(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離装置、剥離システム、剥離方法および剥離プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
<1.剥離システム>
まず、第1の実施形態に係る剥離システムの構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図であり、
図2は、重合基板の模式側面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸の正方向を鉛直上向きとする。
【0012】
第1の実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(
図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。以下、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
【0013】
被処理基板Wは、たとえば、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄型化されている。一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、たとえば、化合物半導体ウェハまたはガラス基板などを用いることができる。
【0014】
剥離システム1は、
図1に示すように、搬入出ステーション10と、第1搬送領域20と、剥離処理ステーション30と、第2搬送領域40と、制御装置50とを備える。搬入出ステーション10および剥離処理ステーション30は第1搬送領域20を介してY軸方向に並べて配置される。また、搬入出ステーション10、第1搬送領域20および剥離処理ステーション30のX軸負方向側には、第2搬送領域40が配置される。
【0015】
剥離システム1では、搬入出ステーション10へ搬入された重合基板Tが第1搬送領域20を介して剥離処理ステーション30へ搬送され、剥離処理ステーション30において被処理基板Wと支持基板Sとに剥離される。剥離後の被処理基板Wは第2搬送領域40を介して後処理ステーションMへ搬送され、剥離後の支持基板Sは第1搬送領域20を介して搬入出ステーション10へ搬送される。なお、剥離システム1では、不良となった被処理基板Wを第1搬送領域20を介して搬入出ステーション10へ搬送することもできる。
【0016】
搬入出ステーション10では、複数の被処理基板Wが収容されるカセットCw、複数の支持基板Sが収容されるカセットCsおよび複数の重合基板Tが収容されるカセットCtが剥離システム1の外部との間で搬入出される。かかる搬入出ステーション10には、カセット載置台11が設けられており、このカセット載置台11に、カセットCw、Cs、Ctのそれぞれが載置される複数のカセット載置板12a〜12cが設けられる。
【0017】
第1搬送領域20では、搬入出ステーション10および剥離処理ステーション30間における被処理基板W、支持基板Sおよび重合基板Tの搬送が行われる。第1搬送領域20には、被処理基板W、支持基板Sおよび重合基板Tの搬送を行う第1搬送装置21が設置される。
【0018】
第1搬送装置21は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム22と、この搬送アーム22の先端に取り付けられたフォーク23とを備える搬送ロボットである。かかる第1搬送装置21は、フォーク23を用いて基板を保持するとともに、フォーク23によって保持された基板を搬送アーム22によって所望の場所まで搬送する。
【0019】
剥離処理ステーション30では、重合基板Tの剥離、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sの洗浄等が行われる。この剥離処理ステーション30には、剥離装置31、受渡室32、第1洗浄装置33および第2洗浄装置34が、X軸の正方向に、第1洗浄装置33、受渡室32、剥離装置31、第2洗浄装置34の順で配置される。
【0020】
剥離装置31では、第1搬送装置21によって搬送された重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。この剥離装置31の構成および剥離処理の具体的な内容については、
図3〜
図10を用いて後で詳述する。
【0021】
受渡室32には、剥離装置31において重合基板Tから剥離された被処理基板Wを第1洗浄装置33へ搬送する第2搬送装置35が設置される。第2搬送装置35は、ベルヌーイチャックを備え、かかるベルヌーイチャックを用いて被処理基板Wを非接触状態で第1洗浄装置33へ搬送する。
【0022】
ベルヌーイチャックは、吸着面に設けられた噴射口から被処理基板Wの板面へ向けて気体を噴射させ、吸着面と被処理基板Wの板面との間隔に応じて気体の流速が変化することに伴う負圧の変化を利用して被処理基板Wを非接触状態で吸着保持する保持部である。
【0023】
第1洗浄装置33は、第2搬送装置35によって搬送された被処理基板Wの洗浄を行う。第1洗浄装置33によって洗浄された被処理基板Wは、第2搬送領域40を介して後処理ステーションMへ搬送され、後処理ステーションMにおいて所定の後処理が施される。なお、所定の後処理とは、たとえば被処理基板Wをマウントする処理や、被処理基板Wをチップごとにダイシングする処理などである。
【0024】
第2洗浄装置34は、剥離装置31において重合基板Tから剥離された支持基板Sの洗浄を行う。第2洗浄装置34によって洗浄された支持基板Sは、第1搬送装置21によって搬入出ステーション10へ搬送される。
【0025】
第2搬送領域40は、剥離処理ステーション30と後処理ステーションMとの間に設けられる。第2搬送領域40には、Y軸方向に延在する搬送路41上を移動可能な第3搬送装置42が設置され、剥離処理ステーション30および後処理ステーションM間における被処理基板Wの搬送が行われる。第3搬送装置42は、第2搬送装置35と同様、ベルヌーイチャックを用いて被処理基板Wを非接触状態で搬送する。
【0026】
制御装置50は、剥離システム1の動作を制御する装置である。この制御装置50は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
【0027】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置50の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0028】
以下では、剥離装置31の具体的な構成および剥離装置31を用いて行われる重合基板Tの剥離動作について説明する。
【0029】
<2.剥離装置の構成>
まず、剥離装置31の構成について、
図3〜
図6を参照して説明する。
図3は、第1の実施形態に係る剥離装置31の構成を示す模式側面図であり、
図4は、第1の実施形態に係る第2保持部の構成を示す模式平面図であり、
図5は、
図4に示すH1部の模式拡大斜視図である。また、
図6は、第2保持部の主吸着部による吸着領域と副吸着部による吸着領域を示す図である。
【0030】
図3に示すように、剥離装置31は、内部を密閉可能な処理容器100を備える。処理容器100の側面には、搬入出口(図示せず)が形成され、この搬入出口を介して、重合基板Tの処理容器100への搬入や、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sの処理容器100からの搬出が行われる。搬入出口には、たとえば開閉シャッタが設けられ、この開閉シャッタによって処理容器100の内部が密閉可能である。
【0031】
剥離装置31は、第1保持部110と、第2保持部120と、移動機構130とを備える。これら第1保持部110、第2保持部120および移動機構130は、処理容器100の内部に配置される。第1保持部110は、第2保持部120の上方に設けられ、第2保持部120と対向する位置に配置される。また、第2保持部120は、移動機構130によって支持され、移動機構130によって鉛直方向に昇降する。
【0032】
第1保持部110は、重合基板Tを構成する被処理基板Wを吸着保持する保持部であり、たとえばポーラスチャックを用いることができる。かかる第1保持部110は、略円盤状の本体部111と、本体部111の下面に設けられる吸着面112とを備える。吸着面112は、重合基板Tと略同径であり、重合基板Tの上面、すなわち、被処理基板Wの非接合面Wnと当接する。この吸着面112は、たとえば炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される。
【0033】
本体部111の内部には、吸着面112を介して外部と連通する吸引空間113が形成される。吸引空間113は、吸気管114を介して真空ポンプなどの吸気装置115と接続される。第1保持部110は、吸気装置115の吸気によって発生する負圧を利用し、被処理基板Wの非接合面Wnを吸着面112に吸着させることによって、被処理基板Wを保持する。なお、第1保持部110として、ポーラスチャックを用いる例を示したが、これに限定されるものではない。たとえば、第1保持部110として、静電チャックを用いるようにしてもよい。
【0034】
第1保持部110の上方には、処理容器100の天井面に支持された支持部105が配置され、かかる支持部105によって第1保持部110の上面が支持される。なお、支持部105を設けずに、第1保持部110の上面を処理容器100の天井に直接当接させて支持させるようにしてもよい。
【0035】
第2保持部120は、重合基板Tを構成する支持基板Sを吸着保持する保持部である。この第2保持部120は、主吸着部121と、副吸着部122とに分割されて構成される。主吸着部121は、支持基板Sの非接合面Snのうち中央部を含む第1領域E1(
図6参照)を吸着して支持基板Sを保持する。一方、副吸着部122は、支持基板Sの非接合面Snのうち外周部の一部である第2領域E2(
図6参照)を吸着して支持基板Sを保持し、さらに、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに引っ張る。
【0036】
主吸着部121は、
図3および
図4に示すように、外周部の一部に切欠凹部147を有する円盤状の本体部141と、本体部141を移動機構130に連結する支柱部材143、144とを備える。支柱部材143は、本体部141の中央部を支持し、支柱部材143は、本体部141の外周部を支持する。ここでは、一つの支柱部材143と3つの支柱部材144によって本体部141を支持することとしたが、支柱部材143、144の数、形状および配置は
図3および
図4に例示したものに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0037】
本体部141は、たとえばアルミニウムなどの金属部材で構成される。この本体部141の内部には、
図3に示すように、吸着空間142と、吸着空間142へ上面から連通する複数の貫通孔149とが形成され、吸着空間142には、吸気管145を介して真空ポンプ等の吸気装置146が接続される。
【0038】
主吸着部121は、吸気装置146の吸気によって発生する負圧を利用し、本体部141の上面と対向する支持基板Sの第1領域E1を吸着させることによって、支持基板Sを保持する。なお、主吸着部121の本体部141として、たとえば、ポーラスチャックや静電チャックなどを用いることもできる。
【0039】
副吸着部122は、
図3および
図4に示すように、ゴムなどの弾性部材によって形成された本体部151と、基端が移動機構130に固定され、本体部151を移動可能に支持するシリンダ152とを備える。
【0040】
本体部151は、
図4に示すように、第1保持部110に形成された切欠凹部147内に配置される。また、本体部151は、支持基板Sの外縁に対応する部分が支持基板Sの外縁に沿って弧状で、かつ、支持基板Sの外縁に向けて漸次幅広に形成され、また、
図5に示すように、支持基板S側に開口を有する凹部状に形成される。この本体部151の凹部底面には、
図5に示すように、吸気口153が形成され、この吸気口153には吸気管154を介して真空ポンプなどの吸気装置155が接続される。
【0041】
副吸着部122は、吸気装置155の吸気によって発生する負圧を利用し、本体部151の上面と対向する支持基板Sの第2領域E2を吸着させることによって、支持基板Sを保持する。また、副吸着部122は、支持基板Sの第2領域E2を吸着した状態で、シリンダ152によって本体部151を鉛直下向きに移動させることで、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに移動させる。
【0042】
副吸着部122には、ロードセル(図示せず)が設けられており、副吸着部122はシリンダ152にかかる負荷をロードセルによって検出することができる。副吸着部122は、ロードセルによる検出結果に基づいて、支持基板Sの第2領域E2にかかる鉛直下向きの力を制御しながら、第2領域E2を引っ張ることができる。
【0043】
移動機構130は、第2保持部120を支持する支持部材131と、支持部材131の中央部下面を支持する駆動部132と、支持部材131の外周部下面を支持する複数の支柱部材133と、駆動部132および支柱部材133を支持する基台134とを備える。駆動部132は、たとえばボールねじ(図示せず)とこのボールねじを駆動するモータ(図示せず)とを有する駆動機構を備え、かかる駆動機構によって第2保持部120を鉛直方向に昇降させる。支柱部材133は、鉛直方向に伸縮自在に構成される。
【0044】
なお、第2保持部120には、複数の貫通孔(図示せず)が設けられ、これらの貫通孔から複数の昇降ピン(図示せず)が鉛直方向に昇降することで、重合基板Tまたは支持基板Sを下方から支持し昇降することができる。これにより、第1搬送装置21のフォーク23との間で基板の受渡を容易に行うこができる。
【0045】
また、移動機構130は、第2保持部120を水平方向に移動させるように構成してもよい。たとえば、ボールねじ(図示せず)とこのボールねじを駆動するモータ(図示せず)とを有する駆動機構を基台134に設け、駆動部132および支柱部材133を水平方向に移動させることで、第2保持部120を水平方向に移動させるようにしてもよい。
【0046】
<3.剥離システムの動作>
次に、剥離システム1の動作について説明する。剥離システム1の動作は、制御装置50によって制御され、剥離装置31による剥離動作を含む。
図7は、剥離装置31による剥離処理手順を示すフローチャートであり、
図8A〜
図8Cは、剥離システム1による剥離動作の説明図(その1)〜(その3)である。
【0047】
まず、第1搬送領域20に配置される第1搬送装置21(
図1参照)は、制御装置50の制御に基づき、重合基板Tを剥離装置31へ搬入する処理を行う(
図7のステップS101)。
【0048】
このステップS101の処理では、まず、第1搬送装置21は、搬入出ステーション10においてカセットCtに収容された重合基板Tをフォーク23を用いて取り出す。なお、重合基板Tは、被処理基板Wが上面に位置し、支持基板Sが下面に位置した状態で第1搬送装置21のフォーク23に保持される。そして、第1搬送装置21は、カセットCtから取り出した重合基板Tを剥離処理ステーション30の剥離装置31内へ搬入する。
【0049】
次に、剥離装置31は、制御装置50の制御に基づき、重合基板Tを第1保持部110および第2保持部120で吸着保持する処理を行う(
図7のステップS102)。
【0050】
このステップS102の処理では、まず、剥離装置31の第2保持部120は、第1搬送装置21によって搬入された重合基板Tを吸気装置146、155による吸気動作によって吸着保持する。すなわち、剥離装置31は、第2保持部120の主吸着部121および副吸着部122によって重合基板Tの下面を吸着して重合基板Tを保持する。
【0051】
次に、剥離装置31は、移動機構130によって第2保持部120を上昇させて重合基板Tの上面を第1保持部110の吸着面112に当接させる。第1保持部110は、吸気装置115による吸気動作によって重合基板Tの上面を吸着面112に吸着させる。
【0052】
これにより、第1保持部110および第2保持部120によって重合基板Tの上下面がそれぞれ吸着された状態になる。すなわち、第1保持部110によって被処理基板Wが吸着保持され、第2保持部120によって支持基板Sが吸着保持された状態になる。かかる保持状態においては、第1保持部110によって被処理基板Wの非接合面Wnのほぼ全面が吸着された状態であり、また、第2保持部120によって、支持基板Sの非接合面Snのほぼ全面が吸着された状態である。
【0053】
なお、重合基板Tを第1保持部110および第2保持部120で吸着保持する処理は、上記方法に限られるものではない。たとえば、第1搬送装置21によって搬入された重合基板Tの上面を第1保持部110によって吸着保持した後に、重合基板Tの下面を第2保持部120によって吸着保持することもできる。
【0054】
次に、剥離装置31は、制御装置50の制御に基づき、第2保持部120で保持している支持基板Sの非接合面Snを被処理基板Wから離す方向へ引っ張る処理を行う(
図7のステップS103)。
【0055】
このステップS103の処理では、移動機構130は、
図8Aに示すように、第2保持部120を鉛直下向きに移動させる。移動機構130には内部にロードセル(図示せず)が設けられており、移動機構130は、第2保持部120に所定値以上の負荷がかかったことをロードセルによって検出した場合に、第2保持部120の鉛直方向への移動を停止する。これにより、支持基板Sの下面には第2保持部120によって所定の引っ張り力が加えられた状態になる。
【0056】
なお、必ずしもロードセルを用いる必要はなく、たとえば、移動機構130によって第2保持部120が鉛直下向きに所定距離だけ移動した場合に、第2保持部120の鉛直下向きへの移動を停止するようにしてもよい。
【0057】
次に、剥離装置31は、支持基板Sの第1領域E1および第2領域E2を引っ張っている状態で、制御装置50の制御に基づき、支持基板Sの第2領域E2を被処理基板Wから離す方向へさらに強く引っ張る処理を行う(
図7のステップS104)。
【0058】
ステップS104の処理では、第2保持部120の副吸着部122は、
図8Bに示すように、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに移動させる。
【0059】
具体的には、副吸着部122は、シリンダ152の動作によって本体部151を鉛直下向きに移動させる。これにより、支持基板Sの第2領域E2が支持基板Sの第1領域E1に比べてさらに強い力で鉛直下向きに引っ張られるため、支持基板Sの第2領域E2の部分が被処理基板Wから剥離する。
【0060】
また、支持基板Sの非接合面Snのうち第1領域E1は鉛直下向きに引っ張る力が働いているため、支持基板Sの第2領域E2が被処理基板Wから剥離することによって、
図8Cに示すように、支持基板Sの接合面Sj全体が被処理基板Wの接合面Wjから剥離する。
【0061】
被処理基板Wの接合面Wjには電子回路が形成されているため、被処理基板Wおよび支持基板Sを一度に剥離しようとすると、接合面Wj、Sjに対して大きな負荷がかかり、接合面Wj上の電子回路が損傷するおそれがある。
【0062】
これに対し、第1の実施形態に係る剥離システム1では、重合基板Tを全体的に引っ張った状態で重合基板Tの外周部をさらに引っ張ることで、重合基板Tの外周部が剥離し、その後、この剥離部分から連続的に重合基板Tが剥離される。これにより、接合面Wj、Sjに対して大きな負荷がかかることがなく、剥離動作中における電子回路の損傷を抑えることができる。
【0063】
また、剥離装置31では、副吸着部122の本体部151がゴムなどの弾性部材で構成されているため、支持基板Sの外周部が被処理基板Wから剥離する場合に、支持基板Sの外周部へ急激に力が加わることを抑制することができる。したがって、これによっても、接合面Wj、Sjにかかる負荷を抑えることができ、剥離動作中における電子回路の損傷を抑えることができる。
【0064】
なお、上述においては、ステップS102の処理において、主吸着部121および副吸着部122によって重合基板Tの吸着保持を開始するものとして説明した。しかし、ステップS102の処理において、副吸着部122による吸着保持を行わず、ステップS104の処理において、副吸着部122による吸着保持を開始し、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに移動させることもできる。
【0065】
次に、第1搬送装置21および第2搬送装置35は、制御装置50の制御に基づき、被処理基板Wおよび支持基板Sを剥離装置31から搬出する処理を行う。(
図7のステップS105)。この処理において、第1搬送装置21は、剥離後の支持基板Sを剥離装置31から搬出し、第2洗浄装置34へ搬送する処理を行う。また、第2搬送装置35は、剥離後の被処理基板Wを剥離装置31から搬出し、第1洗浄装置33へ搬送する処理を行う。
【0066】
ここで、上述したステップS104の処理についてさらに具体的に説明する。剥離装置31は、ステップS104の処理において、たとえば、重合基板Tの外周部を一度に引っ張る「継続モード」と、重合基板Tの外周部を断続的に引っ張る「繰り返しモード」とを実行することができる。剥離装置31は、制御装置50の制御に基づき、継続モードによる処理と繰り返しモードによる処理とを選択的に実行する。
【0067】
継続モードによる処理の場合、剥離装置31は、重合基板Tの外周部が剥離するまで、シリンダ152を連続的に動作させて本体部151を連続的に鉛直下向きに移動させる。これにより、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに引っ張る力が次第に大きくなり、重合基板Tの外周部が剥離する。この継続モードでは、本体部151を連続的に鉛直下向きに移動させるため、剥離処理を迅速に行うことができる。
【0068】
一方、繰り返しモードによる処理の場合、剥離装置31は、重合基板Tの外周部が剥離するまで、シリンダ152を繰り返し動作させて本体部151を鉛直下向きおよび鉛直上向きに繰り返し移動させる。かかる繰り返し動作によって重合基板Tの外周部における接合力が次第に弱くなり、最終的に重合基板Tの外周部が剥離する。この繰り返しモードでは、継続モードによる処理に比べ、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに引っ張る力を抑えることができるため、接合面Wj、Sjにかかる負荷をより抑えることができる。
【0069】
また、繰り返しモードによる処理の場合、剥離装置31は、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに引っ張る力を、一定に保つこともできるが、繰り返し回数に応じて段階的に強くすることもできる。また、剥離装置31は、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きへ引っ張る力を強弱の繰り返しで変化させることもできる。
【0070】
また、上述においては、剥離装置31は、重合基板Tを全体的に引っ張った状態で重合基板Tの外周部をさらに引っ張ることで、重合基板Tを剥離するものとして説明した。しかし、剥離装置31による剥離は、これに限定されるものではなく、制御装置50の制御に基づき、種々の剥離動作が可能である。
【0071】
たとえば、剥離装置31は、ステップS102の状態からステップS104の処理を行い、その後、ステップS103の処理を行うこともできる。これにより、重合基板Tの外周部が剥離した後で、重合基板Tの第1領域E1を引っ張ることになるため、重合基板Tの第1領域E1にかかる負荷を抑えることができる。
【0072】
また、剥離装置31は、ステップS102の状態から、重合基板T全体が剥離するまで、ステップS103の処理とステップS104の処理を順に繰り返したり、または、ステップS104の処理とステップS103の処理を順に繰り返したりすることもできる。これにより、支持基板Sの第2領域E2を鉛直下向きに引っ張る力を抑えることができる。
【0073】
また、上述においては、副吸着部122の本体部151は、シリンダ152によって鉛直方向に移動する例を説明したが、シリンダ152による本体部151の移動方向はこれに限定されるものではない。
【0074】
たとえば、シリンダ152による本体部151の移動方向は、
図9に示すような移動方向でもよい。
図9は、副吸着部におけるシリンダ152の他の構成を示す図である。
図9に示すようにシリンダ152による本体部151の移動方向を、鉛直下向きに対して斜め方向であって、かつ、支持基板Sの中心寄りとしてもよい。支持基板Sの中心寄りに支持基板Sの外周部を引っ張ることにより、支持基板Sの外縁ほど強く引っ張ることができ、重合基板Tの外周部の剥離を促進することができる。
【0075】
また、上述においては、ゴムなどの弾性部材によって副吸着部122の本体部151が形成される例を説明したが、たとえば、アルミニウムなどの金属部材によって副吸着部122の本体部151を形成してもよい。また、本体部151の凹部上方に、炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックなどの多孔質部材を配置してもよい。
【0076】
また、副吸着部122の本体部151として、
図4および
図5に示す形状を一例として説明したが、副吸着部122の本体部151の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、
図10に示すような本体部151Aを副吸着部122に備えるようにしてもよい。
図10は、副吸着部122における本体部の他の構成を示す図である。
【0077】
図10に示す本体部151Aは、略U状に形成された切欠凹部147に対応する形状を有する。この本体部151Aでは、
図4に示す本体部151と同様に、支持基板Sの外縁に対応する部分が支持基板Sの外縁に沿って弧状で、かつ、支持基板Sの外縁に向けて漸次幅広に形成される。
【0078】
ところで、上述した第1の実施形態では、剥離装置の構成および動作の一例を例示した。しかしながら、剥離装置の構成および動作には種々のバリエーションが存在する。そこで、以下に示す各実施形態では、その他のバリエーションについて示すこととする。
【0079】
また、以下に示す各実施形態においては、上述した第1の実施形態の構成要素に対応する構成要素には同一の符合を付し、第1の実施形態と重複する説明については適宜、省略する。
【0080】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の剥離装置31では、支持基板Sの外周を吸着し引っ張る副吸着部を一つの副吸着部122とする例を説明したが、副吸着部を複数設けることもできる。以下では、副吸着部を複数設けて重合基板Tの剥離を行う例について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図であり、
図12は、第2の実施形態に係る第2保持部の構成を示す模式平面図である。
【0081】
第2の実施形態に係る剥離装置31Aは、
図11および
図12に示すように、第2保持部220において、周方向に所定間隔で配置される複数の副吸着部222a〜222d(以下、副吸着部222と総称する場合がある)を備える。剥離装置31Aは、これらの副吸着部222a〜222dを動作させることによって、重合基板Tの剥離動作を行う。
【0082】
各副吸着部222は、第1の実施形態に係る副吸着部122と同様の構成であり、それぞれ本体部251と、シリンダ252とを備える。また、各副吸着部222は、
図12に示すように、主吸着部221の本体部141に形成された切欠凹部147内にそれぞれ配置される。なお、各副吸着部222には、第1の実施形態に係る副吸着部122と同様に、それぞれ吸気装置に接続される吸気口(図示せず)が設けられる。
【0083】
主吸着部221は、支柱部材143、144に支持される。また、副吸着部222aと副吸着部222cとは、第2保持部220の中心に対して点対称の位置にあり、副吸着部222bと副吸着部222dとは、第2保持部220の中心に対して点対称の位置にある。
【0084】
剥離装置31Aでは、各副吸着部222を独立して動作させることができるようにそれぞれ別個のシリンダ252によって本体部251を移動可能としている。したがって、剥離装置31Aは、複数の副吸着部222を同時に動作させることもでき、また、各副吸着部222を個別に動作させることもできる。
【0085】
ここで、剥離装置31Aによる剥離動作の一例について説明する。剥離装置31Aは、継続モードによる処理の場合、たとえば、以下に示す第1〜第3継続モードから選択された処理を実行する。
【0086】
第1継続モードは、複数の副吸着部222によって同時に支持基板Sの外周部を引っ張る処理モードである。この第1継続モードでは、支持基板Sの外周部を複数箇所で同時に引っ張ることができるため、一箇所で支持基板Sの外周部を引っ張る場合に比べ、支持基板Sの外周部の剥離をより迅速に行うことができる。
【0087】
第2継続モードは、複数の副吸着部222の引っ張り動作を一つずつ行う処理モードである。この第2継続モードでは、一つの副吸着部222によって重合基板Tの剥離ができない場合、他の一つの副吸着部222を動作させるものであり、支持基板Sの外周部の複数箇所が同時に引っ張られない。そのため、接合面Wj、Sjにかかる負荷を抑えることができる。なお、複数の副吸着部222を複数のグループに分け、グループごとに副吸着部222の引っ張り動作を行うようにしてもよい。
【0088】
第3継続モードは、支持基板Sの外周部が剥離するまで、動作させる副吸着部222の数を順次増やす動作を行う処理モードである。この第3継続モードでは、支持基板Sの外周部が剥離しない場合に、動作させる副吸着部222の数を増やすため、剥離しやすい重合基板Tに対しては接合面Wj、Sjにかかる負荷を抑えることができる。
【0089】
また、剥離装置31Aは、繰り返しモードによる処理の場合、たとえば、以下に示す第1〜第3繰り返しモードから選択された処理を実行する。第1〜第3繰り返しモードは、第1〜第3継続モードにそれぞれ対応する動作を行う処理モードである。
【0090】
第1繰り返しモードでは、剥離装置31Aは、複数の副吸着部222によって同時に支持基板Sの外周部を引っ張る処理を、支持基板Sの外周部が剥離するまで繰り返し行う。
【0091】
第2繰り返しモードでは、剥離装置31Aは、複数の副吸着部222の引っ張り動作を一つずつまたはグループごとに行う処理を支持基板Sの外周部が剥離するまで繰り返し行う。たとえば、剥離装置31Aは、副吸着部222a、222cの組と、副吸着部222b、222dの組とで交互に支持基板Sの外周部を引っ張る処理を行う。
【0092】
また、第3繰り返しモードでは、剥離装置31Aは、動作させる副吸着部222の数を順次増やす動作を繰り返し行う。
【0093】
このように、第2の実施形態に係る剥離装置31Aでは、複数の副吸着部222を備え、これら複数の副吸着部222によって剥離動作を行うため、重合基板Tの剥離動作を容易に行うことができる。なお、上述においては、剥離装置31Aにおいて、副吸着部222の動作モードを選択することができるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、副吸着部222の動作モードは一つであってもよい。
【0094】
また、上述においては、各副吸着部222を独立して動作させる例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、複数の本体部251を一つのシリンダ252で移動させることで、複数の副吸着部222を一体的に移動させるようにしてもよい。
【0095】
また、上述においては、第2保持部220において、4つの副吸着部222を周回りに所定間隔を空けて配置する例を説明したが、副吸着部222の数や配置はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、副吸着部222の本体部251の形状についても第1の実施形態と同様に種々の形状を採用することができる。また、本体部251の移動方向についても第1の実施形態と同様に鉛直方向への移動に限定されるものではなく、たとえば、鉛直下向きに対して斜め方向であって、かつ、支持基板Sの中心寄りとしてもよい(
図9参照)。
【0096】
(第3の実施形態)
上述した剥離装置31、31Aでは、副吸着部122、222によって支持基板Sの外周の一部を吸着し引っ張る例を説明したが、支持基板Sの外周の一部ではなく全体を副吸着部によって吸着し引っ張ることもできる。以下では、副吸着部を円環状に形成し、支持基板Sの外周全体を吸着し引っ張る例について説明する。
図13は、第3の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図であり、
図14は、第3の実施形態に係る第2保持部の構成を示す模式平面図であり、
図15は、第3の実施形態に係る剥離装置による剥離動作の説明図である。
【0097】
図13および
図14に示すように、第3の実施形態に係る剥離装置31Bは、第2保持部320において、支持基板Sの中央部を吸着保持する主吸着部321と、支持基板Sの外周部を吸着移動する円環状の副吸着部322とを備える。主吸着部321は、主吸着部121、221(
図3および
図4参照)と同様に、本体部141と、本体部141を支持する支柱部材143、144とを備え、支持基板Sの中央部を吸着保持するように本体部141が略円盤状に形成される。
【0098】
副吸着部322は、支持基板Sの外周部に対向する円環状の本体部351と、本体部351を移動させる複数のシリンダ352とを備える。各シリンダ352は互いに独立して動作することができ、これにより、本体部351の上面を水平に保ったまま鉛直下向きに移動させたり、本体部351の上面を傾斜させて鉛直下向きに移動させたりすることができる。
【0099】
また、副吸着部322には、第1の実施形態に係る副吸着部122と同様に、吸気装置に接続される吸気口(図示せず)が設けられる。なお、副吸着部322の本体部351は、4つのシリンダ352で支持されるものとして説明したが、シリンダ352の数、形状および配置は
図13および
図14に例示したものに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0100】
また、第3の実施形態に係る剥離装置31Bでは、支持部105と第1保持部110との間に複数の弾性部材307が配置される。これら複数の弾性部材307は、たとえば、ばね部材によって形成され、第1保持部110の外周部に周回りに所定間隔を空けて配置される。
【0101】
このように構成された剥離装置31Bにおいて、たとえば、本体部351の上面を傾斜させるように各シリンダ352の鉛直下向きへの移動量を異ならせたとする。この場合、
図15に示すように、鉛直下向きへの移動量が多いシリンダ352側に第1保持部110の吸着面112が傾斜する。
【0102】
したがって、副吸着部322によって支持基板Sの外周部にかかる力の一部を、弾性部材307を含む第1保持部110で吸収することができ、これにより、支持基板Sの外周部へ急激に力が加わることを抑制することができる。なお、本体部351の上面を水平に保ったまま本体部351を鉛直下向きに移動させる場合でも同様に、支持基板Sの外周部にかかる力の一部を、弾性部材307を含む第1保持部110で吸収することができる。
【0103】
このように、第3の実施形態に係る剥離装置31Bでは、副吸着部322の形状を円環状としており、支持基板Sの外周全体を引っ張ることができるため、重合基板Tの剥離動作を容易に行うことができる。また、剥離装置31Bでは、支持部105と第1保持部110との間に複数の弾性部材307が配置されるため、支持基板Sの外周部へ急激に力が加わることを抑制することができる。
【0104】
(第4の実施形態)
上述した剥離装置において、さらに重合基板Tの剥離を促すために、たとえば刃物等の鋭利部材を用いて重合基板Tの側面に切り込みを入れてもよい。以下では、鋭利部材を用いて重合基板Tの側面に切り込みを入れる場合の例について説明する。ここでは、第1の実施形態の剥離装置31に対して重合基板Tの側面に切り込みを入れる構成を追加する例を説明するが、第2および第3の実施形態の剥離装置31A、31Bに対して重合基板Tの側面に切り込みを入れる構成を追加することもできる。
【0105】
図16は、第4の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
図16に示すように、第4の実施形態に係る剥離装置31Cは、第1の実施形態の剥離装置31の構成に加え、切込部170と、撮像部180とをさらに備える。この切込部170は、副吸着部122に対応する位置に設けられる。
【0106】
切込部170は、Y軸方向に延びるレール171と、このレール171に沿って移動する移動部172と、移動部172の重合基板Tと対向する側の端面に設けられる鋭利部材173と、レール171を鉛直方向に昇降させる昇降部174とを備える。
【0107】
鋭利部材173は、たとえば刃物であり、先端が重合基板Tへ向けて突出するように移動部172に設けられる。刃物としては、たとえば、カミソリ刃やローラ刃あるいは超音波カッター等を用いることができる。なお、セラミック樹脂系の刃物あるいはフッ素コーティングされた刃物を用いることで、重合基板Tに対して切り込みを入れた際のパーティクルの発生を抑えることができる。
【0108】
撮像部180は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)カメラであり、切込部170が設けられる側の重合基板Tの側面を撮像する。撮像部180の撮像データは、制御装置50(
図1参照)へ出力される。
【0109】
制御装置50は、撮像部180から入力された撮像データに基づき昇降部174を駆動させることで、接着剤Gの高さ範囲に含まれるように鋭利部材173を配置させる。その後、制御装置50は、鋭利部材173を重合基板Tにおける接着剤Gへ挿入させる。
【0110】
ここで、制御装置50の制御に基づいて剥離装置31Cが行う鋭利部材173の挿入動作について
図17を参照して具体的に説明する。
図17は、鋭利部材173の挿入動作の説明図である。なお、
図17では、理解を容易にするために鋭利部材173の先端の形状を山型としたが、鋭利部材173の形状は図示のものに限られない。
【0111】
剥離装置31Cは、移動部172を駆動させることによって、鋭利部材173の先端部が重合基板Tの側面に当接する位置まで鋭利部材173を移動させる。その後、剥離装置31Cは、移動部172を重合基板T側に向かってさらに移動させる。これにより、鋭利部材173は、重合基板Tの中心Pへ向かう方向D1に沿って、重合基板Tにおける接着剤Gへ挿入される。
【0112】
このように、鋭利部材173が重合基板Tの側面に当接する位置で移動部172を一端停止させた後、移動部172を再び移動させて鋭利部材173を重合基板Tへ挿入させることで、鋭利部材173の挿入の際に重合基板Tへ伝わる衝撃を緩和させることができる。
【0113】
また、この切込部170は、副吸着部122に対応する位置に設けられる。すなわち、支持基板Sの第2領域E2と被処理基板Wとの間の接合部分に鋭利部材173の挿入が行われる。そのため、副吸着部122によって剥離する位置に切り込みを入れることができ、重合基板Tの剥離処理をより確実に行うことができる。
【0114】
なお、剥離装置31Cは、鋭利部材173を重合基板Tへ挿入させた後、重合基板Tの周方向D2に沿って鋭利部材173を移動させることもできる。このようにすることで、より大きな切り込みを重合基板Tに対して入れることができる。かかる場合、切込部170は、移動部172において鋭利部材173を重合基板Tの周方向D2に沿って移動させる構成をさらに備えていればよい。
【0115】
また、鋭利部材173による切り込み処理は、重合基板Tが、第1保持部110と第2保持部120によって被処理基板Wと支持基板Sとに分離されるまでの間のいずれのタイミングで行ってもよい。たとえば、剥離装置31Cは、第1保持部110と第2保持部120によって重合基板Tを吸着保持した後、副吸着部122によって支持基板Sの第2領域E2を引っ張る前に切り込み処理を行ってもよいし、副吸着部122によって支持基板Sの第2領域E2を引っ張りながら切り込み処理を行ってもよい。また、剥離装置31Cは、副吸着部122の吸着移動による剥離動作の結果、重合基板Tが剥離できなかった場合にのみ切り込み処理を行ってもよい。
【0116】
上述してきたように、第4の実施形態に係る剥離装置31Cは、鋭利部材173による切り込み処理を行うことで、重合基板Tの剥離処理をより確実に行うことができる。なお、ここでは、鋭利部材173がカッター等の刃物である場合の例について説明したが、鋭利部材は、必ずしも刃物であることを要しない。たとえば、鋭利部材は、皮下針等の管状の針体であってもよい。また、鋭利部材は、ワイヤーであってもよい。
【0117】
(第5の実施形態)
また、上述してきた各実施形態では、重合基板Tを常温で剥離する場合の例について説明した。しかし、剥離装置は、重合基板Tにおける被処理基板Wおよび支持基板Sのうちの一方を加熱または冷却することによって生じる温度差を利用して重合基板Tの剥離を促進させることもできる。
【0118】
ここで、重合基板Tの支持基板S側を加熱する場合の例について
図18を参照して説明する。
図18は、第5の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図であり、第2保持部の一部を模式的に断面図として表している。なお、ここでは、第1の実施形態の剥離装置31に対して重合基板Tの支持基板S側を加熱する構成を追加する例を説明するが、第2〜第4の実施形態の剥離装置31A〜31Cに対して重合基板Tの支持基板S側を加熱する構成を追加することもできる。
【0119】
図18に示すように、第5の実施形態に係る剥離装置31Dの第2保持部420は、主吸着部421の本体部141の内部に加熱機構148を備える。加熱機構148は、たとえば、ヒーターであり、本体部141に吸着保持される支持基板Sを所定の温度に加熱する。なお、重合基板Tの被処理基板W側を吸着保持する第1保持部110は、加熱機構を備えないものとする。
【0120】
第2保持部420によって重合基板Tが吸着保持されると、重合基板Tの支持基板S側が加熱機構148によって加熱される。これにより、支持基板Sが被処理基板Wに対して相対的に膨張し、支持基板Sと被処理基板Wとの間にずれが生じるため、重合基板Tの剥離を促進させることができる。また、支持基板Sを加熱することで支持基板S側の接着剤Gが軟化するため、これによっても重合基板Tの剥離を促進させることができる。
【0121】
また、重合基板Tに温度差を与えるためには、支持基板Sの加熱を急激に行うことが好ましい。そこで、第2保持部420では、重合基板Tの剥離を開始する直前に加熱機構148を作動させ、支持基板Sを瞬間的に加熱することとしてもよい。
【0122】
また、第1保持部110には、たとえばヒートポンプやペルチェ素子等を用いた冷却機構を設けてもよい。これにより、支持基板Sの被処理基板Wに対する相対的な膨張をより促進することができ、また、熱酸化に対する抑制効果を高めることもできる。
【0123】
また、第2保持部420に加熱機構を設けず、第1保持部110に加熱機構または冷却機構を設け、第1保持部110に対して重合基板Tを吸着保持させた後、重合基板Tの被処理基板W側を瞬間的に加熱または冷却してもよい。また、第2保持部420に加熱機構を設ける場合、主吸着部421に加熱機構148を設けることに加え、さらに、副吸着部122に加熱機構を設けるようにしてもよい。
【0124】
(第6の実施形態)
ところで、剥離システムの構成は、
図1に示した構成に限定されず、種々の構成を取り得る。そこで、剥離システムの他の構成について
図19を参照して説明する。
図19は、第6の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。
【0125】
図19に示すように、第6の実施形態に係る剥離システム1Aは、検査装置60をさらに備える。また、第6の実施形態に係る剥離システム1Aは、
図1に示す第2搬送領域40に代えて、第2搬送領域40Aを備える。第2搬送領域40Aには、X軸方向に延在する搬送路41A上を移動可能な第3搬送装置42Aが設置される。なお、第3搬送装置42Aは、
図1に示す第3搬送装置42と同様、たとえばベルヌーイチャックを用いて被処理基板Wを非接触状態で搬送する。
【0126】
検査装置60は、被処理基板Wに対し、接合面Wjに形成された電子回路に損傷がないか、あるいは、接着剤Gの残渣がないか等の表面検査を行う装置である。
【0127】
剥離システム1Aでは、第1洗浄装置33によって洗浄された被処理基板Wが第3搬送装置42Aによって第1洗浄装置33から取り出され、検査装置60へ搬送される。検査装置60へ搬送された被処理基板Wは、検査装置60によって表面検査が行われる。そして、電子回路の損傷や接着剤Gの残渣等の異常が発見された被処理基板Wは、第3搬送装置42Aによって第1洗浄装置33へ戻され、第1搬送装置21によって第1洗浄装置33から搬入出ステーション10へ搬送される。
【0128】
一方、検査装置60によって異常が発見されなかった被処理基板Wは、第3搬送装置42Aによって後処理ステーションMへ搬送され、後処理ステーションMによってマウントやダイシングといった後処理が施される。このように、剥離システムは、剥離後の被処理基板Wに対して表面検査を行う検査装置をさらに備えていてもよい。
【0129】
このように、第6の実施形態に係る剥離システム1Aでは、第1洗浄装置33と後処理ステーションMとの間に検査装置60が配置されることから、異常が発見されなかった被処理基板Wを後処理ステーションMへ搬送することができる。これにより、スループットを向上させることができる。
【0130】
(その他の実施形態)
上述してきた各実施形態では、剥離対象となる重合基板が、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gによって接合された重合基板Tである場合の例について説明した。しかし、剥離装置の剥離対象となる重合基板は、この重合基板Tに限定されない。たとえば、上述してきた各実施形態の剥離装置では、SOI(Silicon On Insulator)基板を生成するために、絶縁膜が形成されたドナー基板と被処理基板とが張り合わされた重合基板を剥離対象とすることも可能である。
【0131】
ここで、SOI基板の製造方法について
図20Aおよび
図20Bを参照して説明する。
図20Aおよび
図20Bは、SOI基板の製造工程を示す模式図である。
図20Aに示すように、SOIを形成するための重合基板TAは、ドナー基板Dとハンドル基板Hとを接合することによって形成される。ドナー基板Dは、表面に絶縁膜5が形成されるとともに、表面近傍の所定深さに水素イオン注入層6が形成された基板である。また、ハンドル基板Hとしては、たとえばシリコンウェハ、ガラス基板、サファイア基板等を用いることができる。
【0132】
上述してきた各実施形態の剥離装置では、たとえば、第1保持部でハンドル基板Hを保持し、第2保持部でドナー基板Dを保持した状態で、重合基板TAの外周部を引っ張ることで、ドナー基板Dに形成された水素イオン注入層6に対して機械的衝撃を与える。
【0133】
これにより、
図20Bに示すように、水素イオン注入層6内のシリコン−シリコン結合が切断され、ドナー基板Dからシリコン層7が剥離する。その結果、ハンドル基板Hの上面に絶縁膜5とシリコン層7とが転写され、SOI基板WAが形成される。
【0134】
なお、第1保持部でハンドル基板Hを保持し、第2保持部でドナー基板Dを保持することが好適であるが、第1保持部でドナー基板Dを保持し、第2保持部でハンドル基板Hを保持してもよい。
【0135】
また、上述した実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接着剤Gは、接合面Wj、Sjの全面に塗布されてもよいし、接合面Wj、Sjの一部にのみ塗布されてもよい。接合面Wj、Sjの一部にのみ接着剤Gを塗布する場合には、被処理基板Wおよび支持基板Sの外周部にのみ接着剤Gを塗布することが好ましい。また、接合面Wj、Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
【0136】
また、上述した実施形態では、第1保持部で被処理基板Wを保持し、第2保持部で支持基板Sを保持するものとして説明したが、第1保持部で支持基板Sを保持し、第2保持部で被処理基板Wを保持してもよい。なお、被処理基板Wが薄型化されている場合、第1保持部で被処理基板Wを保持し、第2保持部で支持基板Sを保持することが好適である。
【0137】
また、上述した実施形態では、第2保持部を鉛直下向きへ移動させることで、支持基板Sの非接合面Snを第2保持部で引っ張る例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、第2保持部に対して第1保持部を鉛直上向きへ移動させることで、結果的に支持基板Sの非接合面Snを第2保持部で引っ張るようにしてもよい。
【0138】
また、上述した実施形態では、重合基板Tの板面が水平方向に延在する向きで重合基板Tの剥離処理を行う例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、重合基板Tの板面が鉛直方向に延在する向きで重合基板Tの剥離処理を行ってもよく、また、重合基板Tの板面が水平方向や鉛直方向以外の向きで重合基板Tの剥離処理を行ってもよい。
【0139】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。