げられ、なかでも好ましくは、ハロゲン原子である。
【0081】
化合物(DIX)と化合物(D1)との反応は、必要に応じて塩基の存在下、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中行うことができる。
化合物(D1)の使用量は、化合物(DIX)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが用いられる。
塩基の使用量は、化合物(DIX)1モルに対し、通常2〜20モル、好ましくは2〜15モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えばエーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
化合物(D1)は、自体公知の方法に従って合成するか、または市販のものをそのまま使用することができる。
【0082】
化合物(DVIII)から化合物(DVII)への反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、塩基を作用させることにより行うことができる。
塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウムなどが用いられる。
塩基の使用量は、化合物(DVIII)1モルに対し、通常2〜5モル、好ましくは2〜3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくは、エーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
化合物(DVII)は、化合物(DVIII)を単離することなく、化合物(DIX)から直接得ることもできる。
【0083】
化合物(DVII)から化合物(DVI)への反応は、酸または塩基の存在下、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DVII)を加水分解反応に供することにより行うことができる。
加水分解反応は、化合物(DVII)のQ
D2をアセトキシまたはアルコキシに置換した後に行ってもよいし、あるいは、直接塩基または酸の存在下に行ってもよい。
化合物(DVII)のQ
D2をアセトキシまたはアルコキシに置換するには、例えば、化合物(DVII)を酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドと反応させればよい。
酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドの使用量は、化合物(DVII)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
酸としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸などが用いられる。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などが用いられる。
酸または塩基の使用量は、化合物(DVII)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、水などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類、水である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜130℃、好ましくは20〜100℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0084】
化合物(DIX)において、Y
Dが窒素原子である化合物(DIX−2)は、例えば、以下に示す〔DC法〕またはこれに準ずる方法により製造することができる。
〔DC法〕
【0085】
【化4】
【0086】
〔式中、記号は前記と同意義を示す。〕
【0087】
化合物(DXI)から化合物(DX−2)への反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DXI)とVilsmeier試薬とを反応させることにより行うことができる。
Vilsmeier試薬としては、例えば、DMF−オキシ塩化リン、DMF−塩化チオニルなどが用いられる。
DMFの使用量は、化合物(DXI)1モルに対し、通常1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルである。
オキシ塩化リンまたは塩化チオニルの使用量は、化合物(DX
I)1モルに対し、通常1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、ニトリル類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、ニトリル類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは0〜150℃である。
反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
化合物(DXI)は、自体公知の方法(例えば、ジャーナル オブ ヘテロサイクリックケミストリー、13巻、1141−1144頁、1976年に記載の方法)に従って合成することができる。
【0088】
化合物(DX−2)から化合物(DX)への反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(DX−2)に酸化剤を作用させることによって行うことができる。
酸化剤としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、m−クロロ過安息香酸、過酸化水素、酸素などが挙げられる。
酸化剤の使用量は、化合物(DX−2)1モルに対し、通常1ないし3モル、好ましくは1ないし2モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、アルコール類、ニトリル類、アミド類、水などが挙げられ、なかでも好ましくはアミド類、水である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0ないし60℃、好ましくは20ないし40℃である。
反応時間は、通常0.5ないし48時間、好ましくは1ないし24時間である。
【0089】
化合物(DX)から化合物(DIX−2)への反応は、例えば、カルボン酸である化合物(DX)を対応する酸クロリドに変換した後、R
D9に対応するアルコール類を作用させることによって行うことができる。
カルボン酸から酸クロリドへの変換は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ハロゲン化剤を作用させることによって行うことができる。
ハロゲン化剤としては、例えば、オキザリルクロリド、塩化チオニル、塩化ホスホリル、五塩化リン、三臭化リンなどが挙げられる。
ハロゲン化剤の使用量は、化合物(DX)1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし2モルである。
また、本反応はDMFを添加してもよい。
DMFの使用量は、化合物(DX)1モルに対し、通常1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくは炭化水素類、エーテル類、ニトリル類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0ないし80℃、好ましくは20ないし40℃である。
反応時間は、通常0.5ないし48時間、好ましくは1ないし24時間である。
【0090】
酸クロリドとR
D9に対応するアルコール類との反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、必要に応じて塩基の存在下に行うことができる。
R
D9に対応するアルコール類の使用量は、酸クロリド1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし2モルである。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどが用いられる。
塩基の使用量は、酸クロリド1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし2モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えばエーテル類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、ニトリル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0ないし80℃、好ましくは20ないし40℃である。
反応時間は、通常0.5ないし48時間、好ましくは1ないし24時間である。
【0091】
さらに、化合物(DIX)において、Y
DがCHである化合物(DIX−3)は、例えば、以下に示す〔DD法〕またはこれに準ずる方法によっても製造することができる。
〔DD法〕
【0092】
【化5】
【0093】
〔式中、記号は前記と同意義を示す。〕
【0094】
化合物(DXII)から化合物(DIX−3)への反応は、ハロゲン化試薬を用いて、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中または無溶媒で、必要に応じて塩基の存在下に行うことができる。
ハロゲン化試薬としては、例えば、塩化チオニル、塩化ホスホリル、五塩化リン、三臭化リンなどが用いられる。
ハロゲン化試薬の使用量は、化合物(DXII)1モルに対し、通常1ないし20モル、好ましくは2ないし10モルである。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが用いられる。
塩基の使用量は、化合物(DXII)1モルに対し、通常1ないし20モル、好ましくは2ないし10モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられる。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。本反応は、無溶媒で反応させるのが好ましい。
反応温度は、通常0ないし130℃、好ましくは20ないし130℃である。
反応時間は、通常0.5ないし100時間、好ましくは1ないし48時間である。
【0095】
あるいは、化合物(DXII)から化合物(DIX−3)への反応は、スルホニル化試薬を用いて、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中または無溶媒で、必要に応じて塩基の存在下に行うことができる。
スルホニル化試薬としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、1ないし3個のハロゲン原子を有していてもよいメタンスルホニルハライド、1ないし3個のC
1−6アルキル基を有していてもよいベンゼンスルホニルハライドなどが用いられる。
スルホニル化試薬の使用量は、化合物(DXII)1モルに対し、通常1ないし2モル、好ましくは1ないし1.5モルである。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが用いられる。
塩基の使用量は、化合物(DXII)1モルに対し、通常2ないし5モル、好ましくは2ないし3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常−10ないし100℃、好ましくは0ないし60℃である。
反応時間は、通常0.5ないし100時間、好ましくは1ないし48時間である。
【0096】
化合物(DXII)は、自体公知の方法(例えばジャーナル オブ メディシナルケミストリー、51卷、1385−1392頁、2008年に記載の方法)に従って合成することができる。
【0097】
化合物(DIII)において、Y
DがCHである化合物(DIII−3)は、例えば、以下に示す〔DE法〕またはこれに準ずる方法によっても製造することができる。
〔DE法〕
【0098】
【化6】
【0099】
〔式中、記号は前記と同意義を示す。〕
化合物(DXII)から化合物(DXII−2)への反応は、〔DD法〕に準じ、試薬量および反応時間を調節することで行うことができる。
化合物(DXII−2)から化合物(DXII−3)への反応は、〔DA法〕の化合物(DIV)から化合物(DIII)への反応に準じて行うことができる。
化合物(DXII−3)から化合物(DVI−3)への反応は、〔DB法〕の化合物(DIX)から化合物(DVII)への反応に準じて行うことができる。
化合物(DVI−3)から化合物(DV−3)への反応は、〔DA法〕の化合物(DVI)から化合物(DV)への反応に準じて行うことができる。
化合物(DV−3)から化合物(DIII−3)への反応は、〔DA法〕の化合物(DV)から化合物(DIV)への反応に準じて行うことができる。
【0100】
還元反応の際に、R
D5が還元される場合は再度R
D5へ酸化することで、化合物(DIII−3)を合成することもできる。
酸化剤としては、例えば4−メチルモルホリンN−オキシドと過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムの組み合わせなどが用いられ、その使用量は、還元体1モルに対し、通常4−メチルモルホリンN−オキシド1ないし10モル、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム0.01ないし0.5モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、アミド類、ニトリル類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはニトリル類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常−10ないし60℃、好ましくは10ないし40℃である。
反応時間は、通常0.5ないし100時間、好ましくは1ないし48時間である。
【0101】
上記の反応に、さらに所望により公知の加水分解反応、脱保護反応、アシル化反応、アルキル化反応、酸化反応、環化反応、炭素鎖延長反応、置換基交換反応を各々単独あるいはその二以上を組み合わせて行うことによっても化合物(DI)は製造できる。
【0102】
化合物(DIII−3)において、R
D3が置換基を有していてもよいアミノ基である化合物(DIII−4)は、例えば、以下に示す〔DF法〕またはこれに準ずる方法によっても製造することができる。
〔DF法〕
【0103】
【化7】
【0104】
〔式中、R
D3’は置換基を有していてもよいアミノ基を示し、その他の記号は前記と同意義を示す。〕
【0105】
化合物(DV−3)から化合物(DV−4)への反応は、例えば、化合物(DV−3)にベンゾフェノンイミンを作用させた後、加水分解することにより行うことができる。
化合物(DV−3)とベンゾフェノンイミンとの反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、塩基および金属錯体の存在下に行うことができる。
ベンゾフェノンイミンの使用量は、化合物(DV−3)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜2モルである。
塩基としては、例えば、炭酸セシウム、炭酸カリウム、ナトリウムt−ブトキシドなどが用いられる。
塩基の使用量は、化合物(DV−3)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
金属錯体としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と4,5’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9’−ジメチルキサンテンからなる錯体が用いられる。
錯体の使用量は、化合物(DV−3)1モルに対し、通常0.05〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、アルコール類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、炭化水素類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0106】
加水分解反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、酸性条件下に行うことができる。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸などを用いることができる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、アルコール類、ニトリル類、アミド類などが挙げられ、なかでも好ましくはアルコール類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜60℃、好ましくは20〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0107】
化合物(DV−4)から化合物(DIII−4)への反応は、例えば、カルボニル化合物と還元剤を組み合わせた還元アルキル化反応、あるいは脱離基を有するアルキル基あるいはアシル基を作用させる置換反応により行うことができる。また、これらの反応を組み合わせることもできる。
【0108】
還元アルキル化反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、例えば、R
D3’で表される「置換基を有していてもよいアミノ基」の「置換基」に対応するカルボニル化合物と還元剤を用いて、必要に応じて酸の存在下に行うことができる。
カルボニル化合物の使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1〜3モル、好ましくは1〜2モルである。
還元剤としては、水素化ほう素ナトリウム、トリアセトキシヒドロほう酸ナトリウム、シアノトリヒドロほう酸ナトリウムなどが用いられる。
還元剤の使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし3モルである。
酸としては、例えば、塩酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸などが用いられる。
酸の使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、ニトリル類、アミド類などが挙げられ、なかでも好ましくはアルコール類、エーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜60℃、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
R
D3’で表される「置換基を有していてもよいアミノ基」の「置換基」に対応するカルボニル化合物は、市販のものを使用するか、または自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0109】
アルキル化反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、例えば、R
D3’で表される「置換基を有していてもよいアミノ基」の「置換基」に対応するハロゲン化アルキル化合物と必要に応じて塩基の存在下に行うことができる。
ハロゲン化アルキル化合物の使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1〜3モル、好ましくは1〜2モルである。
塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などが挙げられ、なかでも好ましくはピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンである。
塩基の使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、ニトリル類、アミド類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜60℃、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
R
D3’で表される「置換基を有していてもよいアミノ基」の「置換基」に対応する
ハロゲン化アルキル化合物は、市販のものを使用するか、または自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0110】
アシル化反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、例えば、R
D3’で表される「置換基を有していてもよいアミノ基」の「置換基」に対応する酸クロリドを用いて、塩基の存在下に行うことができる。
酸クロリドの使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1〜3モル、好ましくは1〜2モルである。
塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などが挙げられ、なかでも好ましくはピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンである。
塩基の使用量は、化合物(DV−4)1モルに対し、通常1ないし5モル、好ましくは1ないし3モルである。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、エステル類などが挙げられ、なかでも好ましくはエーテル類、アミド類である。上記溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0〜60℃、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
R
D3’で表される「置換基を有していてもよいアミノ基」の「置換基」に対応する酸クロリドは、自体公知の方法を適用して対応する原料化合物から製造することができる。
【0111】
化合物(DI)は、自体公知の手段、例えば、転溶、濃縮、溶媒抽出、分溜、液性変換、晶出、再結晶、クロマトグラフィー等によって単離、精製することができる。化合物(DI)が遊離化合物として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準ずる方法によって、目的とする塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準ずる方法により、遊離体または目的とする他の塩に変換することができる。
【0112】
化合物(DI)に、自体公知の手段を適用してさらに置換基の導入や官能基変換を行い、本発明の範囲に含まれる化合物を製造することもできる。置換基変換は公知の一般的方法が用いられるが、例えば、アミドの加水分解によるアミノへの変換、エステルの加水分解によるカルボキシへの変換、カルボキシのアミド化によるカルバモイルへの変換、カルボキシの還元によるヒドロキシメチルへの変換、カルボニルの還元やアルキル化によるアルコール体への変換、カルボニルの還元的アミノ化、カルボニルのオキシム化、アミノのアシル化・ウレア化・スルホニル化・アルキル化、アミンによる活性ハロゲンの置換・アミノ化、ニトロの還元によるアミノ化、ヒドロキシのアルキル化、ヒドロキシの置換・アミノ化が挙げられる。この置換基の導入や官能基変換を行うに際し、目的以外の反応が起きる反応性置換基が存在する場合は、必要に応じて、自体公知の手段によりその反応性置換基に事前に保護基を導入し、目的の反応を行った後にその保護基をやはり自体公知の手段により除去して、本発明の範囲に含まれる化合物を製造することもできる。
【0113】
化合物(DI)はプロドラッグとして用いてもよい。化合物(DI)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により化合物(DI)に変換する化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(DI)に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして化合物(DI)に変化する化合物をいう。
【0114】
化合物(DI)のプロドラッグとしては、化合物(DI)のアミノがアシル化、アルキル化、りん酸化された化合物(例えば、化合物(DI)のアミノがエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化された化合物等);化合物(DI)のヒドロキシがアシル化、アルキル化、りん酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、化合物(DI)のヒドロキシがアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノアセチル化された化合物等);化合物(DI)のカルボキシがエステル化、アミド化された化合物(例えば、化合物(DI)のカルボキシがエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物等);等が挙げられる。これらの化合物は、自体公知の方法によって化合物(DI)から製造することができる。
【0115】
また、化合物(DI)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような生理的条件で化合物(DI)に変化するものであってもよい。
【0116】
化合物(DI)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一方の異性体も混合物も化合物(DI)に包含される。例えば、化合物(DI)に光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も化合物(DI)に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)によりそれぞれを単品として得ることができる。
【0117】
化合物(DI)は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても化合物(DI)に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
化合物(DI)は、共結晶であってもよい。
化合物(DI)は、水和物であっても、非水和物であっても、溶媒和物であっても、無溶媒和物であってもよい。
同位元素(例、
2H、
3H、
14C、
35S、
125I)等で標識された化合物も、化合物(DI)に包含される。
さらに、化合物(DI)は、重水素変換体であってもよい。
【0118】
化合物(DI)またはそのプロドラッグ(明細書中、「本発明化合物」と略記することがある)は、例えば、ヒトSmo蛋白質に相互作用し、その立体構造を変化させることにより、その細胞質内でのシグナル伝達に関与する蛋白質との複合体形成を阻害してHedgehogシグナル伝達系を阻害する。あるいは、本発明化合物がヒトSmo蛋白質に相互作用し、ヒトSmo蛋白質と細胞質内でのHedgehogシグナル伝達系に関与する蛋白質の複合体形成を直接阻害することにより、Hedgehogシグナル伝達系を阻害する。あるいは、本発明化合物がSmo蛋白質のHedgehogシグナル伝達系に関与する蛋白質から受ける修飾部位、例えば、リン酸化部位等に相互作用することにより、Smoのリン酸化等の修飾を阻害しHedgehogシグナル伝達系を阻害する。
Hedgehogシグナル伝達系の阻害は、例えば、下記の試験例1に準じて、Gli結合部位の下流に連結したレポーター遺伝子の発現量の減少を蛍光強度で定量することで測定できる。あるいは、定量的PCR法等で細胞抽出液のGli-1 mRNAの発現を定量することで測定できる。Hedgehogシグナルを阻害する化合物がSmoを標的としていることは、例えば、蛍光標識したCyclopamineと試験化合物を、Smoを発現する細胞に結合させた後、細胞の蛍光量を測定し、その値が試験化合物を添加しない場合と比較して減少していることで確認できる。
【0119】
従って、本発明化合物は、哺乳動物(例、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒト)に対して、Smo阻害剤として有用である。本発明化合物は、Smoにより影響される可能性のある疾患、例えば、癌(例、大腸癌(例、結腸癌、直腸癌、肛門癌、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍)、肺癌(例、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫)、中皮腫、膵癌(例、膵管癌、膵内分泌腫瘍)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、食道癌、胃癌(例、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌)、十二指腸癌、小腸癌、乳癌(例、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌)、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、精巣腫瘍、前立腺癌(例、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌)、肝臓癌(例、肝細胞癌、原発性肝癌、胆管癌、肝外胆管癌)、甲状腺癌(例、甲状腺髄様癌)、腎臓癌(例、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮癌)、子宮癌(例えば、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫)、脳腫瘍(例、髄芽細胞腫、神経膠腫、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、下垂体線腫)、網膜芽細胞腫、皮膚癌(例、基底細胞腫、悪性黒色腫)、肉腫(例えば、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟部肉腫)、悪性骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、慢性骨髄増殖性疾患)、原発不明癌)の増殖阻害剤、癌の転移抑制剤、アポトーシス促進剤等の医薬として用いられる。
なかでも、脳腫瘍、皮膚癌、肺癌、膵癌、胆管癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肉腫および乳癌に対して有効である。
特に本発明化合物は、神経膠腫、髄芽細胞腫、基底細胞腫、小細胞肺癌、膵癌、胆管癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、横紋筋肉腫および乳癌に有効である。
【0120】
本発明化合物は、そのままあるいは薬理学的に許容される担体を配合し、経口的または非経口的に投与することができる。
本発明化合物を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられ、また、非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、坐剤等が挙げられる。また、適当な基剤(例、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸−グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物、ポリグリセロール脂肪酸エステル)と組み合わせ徐放性製剤とすることも有効である。
【0121】
本発明化合物を上記の剤形に製造する方法としては、当該分野で一般的に用いられている公知の製造方法を適用することができる。また、上記の剤形に製造する場合には、必要に応じて、その剤形に製造する際に製剤分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤等の添加剤を適宜、適量含有させて製造することができる。
【0122】
例えば、本発明化合物を錠剤に製造する場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を含有させて製造することができ、丸剤及び顆粒剤に製造する場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤等を含有させて製造することができる。また、散剤及びカプセル剤に製造する場合には賦形剤等を、シロップ剤に製する場合には甘味剤等を、乳剤または懸濁剤に製する場合には懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤等を含有させて製造することができる。
【0123】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤の例としては、5ないし10重量%デンプンのり液、10ないし20重量%アラビアゴム液またはゼラチン液、1ないし5重量%トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液、グリセリン等が挙げられる。
崩壊剤の例としては、でんぷん、炭酸カルシウム等が挙げられる。
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルク等が挙げられる。
甘味剤の例としては、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップ等が挙げられる。
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
懸濁化剤の例としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ベントナイト等が挙げられる。
乳化剤の例としては、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80等が挙げられる。
【0124】
更に、本発明化合物を上記の剤形に製造する場合には、所望により、製剤分野において通常用いられる着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等を適宜、適量添加することができる。
【0125】
注射剤としては、静脈注射剤のほか、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等が含まれ、また持続性製剤としては、イオントフォレシス経皮剤等が含まれる。
【0126】
かかる注射剤は、自体公知の方法、すなわち、本発明化合物を無菌の水性液もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製される。注射用の水性液としては生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム)等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤(例、リン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)、安定剤(例、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール)、保存剤(例、ベンジルアルコール、フェノール)等と配合してもよい。調製された注射液は、通常、アンプルに充填される。
【0127】
本発明製剤中の本発明化合物の含有量は、製剤の形態に応じて相違するが、通常、製剤全体に対して約0.01ないし100重量%、好ましくは約2ないし85重量%、さらに好ましくは約5ないし70重量%である。
【0128】
本発明製剤中の添加剤の含有量は、製剤の形態に応じて相違するが、通常、製剤全体に対して約1ないし99.9重量%、好ましくは約10ないし90重量%である。
【0129】
本発明化合物は、安定かつ低毒性で安全に使用することができる。その1日の投与量は患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路等によって異なるが、例えば、癌治療目的で患者に経口投与する場合には、成人(体重約60kg)1日当りの投与量は、有効成分(本発明化合物)として約1ないし1000mg、好ましくは約3ないし300mg、さらに好ましくは約10ないし200mgであり、これらを1回または2ないし3回に分けて投与することができる。
【0130】
本発明化合物を非経口的に投与する場合は、通常、液剤(例、注射剤)の形で投与する。その1回投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法等によっても異なるが、例えば、注射剤の形にして、通常体重1kgあたり約0.01ないし約100mg、好ましくは約0.01ないし約50mg、より好ましくは約0.01ないし約20mgを静脈注射により投与するのが好都合である。
【0131】
本発明化合物は、他の薬物と併用して用いることができる。具体的には、本発明化合物は、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤等の薬物と併用して用いることができる。以下、本発明化合物と併用し得る薬物を併用薬物と略記する。
【0132】
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド)、5α−レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、エプリステリド)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール)、甲状腺ホルモン、およびそれらのDDS(Drug Delivery System)製剤等が用いられる。
【0133】
「化学療法剤」としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤等が用いられる。
【0134】
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0135】
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビン)、アミノプテリン、ネルザラビン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ベンダムスチンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0136】
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0137】
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0138】
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール、抗CTLA4抗体等が用いられる。
【0139】
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、TGFα〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin−like growth factor)−1、IGF−2〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF−10〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin−2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet−derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、ヘレグリン、アンジオポエチン〕が用いられる。
【0140】
「細胞増殖因子の受容体」としては、上記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ヘレグリン受容体(HER3等)、インシュリン受容体阻害剤、IGF受容体−1、IGF受容体−2、FGF受容体−1またはFGF受容体−2、VEGF受容体、アンジオポエチン受容体(Tie2等)、PDGF受容体、c−MET、c−Kit、Trk等が用いられる。
【0141】
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」としては、EGF阻害剤、TGFα阻害剤、ヘレグリン阻害剤、インシュリン阻害剤、IGF阻害剤、FGF阻害剤、KGF阻害剤、CSF阻害剤、EPO阻害剤、IL−2阻害剤、NGF阻害剤、PDGF阻害剤、TGFβ阻害剤、HGF阻害剤、VEGF阻害剤、アンジオポエチン阻害剤、EGF受容体阻害剤、HER2阻害剤、HER4阻害剤、インシュリン受容体、IGF−1受容体阻害剤、IGF−2受容体阻害剤、FGF受容体−1阻害剤、FGF受容体−2阻害剤、FGF受容体−3阻害剤、FGF受容体−4阻害剤、VEGF受容体阻害剤、Tie−2阻害剤、PDGF受容体阻害剤、Abl阻害剤、Raf阻害剤、FLT3阻害剤、c−Kit阻害剤、Src阻害剤、PKC阻害剤、Trk阻害剤、Ret阻害剤、mTOR阻害剤、MEK(MEK1/2)阻害剤、MET阻害剤、Akt阻害剤、ERK阻害剤等が用いられる。より具体的に例示すると、抗VEGF抗体(Bevacizumab等)、抗HER2抗体(Trastuzumab、Pertuzumab等)、抗EGFR抗体(Cetuximab、Panitumumab、Matuzumab、Nimotuzumab等)、抗VEGFR抗体、Imatinib mesylate、Erlotinib、Gefitinib、Sorafenib、Sunitinib、Dasatinib、Lapatinib、Vatalanib、4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-[3-(1-ピロリジニル)プロポキシ]キナゾリン(AZD-2171)、Lestaurtinib、Pazopanib、Canertinib、Tandutinib、3-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロベンジルオキシ)-5-[3-[4-(1-ピロリジニル)ブチル]ウレイド]イソチアゾール-4-カルボキサミド(CP-547632)、Axitinib、N-(3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-イル)-2-(ピリジン-4-イルメチルアミノ)ピリジン-3-カルボキサミド(AMG-706)、Nilotinib、6-[4-(4-エチルピペラジン-1-イルメチル)フェニル]-N-[1(R)-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(AEE-788)、Vandetanib、Temsirolimus、Everolimus、Si
ro
limus、Enzastaurin、N-[4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-6-(3-メチル-1H-ピラゾール-5-イルアミノ)ピリミジン-2-イルスルファニル]フェニル]シクロプロパンカルボキサミド(VX-680)、リン酸 2-[N-[3-[4-[5-[N-(3-フルオロフェニル)カルバモイルメチル]-1H-ピラゾール-3-イルアミノ]キナゾリン-7-イルオキシ]プロピル]-N-エチルアミノ]エチル エステル(AZD-1152)、4-[9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[5,4-d][2]ベンズアゼピン-2-イルアミノ]安息香酸(MLN-8054)、N-[2-メトキシ-5-[(E)-2-(2,4,6-トリメトキシフェニル)ビニルスルホニルメチル]フェニル]グリシン ナトリウム塩(ON-1910Na)、4-[8-シクロペンチル-7(R)-エチル-5-メチル-6-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロプテリジン-2-イルアミノ]-3-メトキシ-N-(1-メチルピペリジン-4-イル)ベンズアミド(BI-2536)、5-(4-ブロモ-2-クロロフェニルアミノ)-4-フルオロ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボヒドロキサム酸 2-ヒドロキシエチル エステル(AZD-6244)、N-[2(R),3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)ベンズアミド(PD-0325901)等が用いられる。
【0142】
上記の薬剤の他に、細胞周期阻害薬(例、Aurora A阻害薬、Aurora B阻害薬、PLK阻害薬、CDK阻害薬)、アポトーシス誘導薬(例、Bcl−2阻害薬、IAP阻害薬、Nedd−8阻害薬)プロテアソーム阻害薬(例、ボルテゾミブ)、ヘッジホッグシグナル阻害薬(例、Vismodegib、LDE225、IPI−926)、Wntシグナル阻害薬(例、β−カテニン/TCF阻害薬、抗Wnt抗体)、Notchシグナル阻害薬(例、抗Notch抗体、γ−セクレターゼ阻害薬)、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン)、トポイソメラーゼII阻害薬(例、ソブゾキサン)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類)、他の血管新生阻害薬(例、フマギリン、さめ抽出物、COX-2阻害薬)、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシン)、ビスホスホン酸(例、パミドロネート、ゾレドロネート)、サリドマイド、5−アザシチジン、デシタビン、抗CD20抗体等の抗腫瘍性抗体、毒素標識抗体等も用いることができる。
【0143】
本発明化合物と併用薬物とを組み合わせることにより、
(1)本発明化合物または併用薬物を単独で投与する場合に比べて、その投与量を軽減することができる、
(2)患者の症状(軽症、重症等)に応じて、本発明化合物と併用する薬物を選択することができる、
(3)治療期間を長く設定することができる、
(4)治療効果の持続を図ることができる、
(5)本発明化合物と併用薬物とを併用することにより、相乗効果が得られる、等の優れた効果を得ることができる。
【0144】
以下、本発明化合物と併用薬物を併用する場合を「本発明の併用剤」と称する。
本発明の併用剤の使用に際しては、本発明化合物と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明化合物と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0145】
本発明化合物と併用薬物を併用する場合の投与形態としては、例えば、(1)本発明化合物と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明化合物、次いで併用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬物を0.01ないし100重量部用いればよい。
【0146】
本発明の併用剤は、毒性が低く、例えば、本発明化合物または(および)上記併用薬物を自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等とした後に、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈投与)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下または臓器内投与あるいは直接病巣に投与することができる。
【0147】
本発明の併用剤の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、前記した本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体と同様のものが挙げられる。また、更に必要に応じ、前記した本発明の医薬の製造に用いられてもよい防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加剤を適宜、適量用いることもできる。
【0148】
本発明の併用剤における本発明化合物と併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。
例えば、本発明の併用剤における本発明化合物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の併用剤における併用薬物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし90重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の併用剤における添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1ないし99.99重量%、好ましくは約10ないし90重量%程度である。
また、本発明化合物および併用薬物をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。
【0149】
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる自体公知の方法により製造することができる。
例えば、本発明化合物または併用薬物は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン)、安定化剤(例、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、界面活性剤(例、ポリソルベート80、マクロゴール)、可溶剤(例、グリセリン、エタノール)、緩衝剤(例、リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖)、pH調節剤(例、塩酸、水酸化ナトリウム)、保存剤(例、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール)、溶解剤(例、濃グリセリン、メグルミン)、溶解補助剤(例、プロピレングリコール、白糖)、無痛化剤(例、ブドウ糖、ベンジルアルコール)等と共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等の溶解補助剤に溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0150】
また、自体公知の方法に従い、本発明化合物または併用薬物に、例えば、賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプン)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)または滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。コーティングに用いられるコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合体)および色素(例、ベンガラ、二酸化チタン)等が用いられる。経口投与用製剤は速放性製剤、徐放性製剤のいずれであってもよい。
【0151】
さらに、自体公知の方法に従い、本発明化合物または併用薬物を、油性基剤、水性基剤または水性ゲル基剤と混合することにより、油性または水性の固状、半固状あるいは液状の坐剤とすることができる。上記油性基剤としては、例えば、高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製、ドイツ)〕、中鎖脂肪酸のグリセリド〔例、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製、ドイツ)〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油)等が挙げられる。また、水性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等が挙げられる。水性ゲル基剤としては、例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が挙げられる。
【0152】
上記徐放性製剤としては、徐放性マイクロカプセル剤等が挙げられる。該徐放性マイクロカプセル剤は、自体公知の方法、例えば、下記〔2〕に示す方法にしたがって製造される。
【0153】
本発明化合物は、固形製剤(例、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤)等の経口投与用製剤に成型するか、坐剤等の直腸投与用製剤に成型するのが好ましい。特に経口投与用製剤が好ましい。
併用薬物は、薬物の種類に応じて上記した剤形とすることができる。
【0154】
以下に、〔1〕本発明化合物または併用薬物の注射剤およびその調製、〔2〕本発明化合物または併用薬物の徐放性製剤または速放性製剤およびその調製、〔3〕本発明化合物または併用薬物の舌下錠、バッカルまたは口腔内速崩壊剤およびその調製について具体的に示す。
【0155】
〔1〕注射剤およびその調製
本発明化合物または併用薬物を水に溶解してなる注射剤が好ましい。該注射剤には、安息香酸塩または/およびサリチル酸塩を含有させてもよい。
該注射剤は、本発明化合物または併用薬物と所望により安息香酸塩または/およびサリチル酸塩の双方を水に溶解することにより得られる。
【0156】
上記安息香酸、サリチル酸の塩としては、例えば、ナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム,マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、その他トロメタモール等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0157】
注射剤中の本発明化合物または併用薬物の濃度は、0.5ないし50w/v%、好ましくは3ないし20w/v%程度である。また安息香酸塩または/およびサリチル酸塩の濃度は、0.5ないし50w/v%、好ましくは3ないし20w/v%程度である。
【0158】
また、本注射剤には、一般に注射剤に使用される添加剤、例えば、安定化剤(例、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、界面活性剤(例、ポリソルベート80、マクロゴール)、可溶剤(例、グリセリン、エタノール)、緩衝剤(例、リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、塩化カリウム)、分散剤(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン)、pH調節剤(例、塩酸、水酸化ナトリウム)、保存剤(例、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸)、溶解剤(例、濃グリセリン、メグルミン)、溶解補助剤(例、プロピレングリコール、白糖)、無痛化剤(例、ブドウ糖、ベンジルアルコール)等を適宜配合することができる。これらの添加剤は、一般に注射剤に通常用いられる割合で配合される。
【0159】
注射剤は、pH調節剤の添加により、pH2ないし12、好ましくはpH2.5ないし8.0に調整するのがよい。
注射剤は、本発明化合物または併用薬物と所望により安息香酸塩または/およびサリチル酸塩の双方を、また必要により上記添加剤を水に溶解することにより得られる。これらの溶解はどのような順序で行ってもよく、従来の注射剤の製法と同様に適宜行うことができる。
【0160】
注射用水溶液は加温するのがよく、また通常の注射剤と同様に、例えば、ろ過滅菌、高圧加熱滅菌等を行うことにより注射剤として供することができる。
注射用水溶液は、例えば、100ないし121℃の条件で5ないし30分間高圧加熱滅菌するのがよい。
さらに多回分割投与製剤として使用できるように、溶液の抗菌性を付与した製剤としてもよい。
【0161】
〔2〕徐放性製剤または速放性製剤およびその調製
本発明化合物または併用薬物を含んでなる核を所望により水不溶性物質や膨潤性ポリマー等の被膜剤で被覆してなる徐放性製剤が好ましい。例えば、1日1回投与型の経口投与用徐放性製剤が好ましい。
【0162】
被膜剤に用いられる水不溶性物質としては、例えば、エチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロースエーテル類、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート等のセルロースエステル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート等のポリビニルエステル類、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート共重合体、エトキシエチルメタクリレート/シンナモエチルメタクリレート/アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(メタクリル酸アンヒドリド)、グリシジルメタクリレート共重合体、とりわけオイドラギットRS−100、RL−100、RS−30D、RL−30D、RL−PO、RS−PO(アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチル・アンモニウムエチル共重合体)、オイドラギットNE−30D(メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル共重合体)等のオイドラギット類(ローム・ファーマ社)等のアクリル酸系ポリマー、硬化ヒマシ油(例、ラブリワックス(LUBRI WAX;フロイント産業))等の硬化油、カルナバワックス、脂肪酸グリセリンエステル、パラフィン等のワックス類、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0163】
膨潤性ポリマーとしては、酸性の解離基を有し、pH依存性の膨潤を示すポリマーが好ましく、胃内のような酸性領域では膨潤が少なく、小腸や大腸等の中性領域で膨潤が大きくなる酸性の解離基を有するポリマーが好ましい。
このような酸性の解離基を有し、pH依存性の膨潤を示すポリマーとしては、例えば、カーボマー(Carbomer)934P、940、941、974P、980、1342等、ポリカーボフィル(polycarbophil)、カルシウムポリカーボフィル(calcium polycarbophil)(前記はいずれもBFグッドリッチ社製)、ハイビスワコー103、104、105、304(いずれも和光純薬(株)製)等の架橋型ポリアクリル酸重合体が挙げられる。
【0164】
徐放性製剤に用いられる被膜剤は、親水性物質をさらに含んでいてもよい。
該親水性物質としては、例えば、プルラン、デキストリン、アルギン酸アルカリ金属塩等の硫酸基を有していてもよい多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルを有する多糖類、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0165】
徐放性製剤の被膜剤における水不溶性物質の含有率は、約30ないし約90%(w/w)、好ましくは約35ないし約80%(w/w)、さらに好ましくは約40ないし75%(w/w)であり、膨潤性ポリマーの含有率は、約3ないし約30%(w/w)、好ましくは約3ないし約15%(w/w)である。被膜剤は親水性物質をさらに含んでいてもよく、その場合被膜剤における親水性物質の含有率は、約50%(w/w)以下、好ましくは約5ないし約40%(w/w)、さらに好ましくは約5ないし約35%(w/w)である。ここで上記%(w/w)は、被膜剤液から溶媒(例、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール)を除いた被膜剤組成物に対する重量%を示す。
【0166】
徐放性製剤は、以下に例示するように薬物を含む核を調製し、次いで得られた核を、水不溶性物質や膨潤性ポリマー等を加熱溶解あるいは溶媒に溶解または分散させた被膜剤液で被覆することにより製造される。
【0167】
I.薬剤を含む核の調製
被膜剤で被覆される薬物を含む核(以下、単に核と称することがある)の形態は特に制限されないが、好ましくは顆粒あるいは細粒等の粒子状に形成される。
核が顆粒または細粒の場合、その平均粒子径は、好ましくは約150ないし約2,000μm、さらに好ましくは約500ないし約1,400μmである。
核の調製は通常の製造方法で実施することができる。例えば、薬物に適当な賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤等を混合し、湿式押し出し造粒法、流動層造粒法等により調製する。
核の薬物含量は、約0.5ないし約95%(w/w)、好ましくは約5.0ないし約80%(w/w)、さらに好ましくは約30ないし約70%(w/w)である。
【0168】
核に含まれる賦形剤としては、例えば、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、澱粉、結晶セルロース、リン酸カルシウム、コーンスターチ等が用いられる。中でも、結晶セルロース、コーンスターチが好ましい。
【0169】
結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉等が用いられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム(ECG505)、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol)、架橋型ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)等が用いられる。中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。滑沢剤、凝集防止剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびその無機塩、また潤滑剤としてポリエチレングリコール等が用いられる。安定化剤としては、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸が用いられる。
【0170】
核は上記製造法以外にも、例えば、核の中心となる不活性担体粒子上に水、低級アルコール(例、メタノール、エタノール)等の適当な溶媒に溶解した結合剤をスプレーしながら、薬物あるいはこれと賦形剤、滑沢剤等との混合物を少量ずつ添加して行なう転動造粒法、パンコーティング法、流動層コーティング法や溶融造粒法によっても調製することができる。不活性担体粒子としては、例えば、白糖、乳糖、澱粉、結晶セルロース、ワックス類で製造されたものが使用でき、その平均粒子径は約100μmないし約1,500μmであるものが好ましい。
【0171】
核に含まれる薬物と被膜剤とを分離するために、防護剤で核の表面を被覆してもよい。防護剤としては、例えば、前記親水性物質や、水不溶性物質等が用いられる。防護剤は、好ましくはポリエチレングリコールやヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルを有する多糖類、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが用いられる。該防護剤は、安定化剤として、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸や、タルク等の滑沢剤を含んでいてもよい。防護剤を用いる場合、その被覆量は核に対して約1ないし約15%(w/w)、好ましくは約1ないし約10%(w/w)、さらに好ましくは約2ないし約8%(w/w)である。
【0172】
防護剤は通常のコーティング法により被覆することができ、具体的には、防護剤を、例えば、流動層コーティング法、パンコーティング法等により核にスプレーコーティングすることで被覆することができる。
【0173】
II.核の被膜剤による被覆
前記Iで得られた核を、前記水不溶性物質及びpH依存性の膨潤性ポリマー、および親水性物質を加熱溶解あるいは溶媒に溶解または分散させた被膜剤液により被覆することにより、徐放性製剤が製造される。
核の被膜剤液による被覆方法として、例えば、噴霧コーティングする方法等が挙げられる。
被膜剤液中の水不溶性物質、膨潤性ポリマーまたは親水性物質の組成比は、被膜中の各成分の含有率がそれぞれ前記含有率となるように適宜選ばれる。
被膜剤の被覆量は、核(防護剤の被覆量を含まない)に対して約1ないし約90%(w/w)、好ましくは約5ないし約50%(w/w)、さらに好ましくは約5ないし約35%(w/w)である。
【0174】
被膜剤液の溶媒としては、水または有機溶媒を単独であるいは両者の混液を用いることができる。混液を用いる際の水と有機溶媒との混合比(水/有機溶媒:重量比)は、1ないし100%の範囲で変化させることができ、好ましくは1ないし約30%である。該有機溶媒としては、水不溶性物質を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の低級アルコール、アセトン等の低級アルカノン、アセトニトリル、クロロホルム、メチレンクロライド等が用いられる。このうち低級アルコールが好ましく、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。水及び水と有機溶媒との混液が、被膜剤の溶媒として好ましく用いられる。この時、必要であれば被膜剤液中に、被膜剤液安定化のために、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸を加えてもよい。
【0175】
噴霧コーティングにより被覆する場合の操作は、通常のコーティング法により実施することができ、具体的には、被膜剤液を、例えば、流動層コーティング法、パンコーティング法等により核にスプレーコーティングすることで実施することができる。この時必要であれば、タルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸等を滑沢剤として、グリセリン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、クエン酸トリエチル、セチルアルコール、ステアリルアルコール等を可塑剤として添加してもよい。
【0176】
被膜剤による被膜後、必要に応じてタルク等の帯電防止剤を混合してもよい。
速放性製剤は、液状(溶液、懸濁液、乳化物等)であっても固形状(粒子状、丸剤、錠剤等)であってもよい。速放性製剤としては、経口投与剤、注射剤等非経口投与剤が用いられるが、経口投与剤が好ましい。
【0177】
速放性製剤は、通常、活性成分である薬物に加えて、製剤分野で慣用される担体、添加剤や賦形剤(以下、賦形剤と略称することがある)を含んでいてもよい。用いられる賦形剤は、製剤賦形剤として常用される賦形剤であれば特に限定されない。例えば、経口固形製剤用の賦形剤としては、乳糖、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース(旭化成(株)製、アビセルPH101等)、粉糖、グラニュー糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、L−システイン等が挙げられ、好ましくはコーンスターチおよびマンニトール等が挙げられる。これらの賦形剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用できる。賦形剤の含有量は、速放性製剤全量に対して、例えば、約4.5ないし約99.4w/w%、好ましくは約20ないし約98.5w/w%、さらに好ましくは約30ないし約97w/w%である。
【0178】
速放性製剤における薬物の含量は、速放性製剤全量に対して、約0.5ないし約95w/w%、好ましくは約1ないし約60w/w%の範囲から適宜選択することができる。
【0179】
速放性製剤が経口固型製剤の場合、通常上記成分に加えて、崩壊剤を含有する。このような崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム(五徳薬品製、ECG−505)、クロスカルメロースナトリウム(例えば、旭化成(株)製、アクジゾル)、クロスポビドン(例えば、BASF社製、コリドンCL)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学(株))、カルボキシメチルスターチ(松谷化学(株))、カルボキシメチルスターチナトリウム(木村産業製、エキスプロタブ)、部分α化デンプン(旭化成(株)製、PCS)等が用いられ、例えば、水と接触して吸水、膨潤、あるいは核を構成している有効成分と賦形剤との間にチャネルを作る等により顆粒を崩壊させるものを用いることができる。これらの崩壊剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用できる。崩壊剤の配合量は、用いる薬物の種類や配合量、放出性の製剤設計等により適宜選択されるが、速放性製剤全量に対して、例えば、約0.05ないし約30w/w%、好ましくは約0.5ないし約15w/w%である。
【0180】
速放性製剤が経口固型製剤である場合、上記の組成に加えて、所望により固型製剤において慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、結合剤(例えば、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等)、滑沢剤(例えば、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、軽質無水ケイ酸(例えば、アエロジル(日本アエロジル))、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等の非イオン系界面活性剤等)、着色剤(例えば、タール系色素、カラメル、ベンガラ、酸化チタン、リボフラビン類)、必要ならば、矯味剤(例えば、甘味剤、香料等)、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤等が用いられる。また、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸を加えてもよい。
【0181】
上記結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドン等が好ましく用いられる。
【0182】
速放性製剤は、通常の製剤の製造技術に基づき、前記各成分を混合し、必要により、さらに練合し、成型することにより調製することができる。上記混合は、一般に用いられる方法、例えば、混合、練合等により行われる。具体的には、例えば、速放性製剤を粒子状に形成する場合、前記徐放性製剤の核の調製法と同様の手法により、バーチカルグラニュレーター、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機FD−5S(パウレック社製)等を用いて混合しその後、湿式押し出し造粒法、流動層造粒法等により造粒することにより調製することができる。
【0183】
このようにして得られた速放性製剤と徐放性製剤とは、そのままあるいは適宜、製剤賦形剤等と共に常法により別々に製剤化後、同時あるいは任意の投与間隔を挟んで組み合わせて投与する製剤としてもよく、また両者をそのままあるいは適宜、製剤賦形剤等と共に一つの経口投与製剤(例、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル)に製剤化してもよい。両製剤を顆粒あるいは細粒に製造して、同一のカプセル等に充填して経口投与用製剤としてもよい。
【0184】
〔3〕舌下錠、バッカルまたは口腔内速崩壊剤およびその調製
舌下錠、バッカル製剤、口腔内速崩壊剤は、錠剤等の固形製剤であってもよいし、口腔粘膜貼付錠(フィルム)であってもよい。
舌下錠、バッカルまたは口腔内速崩壊剤としては、本発明化合物または併用薬物と賦形剤とを含有する製剤が好ましい。また、滑沢剤、等張化剤、親水性担体、水分散性ポリマー、安定化剤等の補助剤を含有していてもよい。また、吸収を容易にし、生体内利用率を高めるためにβ−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリン誘導体(例、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)等を含有していてもよい。
【0185】
上記賦形剤としては、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられ、特に、ステアリン酸マグネシウムやコロイドシリカが好ましい。等張化剤としては、塩化ナトリウム、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、サッカロース、グリセリン、尿素等が挙げられ、特にマンニトールが好ましい。親水性担体としては、結晶セルロース、エチルセルロース、架橋性ポリビニルピロリドン、軽質無水珪酸、珪酸、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム等の膨潤性親水性担体が挙げられ、特に結晶セルロース(例、微結晶セルロース)が好ましい。水分散性ポリマーとしては、ガム(例、トラガカントガム、アカシアガム、グアーガム)、アルギン酸塩(例、アルギン酸ナトリウム)、セルロース誘導体(例、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ゼラチン、水溶性デンプン、ポリアクリル酸(例、カーボマー)、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリカーボフィル、アスコルビン酸、パルミチン酸塩等が挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が好ましい。特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。安定化剤としては、システイン、チオソルビトール、酒石酸、クエン酸、炭酸ナトリウム、アスコルビン酸、グリシン、亜硫酸ナトリウム等が挙げられ、特に、クエン酸やアスコルビン酸が好ましい。
【0186】
舌下錠、バッカルまたは口腔内速崩壊剤は、本発明化合物または併用薬物と賦形剤とを自体公知の方法により混合することにより製造することができる。さらに、所望により上記した滑沢剤、等張化剤、親水性担体、水分散性ポリマー、安定化剤、着色剤、甘味剤、防腐剤等の補助剤を混合してもよい。上記成分を同時に若しくは時間差をおいて混合した後、加圧打錠成形することにより舌下錠、バッカル錠または口腔内速崩壊錠が得られる。適度な硬度を得るため、打錠成形の過程の前後において必要に応じ水やアルコール等の溶媒を用いて加湿・湿潤させ、成形後、乾燥させて製造してもよい。
【0187】
粘膜貼付錠(フィルム)に成型する場合は、本発明化合物または併用薬物および上記した水分散性ポリマー(好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、賦形剤等を水等の溶媒に溶解させ、得られる溶液を流延させて(cast)フィルムとする。さらに、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、緩衝剤、甘味剤等の添加物を加えてもよい。フィルムに適度の弾性を与えるために、ポリエチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール類を含有させたり、口腔の粘膜ライニングへのフィルムの接着を高めるために、生物接着性ポリマー(例、ポリカーボフィル、カルボポール)を含有させてもよい。流延は、非接着性表面に溶液を注ぎ、ドクターブレード等の塗布用具で均一な厚さ(好ましくは10ないし1000ミクロン程度)にそれを広げ、次いで溶液を乾燥してフィルムを形成することにより達成される。このように形成されたフィルムは、室温若しくは加温下乾燥させ、所望の表面積に切断すればよい。
【0188】
好ましい口腔内速崩壊剤としては、本発明化合物または併用薬物と、本発明化合物または併用薬物とは不活性である水溶性若しくは水拡散性キャリヤーとの網状体からなる固体状の急速拡散投与剤が挙げられる。該網状体は、本発明化合物または併用薬物を適当な溶媒に溶解した溶液から構成されている固体状の該組成物から溶媒を昇華することによって得られる。
【0189】
該口腔内速崩壊剤の組成物中には、本発明化合物または併用薬物に加えて、マトリックス形成剤と二次成分とを含んでいるのが好ましい。
【0190】
該マトリックス形成剤としては、ゼラチン類、デキストリン類ならびに大豆、小麦ならびにオオバコ(psyllium)種子蛋白等の動物性蛋白類若しくは植物性蛋白類;アラビアゴム、グアーガム、寒天ならびにキサンタン等のゴム質物質;多糖類;アルギン酸類;カルボキシメチルセルロース類;カラゲナン類;デキストラン類;ペクチン類;ポリビニルピロリドン等の合成ポリマー類;ゼラチン−アラビアゴムコンプレックス等から誘導される物質が含まれる。さらに、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトースならびにトレハロース等の糖類;シクロデキストリン等の環状糖類;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウムならびにケイ酸アルミニウム等の無機塩類;グリシン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシンならびにL−フェニルアラニン等の炭素原子数が2から12までのアミノ酸等が含まれる。
【0191】
マトリックス形成剤は、その1種若しくはそれ以上を、固形化の前に、溶液または懸濁液中に導入することができる。かかるマトリックス形成剤は、界面活性剤に加えて存在していてもよく、また界面活性剤が排除されて存在していてもよい。マトリックス形成剤は、そのマトリックスを形成することに加えて、本発明化合物または併用薬物の拡散状態をその溶液または懸濁液中に維持する助けをすることができる。
【0192】
保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤、pH調整剤、香味料、甘味料若しくは食味マスキング剤等の二次成分を組成物中に含有していてよい。適当な着色剤としては、赤色、黒色ならびに黄色酸化鉄類およびエリス・アンド・エベラールド社のFD&Cブルー2号ならびにFD&Cレッド40号等のFD&C染料が挙げられる。適当な香味料には、ミント、ラズベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリーならびにグレープフレーバーおよびこれらを組合せたものが含まれる。適当なpH調整剤には、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸およびマレイン酸が含まれる。適当な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルフェームKならびにタウマチン等が含まれる。適当な食味マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質物質ならびにマイクロカプセル化アポモルフィンが含まれる。
【0193】
製剤は、通常約0.1ないし約50重量%、好ましくは約0.1ないし約30重量%の本発明化合物または併用薬物を含み、約1分ないし約60分の間、好ましくは約1分ないし約15分の間、より好ましくは約2分ないし約5分の間に(水に)本発明化合物または併用薬物の90%以上を溶解させることが可能な製剤(上記、舌下錠、バッカル等)や、口腔内に入れられて1ないし60秒以内に、好ましくは1ないし30秒以内に、さらに好ましくは1ないし10秒以内に崩壊する口腔内速崩壊剤が好ましい。
【0194】
上記賦形剤の製剤全体に対する含有量は、約10ないし約99重量%、好ましくは約30ないし約90重量%である。β−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリン誘導体の製剤全体に対する含有量は、0ないし約30重量%である。滑沢剤の製剤全体に対する含有量は、約0.01ないし約10重量%、好ましくは約1ないし約5重量%である。等張化剤の製剤全体に対する含有量は、約0.1ないし約90重量%、好ましくは、約10ないし約70重量%である。親水性担体の製剤全体に対する含有量は、約0.1ないし約50重量%、好ましくは約10ないし約30重量%である。水分散性ポリマーの製剤全体に対する含有量は、約0.1ないし約30重量%、好ましくは約10ないし約25重量%である。安定化剤の製剤全体に対する含有量は、約0.1ないし約10重量%、好ましくは約1ないし約5重量%である。上記製剤はさらに、着色剤、甘味剤、防腐剤等の添加剤を必要に応じて含有していてもよい。
【0195】
本発明の併用剤の投与量は、本発明化合物の種類、年齢、体重、症状、剤形、投与方法、投与期間等により異なるが、例えば、癌患者(成人、体重約60kg)一人あたり、通常、本発明化合物および併用薬物として、それぞれ1日約0.01ないし約1000mg/kg、好ましくは約0.01ないし約100mg/kg、より好ましくは約0.1ないし約100mg/kg、とりわけ約0.1ないし約50mg/kgを、なかでも約1.5ないし約30mg/kgを1日1回から数回に分けて静脈投与される。もちろん、前記したように投与量は種々の条件で変動するので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0196】
併用薬物は、副作用が問題とならない範囲でどのような量を設定することも可能である。併用薬物としての一日投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、感受性差、投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類等によって異なり、特に限定されないが、薬物の量として通常、たとえば経口投与で哺乳動物1kg体重あたり約0.001ないし2000mg、好ましくは約0.01ないし500mg、さらに好ましくは、約0.1ないし100mg程度であり、これを通常1日1ないし4回に分けて投与する。
【0197】
本発明の併用剤を投与するに際しては、本発明化合物と併用薬物とを同時期に投与してもよいが、併用薬物を先に投与した後、本発明化合物を投与してもよいし、本発明化合物を先に投与し、その後で併用薬物を投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は投与する有効成分、剤形、投与方法により異なるが、例えば、併用薬物を先に投与する場合、併用薬物を投与した後1分ないし3日以内、好ましくは10分ないし1日以内、より好ましくは15分ないし1時間以内に本発明化合物を投与する方法が挙げられる。本発明化合物を先に投与する場合、本発明化合物を投与した後、1分ないし1日以内、好ましくは10分ないし6時間以内、より好ましくは15分ないし1時間以内に併用薬物を投与する方法が挙げられる。
【0198】
好ましい投与方法としては、例えば、経口投与製剤に成型された併用薬物約0.001ないし200mg/kgを経口投与し、約15分後に経口投与製剤に成型された本発明化合物約0.005ないし100mg/kgを1日量として経口投与する。
【0199】
さらに、本発明化合物または本発明の併用剤は、非薬剤療法と併用して用いることができる。具体的には、本発明化合物または本発明の併用剤は、例えば、(1)手術、(2)アンジオテンシンII等を用いる昇圧化学療法、(3)遺伝子療法、(4)温熱療法、(5)凍結療法、(6)レーザー焼灼法、(7)放射線療法等の非薬剤療法と組み合わせることもできる。
【0200】
例えば、本発明化合物または本発明の併用剤を手術等の前または後に、あるいはこれら2、3種を組み合わせた治療前または後に使用することによって、耐性発現の阻止、無病期(Disease-Free Survival)の延長、癌転移あるいは再発の抑制、延命等の効果が得られる。
【0201】
また、本発明化合物または本発明の併用剤による治療と、支持療法〔(i)各種感染病の併発に対する抗生物質(例、パンスポリン等のβ−ラクタム系、クラリスロマイシン等のマクロライド系)の投与、(ii)栄養障害改善のための高カロリー輸液、アミノ酸製剤、総合ビタミン剤の投与、(iii)疼痛緩和のためのモルヒネ投与、(iv)悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、白血球減少、血小板減少、ヘモグロビン濃度低下、脱毛、肝障害、腎障害、DIC、発熱等のような副作用を改善する薬剤の投与および(v)癌の多剤耐性を抑制するための薬剤の投与等〕を組み合わせることもできる。
【0202】
前記の処置を施す前または施した後に、本発明化合物または本発明の併用剤を経口投与(徐放性を含む)、静脈内投与(bolus、infusion、包接体を含む)、皮下および筋注(bolus、infusion、徐放性を含む)、経皮、腫瘍内および近位投与によって投与するのが好ましい。
【0203】
手術等の前に本発明化合物または本発明の併用剤を投与する場合の時期としては、例えば、手術等の約30分ないし24時間前に1回投与することもできるし、あるいは手術等の約3ヶ月ないし6ヶ月前に1ないし3サイクルに分けて投与することもできる。このように、手術等の前に本発明化合物または本発明の併用剤を投与することにより、例えば、癌組織を縮小させることができるので、手術等がしやすくなる。
【0204】
手術等の後に本発明化合物または本発明の併用剤を投与する場合の時期としては、手術等の約30分ないし24時間後に、例えば、数週間ないし3ヶ月単位で反復投与することができる。このように、手術等の後に本発明化合物または本発明の併用剤を投与することにより、手術等の効果を高めることができる。