特許第5722827号(P5722827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722827光加入者線終端装置、光ネットワーク終端装置、及び光ネットワークシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722827
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】光加入者線終端装置、光ネットワーク終端装置、及び光ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-110551(P2012-110551)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-239823(P2013-239823A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】田所 将志
(72)【発明者】
【氏名】西原 晋
(72)【発明者】
【氏名】氏川 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】野村 紘子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 直人
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮吾
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−172239(JP,A)
【文献】 Konstantin Miller, et al.,Network Coding in Passive Optical Networks,Network Coding (NetCod), 2010 IEEE International Symposium on ,IEEE,2010年 6月,pp.1-6
【文献】 Martin Belzner, et al.,Network coding in passive optical networks,Optical Communication, 2009. ECOC '09. 35th European Conference on,2009年 9月,pp.1-2
【文献】 Dongseok Shin,et al.,Broadband PON-wireless convergence network based on Network Coding,Advanced Communication Technology (ICACT), 2010 The 12th International Conference on,2010年 2月,pp.169-173
【文献】 Kerim Fouli,et al.,Network coding in next-generation passive optical networks,Communications Magazine, IEEE,2011年 9月,pp.38-46
【文献】 Xin Liu,et al.,Network-Coding-Based Energy Management for Next-Generation Passive Optical Networks,Lightwave Technology, Journal of,2012年 1月,pp.864-875
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光加入者線終端装置(OLT)であって、
前記ONUからの帯域要求に基づいて前記ONU毎に送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当部と、
前記ONU間で送受信されるデータに対してネットワークコーディング(NC)処理を施すNC部と、
を備え、
前記帯域割当部は、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの送信順番を連続させることを特徴とするOLT。
【請求項2】
前記ONUの数をn(n:自然数)、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの数をr(r:自然数、ただしNC処理対象に属する前記ONUが存在しない場合はr=1)としたとき、
前記帯域割当部は、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUに対して、送信順番s(s:自然数)をs≦nの範囲で連続させることを特徴とする請求項1に記載のOLT。
【請求項3】
前記帯域割当部は、優先度m(m:自然数であり、r≦m≦n)を有しており、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの送信順番sをs≦mの範囲で連続させることを特徴とする請求項2に記載のOLT。
【請求項4】
前記帯域割当部は、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの送信順番sをa(a:自然数であり、a≦(n−r+1)又はa≦(m−r+1))からa+r−1までの連続したr個の自然数の範囲でランダムに割り当てることを特徴とする請求項2又は3に記載のOLT。
【請求項5】
前記帯域割当部は、mをn及びrの少なくとも1つに応じて動的に決定することを特徴とする請求項3又は請求項3を引用する請求項4に記載のOLT。
【請求項6】
前記帯域割当部は、優先度mを各々の前記ONUから送出されるフレームの遅延時間、各々の前記ONUに割り当てられた帯域、及び各々の前記ONUが実際に使用する帯域、の少なくとも1つに応じて動的に決定することを特徴とする請求項3、請求項3を引用する請求項4、又は請求項5のいずれかに記載されるOLT。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のOLTに接続されているONUであって、
前記OLTに接続されている他のONU宛のデータが存在する場合に、帯域要求と同時に宛先ONUの情報を前記OLTに対して通知するメッセージ送信部と、
NC処理が施される予定のデータを一定期間保持し、該データと前記OLTの前記NC部でNC処理が施されたデータから自身宛のデータを復元する復元部と、
を備えることを特徴とするONU。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の1のOLTと、請求項7に記載の複数のONUとが、光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントで接続され、相互に通信を行うことを特徴とする光ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光加入者線終端装置、光ネットワーク終端装置及び光ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
経済的な光アクセスシステムの形態として、受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)がある。図1に示すように、PONは、1つの光加入者線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)300が複数の光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)400と光ファイバ伝送路100および1対kの光スプリッタ200(kは自然数)を介してポイントツーマルチポイントの通信を行うネットワークである。PONの代表的な規格として、IEEE802.3にて標準化されたギガビットクラスの1G−EPON(Ethernet(登録商標) PON)および10ギガビットクラスの10G−EPONがある。これらを総称してEPONと呼ぶ。
【0003】
図2にEPONにおけるONU400の機能ブロック図を示す。上り主信号は、UNI(User Network Interface)ポート41、キュー管理手段42、PON信号処理手段43を介してPON−IF(PON Interface)ポート44へと流れる。一方、下り主信号は、PON−IFポート44、PON信号処理手段43、キュー管理手段42を介してUNIポート41へと流れる。ONU400は、上り方向に対してキューを備え、キュー内のデータ量を監視するキュー監視手段45を有している。PON信号処理手段43には、OLT300に対してキュー内のデータ量をREPORTメッセージにより報告し、OLT300から上り帯域の割当結果をGATEメッセージにより受け取るMPCP(Multi−Point Control Protocol)部43aと、OLT300と保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM(Operations, Administration and Maintenance)部43bが具備されている。
【0004】
図3にEPONにおけるOLT300の機能ブロック図を示す。下り主信号は、SNI(Service Node Interface)ポート34、キュー管理手段33、PON信号処理手段32を介してPON−IFポート31へと流れる。一方、上り主信号は、PON−IFポート31、PON信号処理手段32、キュー管理手段33を介してSNIポート34へと流れる。PON信号処理手段32には、ONU400に対してONUに備えられたキュー内のデータ量をREPORTメッセージにより報告させ、上り帯域の割当結果をGATEメッセージによりONU400に通知するMPCP部32aと、ONU400から受信した報告メッセージをもとにONU内のキューのデータ量を監視し、動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)アルゴリズムにより各ONU400へ送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当部32bと、ONUと保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM部32cが具備されている。
【0005】
スマートグリッドアプリケーションやP2P(Peer to Peer)アプリケーションなど、送信元ONUと送信先ONUが同一のPONに存在するような通信サービスに対しては、コアネットワークを介さないOLT折り返し(ONU間)通信を利用することでエンドツーエンド遅延を低減できることが知られている。例えば、非特許文献1ではWDM/TDM(Wavelength Division Multiplexing/Time Division Multiplexing)型のPONを用いた光無線ハイブリッドネットワークにおいて、OLT折り返し(ONU間)通信を利用することにより遅延低減が図られている。
【0006】
特に、ONU間通信における双方向フローに対しては、OLTにおいてネットワークコーディング(NC)処理を適用することで、下りスループットを最大50%改善できることが知られている。非特許文献2では、PONにおけるNC技術の適用形態が議論されている。
【0007】
例えば、EPONに代表されるTDM型のPONにおいて同一のOLTに接続されている2台のONU間で双方向通信を行う場合のNCの概念を図4に示す。まず、図4(a)のように、ONU1およびONU2は、キュー内のデータ量をREPORTメッセージによりOLTへ通知する。ONU間通信を行うデータが存在する場合には、宛先情報も同時にOLTに通知する。OLTの帯域割当部は、ONUより通知されたデータ量をもとに上りデータの送信時刻と各ONUへの割当帯域を決定し、それらの情報をGATEメッセージによりONUに通知する。送信時刻になったら、ONU1はONU2宛のデータf1をOLTへ送信し、ONU2はONU1宛のデータf2をOLTへ送信する。
【0008】
OLTはデータf1およびデータf2をこの順番に受信したとする。NC処理を適用しない場合には、図4(b)のようにOLTは先に到着したデータf1をONU2へ送信し、次にデータf2をONU1へ送信する。ONU1はONU2が送信したデータf2を受信し、ONU2はONU1が送信したデータf1を受信する。
【0009】
一方、NC処理を適用する場合、図4(c)のようにOLTはデータf1とデータf2がPONに閉じた双方向通信であると識別すると、データf1とデータf2を利用して符号化処理を行う。例えば、データf1とデータf2に対して排他的論理和(XOR:eXclusive OR)演算を施す。結果として出力される符号化データf3をONU1およびONU2にマルチキャスト転送する。ONU1は自身が以前に送出したデータf1をデータf3が到着するまで保持していれば、これらのデータのXOR演算によりONU2が送信したデータf2を復号できる。ONU2も自身が以前に送出したデータf2をデータf3が到着するまで保持していれば、これらのデータのXOR演算によりONU1が送信したデータf1を復号できる。この場合、下り方向にはデータf3のみがマルチキャストされるため、ユニキャストの場合と比較して下り帯域が50%削減される。一般的に、r台(r:自然数)のONU間で双方向通信を行う場合にはNC処理を施さないユニキャストの場合に比べて、NC処理を施した場合には、下り帯域が(r−1)/rに削減される。
【0010】
図5にEPONにおける上り帯域割当の例を示す。センサ・アクチュエータネットワークなどでは、端末から定期的に大量のデータが同時発生する。発生したデータはまずONUに送信され、ONUはキュー内のデータ量をREPORTメッセージによりOLTに報告する。OLTはDBA周期毎にすべてのONUから上りデータに関する情報を収集し、帯域割当部においてDBAアルゴリズムにより各ONUに割り当てる上り帯域を決定する。OLTは、GATEメッセージにより許可する上り帯域を通知する。NC処理を行う場合、同一のOLTに接続されているONU宛のデータがあるときには、REPORTメッセージに宛先ONUを識別できる情報を書き込む。宛先ONUの識別には、例えば、LLID(Logical Link Identifier)、IP(Internet Protocol)アドレス、MAC(Medium Access Control)アドレスを用いることができる。また、GATEメッセージには、NC処理を施すか否かをONUに通知するための識別子を書き込む。ONUは識別子の情報をもとに、送信したデータを一定時間保持するかどうか決定する。この保持時間はNC処理を行うためのOLTでのキューイング時間の最大値よりも大きな値とする。例えば、1DBA周期内で双方向通信が検知されたときのみNC処理を施すと仮定すれば、保持時間はDBA周期とOLT―ONU間往復伝送遅延の和よりも十分に大きな値に設定する必要がある。
【0011】
帯域割当部では各ONUに割り当てる時間スロットのスケジューリングも行う。例えば、図6に示すように、すべてのONUに対してスロットをランダムに割り当てる方式をRS(Random Scheduling)方式と呼ぶ。例えば、1DBA周期内で双方向通信が検知されたときのみNC処理を施すことを考える。ONU7およびONU15がNC処理を施される予定のフローを送信するONUであるとすると、ONU15から送信されたデータはOLTにおいてONU7からのデータ到着を待つ。このとき、ONU15から送信されたデータをキューイング遅延dqだけOLTにおいて待機させる必要がある。ここで、DBA周期の先頭からNC処理が開始されるまでの遅延をスケジューリング遅延dsと定義する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Yan Li, Jianping Wang, Chunming Qiao, Ashwin Gumaste, Yun Xu, Yinlong Xu,“Integrated fiber−wireless(FiWi) access networks supporting inter−ONU communications”, Journal of Lightwave Technology, Vol.28, No.5, pp.714−724, March 2010.
【非特許文献2】Kerim Fouli, Martin Maier, Muriel Medard,“Network coding in next−generation passive optical networks”, IEEE Communications Magazine, Vol.49, No.9, pp.38−46, September 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、下り帯域を低減できるNC処理を適用するためにはデータ間の同期が必要となるため、OLTにおいてキューイング遅延が発生し、かつ大容量のバッファを具備しなければならないという課題があった。
【0014】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、NC処理が可能でありながら、OLTにおいて大容量のバッファを不要とし、キューイング遅延を低減できるOLT、これに収容されるONU、及びこれらを備える光ネットワークシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、各ONUに対して上り送信スロットを割り当てる際に、NCを行うフローを送信するONU(NCグループONU)に対して連続的にスロットを割り当てることでOLTでバッファされるデータ量を減らすこととした。
【0016】
具体的には、本発明に係るOLTは、複数の光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光加入者線終端装置(OLT)であって、
前記ONUからの帯域要求に基づいて前記ONU毎に送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当部と、前記ONU間で送受信されるデータに対してネットワークコーディング(NC)処理を施すNC部と、を備え、
前記帯域割当部は、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの送信順番を連続させることを特徴とする。
【0017】
NCグループONUに連続的にスロットを割り当てることで、OLTにおけるONU間通信のためのデータ待ち合わせを減少させることができる。このため、OLTのバッファ量を低減でき、キューイング遅延を低減することができる。従って、本発明は、NC処理が可能でありながら、OLTにおいて大容量のバッファを不要とし、キューイング遅延を低減できるOLTを提供することができる。
【0018】
本発明に係るOLTの前記帯域割当部は、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUに対して、送信順番s(s:自然数)をs≦nの範囲で連続させることを特徴とする。ただし、前記OLTに接続されている前記ONUの数をn(n:自然数)、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの数をr(r:自然数、ただしNC処理対象に属する前記ONUが存在しない場合はr=1)とする。
【0019】
各ONUに割り当てるn個のタイムスロットを1周期としてスケジューリングを行うときに、1周期毎にNCグループONUの有無を確認し、NCグループONUが存在するときに当該ONUへ割り当てるタイムスロットを連続させる。このようにスケジューリングすることで、各ONUに割り当てられるタイムスロットが公平になるので、NC処理を施されるフローとNC処理が施されないフローとの間の遅延公平性を担保することができる。
【0020】
本発明に係るOLTの前記帯域割当部は、優先度m(m:自然数であり、r≦m≦n)を有しており、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの送信順番sをs≦mの範囲で連続させることを特徴とする。
【0021】
制御通信ネットワークにおけるセンサデータなどのような定期的に同時発生するフローに対してNC技術を適用する場合、スケジューリングで1周期内の後方にあるタイムスロットを指定され、エンドツーエンド遅延が増大する場合があるという課題があった。そこで、本発明では、NCグループONUに対して優先的に先頭に近いスロットを割り当てることでスケジューリング遅延を低減し、エンドツーエンド遅延を低減することとした。
【0022】
本発明に係るOLTの前記帯域割当部は、前記NC部が施す1つのNC処理対象に属する前記ONUの送信順番sをa(a:自然数であり、a≦(n−r+1)又はa≦(m−r+1))からa+r−1までの連続したr個の自然数の範囲でランダムに割り当ててもよい。
【0023】
本発明に係るOLTの前記帯域割当部は、mをn及びrの少なくとも1つに応じて動的に決定してもよい。
【0024】
本発明に係るOLTの前記帯域割当部は、優先度mを各々の前記ONUから送出されるフレームの遅延時間、各々の前記ONUに割り当てられた帯域、及び各々の前記ONUが実際に使用する帯域、の少なくとも1つに応じて動的に決定してもよい。
【0025】
本発明では、優先度mを登録ONU数n、NCグループONU数r、遅延時間などに応じて適応的に決定することで遅延公平性を改善することができる。
【0026】
本発明に係るONUは、前記OLTに接続されているONUであって、
前記OLTに接続されている他のONU宛のデータが存在する場合に、帯域要求と同時に宛先ONUの情報を前記OLTに対して通知するメッセージ送信部と、
NC処理が施される予定のデータを一定期間保持し、該データと前記OLTの前記NC部でNC処理が施されたデータから自身宛のデータを復元する復元部と、
を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る光ネットワークシステムは、前記OLTと、複数の前記ONUとが、光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントで接続され、相互に通信を行うことを特徴とする。
【0028】
前記OLTと組合せることで、NC処理が可能でありながら、OLTにおいて大容量のバッファを不要とし、キューイング遅延を低減できるONU及び光ネットワークシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、NC処理が可能でありながら、OLTにおいて大容量のバッファを不要とし、キューイング遅延を低減できるOLT、これに収容されるONU、及びこれらを備える光ネットワークシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】PONの構成を説明する図である。
図2】ONUの構成を説明する図である。
図3】OLTの構成を説明する図である。
図4】NCの概念を説明する図である。(a)は上り信号を説明する図である。(b)はNCを適用しない場合の下り信号を説明する図である。(c)はNCを適用した場合の下り信号を説明する図である。
図5】EPONにおける上り帯域割当の例を示した図である。
図6】ONUに割り当てる時間スロットのスケジューリング(RS方式)の例を示した図である。
図7】本発明に係るOLTを説明する図である。
図8】本発明に係るONUを説明する図である。
図9】本発明に係るOLTが行う上り送信スロットのスケジューリング(GRS方式)の例を示した図である。
図10】本発明に係るOLTが行う上り送信スロットのスケジューリング(GPS方式)の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0032】
本発明に係るOLTおよびONUの機能をIEEE標準のEPONである1G−EPONおよび10G−EPONを例に挙げて説明する。
【0033】
本実施形態のOLT301の機能構成例を図7に示す。OLT301は、複数のONU401と光ファイバ伝送路100を介してポイントツーマルチポイントの通信を行うOLTである。OLT301は、ONU401からの帯域要求に基づいてONU毎に送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当部32bと、ONU401間で送受信されるデータに対してネットワークコーディング(NC)処理を施すNC部35と、を備え、帯域割当部32bは、NC部35が施す1つのNC処理対象に属するONU401の送信順番を連続させる。
【0034】
下り主信号は、SNI(Service Node Interface)ポート34、キュー管理手段33、PON信号処理手段32を介してPON−IFポート31へと流れる。一方、上り主信号は、PON−IFポート31、PON信号処理手段32、キュー管理手段33を介してSNIポート34へと流れる。さらに、OLT301において折り返し通信を行うONU間通信主信号は、PON−IFポート31、PON信号処理手段32、キュー管理手段33と流れ、キュー管理手段33においてNC処理が開始されるまでバッファリングされ、NC処理が施された後にPON信号処理手段32を介してPON−IFポート31へ流れる。
【0035】
PON信号処理手段32には、ONU401に対してONUに備えられたキュー内のデータ量およびONU間通信の宛先ONUの情報をREPORTメッセージにより報告させ、上り帯域の割当結果とNC処理の有無をGATEメッセージによりONUに通知するMPCP部32aと、ONU401から受信した報告メッセージをもとにONU内のキューのデータ量を監視し、DBAアルゴリズムにより各ONU401へ送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当部32bと、ONU間通信データに対してNC処理を施すNC部35が具備されている。
【0036】
帯域割当部32bでは、1DBA周期内に、OLT301に接続されている全てのONU401に対して上り送信スロットが割り当てられる。また、NC部35はキュー管理手段33において、NC処理が開始されるまでONU間通信データをバッファリングする機能を有している。OLT301におけるNC処理では、例えばXOR演算を用いた符号化が行われる。
【0037】
本実施形態のONU401の機能構成例を図8に示す。ONU401は、OLT301に接続されている他のONU401宛のデータが存在する場合に、帯域要求と同時に宛先ONU1の情報をOLT301に対して通知するメッセージ送信部と、NC処理が施される予定のデータを一定期間保持し、該データとOLT301のNC部35でNC処理が施されたデータから自身宛のデータを復元する復元部と、を備える。
【0038】
上り主信号は、UNIポート41、キュー管理手段42、PON信号処理手段43を介してPON−IFポート44へと流れる。一方、下り主信号は、PON−IFポート44、PON信号処理手段43、キュー管理手段42を介してUNIポート41へと流れる。ONU401は、上り方向に対してキューを備え、キュー内のデータ量を監視するキュー監視手段45を有している。また、キュー監視手段45では、NC処理が施される予定のデータを一定時間バッファリングするためのキューが具備されている。
【0039】
PON信号処理手段43には、OLT301に対してキュー内のデータ量およびONU間通信の宛先ONUの情報をREPORTメッセージにより報告し、OLTから上り帯域の割当結果をGATEメッセージにより受け取るMPCP部43aと、OLT301においてNC処理を施されたデータから自身のONU宛てのデータを復元するNC部46が具備されている。ONU401におけるNC処理では、例えばXOR演算を用いた復号が行われる。なお、前記メッセージ送信部がMPCP部43aに相当し、前記復元部がNC部46に相当する。
【0040】
(実施例1)
OLT301に接続されているONU401の数をn(n:自然数)、NC部35が施す1つのNC処理対象に属するONUの数をr(r:自然数、ただしNC処理対象に属するONUが存在しない場合はr=1)としたとき、帯域割当部32bは、NC部35が施す1つのNC処理対象に属するONUに対して、送信順番s(s:自然数)をs≦nの範囲で連続させる。
【0041】
実施例1では、図9に示すように、OLT301は、帯域割当部32bにおける上り送信スロットのスケジューリング方式として、GRS(Grouped Random Scheduling)方式を実装する。ここで、「NC部35が施す1つのNC処理対象に属するONU」とは、NC処理を施されるフローを送信するONUのことであり、以下では当該ONUの集合を「NCグループ」と記載することがある。GRS方式では、NCグループに属するONUに対して連続した送信スロットを割り当てる。つまり、OLT301に接続されているONU数をn(n:自然数)とすると、NCグループに属するONUに対して送信順番s(s:自然数)をs≦nの範囲で連続して割り当てる。
【0042】
例えば、3台以上のONUがNCグループに属している場合、NCグループに属するONU間の送信順番は任意に決定することができる。また、NCグループと非NCグループ間の送信順番も任意に決定することができる。例えば、これらの送信順番はランダムに決定する。例えば、図9のように、OLT301に接続されているONUの内で、ONU7とONU15がNCグループに属するONUであった場合を考えると、ONU7とONU15には連続したスロットが割り当てられる。
【0043】
GRS方式を用いて、NCグループに属するONUに対して連続的な送信スロットを割り当てることで、OLT301におけるキューイング遅延dqを低減させることができる。例えば、OLT301にn台のONU401が接続されていて、DBA周期をp、各ONU401に割り当てられる帯域が等しいと仮定すると、スロット間隔sは一定値p/nとなる。RS方式を用いた場合には、平均キューイング遅延dqが
【数1】
平均スケジューリング遅延dsが
【数2】
となる。ただし、rはNCグループに属するONUの数である。一方、GRS方式を用いた場合には、平均キューイング遅延dqが
【数3】
平均スケジューリング遅延dsが
【数4】
となる。例えば、n=16、r=8、p=1msとすると、キューイング遅延dqは、RS方式の場合400μs程度であるが、GRS方式の場合200μs程度となる。
【0044】
また、スケジューリング遅延dsは、RS方式の場合900μs程度であるが、GRS方式の場合700μs程度となる。このように、GRS方式を用いることで、キューイング遅延dqおよびスケジューリング遅延dsを低減することができ、結果として、OLTのバッファ容量の削減やONU間通信データに対するエンドツーエンド遅延の低減につながる。
【0045】
(実施例2)
帯域割当部32bは、優先度m(m:自然数であり、r≦m≦n)を有しており、NC部35が施す1つのNC処理対象に属するONUの送信順番sをs≦mの範囲で連続させる。
【0046】
図10に示すように、OLTの帯域割当部における上り送信スロットのスケジューリング方式として、GPS(Grouped Priority Scheduling)方式を実装する。NC処理を施されるフローを送信するONUの集合をNCグループと定義すると、GPS方式では、NCグループに属するONUに対して連続した送信スロットを割り当て、さらにm番目(m:自然数)よりも前の送信順番になるように送信スロットを割り当てる。優先度mはNCグループに属するONU数r以上、OLTに接続されているONU数n以下となるように設定する。つまり、NCグループに属するONUに対して送信順番sをs≦mの範囲となるように割り当てる。
【0047】
例えば、NCグループに属するr台のONUに対して、前記送信順番sをa(a:自然数、a≦(m−r+1))からa+r−1までの連続したr個の自然数の範囲でランダムに割り当てることができる。例えば、図10のように、OLTに接続されているONUの内で、ONU7とONU15がNCグループに属するONUであった場合を考えると、ONU7とONU15には連続して、かつm番目よりも前のスロットが割り当てられる。
【0048】
GRS方式を用いて、NCグループに属するONUに対して連続的な送信スロットを割り当てることで、OLTにおけるキューイング遅延dqを低減させることができる。例えば、OLTにn台のONUが接続されていて、DBA周期をp、各ONUに割り当てられる帯域が等しいと仮定すると、スロット間隔sは一定値p/nとなる。RS方式を用いた場合には、平均キューイング遅延dqが
【数5】
平均スケジューリング遅延dsが
【数6】
となる。一方、GPS方式を用いた場合には、平均キューイング遅延dqが
【数7】
平均スケジューリング遅延dsが
【数8】
となる。例えば、n=16、r=8、p=1ms、m=8とすると、キューイング遅延dqは、RS方式の場合400μs程度であるが、GPS方式の場合200μs程度となる。
【0049】
また、スケジューリング遅延dsは、RS方式の場合900μs程度であるが、GPS方式の場合400μs程度となる。このように、GPS方式を用いることで、キューイング遅延dqおよびスケジューリング遅延dsを低減することができ、結果として、OLTのバッファ容量の削減やONU間通信データに対するエンドツーエンド遅延の低減につながる。
【0050】
優先度mをOLTに接続されているONU数n、および/ないしNCグループに属するONU数rに応じて動的に決定することができる。例えば、NCグループに属するONUから送信されるデータの平均スケジューリング遅延とNCグループに属さないONUから送信されるデータの平均スケジューリング遅延を等しくすることにより遅延公平性を向上させたい場合、次式によって仮の優先度m’を決定する。
【数9】
mは自然数であるため、仮の優先度m’から優先度mを求める。
【0051】
仮の優先度m’から優先度mを求める演算は、小数点以下四捨五入、小数点以下切り上げ、小数点以下切り下げのいずれでも構わない。例えば、n=16、r=8、p=1msの場合、優先度m’は12.5となり、四捨五入により優先度mは13となる。このとき、NCグループに属するONUから送信されたデータの平均スケジューリング遅延dsは、600μs程度となる。NCグループに属さないONUから送信されたデータの平均スケジューリング遅延dsも600μs程度であり、m=8と設定したときの平均スケジューリング遅延dsが700μs程度であることと比較して、遅延公平性が高い。
【0052】
また、優先度mをOLTに接続されているONU数n、および/ないしNCグループに属するONU数rに加えて、各ONUから送出されるフレームの遅延時間、および/ないし各ONUに割り当てられた帯域および/ないし実際に使用する帯域に応じて動的に決定することができる。例えば、帯域割当部によって各ONUに割り当てられる上り帯域量がそれぞれ異なる場合であっても、NCグループに属するONUから送信されるデータの平均スケジューリング遅延とNCグループに属さないONUから送信されるデータの平均スケジューリング遅延を等しくすることにより遅延公平性を向上させたい場合、次式によって仮の優先度m’を決定する。
【数10】
ただし、Kはゲイン、d1はNCグループに属さないONUから送信されるデータの平均スケジューリング遅延、d2はNCグループに属するONUから送信されるデータの平均スケジューリング遅延である。ゲインKは任意の実数を設定する。
【0053】
d1およびd2は例えば、指数移動平均を用いて算出することができる。mは自然数であるため、仮の優先度m’から優先度mを求める。仮の優先度m’から優先度mを求める演算は、小数点以下四捨五入、小数点以下切り上げ、小数点以下切り下げのいずれでも構わない。
【0054】
以下は、本実施形態のOLT、ONU及び光ネットワークシステムをまとめたものである。
(1)
1つの光加入者線終端装置(OLT)が複数の光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおけるOLTであって、
前記OLTに接続されているONUからの帯域要求に基づいてONU毎に送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当機能、および前記OLTに接続されているONU間で送受信されるデータに対してネットワークコーディング(NC)処理を施す符号化機能を有し、
前記OLTに接続されているONUの数をn(n:自然数)、NC処理が施される予定のデータを送信しようとしているONUの数をr(r:自然数、ただしNC処理が施される予定のデータを送信しようとしているONUが存在しない場合はr=1)としたとき、
前記帯域割当機能は、前記符号化機能によりNC処理が施される予定のデータを送信しようとしているr台のONUに対して、送信順番s(s:自然数)をs≦nの範囲で連続して割り当てることを特徴とするOLT。
【0055】
(2)
上記(1)に記載のOLTにおいて、
優先度をm(m:自然数、r≦m≦n)としたとき、
前記帯域割当機能は、前記符号化機能によりNC処理が施される予定のデータを送信しようとしているONUの送信順番sをs≦mの範囲となるように割り当てることを特徴とするOLT。
【0056】
(3)
上記(2)に記載のOLTにおいて、
NC処理が施される予定のデータを送信しようとしているr台のONUに対して、前記送信順番sをa(a:自然数、a≦(m−r+1))からa+r−1までの連続したr個の自然数の範囲でランダムに割り当てることを特徴とするOLT。
【0057】
(4)
上記(2)ないし(3)に記載のOLTにおいて、
前記帯域割当機能は、前記優先度mを前記OLTに接続されているONUの数n、および/ないしNC処理が施される予定のデータを送信しようとしているONUの数rに応じて動的に決定することを特徴とするOLT。
【0058】
(5)
上記(2)から(4)のいずれかに記載のOLTにおいて、
前記帯域割当機能は、前記優先度mを各ONUから送出されるフレームの遅延時間、および/ないし各ONUに割り当てられた帯域および/ないし実際に使用する帯域に応じて動的に決定することを特徴とするOLT。
【0059】
(6)
上記(1)から(5)のいずれかに記載のOLTに接続されているONUであって、
前記OLTに接続されている他のONU宛のデータが存在する場合に、帯域要求と同時に宛先ONUの情報をOLTに対して通知する機能と、
NC処理が施される予定のデータを一定期間保持し、該データとOLTの符号化機能により符号化されたデータから自身のONU宛のデータを復元する復号機能を有する
ことを特徴とするONU。
【0060】
(7)
上記(1)から(5)のいずれかに記載のOLTと、上記(6)に記載のONUとが、光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントで接続され、相互に通信を行うことを特徴とする光ネットワークシステム。
【0061】
(効果)
本実施形態のOLT、ONU及び光ネットワークシステムは、各ONUに対して上り送信スロットを割り当てる際に、NC処理を施されるフローを送信するONU(NCグループONU)に対しては連続的にスロットを割り当てることにより、OLTにおけるキューイング遅延およびエンドツーエンド遅延を低減できる。また、NCグループONUに対して優先的にDBA周期内の先頭に近いスロットを割り当てることでエンドツーエンド遅延を低減できる。さらに、登録ONU数、NCグループONU数、遅延時間などに応じて適応的に送信スロットの順番を決定することでNC処理を施されるフローとNC処理を施されないフローとの間の遅延公平性を担保できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本実施例では、IEEE標準のEPONである1G−EPONおよび10G−EPONの場合について記述したが、他のPON、例えばITU−T勧告準拠のB−PONおよびG−PON、XG−PON、さらにはWDM/TDM−PONにおける帯域割当部にも本発明を適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0063】
31:PON−IFポート
32:PON信号処理手段
32a:MPCP部
32b:帯域割当部
32c:OAM部
33:キュー管理手段
34:SNIポート
35:NC部
41:UNIポート
42:キュー管理手段
43:PON信号処理手段
43a:MPCP部
43b:OAM部
44:PON−IFポート
45:キュー監視手段
46:NC部
100:光ファイバ伝送路
200:スプリッタ
300、301:OLT
400、401:ONU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10