(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[アクリル酸エステル誘導体(1)]
LWRを改善するフォトレジスト組成物を得るためには、下記一般式(1)で示されるアクリル酸エステル誘導体(以下、アクリル酸エステル誘導体(1)と称する。)が有用である。
アクリル酸エステル誘導体(1)は、分子末端の特定の環状構造に加え、エチレン基と繋がったカルバメート結合を有することに特徴がある。該アクリル酸エステル誘導体を含有する原料を重合して得られる高分子化合物を用いたフォトレジスト組成物であれば、従来よりもLWRが改善されて高解像度のレジストパターンが形成される。本発明の効果の原因は明らかではないが、本発明のアクリル酸エステル誘導体(1)におけるノルボルナン環に環状に結合した極性基と、該ノルボルナン環と重合性基を連結する極性のカルバメート結合との両方が、光酸発生剤から発生した酸と相互作用することで酸の拡散長が適度に短くなっているためではないかと推定される。
【0016】
R
1は、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表す。これらの中でも、水素原子またはメチル基が好ましい。
R
2、R
3、R
5、R
7、R
8およびR
10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
以上の中でも、R
2、R
3、R
5、R
7、R
8およびR
10としては、好ましくはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基であり、より好ましくはいずれも水素原子である。
【0017】
R
4およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシ基を表すか、またはR
4およびR
6は両者が結合して炭素数1〜3のアルキレン基、−O−、若しくは−S−を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
また、R
4とR
6の両者が結合して形成される炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
これらの中でも、LWRおよび解像度の観点から、R
4およびR
6は両者が結合して炭素数1〜3のアルキレン基、−O−、または−S−であることが好ましく、炭素数1のメチレン基、−O−、または−S−であること、すなわち下記一般式(1’)で示されるアクリル酸エステル誘導体がより好ましい。
【0018】
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
5、R
7、R
8、R
9、R
10、X、Yおよび波線は、前記定義または後記定義の通りである。Zは、メチレン基、−O−、または−S−を表す。)
【0019】
R
9は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または−COOR
11を表し、R
11は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
また、R
11が表す炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0020】
Xは、−O−または>N−R
12を表し、R
12は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。R
12が表す炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、分岐状の炭素数3または4のアルキル基がより好ましく、t−ブチル基がさらに好ましい。また、R
12としては、水素原子またはt−ブチル基が好ましい。
Yは、>C=O、または>S(=O)
nを表し、nは0〜2の整数を表す。nは、1または2が好ましく、2がより好ましい。
XとYの組み合わせに特に制限はなく、Xが−O−であるとき、Yは>C=O、または>S(=O)
nのいずれでもよいし、Xが>N−R
12であるとき、Yは>C=O、または>S(=O)
nのいずれでもよい。
なお、一般式(1)および(1’)中の波線は、R
8とR
9のいずれがエンドまたはエキソであってもよいことを表す。特に、R
9がエンドであることが好ましい。
【0021】
アクリル酸エステル誘導体(1)の具体例を以下に示すが、特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
アクリル酸エステル誘導体(1)としては、LWRを改善するフォトレジスト組成物を得る観点から、R
1が水素原子またはメチル基であり、R
2、R
3、R
5、R
7、R
8およびR
10がいずれも水素原子であり、R
9が水素原子または−COOR
11(R
11はメチル基)であり、R
4およびR
6は両者が結合してメチレン基または−O−を表し(すなわち、Zがメチレン基または−O−であり)、Xが−O−または>N−R
12であり、Xが>N−R
12の場合にはR
12が水素原子またはt−ブチル基であり、Yが>C=Oまたは>S(=O)
nであり、>S(=O)
nの場合にはnが2であるものが好ましい。
さらには、下記一般式のいずれかで表されるアクリル酸エステル誘導体が好ましい。
【化11】
(上記式中、R
1は前記定義のとおりであり、好ましいものも同じである。)
【0028】
(アクリル酸エステル誘導体(1)の製造方法)
本発明のアクリル酸エステル誘導体(1)の製造方法に特に制限はないが、例えば、以下に示すように、イソシアナート誘導体(以下、イソシアナート誘導体(2)と称する。)とアルコール誘導体(以下、アルコール誘導体(3)と称する。)とを、必要に応じて、触媒、重合禁止剤、溶媒などの存在下に反応させることにより製造することができる。以下、この反応を「反応(a)」と称する。
【0029】
【化12】
(式中、R
1〜R
10、X、Yおよび波線は、前記定義の通りである。)
【0030】
以下、反応(a)について詳細に説明する。
イソシアナート誘導体(2)としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−(2−トリフルオロメチルアクリロイルオキシ)エチルイソシアナートが挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートが好ましい。
イソシアナート誘導体(2)の使用量としては、アルコール誘導体(3)1モルに対して、好ましくは0.8〜5モル、経済性および後処理の容易さの観点から、より好ましくは1〜3モルである。
【0031】
アルコール誘導体(3)の入手方法に特に制限はない。工業的に入手できるものもあるし、また対応するジエンとジエノファイルとをディールス−アルダー反応させた付加体をもとに、必要に応じた中間体を経由して、エポキシ化反応によって目的物を製造することもできるし、あるいは、エポキシ化反応によってエポキシ化合物を一度形成した後、該エポキシ化合物を例えば塩基性物質などで処理することなどにより、目的物を製造することもできる。
例えば、アルコール誘導体(3)の構造式において、R
2、R
3、R
5、R
7、R
8、R
9およびR
10が水素原子で、且つR
4とR
6が結合してメチレン基になっており、さらにXが−O−、Yが>S(=O)
2である5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトンについては、次のようにして製造することができる。つまり、シクロペンタジエンと系内で発生させたビニルスルホニルクロリドとをディールス−アルダー反応させて5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドを得、次いで水酸化ナトリウム水溶液を接触させることにより5−ノルボルネン−2−スルホン酸ナトリウム塩とし、さらに過ギ酸によるエポキシ化反応に供することにより、目的物を製造することができる(特開2010−83873号公報参照)。
その他にも、アルコール誘導体(3)の構造式において、R
2、R
3、R
5、R
7、R
8、R
9およびR
10が水素原子で、且つR
4とR
6が結合してメチレン基になっており、Xが>N−R
12、該R
12がt−ブチル基であり、Yが>C=Oであるものについては、次のようにして製造することができる。つまり、シクロペンタジエンと塩化アクリロイルをディールス−アルダー反応させ、得られた生成物にt−ブチルアミンを反応させることにより、N−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボキサミドを得る。これを、炭酸カリウム等の塩基性化合物の存在下にm−クロロ過安息香酸と接触させてエポキシ化反応を行うことにより、N−t−ブチル−5,6−エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−カルボキサミドを得る。該エポキシ化合物を、カリウム−t−ブトキシドなどの塩基性物質と反応させることにより、目的物を製造することができる。
さらに、アルコール誘導体(3)の構造式において、R
2、R
3、R
5、R
7、R
8、R
9およびR
10が水素原子で、且つR
4とR
6が結合してメチレン基になっており、Xが−O−、Yが>C=Oであるものについては、「J.Chem.Soc., H.B.Henbestら、p.221−226(1959年)」に開示された方法により製造することができる。
以上の方法や公知の方法、さらには本明細書の実施例等を参照することにより、そのほかのアルコール誘導体(3)も製造することができる。
【0032】
反応(a)は、触媒の存在下または非存在下に実施できる。触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸;三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、ジブチル錫ジラウレートなどのルイス酸;トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンなどの第三級アミン;ピリジン、2−メチルピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物などが挙げられる。
反応速度の観点からは、触媒の存在下に実施することが好ましい。また、触媒は、1種を単独で使用してもよいし、酸と塩基を混合しないかぎりにおいて、2種以上を併用してもよい。
触媒の存在下に実施する場合、触媒の使用量は、アルコール誘導体(3)1モルに対して、好ましくは0.001〜0.5モル、より好ましくは0.005〜0.2モルである。
【0033】
反応(a)は、重合禁止剤の存在下または非存在下に実施できる。重合禁止剤に特に制限はなく、例えばヒドロキノン、メトキシフェノール、ベンゾキノン、トルキノン、p−t−ブチルカテコールなどのキノン系化合物;2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノールなどのアルキルフェノール系化合物;フェノチアジンなどのアミン系化合物;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、後述する溶媒を除いた反応混合物全体の質量に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.001〜1質量%、さらに好ましくは0.005〜0.5質量%である。
【0034】
反応(a)は、溶媒の存在下または非存在下に実施することができる。溶媒としては、反応を阻害しない限り特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;クロロベンゼン、フルオロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンズニトリルなどのニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒の存在下に実施する場合、溶媒の使用量は、アルコール誘導体(3)1質量部に対して好ましくは0.5〜100質量部、後処理の容易さの観点から、より好ましくは0.5〜20質量部である。
【0035】
反応温度は、使用するイソシアナート誘導体(2)、アルコール誘導体(3)、必要に応じて用いる触媒や溶媒の種類などによっても異なるが、好ましくは概ね−30〜100℃、より好ましくは−10〜80℃である。
また、反応圧力に特に制限は無いが、常圧下で実施することが簡便で好ましい。
反応時間は、使用するイソシアナート誘導体(2)、アルコール誘導体(3)、必要に応じて用いる触媒や溶媒の種類などによっても異なるが、好ましくは概ね0.5時間〜48時間、より好ましくは1時間〜24時間である。
反応(a)は、安全性の観点から、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下に実施することが好ましい。
【0036】
反応(a)の操作方法に特に制限はない。また、各試薬の投入方法および順序にも特に制限はなく、任意の方法および順序で添加することができる。
反応(a)の操作方法としては、回分式反応器にアルコール誘導体(3)、並びに必要に応じて触媒および溶媒を仕込み、この混合溶液に所望の反応温度および所望の反応圧力下でイソシアナート誘導体(2)を添加する方法が好ましい。
【0037】
上記の方法で得られた反応混合物からのアクリル酸エステル誘導体(1)の分離および精製は、有機化合物の分離および精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。
例えば、反応終了後、反応混合物に水を添加した後、有機溶媒で抽出し、得られた有機層を濃縮することによりアクリル酸エステル誘導体(1)を分離することができる。さらに、必要に応じて、再結晶、蒸留、シリカゲルクロマトグラフィーなどで精製することにより、純度の高いアクリル酸エステル誘導体(1)を得ることができる。
また、必要に応じて、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤の添加後にろ過、または「ゼータプラス(登録商標)」(商品名、住友スリーエム株式会社製)やプロテゴ(商品名、日本インテグリス株式会社製)やイオンクリーン(商品名、日本ポール株式会社製)などの金属除去フィルター処理することにより、得られたアクリル酸エステル誘導体(1)中の金属含量を低減することも可能である。
【0038】
[高分子化合物]
本発明のアクリル酸エステル誘導体(1)を単独で重合してなる重合体またはアクリル酸エステル誘導体(1)と他の重合性化合物とを共重合してなる共重合体は、フォトレジスト組成物用の高分子化合物として有用である。
本発明の高分子化合物は、アクリル酸エステル誘導体(1)に基づく構成単位を、0モル%を超え100モル%含有し、LWRおよび解像度の観点からは、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜70モル%、さらに好ましくは30〜70モル%含有する。
アクリル酸エステル誘導体(1)と共重合させることができる他の重合性化合物(以下、共重合単量体と称する。)の具体例としては、例えば下記の化学式で示される化合物などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0040】
上記式(I)〜(XII)中、R
13は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
14は、重合性基を表す。R
15は、水素原子または−COOR
16を表し、R
16は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、R
17は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
共重合単量体において、R
13およびR
16がそれぞれ独立して表す炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R
17が表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。また、R
14が表す重合性基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、クロトノイル基などが挙げられる。
【0041】
以上の中でも、共重合単量体としては、好ましくは、上記式(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(XI)、(XII)で表される共重合単量体であり、より好ましくは、式(I)で表される共重合単量体と式(II)で表される共重合単量体との併用である。
【0042】
(高分子化合物の製造方法)
高分子化合物は、常法に従って、ラジカル重合により製造することができる。特に、分子量分布が小さい高分子化合物を合成する方法としては、リビングラジカル重合などを挙げることができる。
一般的なラジカル重合方法は、必要に応じて1種以上のアクリル酸エステル誘導体(1)および必要に応じて1種以上の上記共重合単量体を、ラジカル重合開始剤および溶媒、並びに必要に応じて連鎖移動剤の存在下に重合させる。
ラジカル重合の実施方法には特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法など、アクリル系樹脂を製造する際に用いる慣用の方法を使用できる。
【0043】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド化合物;ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチル−α−クミルペルオキシド、ジ−α−クミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド化合物;ベンゾイルペルオキシド、ジイソブチリルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド化合物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物などが挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合反応に用いるアクリル酸エステル誘導体(1)、共重合単量体、連鎖移動剤、溶媒の種類および使用量、重合温度などの重合条件に応じて適宜選択できるが、全重合性化合物[アクリル酸エステル誘導体(1)と共重合単量体の合計量であり、以下同様である。]1モルに対して、通常、好ましくは0.005〜0.2モル、より好ましくは0.01〜0.15モルである。
【0044】
前記連鎖移動剤としては、例えばドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、全重合性化合物1モルに対して、通常、好ましくは0.005〜0.2モル、より好ましくは0.01〜0.15モルである。
【0045】
前記溶媒としては、重合反応を阻害しなければ特に制限はなく、例えばプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。
溶媒の使用量は、全重合性化合物1質量部に対して、通常、好ましくは0.5〜20質量部、経済性の観点からは、より好ましくは1〜10質量部である。
【0046】
重合温度は、通常、好ましくは40〜150℃であり、生成する高分子化合物の安定性の観点から、より好ましくは60〜120℃の範囲である。
重合反応の時間は、アクリル酸エステル誘導体(1)、共重合単量体、重合開始剤、溶媒の種類および使用量、重合反応の温度などの重合条件により異なるが、通常、好ましくは30分〜48時間、より好ましくは1時間〜24時間である。
重合反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下に実施することが好ましい。
【0047】
こうして得られる高分子化合物は、再沈殿などの通常の操作により単離可能である。単離した高分子化合物は真空乾燥などで乾燥することもできる。
再沈澱の操作で用いる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタンなどのニトロ化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸などのカルボン酸;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール;水が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
再沈澱の操作で用いる溶媒の使用量は、高分子化合物の種類、溶媒の種類により異なるが、通常、高分子化合物1質量部に対して0.5〜100質量部であるのが好ましく、経済性の観点からは、1〜50質量部であるのがより好ましい。
【0048】
高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は特に制限は無いが、好ましくは500〜50,000、より好ましくは1,000〜30,000、さらに好ましくは5,000〜15,000であると、後述するフォトレジスト組成物の成分としての有用性が高い。かかるMwは、実施例に記載の方法に従って測定した値である。
また、高分子化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、LWRおよび解像度の観点から、好ましくは3以下であり、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2以下である。
【0049】
[フォトレジスト組成物]
前記高分子化合物、光酸発生剤および溶剤、並びに必要に応じて塩基性化合物、界面活性剤およびその他の添加物を配合することにより、本発明のフォトレジスト組成物を調製する。以下、各成分について説明する。
【0050】
(光酸発生剤)
光酸発生剤としては特に制限は無く、従来、化学増幅型レジストに通常用いられる公知の光酸発生剤を用いることができる。該光酸発生剤としては、例えばヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系光酸発生剤;オキシムスルホネート系光酸発生剤;ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン系光酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系光酸発生剤;イミノスルホネート系光酸発生剤;ジスルホン系光酸発生剤などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、オニウム塩系光酸発生剤が好ましく、さらに、発生する酸の強度が強いという観点から、フッ素含有アルキルスルホン酸イオンをアニオンとして含む下記の含フッ素オニウム塩が好ましい。
【0051】
上記含フッ素オニウム塩の具体例としては、例えばジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート;トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
光酸発生剤の配合量は、フォトレジスト組成物の感度および現像性を確保する観点から、前記高分子化合物100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0052】
(溶剤)
フォトレジスト組成物に配合する溶剤としては、例えばプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶剤の配合量は、高分子化合物1質量部に対して、通常、1〜50質量部であるのが好ましく、2〜25質量部であるのが好ましい。
【0053】
(塩基性化合物)
フォトレジスト組成物には、フォトレジスト膜中における酸の拡散速度を抑制して解像度を向上するために、必要に応じて塩基性化合物をフォトレジスト組成物の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。かかる塩基性化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−(1−アダマンチル)アセトアミド、ベンズアミド、N−アセチルエタノールアミン、1−アセチル−3−メチルピペリジン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、2−ピロリジノン、アクリルアミド、メタクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアミド;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、ニコチン、キノリン、アクリジン、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、ピラゾール、ピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、ピペリジン、テトラゾール、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミンを挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
塩基性化合物を配合する場合、その配合量は使用する塩基性化合物の種類により異なるが、光酸発生剤1モルに対して、通常、好ましくは0.01〜10モル、より好ましくは0.05〜1モルである。
【0054】
(界面活性剤)
フォトレジスト組成物には、塗布性を向上させるため、所望により、さらに界面活性剤をフォトレジスト組成物の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。
かかる界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、高分子化合物100質量部に対して、通常、好ましくは2質量部以下である。
【0055】
(その他の添加剤)
さらに、フォトレジスト組成物には、その他の添加剤として、増感剤、ハレーション防止剤、形状改良剤、保存安定剤、消泡剤などを、フォトレジスト組成物の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。
【0056】
(フォトレジストパターンの形成方法)
フォトレジスト組成物を基板に塗布し、通常、好ましくは70〜160℃で1〜10分間プリベークし、所定のマスクを介して放射線を照射(露光)後、好ましくは70〜160℃で1〜5分間ポストエクスポージャーベークして潜像パターンを形成し、次いで現像液を用いて現像することにより、所定のレジストパターンを形成することができる。
【0057】
露光には、種々の波長の放射線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーが使用されるが、これらの中でも、微細加工の観点から、ArFエキシマレーザーを使用するのが好ましい。
露光量は、0.1〜1000mJ/cm
2であるのが好ましく、1〜500mJ/cm
2であるのがより好ましい。
【0058】
現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水などの無機塩基;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩などを溶解したアルカリ性水溶液などが挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩を溶解したアルカリ性水溶液を使用するのが好ましい。
現像液の濃度は、通常、0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、MwおよびMnの測定並びに分子量分布の算出は、以下のとおりに行なった。
【0060】
(MwおよびMnの測定並びに分子量分布の算出)
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、検出器として示差屈折率計を用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を下記条件にて行ない、標準ポリスチレンで作成した検量線による換算値として求めた。また、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除することにより、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
GPC測定:カラムとして、「TSK−gel SUPER HZM−H」(商品名:東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)2本および「TSK−gel SUPER HZ2000」(商品名:東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)1本を直列に連結したものを使用し、カラム温度40℃、示差屈折率計温度40℃、溶離液の流速0.35mL/分の条件で測定した。
【0061】
<合成例1>5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトンの合成
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積1Lの四つ口フラスコに、フェノチアジン0.40g、テトラヒドロフラン1154.0g、シクロペンタジエン87.0g(1.32mol)を仕込み、攪拌しながら5℃以下に冷却した。次いで、別々の滴下漏斗に、2−クロロエタンスルホニルクロリド195.7g(1.20mol)、トリエチルアミン146.0g(1.45mol)をそれぞれ入れ、内温5〜10℃で3時間かけて同時に滴下を行った。
滴下終了後、反応混合物を5〜10℃で3時間攪拌した後、析出している塩を減圧ろ過し、続いてろ別した塩にTHF600.0gを注いで、ろ液1632.8gを得た(該ろ液を「ろ液(A)」と称する)。該ろ液(A)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドを178.2g(0.925mol)含んでいた(2−クロロエタンスルホニルクロリドに対して収率77.1%)。
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積3Lの三つ口フラスコに、水920gを入れ、20℃以下に冷却した。攪拌しながら、水酸化ナトリウム80.30g(2.01mol)を内温が20℃以下になるように入れた。「ろ液(A)」1300g(5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドは、141.9g、0.737mol)を、内温20〜25℃で、4時間かけて滴下した。
滴下終了から1時間後に反応混合液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドは完全に消失していた。反応混合液を減圧下に濃縮し、THFを除去した後、2Lの分液漏斗に移してトルエン300gで3回洗浄し、5−ノルボルネン−2−スルホン酸ナトリウム塩を含む水溶液1065.3gを得た(該水溶液を「水溶液(A)」と称する)。
攪拌装置、温度計を取り付けた内容積3Lの三つ口フラスコに、「水溶液(A)」を全て入れ、10℃に冷却した。99%ギ酸93.27g(2.01mol)を内温11〜15℃で滴下した後、加熱して内温を50〜53℃としたところに、30%過酸化水素水162.50g(1.43mol)を3時間かけて滴下した。滴下終了後も内温を50℃前後に維持し、滴下終了から17時間後に反応混合液をHPLCで分析したところ、5−ノルボルネン−2−スルホン酸の変換率は98.7%であった。
反応混合液を15℃まで冷却後、亜硫酸ナトリウム36.55g(0.29mol)を内温15〜18℃でゆっくり加え、デンプン紙により過酸化水素が検出されないことを確認し、炭酸水素ナトリウム140.95g(1.68mol)を内温15〜17℃でゆっくり加え、反応混合液のpHを7.3とした。酢酸エチル900gで2回抽出を行い、得られた有機層を合わせて減圧下に濃縮し、黄白色の固体69.15gを得た。この固体を酢酸エチル140gに50℃で溶解させた後、10℃までゆっくり冷却し、析出した結晶をろ過した。ろ別した結晶を5℃の酢酸エチル30gで洗浄し、40℃で2時間減圧下に乾燥することで、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトン53.9g(純度99.1%、0.28mol)を得た(5−ノルボルネン−2−スルホニルクロリドに対して収率38.1%)。
【0062】
【化14】
【0063】
<実施例1>2,6−ノルボルナンスルトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートの合成
温度計、攪拌装置、窒素導入管および滴下漏斗を取り付けた内容積1Lの四つ口フラスコに、合成例1で得られた5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトン100.0g(525.7mmol)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル50mg、酢酸エチル600gおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン4.00g(26.3mmol)を仕込み、そこへ、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート89.7g(578.4mmol)を内温24〜27℃で約2時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃にて1時間攪拌した後、得られた反応混合液についてRI検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析したところ、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンスルトンは完全に消失していた。
得られた反応混合液に、0.5質量%塩酸水155.4gを内温25〜30℃で滴下し、滴下終了後、40℃に加温して30分静置した。分液した水層(下層)を抜き取った後、有機層(上層)をイオン交換水300gで5回洗浄した。この洗浄操作では内温が45℃にて静置することにより分液させた。該有機層にp−メトキシフェノール16mg、フェノチアジン16mgを添加し、減圧下に濃縮し、濃縮物211.2gを得た。該濃縮物に酢酸エチル246.3gを添加し、55℃まで昇温し、続いて−10℃まで冷却した後、析出している結晶をろ取した。該湿結晶を減圧下乾燥し、2,6−ノルボルナンスルトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート128.1g(白色固体、371.3mmol、収率70.6%)を得た。
【0064】
【化15】
【0065】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:6.12(1H,s)、5.61(1H,m)、4.99(1H,br)、4.71(1H,d,J=4.4Hz)、4.67(1H,s)、4.24(2H,t,J=5.2Hz)、3.4−3.6(4H,m)、2.59(1H,br)、2.12−2.16(2H,m)、2.05(1H,d,J=12.0Hz)、1.95(3H,s)、1.75(1H,d,J=12.0Hz)
【0066】
<合成例2>5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの合成
攪拌装置、温度計および滴下漏斗を取り付けた内容積1Lの四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール0.40g、アクリル酸108.1g(1.50mol)およびトルエン300mLを仕込み、滴下漏斗からシクロペンタジエン109.1g(1.65mol)を攪拌下、40℃以下で2時間かけて滴下した。滴下後室温で10時間攪拌を続け、その後減圧下に濃縮することにより、5−ノルボルネン−2−カルボン酸167.3g(1.21mol)を得た。
攪拌装置、温度計および滴下漏斗を取り付けた内容積1Lの四つ口フラスコに、上記で得られた5−ノルボルネン−2−カルボン酸全量と88%ギ酸94.6g(1.81mol)を20〜30℃で混合した後、加熱して内温を48〜50℃としたところに、30%過酸化水素水162.5g(1.43mol)を6時間かけて滴下した。滴下終了後も内温を50℃前後で10時間攪拌した。反応混合液を15℃まで冷却後、亜硫酸ナトリウム30.5gを内温15〜20℃の範囲で添加し、デンプン紙により過酸化水素が検出されなくなることを確認した後、20%水酸化ナトリウム水溶液で反応混合液のpHを7.5とした。酢酸エチル400gで3回抽出を行い、得られた有機層を合わせて減圧下に濃縮した。得られた固体に、酢酸エチル150gおよびトルエン750gを添加し、加温して固体が完全に溶解してから0℃までゆっくりと冷却し、析出した結晶をろ過した。ろ別した結晶を5℃のトルエン200gで洗浄し、40℃で2時間減圧下に乾燥することで、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン117.9g(純度99.3%、0.76mol)を得た。
【0067】
【化16】
【0068】
<実施例2>2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートの合成
温度計、攪拌装置および窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3つ口フラスコに、合成例2で得られた5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン5.00g(32.4mmol)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル15mg、酢酸エチル30g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン226mg(1.48mmol)を仕込み、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート5.51g(35.5mmol)を内温24〜31℃で約0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃にて3.2時間攪拌した後、得られた反応混合液についてUV検出器を備えたHPLCにて分析したところ、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの変換率は86.7%であった。
得られた反応混合液に、水20.0gおよび1.0質量%塩酸水1.4gを内温25〜30℃で順次滴下し、滴下終了後60分静置した。分液した水層(下層)を抜き取った後、有機層(上層)をイオン交換水20gで4回洗浄し、該有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物10.8gを得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;酢酸エチル/メタノール=3/1(体積比))で分離精製することにより、2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート7.78g(淡黄色液体、25.2mmol、収率77.6%)を得た。
【0069】
【化17】
【0070】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:6.12(1H,m)、5.61(1H,m)、4.96(1H,br)、4.53(2H,m)、4.25(2H,t,J=5.2Hz)、3.50(2H,dt,J=5.2,5.2Hz)、3.17(1H,br)、2.50−2.60(2H,m)、1.95−1.99(4H,m)、1.75(1H,d,J=13.6Hz)、1.59−1.62(2H,m)
【0071】
<合成例3>5−ヒドロキシ−2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトンの合成
攪拌装置および温度計を取り付けた内容積100mLの四つ口フラスコに、フラン48.0g(0.705mol)およびアクリル酸メチル20.0g(0.232mol)を入れ、−20℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3.0mLを、内温−15〜−18℃を保持しながら滴下した。滴下終了後、内温0〜5℃で14時間攪拌を継続した。反応混合液を減圧下に濃縮し、得られた濃縮物を酢酸エチル300gに溶解し、水50g、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50g、飽和食塩水50gで順次洗浄した後、減圧下に濃縮することにより油状物28.3gを得た。
該油状物に10%水酸化ナトリウム水溶液93.6g(0.234mol)を加え、室温にて24時間攪拌した後、濃塩酸でpHを2.0とした。酢酸エチル300gで3回抽出した後、得られた抽出層を合わせて減圧下にて濃縮することにより固体21.5gを得た。
攪拌装置、温度計および滴下漏斗を取り付けた内容積200mLの四つ口フラスコに、上記で得られた固体全量と88%ギ酸12.0g(0.232mol)を20〜30℃で混合した後、加熱して内温を45〜46℃としたところに、30%過酸化水素水26.1g(0.232mol)を6時間かけて滴下した。滴下終了後も内温を45℃前後で20時間攪拌した。反応混合液を15℃まで冷却後、亜硫酸ナトリウム9.7gを内温15〜20℃の範囲で添加し、デンプン紙により過酸化水素が検出されなくなることを確認した後、20%水酸化ナトリウム水溶液で反応混合液のpHを7.8とした。酢酸エチル400gで3回抽出を行い、得られた有機層を合わせて減圧下に濃縮した。得られた固体にエタノール30gを添加し、加温して固体が完全に溶解してから0℃までゆっくりと冷却し、析出した結晶をろ過した。ろ別した結晶を0℃のエタノール10gで洗浄し、40℃で2時間減圧下に乾燥することで、5−ヒドロキシ−2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトン10.8g(純度98.9%、0.068mol)を得た。
【0072】
【化18】
【0073】
<実施例3>2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートの合成
温度計、攪拌装置および窒素導入管を取り付けた内容積50mLの3つ口フラスコに、合成例3で得られた5−ヒドロキシ−2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトン1.00g(6.34mmol)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル2.4mg、テトラヒドロフラン10.0g、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート1.00g(6.34mmol)およびジブチル錫ジラウレート0.10gを仕込み、室温にて24時間攪拌した。得られた反応混合液についてUV検出器を備えたHPLCにて分析したところ、5−ヒドロキシ−2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトンの変換率は93.7%であった。得られた反応混合液を減圧下に濃縮し、4.22gの濃縮物を−20℃で一夜冷却した。
析出した固体をろ別し、得られた固体をヘキサン19.3gに懸濁して再度ろ別することで2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート(白色固体、1.52g、4.88mmol、収率77.0%)を得た。
【0074】
【化19】
【0075】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:6.12(1H,m)、5.61(1H,m)、5.33(1H,dd,J=4.8,4.8Hz)、5.08(1H,br)、4.73(1H,d,J=5.2Hz)、4.70(1H,s)、4.64(1H,d、J=4.8Hz)、4.24(2H,t,J=5.2Hz)、2.74(1H,ddd,J=11.2,4.8,1.2Hz)、3.51(2H,dt,J=6.0,5.2Hz)、2.25(1H,ddd,J=13.6,11.2,5.6Hz)、2.07(1H,dd、J=13.6,2.0Hz)、1.95(3H,s)
【0076】
<合成例4>5−ヒドロキシ−7−オキサノルボルナン−2,6−スルトンの合成
原料となるビニルスルホン酸メチルは、Angew.Chem.,77(7),291−302(1965)に記載された合成例に準じて合成した。まず、攪拌機、温度計、滴下漏斗、三方コックを取り付けた内容積2Lの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、2−クロロエタンスルホニルクロリド326.0g(2.00mol)を入れ、氷浴にて冷却し、次いで25wt%ナトリウムメトキシド(メタノール溶液)を滴下漏斗から内温が2〜5℃の範囲になるように滴下した。滴下終了後、氷浴を外して室温にて1時間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮して、濃縮物を単蒸発操作することにより、ビニルスルホン酸メチル197.2g(純度97.3%、1.571mol)を得た(2−クロロエタンスルホニルクロリドに対して収率78.5%)。
次に、5−ヒドロキシ−7−オキサノルボルナン−2,6−スルトンは、特開2007−31355に記載された実施例2に準じて合成した。
攪拌装置、滴下漏斗および温度計を取り付けた内容積300mLの四つ口フラスコに、フラン150g(2.20mol)、ヨウ化亜鉛15.0gを入れ、25〜27℃にて滴下漏斗からビニルスルホン酸メチル41.5g(0.34mol)を加えた。そのままの温度で2日間攪拌を継続した後、反応液を1Lの分液漏斗に移した。水300mLで2回洗浄した後、減圧下に未反応のフランを留去して7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル22.0gを得た。
攪拌装置、滴下漏斗および温度計を取り付けた内容積1000mLの四つ口フラスコに、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル22.0gと塩化メチレン450gを順次入れ、4℃まで冷却し、撹拌下にm−クロロ過安息香酸22.9g(0.17mol)を10℃以下になるようにゆっくりと投入した。5〜7℃にて4時間攪拌した後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液100gを添加し、30分間攪拌した。静置して分液した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100gで3回洗浄した。得られた有機層を減圧下に濃縮して2,3−エポキシ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル20.2gを得た。
攪拌装置、滴下漏斗および温度計を取り付けた内容積300mLの四つ口フラスコに、5.0(mol/L)の水酸化ナトリウム水溶液を仕込み、滴下漏斗から2,3−エポキシ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エン−5−スルホン酸メチル29.5gを内温が20〜23℃の範囲で滴下した。滴下終了から4時間撹拌した後、氷水で冷却しながら濃塩酸を滴下してpHを7.3とした後に、酢酸エチル300mLで4回抽出した後、得られた有機層を合わせて濃縮後、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、5−ヒドロキシ−7−オキサノルボルナン−2,6−スルトン4.75g(純度98.8%、0.024mol)を得た。
【0077】
【化20】
【0078】
<実施例4>7−オキサノルボルナン−2,6−スルトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートの合成
温度計、攪拌装置および窒素導入管を取り付けた内容積50mLの3つ口フラスコに、合成例4で得られた5−ヒドロキシ−7−オキサノルボルナン−2,6−スルトン0.30g(1.56mmol)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル1.0mg、酢酸エチル1.8g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン12mg(0.08mmol)を仕込み、24〜26℃で撹拌下に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート0.27g(1.74mmol)を加え、室温にて24時間攪拌した。得られた反応混合液についてUV検出器を備えたHPLCにて分析したところ、5−ヒドロキシ−7−オキサノルボルナン−2,6−スルトンの変換率は100%であった。得られた反応混合液に酢酸エチル5.0gを追加し、0.5wt%HCl水溶液にてpHを3〜4としたところで、有機層と水層を分離した。得られた有機層を水2gで3回洗浄した後、減圧下に濃縮して、0.54gの濃縮物を得た。得られた濃縮物を酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(重量比 酢酸エチル:ヘキサン=2:1)2.0gに溶解させて冷却したところ白色固体が析出した。該白色固体をろ別することで、7−オキサノルボルナン−2,6−スルトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート(白色固体、0.22g、0.63mmol、収率40.6%)を得た。
【0079】
【化21】
【0080】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:6.12(1H,m)、5.61(1H,m)、5.52(1H,dd,J=4.8,4.8Hz)、5.12(1H,br)、4.84(1H,s)、4.82(1H,d,J=4.8Hz)、4.77(1H,d,J=4.8Hz)、4.25(2H,t,J=5.2Hz)、3.67(1H,ddd、J=10.0,4.8,3.6Hz)、3.51(2H,dt,J=5.6,5.2Hz)、2.30−2.44(2H,m)、1.95(3H,s)
【0081】
<合成例5>N−t−ブチル−6−ヒドロキシヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロールの合成
温度計、攪拌装置、窒素導入管および滴下漏斗を取り付けた内容積2Lの三つ口フラスコに、塩化アクリロイル217.2g(2.400mol)およびトルエン520gを仕込み、内温を0℃に冷却した。この混合液へ、滴下漏斗からシクロペンタジエン190.4g(2.880mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃にて1時間攪拌し、反応中間体溶液(A)を調製した。
温度計、攪拌装置、窒素導入管および滴下漏斗を取り付けた内容積2Lの三つ口フラスコに、t−ブチルアミン201.1g(2.750mol)およびトルエン513gを仕込み、内温を0℃に冷却した。この混合液へ、滴下漏斗から、上記で得られた反応中間体溶液(A)を1時間30分かけて滴下した後、内温を25℃に昇温した。得られた反応混合物に酢酸エチル1800mlおよび水300mlを添加し、30分攪拌した後、静置して分液した後、有機層を得た。得られた有機層を減圧下に濃縮して濃縮物を得た。
該濃縮物に酢酸エチル750mlおよびヘキサン250mlを添加し、40℃に加熱して濃縮物を溶解した。攪拌しながら2℃まで冷却した後、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を減圧乾燥し、N−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボキサミド124.3g(0.643mol;収率26.8%)を得た。
温度計、攪拌装置、窒素導入管および滴下漏斗を取り付けた内容積2Lの三つ口フラスコに、N−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボキサミド50.0g(0.259mol)、塩化メチレン250g、炭酸カリウム121.6g(0.880mol)および水550gを仕込み、内温を0℃に冷却した。この混合液へ、滴下漏斗からm−クロロ過安息香酸75.9g(0.440mol)および塩化メチレン1559gを20分間かけて滴下した。0〜7℃にて4時間攪拌した後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液22gを添加し、30分間攪拌した。静置して分液した後、有機層を水400mlで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下に濃縮して濃縮物を得た。
該濃縮物にジイソプロピルエーテル554gおよびヘキサン222gを添加し、内温を50℃に昇温して濃縮物を溶解した後、2℃まで冷却し、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥し、N−t−ブチル−5,6−エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−カルボキサミド26.4g(0.126mol;収率48.6%)を得た。
温度計、攪拌装置および窒素導入管を取り付けた内容積2Lの三つ口フラスコに、カリウム−t−ブトキシド61.0g(0.544mol)およびt−ブタノール1045gを仕込み、50℃に昇温した。この混合液へ、N−t−ブチル−5,6−エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−カルボキサミド56.9g(0.272mol)を1時間かけて添加した。続いて内温を25℃に冷却した後、3.9質量%塩酸620gおよび酢酸エチル1900mlを添加し、30分間攪拌した。静置して分液した後、有機層を水400mlで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下濃縮して濃縮物を得た。
得られた濃縮物にメタノール30gおよびジイソプロピルエーテル820gを添加し、内温を50℃に昇温して濃縮物を溶解した。続いて0℃まで冷却した後、析出した粗結晶をろ取した。得られた粗結晶に酢酸エチル200gおよびジイソプロピルエーテル200gを添加し、内温を50℃に昇温して粗結晶を溶解した。続いて0℃まで冷却した後、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を減圧乾燥し、下記特性を有するN−t−ブチル−6−ヒドロキシヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロール24.9g(0.119mol;収率43.8%)を得た。
【0082】
【化22】
【0083】
<実施例5>N−t−ブチル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロール−6−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートの合成
温度計、攪拌装置および窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3つ口フラスコに、合成例5で得られたN−t−ブチル−6−ヒドロキシヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロール5.00g(23.9mmol)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル15mg、酢酸エチル30.0g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン0.18g(1.18mmol)を仕込み、24〜26℃で撹拌下に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート4.13g(26.6mmol)を2.4時間かけて滴下した。滴下終了から1時間後、反応混合液をUV検出器を備えたHPLCにて分析したところ、N−t−ブチル−6−ヒドロキシヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロールの変換率は97%であった。得られた反応混合液に酢酸エチル20.0mLを追加し、0.5wt%HCl水溶液にてpHを3としたところで、有機層と水層を分離した。得られた有機層を水20gで5回洗浄した後、減圧下に濃縮して、11.3gの濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;酢酸エチル/ヘキサン=3/1(体積比))で分離精製することにより、N−t−ブチル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロール−6−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート6.52g(17.9mmol、収率74.9%)を得た。
【0084】
【化23】
【0085】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:6.12(1H,s)、5.60(1H,m)、4.94(1H,br)、4.52(1H,s)、4.24(2H,t,J=5.2Hz)、3.63(1H,d,J=4.4Hz)、3.51(2H,dt,J=5.2,5.2Hz)、2.87(1H,br)、2.49(1H,br)、2.28(1H,dd,J=10.4,4.0Hz)、1.95(3H,m),1.88(1H,ddd,J=13.6,10.8,4.4Hz)、1.79(1H,d,J=10.8Hz)、1.60(1H,d,J=13.6Hz)、1.36−1.45(10H,m)
【0086】
<合成例6>5−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの合成
温度計、攪拌装置、および窒素導入管を取り付けた内容積200mLの三つ口フラスコに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物16.7g(0.102mol)、メタノール100.0gを順次仕込み、メタノールが還流した状態で20時間加熱攪拌した後、減圧下にメタノールを留去して濃縮物を得た。
攪拌装置、温度計および滴下漏斗を取り付けた内容積200mLの四つ口フラスコに、上記で得られた濃縮物全量と88%ギ酸12.0g(0.232mol)を順次仕込み混合した後、加熱して内温を45〜46℃としたところに、30%過酸化水素水26.1g(0.232mol)を6時間かけて滴下した。滴下終了後も内温を45℃前後で20時間攪拌した。反応混合液を15℃まで冷却後、亜硫酸ナトリウムをデンプン紙により過酸化水素が検出されなくなるまで内温15〜20℃の範囲で添加した後、20%水酸化ナトリウム水溶液で反応混合液のpHを7.8とした。酢酸エチル200gで3回抽出を行い、得られた有機層を合わせて減圧下に濃縮した。得られた固体に酢酸エチル50gを加え、60℃まで加温した後、ジイソプロピルエーテルをゆっくりと加え、溶液に濁りが生じたところでジイソプロピルエーテルの添加を止めて、0℃までゆっくりと冷却し、析出した結晶をろ過した。ろ別した結晶を0℃のジイソプロピルエーテル30gで洗浄し、40℃で2時間減圧下に乾燥することで、5−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン10.0g(純度99.0%、0.047mol)を得た。
【0087】
【化24】
【0088】
<実施例6>3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートの合成
温度計、攪拌装置および窒素導入管を取り付けた内容積50mLの3つ口フラスコに、合成例6で得られた5−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン5.00g(23.6mmol)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル15mg、酢酸エチル30.0g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン0.18g(1.18mmol)を仕込み、24〜26℃で撹拌下に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート4.2g(27.1mmol)を0.5時間かけて滴下した。滴下終了から1時間後、反応混合液をUV検出器を備えたHPLCにて分析したところ、5−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの変換率は69%であった。この反応混合液に、水20.0gを添加し、1.0wt%塩酸水溶液でpHを1とした後、有機層と水層を分離した。得られた有機層を水20gで6回洗浄した後、減圧下に溶媒を留去して9.13gの濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;酢酸エチル/ヘキサン=2/1(体積比))で分離精製することにより、3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート2.45g(6.68mmol、収率28.4%)を得た。
【0089】
【化25】
【0090】
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、ppm)δ:6.12(1H,m)、5.60(1H,m)、5.13(2H,br)、4.61(1H,d,J=4.8Hz)、4.23(2H,t,J=5.2Hz)、3.72(3H,s)、3.46−3.53(2H,m)、3.30(1H,br)、3.09(1H,dd,J=10.8,3.2Hz)、2.77−2.85(2H,m)、2.06(1H,d,J=11.6Hz)、1.95(3H,m)、1.65(1H,d,J=11.6Hz)
【0091】
<実施例7>高分子化合物(a)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、実施例1で得られた2,6−ノルボルナンスルトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート6.8g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(a)を7.6g得た。得られた高分子化合物(a)の重量平均分子量(Mw)は9,200、分子量分布は1.9であった。
【0092】
【化26】
【0093】
<実施例8>高分子化合物(b)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、実施例2で得られた2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート6.1g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(b)を7.8g得た。得られた高分子化合物(b)の重量平均分子量(Mw)は8,900、分子量分布は1.8であった。
【0094】
【化27】
【0095】
<実施例9>高分子化合物(c)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、実施例3で得られた2,6−(7−オキサノルボルナン)カルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート6.2g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(c)を7.2g得た。得られた高分子化合物(c)の重量平均分子量(Mw)は9,400、分子量分布は1.9であった。
【0096】
【化28】
【0097】
<実施例10>高分子化合物(d)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、実施例4で得られた7−オキサノルボルナン−2,6−スルトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート6.9g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(d)を6.9g得た。得られた高分子化合物(d)の重量平均分子量(Mw)は8,800、分子量分布は1.8であった。
【0098】
【化29】
【0099】
<実施例11>高分子化合物(e)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、実施例5で得られたN−t−ブチル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−4H−シクロペンタ[2,3−b]ピロール−6−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート7.2g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(e)を7.0g得た。得られた高分子化合物(e)の重量平均分子量(Mw)は10,100、分子量分布は1.8であった。
【0100】
【化30】
<実施例12>高分子化合物(f)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、実施例6で得られた3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメート7.3g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(f)を6.6g得た。得られた高分子化合物(f)の重量平均分子量(Mw)は9,200、分子量分布は1.7であった。
【0101】
【化31】
【0102】
<比較合成例1>高分子化合物(g)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、5−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−2,6−ノルボルナンサルトン6.3g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(g)を7.3g得た。得られた高分子化合物(g)の重量平均分子量(Mw)は9,400、分子量分布は1.9であった。
【0103】
【化32】
【0104】
<比較合成例2>高分子化合物(h)の合成
攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.0g(17.2mmol)、3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル=メタクリラート1.4g(6.0mmol)、5−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−2,6−ノルボルナンカルボラクトン5.5g(19.8mmol)およびメチルエチルケトン36.4gを仕込み、窒素バブリングを10分間行なった。窒素雰囲気下で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.36g(2mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、メタノール220gに撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で8時間乾燥して、以下の繰り返し単位(数値はモル比を表す。)からなる高分子化合物(h)を7.0g得た。得られた高分子化合物(h)の重量平均分子量(Mw)は8,900、分子量分布は1.8であった。
【0105】
【化33】
【0106】
<実施例13〜18および比較例1〜2>
実施例7〜12または比較合成例1〜2で得られた高分子化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)または(h)を100質量部、光酸発生剤として「TPS−109」(製品名、成分;ノナフルオロ−n−ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、みどり化学株式会社製)4.5質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/シクロヘキサノン混合溶剤(質量比=1:1)1896質量部を混合し、フォトレジスト組成物5種類を調製した。
これらのフォトレジスト組成物を孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過した。クレゾールノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社製「PS−6937」)6質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液をスピンコーティング法により塗布して、ホットプレート上で200℃、90秒間焼成することにより膜厚100nmの反射防止膜(下地膜)を形成させた直径10cmのシリコンウェハー上に、該ろ液をそれぞれスピンコーティング法により塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プリベークして膜厚300nmのレジスト膜を形成させた。このレジスト膜に波長193nmのArFエキシマレーザーを用いて二光束干渉法露光した。引き続き、130℃、90秒間ポストエクスポージャーベークした後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間現像処理することにより、1:1のラインアンドスペースパターンを形成させた。現像済みウェハーを割断したものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、線幅100nmのラインアンドスペースを1:1で解像した露光量におけるパターンの形状観察と線幅の変動(LWR)の測定を行った。
LWRは、測定モニタ内において、線幅を複数の位置で検出し、その検出位置のバラツキの分散(3σ)を指標とした。また、パターンの断面形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、矩形性が高いものを「○」、矩形性が低いものを「×」として評価した。結果を表1および表2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
以上より、本発明のアクリル酸エステル誘導体(1)を含有する原料を重合して得られた高分子化合物(高分子化合物(a)〜(f))を利用したレジスト組成物は、本発明のアクリル酸エステル誘導体(1)を用いずに重合して得られた高分子化合物(高分子化合物(g)および(h))を利用したレジスト組成物に比べ、良好な形状のレジストパターンを形成できることに加え、LWRが改善されており、高解像度のレジストパターンの形成とLWRの低減とを両立させることができた。