(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の柱状形状の下部電極は、高集積化の要請から2次元的に高密度に林立するように形成されるため、例えば直径約40nmで、高さ約2000nmといった高アスペクト比を有している。このため、メモリセルの製造過程において下部電極が倒壊してしまうという問題が生じ得る。
【0005】
これを防止するため、基板面と平行に延び、複数の下部電極の上端付近を繋いで下部電極を支持する支持膜を設ける試みが行われている。例えば特許文献1には、ルテニウム(Ru)により形成されるピラー型電極の上部を連結する窒化シリコン膜が開示されている。
【0006】
一方、半導体記憶素子の開発動向として、高集積化のために限界寸法の更なる低減が求められている。限界寸法の低減は、例えば絶縁膜による絶縁特性の悪化を招くおそれがあり、これを防止するため、従来は使用されていなかった絶縁体材料が使用されるようになってきている。新しい材料のなかには、例えば成膜温度がこれまでの材料よりも低いものもある。この場合、その絶縁膜を成膜した後のプロセスにおいて、その成膜温度よりも高い温度に基板を加熱すると、その絶縁膜が劣化するなどの問題が生じ得る。そのため、後続のプロセス温度を低くしなければならなくなるが、そうすると、例えば上述の支持膜に働く応力が大きくなり、却って柱状形状の下部電極が倒壊してしまう事態ともなる。
【0007】
本発明は、上記に照らし、柱状形状を有し密に配列される電極の倒壊を防ぐことが可能な成膜方法、これを含む半導体装置の製造方法、成膜装置、及び半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、複数の基板を保持する基板保持部が収容される反応管と、シリコンを含む第1の原料ガスを前記反応管へ供給する第1のガス供給部であって、前記第1の原料ガスの前記反応管への供給及び停止を制御する第1の開閉弁を有する当該第1のガス供給部と、ホウ素を含む第2の原料ガスを前記反応管へ供給する第2のガス供給部であって、前記第2の原料ガスの前記反応管への供給及び停止を制御する第2の開閉弁を有する当該第2
のガス供給部と、チッ素を含む第3の原料ガスを前記反応管へ供給する第3のガス供給部であって、前記第3の原料ガスの前記反応管への供給及び停止を制御する第3の開閉弁を有する当該第3
のガス供給部と、前記反応管と、当該反応管と接続される排気部との間に設けられ、前記反応管と前記排気部とを連通させ、遮断する第4の開閉弁と、を備える成膜装置において行われる成膜方法であって、前記第4の開閉弁を閉じたまま、前記第1の開閉弁を開いて前記第1の原料ガスを前記反応管へ供給し、第1の期間の経過後に、前記第1の開閉弁を閉じて、前記反応管へ供給された前記第1の原料ガスを前記反応管に閉じ込め、第2の期間の経過後に、前記第4の開閉弁を開いて前記反応管内を排気し、第3の期間の経過後に、前記第3の開閉弁を開いて前記第3の原料ガスを供給することにより前記基板上に窒化シリコン層を形成する窒化シリコン層堆積ステップと、前記第4の開閉弁を閉じたまま、前記第2の開閉弁を開いて前記第2の原料ガスを前記反応管へ供給し、第1の期間の経過後に、前記第
2の開閉弁を閉じて、前記反応管へ供給された前記第2の原料ガスを前記反応管に閉じ込め、第2の期間の経過後に、前記第4の開閉弁を開いて前記反応管内を排気し、第3の期間の経過後に、前記第3の開閉弁を開いて前記第3の原料ガスを供給することにより前記基板上に窒化ホウ素層を形成する窒化ホウ素層堆積ステップと、を
複数回ずつ繰り返すことにより、ホウ素添加窒化シリコン膜を成膜する成膜方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、複数の基板を保持する基板保持部が収容される反応管と、シリコンを含む第1の原料ガスを前記反応管へ供給する第1のガス供給部であって、前記第1の原料ガスの前記反応管への供給及び停止を制御する第1の開閉弁を有する当該第1のガス供給部と、ホウ素を含む第2の原料ガスを前記反応管へ供給する第2のガス供給部であって、前記第2の原料ガスの前記反応管への供給及び停止を制御する第2の開閉弁を有する当該第2
のガス供給部と、チッ素を含む第3の原料ガスを前記反応管へ供給する第3のガス供給部であって、前記第3の原料ガスの前記反応管への供給及び停止を制御する第3の開閉弁を有する当該第3
のガス供給部と、前記反応管と、当該反応管と接続される排気部との間に設けられ、前記反応管と前記排気部とを連通させ、遮断する第4の開閉弁と、前記第4の開閉弁を閉じたまま、前記第1の開閉弁を開いて前記第1の原料ガスを前記反応管へ供給し、第1の期間の経過後に、前記第1の開閉弁を閉じて、前記反応管へ供給された前記第1の原料ガスを前記反応管に閉じ込め、第2の期間の経過後に、前記第4の開閉弁を開いて前記反応管内を排気し、第3の期間の経過後に、前記第3の開閉弁を開いて前記第3の原料ガスを供給することにより前記基板上に窒化シリコン層が形成され、前記第4の開閉弁を閉じたまま、前記第2の開閉弁を開いて前記第2の原料ガスを前記反応管へ供給し、第1の期間の経過後に、前記第
2の開閉弁を閉じて、前記反応管へ供給された前記第2の原料ガスを前記反応管に閉じ込め、第2の期間の経過後に、前記第4の開閉弁を開いて前記反応管内を排気し、第3の期間の経過後に、前記第3の開閉弁を開いて前記第3の原料ガスを供給することにより前記基板上に窒化ホウ素層が形成され
、前記窒化シリコン層の形成と前記窒化ホウ素層の形成とを複数回ずつ繰り返すように、前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁、前記第3の開閉弁、及び前記第4の開閉弁を制御する制御部と、を備える成膜装置が提供される。
【0010】
本発明の第3の観点によれば、電界効果トランジスタと、柱状形状を有するキャパシタとを有する半導体装置を製造する製造方法であって、前記電界効果トランジスタが形成された基板上に、ホウ素添加窒化シリコン膜を含む多層膜を形成し、前記多層膜を貫通して、前記電界効果トランジスタの不純物拡散領域と電気的に接続され、柱状形状を有する第1の電極を形成し、前記ホウ素添加窒化シリコン膜が残るように前記多層膜を除去し、
前記第1の電極の少なくとも側面に誘電体膜を形成し、前記誘電体膜を覆う第2の電極を形成する工程を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の観点によれば、電界効果トランジスタと、柱状形状を有するキャパシタとを有する半導体装置であって、前記電界
効果トランジスタの不純物拡散領域と電気的に接続し、柱状形状を有する第1の電極と、前記第1の電極の少なくとも側面に形成される誘電体膜と、前記誘電体膜上に形成される第2の電極と、前記柱状形状を有する前記第1の電極の長手方向と交差する方向に延び、前記第2の電極の少なくとも一部を貫通して前記第1の電極を連結するホウ素添加窒化シリコン膜により形成される支持膜と、を備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、柱状形状を有し密に配列される電極の倒壊を防ぐことが可能な成膜方法、これを含む半導体装置の製造方法、成膜装置、及び半導体装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0015】
(第1の実施形態)
図1から
図11までを参照しながら、本発明の第1の実施形態による半導体装置の製造方法について、ピラー型キャパシタを含むメモリセルを製造する場合を例にとり説明する。
図1は、本実施形態による半導体装置であるメモリセルの一例を示す断面図である。図示のとおり、メモリセル100は、p型のシリコンウエハW(以下、ウエハW)に形成される(電界効果)トランジスタTrと、層間絶縁膜1を介してトランジスタTrの上方に形成されるキャパシタCとを有している。トランジスタTrは、ウエハWに局所的に絶縁体を埋め込むことにより形成された素子分離領域50と、素子分離領域50により区画される活性化領域においてウエハWに形成された凹部の側壁を覆うゲート酸化膜51sと、ゲート酸化膜51sにより画成される凹部を埋め込むとともに、凹部よりも上方に突出するように形成されるゲート電極51eと、ソース/ドレイン領域としての不純物拡散領域51c,51nとを有している。
【0016】
また、トランジスタTrの不純物拡散領域51cは、コンタクトプラグ51pを介してビット線51bと電気的に接続されている。一方、素子分離領域50上にはワード線51wが形成されている。また、ゲート電極51e及びワード線51wの上には例えば窒化シリコンからなる絶縁膜54が形成され、これらを覆うように絶縁膜53が形成されている。絶縁膜53の上には、上述の層間絶縁膜1が形成されている。
【0017】
キャパシタCは、ピラー形状を有する下部電極7Lと、下部電極7Lを覆う誘電体層7Kと、誘電体層7K上に設けられる上部電極7Uとを有している。下部電極7Lは、ソース電極又はドレイン電極を兼ねるコンタクトプラグ2を介してトランジスタTrの不純物拡散領域51nと電気的に接続されている。
また、下部電極7Lは、本実施形態においてはルテニウム(Ru)から形成され、例えば約40nmの直径と、約2000nmの高さとを有している。下部電極7Lのアスペクト比(高さ/直径)が大きい場合には、下部電極7Lが倒壊するおそれがあるため、下部電極7Lの上部に下部電極7Lの倒壊を防ぐためのサポート膜5が設けられている。サポート膜5は、後述のとおりホウ素を含有する窒化シリコン(SiBN)により形成される。説明の便宜上、以下の説明においてサポート膜5をSiBN膜という場合がある。
【0018】
また、誘電体層7Kは、例えばハフニウムオキサイド(HfO
2)、アルミニウムオキサイド(Al
2O
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、又は酸化ジルコニウム(ZrO
2)といった高誘電体(high-k)材料から構成される。また、これらの材料を積層した多層膜により誘電体層7Kを形成しても良い。
また、上部電極7Uは、Ru、Wなどの金属又はポリシリコンにより形成することができる。
【0019】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。以下の説明では、
図1に示す半導体装置100を製造する場合を例にとる。
(トランジスタTrの形成)
始めに、半導体装置100のトランジスタTrの製造について説明する。まず、フォトリソグラフィ技術により、素子分離領域50となる凹部をウエハWに形成し、凹部を埋め込むようにウエハW上に例えば酸化シリコンを堆積し、その酸化シリコン膜を例えば化学機械研磨(CMP)法により除去することにより、素子分離領域50が形成される。次いで、ウエハW表面における素子分離領域50の間の領域に対して、リン等のn型不純物をイオン注入する。この後、イオンが注入された領域の上にマスク層を形成して、ウエハWに凹部を形成する。これにより、イオンが注入された領域が分離されて、不純物拡散領域51c及び51nが得られる。また、マスク層を残したまま、熱酸化法により凹部の内面にゲート酸化膜51sを形成する。続けて、ゲート酸化膜51sで画成される凹部を埋め込むように例えばTiNなどの金属と窒化シリコンとをこの順で堆積し、マスク層を除去(リフトオフ)すると、ゲート電極51e及び絶縁膜54が得られる。
なお、マスク層には、素子分離領域50の表面に対応した開口が設けられており、これにより、ゲート電極51eとともにワード線51wが形成され、ワード線51w上にも絶縁膜54が得られる。
次に、ゲート電極51e、絶縁膜54、及びウエハWの表面を覆うように絶縁膜53を形成する。次いで、絶縁膜53中に、不純物拡散領域51cと接続するコンタクトプラグ51pを形成した後、コンタクトプラグ51pと接続するビット線51bを形成する。次に、絶縁膜53及びビット線51bを覆うように層間絶縁膜1を形成した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチングにより、コンタクトプラグ2を形成するため、層間絶縁膜1及び絶縁膜53を貫く開口を形成する。
【0020】
続けて、開口の側面及び底面と、層間絶縁膜1の上とにチタン(Ti)及び窒化チタン(TiN)をこの順で堆積した後、開口を埋め込むようにタングステン(W)を堆積する。この後、層間絶縁膜1上に堆積されたTi、TiN、及びWを、CMP法により除去し、層間絶縁膜1を露出させる。これにより、層間絶縁膜1及び絶縁膜53を貫通し、不純物拡散領域51nに電気的に接続するコンタクトプラグ2が形成される。この後、層間絶縁膜1上に、絶縁膜(窒化シリコン)3を形成すると、トランジスタTrの形成が終了する。
【0021】
(キャパシタCの形成)
次に、
図2から
図11までを参照しながら、メモリセル100のキャパシタCの形成方法を説明する。
図2から
図11は、説明の便宜上、トランジスタTrを省略する。また、
図2から
図8においては2つの断面図を示す。各図の(a)は、
図1に示す断面(x−z面)に対応した断面を示し、図(b)は、図(a)中のA−A線に沿った断面図(z−y面)を示す。
【0022】
図2に示すように、絶縁膜3の上に、酸化シリコン膜4、ボロンを含有する窒化シリコン(SiBN)膜5、酸化シリコン膜6、アモルファスカーボン膜7、及び反射防止膜8をこの順に例えばCVD法により堆積する。これらの膜の膜厚を例示すると、絶縁膜3は50〜100nmであり、酸化シリコン膜4は1〜3μmであり、SiBN膜5は約100nmであり、酸化シリコン膜6は約100nmであり、アモルファスカーボン膜7は約800nmである。また、反射防止膜8は、酸窒化シリコン(SiON)層と、この上に堆積される酸化シリコン膜とにより構成され得る。
なお、SiBN膜5は、後述する本発明の実施形態による堆積方法によって好適に成膜される。この成膜方法については後述する。
【0023】
また、反射防止膜8の上にはフォトレジスト膜9が形成されており、
図2(a)に示すように、フォトレジスト膜9は、y軸方向に延びるラインがx軸方向に所定のピッチで配列されるライン・アンド・スペース(L/S)パターンへとパターニングされている。ここで、L/Sパターンのスペースは、コンタクトプラグ2の上方に位置しており、また、スペースの幅はコンタクトプラグ2の幅(直径)と等しい。
【0024】
次に、フォトレジスト膜9をマスクとして用い、CF
4ガスを用いた異方性ドライエッチングにより反射防止膜8をエッチングし、さらに、フォトレジスト膜9とエッチングされた反射防止膜8とをマスクとして用い、酸素(O
2)ガスを用いた異方性ドライエッチングにより、アモルファスカーボン膜7をエッチングする。このとき、フォトレジスト膜9もまたO
2ガスを用いたエッチングにより除去される。この結果、
図3に示す構造が得られる。
【0025】
次いで、L/Sパターンが転写されたアモルファスカーボン膜7をマスクとして用い、異方性ドライエッチングにより、酸化シリコン膜6、SiBN膜5、酸化シリコン膜4、及び絶縁膜3(窒化シリコン)をエッチングする。この結果、
図4(a)に示すように、酸化シリコン膜6、SiBN膜5、酸化シリコン膜4、及び絶縁膜3を貫き、y軸方向に延び、x軸方向に所定のピッチで配列される複数の溝部10が形成される。溝部10の底部にはコンタクトプラグ2が露出している。
【0026】
次に、エッチングされずに残る酸化シリコン膜6の表面を覆い、溝部10を埋め込むようにルテニウム(Ru)膜11をCVD法により堆積する。この後、酸素(O
2)ガスと塩素(Cl
2)ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、又はCMPにより、酸化シリコン膜6が露出するまでRu膜11を除去する。この結果、
図5(a)に示すように、溝部10に埋め込まれたRu膜11が、酸化シリコン膜6の表面に露出することとなる。なお、Ru膜11は、底部においてコンタクトプラグ2と電気的に接続されている。
【0027】
次いで、酸化シリコン膜6の表面と、ここに露出するRu膜11との上に、
図6に示すように、酸化シリコン膜12、アモルファスカーボン膜13、及び反射防止膜14をこの順に堆積する。ここで、酸化シリコン膜12の膜厚は90〜110nmであり、アモルファスカーボン膜13の膜厚は720〜880nmである。また、反射防止膜14は、酸窒化シリコン(SiON)層と、この上に堆積される酸化シリコン膜とにより構成され得る。また、反射防止膜14の上にはフォトレジスト膜17が形成されている。このフォトレジスト膜17は、
図6(b)に示すように、x軸方向に延びるラインがy軸方向に所定のピッチで配列されるL/Sパターンへとパターニングされている。また、フォトレジスト膜17におけるラインは、コンタクトプラグ2の配列方向(x軸方向)に沿うと共に、これらのコンタクトプラグ2の上方に位置している。
なお、
図2に示したフォトレジスト膜9のラインはy軸方向に延びていたため、フォトレジスト膜9に基づいて形成されたRu膜11もまたy軸方向に延びている。一方、
図6に示したフォトレジスト膜17のラインはx軸方向に延びている。すなわち、上方から(−z軸方向から)見ると、Ru膜11とフォトレジスト膜17のラインとが井桁状に配列されている。そして、Ru膜11におけるフォトレジスト膜17のラインと重なる部分の下方に、コンタクトプラグ2が位置している。
【0028】
次に、フォトレジスト膜17をマスクとして用い、CF
4ガスを用いた異方性ドライエッチングにより反射防止膜14をエッチングする。そして、フォトレジスト膜17と、フォトレジスト膜17のL/Sパターンが転写された反射防止膜14とをマスクとして用い、酸素(O
2)ガスを用いた異方性ドライエッチングにより、アモルファスカーボン膜13をエッチングする。これにより、フォトレジスト膜17のL/Sパターンがアモルファスカーボン膜13に転写される。また、このエッチングにより、フォトレジスト膜17もまた除去される。この結果、
図7に示す構造が得られる。
【0029】
次に、アモルファスカーボン膜13をマスクとして用い、異方性ドライエッチングにより酸化シリコン膜12、酸化シリコン膜6、SiBN膜5、及び酸化シリコン膜4をエッチングする。この結果、
図8に示す構造が得られる。この構造を斜視図で示すと
図9のとおりである。すなわち、この構造は、x軸方向に延び、y軸方向に所定のピッチで配列される複数の第1の壁部W1と、第1の壁部W1に直交する、y軸方向に延び、x軸方向に所定のピッチで配列される第2の壁部W2とを有している。第2の壁部W2は、Ru膜11から構成されており、第1の壁部W1は、Ru膜11を含むと共に、アモルファスカーボン膜13を用いたエッチングにおいて残存した酸化シリコン膜4、SiBN膜5、酸化シリコン膜6、及び酸化シリコン膜12を有している。
【0030】
次に、酸化シリコン膜12をマスクとして用い、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置においてRu膜11を異方性エッチングする。この異方性エッチングでは、酸素(O
2)ガスと塩素(Cl
2)ガスを混合したガスがエッチングガスとして用いられる。このエッチングにより、
図9に示す、露出した第2の壁部W2が除去され、第1の壁部W1が残ることとなる(
図10参照)。
【0031】
続いて、希フッ酸(DHF)を用いた湿式エッチングにより、第1の壁部W1内に残存している酸化シリコン膜12、酸化シリコン膜6、及び酸化シリコン膜4を除去すると、
図11に示すように、層間絶縁膜1及び絶縁膜3上に、Ru膜11とSiBN膜5とが残る。このRu膜11は、コンタクトプラグ2の上に立設するとともに、マトリックス状に配置される複数の柱状形状を有しており、下部電極7Lに相当する。
図11に示すように、下部電極7Lは、x軸方向に延びるSiBN膜5により上部において連結され、これにより倒壊が防止されている。
【0032】
次に、下部電極7L、絶縁膜3、及びSiBN膜5の露出面を覆うように誘電体層7Kを形成する。この後、CVD法により、Ru、Wなどの金属またはポリシリコンを用いて、上部電極7Uを形成する。そして、上部電極7U上に層間絶縁膜73、配線74、及び表面保護膜75(
図1)を形成すると、
図1に示す半導体装置111が完成する。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、上述のSiBN膜5を成膜するに好適な、本発明の実施形態による成膜装置について、
図12及び
図13を参照しながら説明する。
図12は、本発明の実施形態による成膜装置を示す概略断面図であり、
図13は、成膜装置(加熱手段は省略)を示す横断面図である。図示のとおり、成膜装置200は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器400を有している。処理容器400は、例えば石英により形成され、その天井には、石英製の天井板41が設けられている。また、処理容器400の下端開口部には、例えばステンレススチールにより形成された、円筒体形状を有するマニホールド800がOリング等のシール部材81を介して連結され、マニホールド800によって処理容器400が支持されている。マニホールド800の下部開口から、多数枚の被処理体としての半導体ウエハWを多段に載置した保持手段としての石英製のウエハボート120が昇降可能に挿脱自在になされている。本実施形態において、ウエハボート120の支柱12Aには、例えば50〜100枚の直径が300mmのウエハWを略等ピッチで多段に支持され得る。
【0034】
ウエハボート120は、石英製の保温筒140を介してテーブル160上に載置されており、このテーブル160は、マニホールド800の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部180を貫通する回転軸Sにより支持される。回転軸Sと、回転軸Sが貫通する、蓋部180における貫通孔との間には、例えば磁性流体シール22が介設され、この回転軸Sを気密に回転可能に支持している。また、蓋部18の周辺部とマニホールド800の下端部には、例えばOリング等よりなるシール部材24が介設されており、処理容器400内の密閉性が保持されている。
【0035】
回転軸Sは、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム26の先端に取り付けられており、ウエハボート120及び蓋部180等を一体的に昇降して処理容器400内へ出し入れされる。尚、テーブル160を蓋部180へ固定し、ウエハボート120を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0036】
マニホールド800には、プラズマ化される窒化ガスとして、例えばアンモニア(NH
3)ガスを供給する窒化ガス供給手段28と、成膜ガスであるシラン系ガスとして例えばDCS(ジクロロシラン)ガスを供給するシラン系ガス供給手段30と、ボロン含有ガスとして例えばBCl
3ガスを供給するボロン含有ガス供給手段32と、パージガスとして不活性ガス、例えばN
2ガスを供給するパージガス供給手段36とが接続されている。
【0037】
具体的には、窒化ガス供給手段28は、マニホールド800の側壁を内側へ貫通し、屈曲されて上方向へ延びる石英管よりなるガス分散ノズル38を有している。ガス分散ノズル38には、その長さ方向に沿って複数(多数)のガス噴射孔38Aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス噴射孔38Aから水平方向に向けて略均一にアンモニアガスが噴射される。
【0038】
また、シラン系ガス供給手段30は、マニホールド800の側壁を内側へ貫通し、屈曲されて上方向へ延びる石英管よりなるガス分散ノズル40を有している。ガス分散ノズル40には、その長さ方向に沿って複数(多数)のガス噴射孔40Aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス噴射孔40Aから水平方向に向けて略均一にシラン系ガスであるDCSガスが噴射される。
【0039】
また、ボロン含有ガス供給手段32は、マニホールド800の側壁を内側へ貫通し、屈曲されて上方向へ延びる石英管よりなるガス分散ノズル42を有している。ガス分散ノズル42には、その長さ方向に沿って複数(多数)のガス噴射孔42A(
図13参照)が所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス噴射孔42Aから水平方向に向けて略均一にBCl
3ガスが噴射される。
また、パージガス供給手段36は、マニホールド800の側壁を内側へ貫通するガスノズル46を有している。
【0040】
上述の各ノズル38、40、42、46には、それぞれのガス通路48、50、52、56が接続されている。各ガス通路48、50、52、56には、それぞれ開閉弁48A、50A、52A、56A、及び例えばマスフローコントローラなどの流量制御器48B、50B、52B、56Bが設けられている。これらにより、NH
3ガス、DCSガス、BCl
3ガス、及びN
2ガスが、流量制御されて供給され得る。また、これらの各ガスの供給、停止、ガス流量の制御、排気系ESの開閉弁84a及び圧力調整弁84b、並びに高周波電源76のオン・オフ制御等は、例えばコンピュータ等を含む制御部60により行われる。制御部60は、成膜装置100の全体の動作も制御する。また、制御部60は、制御を行うためのプログラムが記憶されている記憶媒体62からプログラムを読み込み、読み込んだプログラムを実行することにより、成膜装置200及び各構成部品又は部材を制御する。記憶媒体62は、例えば、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フロッピーディスク(登録商標)等であって良い。
【0041】
処理容器400の側壁の一部には、その高さ方向に沿ってプラズマを発生させて窒化ガスを活性化させる活性化部66が形成されている。具体的には、活性化部66は、処理容器400の側壁に上下方向に細長く形成された開口70を、その外側から、例えば石英製のプラズマ区画壁72で気密に覆うことにより形成されている。より具体的には、開口70に対して、その外側からプラズマ区画壁72を溶接することにより形成されている。これにより、処理容器400の側壁には、凹部状に外側へ窪み、処理容器400に向かって開口する空間が形成される。開口70は、ウエハボート120に保持される全てのウエハWを高さ方向においてカバーできるように上下方向に十分に長く形成されている。
また、プラズマ区画壁72の外側において、両側壁に沿って、上下方向に延びて互いに対向する細長い一対のプラズマ電極74が設けられている(
図13参照)。プラズマ電極74にはプラズマ発生用の高周波電源76が給電ライン78を介して接続されており、プラズマ電極74に例えば13.56MHzの高周波電圧を印加することにより、プラズマ区画壁72の内部空間にプラズマを発生させることができる。尚、高周波電圧の周波数は13.56MHzに限定されず、他の周波数、例えば400kHz等を用いてもよい。
【0042】
また、プラズマ区画壁72の外側には、これを覆うようにして例えば石英よりなる絶縁保護カバー80が取り付けられている。また、この絶縁保護カバー80の内側部分には、図示しない冷媒通路が設けられており、冷却された窒素ガスや冷却水を流すことによりプラズマ電極74が冷却され得る。
【0043】
また、窒化ガス用のガス分散ノズル38は、途中で処理容器400の半径方向外方へ屈曲されて、プラズマ区画壁72のウエハボート120に対向する面に沿って起立している。したがって、高周波電源76からプラズマ電極74へ高周波電圧を印加すると、ガス分散ノズル38のガス噴射孔38Aから噴射されたアンモニアガスは、プラズマ区画壁72の内部空間で活性化され、処理容器400内のウエハボート120に向かって流れる。
【0044】
一方、
図13に示すように、シラン系ガス用のガス分散ノズル40とボロン含有ガス用のガス分散ノズル42は、処理容器400内において、プラズマ区画壁72の開口70の外側にそれぞれ起立している。各ノズル40、42に設けた各ガス噴射孔40A、42Aから処理容器400の中心方向に向けてシラン系ガスとBCl
3ガスをそれぞれ噴射される。
【0045】
また、処理容器400には、処理容器400内を排気する細長い排気口68が、ウエハボート120を対し活性化部66を隔てて設けられている。また、排気口68を覆うようにして石英よりなる断面コ字状に成形された排気口カバー部材82が溶接により取り付けられている。この排気口カバー部材82は、処理容器400の側壁に沿って上方に延びており、処理容器400の上方にガス出口84を有している。ガス出口84は、開閉弁84a、圧力調整弁84b、及び真空ポンプ84pを含む排気系ESに接続され、これらにより処理容器400は真空に排気される。また、処理容器400の外周を囲むようにしてこの処理容器400及びこの内部のウエハWを加熱する筒体状の加熱部86が設けられている。
【0046】
(第4の実施形態)
次に、
図12及び
図13に加えて
図14を参照しながら、本発明の第4の実施形態による成膜方法について、上述の成膜装置200を用いて上述のSiBN膜を成膜する場合を例にとる。
まず、例えば50〜100枚の300mmサイズのウエハWをウエハボート120(
図12)に搭載する。次いで、このウエハボート120を、予め所定の温度に設定された処理容器400内に対して下方より挿入し、蓋部18を閉じることにより処理容器400を密閉する。処理容器400うちを排気して所定の圧力に維持すると共に、加熱手段86への供給電力を増大させることにより、ウエハWを加熱してプロセス温度に維持する。
【0047】
次に、排気系ESの開閉弁84a(
図12)を開き、圧力調整弁84bを全開にし、真空ポンプ84pにより処理容器400内を到達真空度まで排気する。この後、開閉弁84aを閉じて処理容器400内を封止する。次いで、開閉弁50A(
図12)を開いて、シラン系ガス供給手段30からDCSガスを処理容器400内へ供給し、所定の期間T1(
図14)の経過後、開閉弁50Aを閉じる。この後、所定の期間T2、処理容器400は封止されたままに放置される。期間T1中に処理容器400内に供給されたDCSガスは、期間T1だけでなく期間T2においても処理容器400内に閉じ込められており、これにより、ウエハボート120に保持されるウエハWの表面にDCSガスが十分に吸着する。
【0048】
次に、圧力調整弁84bを全開にしたまま開閉弁84aを開いて、処理容器400内の雰囲気中のDCSガスを排気する。所定の期間T3の経過後、開閉弁48Aを(
図12)を開いて、窒化ガス供給手段28からNH
3ガスを処理容器400内へ供給すると共に、圧力調整弁84を例えば半開することにより、処理容器400内を所定の圧力に維持する。所定の期間T4が経過し、処理容器400内の圧力が安定した後、高周波電源76をオンしてプラズマ電極74に例えば13.56MHzの高周波電圧を印加すると、プラズマ区画壁72の内部空間にプラズマが発生し、これによりNH
3ガスが活性化される。NH
3の活性化により生成された活性種が、ウエハWの表面に吸着したDCSガスを窒化し、ウエハWの表面に一又は数分子層のSiN層が形成される。所定の期間T5が経過した後、高周波電源76をオフにし、開閉弁48Aを閉じると共に圧力調整弁84bを全開することにより、処理容器400内のNH
3ガスを所定の期間T6だけ排気し、再び圧力調整弁84bを閉める。続けて、以上の期間T1からT6までのサイクルが所定の回数繰り返され、所定の分子数を有するSiN膜がウエハWの表面上に成膜される。
【0049】
次に、SiN膜の成膜サイクルの最後の期間T6の後、圧力調整弁84bを閉めたまま、シラン系ガス供給手段30の開閉弁50Aの代わりに、ボロン含有ガス供給手段32の開閉弁52Aを開いてBCl
3ガスを処理容器400内に供給し、所定の期間P1の経過後、開閉弁52Aを閉じる。この後、所定の期間P2、処理容器400は封止されたままに放置される。処理容器400内に期間P1中に供給されたBCl
3ガスは、期間P1だけでなく期間P2においても処理容器400内に閉じ込められており、これにより、ウエハボート120に保持されるウエハWの表面(SiN膜上)にBCl
3ガスが十分に吸着する。
【0050】
次に、圧力調整弁84bを全開にしたまま開閉弁84aを開いて、処理容器400内の雰囲気中のBCl
3ガスを排気する。所定の期間P3の経過後、開閉弁48Aを(
図12)を開いて、窒化ガス供給手段28からNH
3ガスを処理容器400内へ供給すると共に、圧力調整弁84を半開することにより、処理容器400内を所定の圧力に維持する。所定の期間P4が経過し、処理容器400内の圧力が安定した後、高周波電源76をオンしてプラズマ電極74に例えば13.56MHzの高周波電圧を印加すると、プラズマ区画壁72の内部空間にプラズマが発生し、これによりNH
3ガスが活性化される。NH
3の活性化により生成された活性種が、ウエハWの表面に吸着したBCl
3ガスを窒化し、ウエハWの表面に一又は数分子層のBN層が形成される。所定の期間P5が経過した後、高周波電源76をオフにし、開閉弁48Aを閉じると共に圧力調整弁84bを全開することにより、処理容器400内のBCl
3ガスを所定の期間P6だけ排気する。続けて、以上の期間P1からP6までのサイクルが所定の回数繰り返され、所定の分子数を有するBN膜がウエハWの表面上に成膜される。
これ以降、期間T1からT6までのSiN成膜サイクルと、期間P1からP6までのBN成膜サイクルとが所定の回数ずつ繰り返され、SiBN膜が成膜される。また、SiN成膜サイクルの回数と、BN成膜サイクルの回数とを変えることにより、SixByNz(x+y+z=1)膜の組成x及び組成yを調整することができる。
【0051】
上記の成膜方法における条件を例示すると以下のとおりである。
・DCS流量: 50〜2000sccm
・BCl
3流量: 50〜300sccm
・NH
3流量: 500〜5000sccm
・NH
3供給時の処理容器400内圧力: 13.3〜133Pa
・期間T1: 約3秒
・期間T2: 0〜30秒
・期間T3: 5〜10秒
・期間T4: 約1秒
・期間T5: 20秒
・期間T6: 5〜10秒
・期間P1: 5〜15秒
・期間P2: 5〜10秒
・期間P3: 5〜10秒
・期間P4: 約1秒
・期間P5: 20秒
・期間P6: 5〜10秒
なお、処理容器400内を排気する期間T3、T6、P3、P6においては、例えばパージガス供給手段36から不活性ガスを処理容器400内へ供給し、処理容器400内に残るガスをパージしても良い。また、NH
3ガスの流量と処理容器400内の圧力とを安定するための期間T4及びP4を設けずに、NH
3ガスの供給開始と共に高周波電源76をオンにしても良い。
【0052】
次に、本発明の第4の実施形態による成膜方法の効果・利点について
図15から
図18までを参照しながら説明する。
図15は、成膜したSiBN膜(SiN膜を含む)に働く応力と、そのSiBN膜中のホウ素濃度との関係を示すグラフである。図中のホウ素濃度(atm.%)は、SixByNz(x+y+z=1)と表した場合の組成yに対応する。ここで組成zはほぼ0.6であり、(x+y)はほぼ0.4である。また、SiBN膜中の応力は、SiBN膜を成膜するウエハの成膜前後におけるウエハの反りをストレス計により測定し、その結果に基づいて求めた。また、SiBN膜の成膜温度は550℃とした。
【0053】
図15に示すように、ホウ素濃度がゼロ(すなわちSiN膜)の場合、膜中の引っ張り応力は約1.2GPaにも達している。しかし、組成yが増えるにしたがって、応力は急激に減少する。特に組成yが0.3の場合には、SiBN膜中に働く応力は圧縮応力(約0.1GPa)となっている。例えば、サポート膜5(
図11)としてのSiBN膜の膜中に引っ張り応力が働いていると、例えば、サポート膜5と下部電極7Lとを示す上面図である
図16に示すように、下部電極7L(Ru膜11)が、サポート膜5により互いに引っ張られて傾き、下部電極7Lの上端部が接近してしまうおそれがある(図中の矢印参照)。この場合において、互いに隣り合う下部電極7Lが、その上部で接触してしまうと、もはやキャパシタCを形成できなくなる。しかしながら、本発明の実施形態による半導体装置100においては、例えばSiN膜と比べて小さい引っ張り応力を有するSiBNでサポート膜を形成しているため、下部電極7Lが傾くのを回避することが可能となる。
図15の結果から、ホウ素濃度は、膜中の応力が0.5GPa以下となる15atm.%から30atm.%までの範囲が好ましく、21atm.%から28atm.%までの範囲が更に好ましい。
【0054】
図17は、SiBN膜の希フッ酸によるエッチング速度について調べた結果を示す。
図10に示す酸化シリコン膜12、酸化シリコン膜6、及び酸化シリコン膜4を希フッ酸により除去し、下部電極7Lの上部を支持するサポート膜5(SiBN膜)を得るため、サポート膜5の希フッ酸によるエッチング耐性を調べることは重要である。
図17において、縦軸はエッチング量を示し、横軸はエッチング時間を示している。また、
図17には、ホウ素濃度がゼロatm.%、0.12atm.%、0.21atm.%、0.3atm.%の場合について結果を示している。図示のとおり、ホウ素濃度がゼロatm.%(すなわちSiN膜)の場合において、希フッ酸によるエッチング速度(
図17のグラフにおける傾き)が最も大きく、ホウ素濃度が高くなるにしたがって、エッチング速度が低下していくことが分かる。特にホウ素濃度が0.3atm.%の場合には、エッチング初期においては(すなわち最表面は)、SiN膜よりもエッチングされ易いものの、SiN膜のエッチング速度に比べてエッチング速度が半減していることが分かる。この結果から、SiBN膜は、SiN膜に比べ、希フッ酸に対する大きな耐性を有していることが分かる。希フッ酸に対する耐性が高ければ、サポート膜5の膜を薄くすることができる。このため、下部電極7Lに加わる力も低減され、下部電極7Lの倒壊が一層回避される。
図17に示す結果からは、ホウ素濃度は12atm.%から30atm.%までの範囲にあると好ましいと考えられる。
【0055】
また、
図18は、SiBN膜のエッチング量の経時変化について調べた結果を示している。すなわち、所定のホウ素濃度を有するSiBN膜(SiN膜を含む)を成膜2日後と7日後に同一の条件にて希フッ酸によりエッチングし、そのエッチング量を比較した。なお、成膜2日後と7日後におけるエッチングは、一枚のウエハ上に成膜した同一のSiBN膜の異なる部分に対して行った。図示のとおり、ホウ素濃度が高くなるにしたがって、2日後のエッチング量に対する7日後のエッチング量が大きくなっていくことが分かる。エッチング量が大きくなる原因としては、SiBN膜が雰囲気中の水分を吸収することが考えられ、ホウ素濃度が大きくなるにしたがって、吸湿性が高くなることが推測される。希フッ酸による酸化シリコン膜4等のエッチング後に残るサポート膜(SiBN膜)5の厚さのプロセス間の再現性の観点から、エッチング量の経時変化は小さい方が好ましい。
図18に示す結果から、成膜後2日後から7日後までの5日間におけるエッチング量の増大が約18nmから22nm程度までである30atm.%以下のホウ素濃度が好ましいと考えられる。
【0056】
なお、上述の範囲のホウ素濃度を有するSiBN膜を成膜する際には、本発明の実施形態による成膜方法によれば、組成を制御し易いという利点がある。この成膜方法においては、SiN成膜サイクルとBN成膜サイクルとが独立に行われる。すなわち、SiN膜の成膜中には、ホウ素原料(例えばBCl
3)は処理容器400(
図12)へは供給されず、BN膜の成膜中には、シリコン原料(DCS)は処理容器400へは供給されない。仮に、ホウ素原料とシリコン原料とを処理容器400へ同時に供給する場合には、ホウ素原料分子とシリコン原料分子とが吸着する割合(吸着比)は、両原料の供給量比によって制御される。しかし、吸着比と供給量比との関係は、成膜条件にも依存するため、供給量比によって組成比を十分に制御できないおそれがある。本発明の実施形態による成膜方法によれば、シリコン原料のみがウエハ表面に吸着し、窒化されてSiN膜が形成され、ホウ素原料のみがウエハ表面に吸着し、窒化されてBN膜が形成されるため、吸着比を制御する必要がない。そして、SiN膜とBN膜との膜数比により組成比を制御することができるため、制御性が良い。
【0057】
以上の結果から、本発明の実施形態による半導体装置、半導体装置の製造方法、成膜装置、及び成膜方法の効果・利点が理解される。
【0058】
以上、幾つかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々に変形可能である。
【0059】
例えば、上述の成膜装置200には、処理容器400と真空ポンプ84pとの間に開閉弁84aと圧力調整弁84bを設けたが、これらに代わり圧力調整機能付きの開閉弁(遮断可能な圧力調整弁)を使用しても良い。
【0060】
また、MOS型トランジスタとしては、溝型以外のゲート電極を用いてもよい。たとえば、プレーナ型や縦型のトランジスタも使用することができる。