(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723325
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】クロック変調回路
(51)【国際特許分類】
H03K 5/135 20060101AFI20150507BHJP
G06F 1/04 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
H03K5/135
G06F1/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-133000(P2012-133000)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258544(P2013-258544A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】中西 豊
(72)【発明者】
【氏名】中西 純弥
【審査官】
白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−013784(JP,A)
【文献】
特開2008−277960(JP,A)
【文献】
国際公開第2000/045246(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/00〜 5/156
G06F 1/04〜 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力クロックを遅延させて位相の異なる複数のクロック信号を生成する多位相クロック生成器と、
制御信号を出力するマルチキャリアランダム選択モジュールと、
該マルチキャリアランダム選択モジュールからの前記制御信号にしたがって、前記多位相クロック生成器により発生された前記複数のクロック信号の中から一つのクロック信号を順番で選択した後に、該選択した順番とは逆の順番で前記クロック信号をさらに選択し、これらの選択を所定の周期で繰り返して、該選択したクロック信号を出力信号として出力するクロックセレクタとを備え、
前記マルチキャリアランダム選択モジュールは、前記周期をランダムに切り替えることを特徴とするクロック変調回路。
【請求項2】
前記マルチキャリアランダム選択モジュールが、前記周期をコントロールする周期制御信号を生成するクロック部と、前記周期制御信号に基づき前記制御信号を生成するスイッチ制御部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のクロック変調回路。
【請求項3】
前記クロック部が、
基準となる所定の信号を分周した複数のクロック信号を生成する分周器と、ランダムな制御信号を生成する乱数発生回路と、前記ランダムな制御信号にしたがい、前記分周器からの複数のクロック信号の中から1つのクロック信号を選択して前記周期制御信号として出力するマルチプレクサとを備えていることを特徴とする請求項2に記載のクロック変調回路。
【請求項4】
前記マルチキャリアランダム選択モジュールが、シフトレジスタを環状に接続して構成された第1のスイッチ制御部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のクロック変調回路。
【請求項5】
前記マルチキャリアランダム選択モジュールが、アップダウンカウンタとデコーダとから構成された第2のスイッチ制御部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のクロック変調回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック変調回路に関し、より詳細には、出力クロックのパルス幅を短くすることなく、単一周波数成分による周波数変調よりも変調成分を低減することができるクロック変調回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器内のクロックが単一周波数の場合、その周波数及びその高調波での輻射が大きくなり、電磁不要輻射(EMI;Electro Magnetic Interference)ノイズが発生するところから、特別のEMI対策部品が必要となる。そこで、従来ではクロック変調回路によって、クロック周波数を僅かに変動させる周波数変調を行うことで、クロックの周波数スペクトルを拡散させ、EMIノイズのピーク値を低下させることを図っている。
【0003】
また、デジタルシステムは、マスタクロック信号を動作の基本として、同期動作をしている。このような同期システムでは、マスタクロックの周波数の整数倍の周波数に電磁不要輻射のスペクトル強度の強いピーク(電磁不要輻射ノイズ)が観測される。近年、システムが複雑化されるに伴い、この電磁不要輻射ノイズが他のシステムに悪影響を与え、周辺機器に誤動作を招くケースが増加している。
【0004】
この電磁不要輻射ノイズを低減するための従来のクロック変調回路として、例えば、特許文献1に記載された遅延ゲートのチェーンを用いたものがある。この特許文献1に記載のものは、無線周波干渉を低減した位相変調クロックパルス発生器に関するもので、基準位相を示すクロックパルスを発生するクロックパルス源と、このクロックパルス源に接続され、それぞれが前記基準位相から互いに異なる位相遅延だけ遅延したクロックパルスを発生するn個のタップを含む遅延手段(10)と、n個のタップのそれぞれに接続され、クロックパルスを示す出力を発生するマルチプレクサ手段と、このマルチプレクサ手段を制御してn個のタップの相異なるひとつを連続して出力に接続し、それによって出力が基準位相からそれぞれ異なる位相ずれを有する一連のクロックパルスを示すようにする選択器手段とを含む位相変調クロックパルス発生器である。
【0005】
つまり、微小遅延を発生する複数の遅延ゲートをカスケード接続し、各遅延ゲートの出力をマスタクロックに同期した選択回路にて、1クロック毎に立ち上がり又は立ち下がりのエッジを契機として所定の遅延量のゲート出力線を選択することにより、1クロック毎に立ち上がり又は立ち下りの位相の異なるクロック波形を生成するものである。
このような構成により、マスタクロックに変調をかけ、マスタクロックの周波数の整数倍の周波数に発生していた電磁不要輻射のピークをその発生していた周波数の上下に拡散し、電磁不要輻射のピークを低減することができる。例えば、遅延ゲートのチェーンからアップダウンカウンタなどを用いて周期的に出力クロックを選択することで、アップダウンカウンタ1周期にあたる周波数を搬送波として、周波数変調により電磁不要輻射ノイズは、その搬送波周波数帯域へ拡散することができる。
【0006】
図1は、単一周波数を搬送波として周波数変調されたクロック信号を周波数軸に変換したスペクトルを説明するための図である。
図1に示したグラフの縦軸は信号のスペクトル強度を示し、横軸は周波数を示している。
図1より、単一周波数により周波数変調されたクロック信号は、クロック信号周波数の上下の変調周波数帯域にピークを生じるため、変調成分の電磁不要輻射ノイズも他のシステムに悪影響を与える。しかし、この変調成分のピークは、出力クロックの選択部に乱数発生器を用いて周波数変調をかけ変調成分をノイズフロアに拡散することで低減できる。
【0007】
しかしながら、従来のクロック変調回路では、乱数発生回路を用いて遅延ゲートチェーンから出力クロックを選択する場合、出力クロックのパルス幅が極端に短くなるという問題がある。
図2は、乱数発生器により出力クロックを選択した場合のタイミングチャートを説明するための図である。
図2は、例として8段カスケード接続した遅延回路で、遅延回路からクロック信号CLKD[0]〜CLKD[7]が出力されている。
図2では、クロック信号CLK[7]の立下りタイミング毎にクロック信号CLKD[0]〜CLKD[7]から1つ選択され、出力クロックCLK_OUTとして出力される。図中のT_HはH区間のパルス幅、T_LはL区間のパルス幅を表し、D1〜D7はCLKD[1]〜CLKD[7]におけるCLKD[0]からの遅延時間を表す。
【0008】
選択部に乱数発生回路を用いてランダムにクロック信号が選択された場合、CLKD[0]の後にCLKD[7]が選択されると、L区間のパルス幅は(T_L+D7)と最も長くなり、CLKD[7]の後にCLKD[0]が選択されると、L区間のパルス幅は(T_L−D7)と最も短くなる。
また、クロック変調器をデジタルシステムで用いた場合、回路動作においてパルス幅が短くなるとセットアップ/ホールドタイミングの制約条件が厳しくなる。例えば、入力信号のHとLパルス幅のデューティ比が50%で、遅延回路の最終段までの遅延時間をT_H/2とした場合、最小パルス幅はT_L/2となり、これは回路の動作周波数を2倍で動作させる場合のセットアップ/ホールドタイミングの制約条件と等価であるといえる。そのため、回路をより高速に動作させなければならなくなり消費電力の増加につながる。
【0009】
また、アナログ回路としてよく用いられるスイッチトキャパシタ回路は、サンプリング動作を必須としており、サンプリング動作においてクロック動作に伴い、キャパシタへの電荷のチャージ、ディスチャージが行われ、大きな輻射ノイズを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−202652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、アナログ回路へ供給されるクロックにクロック変調回路において、クロック選択部に乱数発生回路を用いてランダムにクロック信号が選択された場合、パルス幅が短くなり、セトリング時間の制約条件が厳しくなる。そのため、回路をより高速に動作させなければならなくなり消費電力の増加につながる。 本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、出力クロックのパルス幅を短くすることなく、単一周波数成分による周波数変調よりも変調成分を低減することができるクロック変調回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、入力クロックを遅延させて位相の異なる複数のクロック信号を生成する多位相クロック生成器(100)と、
制御信号を出力するマルチキャリアランダム選択モジュール(300)と、該マルチキャリアランダム選択モジュール(300)からの前記制御信号にしたがって、前記多位相クロック生成器(100)
により発生された前記複数のクロック信号
の中から一つのクロック信号を順番で選択した後に、該選択した順番とは逆の順番で前記クロック信号をさらに選択し、これらの選択を所定の周期で繰り返して、該選択したクロック信号を出力信号として出力するクロックセレクタ(200)とを備え、
前記マルチキャリアランダム選択モジュールは、前記周期
をランダムに切り替えることを特徴とする。(
図3;実施形態)
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記マルチキャリアランダム選択モジュール(300)が、前
記周期をコントロールする周期制御信号を生成するクロック部(400)
と、前記周期制御信号に基づき前記制御信号を生成するスイッチ制御部(310)と、を備えていることを特徴とする。(
図4;実施例1)
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記クロック部(400)が、基準となる所定の信号を分周した複数のクロック信号を生成する分周器(410)と、ランダムな制御信号を生成する乱数発生回路(430)と、前記ランダムな制御信号にしたがい、前記分周器(410)からの複数のクロック信号
の中から1つのクロック信号を選択して前記周期制御信号として出力するマルチプレクサ(420)とを備えていることを特徴とする。(
図4;実施例1)
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記マルチキャリアランダム選択モジュール(300)は、シフトレジスタを環状に接続して構成された第1のスイッチ制御部(310)を備えていることを特徴とする。(
図4;実施例1)
また、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記マルチキャリアランダム選択モジュール(300)は、アップダウンカウンタ(321)とデコーダ(322)とから構成された第2のスイッチ制御部(320)を備えていることを特徴とする。(
図7;実施例2)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、出力クロックのパルス幅を短くすることなく、単一周波数成分による周波数変調よりも変調成分を低減することができるクロック変調回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】単一周波数を搬送波として周波数変調されたクロック信号を周波数軸に変換したスペクトルを説明するための図である。
【
図2】乱数発生器により出力クロックを選択した場合のタイミングチャートを説明するための図である。
【
図3】本発明に係るクロック変調回路の一実施形態を説明するためのブロック図である。
【
図4】
図3に示したクロック変調回路の実施例1を説明するための回路構成図である。
【
図5】
図3に示したマルチキャリアランダム選択モジュールが出力する制御信号のタイミングチャートを示す図である。
【
図6】
図4に示したクロック部の生成する制御信号CLK_SWのタイミングチャートを示す図である。
【
図7】
図3に示したクロック変調回路の実施例2を説明するための回路構成図である。
【
図8】
図7に示した3ビットアップダウンカウンタと3to8ビットデコーダの出力論理を示す図である。
【
図9】
図9は、
図3に示した本発明に係るクロック変調回路の実施形態による出力クロック信号CLK_OUTのタイミングチャートを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態のクロック変調回路によるマルチキャリアランダム周波数によって周波数変調されたクロック信号のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図3は、本発明に係るクロック変調回路の一実施形態を説明するためのブロック図で、図中符号100は多位相クロック生成器、200はクロックセレクタ、300はマルチキャリアランダム選択モジュールを示している。
本発明のクロック変調回路は、多位相クロック生成器100と、この多位相クロック生成器100に接続されたクロックセレクタ200と、このクロックセレクタ200に接続されたマルチキャリアランダム選択モジュール300とを備えている。
【0018】
つまり、入力クロックを遅延させて位相の異なる複数のクロック信号を生成する多位相クロック生成器100と、この多位相クロック生成器100により発生された複数のクロック信号CLKDにそれぞれ対応した制御信号を出力するマルチキャリアランダム選択モジュール300と、このマルチキャリアランダム選択モジュール300からの制御信号にしたがって、多位相クロック生成器100からの複数のクロック信号から1つ選択して出力信号として出力するクロックセレクタ200とを備え、このクロックセレクタ200は、複数の制御信号を順番で選択した後に、この選択された順番とは逆の順番で複数の制御信号をさらに選択し、これらの選択を所定の周期で繰り返すように出力信号を出力し、周期は、複数の周期から一巡する周期を動的にランダムに切り替えるものである。
【0019】
また、多位相クロック生成回路100は、入力クロックCLK_INを遅延させて位相の異なる複数(例えば、8個)のクロック信号CLKD[7:0]を生成して出力する。クロックセレクタ200は、マルチキャリアランダム選択モジュール300から入力された制御信号SW[7:0]にしたがって、多位相クロック生成器100の出力クロック信号から1つ選択し、出力信号CLK_OUTとして出力する。
【0020】
マルチキャリアランダム選択モジュール300は、クロック信号CLKD[7:0]にそれぞれ対応した制御信号SW[7:0]を出力する。制御信号SW[7:0]は、CLKD[0]〜CLKD[7]まで順番に選択していき、その後、CLKD[7]〜CLKD[0]まで順番に選択し、これを周期的に繰り返すように出力される。これは、従来の単一周波数による周波数変調をかける構成である。
本発明のクロック変調回路は、任意の信号CLK_CTLからCLKD[7:0]を一巡する周期を複数生成し、乱数発生器を用いて生成した複数の周期から一巡する周期を動的にランダムに切り替えるようにしたものである。
【実施例1】
【0021】
図4は、
図3に示したクロック変調回路の実施例1を説明するための回路構成図で、図中符号310はスイッチ制御部、400はクロック部、410は分周器、420はマルチプレクサ、430は乱数発生回路を示している。なお、
図3と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
マルチキャリアランダム選択モジュール300は、制御信号の一巡する周期をコントロールする周期制御信号を生成するクロック部400を備えている。
【0022】
多位相クロック生成器100は、入力クロックCLK_INを遅延させて位相の異なる8ビットのクロック信号CLKD[7:0]を生成する回路であり、例として、8個の遅延回路110がカスケード接続され、各遅延回路から出力信号が出力される構成になっている。当然のことながら、遅延回路110は、8個に限定されるものではなく自然数Mであればよい。クロックセレクタ200は、スイッチ群210で構成され、直列に接続された遅延回路間に接続されていて、マルチキャリアランダム選択モジュール300に接続される。スイッチ群210の個数は、遅延回路110の個数と同じ数で構成される。
【0023】
マルチキャリアランダム選択モジュール300は、スイッチ制御部310とクロック部400とから構成される。スイッチ制御部310は、シフトレジスタを環状に接続して構成され、CLK_SW信号に同期して駆動される。つまり、マルチキャリアランダム選択モジュール300は、シフトレジスタを環状に接続して構成された第1のスイッチ制御部310を備えている。
【0024】
また、クロック部400は、基準となる所定の信号を分周した複数のクロック信号を生成する分周器410と、ランダムな制御信号を生成する乱数発生回路430と、ランダムな制御信号にしたがい、分周器410からの複数のクロック信号を選択して周期制御信号として出力するマルチプレクサ420とを備えている。
図5は、
図3に示したマルチキャリアランダム選択モジュールが出力する制御信号のタイミングチャートを示す図である。この
図5のSW[7:0]のタイミングチャートに示すように、制御信号SW[7:0]を、SW[0]、SW[1]、…、SW[6]、SW[7]、SW[7]、SW[6]、…、SW[1]、SW[0]、…、の順にHにしていき、この過程が繰り返される。このとき、制御信号SW[7:0]は常に一つの信号のみがH、残りの7つの信号がLとなり、いずれかが同時にHになることがないように切り替えられる。クロック部400は、分周期410とマルチプレクサ420と乱数発生回路430から構成される。クロック部400は、
図3で示した任意の信号CLK_CTL(
図4では、CLKD[7]を使用している)から、制御信号SW[7:0]の一巡する周期をコントロールするCLK_SWを生成する。
【0025】
図6は、
図4に示したクロック部の生成する制御信号CLK_SWのタイミングチャートを示す図である。分周器410で、CLKD[7]を分周した複数のクロック信号CLK_DIV[3:0]を生成し出力する。ここでは、4つのクロック信号を生成し、CLK_DIV[0]は1分周、CLK_DIV[1]は2分周、CLK_DIV[2]は4分周、CLK_DIV[3]は8分周としている。ここで、分周期410で生成されるクロック信号CLK_DIVは、4個に限定されるものではなく自然数Mであればよい。乱数発生器430では、ランダムな2ビット4値の信号CLK_SEL[1:0]を生成し、マルチプレクサ420では、CLK_SEL[1:0]の4値信号からランダムにCLK_DIV[3:0]を選択し、スイッチ制御部320にCLK_SW信号として出力する。
図6では、例として、CLK_DIV[0]、CLK_DIV[3]、CLK_DIV[1]、CLK_DIV[2]、の順にランダムに選択されたCLK_SWのタイミングチャートを示している。
【実施例2】
【0026】
図7は、
図3に示したクロック変調回路の実施例2を説明するための回路構成図で、図中符号320はスイッチ制御部、321はアップダウンカウンタ、322はデコーダを示している。なお、
図4と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
図4に示した実施例1との違いは、マルチキャリアランダム選択モジュール300のスイッチ制御部を
図7に示すスイッチ制御部320で構成したものであり、それ以外は実施例1と同様である。
【0027】
つまり、マルチキャリアランダム選択モジュール300は、アップダウンカウンタ321とデコーダ322とから構成された第2のスイッチ制御部320を備えている。
スイッチ制御部320は、3ビットアップダウンカウンタ321と3to8ビットデコーダ322とから構成され、CLK_SW信号に同期して駆動される。3ビットアップダウンカウンタの出力信号CNT[2:0]から3to8ビットデコーダを介してクロックセレクタ200の制御信号SW[7:0]を生成する。
【0028】
図8は、
図7に示した3ビットアップダウンカウンタと3to8ビットデコーダの出力論理を示す図である。アップダウンカウンタのカウント値に対応して制御信号SW[7:0]を、SW[0]、SW[1]、…、SW[6]、SW[7]、SW[7]、SW[6]、…、SW[1]、SW[0]、…、の順にHにしていき、この過程が繰り返される。
図9は、
図3に示した本発明に係るクロック変調回路の実施形態による出力クロック信号CLK_OUTのタイミングチャートを示す図である。本実施形態では、クロック信号CLKD[7:0]は、制御信号SW[7:0]にしたがって、CLKD[0]、CLKD[1]、…、CLKD[6]、CLKD[7]、CLKD[7]、CLKD[6]、…、CLKD[1]、CLKD[0]、…、の順に順番に選択される。そのため、出力CLK_OUTのL区間のパルス幅は、CLKD[6]からCLKD[7]に切り替えられる場合はT_L+(D7−D6)となり、CLKD[7]からCLKD[6]に切り替えられる場合はT_L―(D7−D6)となる。これを一般化すると、L区間のパルス幅の最小値は、T_L−(Dn+1−Dn)、n:1以上の自然数、で表される。これは、入力クロック信号のL区間のパルス幅から遅延回路1つ分の遅延時間を引いた値であり、
図2で示した乱数を用いて選択された場合のL区間のパルス幅と比較して、パルス幅を長くすることができる。そのため、回路のセットアップ/ホールドタイミングの制約条件を抑えることができ、消費電力の増加を抑制することができる。
【0029】
図9では、クロック信号CLK[7]の立下りタイミング毎にクロック信号CLKD[0]〜CLKD[7]を切り替えた場合を示しており、L区間のパルス幅は変化しているが、クロック信号CLK[7]の立ち上がりタイミング毎に切り替えた場合には、H区間のパルス幅が変化する。本発明の効果は、どちらを用いても同等の効果が得られるものである。
【0030】
図10は、本発明の実施形態のクロック変調回路によるマルチキャリアランダム周波数によって周波数変調されたクロック信号のスペクトルを示す図である。
図6より、制御信号SW[7:0]は、スイッチを一巡する周期を複数持ち、乱数発生器を用いて周期をランダムに切り替えている。この制御信号SW[7:0]を用いてクロック信号CLKD[7:0]を選択することで、入力クロック信号は複数の搬送波によって周波数変調がかかり変調成分は複数の搬送波周波数帯に拡散され、さらに、複数の搬送波は乱数発生器によりランダムに選択されるため変調成分がフロア化され、単一周波数を用いた周波数変調に比べて、変調成分がピークを低減することができる。
【0031】
また、本発明の技術的範囲は、図面及び上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施例をも含んでいる。さらに、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲による発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせも含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るクロック変調回路は、周波数変調されたクロック信号が必要な装置に有用である。特に、クロック信号のパルス幅がセトリング時間の制約条件に関わるアナログ回路のスイッチトキャパシタ回路等において有用である。
【符号の説明】
【0033】
100 多位相クロック生成器
200 クロックセレクタ
300 マルチキャリアランダム選択モジュール
310 スイッチ制御部
320 スイッチ制御部
321 アップダウンカウンタ
322 デコーダ
400 クロック部
410 分周器
420 マルチプレクサ
430 乱数発生回路